説明

検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置

【課題】回路規模が大きくなることなく、検波回路の検波可能範囲を効果的に拡大することが可能な検波回路および検波方法を提供する。
【解決手段】主信号ライン上の増幅器15の後段に挿入した側結合方向性結合器16と、側結合方向性結合器16によって一部分離した信号を検波する検波器18とを少なくとも備えた検波回路に、さらに、側結合方向性結合器16のアイソレーションポート13側に、制御信号によって抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子として例えばPINダイオード(p-intrinsic-n Diode)17を接続し、主信号の電力レベルが高い場合には、PINダイオード17に流れる電流値を少なくして、可変抵抗素子としての高周波抵抗値を高くし、一方、主信号の電力レベルが低い場合には、PINダイオード17に流れる電流値を多くして、可変抵抗素子としての高周波抵抗値を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置に関し、特に、マイクロ波帯を利用した場合の検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波無線通信装置の送信電力制御回路の制御範囲を決定する一因として、検波回路の出力範囲がある。マイクロ波帯の送信電力制御回路にて一般的に使用されているダイオード検波器の実用的な検波可能範囲は35dB程度である。一般に、検波器への入力レベルが高い場合は、検波電圧が大きくなり過ぎることで、ダイオード自身の信頼性が問題となり、一方、検波器への入力レベルが低い場合は、検波電圧と制御部で加わる雑音との差が小さくなるために、検波精度が保てないという課題がある。そのために、35dB程度の検波範囲が、一般的となっている。
【0003】
従来のマイクロ波無線通信装置の検波回路は、図5のような回路構成が採用されている。図5は、従来のマイクロ波無線通信装置の検波回路の回路構成を示す回路図である。
【0004】
図5に示すように、従来の検波回路は、入力信号を増幅する増幅器25、主信号ライン上の入力信号の一部をモニタライン上に分離する側結合型方向性結合器26、モニタライン上に分離した信号を評価して主信号ライン上の入力信号の検波を行う検波器28を備えている。
【0005】
ここで、側結合型方向性結合器26の主信号ライン上の入力側の端子を入力ポート21、主信号ライン上の出力側の端子を出力ポート24、モニタライン上の検波器28へ信号を引き込むためのカップリング用端子をカップリングポート22、モニタライン上の負荷側のアイソレーション用端子をアイソレーションポート23と称している。
【0006】
図5に示す検波回路の検波器28における検波可能範囲として要求される要求検波特性を図6に示している。図6は、図5に示す従来の検波回路における検波器28の要求検波特性を示す特性図である。図6においては、前述した検波範囲に関する課題に対して問題がない検波範囲になる+5dBm〜−30dBmを、検波器28の実用的な検波可能範囲として設定している。つまり、入力電力が−30dBmの場合の検波電圧0.003Vから、+5dBmの場合の検波電圧1.1Vまでの範囲を要求検波範囲として設定している。
【0007】
ここで、側結合型方向性結合器26の結合量を25dBであるものとし、かつ、簡単化のために、入出力ポート21,24、カップリングポート22、アイソレーションポート23の損失が無いという理想的な条件下における場合と仮定すると、図7に示すように、検波対象信号の出力電力が+30dBm〜−5dBmの範囲において検波することが可能になる。図7は、図5に示す従来の検波回路における検波器28の理想的な検波特性を示す特性図である。
【0008】
検波回路の検波可能範囲を拡大する方法としては、特許文献1の特開2001−189667号公報「送信電力制御回路および送信電力制御方法」や特許文献2の特開2005−252847号公報「可変電力分配方法、可変電力分配器及び送信電力制御回路」に開示されているように、増幅器と出力端子との間にある電力分配回路の分配比率を変化させる方法、つまり、図5の増幅器25の後段に挿入される側結合型方向性結合器26の結合度を変化させる方法がある。
【0009】
前記特許文献1,2に記載されているような方法は、低レベル出力時には、検波電圧レベルが低くなるために検波精度が保てないという課題に対して、電力分配回路の分配比率を変化させることによって、つまり、低レベル出力時には、分配比率すなわち検波器への結合度を大きくし、一方、高レベル出力時には、分配比率すなわち検波器への結合度を小さくした通常の状態に設定することによって、低レベル出力時であっても、検波器への入力電力を高くすることができ、それにより、検波器のダイナミックレンジを拡大し、検波器において十分な検波電圧を得ることができるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−189667号公報(第5−7頁)
【特許文献2】特開2005−252847号公報(第5−7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述のような従来の技術には、以下のような課題がある。前記特許文献1の技術においては、電力分配比率の切り替えを行うために、カップリングポートと検波器との間に挿入した可変抵抗の抵抗値または可変容量素子の容量値を変更することにしているため、可変抵抗の抵抗値または可変容量素子の容量値に変化に伴い、電力分配回路の入力インピーダンスの変化も大きくなり、主信号に悪影響を与えるという問題がある。
【0012】
また、前記特許文献2の技術においては、検波器側に位相をずらして合成するための様々な回路構成を設けたりすることが必要であり、回路規模が大きくなり、スペースのみならずコスト面での問題がある。
【0013】
(本発明の目的)
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、回路規模が大きくなることなく、検波回路の検波可能範囲を効果的に拡大することが可能な検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決するため、本発明による検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0015】
(1)本発明による検波回路は、マイクロ波帯の主信号を伝搬する主ライン上に該主信号の一部を分離するために挿入した方向性結合器と、該方向性結合器によって一部分離した信号を検波する検波器とを少なくとも備えて、前記主信号の検波を行う検波回路であって、前記方向性結合器のアイソレーションポート側に、制御信号によって抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子を負荷として接続していることを特徴とする。
【0016】
(2)本発明による検波方法は、マイクロ波帯の主信号を伝搬する主ライン上に該主信号の一部を分離するために挿入した方向性結合器と、該方向性結合器によって一部分離した信号を検波する検波器と、前記方向性結合器のアイソレーションポート側に負荷として接続し、制御信号によって抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子とを少なくとも備えて、前記主信号の検波を行う検波方法であって、前記方向性結合器へ入力される前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた高電力閾値よりも高い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を高くし、一方、前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた低電力閾値よりも低い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を低くすることを特徴とする。
【0017】
(3)本発明によるマイクロ波無線通信装置は、マイクロ波帯の無線信号を送受信するマイクロ波無線通信装置において、信号の検波を行う検波回路として、少なくとも(1)項に記載の検波回路を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、検波回路の方向性結合器のアイソレーションポートに負荷として接続した可変抵抗素子例えばPINダイオード(p-intrinsic-n Diode)の抵抗値を制御信号により変化させることによって、方向性結合器の結合量を調節して、検波器へ入力される信号電力の分配比率を変化させることを可能とすることにより、検波可能範囲を拡大することができる。
【0020】
而して、可変抵抗素子例えばPINダイオードのみという少ない部品追加を行うだけで、従来の技術における課題を解決し、方向性結合器の結合量を変化させた場合であっても、主信号ラインのインピーダンス変動の影響が少なく、かつ、省スペース化および低コスト化が可能な対策を施した検波回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による検波回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【図2】図1の検波回路に示す側結合方向性結合器の動作を説明するための回路図である。
【図3】図1の検波回路において側結合型方向性結合器のアイソレーションポートに負荷として接続したPINダイオードに流れる制御電流対結合量の関係を示す特性図である。
【図4】図1の検波回路においてPINダイオードのオン時の制御電流とオフ時の制御電流とのそれぞれにおける出力電圧と検波電圧との関係を示す特性図である。
【図5】従来のマイクロ波無線通信装置の検波回路の回路構成を示す回路図である。
【図6】図5に示す従来の検波回路における検波器の要求検波特性を示す特性図である。
【図7】図5に示す従来の検波回路における検波器の理想的な検波特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。
【0023】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、マイクロ波無線通信装置の特に送信電力制御回路として使用される検波回路において、方向性結合器のアイソレーションポートに負荷として追加した可変抵抗素子例えばPINダイオード(p-intrinsic-n Diode)の抵抗値を制御信号により変化させることにより、方向性結合器の結合量を変化させ、それにより、入力電力のモニタ用として検波器へ供給する電力を制御して、検波可能範囲を拡大することができる検波回路、検波方法およびマイクロ波無線通信装置を実現することを主要な特徴としている。
【0024】
より具体的には、本発明の検波回路は、方向性結合器として、マイクロストリップ線路の側結合型方向性結合器を用い、該側結合型方向性結合器のアイソレーションポートに可変抵抗素子例えばPINダイオードを負荷として追加した電力分配回路を使用して、制御信号により可変抵抗素子例えばPINダイオードの高周波抵抗の抵抗値を変化させることにより、側結合型方向性結合器の結合度を複数の段階に変化させて電力分配比率の切り替えを行う。この結果、主信号ラインに対しては、少ないインピーダンス変化にて、電力分配比率を切り替えることができる。
【0025】
また、側結合方向性結合器と可変抵抗素子例えばPINダイオードとによって可変電力分配器を構成することができることから、省スペース・低コストの検波回路を実現することができる。かくのごとく、本発明においては、主信号ラインのインピーダンス変動への影響が少なく、かつ、追加部品も少ない回路構成を採用して、検波器へモニタ電力を取り出すための側結合型方向性結合器の結合量を、入力電力レベルに応じて適切に変化させることができる。
【0026】
(実施形態の構成例)
次に、本発明による検波回路の具体的な構成例について、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明による検波回路の回路構成の一例を示す回路図である。図1に示す検波回路は、図5に示した従来の検波回路に対して、側結合型方向性結合器の負荷側に、可変抵抗素子としてPINダイオードを追加した構成となっている。すなわち、図1に示す検波回路は、入力信号を増幅する増幅器15、主信号ライン上の入力信号の一部をモニタライン上に分離する側結合型方向性結合器16、可変抵抗素子となるPINダイオード17、モニタライン上に分離した信号を評価して主信号ライン上の入力信号の検波を行う検波器18を少なくとも含んで構成されている。
【0027】
PINダイオード17は、可変抵抗素子の一例であり、検波器18の出力を監視している制御部からの制御信号により、高周波抵抗値を適宜変化させることができる。ここで、主信号ライン上の入力信号の一部を分離する方向性結合器として備えた側結合型方向性結合器16の主信号ライン上の入力側の端子を入力ポート11、主信号ライン上の出力側の端子を出力ポート14、モニタライン上の検波器28へ信号を引き込むためのカップリング用端子をカップリングポート12、モニタライン上の負荷側のアイソレーション用端子をアイソレーションポート13と称している。
【0028】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1の検波回路の動作の一例について説明する。まず、アイソレーションポート13側に負荷としてPINダイオード17を追加した側結合型方向性結合器16の動作について、図2を用いて説明する。図2は、図1の検波回路に示す側結合型方向性結合器16の動作を説明するための回路図である。
【0029】
図2に示す側結合型方向性結合器16のカップリングポート12と入力ポート11との間の結合度Cは、側結合型方向性結合器16の電気長θ=π/4の時、次の式(1)で与えられる。
C=20×log(V2/V1)
=20×log{Z0e/(Z2×Z3+Z0e
−Z0o/(Z2×Z3+Z0o)} …(1)
【0030】
ここで、Z2は、カップリングポート12の負荷インピーダンス、Z3は、アイソレーションポート13の負荷インピーダンスである。また、Z0eは、側結合型方向性結合器16の偶モードインピーダンスであり、Z0oは、側結合型方向性結合器16の奇モードインピーダンスであり、両者は側結合型方向性結合器16の形状によって決まるインピーダンスである。
【0031】
例えば、Z0e=69.37Ω、Z0o=36.04Ω、Z2=50Ω、Z3=50Ωの場合の結合度Cは、−20[dB]となる。
【0032】
また、入力ポート11の入力インピーダンスZinは、側結合型方向性結合器16の電気長θ=π/4の時、次の式(2)で与えられる。
Zin={Z1×Z4(Z0o+Z0e)+2×Z0o×Z0e
/(2×Z1×Z4+Z4×Z0o×Z0e) …(2)
【0033】
ここで、Z1は、入力ポート11の負荷インピーダンス、Z4は、出力ポート14の負荷インピーダンスである。また、前述のように、Z0eは、側結合型方向性結合器16の偶モードインピーダンスであり、Z0oは、側結合型方向性結合器16の奇モードインピーダンスであり、両者は側結合型方向性結合器16の形状によって決まるインピーダンスである。
【0034】
式(2)から分かるように、入力インピーダンスZinは、アイソレーションポート13の負荷の影響は受けない。
【0035】
次に、PINダイオード17の高周波抵抗について説明する。PINダイオード17の電圧電流特性については、電流をI、電圧をVとすると、次の式(3)の関係が成立する。
I=I0{exp(qV/kT)−1}
≒I0{exp(qV/kT)} …(3)
【0036】
ここで、I0は、逆方向飽和電流であり、kは、ボルツマン定数であり、Tは、絶対温度、qは、電子電荷量である。
【0037】
したがって、PINダイオード17にかかる電圧Vは、近似的に、
V=(kT/q)ln(I/I0)
で与えられるので、PINダイオード17の高周波抵抗Rは、次の式(4)で与えられることになる。
R=dV/dI
=(kT/q)×(1/I) …(4)
【0038】
図1に示すように、側結合型方向性結合器16のアイソレーションポート13にPINダイオード17を追加した場合、アイソレーションポート13側の負荷インピーダンスZ3は、抵抗Z33とPINダイオード17の高周波抵抗Rとの和であるので、式(4)を用いて、次の式(5)で与えられる。
Z3=Z33+R
=Z33+(kT/q)×(1/I) …(5)
【0039】
例えば、式(5)にて求めた負荷インピーダンスZ3を式(1)に代入して、前述の数値例のZ0e=69.37Ω、Z0o=36.04Ω、Z2=50Ωの場合における、側結合型方向性結合器16のカップリングポート12と入力ポート11との間の結合度Cを計算することにより、PINダイオード17に流れる制御電流I対結合量Cの関係を求めることができる。式(5)の計算式に基づく計算結果を図3に示す。図3は、図1の検波回路において側結合型方向性結合器16のアイソレーションポート13に負荷として接続したPINダイオード17に流れる制御電流I対結合量Cの関係を示す特性図である。
【0040】
図3の特性図に示すように、PINダイオード17がオン時に流れる制御電流Ionとオフ時に流れる制御電流Ioffとを、それぞれ、
Ion=3.5mA
Ioff=25μA
とした時の結合量Con、Coffは、それぞれ、
Con=−10dB
Coff=−25dB
であることが分かる。
【0041】
次に、Ion時とIoff時とにおける検波対象信号の出力電力Poutと検波電圧Vdetとの関係を図4に示す。図4は、図1の検波回路においてPINダイオード17のオン時の制御電流Ionとオフ時の制御電流Ioffとのそれぞれにおける出力電力Poutと検波電圧Vdetとの関係を示す特性図である。
【0042】
図5に示した従来の検波回路の場合は、図6に示したように、検波器28の検波可能範囲が+30dBm〜−5dBmであった。しかし、図1に示す本実施形態の検波回路においては、制御信号により、PINダイオード17に流れる制御電流を変化させて、検波器28の検波可能範囲をさらに拡大可能としている。すなわち、図3に示したように、増幅器15からの信号電力レベルがあらかじめ定めた高電力閾値よりも高い高出力の場合には、PINダイオード17の制御電流をオフ時の制御電流Ioff=25μAとする。一方、増幅器15からの信号電力レベルがあらかじめ定めた低電力閾値よりも低い低出力の場合には、PINダイオード17のオン時の制御電流Ion=3.5mAとする。
【0043】
言い換えれば、PINダイオード17は、前述のように、制御信号により高周波抵抗の抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子であり、増幅器15からの信号電力レベルが前記高電力閾値よりも高い場合は、制御信号として、PINダイオード17に流す制御電流をIoff=25μAと少なくすることにより、PINダイオード17の抵抗値を高くし、一方、増幅器15からの信号電力レベルが前記低電力閾値よりも低い場合は、PINダイオード17に流す制御電流をIon=3.5mAと多くすることにより、PINダイオード17の抵抗値を低く設定する。
【0044】
その結果として、図4に示すように、検波可能範囲を+30dBm〜−20dBmへと、従来の検波回路に比して大幅に拡大することができる。
【0045】
また、式(2)に示したように、図1に示す本実施形態の検波回路においては、アイソレーションポート13側の負荷の変動は、主信号ラインにおける入力インピーダンスZinに対しては影響を及ぼさないことから、主信号にとって少ないインピーダンス変化となる環境下において、側結合型方向性結合器16の電力分配比率を切り替えることができる。
【0046】
なお、図1に示す検波回路においては、側結合型方向性結合器16のアイソレーションポート13に接続する可変抵抗素子として、PINダイオード17を用いた場合を例示したが、本発明は、かかる場合に限るものではない。例えば、FET(Field Effect Transistor)やバイポーラトランジシタを用いるようにしても良いし、あるいは、可変抵抗器を用いるようにしても良いし、制御信号によって抵抗値を可変に制御することが可能なものであれば如何なる種類の素子を用いても構わない。
【0047】
以上のような構成からなる検波回路は、マイクロ波帯の無線信号を送受信するマイクロ波無線通信装置における検波回路として、好適に適用することができる。
【0048】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果が得られる。
【0049】
すなわち、本実施形態によれば、検波回路の側結合型方向性結合器16のアイソレーションポート13に追加した可変抵抗素子例えばPINダイオード17の負荷を制御信号により変化させることによって、側結合型方向性結合器16の結合量を調節して、検波器18へ入力される信号電力の分配比率を変化させることを可能にすることにより、検波可能範囲を拡大することができる。
【0050】
而して、可変抵抗素子例えばPINダイオード17のみという少ない部品追加を行うだけで、従来の技術の課題を解決し、側結合型方向性結合器16の結合量を変化させた場合であっても、主信号ラインのインピーダンス変動の影響が少なく、かつ、省スペース化・低コスト化が可能な対策を施した検波回路を実現することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0052】
11 入力ポート
12 カップリングポート
13 アイソレーションポート
14 出力ポート
15 増幅器
16 側結合方向性結合器
17 PINダイオード
18 検波器
21 入力ポート
22 カップリングポート
23 アイソレーションポート
24 出力ポート
25 増幅器
26 側結合型方向性結合器
28 検波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波帯の主信号を伝搬する主ライン上に該主信号の一部を分離するために挿入した方向性結合器と、該方向性結合器によって一部分離した信号を検波する検波器とを少なくとも備えて、前記主信号の検波を行う検波回路であって、前記方向性結合器のアイソレーションポート側に、制御信号によって抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子を負荷として接続していることを特徴とする検波回路。
【請求項2】
前記方向性結合器へ入力される前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた高電力閾値よりも高い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を高くし、一方、前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた低電力閾値よりも低い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を低くすることを特徴とする請求項1に記載の検波回路。
【請求項3】
前記可変抵抗素子として、PINダイオード(p-intrinsic-n Diode)、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジシタ、または、可変抵抗器のいずれかを用いていることを特徴とする請求項1または2に記載の検波回路。
【請求項4】
マイクロ波帯の主信号を伝搬する主ライン上に該主信号の一部を分離するために挿入した方向性結合器と、該方向性結合器によって一部分離した信号を検波する検波器と、前記方向性結合器のアイソレーションポート側に負荷として接続し、制御信号によって抵抗値を変更することが可能な可変抵抗素子とを少なくとも備えて、前記主信号の検波を行う検波方法であって、前記方向性結合器へ入力される前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた高電力閾値よりも高い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を高くし、一方、前記主信号の電力レベルがあらかじめ定めた低電力閾値よりも低い場合には、前記可変抵抗素子の抵抗値を低くすることを特徴とする検波方法。
【請求項5】
前記可変抵抗素子として、PINダイオード(p-intrinsic-n Diode)、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジシタ、または、可変抵抗器のいずれかを用いていることを特徴とする請求項4に記載の検波方法。
【請求項6】
マイクロ波帯の無線信号を送受信するマイクロ波無線通信装置において、信号の検波を行う検波回路として、請求項1ないし3のいずれかの検波回路を用いることを特徴とするマイクロ波無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213108(P2012−213108A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78443(P2011−78443)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】