説明

検知装置、受電装置、非接触電力伝送システム及び検知方法

【課題】コイルの近くに存在する金属異物を、センサを新たに設けることなく検知し、かつ検出の精度を向上させる。
【解決手段】検知装置20が備える検知部26により、コイル21に非接触で伝送される送電信号に対し該コイル21を少なくとも含む共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳する。その後、検知部26の送電キャリア除去フィルタ部33により送電信号に測定用信号が重畳された交流信号から送電信号を除去し、Q値測定回路34において送電信号が除去された交流信号を用いてQ値の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属等の導体の存在を検知する検知装置、受電装置、非接触電力伝送システム及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で電力を供給(ワイヤレス給電)する非接触電力伝送システムの開発が盛んに行われている。ワイヤレス給電を実現する方式としては大きく2種類の手法が存在する。
【0003】
一つは既に広く知られている電磁誘導方式であり、電磁誘導方式では、送電側と受電側の結合度が非常に高く、高効率での給電が可能である。しかし、送電側と受電側との間の結合係数を高く保つ必要があるため、送電側と受電側の距離を離した場合や位置ずれがある場合には、送電側と受電側のコイル間の電力伝送効率(以下、「コイル間効率」という。)が大きく劣化してしまう。
【0004】
もう一つは磁界共鳴方式と呼ばれる手法であり、積極的に共振現象を利用することで給電元と給電先とで共有する磁束が少なくてもよいという特徴を持つ。磁界共鳴方式は、結合係数が小さくてもQ値(Quality factor)が高ければコイル間効率が劣化しない。Q値は、送電側又は受電側のコイルを有する回路の、エネルギーの保持と損失の関係を表す(共振回路の共振の強さを示す)指標である。すなわち送電側コイルと受電側コイルの軸合わせが不要で、送電側と受電側の位置や距離の自由度が高いというがある。
【0005】
非接触電力伝送システムにおいて重要な要素の一つに、金属異物の発熱対策がある。電磁誘導方式又は磁界共鳴方式に限らず非接触で給電を行う際、送電側と受電側の間に金属が存在するとその金属に渦電流が発生し、金属を発熱させてしまう恐れがある。この発熱対策として、金属異物を検知する数多くの手法が提案されている。例えば光センサあるいは温度センサを用いる手法が知られている。しかしながら、センサを用いた検知方法では、磁界共鳴方式のように給電範囲が広い場合にコストがかかる。また例えば温度センサであれば、温度センサの出力結果がその周囲の熱伝導率に依存するため、送電側及び受電側の機器にデザイン制約を加えることにもなる。
【0006】
そこで、送電側と受電側の間に金属異物が入ったときのパラメータ(電流、電圧等)の変化を見て、金属異物の有無を判断する手法が提案されている。このような手法であれば、デザイン制約等を課す必要がなくコストを抑えることができる。例えば、特許文献1では送電側と受電側の通信の際の変調度合い(振幅及び位相の変化情報)によって金属異物を検出する方法、また特許文献2では渦電流損によって金属異物を検出する方法(DC−DC効率による異物検知)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−206231号公報
【特許文献2】特開2001−275280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2により提案された手法は、受電側の金属筺体の影響が加味されていない。一般的な携帯機器への充電を考えた場合、携帯機器に何らかの金属(金属筐体、金属部品等)が使われている可能性が高く、パラメータの変化が「金属筺体等の影響によるもの」か、あるいは「金属異物が混入したことによるもの」なのかの切り分けが困難である。特許文献2を例に挙げると、渦電流損が携帯機器の金属筺体で発生しているのか、それとも送電側と受電側との間に金属異物が混入して発生しているのかがわからない。このように、特許文献1,2で提案された手法は、金属異物を精度よく検知できているとは言えなかった。
【0009】
本開示は、上記の状況を考慮してなされたものであり、コイルの近くに存在する金属異物を、センサを新たに設けることなく検知し、かつ検出の精度を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、検知装置が備える検知部により、コイルに非接触で伝送される送電信号に対し該コイルを少なくとも含む共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳すること、送電信号に測定用信号が重畳された交流信号から送電信号を除去すること、送電信号が除去された交流信号を用いてQ値の測定を行うことを含む。
【0011】
上記送電信号は第1の周波数の交流信号であり、測定用信号は第1の周波数と異なる第2の周波数の交流信号であり、上記検知部が備える共振周波数調整部を共振回路と接続することにより、共振回路の共振周波数が第1の周波数から第2の周波数に変更する。
【0012】
本開示の一側面によれば、コイルを通じて受信した送電信号に、これと周波数の異なるQ値測定用信号を重畳し、2つの信号が合成された交流信号から送電信号を除外した交流信号を用いて、Q値の測定を行う。それゆえ、受電装置は、送電装置から送電信号を受信しながら、Q値測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、コイルの近くに存在する金属異物を、センサを新たに設けることなく検知することができ、かつ検出の精度を向上させるものである。
また、1次側から2次側への送電を停止することなく、2次側で高精度な金属異物の検知を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示において金属異物の検知に用いられるQ値測定の説明に供する概略回路図である。
【図2】本開示の第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムにおける受電装置の構成例を示す概略回路図である。
【図3】図2における送電キャリア除去フィルタ部の内部構成例の一部を示す回路図である。
【図4】図3の送電キャリア除去フィルタ部のインピーダンスの周波数特性例を示すグラフである。測定用信号
【図5】送電キャリア除去フィルタ部の周波数とフィルタロスとの関係例を示すグラフである。
【図6】図2における電圧V1及び電圧V2の波形例を示すグラフである。
【図7】Aは電圧V1のスペクトル特性例、Bは電圧V2のスペクトル特性例を示すグラフである。
【図8】LCRメータを用いて受電コイルのQ値を測定したときの周波数とQ値との関係例を示すグラフである。
【図9】A〜Cは、共振回路の構成例を示す回路図である。
【図10】本開示の第1の実施形態の変形例に係る非接触電力伝送システムにおける受電装置の構成例を示す概略回路図である。
【図11】A,Bは、共振回路の構成例を示す回路図である。
【図12】本開示の第2の実施形態に係る受電装置の構成例を示す回路図である。
【図13】第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(Q値測定結果を送信)を示すフローチャートである。
【図15】本開示の第3の実施形態に係る受電装置の構成例を示す回路図である。
【図16】図13の受電装置の送電周波数に対する等価回路図である。
【図17】図13の受電装置のQ値測定用周波数に対する等価回路図である。
【図18】第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(Q値測定結果を送信)を示すフローチャートである。
【図20】直列共振回路におけるインピーダンスの周波数特性例を示すグラフである。
【図21】並列共振回路におけるインピーダンスの周波数特性例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示を実施するための形態の例について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.導入説明
2.第1の実施形態(検知部:共振周波数調整部と第1周波数除去部を備える例)
3.第2の実施形態(切り離し部:共振回路の負荷側に切り離し部を設けた例)
4.第3の実施形態(周波数除去部:切り離し部に代えて第2周波数除去部を設けた例)
5.その他
【0017】
<1.導入説明>
本開示は、送電側(1次側)から給電して受電側(2次側)の充電を行う際に、外部と電磁的に結合するコイルを含む回路のQ値(Quality factor)を測定し、Q値の測定結果に基づいてコイルの近くの金属異物の有無を判定する技術である。
Q値とは、エネルギーの保持と損失の関係を表す指標であり、一般的に共振回路の共振のピークの鋭さ(共振の強さ)を表す値として用いられる。
金属異物は、送電側と受電側の間に存在する金属などの導体や意図しないコイルを含む回路が対象となる。本明細書でいう導体には、広義の導体すなわち半導体も含まれる。以下、金属などの導体やコイルを含む回路を検知することを、「導体等を検知する」ともいう。
【0018】
[Q値測定の原理]
以下、Q値測定の原理について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示において金属異物の検知に用いられるQ値測定の説明に供する概略回路図である。
この図1に示した回路は、Q値の測定原理を表した最も基本的な回路構成(磁界結合の場合)の一例である。図1ではコイル5とコンデンサ4からなる直列共振回路を備える回路を示しているが、共振回路の機能を備えていれば詳細な構成は種々の形態が考えられる。この共振回路のQ値測定は、測定器(LCRメータ)でも用いられている手法である。
【0019】
コイル5の近くに金属異物として例えば金属片があると、磁力線が金属片を通過して金属片に渦電流が発生する。これはコイル5からすると、金属片とコイル5が電磁的に結合して、コイル5に抵抗負荷がついたように見え、コイル(共振回路)のQ値を変化させる。このQ値を測定することで、コイル5の近くにある金属異物(電磁結合している状態)の検知につなげる。
【0020】
図1に示すQ値測定に用いられる回路は、交流信号(正弦波)を発生させる交流電源2及び抵抗素子3を含む信号源1と、コンデンサ(キャパシタとも呼ばれる)4と、コイル5を備える。抵抗素子3は、交流電源2の内部抵抗(出力インピーダンス)を図示化したものである。信号源1に対しコンデンサ4とコイル5が直列共振回路(共振回路の一例)を形成するように接続されている。そして、測定したい周波数において共振するように、コンデンサ4のキャパシタンスの値(C値)、及びコイル5のインダクタンスの値(L値)が調整されている。
【0021】
直列共振回路を構成するコイル5とコンデンサ4の両端間の電圧をV1(共振回路に掛かる電圧の一例)、コイル5両端の電圧をV2とすると、この直列共振回路のQ値は、式(1)で表される。Rは、周波数fにおける直列抵抗値、Lはインダクタンス値、Cはキャパシタンス値を表す。電圧V2≫電圧V1のとき式を近似して表すことができる。
【数1】

【0022】
電圧V1が約Q倍されて電圧V2が得られる。式(1)に示す直流抵抗値Rやインダクタンス値Lは金属が近づくことや、金属に発生する渦電流の影響により変化することが知られている。例えば、コイル5に金属片が近づくと実効抵抗値Rが大きくなり、Q値が下がる。すなわちコイル5の周りに存在する金属の影響によって共振回路のQ値や共振周波数は大きく変化するので、この変化を検知することにより、コイル5の近くに存在する金属片を検知できる。そして、このQ値測定を1次側と2次側の間に挿入された金属異物の検知に適用することができる。
【0023】
上述したQ値の変化を用いて金属異物を検出することにより、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式によらず高精度で金属異物を取り除くことが可能である。特に受電側(2次側)の機器内に設けられたコイルのQ値は、受電側の機器の金属筐体と該コイルとの位置関係がほぼ固定であるため、コイルに対する金属筐体の影響を取り除くことができ、金属異物に対して感度のよいパラメータとなり得る。つまり、受電側のQ値は、金属異物の検知に適している。
【0024】
[本開示の概要]
しかしながら、Q値測定による異物検知を2次側に適用する場合、2次側コイルのQ値を正確に測定するためには、1次側からの送電信号が障害となっていた。Q値測定の際に1次側からの給電(送電信号の出力)が行われていると、1次側から出力した磁界で2次側のコイルに大電力が発生してしまうため、Q値測定信号の電圧V2などを正常に測定することができない。
【0025】
2次側コイルのQ値は、図1に示した技術を用い、該2次側コイルとコンデンサによる共振回路に電圧(Q値測定用信号)を印加することによって、測定を行う。これを1次側からの送電中に行う場合、1次側からの送電により、2次側コイルには電圧が発生する。これがQ値測定の誤差となってしまう。一般的に送電は大電力で行われるため、送電信号の振幅はQ値測定用信号と比較してはるかに大きな振幅であり、Q値の測定が正確に行えない。
【0026】
そのため、これを回避するために複雑な制御フローを経由して、1次側から2次側への送電を停止し、送電を停止させた状態で2次側のQ値の測定を行う必要がある。そのため、2次側のQ値を測定するたびに1次側と2次側間で通信を行い、送電停止信号を送るなどの通信システムと制御が必要となり、送電装置及び受電装置の制御フローやハードウェアの複雑化、それに起因するQ値測定における冗長な時間の増加が問題となる。
【0027】
また、例えば1台の送電装置に対して複数台の受電装置が存在する場合にも、一の受電装置のQ値を測定するたびに、それ以外の受電装置への給電まで停止する必要がある。
【0028】
このような問題に対し、受電コイルとは別にQ値測定用のコイルを設ける、あるいは受電コイルの巻き数を増やすなど、コイルの工夫により給電中のQ値測定による異物検出を実現する方法が考えられる。しかしながら、やはり受電側の機器の設計自由度やコストに対して悪影響がある可能性がある。
【0029】
そこで、1次側の送電を停止させることなく、2次側でQ値の測定を行う手法を提案する。送電キャリア(送電信号)に対して、Q値測定用信号を送電キャリアと異なる周波数で重畳させて、Q値測定(電圧測定)の際にはQ値測定用信号のみを取り出すことによって1次側からの送電と同時にQ値測定を行うものである。
【0030】
<2.第1の実施形態>
本開示では、送電側から給電された交流信号(以下、「送電信号」と記す)に、これと周波数の異なるQ値測定用の交流信号(以下、「Q値測定用信号」と記す)を重畳する。そして、2つの交流信号が合成された交流信号から送電信号を除外した交流信号を用いて、Q値の測定を行う構成をとる。
[受電装置の構成例]
図2は、本開示の第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムにおける受電装置の構成例を示す概略回路図である。
非接触電力伝送システム100は、少なくとも送電コイル10Aを含む送電装置10(1次側)と、受電装置20(2次側)を備えて構成されている。受電装置20は、検知装置の一例である。
【0031】
受電装置20は、一例として受電コイル21(コイルの一例)と、コンデンサ22,23と、整流部24と、負荷25と、検知部26(検知部の一例)を備える。
【0032】
受電装置20において、並列接続した受電コイル21とコンデンサ22の一端が該受電コイル21と直列接続したコンデンサ23の一端に接続し、共振回路が構成されている。そして、この共振回路が、整流部24を介して負荷25に接続されている。Q値測定用の周波数において共振するように、受電コイル21のインダクタンス値(L値)、及びコンデンサ22,23のキャパシタンス値(C値)が調整されている。コンデンサ22,23及び整流部24により受電部を構成する。
【0033】
受電装置20では、送電装置10で発生した交流磁界を磁界共鳴方式等によって受電コイル21で受け、受電コイル21及びコンデンサ22,23を含む共振回路を通じて交流信号を取り出す。取り出した交流信号は、整流部24で整流及び平滑化することにより直流信号に変換される。図示しないレギュレータによってその直流信号を利用して定電圧を生成し、バッテリーなどの負荷25へ供給する。
検知部26は、コンデンサ23の両端の地点と接続し、このコンデンサ23の両端の地点における電圧を検出し、Q値の測定を行う。
【0034】
[検知部の構成例]
検知部26は、受電コイル21を通じて受信した送電信号に、これと周波数の異なるQ値測定用信号を重畳し、2つの信号が合成された交流信号から送電信号を除外した交流信号を用いて、Q値の測定を行う機能を備える。この2つの交流信号が合成された交流信号から送電信号を除外した交流信号には、Q値測定用信号が含まれている。
【0035】
このような機能を実現するため、検知部26は、一例としてQ値測定用信号源31、共振周波数調整部32、送電キャリア除去フィルタ部33、Q値測定回路34を備えている。
【0036】
Q値測定用信号源31は、図1の信号源1(交流電源2)と同様の機能を有し、Q値測定時にQ値測定用の交流信号を出力する。Q値測定用信号の周波数は送電側から伝送される送電信号(送電キャリア)の周波数(以下、「送電周波数」とも称す)とは別の周波数に設定する。これによって、送電信号とQ値測定用信号を分離することができるため、給電とQ値の測定を同時に行うことができる。
【0037】
共振周波数調整部32は、受電装置20の共振回路の共振周波数を変更するためのものである。上記のとおり、送電信号の周波数とQ値測定用信号の周波数を異ならせることにより、送電信号とQ値測定用信号を分離することができる。しかし、受電コイル21に接続されている共振用のコンデンサ22,23は送電周波数で共振が行われる値に設定されている。そのため、Q値を共振状態で測定するためのQ値測定用の共振周波数調整部32が必要となる。共振周波数調整部32は、一例としてコンデンサを適用できるが、この例に限られるものではない。例えば、受電コイルとは別のコイルを用いて、あるいはコイルとコンデンサを用いて構成してもよい。
【0038】
また、送電キャリア除去フィルタ部33が、Q値測定用信号源31と共振周波数調整部32の間に挿入されている。送電キャリア除去フィルタ部33を、Q値測定用信号源31の後(下流側)に設ける理由は、送電信号(送電キャリア)に対して、Q値測定用信号源31の影響を与えないためである。また、大振幅が発生する送電信号によってQ値測定用信号源が破壊されるのを防ぐためでもある。
同様に、Q値測定回路34の前(上流側)にも送電キャリア除去フィルタ部33を設ける。これは送電信号と重畳されたQ値測定用信号の中から送電信号を除去して、Q値測定用信号のみを測定するためである。
【0039】
Q値測定回路34は、受電コイル21を通じて受信した送電信号と、これと周波数の異なるQ値測定用信号の2つの信号が合成された交流信号から、送電信号を除外した交流信号を用いてQ値の測定を行う。そして、検知部26は、Q値測定回路34により求めたQ値を、予め設定された基準値と比較することにより、受電コイル21と外部例えば送電装置10の送電コイル10Aとの電磁結合している状態、すなわち受電コイル21付近の金属異物の有無を判定する。
【0040】
なお、このQ値測定による金属異物の検知処理のときに共振周波数を特定する周波数スイープ処理を実施するようにしてもよい。
【0041】
ここで、送電キャリア除去フィルタ部33についてさらに説明する。送電キャリア除去フィルタ部33は、見る向きに対して見えるインピーダンスが異なるように構成されている。
【0042】
図3は、送電キャリア除去フィルタ部33の内部構成例の一部を示す回路図である。
図3に示した例では、コイルL1及びコンデンサC1の並列回路の一端がグラウンド端子に接続され、その他端がQ値測定用信号源31側の端子33aと接続している。また、コイルL1及びコンデンサC1の並列回路の他端は、コイルL2及びコンデンサC2の並列回路の一端と接続している。そして、コイルL2及びコンデンサC2の並列回路の他端が、送電信号が入力される共振回路側の端子33bと接続している。
【0043】
この図3に示す回路構成によって、Q値測定用信号源31側の端子33aから入力されるQ値測定用信号は共振回路側の端子33bまで到達する(通過)。一方、共振回路側の端子33bから入力した送電信号はQ値測定用信号源31側の端子33aまで到達しない(遮断)。コイルL1,L2とコンデンサC1,C2の値を適宜選択することにより、所望の周波数の交流信号について通過又は遮断を制御することができる。本例では、コイルL1,L2とコンデンサC1,C2の値を選択して、例えば送電信号の周波数が120kHz、Q値測定用信号の周波数は2MHzに設定した。
【0044】
図4は、図3に示した送電キャリア除去フィルタ部33の回路についてのインピーダンスの周波数特性例を示したグラフである。
図4の例は、共振回路側からとQ値測定用信号源31側から見た送電キャリア除去フィルタ部33のインピーダンスを表している。
共振回路側からみたインピーダンスは送電周波数である120kHz付近において、3000Ω以上の高インピーダンスに見えている(実線の特性曲線)。この場合、Q値測定用信号源31が送電信号にとっては影響がないように見え、給電の妨げにはならない。
一方、Q値測定用信号源31から見た場合には、Q値測定用の周波数である2MHz付近においてはインピーダンスが低く見え(破線の特性曲線)、共振回路側へのQ値測定用信号の重畳が可能となる。
【0045】
図5に、送電キャリア除去フィルタ部33の周波数とフィルタ通過特性との関係例を示す。
図5の例では、送電周波数である120kHz付近において損失が大きいことから、送電信号の大電力がQ値測定用信号源31に入力されて該Q値測定用信号源31が破壊されることを防げることがわかる。
一方、Q値測定用の周波数である2MHz付近において、Q値測定用信号は送電周波数120kHzと比べ損失が小さく、通過するため、送電信号への重畳が可能である。2MHz付近におけるQ値測定用信号の損失Lは18dB程度であるが、受電コイル21を含む共振回路に入力する電圧振幅は50mV程度でよいため、この程度の損失は問題とはならない。
【0046】
このようにして、検知部26(図3)の送電キャリア除去フィルタ部33では、Q値測定用信号源31で発生したQ値測定用信号を通過させ、共振回路側(共振周波数調整部32含む)からQ値測定用信号源31及びQ値測定回路34へ向かう方向へ送電信号を通過させない。
【0047】
実際に120kHzの送電信号と2MHzのQ値測定用信号を重畳させた様子を、図6に示す。図6は、図2における電圧V1及び電圧V2の波形例を示すグラフである。
図6より、2MHzのQ値測定用信号(電圧V2)がコンデンサ23の前後で増幅されていることがわかる。実際に周波数別に分離してQ値測定用信号の振幅を見たときには、コンデンサ23の前(受電コイル21側)の電圧V1(図6下)よりも、コンデンサ23の後(整流部24側)の電圧V2(図3上)がQ倍されていることが確認できる。
【0048】
図7は各電圧のスペクトル特性例を示すグラフであり、図7Aは電圧V1のスペクトル特性、図7Bは電圧V2のスペクトル特性を示している。
図7に示すように、それぞれの電圧を周波数軸で見た場合、2MHzのQ値測定用信号は16mVから220mVに増幅されており、Q値に換算すると約14と計算される。一方、受電コイル21について、Q値測定状態でのQ値をLCRメータで見た場合の測定結果を、図8に示す。図8の例では、2MHz付近においてQ値が15〜16であり、高い確度でQ値が測定できていることが確認できる。
【0049】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、検知部26の共振周波数調整部32を設け、受電コイル21とコンデンサ22,23からなる共振回路の共振周波数(第1の周波数)に対し、これと異なる新たな共振周波数(第2の周波数)で共振するように構成する。
そして、検知部26の送電キャリア除去フィルタ部33aによって、受電コイル21を通じて受信した送電信号に、これと周波数の異なるQ値測定用信号を重畳し、2つの信号が合成された交流信号から送電信号を除外した交流信号を用いて、Q値の測定を行う。
【0050】
それゆえ、受電装置は、送電装置から送電信号を受信しながら、Q値測定を行うことができる。送電を止めるという動作がないために、送受間の通信を減らすことができ、制御フローの簡素化が見込める。
また、新たなコイルやセンサの追加を必要としない。
また、従来のようなDC−DC効率による異物検知等の方法と比較して、高精度での金属異物の検出が可能になる。
さらに、制御フローが簡素化するため、Q値測定のための制御に要する冗長な時間が減少し、時間あたりの送電効率が向上する。もしくは、より短い間隔で金属異物検出の動作が行えるようになり、金属異物の早期検知につながる。
さらにまた、受電装置が2台以上ある場合、送電中の受電装置以外の受電装置への送電を停止しなくてよくなるので、複数台の受電装置でそれぞれに送電やQ値測定等を並行して実行することができる。
【0051】
(共振回路の他の構成例)
上述した第1の実施形態では、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路の受電コイル21のインピーダンスマッチングに、これと並列のコンデンサ22と、受電コイル21とコンデンサ22の並列接続に対し直列のコンデンサ23を用いた例を説明したが、共振回路としてその他の構成をとることができる。
【0052】
図9A〜9Cは、共振回路の他の構成例を示す回路図である。
図9Aは、受電コイル21と並列なコンデンサ22を用いて、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路を構成した例である。この共振回路を構成する受電コイル21とコンデンサ22の接続点に、共振周波数調整部32を接続する。
図9Bは、受電コイル21と直列のコンデンサ23Aを用いて、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路を構成した例である。この共振回路を構成するコンデンサ23Aの整流部側に、共振周波数調整部32を接続する。
図9Cは、受電コイル21とコンデンサ23Aとコンデンサ22Aを用いて閉回路を形成して、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路を構成した例である。この共振回路を構成するコンデンサ23Aとコンデンサ22Aの接続中点に、共振周波数調整部32を接続する。
そして、いずれの共振回路においても、受電コイル21の両端の電圧V2と、受電コイル21から共振周波数調整部32までの電圧V1を検出し、Q値の測定を行う。
なお、これらの共振回路は一例であり、共振回路の構成をこれらの例に限定するものではない。
【0053】
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例として、受電装置の共振周波数調整部32の接続点を変更した例を説明する。
【0054】
図10は、本開示の第1の実施形態の変形例(以下、「本例」ともいう)に係る非接触電力伝送システムにおける受電装置の構成例を示す概略回路図である。図10の説明において、図2と同一の構成については説明を省略する。
図10に示す非接触電力伝送システム100Aは、少なくとも送電コイル10Aを含む送電装置10(1次側)と、受電装置20A(2次側)を備えて構成されている。受電装置20Aは、検知装置の一例である。
【0055】
本例の受電装置20Aは、図2の受電装置20と比較して共振回路と共振周波数調整部32との接続が異なる。
受電装置20では、共振周波数調整部32がコンデンサ23と整流部24との接続中点と接続しているが、本例の受電装置20Aでは、共振周波数調整部32がコイル21及びコンデンサ22の並列接続とコンデンサ23´との接続中点と接続している。コンデンサ23´は整流部24とも接続している。受電装置20Aのコンデンサ23´は、受電装置20のコンデンサ23に対応しており、共振回路を構成している。
受電装置20Aの共振周波数調整部32は、受電装置20と同様に、Q値を共振状態で測定するためのものであり、受電装置20Aの共振回路の共振周波数を変更する。
【0056】
このように構成した受電装置20Aでも同様に、Q値測定用信号の電圧V1と電圧V2を測定して受電コイル21のQ値を測定することができる。
図2と比較して図10の構成では、共振周波数調整部32がコンデンサのみで構成されている場合でも、Q値測定信号の共振周波数を送電信号の周波数より低く設定することが可能である。このとき、Q値測定を送電信号よりも低い周波数のQ値測定信号で行え、送電信号の高調波成分等がQ値測定信号に対して雑音として見える影響を緩和することができる。
【0057】
(共振回路の他の構成例)
上述した第1の実施形態の変形例では、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路の受電コイル21のインピーダンスマッチングに、これと並列のコンデンサ22と、受電コイル21とコンデンサ22の並列接続に対し直列のコンデンサ23´を用いた例を説明したが、共振回路としてその他の構成をとることができる。
【0058】
図11A,11Bは、共振回路の他の構成例を示す回路図である。
図11Aは、受電コイル21と直列のコンデンサ23A´を用いて、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路を構成した例である。この共振回路を構成する受電コイル21とコンデンサ23A´の接続中点に、共振周波数調整部32を接続する。
図11Bは、受電コイル21とコンデンサ23A´とコンデンサ22A´を用いて閉回路を形成して、共振周波数調整部32を接続しない状態の共振回路を構成した例である。この共振回路を構成する受電コイル21とコンデンサ23A´の接続中点に、共振周波数調整部32を接続する。
そして、いずれの共振回路においても、受電コイル21の両端の電圧V2と、受電コイル21から共振周波数調整部32までの電圧V1を検出し、Q値の測定を行う。
なお、これらの共振回路は一例であり、共振回路の構成をこれらの例に限定するものではない。
【0059】
<3.第2の実施形態>
共振回路のQ値を正確に測定するためには、共振回路からみた整流部側のインピーダンスは大きくなければならない。そのためには一例として整流部を切り離して、オープン状態としてもよい。
そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態に係る受電装置20(図2参照)に対して、負荷を切り離す切り離し部を設け、Q値測定時に検知部と負荷を切り離せるようにした例を説明する。
【0060】
なお、整流部を切り離す場合には受電はできないが、その場合でも一次側の送電を止めるといった複雑な制御フローを経由する必要がないというメリットがある。この場合のQ値測定回路への電源供給は、2次側に持つ負荷25(バッテリーなど)か、コンデンサに充電した電荷を用いて駆動する。
【0061】
[受電装置の構成例]
図12は、本開示の第2の実施形態に係る受電装置の構成例を示す回路図である。ここでは、図12に示した受電装置40と、第1の実施形態に係る受電装置20との違いを中心に説明し、その他の部分の説明を割愛する。
本実施形態に係る受電装置40は、図2の受電装置20と比較して主に、外部へデータ送信するための通信部41と、充電用のコンデンサ42と、切り離し部44が設けられている点が異なる。
【0062】
通信部41は、抵抗素子41Rと切替え部41Sの直列回路で構成され、共振回路と整流部24との間に並列に接続される。すなわち、抵抗素子41Rと切替え部41Sの直列回路の一端がコンデンサ23に接続し、他端が受電コイル21及びコンデンサ22に接続している。
【0063】
受電装置20から送電装置10へデータ送信する場合は、例えば負荷変調方式を用いて行うことができる。具体的には、送信データ列(ベースバンド信号)に応じて制御部46が切替え部41Sの開閉を切り替えることにより、受電コイル21に並列な負荷抵抗成分の値を変化させる。それにより、送電装置10が出力する交流信号が振幅変調され、受電装置20からの送信データ列が送電装置10側で観測される。
なお、この例では、負荷変調方式を利用して通信を行う例を説明したが、その他の近距離無線通信方式、例えばBluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの近距離無線通信方式を利用してもよい。
【0064】
整流部24の後段側では、コンデンサ42と切替え部43が直列に接続され、そのコンデンサ42の一端が整流部24の一の出力端に接続し、切替え部43の一端が整流部24の他の出力端に接続している。そして、整流部24の一方及び他方の出力端がレギュレータ27の一方及び他方の入力端に接続する。レギュレータ27の一方及び他方の出力端は、負荷に接続している。
【0065】
レギュレータ27は、出力する電圧や電流を常に一定に保つように制御しており、一例として定電圧信号(電源)を給電対象(負荷)や、検知部26を始めとして各ブロックへ供給する。なお、これと別のレギュレータを設け、給電対象と各ブロックに供給する定電圧信号を分けるようにしてもよい。
【0066】
切り離し部44は、一例として通信部41と整流部24の間に設けられ、制御部46の制御の下、給電中にオンして負荷に電力を供給し、一方、Q値測定時にオフして負荷を切り離す。なお、切り離し部44を配置する位置はこれに限られず、例えば整流部24の内部、整流部24と充電用のコンデンサ42の間、レギュレータ27の前後の位置などが考えられる。
【0067】
切替え部41S,43及び切り離し部44は、一例としてトランジスタやMOSFET等のスイッチング素子を適用することができる。
【0068】
判定部45は、検知部26のQ値測定回路34と接続しており、Q値測定回路34から入力されるQ値を、不揮発性のメモリ47に保存されている基準値と比較する。そして、比較の結果に基づいて、受電コイル21の近くに金属異物が存在するか否かを判定し、その判定結果を制御部46へ出力する。
【0069】
制御部46は、制御部の一例であり、必要に応じて通信部41を制御し、金属異物の判定結果を受電コイル21から送電装置10へ送信する。さらに、切替え部43のオンオフを切り替え、整流部24から供給される直流信号を充電用のコンデンサ42へ充電する制御を行う。制御部46は、MPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を適用できる。
なお、判定部45と制御部46の処理を一つのMPUが行うようにしてもよい。あるいは判定部45と制御部46とQ値測定回路34の処理、または判定部45と制御部46及びQ値測定回路34と送電キャリア除去フィルタ部33の処理をアナログ−デジタル変換器とMPUが行う、構成としてもよい。
【0070】
メモリ47は、受電コイル21の近傍に何もない又は受電コイル21に何も置かれていない状態で予め測定された周波数毎の2次側Q値の基準値を保存している。また、受電装置ごとに割り当てられたID番号(識別情報)や、送電装置から取得したID番号等を保存していてもよい。
【0071】
なお、図12に示した受電装置40では、共振回路と共振周波数調整部32との接続形態を、図2に示す接続形態としたが、図10に示す接続形態としてもよいことは勿論である。また、受電装置40の共振回路は、図9及び図11に記載したような種々の共振回路の構成を採り得る。
【0072】
[受電装置の動作例]
(第1例)
受電装置40の動作例を説明する。図13は、送電装置10(図2)と受電装置40を備える非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(第1例)を示すフローチャートである。
まず、送電装置10(1次側)が送電を開始(ステップS1)し、送電停止の指示等があるまで送電を継続する(ステップS2)。
【0073】
一方、受電装置40(2次側)は、送電装置10から出力される送電信号を受信して受電を開始すると(ステップS3)、制御部46が通信部41を制御して送電装置10へ受電確認信号を送信する(ステップS4)。受電確認信号は、受電中の受電装置が送電装置に対して出力するものであり、受電中であることを示す情報が含まれている。このステップS3,S4の処理では、受電装置40が、1次側から受信した送電信号の電力を用いて動作する。
【0074】
送電装置10は、受電装置40から受電確認信号を受信したか否かを判定し(ステップS5)、受電確認信号を受信していない場合、送電を中止し、終了処理を実行する(ステップS6)。一方、受電確認信号を受信した場合は、ステップS2の処理へ移行し、送電を継続する。
【0075】
受電装置40の制御部46は、受電確認信号を送信した後、切替え部43をオンして、検知部26等において少なくともQ値測定時に消費する分の電力を、送電信号から得て充電用のコンデンサ42に充電する(ステップS7)。Q値測定に必要な電力をコンデンサ42に充電したら、制御部46は、切り離し部44をオフして負荷を切り離す(ステップS8)。
【0076】
検知部26の各部は、該検知部26から負荷が切り離された後に、Q値測定を実行する。まず、Q値測定用信号源31が、受電コイル21で受信する送電信号と異なる周波数のQ値測定用信号を発生させる(ステップS9)。
【0077】
Q値測定用信号源31で発生したQ値測定用信号は、送電キャリア除去フィルタ部33を通過し、送電信号にQ値測定用信号が重畳される。そして、送電キャリア除去フィルタ部33によって、送電信号とQ値測定用信号が合成された交流信号から送電信号が除去され、この送電信号が除去された交流信号、すなわちQ値測定用信号(電圧V1,V2)がQ値測定回路34に入力される。
【0078】
Q値測定回路34は、入力されたQ値測定用信号から、共振周波数調整部32と送電キャリア除去フィルタ部33の間の電圧V1と、コンデンサ23の前側の電圧V2を検出する。そして、電圧V1,V2を例えばメモリ47に記録し、Q値を算出する(ステップS10)。
【0079】
判定部45は、Q値測定回路34が算出したQ値を、メモリ47に保持されている基準値と比較し、受電コイル21の近くに金属異物が存在するか否かを判定する(ステップS11)。
【0080】
判定部45が金属異物なしと判定した場合、制御部46は、切り離し部44をオンし、共振回路及び検知部26と負荷を接続し(ステップS12)、ステップS4の受電確認信号を送信する処理に移行する。
一方、金属異物ありと判定した場合、制御部46は、受電終了処理を実行する(ステップS13)。
【0081】
このステップS7〜S13の処理では、受電装置40が、2次側バッテリー又はコンデンサに充電した電力を利用して動作する。この例では、コンデンサ42に蓄電された電力を利用している。
【0082】
このように、給電中に切り離し部44をオンして負荷に電力を供給し、一方、Q値測定時に切り離し部44をオフして負荷を切り離すように構成したので、Q値測定時に負荷側の影響を受けることなく、正確なQ値測定が行える。
【0083】
(第2例)
図14は、送電装置10(図2)と受電装置40を備える非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(第2例)を示すフローチャートである。第2例では、第1例と比較して、金属異物の判定結果を受電装置40から送電装置10へ送信する点が異なる。
【0084】
図14のステップS41〜S52の処理は、図13のステップS1〜S12までの処理と同一なので、説明を省略する。
【0085】
ステップS51の判定処理において金属異物ありと判定した場合、制御部46は、通信部41を制御して異物検知信号を送電装置10へ送信する(ステップS53)。そして、制御部46は、異物検知信号を送電装置10へ送信した後、受電終了処理を実行する(ステップS54)。
【0086】
送電装置10は、受電装置40から異物検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS55)。異物検知信号を受信していない場合、ステップS42の処理に移行し、送電を継続する。一方、異物検知信号を受信した場合は、送電を中止し、異常終了処理を実行する(ステップS56)。
【0087】
このように、受電装置40が金属異物ありと判定した場合、異物検知信号を送電装置10へ送信することにより、送電装置10は、受電装置40から受電確認信号が送信されない場合でも、その理由を把握することができる。例えば、送電装置10と受電装置40の間に金属異物が存在することがわかれば、送電を停止したり、異常終了したりするなど、金属異物に対して適切な発熱対策をとることができる。
【0088】
<4.第3の実施形態>
[受電装置の構成例]
例えば、図2の整流部24の前(共振回路側)にフィルタ部を配置する場合には、送電信号のロスが増加する可能性があるが、受電を止めることなく、Q値測定を行うことができる。
そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態に係る受電装置20(図2参照)の整流部24の前(共振回路側)に測定用信号除去フィルタ部56を設けた例を説明する。これにより、Q値測定用信号に対して整流部側を高インピーダンスに見せることができる。
【0089】
図15は、本開示の第3の実施形態に係る受電装置の構成例を示す回路図である。
受電装置50は、コンデンサ23と整流部24の間に測定用信号除去フィルタ部56を設けている。測定用信号除去フィルタ部56は、送電キャリア除去フィルタ部33とは反対に、受電コイル21で受信した第1の周波数の送電信号を通過させ、Q値測定用信号源31で発生した第2の周波数のQ値測定用信号を遮断する。
【0090】
図15の例では、検知部26Aは、一例として増幅器52A,52Bと、その後段の送電キャリア除去フィルタ部33A,33Bと、整流部53A,53Bと、アナログ−デジタル変換器(以下、「ADC」という)54と、演算処理部55と、コンデンサ32Aを備える。さらに、Q値測定用信号源31と、増幅器51と、送電キャリア除去フィルタ部33Cを備える。送電キャリア除去フィルタ部33A〜33Cは、送電キャリア除去フィルタ部33に対応する。
【0091】
また、検知部26Aの演算処理部55と接続する判定部45と、該判定部45と接続する制御部46と、判定部45及び制御部46と接続するメモリ47を備えている。
【0092】
コンデンサ32Aは、共振周波数調整部32(図2参照)の一例であり、その一端がコンデンサ23と測定用信号除去フィルタ部56との接続中点と接続している。また、コンデンサ32Aの他端は、送電キャリア除去フィルタ部33Cと接続している。
【0093】
増幅器52Aの入力端は、共振周波数調整用のコンデンサ32Aの他端に接続している。また、増幅器52Bの入力端は、コンデンサ22とコンデンサ23の接続中点と接続している。
【0094】
増幅器52Aの出力端は、コンデンサ32Aの他端及び送電キャリア除去フィルタ部33Aと接続し、また増幅器52Bの出力端は、送電キャリア除去フィルタ部33Bと接続している。送電キャリア除去フィルタ部33B,33Cは、入力される送電信号とQ値測定用信号が合成された交流信号から送電信号を除去する。そして、送電キャリア除去フィルタ部33Bは、送電信号を除去後の交流信号(電圧V1に対応)を整流部53Aに入力する。また、送電キャリア除去フィルタ部33Cは、送電信号を除去後の交流信号(電圧V2に対応)を整流部53Aに入力する。
【0095】
整流部53Aは、入力された交流信号を検波(整流)してADC54に入力し、また整流部53Bは、入力された交流信号を検波(整流)してADC54に入力する。
【0096】
ADC54は、整流部53A,53Bから入力されるアナログの検波信号をデジタル信号に変換して、それぞれ演算処理部55へ出力する。
【0097】
演算処理部55は、図2のQ値測定回路34の一例として、ADC54より入力される検波信号から電圧V1と電圧V2の比、すなわちQ値を計算し、そのQ値を判定部45へ出力する。演算処理部55は、例えばMPU(Micro-Processing Unit)などの演算処理装置を適用できる。
【0098】
そして、判定部45は、演算処理部55により算出されたQ値を、メモリ47に保持した基準値と比較して金属異物の有無を判定する。判定部45は、その判定結果を制御部46へ出力する。
【0099】
図15に示す受電装置50では、図12の受電装置40のような通信部41が記載されていないが、受電装置50においても通信部41を備えるものとする。
【0100】
図15に示す構成においては、送電キャリア除去フィルタ部33A〜33C及び測定用信号除去フィルタ部56を設けたことにより、送電周波数に対しては図16に示す等価回路50Aを実現するように、Q値測定用周波数に対しては図17に示す等価回路を実現するように構成されている。
すなわち、送電周波数に対しては、図16に示すように、検知部26Aが存在しない状態と等価な回路が得られる。またQ値測定用周波数に対しては、図17に示すように、検知部26Aの構成があたかも検知部26A´の構成に変化し、かつ整流部24以降の負荷が接続されていない状態と等価な回路が得られる。
【0101】
なお、図15に示した受電装置50では、共振回路と共振周波数調整部32との接続形態を、図2に示す接続形態としたが、図10に示す接続形態としてもよいことは勿論である。また、受電装置50の共振回路は、図9及び図11に記載したような種々の共振回路の構成を採り得る。
【0102】
[受電装置の動作例]
(第1例)
受電装置50の動作例を説明する。図18は、送電装置10(図2)と受電装置50を備える非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(第1例)を示すフローチャートである。この例では、図13のフローチャートと比較して、コンデンサの充電及び負荷切り離しの処理が必要ない。
【0103】
まず、送電装置10(1次側)が送電を開始してから、受電装置50が受電を開始して受電確認信号を送電装置10に送信し、送電装置10がこの受電確認信号の受信の有無に応じて行うステップS21〜S26までの処理は、図14のステップS1〜S6までの処理と同じであるから、説明を省略する。
【0104】
ステップS24の処理を終了後、検知部26Aの各部はQ値測定を実行する。まず、Q値測定用信号源31が、受電コイル21で受信する送電信号と異なる周波数のQ値測定用信号を発生させる(ステップS27)。
【0105】
Q値測定用信号源31で発生したQ値測定用信号は、送電キャリア除去フィルタ部33Cを通過し、送電信号にQ値測定用信号が重畳される。そして、送電キャリア除去フィルタ部33A,33Bによって、送電信号とQ値測定用信号が合成された交流信号から送電信号が除去され、この送電信号が除去された交流信号、すなわちQ値測定用信号(電圧V1,V2)が増幅器52A,52Bに入力され、最終的に演算処理部55へ供給される。
【0106】
演算処理部55は、入力されたQ値測定用信号から、受電コイル21とコンデンサ23,32A全体にかかる電圧V1と、コンデンサ23の前側の電圧V2を検出する。そして、電圧V1,V2を例えばメモリ47に記録し、Q値を算出する(ステップS28)。
【0107】
判定部45は、演算処理部55が算出したQ値を、メモリ47に保持されている基準値と比較し、受電コイル21の近くに金属異物が存在するか否かを判定する(ステップS29)。
【0108】
判定部45が金属異物なしと判定した場合、制御部46は、ステップS24の受電確認信号を送信する処理に移行する。
一方、金属異物ありと判定した場合、制御部46は、受電終了処理を実行する(ステップS30)。
【0109】
このように、切り離し部によって負荷を切り離さなくても、送電キャリア除去フィルタ部及び測定用信号除去フィルタ部によって、正確なQ値測定を行える。また、負荷の切り離しを行わないので、受電装置50の電源として1次側の送電信号を利用することができる。それゆえ、受電装置40は、バッテリーやコンデンサを用いることなく、1次側から受信した送電信号の電力を用いて一連の動作を行うことができる。
【0110】
(第2例)
図19は、送電装置10(図2)と受電装置50を備える非接触電力伝送システムのQ値測定時の動作例(第2例)を示すフローチャートである。第2例では、第1例と比較して、金属異物の判定結果を受電装置50から送電装置10へ送信する点が異なる。
【0111】
図19のステップS61〜S69の処理は、図18のステップS21〜S29までの処理と同一なので、説明を省略する。
【0112】
ステップS69の判定処理において金属異物ありと判定した場合、制御部46は、通信部41を制御して異物検知信号を送電装置10へ送信する(ステップS70)。そして、判定部45は、異物検知信号を送電装置10へ送信した後、受電終了処理を実行する(ステップS71)。
【0113】
送電装置10は、受電装置50から異物検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS72)。異物検知信号を受信していない場合、ステップS62の処理に移行し、送電を継続する。一方、異物検知信号を受信した場合は、送電を中止し、異常終了処理を実行する(ステップS73)。
【0114】
このように、受電装置50が金属異物ありと判定した場合、異物検知信号を送電装置10へ送信することにより、送電装置10は、受電装置50から受電確認信号が送信されない場合でも、その理由を把握することができる。例えば、送電装置10と受電装置50の間に金属異物が存在することがわかれば、送電を停止したり、異常終了したりするなど、金属異物に対して適切な発熱対策をとることができる。
【0115】
<5.その他>
上述の第1〜第3の実施形態例では、受電装置20,20A,40,50の検知部26,26Aは、共振回路のコイルと共振周波数調整部32(一例としてコンデンサ)の両端間の電圧V1と、受電コイル21両端の電圧V2からQ値を求めているが、半値幅法によりQ値を求めてもよい。
【0116】
半値幅法では、直列共振回路を構成した場合において、図20のグラフに示すように共振周波数f0でのインピーダンス(Zpeak)の絶対値に対して√2倍のインピーダンスとなる帯域(周波数f1〜f2)より、下記の式(2)で求められる。
【数2】

【0117】
また、並列共振回路を構成した場合では、図21のグラフに示すように共振周波数f0でのインピーダンス(Zpeak)の絶対値に対して1/√2倍のインピーダンスとなる帯域(周波数f1〜f2)より、式(2)で求められる。
【0118】
上述した実施形態例では、受電装置においてQ値測定及び金属異物検知処理を行ったが、この例に限られない。受電装置20,20A,40,50で測定した電圧V1,V2の情報と、測定時のQ値測定用信号の周波数と、該周波数におけるQ値基準値を送電装置10へ送信し、送電装置10の例えば判定部45において2次側Q値の計算及び金属異物の有無を判定することも可能である。このようにした場合、受電装置の処理負荷が軽減される。
【0119】
なお、上述した実施形態例では、磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムを想定して説明をした。しかし、既述したように、本開示は、磁界共鳴方式に限定されるものではなく、結合係数kを高くしてQ値を低く抑えた電磁誘導方式にも適用可能である。
【0120】
また、上述した実施形態例では、送電装置10は送電機能のみ、また受電装置20,40,50は受電機能のみを有する構成として説明したが、これに限られない。例えば送電装置10が受電機能を有し、送電コイル11を通じて外部から電力を受電できるようにしてもよいし、逆に受電装置20が送電機能を有し、受電コイル21を通じて外部へ電力を送電できるようにしてもよい。
【0121】
また、上述した実施形態例では、共振周波数におけるQ値を測定しているが、Q値を測定する周波数は共振周波数と必ずしも一致していなくてもよい。共振周波数から許容できる範囲にずれた周波数を用いてQ値を測定した場合でも、本開示の技術を利用することにより、送電側と受電側との間に存在する金属異物の検出精度を向上させることは可能である。
【0122】
また、送電コイル又は受電コイルに、金属などの導体が近づくことでQ値だけでなく、L値が変化し共振周波数がずれることになるが、そのL値の変化による共振周波数のずれ量とQ値を併用して、電磁結合している状態を検知してもよい。
【0123】
また、送電コイルと受電コイル間に金属異物が挟まれたときに結合係数k値も変化するが、電磁結合している状態を検知するのに、結合係数k値とQ値の変化を併用してもよい。
【0124】
また、上述した実施形態例では、送電コイル及び受電コイルとしてコアを有していないコイルの例を説明したが、磁性体を有したコアに巻きつけられた構造のコイルを採用してもよい。
【0125】
さらにまた、本開示の実施形態例では、2次側の携帯機器に携帯電話機や携帯音楽プレーヤ、デジタルスチルカメラ等、電力を必要とする種々の機器に適用できる。
【0126】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
外部と電磁的に結合するコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える検知装置。
(2)
前記送電信号は第1の周波数の交流信号であり、前記測定用信号は第1の周波数と異なる第2の周波数の交流信号である
前記(1)に記載の検知装置。
(3)
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える前記(1)又は(2)に記載の検知装置。
(4)
前記共振回路に対して少なくとも前記コイルと反対側である負荷が接続される側に接続され、前記検知部が前記Q値の測定を行うとき、前記共振回路から前記負荷を電気的に切り離す切り離し部、をさらに備える
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の検知装置。
(5)
前記コイルが前記外部より受信した前記送電信号を用いて、前記検知部において前記Q値の測定時に消費する分の電力を少なくとも充電する蓄電部、をさらに備え、
前記検知部は、前記共振回路と前記負荷との接続がオフしている間、前記蓄電部に充電された電力を用いて前記Q値の測定を行う
前記(1)〜(4)のいずれかに記載の検知装置。
(6)
前記共振回路に対して少なくとも前記コイルと反対側である負荷が接続される側に接続された、第1の周波数の交流信号を通過させ、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させない第2周波数除去部、をさらに備える
前記(3)〜(5)のいずれかに記載の検知装置。
(7)
前記共振周波数調整部は、コンデンサ又はコイルの少なくともいずれかを備えて構成され、前記共振回路と前記第1周波数除去部との間に接続されている
前記(3)〜(6)のいずれかに記載の検知装置。
(8)
前記Q値測定部により求めたQ値を、予め設定された基準値と比較することにより、前記コイルと前記外部との電磁結合している状態を判断する判定部を、さらに備える
前記(1)〜(7)のいずれかに記載の検知装置。
(9)
前記コイルと前記外部との電磁結合している状態とは、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルを含む回路の存在の有無である
前記(8)に記載の検知装置。
(10)
前記Q値測定部は、前記第1周波数除去部を通過した前記交流信号から、前記共振回路を構成する前記コイルと前記共振周波数調整部との両端にかかる第1電圧と、前記コイルの両端にかかる第2電圧を取得し、第1電圧と第2電圧の比から前記Q値を計算する
前記(3)〜(9)のいずれかに記載の検知装置。
(11)
前記Q値測定部は、前記コイルを少なくとも含む直列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して√2倍となる帯域からQ値が求められる半値幅法を用いて、前記Q値を計算する
前記(3)〜(10)のいずれかに記載の検知装置。
(12)
前記Q値測定部は、前記コイルを少なくとも含む並列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して1/√2倍となる帯域からQ値が求められる半値幅法を用いて、前記Q値を計算する
前記(3)〜(11)のいずれかに記載の検知装置。
(13)
前記検知部により測定された前記Q値を前記送電信号の送電側へ送信する通信部、をさらに備える
前記(3)〜(11)のいずれかに記載の検知装置。
(14)
外部から受電するのに用いられるコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える受電装置。
(15)
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から、該第1の周波数と異なる第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える前記(14)に記載の受電装置。
(16)
電力を無線により送電する送電装置と、該送電装置からの電力を受電する受電装置を含んで構成され、
前記受電装置は、
外部から受電するのに用いられるコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える非接触電力伝送システム。
(17)
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から、該第1の周波数と異なる第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える(16)に記載の非接触電力伝送システム。
(18)
検知装置が備える検知部により、コイルに非接触で伝送される送電信号に対し該コイルを少なくとも含む共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳すること、
前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去すること、
前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行うこと
を含む検知方法。
(19)
前記送電信号は第1の周波数の交流信号であり、前記測定用信号は第1の周波数と異なる第2の周波数の交流信号であり、
前記検知部が備える共振周波数調整部を前記共振回路と接続することにより、前記共振回路の共振周波数が第1の周波数から第2の周波数に変更する
前記(18)に記載の検知方法。
【0127】
なお、上述した一実施形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0128】
また、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0129】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0130】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0131】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0132】
以上、本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
すなわち、上述した各実施形態の例は、本開示の好適な具体例であるため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本開示の技術範囲は、各説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる使用材料とその使用量、処理時間、処理順序および各パラメータの数値的条件等は好適例に過ぎず、また説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【符号の説明】
【0133】
8…Q値測定回路、10…送電装置、10A…送電コイル、20,20A…受電装置、21…受電コイル、22,23,23´…コンデンサ、24…整流部、25…負荷、26,26A,26A´…検知部、31…Q値測定用信号源、32…共振周波数調整部、33,33A,33B,33C…送電キャリア除去フィルタ部、34…Q値測定回路、41…通信部、41R…抵抗素子、41S…切替え部、42…コンデンサ、43…切替え部、44…切り離し部、45…判定部、46…制御部、47…メモリ、50…受電装置、50A,50B…等価回路、51,52A,52B…増幅部、53A,53B…整流部、54…ADC、55…演算処理部、56…測定用信号除去フィルタ部、100,100A…非接触電力伝送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と電磁的に結合するコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える検知装置。
【請求項2】
前記送電信号は第1の周波数の交流信号であり、前記測定用信号は第1の周波数と異なる第2の周波数の交流信号である
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記共振回路に対して少なくとも前記コイルと反対側である負荷が接続される側に接続され、前記検知部が前記Q値の測定を行うとき、前記共振回路から前記負荷を電気的に切り離す切り離し部、をさらに備える
請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記コイルが前記外部より受信した前記送電信号を用いて、前記検知部において前記Q値の測定時に消費する分の電力を少なくとも充電する蓄電部、をさらに備え、
前記検知部は、前記共振回路と前記負荷との接続がオフしている間、前記蓄電部に充電された電力を用いて前記Q値の測定を行う
請求項4に記載の検知装置。
【請求項6】
前記共振回路に対して少なくとも前記コイルと反対側である負荷が接続される側に接続された、第1の周波数の交流信号を通過させ、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させない第2周波数除去部、をさらに備える
請求項3に記載の検知装置。
【請求項7】
前記共振周波数調整部は、コンデンサ又はコイルの少なくともいずれかを備えて構成され、前記共振回路と前記第1周波数除去部との間に接続されている
請求項3に記載の検知装置。
【請求項8】
前記Q値測定部により求めたQ値を、予め設定された基準値と比較することにより、前記コイルと前記外部との電磁結合している状態を判断する判定部を、さらに備える
請求項3に記載の検知装置。
【請求項9】
前記コイルと前記外部との電磁結合している状態とは、前記コイルの近傍における導体又は任意のコイルを含む回路の存在の有無である
請求項8に記載の検知装置。
【請求項10】
前記Q値測定部は、前記第1周波数除去部を通過した前記交流信号から、前記共振回路を構成する前記コイルと前記共振周波数調整部との両端にかかる第1電圧と、前記コイルの両端にかかる第2電圧を取得し、第1電圧と第2電圧の比から前記Q値を計算する
請求項3に記載の検知装置。
【請求項11】
前記Q値測定部は、前記コイルを少なくとも含む直列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して√2倍となる帯域からQ値が求められる半値幅法を用いて、前記Q値を計算する
請求項3に記載の検知装置。
【請求項12】
前記Q値測定部は、前記コイルを少なくとも含む並列共振回路の共振周波数でのインピーダンスの絶対値に対して1/√2倍となる帯域からQ値が求められる半値幅法を用いて、前記Q値を計算する
請求項3に記載の検知装置。
【請求項13】
前記検知部により測定された前記Q値を前記送電信号の送電側へ送信する通信部、をさらに備える
請求項3に記載の検知装置。
【請求項14】
外部から受電するのに用いられるコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える受電装置。
【請求項15】
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から、該第1の周波数と異なる第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える請求項14に記載の受電装置。
【請求項16】
電力を無線により送電する送電装置と、該送電装置からの電力を受電する受電装置を含んで構成され、
前記受電装置は、
外部から受電するのに用いられるコイルと、
前記コイルを少なくとも含む共振回路と、
前記コイルに非接触で伝送される送電信号に対し前記共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳し、前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去し、前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行う検知部と、
を備える非接触電力伝送システム。
【請求項17】
前記検知部は、
前記共振回路と接続しており、前記共振回路の共振周波数を第1の周波数から、該第1の周波数と異なる第2の周波数に変更するための共振周波数調整部と、
第1の周波数の交流信号を通過させず、かつ少なくとも第2の周波数の交流信号を通過させる第1周波数除去部と、
前記第1周波数除去部を通過した前記測定用信号を含む交流信号を用いて、前記Q値を計算するQ値測定部と、
を備える請求項16に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項18】
検知装置が備える検知部により、コイルに非接触で伝送される送電信号に対し該コイルを少なくとも含む共振回路のQ値を測定するための測定用信号を重畳すること、
前記送電信号に前記測定用信号が重畳された交流信号から前記送電信号を除去すること、
前記送電信号が除去された前記交流信号を用いて前記Q値の測定を行うこと
を含む検知方法。
【請求項19】
前記送電信号は第1の周波数の交流信号であり、前記測定用信号は第1の周波数と異なる第2の周波数の交流信号であり、
前記検知部が備える共振周波数調整部を前記共振回路と接続することにより、前記共振回路の共振周波数が第1の周波数から第2の周波数に変更する
請求項18に記載の検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115981(P2013−115981A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261816(P2011−261816)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】