説明

極細絶縁導線と極細絶縁導線を用いたロボット用の信号線

【課題】 ロボットなどに使用するための、可撓性を有し、かつ、狭い箇所への配置を可能とする絶縁導線の提供を目的とする。
【解決手段】 SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内に、銅あるいはニッケルの導線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、1本あるいは2本の導線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細絶縁導線とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細絶縁導線と極細絶縁導線を用いたロボット用の信号線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁導線は、導線にビニル等の絶縁材を被覆したものが用いられている。これらは可撓性はあるが、径は最小径のもので0.5mm程度である。この絶縁導線に関し、可撓性を有し、かつ、より一層狭い箇所への配置が可能になるような極細絶縁導線が求められている。
【0003】
現在、ロボット技術の進歩により、人間に近い形状や機能を有するロボットが開発されている。
【0004】
ロボットは、例えば人間のような手足、あるいは指を有してあたかも人間と同じように関節を屈曲させたり物をつかんだりする。医療や介護に用いられるロボットはその指で介護すべき人間に触れたり、あるいは介護すべき人間に食事を運んだりする。
【0005】
医療や介護に用いられるロボットは、体温あるいは食事の温度を計測するといった応用的な動きに伴い、その指の先端部分で温度計測する必要が生じる。
【0006】
しかしながら、ロボットの指は10mm程度の直径であり、しかも複数箇所の関節構造を有する。ロボットの指の先端に熱を感知するサーミスタなどのセンサーを設け、その信号線を指の内部に通して配置すると、従来の絶縁導線を信号線として用いた場合には0.5mm以上の直径があるため、ロボットの指の構造の中で信号線の占める断面積が大きすぎる。
【特許文献1】特開平09−093780号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁導線について、狭い箇所への配置を可能とするために一層の細径化が求められ、可撓性を有する外径0.1mm以下の極細絶縁導線の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、絶縁導線において、狭い箇所への配置を可能にするために一層の細径化に応え、0.1mm以下の可撓性を有する極細絶縁導線を提供すべく、SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内に、1本あるいは2本の、銅あるいはニッケルの導線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、1本あるいは2本の導線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細絶縁導線である。外表面のシースと導線は絶縁材により絶縁されており、導線間も同様に絶縁されている。従来このような構造の絶縁導線のシース外径は、最小でも0.2mmであったが、後述するように、製作時の捩れ防止、加工作業性の向上により、0.1mm以下の外径のものの製作を可能にした。
【0009】
また、本発明は、具体的には、シースはNCF600で、導線はニッケル線2本で、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)とした極細絶縁導線である。
【0010】
さらに、本発明は、前記の極細絶縁導線を用いて、産業用、家庭用、畜産用及び医療用ロボットの屈曲運動をする部位に沿って敷設したロボット用の信号線を提供する。
【発明の効果】
【0011】
SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内に、銅あるいはニッケルの導線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、導線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細絶縁導線であるので、可撓性を有し、狭い箇所への配置を可能とする。
【0012】
また、本発明は、シースはNCF600で、導線はニッケルで、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)である極細絶縁導線である。
【0013】
さらに、本発明は、屈曲運動をする部位に沿って敷設したロボット用の信号線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を、添付する図面に示す具体的実施例に基づいて、以下詳細に説明する。
【0015】
図1は絶縁導線の縦断面図、図2は図1のII−II断面図、図3は極細絶縁導線の縦断面図、図4は図3のIV−IV断面図を示す。
【0016】
図1の絶縁導線では、SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース1に、2本の銅あるいはニッケル導線2・2をアルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材3を収容する。
【0017】
上記のシース1、導線2、絶縁材3の組合せでは、シース1としてはNCF600、導線2はニッケル、絶縁材3としては酸化マグネシウム(MgO)で最良の結果を得た。
【0018】
シース1内に絶縁材3を介して導線2を収容した図1に示す絶縁導線を、全長にわたり図3のように縮径させ、両基端部は湿気による絶縁材3の絶縁性能劣化を防止するためにエポキシ樹脂等のシール材5を充填した絶縁導線とした。
【0019】
この絶縁導線は、外径0.1mm以下であるので、従来の同構造のものより細径であるので、製作時のシースの捩れを防止するために、小型化した減径用の巻き取りドラムを使用する。
【0020】
図3の両基端部のシール材5充填には特殊拡大ルーペあるいは顕微鏡を使用して作業性を高めた。
【0021】
また、本発明の極細絶縁導線は、従来の同構造の絶縁導線より細径化したため、可撓性が向上し、ロポットの信号線としての使用が可能になった。シース外径0.1mmの本発明の極細絶縁導線について、曲げ角度90°以上、曲げ半径約10mmの屈曲試験を実施したが、30万回以上屈曲を行っても破断はなく、シース、導線、絶縁材とも健全であった。
【0022】
以上は導線が2本の例について述べたが、導線が1本の場合も全く同様である。
【0023】
以上のように、可撓性のある本発明の極細絶縁導線は、種々の分野で使用することができる。
【0024】
また、本発明の極細絶縁導線は、狭い箇所、関節等の屈曲部にも使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の極細シース導線は、狭い箇所の屈曲箇所の分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シース導線の縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明の極細シース導線の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…シース
2…導線
3…絶縁材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
SUS316、SUS310SあるいはNCF600の金属製のシース内に、銅あるいはニッケルの導線を、アルミナ(Al2 3 )あるいは酸化マグネシウム(MgO)の絶縁材を介在させて収容し、1本あるいは2本の導線と絶縁材を収容したシースを全長にわたり縮径させ、捩れを防止してシースを巻取り、シースの外径を0.1mm以下とした極細絶縁導線。
【請求項2】
シースはNCF600で、導線はニッケルで、絶縁材は酸化マグネシウム(MgO)である請求項1記載の極細絶縁導線。
【請求項3】
請求項1記載の極細絶縁導線を、産業用、家庭用、畜産用及び医療用のロボットの屈曲運動をする部位に沿って敷設したロボット用の信号線。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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