説明

極細シース熱電対と極細シース熱電対を用いた温度測定センサー

【課題】 応答速度を速くし、熱容量を小さくし、優れた可撓性を有し、ロボットなどの狭い箇所への配置を可能とするシース型熱電対の提供を目的する。
【解決手段】 SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内にN熱電対素線、E熱電対素線、J熱電対素線、T熱電対素線あるいはK熱電対素線の芯線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、芯線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細シース熱電対とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細シース熱電対と極細シース熱電対を用いた温度測定センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシース熱電対は、最小外径のもので0.2mm程度であるが、より一層早い応答速度(短い応答時間)とし、優れた可撓性を有し、狭い箇所への配置が可能になるような極細シース熱電対が求められている。
【0003】
現在、ロボット技術の進歩により、人間に近い形状や機能を有するロボットが開発されている。
【0004】
ロボットは、例えば人間のような手足、あるいは指を有してあたかも人間と同じように関節を屈曲させたり物をつかんだりする。医療や介護に用いられるロボットはその指で介護すべき人間に触れたり、あるいは介護すべき人間に食事を運んだりする。
【0005】
医療や介護に用いられるロボットは、体温あるいは食事の温度を計測するといった応用的な動きに伴い、その指の先端部分で温度計測する必要が生じる。
【0006】
しかしながら、ロボットの指は10mm程度の直径であり、しかも複数箇所の関節構造を有する。ロボットの先端に熱感知部である熱接点を有するシース熱電対を指の内部に通して配置すると、従来のシース熱電対は0.2mm以上の直径があるため、ロボットの指の構造の中でシース熱電対の占める断面積が大きすぎる。
【0007】
また、指の屈曲に応じて、シース熱電対も屈曲するが、例えば1mmのシース熱電対では数百回程度の曲げ伸ばしで疲労破壊し、関節が必要とする屈曲回数である数十万回に耐えられない。
【特許文献1】特開2003−344178
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シース熱電対の応答速度を速くするために、熱容量を小さくし、優れた可撓性を有し、狭い箇所への配置を可能にするために、シース熱電対の一層の細径化が求められ、0.1mm以下の極細シース熱電対の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、シース熱電対の応答速度を速くするために、熱容量を小さくし、優れた可撓性を有し、狭い箇所への配置を可能にするために、シース熱電対の一層の細径化に応え、0.1mm以下の極細シース熱電対を提供すべく、SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内にN熱電対素線、E熱電対素線、J熱電対素線、T熱電対素線あるいはK熱電対素線の芯線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、芯線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細シース熱電対とした。
【0010】
また、本発明は、具体的には、シースはNCF600で、芯線はK熱電対素線、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)である。
【0011】
さらに、本発明は、前記の極細シース熱電対を用いて、産業用、家庭用、畜産用及び医療用ロボットの温度測定箇所に温度触覚センサーとして配置して温度を測定するようにした温度測定センサーを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述のように、SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内にN熱電対素線、E熱電対素線、J熱電対素線、T熱電対素線あるいはK熱電対素線の芯線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、芯線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細シース熱電対であるので、シース熱電対の応答速度を速くし、熱容量を小さくし、優れた可撓性を有し、狭い箇所への配置を可能とする。
【0013】
また、本発明は、シースはNCF600で、芯線はK熱電対素線、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)である極細シース熱電対である。
【0014】
さらに、本発明は、極細シース熱電対を、産業用、家庭用、畜産用及び医療用ロボットの温度測定箇所に温度触覚センサーとして配置して温度を測定するようにした温度測定センサーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、添付する図面に示す具体的実施例に基づいて、以下詳細に説明する。
【0016】
図1はケーブルの縦断面図、図2は図1のII−II断面図、図3は極細シース熱電対の縦断面図、図4は図3のIV−IV断面図を示す。
【0017】
図1のケーブルでは、SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース1に、N熱電対素線、E熱電対素線、J熱電対素線、T熱電対素線あるいはK熱電対素線の2本の芯線2・2を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材3を収容する。
【0018】
N熱電対素線は、1本はニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金、他の1本はニッケルおよびシリコンを主とした合金である。
【0019】
E熱電対素線は、1本はニッケル、クロムを主とした合金、他の1本は銅およびニッケルを主とした合金である。
【0020】
J熱電対素線は、1本は鉄、他の1本は銅およびニッケルを主とした合金である。
【0021】
T熱電対素線は、1本は銅、他の1本は銅およびニッケルを主とした合金である。
【0022】
K熱電対素線は、1本はニッケルおよびクロムを主とした合金、他の1本はニッケルを主とした合金である。
【0023】
上記のシース1、芯線2、絶縁材3の組合せでは、シース1としてはNCF600、芯線2はK熱電対素線、絶縁材3としては酸化マグネシウム(MgO)で最良の結果を得た。
【0024】
シース1内に絶縁材3を介して芯線2を収容した図1に示すケーブルを全長にわたり縮径させ、先端を閉蓋し、感温部4を形成し、基端部は湿気による絶縁材3の絶縁性能劣化を防止するためにエポキシ樹脂等のシール材5を充填したのが図3と図4の極細シース熱電対である。
【0025】
この極細シース熱電対は、外径0.1mm以下であるので、製作時のシースの捩れを防止するために、減径用の巻き取りドラムを小型化した。
【0026】
芯線2・2を接合する感温部4の加工、図3のシース熱電対の先端閉蓋加工、基端部のシール材5充填作業には特殊拡大ルーペあるいは顕微鏡を使用して作業性を高めた。
【0027】
シース熱電対には、先端部の熱接点がシースと接触してない非接触型と、先端部の熱接点がシースと接触する接触型とがあるが、図3は非接触型を示している。
【0028】
また、シース熱電対の基端部には、さらに、芯線と補償導線の接続部を収納するスリーブや、補償導線との接続のための端子台を収納した端子箱が設けられる場合もある。
【0029】
本発明の極細シース熱電対は応答特性、曲げ剛性は以下の通りに改良された。
【0030】
本発明の極細シース熱電対は、外径が細いため熱容量が小さく、シースの外表面と熱接点との距離が短いため、測定対象の温度変化に対する応答が高速である。
【0031】
従来のシース外径0.2mmの非接地型シース熱電対と、シース外径0.1mmの非接地型極細シース熱電対の応答速度を、20℃の室温状態から沸騰水に瞬時に挿入して調べた結果、応答時定数(63.2% 応答時間;測定値が20+(100−20)×0.632=70.6℃に達するまでの時間)は、前者が約6mS、後者が約1mSで、極細シース熱電対が従来のシース熱電対より約6倍速い応答速度であることを確かめた。接地型極細シース熱電対についても同様の試験を行い、シース外径0.1mmの極細シース熱電対が従来の外径0.2mmのものより約5倍速い応答速度であることを確かめた。
【0032】
また、本発明の極細シース熱電対は、細径化により優れた可撓性を持つ。
【0033】
従来のシース外径1mmのシース熱電対と、シース外径0.1mmの本発明の極細シース熱電対について、曲げ角度90°以上、曲げ半径約10mmの屈曲試験を実施した結果、前者は約500回の屈曲で破断したが、本発明の後者は30万回以上の屈曲を行っても破断はなく、シース、芯線、絶縁材とも健全であった。
【0034】
以上のように応答速度、屈曲に特長を有する本発明の極細シース熱電対は、種々の分野で使用することができる。
【0035】
例えば、産業用、家庭用、畜産用及び医療用ロボットに有用に使用できる。ロボットの必要各部に配置して、その箇所の温度測定を行うことにより、人間の感温触覚を代行する神経センサーとして使用でき、狭い箇所、関節等の屈曲部にも長期間使用する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の極細シース熱電対は、狭い箇所の測温や屈曲箇所の分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ケーブルの縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の極細シース熱電対の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…シース
2…芯線
3…絶縁材
4…感温部
5…シール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内にN熱電対素線、E熱電対素線、J熱電対素線、T熱電対素線あるいはK熱電対素線の芯線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、芯線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細シース熱電対。
【請求項2】
シースはNCF600で、芯線はK熱電対素線、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)である請求項1記載の極細シース熱電対。
【請求項3】
請求項1記載の極細シース熱電対を、産業用、家庭用、畜産用及び医療用ロボットの温度測定箇所に温度触覚センサーとして配置して温度を測定するようにした温度測定センサー。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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