説明

検知用組成物およびそれを用いた食品包装材料評価用モデル

【課題】所定の形状・性質を有する食品を包装したときの、該包装体内部への、酸素などの所定の被検出物質の侵入の有無を容易に検知し得る、食品包装材料評価用モデルを形成し得る検知用組成物、およびそれを用いた食品包装材料評価用モデルを提供すること。
【解決手段】被検出物質(A)と接触することによって着色し得る着色性水溶液(I)と、無機物粒子(II)とを含む検知用組成物、および包装材料を用いてこの検知用組成物を密封包装することにより得られる食品包装材料評価用モデル。この食品包装材料評価用モデルを用いると、包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知すること、およびそれにより包装材料を評価することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検知用組成物およびそれを用いた食品包装材料評価用モデル(食品包装材料評価用模型)に関する。より詳細には、被検出物質(A)と接触すると着色する着色性水溶液(I)および無機物粒子(II)を含む、被検出物質(A)の検知用組成物、ならびにそれを用いた食品包装材料評価用モデルに関する。本発明はさらに、上記検知用組成物を用いた、包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を包装材料で包装し、保存した場合、包装体の外部から侵入する物質によってしばしば食品の劣化が促進される。外部から侵入する物質による食品の劣化を防ぐために、従来より、物質透過性、特にガス透過性の低い包装材料で食品を包装する等の方法が採用されている。このような、外部から侵入し食品の劣化を促進する物質としては酸素が代表的であり、この場合、食品を酸素透過性の低い包装材料で包装することに加え、包装容器内などに酸素吸収剤を封入するなどの方法も採用されてきた。
【0003】
このように、食品に対し外部からの物質の侵入を防止する、あるいは該物質を吸収するなどの方法を採用した場合、その方法の有効性を判定するためには、外部から侵入した物質を検知し、食品への影響を判定する手段が必要となる。機械的に測定する方法が正確であるが、より簡便には、指示薬の呈色反応を利用する方法が使用される。特に酸素に対しては従来から種々の検知方法が提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、メチレンブルーと、このメチレンブルーを水の存在下で略無色に変えうる量の還元剤とを含み、酸素を感知して呈色する感酸素組成物が記載されている。また、特許文献2にはメチレンブルー、ハイドロサルファイト(Na)、寒天、および水からなる組成物と、該組成物を用いて容器内に侵入する酸素を検知する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、酸化還元指示薬を各種支持体に含有せしめた酸素インジケーターが記載されている。
【0005】
このような酸素検知手段を、例えば、各種食品の販売時に該食品の包装体内部に封入することにより、酸素の侵入が検知される。しかし、例えば肉、ハムなどといったある程度の大きさと形状を有する食品を包装することを想定し、このような状態において、包装材料自体のバリア性、あるいは該包装材料でなる袋や容器のバリア性能を、該食品の取り扱いに即した条件下で検定しようとすると、これらの手段ではいずれも不充分である場合が多い。
【0006】
例えば、メチレンブルーと還元剤とを含む水溶液を所定の形状の包装材料、例えば容器または袋に充填し、メチレンブルーの変色によって酸素の侵入を検定する方法においては、該容器または袋の内部で水溶液が流動、対流してしまうので、全体として酸素が侵入したかどうかは判定できても、該容器または袋のどの部分から酸素が侵入したかは判定できない。特に、食品の形状にあわせて包装材料が変形されている場合や食品の処理条件に合わせて熱処理などの外的処理を加えた場合に、包装材料のバリア性などを判定することは困難である。
【0007】
特許文献1に記載されているように、メチレンブルーと還元剤とを含む溶液を紙やフィルムなどの支持体に含浸させ、あるいは紙上に印刷させれば、水溶液が流動あるいは対流することは防げる。しかし、これらはいずれもフィルム状の形状であるため、種々の食品の形態、あるいは必要とされる食品の処理に対応した条件で包装材料のバリア性能を試験することはできない。例えば、包装体内部に酸素が侵入したことを検知することはできても、包装材料全体から酸素が侵入したのか、包装材料に存在していたピンホールから酸素が侵入したのかを検知することができない。
【特許文献1】特開昭54−48294号公報
【特許文献2】特開平8−118551号公報
【特許文献3】特開2005−91008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされ、その目的は、所定の形状・性質を有する食品、特にある程度の厚みを有し、所定の形状を有する食品を包装したときの、該包装体内部への、酸素などの所定の被検出物質の侵入の有無を容易に検知し得る、食品包装材料評価用モデルを形成し得る検知用組成物、およびそれを用いた食品包装材料評価用モデルを提供することにある。本発明の他の目的は、上記食品包装体が必要とする処理(例えば、殺菌などを目的とする加熱処理)を行った場合にも、上記被検出物質の侵入を容易に検知し得る食品包装材料評価用モデルを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記検知用組成物を用いた、包装体内部への被検出物質の侵入を検知する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記食品包装材料評価用モデルに利用し得る検知用組成物の検討を行った。食品が有する所定の形状を有する材料であり、かつ酸素などの所定の物質を検出し得る材料でなる食品モデル、およびこれが包装された形態の食品包装材料評価用モデルを想定し、これに使用可能な検知用組成物の検討を行った。
【0010】
まず、上記特許文献1に記載のように、紙を支持体とし、メチレンブルーと還元剤とを含む検知液を含浸させた材料を検討したが、これはフィルム状であり、かつ不透明であるため、上記検知用組成物としては不適切である。例えば、食品包装材料評価用モデル内部のどの程度の程度の深さまで酸素が侵入したかを判定するのが困難である。
【0011】
特許文献1には、支持体としてポリヒドロキシエチルメタアクリレートフィルムが記載されている。これを用いて食品包装材料評価用モデルを作成しようとすると、検知液を充分に含浸させるのが困難である。
【0012】
特許文献2に記載の寒天、メチレンブルー、水などからなる組成物の場合も所定の形状を保持することの可能なカップなどに充填して酸素侵入を検知するには問題ないが、柔軟な包装材料で包装された食品のモデルとして用いようとすると形状を維持しにくい。そのため、柔軟な包装材料を食品モデルの外表面に密着させて包装するのには適さない。さらに所定の形状を形成できたとしても熱処理した場合には、液状化して流動するめ、例えば加熱滅菌などの条件に晒したときに包装材料の性能を試験するためには適していない。
【0013】
特許文献3にも種々の検知用組成物が例示されているが、いずれも不透明でフィルム状の物体に検知液を含浸させるものであるか、充分な硬さや耐熱性を有していないゲルに検知液を含有させるものであり、上記と同様の問題がある。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、酸素などの被検出物質(A)と接触すると着色し得る着色性水溶液(I)と、無機物粒子(II)とを含む検知用組成物を用いると、上記食品包装材料評価用モデルを構築可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の検知用組成物は、被検出物質(A)との接触により着色し得る着色性水溶液(I)と、無機物粒子(II)とを含む。
【0016】
ある実施態様によれば、上記無機物粒子は粒径10μm〜10mmの粒子である。
【0017】
ある実施態様によれば、上記無機物粒子は、有機高分子ゲル、無機物ゲルおよびガラスからなる群より選択される少なくとも一種でなる。
【0018】
ある実施態様によれば、上記無機物粒子は、多孔質無機物粒子である。
【0019】
ある実施態様によれば、上記無機物粒子はシリカゲルである。
【0020】
ある実施態様によれば、上記着色性水溶液(I)は、被検出物質(A)と接触することにより着色する呈色性試薬(B)と調整物質(C)とを含有する水溶液であり、該調整物質(C)は、該呈色性試薬(B)を、被検出物質(A)と接触するまで無色の状態に保持し得る。
【0021】
ある実施態様によれば、上記被検出物質(A)は酸素である。
【0022】
ある実施態様によれば、上記検出用呈色性試薬(B)はメチレンブルーである。
【0023】
ある実施態様によれば、前記調整物質(C)は塩化第一錫であり、検知用組成物は、さらに塩酸を含む。
【0024】
ある実施態様によれば、上記検知用組成物は、さらに平衡水蒸気圧を調整するための調湿物質(D)を含む。
【0025】
本発明の食品包装材料評価用モデルは、上記いずれかに記載の検知用組成物を、包装材料を用いて密封包装することにより得られる。
【0026】
本発明の食品包装材料評価用モデルは、上記いずれかに記載の検知用組成物を不活性ガス置換した後、容器または袋の形態の包装材料内に充填し、密封することによって得られる。
【0027】
本発明の食品包装材料評価用モデルは、上記いずれかに記載の検知用組成物を容器または袋の形態の包装材料内に充填し、排気した後に密封して得られる。
【0028】
本発明の食品包装材料評価用モデルは、上記いずれかに記載の検知用組成物を容器または袋の形態の包装材料内に充填し、密封後紫外線滅菌または加熱殺菌して得られる。
【0029】
本発明の包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法は、上記検知用組成物を、包装材料を用いて密封包装する工程;得られた包装体を、被検出物質(A)を含む気体あるいは液体と接触させる工程;および該包装体内部の該組成物の着色により該被検出物質(A)を検出し、そのことにより該包装体内部への該被検出物質(A)の侵入を検知する工程を包含する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の検知用組成物は、酸素などの所定の被検出物質(A)を効果的に検知することが可能であり、この組成物を所定の包装材料でなる容器、袋などに入れ、密封して包装体とすることにより、該被検出物質(A)の侵入を効果的に検出することの可能な食品包装材料評価用モデルとされる。この検知用組成物に含有される無機物粒子として、適切な大きさ、固さ、および透明度を有する材料を選択すれば全体としての形状が保持でき、かつ透明性を有するため、被検出物質(A)を容易に検知することが可能となる。この食品包装材料評価用モデルを使用すると、通常の保存条件下、および包装された食品が処理される条件下、例えば滅菌条件下における被検出物質(A)の侵入を検知すること、ならびにそれによって包装材料を評価することが可能である。さらに上記検知用組成物を用いて、包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の検知用組成物は、被検出物質(A)との接触することによって着色し得る着色性水溶液(I)と、無機物粒子(II)とを含み、必要に応じて調湿物質(D)、添加剤などを含有する。以下、これらについて、さらにこの組成物を用いた食品包装材料評価用モデル、ならびに包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法について、順次説明する。
【0032】
(1)被検出物質(A)および着色性水溶液(I)
本発明の検知用組成物により検出可能な被検出物質(A)は、検出の対象となる物質、通常、食品を劣化させ得る物質であり、代表的なものとして酸素および二酸化炭素が挙げられる。この他に、塩化水素ガスなどの酸性ガス、アンモニアガスなどの塩基性ガスがある。特に酸素は食品を劣化させる可能性のある代表的な物質である。
【0033】
着色性水溶液(I)としては、通常、被検出物質(A)と接触させるまでは完全に透明、あるいはほぼ透明であり、かつ被検出物質(A)と接触させると着色する性質を有する水溶液が利用される。上記透明度は、所定の透明性を有する無機物粒子(後述)と組み合わせて、ある程度の厚みを有する食品モデルとしたときに、これを見通せる程度に透明であればよい。このような着色性水溶液(I)は、通常、被検出物質(A)と接触することにより着色する呈色性試薬(B)、さらに必要に応じて調整物質(C)などを含有する水溶液である。上記調整物質(C)は、呈色性試薬(B)を、被検出物質(A)と接触するまで無色の状態に保持し得る化合物である。
【0034】
あるいは、上記着色性水溶液(I)は、当初から所定の色を有しており、被検出物質(A)と接触させることにより色相が変化し、あるいはその色の濃度が変化し、かつそれらの変化が明瞭に観察され得るものであってもよい。
【0035】
被検出物質(A)が酸素の場合、検出用呈色性試薬(B)として、代表的には酸化還元型指示薬が用いられる。酸化還元指示薬としては、メチレンブルー、メチルレッド、アントシアニン、アントラキノン、β−カロテン、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、フェノールフタレインなどが例示でき、着色が明瞭であるなどの点からメチレンブルーが好ましく用いられる。このときの調整物質(C)としては還元剤が使用される。還元剤としては、第一錫塩、例えば塩化第一錫(SnCl)、ハイドロサルファイト塩(S2−)、アスコルビン酸などが例示できる。塩化第一錫を還元剤に用いる場合、塩酸を併用してもよい。
【0036】
被検出物質(A)が二酸化炭素の場合には、検出用呈色性試薬(B)としてブロムチモールブルー(BTB指示薬)またはメタクレゾールパープルが、被検出物質(A)がアンモニアの場合には、検出用呈色性試薬(B)としてネスラー試薬が使用される。被検出物質(A)が酸性あるいは塩基性ガス等の場合は、検出用呈色性試薬(B)としてpH変化により着色する指示薬、例えば、ブロムチモールブルー(BTB指示薬)、メチルオレンジ、リトマス、フェノールフタレインなどが、調整物質(C)としてpH調整剤、例えば、塩基性または酸性の水溶液が使用される。
【0037】
上記検出用呈色性試薬(B)および調整物質(C)の含有量は特に限定されず、被検出物質(A)の種類、得られる食品包装材料評価用モデルの使用形態などに応じて適宜決定される。例えば、被検出物質(A)が酸素である場合に、検出用呈色性試薬(B)および調整物質(C)として、各々酸化還元型指示薬および還元剤を含有する場合において、大型の食品包装材料評価用モデルとして使用され、厳密な不活性ガス置換下に使用される場合は、還元剤の量は酸化還元型指示薬を還元型に変えるための最低限の必要量程度であってもよい。使用量が少なく、検知用組成物の各材料を包装用の容器や袋に空気下で充填する場合には、還元剤をその操作の状況に応じて過剰に使用してもよい。
【0038】
具体的な検出用呈色性試薬(B)の量は、侵入してくる対象となる被検出物質(A)の侵入量などに応じて適宜選択されるが、通常、着色性水溶液(I)1kg中に1mg〜10g程度、好ましくは10mg〜1g程度の量で含有される。被検出物質(A)が酸素であり、酸化還元型指示薬と還元剤とを使用する場合に、還元剤の量は、酸化還元型指示薬をほぼ無色にできる量あればよいが、取り扱い条件に応じて適宜過剰量使用される。例えば、検知用組成物を包装用の容器や袋に充填するまでに空気下で取り扱う必要があるような場合、充填作業中に呈色が開始しないよう、過剰量に用いることが実用上有効である。還元剤の量は例えば酸化還元型指示薬1モルに対して0.1〜10当量程度の量で使用される。
【0039】
(2)無機物粒子(II)
本発明に用いられる無機物粒子(II)は、不活性であり着色性水溶液(I)を共存させた場合に化学変化することがなく、該着色性水溶液(I)と混合したときに被検出物質(A)をある程度拡散させることが可能な材料およびサイズを有していればよい。
【0040】
無機物粒子(II)の材質に特に制限はないが、着色を容易に観察する観点からは、それ自身が透明であるか、あるいは水溶液で濡れた場合にほぼ透明になるものが好ましい。無機物粒子の材質としては、無機物ゲル(例えば、シリカゲル)、ガラスビーズなどが採用できる。ガラスビーズのような、それ自身が全くあるいはほとんど検知性水溶液を包含しない素材であっても、包装したときに全体としての形状を維持し、無機物粒子の隙間の着色性水溶液(I)が着色することが可能であれば利用可能である。より食品に近い条件を得るためには、多孔質の無機物ゲルなど、それ自身の内部に、ある程度の量の液体を保持できる(含浸可能な)素材であることが好ましい。また、無機物粒子は水溶液と比較的親和性がよくて濡らしやすいものが好ましい。このような条件を満たし、目的に応じて種々の粒径、多孔質の孔径や孔容積などのものを経済的に得やすい点において、シリカゲルが特に好適である。
【0041】
多孔質の無機物粒子を用いる場合、孔容積があまり小さいと食品に近い検知性が得にくい場合があるので、好ましくは自重の0.5倍以上、より好ましくは1倍以上の水を保持しうるものが使用される。一方あまり孔容積が大きいと無機物粒子が十分な固さを維持できなかったりするため、好ましくは自重の100倍以下、より好ましくは10倍以下の水を保持できる粒子が使用される。
【0042】
さらに、滅菌条件下などに曝した場合などの包装材料のバリア性能などを検定するためには、無機物粒子(II)は過剰量の着色性水溶液(I)が共存する状態で熱処理しても溶解、変形しないものがよい。そのためには、無機物粒子(II)に過剰量の水を共存させて加熱したときに、その形状を保持し得ることが望ましい。具体的には、無機物粒子(II)100質量部に対し、100質量部以上、さらに好ましくは500質量部以上の水の存在下で加熱したときに、該無機物粒子が溶解、変形しないことが好ましい。加熱条件としては、通常の熱水滅菌を想定した場合には85℃、15分以上、沸騰条件を想定した場合には100℃、15分以上、さらにレトルト滅菌を想定した場合には120℃、30分以上加熱しても溶解、変形しないことが好ましい。
【0043】
無機物粒子(II)の粒子径に特に制限はなく、想定される食品の大きさなどに応じて適宜選択されるが、あまり粒子径が小さいと上記粒子間の拡散が自由に行われなくなって検知速度が低下する場合があり、逆にあまり大きいと食品モデルとしての形状を維持しにくくなる。このような観点から、粒子径は10μm以上、より好ましくは50μm以上であることが好ましく、10mm以下、より好ましくは5mm以下であることが好ましい。ここでいう粒子径とは無機物粒子が水溶液を吸収すると粒子径が変化するような場合には、使用状況下、即ち使用条件の量比で水溶液と共存する状態における粒子直径を指す。
【0044】
また、粒子形状も特に制限はなく、球状、ペレット状、不定形状(ブロックが破砕された状態などの形状)など種々の形状のものが使用できる。包装材料中に充填したときに包装材料に損傷を与えないために、特に固い粒子の場合は鋭いエッジを有しない形状が好ましく、略球状の形状が好ましい。
【0045】
(3)調湿物質(D)および添加剤
本発明の検知用組成物に必要に応じて含有される調湿物質(D)は、水蒸気圧調整剤として機能し、検知用組成物本来の効果を損なわない範囲で組成物中に含有される。つまり、このような調湿物質(D)を添加することにより、その種類と量(濃度)に応じて検知用組成物の各成分を混合したときの平衡状態における水蒸気圧を調整することが可能となる。例えば、バリア性包装材料が湿度によりそのバリア能力が影響を受ける場合に、該包装材料の試験を行ないたい場合などにおいて、水分を保有する所定の食品を包装した場合に想定される水蒸気圧の条件を再現することができる。
【0046】
このような水蒸気圧調整剤となり得る化合物としては、次の化合物が例示される:アルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウムなど);アルカリ土類金属塩(水酸化カルシウム、塩化マグネシウムなど上記と同様の化合物のカルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる);アンモニウム塩(水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウムなど上記と同様の化合物のアンモニウム塩が挙げられる);尿素;しょ糖、ブドウ糖などの糖類など。
【0047】
本発明の検知用組成物に含有され得る添加剤としては、該組成物の各成分を混合し、保存したときの微生物の繁殖を抑制するための防腐剤やアルコール;光による劣化を防止するための安定剤;その他食品に添加される種々の食品添加剤が挙げられる。このような添加剤は、本来の効果を損なわない範囲で含有される。
【0048】
(4)検知用組成物、それを用いた食品包装材料評価用モデル、ならびに包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法
本発明の検知用組成物は、上述のように、着色性水溶液(I)、無機物粒子(II)、および必要に応じて調湿物質(D)、添加剤などを含有する。
【0049】
本発明の組成物における着色性水溶液(I)および無機物粒子(II)の含有割合は特に限定されず、用いられる材料の種類、使用目的などに応じて適宜決定される。一般には、着色性水溶液(I)の量は、無機物粒子の細孔や無機物粒子間の空隙を満たすのに必要な量であればよい。通常、十分な酸素検知感度や拡散性を確保する観点から、無機物粒子を構成する材料100質量部に対し、着色性水溶液(I)を50質量部以上、好ましくは100質量部以上の割合で含むことが好ましい。ただし着色性水溶液があまり多すぎると無機物粒子が保持しきれない場合がある。そのため、着色性水溶液(I)の量は、通常、10000質量部以下、好ましくは1000質量部以下である。
【0050】
本発明の検知用組成物の各成分を混合する場合に、その方法は特に限定されない。基本的には、着色性水溶液(I)、無機物粒子(II)、および必要に応じて調湿物質(D)、添加剤などを混合すればよい。
【0051】
本発明の食品包装材料評価用モデルに用いられる包装材料の素材および形態は特に限定されない。着色性水溶液(I)の着色状況を容易に確認し得るという点で透明樹脂でなる包装材料が好適に用いられる。しかし、後述のように金属製の包装材料であってもよい。包装材料の形態としては、フィルム、シート;該フィルムまたはシートでなる袋;およびカップ、ボトルなどの容器が挙げられる。
【0052】
このような包装材料としては、通常包装材料として用いられる樹脂製の単層、あるいは多層の構造体が使用される。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)などの樹脂でなる単層フィルム;これらを組み合わせた多層フィルム、あるいはこれらのうちのいずれかとガスバリア性に優れた樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなど)でなるフィルムとを組み合わせた多層フィルムが好適に用いられる。特にエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどのフィルムを構成成分とする多層構造体から構成される包装材料が、食品包装材料評価用モデルに用いられる包装材料、即ち試験対象の包装材料として汎用される。柔軟なフィルムから構成される包装材料を用いた場合には、包装体とした後、自由に食品形状を形成することができる点において好適である。
【0053】
包装材料としては、上記のような樹脂からなる単層または多層構造体に、アルミなどの金属層を、あるいは金属酸化物層を蒸着あるいは貼り合わせによって設けた構造体も使用される。
【0054】
本発明の食品包装材料評価用モデルは、本発明の組成物の各成分を混合し、これを包装材料により密封包装することにより調製される。例えば、上記混合物を容器あるいは袋に入れ、好ましくは排気、より好ましくは減圧排気した後、密封することにより、食品包装材料評価用モデルが得られる。密封後、外部から力を加えて適切な形状に成形することが好ましい。
【0055】
上記のように減圧としてから封入することにより、形状が維持しやすくなり、かつ検知用組成物の各成分でなる混合物を袋や容器などの形態の包装材料に導入する際に酸素の侵入があったとしてもその影響が極小とすることが可能であり、かつ検知用組成物と包装材料の密着性の確保にも有効である。
【0056】
あるいはまた、上記組成物の各材料を混合して包装する前に、あらかじめ不活性ガス置換しておくことが好ましい。例えば、検知用組成物の各成分を混合した後に不活性ガス置換を行ってもよく、あるいは、着色性水溶液(I)に不活性ガスを吹き込み、その後着色性水溶液(I)と無機物粒子(II)を混合する操作も不活性ガス雰囲気下で行えばよい。このような不活性ガス置換により、検知用組成物の各成分に含まれる微量の被検出物質(A)(例えば、溶存酸素ガス)により検出用呈色性試薬(B)が着色することが回避され、鋭敏な試験を行うことが可能となる。
【0057】
上記検知用組成物を密封後に、必要に応じて、加熱殺菌、あるいは紫外線殺菌を行うことが可能である。このような操作を施すことで、検知用組成物への微生物の影響を現ずることが可能であり、かつこのような殺菌操作自体により包装材料へどのような影響が現れるかを検知することも可能となる。このような加熱殺菌、あるいは紫外線殺菌を行う場合には、無機物粒子(II)としては、熱や紫外線に対して安定なものを選択するのが好適である。
【0058】
上記のようにして得られた食品包装材料評価用モデルは、所定の食品を所定の包装材料により包装して得られる包装体(例えば、袋や容器に入れて密封して得られる包装体)のモデルとなり得る。従って、これを所定の条件下に置いた場合に、被検出物質(A)が該包装材料を通して、または包装材料の接着面の隙間やピンホールなどから侵入するのを検知することができる。即ち、被検出物質(A)と検知用組成物中の着色性水溶液(I)との接触により、着色性水溶液(I)が着色することにより、被検出物質(A)の侵入が目視により確認される。
【0059】
食品包装材料評価用モデルを用いると、例えば、空気中に放置して、酸素の侵入度合いを調べること、あるいは所定の雰囲気下において、塩化水素ガスなどの特定のガスの侵入度合いを調べることが可能である。さらにまた、熱水などの所定の液体中に浸漬した際の包装材料の劣化なども調べることが可能である。
【0060】
着色の目視観察のためには、検知用組成物および包装材料として、透明性の高い材料を選択するのが好適である。しかし、目的に応じて、不透明な材料も利用され得る。例えば、不透明な包装材料で食品を包装した場合の該包装材料の欠点(例えば、ピンホール)などを観察することができる。
【0061】
例えば、一方の面が不透明なフィルム、他方の面が透明性を有し、充分なバリア性を有するフィルムでなる袋などを準備し、これを用いて食品包装材料評価用モデルを形成する。この透明性を有するフィルムの側を観察面とすれば、内容物である検知用組成物の透明性が高いため、該組成物の着色状態を観察することができる。従って、不透明な包装材料に欠点があった場合にもその位置と程度を観察することができる。あるいは、不透明な包装材料で包装を行った場合には、その一部に窓部を設け、窓部を透明でバリア性の高い素材でカバーしておくことも推奨され得る。
【0062】
本発明においては無機物粒子が用いられるため、無機物粒子同士の間に隙間が存在し、その隙間に着色性水溶液(I)が存在する。そのため、被検出物質(A)が包装体内に侵入すると、粒子の隙間を通じての被検出物質(A)の拡散は妨害されず、着色性水溶液自体が有する感度とほぼ同様の感度で被検出物質(A)を検出することが可能となる。さらに、無機物粒子により、全体の形状が保たれ、かつ着色性水溶液(I)の自由な流動や対流は妨げられる。従って、例えば包装材料の一部にピンホール状の欠陥があってそこからのみ被検出物質(A)が侵入しているような場合、欠陥部周辺のみが着色し、時間とともに着色部が拡大するため、欠陥の位置と欠陥の程度を容易に検知することができる。これに比べて、検知用組成物が粒子状ではなく、着色性水溶液(I)を含む塊状のゲルであるような場合には、被検出物質(A)の拡散を妨げられ、検知感度が鈍くなったり、検知速度が遅くなったりする場合がある。
【0063】
このように、本発明の検知用組成物または食品包装材料評価用モデルを利用すると、包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知することができる。例えば、フィルム、シート、カップ、ボトルなどの各種包装材料を用いて各種食品を包装する場合に、酸素などの被検出物質(A)が包装体内部に侵入するのを検知することが可能である。しかもこの該被検出物質(A)が、例えば、容器全体から侵入しているか、キャップやシール部から侵入しているかなどを的確に判定することができる。
【0064】
本発明の検知用組成物または食品包装材料評価用モデルは、食品以外の材料の包装体の評価用にも利用することが可能である。例えば、包装すべき材料が、医薬品、化粧品、一般化学品などである場合に、これらを内容物として含む包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知することが可能であり、包装材料の欠陥などについても検知することが可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例について説明する。実施例においては、被検出物質(A)が酸素の場合について説明を行うが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
(着色性水溶液(I)の調製)
呈色性試薬(B)としてメチレンブルー4.5mg、調整物質(C)として還元剤SnCl・2HO 162mg、および0.2規定塩酸3mlを、蒸留水(窒素を30分吹き込んで溶存酸素を脱気した蒸留水)59mlに溶解させた。溶液の色が青色から無色になるまで85℃で30分間加熱しながら攪拌し、無色の酸素検知性着色用水溶液(I)(以下、メチレンブルー溶液(1)と記載することがある)を得た。
【0067】
(実施例1)
1.酸素検知用組成物の調製
上記メチレンブルー溶液(1)50mlに、無機物粒子として多孔性シリカゲル(ダイソー社製 商品名Daisogel 1001W グレードIR−60−63/210−W) 37.6gを加え、室温で30分間攪拌し、混合物(以下、検知用組成物1と記載することがある)を得た。また、上記多孔性シリカゲルの平均粒径は100μmであった。なお、この平均粒径は、上記混合物を透明な袋に入れ、該袋の中のメチレンブルー溶液を吸収した状態でのゲル50個の直径を袋の外から顕微鏡下に測定し、その平均を算出して得た。
【0068】
2.食品包装材料評価用モデルの作製
上記検知用組成物を、表1に示す所定の構成の多層フィルムからなる4種類の袋(サイズ5cm×7cm)の各々に充填し、真空包装機を用いて開口部より真空引きしながらヒートシールして検知用組成物を袋内に封入した。封入後手で厚さ5mmの略直方体状に成形して、食品包装材料評価用モデルを得た。なお、多層フィルムの素材、構成については表1に記載する。
【0069】
3.酸素侵入状態の検知
上記食品包装材料評価用モデルを、30℃、80%RH(相対湿度)の条件下で空気下に放置し、経時的に目視による観察を行った。包装体内部の酸素検知用組成物1の着色状態を表1に示す。この試験の間、食品包装材料評価用モデルの形状は実質的に変化せず、包装体の内容物は流動しなかった。表1において、CPPは無延伸ポリプロピレン;EVOHはエチレン−ビニルアルコール共重合体;PETは、ポリエチレンテレフタレート;そしてPEはポリエチレンを示す。他の表および明細書の他の部分においても同様である。
【0070】
【表1】

【0071】
一方、上記と同様な多層フィルムを準備し、該フィルムの内側に非破壊酸素濃度計(Presens社製酸素濃度計Fibox3を使用)を貼り付け、上記メチレンブルー溶液(1)に代えて蒸留水を用いたこと以外は上記と同様にして食品包装材料評価用モデルを作製し、上記と同様に保存して包装体内部の酸素濃度を測定した。保存日数と包装体内部の累積酸素量との関係を図1に示す。表1の着色状況は累積酸素量とよく対応していた。
【0072】
(実施例2)
実施例1と同様に食品包装材料評価用モデルを作製した。次に、これを85℃、30分の条件でボイル殺菌処理した。次いで、これを30℃、80%RHの条件下で空気下に放置し、経時的に目視による観察を行った。包装体内部の検知用組成物の着色状況を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
一方、実施例1と同様に非破壊酸素濃度形を用いて包装体内の酸素濃度を測定したところ、包装体内の着色状況とよく対応していた。従って、多層フィルムの種類によってはボイル処理によってバリア性が損なわれたことが着色状況によって明瞭に検知されたことがわかる。
【0075】
(実施例3)
実施例2における85℃、30分のボイル殺菌処理に代えて120℃、30分間のレトルト殺菌処理を行ったこと以外は実施例2と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。なお、この試験の間、レトルト処理を行っても食品包装材料評価用モデルの形状は実質的に変化せず、包装体の内容物は流動しなかった。また、実施例2と同様に着色状況は酸素濃度とよく対応しており、レトルト処理による多層フィルムのバリア性の変化を検知することができた。
【0076】
【表3】

【0077】
(実施例4)
(包装材料の欠陥の検知)
以下に示す(i)の層構成を有する多層フィルム2および他方の面が(ii)の層構成を有する多層フィルム3を用いて、熱圧着により袋を作製した。
【0078】
(i)内側よりCPP層/接着層/ナイロン層/接着層/アルミ層
(50μm/10μm/15μm/10μm/50μm)
(ii)内側よりCPP層/接着層/ナイロン層/接着層/NCCF多層体
(50μm/10μm/15μm/10μm/約15μm)
この袋は、図2に示すように、一方の面が多層フィルム2、他方の面が多層フィルム3で構成され、多層フィルム3の最外層がアルミ層31となるように配置・構成されている。
この袋に実施例1と同様にして調製した混合物(検知用組成物1;図2において1で示す)を充填し、実施例1と同様に密封して食品包装材料評価用モデル10を得た。
【0079】
上記多層フィルム4のNCCF多層体は、国際公開公報WO2005/053954号の実施例1の積層体B−11と同様の多層構造体であり、透明な高ガスバリア性多層体である。多層フィルム3のアルミ層31としては、包装材料に欠陥を有するモデルとして、予め中央部にピンで直径0.1mmの孔4をあけたアルミ箔を用いた。
【0080】
上記で得られた包装体を、30℃、80%RH(相対湿度)の条件下にて放置し、経時的に目視による観察を行った。さらに、実施例2および3の場合と同様に、封入後に85℃、30分の条件下におけるボイル処理、および120℃、30分の条件下におけるレトルト処理を行い、各々の場合において目視による観察を行った。いずれの場合も、図2に示すように、孔4を中心にほぼ円形に青色の着色部分5が、包装体の透明な多層フィルム2の側から観察され、どの部分から酸素が侵入したかを容易に視認することができた。いずれの条件でもこれらの試験の間、食品包装材料評価用モデルの形状は変化せず、内容物は流動性を示さなかった。
【0081】
(比較例1)
1.酸素検知用組成物の調製
市販の粉寒天(和光純薬製)4gに、蒸留水(窒素を吹き込んで溶存酸素を脱気した蒸留水)200mLを加え、80℃で30分加熱攪拌し、寒天溶液を得た。この寒天溶液に上記メチレンブルー溶液(1)62mLを加え、溶液の色が青色から無色になるまで80℃で30分間加熱攪拌し、無色の酸素検知用寒天水溶液を得た。
【0082】
2.酸素侵入状態の検知
上記酸素検知用寒天水溶液を実施例1と同様に所定の構成の多層フィルムからなる4種類の袋の各々に封入し、酸素検知用寒天ゲルを含む包装体を得た。これらを実施例1と同様に30℃、80%RHの条件下にて放置し、経時的に目視による観察を行った。その結果を表4に示す。内容物の着色状況は実施例1とほぼ同等であった。なお、この試験の間、袋に入った内容物の形状は実質的に変化しなかったが、袋を動かすと袋の中で溶液が若干動くという程度の流動性を示した。
【0083】
【表4】

【0084】
(比較例2)
比較例1と同様に酸素検知用寒天水溶液を調製し、多層フィルムからなる袋に封入し、食品包装材料評価用モデルを得た。次に、該食品包装材料評価用モデルに、85℃、30分間のボイル殺菌処理を行った後、30℃、80%RHの条件下で空気下に放置し、経時的に目視による観察を行った。また、これとは別に、同様に調製した食品包装材料評価用モデルを120℃、30分のレトルト殺菌処理を行った後、30℃、80%RHの条件下で空気下に放置し、経時的に目視による観察を行った。
【0085】
ボイル殺菌処理あるいはレトルト殺菌処理を行った場合は、包装体内容物が熱による分解を起こし溶液状態となって流動し、形状が維持できなかった。なお、比較例1の場合と比較して、着色の起こる速度が若干促進されていた。これは、ボイル殺菌処理およびレトルト殺菌処理により、多層フィルムのバリア性が低下したためと考えられる。
【0086】
(比較例3)
比較例1と同様に酸素検知用寒天水溶液を調製した後、実施例4と同様の、ピンホールによる孔を有するアルミ層を含む多層フィルム、80%RHの条件下にて放置し、経時的に目視による観察を行った。しかし、観察するために袋を持ち上げただけで内部の水溶液が流動するため、青色着色部が移動してしまい、どこから酸素が侵入したかを明瞭には視認できなかった。
【0087】
さらに、比較例1で調製した食品包装材料評価用モデルを、実施例2および3と同様に評価した。その結果、ボイル殺菌処理、レトルト殺菌処理を行ったものは処理終了時点で形状が維持できず、その後放置するに従い孔部だけでなく袋の内容物全体が青色に着色したため、どこから酸素が侵入したかを視認できなかった。
【0088】
(比較例4)
メチレンブルー4.5mg、0.2規定塩酸3mL、およびSnCl・2HO162mgを、蒸留水(窒素を吹き込んで溶存酸素を脱気した蒸留水)59mLに溶解し、溶液の色が青色から無色になるまで85℃で30分間加熱攪拌し、無色の酸素検知用着色性水溶液を調製した。
【0089】
上記酸素検知用着色性水溶液を実施例1と同様に多層フィルムからなる袋に封入し、評価した結果(30℃80%RH条件下にて放置し、経時的に目視による観察)、酸素検知用着色性水溶液の着色は比較例1と同等であった。しかし、袋の内容物が流動性を有するため、所定の形状に整えることができなかった。
【0090】
また、実施例4と同様にピンホール孔をあけたアルミ層を含む多層フィルムを片面に有する袋を使用し、30℃80%RHの条件下にて放置したが、孔の周囲だけでなく内容物全体が青色に着色したため、どこから酸素が侵入したかを視認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の検知用組成物は、酸素などの所定の被検出物質(A)を効果的に検知することが可能であり、この組成物を所定の包装材料でなる容器、袋などに入れ、密封して包装体とすることにより、該被検出物質(A)の侵入を効果的に検出することの可能な食品包装材料評価用モデルとされる。この食品包装材料評価用モデルを使用すると、通常の保存条件下、および包装された食品が処理される条件下、例えば滅菌条件下における被検出物質(A)の侵入を検知することができ、包装材料の性能評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の食品包装材料評価用モデルにおける、保存時間と酸素侵入量との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の食品包装材料評価用モデルにおいて、包装材料のピンホールからの酸素の侵入による着色状態の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 検知用組成物
2 多層フィルム
3 多層フィルム
4 孔
5 着色部分
31 アルミ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物質(A)との接触により着色し得る着色性水溶液(I)と、無機物粒子(II)とを含む、被検出物質(A)の検知用組成物。
【請求項2】
前記無機物粒子(II)が粒径10μm〜10mmの粒子である、請求項1に記載の検知用組成物。
【請求項3】
前記無機物粒子(II)が、無機物ゲルおよびガラスからなる群より選択される少なくとも一種でなる、請求項1または2に記載の検知用組成物。
【請求項4】
前記無機物粒子(II)が、多孔質無機物粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の検知用組成物。
【請求項5】
前記無機物粒子(II)が、シリカゲルである請求項1〜4のいずれかに記載の検知用組成物。
【請求項6】
前記着色性水溶液(I)が、被検出物質(A)と接触することにより着色する呈色性試薬(B)と調整物質(C)とを含有する水溶液であり、該調整物質(C)が、該呈色性試薬(B)を、被検出物質(A)と接触するまで無色の状態に保持し得る、請求項1〜5のいずれかに記載の検知用組成物。
【請求項7】
前記被検出物質(A)が酸素である請求項1〜6のいずれかに記載の検知用組成物。
【請求項8】
前記検出用呈色性試薬(B)がメチレンブルーである請求項7に記載の検知用組成物。
【請求項9】
前記調整物質(C)が塩化第一錫であり、さらに塩酸を含む、請求項8に記載の検知用組成物。
【請求項10】
さらに平衡水蒸気圧を調整するための調湿物質(D)を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の検知用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の検知用組成物を、包装材料を用いて密封包装することにより得られる、食品包装材料評価用モデル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の検知用組成物を不活性ガス置換した後、容器または袋の形態の包装材料内に充填し、密封することによって得られる食品包装材料評価用モデル。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の検知用組成物を容器または袋の形態の包装材料内に充填し、排気した後に密封して得られる、食品包装材料評価用モデル。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の検知用組成物を容器または袋の形態の包装材料内に充填し、密封後紫外線滅菌または加熱殺菌して得られる、食品包装材料評価用モデル。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載の検知用組成物を、包装材料を用いて密封包装する工程、
得られた包装体を、被検出物質(A)を含む気体あるいは液体と接触させる工程、および
該包装体内部の該組成物の着色により該被検出物質(A)を検出し、そのことにより該包装体内部への該被検出物質(A)の侵入を検知する工程、を包含する、
包装体内部への被検出物質(A)の侵入を検知する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−249591(P2008−249591A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93122(P2007−93122)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】