説明

検知電極およびそれを用いたヘッドレスト位置調整装置

【課題】検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知すること。
【解決手段】検知電極110は、矩形板状の外観を有して形成され、第1センサ部111と、第2センサ部112とを備え、さらに第1センサ部111の外縁側にシールド部119を備える。第1および第2センサ部111,112は、平面的に形成された銅箔などをロの字状にパターン形成してなる。第1および第2センサ部111,112は、第1センサ部111が電極全体の外縁側に配置され、第2センサ部112が電極の中心Q側に第1センサ電極111により外縁側が囲まれるように配置され、一部が接続部118によって電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知領域に存する物体との間の静電容量を検知する検知電極およびそれを用いたヘッドレスト位置調整装置に関し、特に簡単な構成で安定的に静電容量を検知することができる検知電極およびそれを用いたヘッドレスト位置調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検知領域に存する物体を検出するものとして、次のようなものが知られている。すなわち、下記特許文献1に開示されている物体検出装置は、電極間隔が一定とされた複数のセンサ電極を樹脂にインサートして、インサート成形によりセンサ電極ユニットを形成している。このセンサユニットは、中空の断面略矩形状で、その少なくとも一辺にセンサ電極が設けられ、これにより検出性能を維持して取付自由度を向上させるとしている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−213296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている物体検出装置では、例えば複数のセンサ電極の中心と検知対象物(物体)の中心とが正対しているような場合では、各センサ電極によって安定的に静電容量を検知することができるが、これらの中心がずれてしまっている場合には、前者の場合と比べて静電容量値が大きく変化してしまうことがある。
【0005】
この場合は、正確に検知対象物を検知したり識別したり(例えば、検知対象物の位置を検出したり、大きさや種類などを識別したり)することができず、検出性能が低下してしまうおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、検知対象物と電極との中心がずれてしまっている場合であっても、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知することができる検知電極およびそれを用いたヘッドレスト位置調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る検知電極は、検知領域に存する検知対象物との間の静電容量を検知する検知電極であって、外縁の大きさを異にし、外縁がより大きいセンサ部が外縁がより小さいセンサ部を囲むように互いに配置された囲繞形状の箔状の複数のセンサ部が設けられ、外縁がより小さいセンサ部の少なくとも一部分およびそれに対向する部分の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る検知電極は、以上のように構成することにより、箔状のセンサ部がいわゆるべた塗り状態で形成されたものと比べて、検知対象物と電極との中心がずれてしまっている場合であっても、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知することができる。
【0009】
前記複数のセンサ部は、例えば中心が同位置になるように配置されている。また、前記少なくとも一部分およびそれに対向する部分は、例えば前記複数のセンサ部の中心位置を中心として互いに対称となるように形成されている。
【0010】
また、前記複数のセンサ部は、例えば対向する一組以上の辺を有する多角形状に形成されており、外縁がより小さいセンサ部の前記対向する辺の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように形成されている。
【0011】
さらに、前記複数のセンサ部は、例えばそれぞれ一部を除いて非接触状態で設けられている。また、前記複数のセンサ部は、例えば二重または三重の囲繞形状に設けられている。
【0012】
そして、最も外縁がより大きいセンサ部のさらに外縁側に、例えば該センサ部を囲むようにシールド部が設けられていてもよく、前記シールド部は、例えば前記センサ部と同等の電位が与えられ、または接地されている。
【0013】
本発明に係るヘッドレスト位置調整装置は、車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に沿って並設された状態で設けられ、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する複数の検知電極と、前記複数の検知電極からの検知信号が示す静電容量値を検出する検出回路と、前記検出回路によって検出された静電容量値を用いて、前記ヘッドレストの前記座席に対する位置を前記頭部への適正位置に調整する位置調整手段とを備え、前記複数の検知電極には、それぞれ外縁の大きさを異にし、外縁がより大きいセンサ部が外縁がより小さいセンサ部を囲むように互いに配置された囲繞形状の箔状の複数のセンサ部が設けられ、外縁がより小さいセンサ部の少なくとも一部分およびそれに対向する部分が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明のヘッドレスト位置調整装置は、以上のように構成することにより、検知対象物と電極との中心がずれてしまっている場合であっても、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に静電容量値を検出して、ヘッドレストの座席に対する位置を頭部への適正位置に自動的に調整することができる。このため、ヘッドレストに対して頭部が正対していない状態であっても短時間で高精度なヘッドレストの位置調整を行うことが可能となる。また、自動的にヘッドレストの座席に対する位置を調整することができるため、ヘッドレスト位置未調整に伴う車両の衝突時などにおける乗員の頸椎損傷などの事故防止を図ることができる。
【0015】
なお、前記複数の検知電極は、例えば前記ヘッドレストの高さ方向全域にわたって等間隔をおいて配置されていたり、また、例えばそれぞれ前記ヘッドレストの前方表面に沿った前記高さ方向と交差する幅方向に長手方向を有する矩形短冊状の外観を持って形成され、前記ヘッドレストの前面側に配置されている。さらに、前記複数の検知電極は、例えば前記ヘッドレストの前面側に少なくとも5つ設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検知対象物と電極との中心がずれてしまっている場合であっても、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知することができる。また、本発明によれば、ヘッドレストの座席に対する位置を頭部への適正位置に自動的に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る検知電極およびそれを用いたヘッドレスト位置調整装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る検知電極を説明するための説明図、図2は比較例の検知電極を説明するための説明図、図3は本発明の一実施の形態に係る他の検知電極を説明するための説明図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本発明の一実施の形態に係る検知電極110は、検知領域に存する検知対象物との間の静電容量を検知するものであり、例えば矩形板状(矩形短冊状)の外観を有する形状で形成され、第1センサ部111と、第2センサ部112とを備えて構成されている。また、本例の検知電極110は、第1および第2センサ部111,112のさらに外縁側に、外乱などの影響を防ぐためのシールド部119を備えている。
【0020】
検知電極110の第1および第2センサ部111,112は、平面的に形成された(配置された)銅箔などを囲繞形状(ここでは、ロの字状)にパターン形成してなる。第1センサ部111は、検知電極110全体の外縁に沿って、例えば長さAおよびBの幅を有するロの字状で形成され、第2センサ部112は、第1センサ部111よりも検知電極110の中心Q側かつ第1センサ部111に囲まれるように、長さaおよびbの幅を有するロの字状で形成されている。
【0021】
そして、第1および第2センサ部111,112は、例えばそれぞれ矩形の四隅の部分で、両センサ部111,112を繋ぐ接続部118により電気的に接続されている。すなわち、第1および第2センサ部111,112は、一部(接続部118)を除いて非接触状態(電気的に絶縁された状態)に形成されている。この場合の検知電極110は、いわゆる二重ロの字状に第1および第2センサ部111,112が形成されたものである。
【0022】
シールド部119は、ここでは第1センサ部111の外縁側に、この第1センサ部111を囲むように形成され、例えば両センサ部111,112の電位と同等の電位が与えられて駆動されたり、接地されたりしている。なお、このシールド部119は必須の構成ではないので、検知電極110の外乱などの影響を受けにくい設置環境下などでは形成されていなくてもよい。
【0023】
この検知電極110においては、上記第1センサ部111と第2センサ部112とが次のような特徴を有する。すなわち、第1センサ部111の幅AおよびBは、それぞれ第2センサ部112の幅aおよびbよりも長くなるように形成されている。また、第1センサ部111の表面積は、第2センサ部112の表面積よりも広くなるように形成されている。なお、第1および第2センサ部111,112の幅は、それぞれ一定(すなわち、幅AおよびBが同一で、幅aおよびbが同一)であってもよい。
【0024】
このように、本例の検知電極110は、電極全体の外縁側から中心Q側に向かって順に表面積および幅の少なくとも一つが小さくなり、かつ外縁側の第1センサ部111が中心Q側の第2センサ部112を内側に囲むように設けられている。つまり、本例の検知電極110は、それぞれ外縁の大きさを異にし、外縁がより大きいセンサ部(第1センサ部111)が外縁がより小さいセンサ部(第2センサ部112)を囲むように互いに配置された囲繞形状の箔状のセンサ部111,112を備えている。
【0025】
すなわち、これらセンサ部111,112は、外縁がより小さいセンサ部112の少なくとも一部分およびそれに対向する部分の幅が、外縁がより大きいセンサ部111の幅よりも狭くなるように設けられている。具体的には、これらセンサ部111,112は、外縁がより大きいセンサ部(第1センサ部111)の表面積および幅の少なくとも一つが、外縁がより小さいセンサ部(第2センサ部112)の表面積および幅の少なくとも一つよりも大きくなるように設けられているといえる。
【0026】
より具体的には、各センサ部111,112は、中心Qが同位置になるように配置されており、上述した少なくとも一部分およびそれに対向する部分は、この中心Qの位置を中心として互いに対称となるように形成されている。このため、この検知電極110においては、検知対象物の中心が電極の中心Qと正対しているときはもとより、電極の中心Qと正対せずに電極に向かって左右あるいは上下にずれているときであっても、安定的に静電容量を検知することが可能となる。
【0027】
なお、この検知電極110は、具体的には、例えばY軸方向の全体幅が140mmで、第1センサ部111の全体幅が136mmに形成されている。また、例えばX軸方向の全体幅が100mmで、第1センサ部111の全体幅が96mmに形成されている。また、シールド部119は、第1センサ部111の外縁との間に約1mmのギャップを介して幅1mmで囲むように形成されている。
【0028】
そして、本出願人は、このように構成された検知電極110の検知特性を調べるために、次の条件にて実験を行った。この実験では、検知電極110の中心QからY軸方向に20mm〜80mmの範囲において、それぞれ(a)30mm,(b)40mm,(c)50mm,(d)60mmと位置する測定点において、例えば検知対象物としての直径160mm(φ160mm)の球体を検知面と直交するZ軸方向に10mm,60mmと離した状態での検知電極110からの出力変化量ΔC(pF)を算出した。この算出結果は、図1(b)に示すような結果となった。
【0029】
すなわち、図1(b)に示すように、上記(a)〜(d)の各測定点における出力変化量ΔCは、ほぼすべて1.25pF〜1.75pFの範囲に収まったため、Y軸方向に検知対象物がずれたとしても、安定して変化量の少ない出力特性で高出力の静電容量を検知することができるといえる結果となった。
【0030】
一方、比較例として、図2(a)に示すように、第1センサ部111cおよびシールド部119cを有する検知電極110cにおいて、上記条件と同様に、中心QcからY軸方向に検知対象物が上記各測定点(a)〜(d)に位置する場合について、同様に実験を行った。その結果、図2(b)に示すように、上記(a)〜(d)の各測定点における出力変化量ΔCは、ほぼすべて0.75pF〜1.25pFの範囲に収まったが、結果的に安定して変化量の少ない出力特性とはいえるが、高出力の静電容量を検知することはできなかった。
【0031】
したがって、本例の検知電極110のように、ロの字状のセンサ部111,112が二重に形成されている場合には、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知することができることが判明した。そして、このような出力特性などを有する検知電極110を用いれば、静電容量を利用して制御などを行う場合のしきい値の設定可能範囲を広げたり、電極そのものの検知性能をさらに向上させたりすることができるため、様々な状況にて有効利用することが可能となる。
【0032】
なお、図3(a)に示すように、第1および第2センサ部111,112の他に、さらに第2センサ部112の内側にロの字状の第3センサ部113を形成し、各センサ部111〜113を接続部118により電気的に接続した検知電極110Aについても、上記条件と同様に実験を行った。そして、第3センサ部113は、図示は省略するが、その表面積および幅のいずれかは、第1および第2センサ部111,112の表面積および幅よりも小さくなるように形成されている。
【0033】
この結果、図3(b)に示すように、上記(a)〜(d)の各測定点における出力変化量ΔCは、ほぼすべて1.5pF〜2.5pFの範囲に収まったため、Y軸方向に検知対象物がずれたとしても、安定して変化量の少ない出力特性で高出力の静電容量を検知することができるといえる結果となった。したがって、この検知電極110Aのように、ロの字状のセンサ部111〜113が三重に形成されている場合でも、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に検知対象物を検知することが可能となる。
【0034】
なお、上述した例では検知電極110,110Aが二重あるいは三重のロの字状のセンサ部を有する場合について説明したが、センサ部は、ロの字状だけではなく、円形や楕円形、あるいは対向する一組以上の辺を有する多角形状などの囲繞形状であればよく、これ以上の数(例えば、四重、五重など)の囲繞形状で形成されていてもよい。上記多角形状である場合は、外縁がより小さいセンサ部(例えば、センサ部112)の対向する辺の幅が、外縁がより大きいセンサ部(例えば、センサ部111)の幅よりも狭くなればよい。
【0035】
次に、上述した検知電極110または110Aを用いたヘッドレスト位置調整装置について説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置を配置した車両の座席の例を示す概略図、図5は同ヘッドレスト位置調整装置の一部のヘッドレストにおける配置例を示す説明図、図6は同ヘッドレスト位置調整装置の全体構成の例を示すブロック図である。
【0036】
また、図7は、同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量検知回路の構成例を示すブロック図、図8は同ヘッドレスト位置調整装置の検出回路の動作波形の例を示す動作波形図である。なお、以降において、既に説明した箇所と重複する箇所については説明を割愛し、本発明に特に関わる部分以外は明記しない場合があることとする。
【0037】
図4および図5に示すように、ヘッドレスト位置調整装置100は、車両などの座席40に設けられ、例えば座席40のヘッドレスト43に配置された静電容量センサ部10と、座席40の背もたれ部41に配置された駆動モータ部30とを備えて構成されている。本実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置100では、静電容量センサ部10と駆動モータ部30は、例えばハーネス29により電気的に接続されている。
【0038】
静電容量センサ部10は、例えば基板19の一方の面側に形成された複数の検知電極11〜15と、この基板19の他方の面側に形成された検出回路20とを備えて構成され、座席40の着座部42に着座した人体48の頭部49とヘッドレスト43(具体的には、検知電極11〜15)との間の静電容量を検知する。
【0039】
基板19は、例えばフレキシブルプリント基板、リジッド基板あるいはリジッドフレキシブル基板により構成されている。また、複数の検知電極11〜15は、上述した検知電極110,110Aと同様の構成を備え、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)あるいはエポキシ樹脂などの絶縁体からなる基板19上にパターン形成された銅、銅合金またはアルミニウムなどからなる第1および第2センサ部111,112を有する。
【0040】
これら複数の検知電極11〜15は、例えばヘッドレスト43の前面側において、ヘッドレスト43の前方の表面に沿った高さ方向と交差する幅方向に、その長手方向を有する矩形短冊状に形成され、ヘッドレスト43の高さ方向に沿って検知電極11〜15の幅方向が並ぶように高さ方向全域にわたって等間隔をおいて並設された状態で配置されている。
【0041】
そして、複数の検知電極11〜15には、例えばそれぞれ電極番号1〜5が割り当てられている。これら複数の検知電極11〜15は、本例では5つ設けられているが、例えば検出された検知信号の出力が最も高い検知電極がヘッドレスト43の高さ方向の中心位置P’よりも上方に位置するような態様や数が配置されていればよく、例えば5以上設けられていてもよい。
【0042】
検出回路20は、複数の検知電極11〜15からの検知信号に基づいて、これら各検知電極11〜15のうち、例えば検知信号の出力が最も高い検知電極を検出する。この検出回路20は、図6に示すように、例えば複数の検知電極11〜15とそれぞれ一対一で接続され、各検知電極11〜15により検知された静電容量を示す情報を出力する複数の静電容量検知回路21〜25と、これら複数の静電容量検知回路21〜25と接続され、各静電容量検知回路21〜25から出力された情報に基づく静電容量値を比較して検知された静電容量値が最も大きい検知電極を検出し、検出結果に応じたヘッドレスト43の駆動情報を駆動モータ部30のモータ駆動回路(図示せず)に出力する演算処理回路28とを備えて構成されている。
【0043】
複数の静電容量検知回路21〜25は、例えば各検知電極11〜15と頭部49との間の静電容量に応じてデューティー比が変化するパルス信号を生成するとともに平滑化して検知信号を出力する。演算処理回路28は、例えばCPU、RAM、ROMなどを備えてなり、各静電容量検知回路21〜25から出力された検知信号に基づく静電容量値を比較して、例えば検知された静電容量値が最も大きい検知電極を検出するとともに、ヘッドレスト43の位置を変化させる駆動モータ部30に対して検出結果に基づく制御信号(駆動情報)を出力する。
【0044】
各静電容量検知回路21(22〜25)は、図7に示すように、静電容量Cに応じてデューティー比が変化するものであり、例えば一定周期のトリガ信号TGを出力するトリガ信号発生回路101と、入力端に接続された静電容量Cの大きさによってデューティー比が変化するパルス信号Poを出力するタイマー回路102と、このパルス信号Poを平滑化するローパスフィルタ(LPF)103とを備えて構成されている。
【0045】
タイマー回路102は、例えば2つの比較器201,202と、これら比較器201,202の出力がそれぞれリセット端子Rおよびセット端子Sに入力されるRSフリップフロップ(以下、「RS−FF」と呼ぶ。)203と、このRS−FF203の出力DISをLPD103に出力するバッファ204と、RS−FF203の出力DISでオン/オフ制御させるトランジスタ205とを備えて構成されている。
【0046】
比較器202は、トリガ信号発生回路101から出力される図8に示すようなトリガ信号TGを、抵抗R1,R2,R3によって分割された所定のしきい値Vth2と比較して、トリガ信号TGに同期したセットパルスを出力する。このセットパルスは、RS−FF203のQ出力をセットする。
【0047】
このQ出力は、ディスチャージ信号DISとしてトランジスタ205をオフ状態にし、検知電極11(12〜15)およびグランドの間を、各検知電極11(12〜15)の対接地静電容量Cおよび入力端と電源ラインとの間に接続された抵抗R4による時定数で決まる速度で充電する。これにより、入力信号Vinの電位が静電容量Cによって決まる速度で上昇する。
【0048】
入力信号Vinが、抵抗R1,R2,R3で決まるしきい値Vth1を超えたら、比較器201の出力が反転してRS−FF203の出力を反転させる。この結果、トランジスタ205がオン状態となって、検知電極11(12〜15)に蓄積された電荷がトランジスタ205を介して放電される。
【0049】
したがって、このタイマー回路102は、図8に示すように、検知電極11(12〜15)および接近した人体48の頭部49との間の静電容量Cに基づくデューティー比で発振するパルス信号Poを出力する。LPF103は、この出力を平滑化することにより、図8に示すような直流の検知信号Voutを出力する。なお、図8中において、実線で示す波形と点線で示す波形は、前者が後者よりも静電容量が小さいことを示しており、例えば後者が物体接近状態を示している。
【0050】
駆動モータ部30は、各静電容量検知回路21〜25からの検知信号Voutによって、例えば検知信号の出力が最も高い(大きい)検知電極(以下、「該当検知電極」と呼ぶ。)を検出した演算処理回路28からの制御信号に基づいて、図示しない駆動モータを制御して、ヘッドレスト43の座席40の背もたれ部41に対する位置を、該当検知電極がヘッドレスト43の高さ方向の中心位置P’よりも上方に位置するように変化させるモータ駆動回路と、このモータ駆動回路の制御により、ヘッドレスト43の位置を実際に移動させる駆動モータとを備えて構成されている。
【0051】
なお、この駆動モータは、この実施の形態ではヘッドレスト43を支持軸43aを介して上下方向(高さ方向)に移動自在に駆動するが、これに加えて例えば上下方向とそれぞれ交差する左右方向や前後方向に移動自在に駆動するようにしてもよい。また、ヘッドレスト43の高さ方向の中心位置P’は、ここではヘッドレスト43の前面側を正面に見たときの中心部分を指すが、ヘッドレスト43の形状等によりその位置は適宜変化してもよい。
【0052】
このように構成されたヘッドレスト位置調整装置100では、例えば初期状態(ヘッドレスト43の位置が背もたれ部41に対して最も近い状態)において、静電容量センサ部10の各検知電極11〜15にて頭部49との間の静電容量Cを検知し、検出回路20にてその出力のピークを検出して比べることで、例えば出力が最も高い電極である該当検知電極を検出する。そして、この該当検知電極の位置が、ヘッドレスト43の高さ方向の中心位置P’よりも上方に位置するときがヘッドレスト43の頭部49に対する適正位置として位置調整を行う。
【0053】
また、このヘッドレスト位置調整装置100では、各検知電極11〜15が、上述した検知電極110,110Aと同様の構成からなる。このため、図5に示すように、各検知電極11〜15の中心に対して頭部49が正対する場合でも、頭部49がヘッドレスト43の左右方向にずれて各検知電極11〜15と正対しない場合(すなわち、検知対象物(頭部49)と電極(検知電極11〜15)との中心がずれてしまっている場合)でも、検知する静電容量の変化が少なく正確かつ安定的に静電容量値を検出することができる。
【0054】
これにより、短時間で高精度なヘッドレスト43の位置調整を行うことが可能となる。また、自動的に最適な位置にヘッドレスト43を移動させることができるので、ヘッドレスト43の位置未調整に伴う衝突時などにおける人体48の頸椎損傷などの事故防止を図ることができる。
【0055】
なお、この実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置100の静電容量センサ部10と駆動モータ部30は、ハーネス29により電気的に接続されていたが、例えば無線などのデバイスによって遠隔制御可能に構成されていてもよい。また、駆動モータ部30が静電容量センサ部10と一体的に構成され、ヘッドレスト43側に配置されていてもよい。
【0056】
さらに、検出回路20は、例えば検知信号の出力が最も高い検知電極を検出してヘッドレスト43を移動させる他に、演算処理回路28によって、車両の乗員(人体)の頭部49の形状をプロファイルし、このプロファイル結果から適正位置をあらかじめ記憶しておき、位置調整開始時に記憶されたプロファイルを読み出してヘッドレスト43を乗員に合わせて移動するようにしてもよい。
【0057】
その他、検出回路20は、例えばヘッドレスト位置調整装置100の工場出荷時などにあらかじめプリセットされた人体49のプロファイル情報(頭部49の形状に関する情報を含む)やヘッドレスト43の形状(大きさ、表面形状など)に関する情報などに基づいて、ヘッドレスト43の高さ方向の中心位置P’を含めた任意の位置を、頭部49の中心位置Pと水平方向に一致する位置に合わせるように移動させるようにしてもよい。
【0058】
図9は、本発明の一実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置の全体構成の他の例を示すブロック図である。図9に示すように、検出回路20は、各検知電極11〜15と接続された時分割回路26と、この時分割回路26により各検知電極11〜15にてそれぞれ異時的に検知された静電容量を示す情報を出力する静電容量検知回路27とを備える。
【0059】
また、この静電容量検知回路27から出力された情報に基づく静電容量値を比較して、例えば検知された静電容量値が最も大きい該当検知電極を検出し、検出結果に応じたヘッドレスト43の駆動情報を駆動モータ部30のモータ駆動回路に出力する演算処理回路28を備える。
【0060】
このように検出回路20を構成すれば、時分割回路26を介して各検知電極11〜15にて静電容量を順番に走査(スキャニング)し、その結果に基づき、例えば出力が最も高い該当検知電極を検出して上述したようなヘッドレスト43の位置調整を行うことが可能となる。したがって、このような構成の検出回路20を採用しても、短時間で高精度なヘッドレスト43の位置調整を行うことが可能となる。
【0061】
なお、上述した一実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置100では、車両の座席40のヘッドレスト43にヘッドレスト位置調整装置100を適用した場合を例に挙げて説明したが、このヘッドレスト位置調整装置100は、車両のみならず、その他にも、ヘッドレストの位置を可変可能なアトラクションにおける座席や、劇場観賞用の座席などに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施の形態に係る検知電極を説明するための説明図である。
【図2】比較例の検知電極を説明するための説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る他の検知電極を説明するための説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置を配置した車両の座席の例を示す概略図である。
【図5】同ヘッドレスト位置調整装置の一部のヘッドレストにおける配置例を示す説明図である。
【図6】同ヘッドレスト位置調整装置の全体構成の例を示すブロック図である。
【図7】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量検知回路の構成例を示すブロック図である。
【図8】同ヘッドレスト位置調整装置の検出回路の動作波形の例を示す動作波形図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るヘッドレスト位置調整装置の全体構成の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
10…静電容量センサ部、11〜15,110,110A…検知電極、19…基板、20…検出回路、21〜25,27…静電容量検知回路、26…時分割回路、28…演算処理回路、29…ハーネス、30…駆動モータ部、40…座席、41…背もたれ部、42…着座部、43…ヘッドレスト、43a…支持軸、48…人体、49…頭部、111…第1センサ部、112…第2センサ部、113…第3センサ部、118…接続部、119…シールド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域に存する検知対象物との間の静電容量を検知する検知電極であって、
外縁の大きさを異にし、外縁がより大きいセンサ部が外縁がより小さいセンサ部を囲むように互いに配置された囲繞形状の箔状の複数のセンサ部が設けられ、外縁がより小さいセンサ部の少なくとも一部分およびそれに対向する部分の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように設けられている
ことを特徴とする検知電極。
【請求項2】
前記複数のセンサ部は、中心が同位置になるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の検知電極。
【請求項3】
前記少なくとも一部分およびそれに対向する部分は、前記複数のセンサ部の中心位置を中心として互いに対称となるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の検知電極。
【請求項4】
前記複数のセンサ部は、対向する一組以上の辺を有する多角形状に形成されており、外縁がより小さいセンサ部の前記対向する辺の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の検知電極。
【請求項5】
前記複数のセンサ部は、それぞれ一部を除いて非接触状態で設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の検知電極。
【請求項6】
前記複数のセンサ部は、二重または三重の囲繞形状に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の検知電極。
【請求項7】
最も外縁がより大きいセンサ部のさらに外縁側に、該センサ部を囲むようにシールド部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の検知電極。
【請求項8】
前記シールド部は、前記複数のセンサ部と同等の電位が与えられ、または接地されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の検知電極。
【請求項9】
車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に沿って並設された状態で設けられ、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する複数の検知電極と、
前記複数の検知電極からの検知信号が示す静電容量値を検出する検出回路と、
前記検出回路によって検出された静電容量値を用いて、前記ヘッドレストの前記座席に対する位置を前記頭部への適正位置に調整する位置調整手段とを備え、
前記複数の検知電極には、それぞれ外縁の大きさを異にし、外縁がより大きいセンサ部が外縁がより小さいセンサ部を囲むように互いに配置された囲繞形状の箔状の複数のセンサ部が設けられ、外縁がより小さいセンサ部の少なくとも一部分およびそれに対向する部分の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように設けられている
ことを特徴とするヘッドレスト位置調整装置。
【請求項10】
前記複数のセンサ部は、中心が同位置になるように配置されていることを特徴とする請求項9記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項11】
前記少なくとも一部分およびそれに対向する部分は、前記複数のセンサ部の中心位置を中心として互いに対称となるように形成されていることを特徴とする請求項10記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項12】
前記複数のセンサ部は、対向する一組以上の辺を有する多角形状に形成されており、外縁がより小さいセンサ部の前記対向する辺の幅が、外縁がより大きいセンサ部の幅よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項13】
前記複数の検知電極は、前記ヘッドレストの高さ方向全域にわたって等間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項14】
前記複数の検知電極は、それぞれ前記ヘッドレストの前方表面に沿った前記高さ方向と交差する幅方向に長手方向を有する矩形短冊状の外観を持って形成され、前記ヘッドレストの前面側に配置されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項15】
前記複数の検知電極は、前記ヘッドレストの前面側に少なくとも5つ設けられていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−153546(P2009−153546A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331512(P2007−331512)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】