説明

検査部品の梱包構造

【課題】検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくくすることで、回転子による電極の損傷を抑える。
【解決手段】検査部品の梱包構造は、細菌測定部材21と、受けパット14と、マグネットシート13とを備えている。細菌測定部材21は、測定セル1と、測定セル1内に露出した電極2と、測定セル1内で自由に移動可能な回転子3とを有する。受けパット14は細菌測定部材21を収納する。マグネットシート13は、細菌測定部材21が受けパット14に収納された状態で回転子3を電極2に接触しない所定の位置に磁気吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内で自由に移動可能な回転子を有する検査部品を梱包して輸送や保管が可能な検査部品の梱包構造に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を定量的に測定する細菌検査装置を用いて、以下のステップで検査行う技術が知られている。最初に、シート基板上に複数の電極を配置したものを微生物含有の溶液を入れたセルに浸す。次に、電極間に交流電圧を印加したときの誘電泳動力によって電極上に微生物を捕集する。最後に、捕集後または捕集中の電極のインピーダンスを測定する。
【0003】
例えば、特許文献1には、以下のような校正を有する口腔内衛生状態検査装置が開示されている。この検査装置は、測定セルと、電源部と、測定部と、制御部とを備えている。測定セルは、内部に測定のための電極を備え口腔内から採取されたサンプルを含む試料を保持することができる。電源部は、電極に誘電泳動を行うための電圧を印加することができる。測定部は、試料液中の微生物数を算出することができる。制御部は、電源部と測定部とを制御する。
【特許文献1】特開2003−24350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の細菌検査装置についてさらに説明すると、測定セルは、容器と、容器内に露出した電極と、容器内で自由に移動可能な回転子とを有している。容器内には試料液が充填され、検査時には電極と回転子が試料液に浸されている。細菌検査を行うときに、例えば口腔内から採取されたサンプルが付着した綿棒を試料液に浸して、綿棒から細菌を試料液内に流れ出させる。
【0005】
しかし、測定セルを従来の梱包部材に収納させて輸送や保管を行う場合に、揺れや衝撃が作用すると、回転子が例えば電極に衝突して、電極に傷を付けたり破損したりすることがあり得る。その場合は、測定セルの性能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子を電極に接触しにくくすることで、回転子による電極の損傷を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る検査部品の梱包構造は、検査部品と、収納部材と、吸着部材とを備えている。検査部品は、容器と、容器内に露出した電極と、容器内で自由に移動可能な回転子とを有する。収納部材は検査部品を収納するための部材である。吸着部材は、検査部品が収納部材に収納された状態で回転子を電極に接触しない所定の位置に磁気吸着する。
【0008】
この構造では、検査部品が収納部材に収納された状態では、回転子が吸着部材に吸着されて電極に接触しない所定の位置に保持される。このため、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくい。したがって、回転子による電極の損傷が抑えられる。
【0009】
第2の発明に係る検査部品の梱包構造では、第1の発明において、所定の位置は容器の底部である。
この構造では、検査部品が収納部材に収納された状態では、回転子が容器の底部に保持された状態になる。衝撃等が作用して回転子が底部から離れたとしても、重力によって回転子は速やかに底部に戻る。このため、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくい。したがって、回転子による電極の損傷が抑えられる。
【0010】
第3の発明に係る検査部品の梱包構造では、第2の発明において、吸着部材は、容器の底部に対向する位置に配置されている。
この構造では、回転子が容器の底部に保持された状態になる。このため、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくい。したがって、回転子による電極の損傷が抑えられる。
【0011】
第4の発明に係る検査部品の梱包構造では、第2または第3の発明において、電極は容器の側壁に取り付けられている。
この構造では、電極は容器の側壁に取り付けられており、しかも、検査部品が収納部材に収納された状態では、回転子が容器の底部に保持された状態になる。したがって、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくい。したがって、回転子による電極の損傷が抑えられる。
【0012】
第5の発明に係る検査部品の梱包構造では、第1〜4の発明のいずれかにおいて、検査部品は、容器内を第1空間と第2空間とに仕切る第1シート部材をさらに有しており、回転子は第1空間内に配置され、第2空間には液体が充填されている。
【0013】
この構造では、検査部品の検査時に、第1シート部材が他の部材によって破られることで、第2空間内の流体が第1空間に入り込み、回転子が液体内を移動可能となる。そのため、使用前の前提として、実際に使用するまでは第1シート部材が破れていないことが重要である。そして、この構造では、検査部品が梱包部材の収納部に収納された状態では、回転子が吸着部材に吸着されて第1シート部材に接触しない位置に保持される。このため、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が第1シート部材に接触しにくい。したがって、回転子による第1シート部材の損傷が抑えられる。
【0014】
第6の発明に係る検査部品の梱包構造では、第5の発明において、検査部品は、第2空間を外部から遮断する第2シート部材をさらに有している。
この構造では、検査部品の検査時には、第2シート部材側から第2シート部材、第1シート部材を破ることで、第2空間内の流体が第1空間に入り込み、電極及び回転子が液体に浸される。
【0015】
第7の発明に係る検査部品の梱包構造では、第1〜6のいずれかの発明において、収納部材は複数の収納部を有している。
この構造では、収納部材の複数の収納部にそれぞれ検査部品が収納され、運搬可能となる。
【0016】
第8の発明に係る検査部品の梱包構造では、第7の発明において、吸着部材は、複数の収納部の近傍に配置された一枚の部材である。
この構造では、吸着部材が一枚の部材からなるため、構造が簡単である。
【0017】
第9の発明に係る検査部品の梱包構造では、第1〜8の発明のいずれかにおいて、検査部品は細菌測定部品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る検査部品の梱包構造によれば、検査部品が梱包部材の収納部に収納された状態では、回転子が吸着部材に吸着されて電極に接触しない所定の位置に保持される。このため、検査部品の梱包構造を運搬する場合に、回転子が電極に接触しにくい。したがって、回転子による電極の損傷が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る細菌検査装置9について、図1〜図4を用いて説明すれば以下の通りである。
ここで、本実施形態の細菌検査装置9の検査対象である口腔内の細菌(微生物)およびプラークについて説明すれば以下の通りである。
【0020】
すなわち、口腔内の主要な疾病(例えば、う触や歯周病)は、いずれも口腔内の細菌(微生物)の存在が主な原因である。プラークは、口腔内の細菌が増殖によって局所的に固まった状態のものであり、多糖類などの代謝物を除いてそのほとんどが微生物の固まりである。プラーク1g中の微生物の数は、実に10の10乗個から11乗個にも達する。このプラークを口腔内から除去すること(以下、プラークコントロール)は、口腔内衛生を保つ上で最も重要なことであり、具体的にはブラッシング法(歯磨き)がプラークコントロールの主な手段となる。
【0021】
このように、ほとんどの口腔内疾病は、プラークの存在によって引き起こされることが明らかになっていることから、口腔内疾病の効果的な予防を行うために、口腔内の衛生状態を精度よく検査することが極めて重要となる。
【0022】
[細菌検査装置9の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る細菌検査装置の構成を示す概念図である。本実施形態に係る細菌検査装置9は、例えば、綿棒等の試料採取具を用いて採取された口腔内に存在する細菌(微生物)の検出を行う検査装置である。
【0023】
細菌検査装置9は、図1に示すように、測定セル1、薄膜電極2、回転子3、スターラー4、電源部5、測定部6、制御部7および表示部8を主に備えている。
測定セル1は、円筒状のガラス製容器であり、試料液を導入/排出するための開口部が設けられている。測定セル1はガラス製であり、磁力を通す。ガラスを用いる理由は、スターラー4の磁気力を介して回転子3(後述)を回転させて試料液を攪拌するためである。なお、測定セル1の材質は、ガラス以外にもプラスチックなどを用いることもできる。なお、測定セル1内に貯留される試料液としては、例えば、水、油類、エタノール等のアルコール類、アセトン、DIMSO、フラン、その他有機溶剤等およびこれらの混合物等の様々な液体を用いることができる。
【0024】
薄膜電極2は、誘電泳動によって試料液中の細菌(微生物)を所定位置に移動させて細菌を検出するものである。薄膜電極2は電極基板上に形成されたおよび導電性薄膜から構成されている。導電性薄膜は、ギャップ10を介して対向配置された櫛歯状の電極を構成している。なお、ギャップ10の大きさは5μmである。薄膜電極2の導電性薄膜は、導電体をスパッタリングや蒸着やメッキ等の方法によって電極基板上に被覆して形成される。この薄膜電極2に電圧を印加すると、薄膜電極2のギャップ10に細菌(微生物)が泳動される。
【0025】
回転子3およびスターラー4は、試料液を攪拌して試料液と薄膜電極2の相対位置を変化させる。これにより、試料液中の細菌が薄膜電極2に確実に供給される。なお、回転子3およびスターラー4は、試料液を電極上で流動させて相対位置を変化させる流動促進手段であれば、必ずしも本実施形態の回転子3とスターラー4である必要はない。回転子3は、様々な形態のものが選択可能であるが、本実施形態では、円柱形のものを使用している。その他に、回転子は棒状や板状であってもよい。
【0026】
電源部5は、誘電泳動を起こすための交流電圧を薄膜電極2に供給する。ここでいう交流とは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧をいい、この双方向の電流の平均値が等しいものをいう。本実施形態においては、誘電泳動のための交流電圧として周波数100kHz、ピーク間電圧(以下、ppと表す)5Vを印加している。もちろん誘電泳動のための交流電圧の周波数と電圧値は前述した値に限られるものではなく、広い範囲から選択することができる。
【0027】
制御部7は、図示しない、マイクロプロセッサ、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマー、そして、使用者が測定を指示するための測定開始ボタン等の操作ボタンから構成されている。そして、制御部7は、予め設定されたプログラムにしたがって電源部5を制御して薄膜電極2に誘電泳動のための電圧を印加する。また、制御部7は、測定部6と信号の送受信を行い、適宜制御を行うことで測定動作全般の流れを管理する。さらに、制御部7は、測定結果や動作状況等を表示部8に表示する。
【0028】
測定部6は、図示しない、マイクロプロセッサ、測定データや演算結果を一時的に保存するためのメモリ、そして、電極に印加された電圧、電極間に流れている電流、そして、電圧と電流との位相の差(以後、位相角とする)を測定するための回路などから構成され、電極のインピーダンス解析を行うための演算を行う。そして、電極のインピーダンス解析結果から試料液中の細菌数を算出することができる。なお、前述の算出については、既知の算出方法を使用している。また、測定部6のマイクロプロセッサやメモリは、制御部7のマイクロプロセッサやメモリと共用することができる。
【0029】
表示部8は、LCD等のディスプレイやプリンター、スピーカー等で、溶液中の細菌数を出力する。なお、本実施形態では、口腔内の衛生状態を試料液中の細菌数を表示する。なお、表示方法としてはたとえばバーグラフ等を用いて半定量的な表現で表示したり、さらに抽象的に○×表示を行ったり、視覚的な表示に加えて(または代えて)音声やそのほかの伝達手段を用いることも自由であり、これら多くの表示方法の中から目的に応じて最適なものを選択すればよい。
【0030】
[細菌検査装置9で利用する誘電泳動についての説明]
続いて、本実施形態に係る細菌検査装置9で利用する誘電泳動について説明を行う。詳細な説明は、文献J.theor.Biol(1972)vo1.37,1−13等を参照されたい。
【0031】
高周波の交流電圧を印加すると、これによって発生する交流電界の作用により測定セル1内の細菌は、最も電場が強くかつ不均一な部分に泳動される。上述したように、本実施形態においては、薄膜電極2のギャップ10が最も電場が強く、かつ、不均一な部分に該当する。このとき、細菌の誘電体微粒子としての双極子モーメントをμとすると、誘電泳動力Fは、電場Eとの間に式1の関係が存在する。
【0032】
【数1】

【0033】
さらに、細菌の細胞質の比誘電率をε2、細菌を含んでいる液体の比誘電率をε1、細菌を球体と見なしたときの半径をa、円周率をπとすると、誘電泳動力Fは、式2のように書き換えることができる。
【0034】
【数2】

【0035】
式2は、誘電泳動による力が電位勾配、媒質と誘電体微粒子としての細菌の比誘電率の差などの影響を受けることを示している。
【0036】
ギャップ10は、櫛歯状の導電性薄膜が対向している部分である。ギャップ10付近に浮遊する細菌は、ギャップ10間に生じるこのような電界作用によってギャップ10に引き寄せられ、電気力線に沿って整列する。このとき、ギャップ10付近の細菌の整列状態は、試料液体中に存在する細菌数とギャップ10との間隔に依存する。しかし、十分に細菌数が多いときには、ギャップ10において細菌が鎖状に繋がって架橋されるほどになる。そして、当初からギャップ10付近に浮遊していた微生物は、直ちにギャップ10部分へ移動し、ギャップ10から離れたところに浮遊していた微生物は、距離に応じた所定時間経過後にギャップ10部に到達する。このため、所定の時間後にギャップ10付近の所定領域に集まっている微生物の数は、測定セル1内の微生物数に比例する。そして、細菌検査装置9では、この比例関係を基に、試料中の微生物数を算出する。
【0037】
本実施形態においては、誘電泳動を生じさせるために交流の電界を用いているが、この交流印加の条件下では、誘電率εは、複素誘電率ε’で表され、導電率σの影響を受ける。例えば、微生物を含んでいる液体の複素誘電率は、液体の導電率σ1との関係において式3のようになる。
【0038】
【数3】

【0039】
ここで、微生物を含んでいる液体の導電率σ1が高くなる方向に変化した場合について考えてみる。すなわち、複素誘電率で考えた式2中の項である(ε1−ε2)/(ε1+2ε2)(claucius−Mossoti式と呼ばれている)の値が非常に小さくなると、誘電泳動力Fの値も小さくなる。その結果、微生物を電極付近に集めることができなくなり、測定感度は低下することになる。液体の導電率σ1を決定するのは、ほとんどが液体中に溶解している導電性物質イオンであるので、液体中からイオンを除去してやれば液体の導電率σ1は低下し、その結果誘電泳動力Fが増大して感度が向上することになる。
【0040】
ところで、本実施形態におけるギャップ10の間隔は、5μmに設定されているが、この値に限定されるものではない。ギャップ10の間隔は、測定対象となる試料溶液中の微生物の種類や濃度に応じて調節されるのが望ましい。なお、ギャップ10の間隔は、試料溶液の特徴に合わせて0.2〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。
【0041】
[細菌測定セル及びそれを収納する梱包部材の構造]
図2は、細菌検査装置の測定セル及びそれを収納する梱包部材の概略斜視図である。
細菌測定部品の梱包構造11は、梱包箱12と、マグネットシート13と、受けパット14と、上部梱包材15と備えている。
【0042】
梱包箱12は、例えば一般の段ボール箱であり、底部12a、側壁12b、開閉可能な蓋12cを有している。
マグネットシート13は、永久磁石からなる板状の部材であり、梱包箱12の底部12aの上に配置されている。
【0043】
受けパット14は、例えばプラスチックまたは紙製の箱形部材である。受けパット14は、側壁14aと、上面14bとを有している。受けパット14の上面14bには複数の(この実施例では12個の)収納部14cが形成されている。収納部14cは縦方向に延びる断面円形の筒状の壁を有している。
【0044】
上部梱包材15は、受けパット14を覆うような形状を有している。
マグネットシート13,受けパット14,上部梱包材15が梱包箱12内に収納された状態で、各収納部14cに細菌測定部品21を収納させ、梱包箱12の蓋12cを閉じてガムテープを貼ると、梱包作業が完了する。
【0045】
[細菌測定部品の構造]
図3は、細菌測定部品の断面図である。細菌測定部品21は、主に、測定セル1と、薄膜電極2と、回転子3とから構成されている。
【0046】
測定セル1は、筒状の部材であり、第1筒状部22と第2筒状部23を有している。第1筒状部22は細長く延びる形状を有しており、さらに、底部24を下端に有している。
底部24の上面は、平坦な円形面である。
【0047】
第1筒状部22の側壁の内側面には、薄膜電極2が配置されている。薄膜電極2は、電極基板2aと導電性薄膜2bとから構成されている。電極基板2aは、縦方向に延びる薄板である。そのため、第1筒状部22の側壁の一部は電極基板2aに合わせて平坦な面になっている。電極基板2aの下端は第1筒状部22に形成されたスリットから外部に延びている。以上より、電極基板2aの第1筒状部22内での最下端部は、底部24から縦方向に離れた位置にある。さらに、電極基板2aと底部24との間には、第1筒状部22において平坦な側面と湾曲した側面との間(つまり、第1筒状部22において電極基板2aの下端部に対応する部分)は、段部22aになっている。段部22aは、電極基板2aより下側において電極基板2aより半径方向内側に配置されている。導電性薄膜2bは電極基板2a上に形成されている。特に、導電性薄膜2bは、電極基板2aの縦方向中心より上側に形成されている。
【0048】
第2筒状部23は第1筒状部22の上側に連続して形成された筒状部である。第2筒状部23は第1筒状部22より径が大きくなっており、したがって第1筒状部22の第2筒状部23の間には縦方向を向いた段差部25が形成されている。
【0049】
第1筒状部22内が第1空間27であり、第2筒状部23内が第2空間28である。
第1筒状部22と第2筒状部23の間には、第1シート部材29が張られて、第1空間27と第2空間28を遮断している。さらに、第2筒状部23の上端には、第2シート部材30が張られて、第2空間28と外部を遮断している。このように、第2空間28は、第1シート部材29と第2シート部材30によって他空間から遮断された状態であり、さらにその内部に試料液を有している。
【0050】
第1シート部材29と第2シート部材30は検査時に綿棒で容易に破れることが必要であり、例えばアルミ箔等といった金属薄膜からなる
第1空間27は、第1シート部材29によって第2空間28から遮断されており、空気が充填されている。第1空間27内には、回転子3が配置されている。回転子3は例えば磁性体からなる部材であり、円柱形状を有している。第1回転子3の高さは、第1筒状部22の内径より小さく、そのため回転子3は、図3に示すように、底部24の上に横たわった姿勢になって縦方向に延びる軸を中心に回転することが可能である。言い換えると、底部24は回転子3が検査時に回転を行う場所である。
【0051】
なお、回転子3が底部24の上に立った姿勢になった場合は、回転子3は第1筒状部22の下部の内周面および段部22aに当接可能である。ただし、段部22aが回転子3の高さに比べて十分長さを有しているため、回転子3が薄膜電極2に当接しにくい。特に、導電性薄膜2bは電極基板2aの縦方向中心より上側に形成されているため、回転子3が導電性薄膜2bに当接しにくい。
【0052】
[細菌測定セルを収納部材に収納している状態]
試料採取具を用いた試料採取から試料液中への細菌の放出、試料液Xの攪拌、細菌検出までを行う工程について説明する。
【0053】
最初に、綿棒等の試料採取具を用いて口腔内から試料(細菌)を採取する。被験者の口腔内から得られる試料としては、歯牙や舌や口腔内壁を拭った布や綿棒や、唾液や唾液を染みこませた布状のもの、歯間からピック状のもので掻き取られた試料等が考えられる。次に、試料採取具の先端を用いて、測定セル1の第2シート部材30を破って、次に第1シート部材29を破る。この結果、第2空間28内の試料液が第1空間27内に流れ込む。第1空間27では、回転子3及び薄膜電極2が試料液に浸される。また、試料採取具の先端も試料液に浸かった状態となり、そのため試料採取具から試料液中に細菌が流れ出す。続いて、スターラー4を用いて回転子3を回転させ、試料液を十分に攪拌する。次に、制御部7が、測定セル1の側壁面に設置された電極基板2a上の導電性薄膜2bに対して交流電圧を印加するように、電源部5を制御する。さらに、測定部6において、薄膜電極2におけるインピーダンスの変化を検出することで、試料液中の細菌数を検出する。最後に、制御部7が、測定部6における検出結果を表示部8において表示させて、処理を終了する。
【0054】
[細菌測定部品を受けパットに収納している状態]
図4は、複数の細菌測定部品を受けパットに収納した状態の部分断面図である。
受けパット14の収納部14cの高さは、測定セル1の第1筒状部22の高さとほぼ同じである。また、収納部14cの径は、測定セル1の第1筒状部22の外径よりわずかに大きいが、第2筒状部23の外径より小さい。
【0055】
以上の寸法関係より、測定セル1を受けパット14の収納部14cに収めると、図4に示すように、測定セル1の第1筒状部22が収納部14c内に入り込み、段差部25が収納部14cの周りの面に当接する。この状態で、測定セル1の底部24はマグネットシート13の上に直接当接する。そのため、マグネットシート13からの磁力によって回転子3は測定セル1の底部24の上に保持された状態になる。このため、相当に大きな力が作用しない限り、回転子3が測定セル1の底部24から離れることがない。
【0056】
以上より、梱包構造11の運搬中や保管中に通常の揺れや衝撃が作用しても、回転子3が底部24から離れにくい。つまり、回転子3が薄膜電極2を傷つけたり破損したりすることが抑えられており、その結果セルの性能低下が生じにくい。さらに、回転子3が第1シート部材29を破りにくい。以上より、梱包構造11の運搬時に細菌測定部品21に損傷が生じにくい。
【0057】
特に、回転子3が第1筒状部22に保持されている箇所が底部24であるため、回転子3が薄膜電極2を傷つけない可能性がより高くなっている。例えば、本発明とは異なって、回転子が第1筒状部の側壁に保持されているケースを想定すると、衝撃等で回転子が側壁から離れてしまうと回転子が元の位置に戻れず、薄膜電極に悪影響を与えることが考えられる。一方、本発明の前記実施形態のように回転子が第1筒状部に保持されている箇所が底部である場合は、衝撃等によって回転子が底部から離れても重力によってすぐに底部に戻ることができる。
【0058】
特に、本発明の特徴は、容器内に移動自在に配置された部材による内部構造の損傷の問題に着目し、それを課題としたことにある。従来容器そのものの移動による損傷の問題に着目しそれを課題にした発明はあるかもしれないが、容器内の部材の移動を課題とした発明は知られていない。したがって、本発明は課題の観点からも新規であり、進歩性に貢献している。
【0059】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
(A)
上記実施形態の梱包構造では、マグネット部材を一枚の板とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、各収納部に対応させて複数マグネットを配置するようにしても、上記の実施形態に係るマグネットによる吸着と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(B)
上記実施形態の梱包構造では、測定セル1の底部24がマグネットシート13に直接当接する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
例えば、測定セル1の底部とマグネットシート13との間に隙間が確保されていても良い。また、例えば、受けパット14の収納部14cが底部を有している構造にしてそのため測定セル1の底部がマグネットシート13に直接当たらない構造にしても、上記の実施形態に係るマグネットによる吸着と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(C)
上記実施形態の梱包構造では、検査前には回転子3は試料液に浸されていない例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
例えば、第1シート部材29が無い構造にしてそのため回転子3が最初から試料液に浸されている構造にしても、上記の実施形態に係るマグネットによる吸着と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、本発明に係る検査部品の梱包構造によれば、検査部品が梱包部材の収納部に収納された状態では、回転子が吸着部材に吸着されて電極に接触しない所定の位置に保持されることが可能になるため、例えば、回転子及び電極を有する検査装置の他の梱包構造へ広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る細菌検査装置の構成を示す概念図。
【図2】細菌検査装置の細菌測定部品及びそれを収納する梱包部材の概略斜視図。
【図3】測定セルの断面図。
【図4】複数の測定セルを収納部材に収納した状態の部分断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 測定セル(容器)
2 薄膜電極(電極)
2a 電極基板
2b 導電性薄膜
3 回転子
4 スターラー
5 電源部
6 測定部
7 制御部
8 表示部
9 細菌検査装置
10 ギャップ
11 梱包構造
12 梱包箱
12a 底部
12b 側壁
12c 蓋
13 マグネットシート(吸着部材)
14 受けパット(収納部材)
14a 側壁
14b 上面
14c 収納部
15 上部梱包材
21 細菌測定部品(検査部品)
22 第1筒状部
22a 段部
23 第2筒状部
24 底部
25 段差部
27 第1空間
28 第2空間
29 第1シート部材
30 第2シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に露出した電極と、前記容器内で自由に移動可能な回転子とを有する検査部品と、
前記検査部品を収納するための収納部材と、
前記検査部品が前記収納部材に収納された状態で、前記回転子を前記電極に接触しない所定の位置に磁気吸着するための吸着部材と、
を備えた検査部品の梱包構造。
【請求項2】
前記所定の位置は前記容器の底部である、請求項1に記載の検査部品の梱包構造。
【請求項3】
前記吸着部材は、前記容器の底部に対向する位置に配置されている、請求項2に記載の検査部品の梱包構造。
【請求項4】
前記電極は前記容器の側壁に取り付けられている、請求項2または3に記載の検査部品の梱包構造。
【請求項5】
前記検査部品は、前記容器内を第1空間と第2空間とに仕切る第1シート部材をさらに有しており、
前記回転子は前記第1空間内に配置され、
前記第2空間には液体が充填されている、請求項1〜4のいずれかに記載の検査部品の梱包構造。
【請求項6】
前記検査部品は、前記第2空間を外部から遮断する第2シート部材をさらに有している、請求項5に記載の検査部品の梱包構造。
【請求項7】
前記収納部材は複数の収納部を有している、請求項1〜6のいずれかに記載の検査部品の梱包構造。
【請求項8】
前記吸着部材は、前記複数の収納部の近傍に配置された一枚の部材である、請求項7に記載の検査部品の梱包構造。
【請求項9】
前記検査部品は細菌測定部品である、請求項1〜8のいずれかに記載の検査部品の梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214894(P2009−214894A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58599(P2008−58599)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】