極細繊維試料把持装置および把持方法
【課題】ナノファイバー等の極細繊維の試料を容易に作成できる。
【解決手段】開口21を有する台紙22に複数のリング状把持部24が剥離自在に被着される。リング状把持部24を整列して貼り付ける位置決めのために、ストライプ部23a,23bが設けられる。ナノファイバーをエレクトロスピニング法で製造する時にナノファイバーが飛散している空間内を把持装置が移動され、リング状把持部24にナノファイバーを被着させる。その後、リング状把持部24を台紙22から剥がし、試験装置の上部クランプ部および下部クランプ部にクランプ部とナノファイバーとが一直線上に並ぶように固定する。そして、リング状把持部24を切断してから、ナノファイバーLの引っ張り強度等の力学的特性が試験される。
【解決手段】開口21を有する台紙22に複数のリング状把持部24が剥離自在に被着される。リング状把持部24を整列して貼り付ける位置決めのために、ストライプ部23a,23bが設けられる。ナノファイバーをエレクトロスピニング法で製造する時にナノファイバーが飛散している空間内を把持装置が移動され、リング状把持部24にナノファイバーを被着させる。その後、リング状把持部24を台紙22から剥がし、試験装置の上部クランプ部および下部クランプ部にクランプ部とナノファイバーとが一直線上に並ぶように固定する。そして、リング状把持部24を切断してから、ナノファイバーLの引っ張り強度等の力学的特性が試験される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノファイバーのような極細繊維の力学的試験を行うために使用される極細繊維試料把持装置および把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナノファイバーは、直径が数nm〜数100nm、長さが直径の100倍以上のファイバー状物質と定義されている。かかる繊維径がマイクロ・ナノスケールのナノファイバー(極細繊維)は、先進材料として注目され、さまざまな産業分野で利用されてきている。例えばエンジンフィルタ、超軽量多機能防災のファブリック、抗菌マスク、半導体クリーンルーム用フィルタ、電子デバイス材料、人工血管や人工筋などを製造するための再生医療用培地等で利用されている。
【0003】
ナノファイバーの使用環境は、大気中だけにとどまらず、液中でも使用されるので、各環境下における長寿命化が求められている。したがって、ナノファイバーの力学的特性(引っ張り、摩擦、曲げ等に対する強度評価)を高精度に測定することが望まれている。具体的には、JIS(Japan Industrial Standard)規格において、繊維に関する引っ張り強
度試験法が規定されている。この強度試験法を実施するための試料の作成が必要とされる。
【0004】
従来の試験方法として、複数のナノファイバーをまとめて試料としたり、表面に樹脂を被覆して強度を増したものを試料とすることが知られている。しかしながら、1本のナノファイバーの力学的特性を正確に測定することが困難であった。例えば下記の特許文献1には、1本のナノファイバーの力学的特性を測定することができる試験装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−085737号公報
【0006】
特許文献1に記載の装置では、上部クランプおよび下部クランプ部のそれぞれの細孔にナノファイバーの両端を挿入し、接着剤で固定することによって、試験装置に対してナノファイバーを取り付けている。
【0007】
しかしながら、極細のナノファイバーをクランプに固定する作業は、面倒であり、取り付け作業中にナノファイバーが切断したりする問題があった。そこで、予め把持装置に対して試料のナノファイバーを固定し、把持装置を試験装置に取り付ける方法が知られている。
【0008】
従来の把持装置は、図1に示すように、矩形の開口1を有する矩形の台紙2の構成とされていた。開口1を直角に横切るように、試験用のナノファイバーLの両端が台紙2の中央位置に接着される。そして、破線で示す位置の付近を切断して上部ホルダ3aと下部ホルダ3bとに切り離す。そして、上部ホルダ3aが試験装置の上部クランプに固定され、下部ホルダ3bが試験装置の下部クランプ部に固定される。試験装置では、上部クランプが上方向に引っ張られることによって、ナノファイバーの力学的特性が測定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
台紙2を使用する方法は、ナノファイバーを直接上部クランプおよび下部クランプ部に取り付ける方法に比してナノファイバーを固定する作業がより容易となる。しかしながら、ナノファイバーLの両端の固定位置を結ぶ方向が試験装置の引っ張り方向と完全に一致するように、ナノファイバーLの両端を固定する作業が面倒であった。さらに、試験中に接着部においてナノファイバーLが破断してしまう問題があった。
【0010】
ナノファイバーの製造時に試験用のナノファイバーを採集することが提案されている。エレクトロスピニング法等で作成されるナノファイバーが製造される。エレクトロスピニング法は、図2に概略的に示すように、ノズル5を有する容器6内の原料の高分子溶液と基板7との間に数千ボルトから数万ボルトの高電圧8を印加する。高分子溶液の液面の表面張力を静電気が打ち破ってナノサイズのファイバー9がノズル5から噴射される。噴射されたファイバー9が基板7上にランダムに堆積される。溶媒の蒸発、温度低下によって、基板7上にナノファイバー状物質10が形成される。ナノファイバー状物質10の厚みが薄ければ、ナノファイバーコーティングとなり、厚みが厚ければ、不織布となる。
【0011】
ナノファイバーコーティングや不織布は、ナノファイバーが作るナノスペースやファイバー自身の表面積が大きい等のナノ効果の特徴をいかして、エネルギー、医療、半導体等の多くの産業分野への多くの用途が期待されている。具体的には、超微粒子の高性能フィルタ、ウィルスや細菌の侵入を阻止するマスク、透湿防水テキスタイル、燃料電池や太陽電池等の電荷採集電極等の用途が考えられている。
【0012】
ノズル5から噴射されたナノファイバー9が飛散している空間中を把持装置11を水平方向に移動させることによって、試験用ナノファイバーを採集することができる。例えばナノファイバー9の飛行速度とほぼ等しい速度で把持装置11を移動させる。図3に示すように、把持装置11は、矩形の台紙12に複数の矩形の開口13a,13b,13c,13d,13eが形成されたものである。ナノファイバー9が飛散している空間中を把持装置11を移動させることによって、把持装置11に対して多数のナノファイバーが付着する。台紙12は、粘着性を有する面を有し、ナノファイバーを採集した後に粘着面を別のホルダで覆うようになされる。
【0013】
把持装置11によって採集された多数のナノファイバーの中で、ナノファイバーの両端の固定位置を結ぶ方向が試験装置の引っ張り方向と完全に一致するものが選択される。すなわち、開口の長辺と直交するナノファイバーが試料として使用できる。例えば開口13cに被着したナノファイバーLが選択される。開口13cの両側が一点鎖線に沿って切断され、試験用のナノファイバーが得られる。
【0014】
このような把持装置11は、手作業によってナノファイバーの両端を固定する作業を必要としない利点がある。しかしながら、実際には、開口を斜めに交差するナノファイバーが多いために、試料として使用できるナノファイバーが得られる確率が低く、歩留りが悪い問題があった。
【0015】
したがって、この発明の目的は、簡単な作業で、且つ歩留り良く極細繊維試料を採集し、作成することができる極細繊維試料把持装置および把持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、この発明は、台紙と、
台紙に剥離自在に被着され、台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部と
を備え、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して極細繊維を表面に被着させる極細繊維試料把持装置である。
【0017】
この発明は、台紙と、台紙に剥離自在に被着され、台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部とを備えた極細繊維試料把持装置を、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して極細繊維を表面に被着させ、
極細繊維が被着されたリング状把持部を台紙より剥離し、
試験装置の一対の取り付け部による引っ張り軸の中心の延長方向と、リング状把持部に被着された1本の極細繊維の長さ方向とが一直線上に並ぶように、リング状把持部を取り付け部に固定し、
リング状把持部を試料繊維の延長方向と交差する2箇所の位置で切断する極細繊維試料把持方法である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、極細繊維例えばナノファイバーの製造時にナノファイバーが飛散している空間内を移動させることによって、簡単に試料用ナノファイバーを採集でき、さらに、採集されたナノファイバーの中で試料として使用できるものの確率を高くすることができる。すなわち、歩留りを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0020】
<一実施の形態>
「把持装置」
一実施の形態は、図4に示すような構造を有する。図5Aおよび図5Bに示すように、中央部に矩形の開口21を有する台紙22が使用される。開口21は、必ずしも設ける必要がないが、光にかざして見たり、顕微鏡で見るときには、開口していた方が好ましい。台紙22の一面に粘着層が塗布等によって形成されている。台紙22の長辺に沿って位置決め用のストライプ部23aおよび23bが台紙22の粘着層に被着される。ストライプ部23aおよび23bによって覆われてない台紙22の粘着層の領域が露呈している。
【0021】
ストライプ部23aおよび23bによって挟まれた中央部の領域で、開口21が形成されている部分に、複数例えば7個の円形のリング状把持部24a、24b、24c、24d、24e、24f、24gが被着される。特に、複数のリング状把持部を個々に区別する必要がない場合には、単に、リング状把持部24と称する。図5Cに示すように、リング状把持部24は、所望のナノファイバー試料の長さに対応した円形開口25を有する。リング状把持部24は、紙、合成樹脂で作成されたものである。台紙22、ストライプ部23a、23bおよびリング状把持部24は、絶縁物例えばアート紙やプラスチックからなる。
【0022】
図5Dに示すように、台紙22の粘着層が露呈している領域に対してリング状把持部24が貼り付けられる。リング状把持部24が台紙22と接着/剥離自在となるように、粘着層の粘着力が選定されている。リング状把持部24の高さがストライプ部23aおよび23bの高さよりやや高いものとされている。さらに、リング状把持部24の台紙22と接着されない側に粘着層が設けられる。粘着層上を剥離紙が覆うようになされる。さらに、後述するように捕集したナノファイバーで、一つのリング状把持部24に1本のファイバーの試験が可能なリング状把持部24を取り出す。このままではナノファイバーLがリング状把持部24に軽く載っている状態なので、図5Eに示すように、同一形状の別のリング30の片面に薄く接着剤を塗布したものをナノファイバーが保持されている面に貼り合わせて把持の補強がなされる。
【0023】
「ナノファイバー採集方法」
上述した把持装置によって、ナノファイバーを例えばエレクトロスピニング法によって製造する時に試験用のナノファイバーが採集される。採集に先立って粘着層上を覆う剥離紙が剥がされる。前述したように、ノズルから噴射されたナノファイバーが飛散している空間をナノファイバーの飛行速度と同程度の速度で把持装置を移動させる。P1、P2等で示す方向に、ナノファイバーが飛散しているので、図6に示すように、複数のリング状把持部24に対して、ナノファイバーが被着する。
【0024】
試料として使用できることが可能なナノファイバーが付着したリング状把持部を台紙22から剥がす。図7Aに示すように、試料繊維としてのナノファイバーLが被着されているリング状把持部24を台紙22から剥がす。リング状把持部24の中心開口を横切っており、他のナノファイバーが極めて近い距離で位置していないナノファイバーであれば、試料として使用することが可能である。他のナノファイバーが極めて近い距離で位置していると、1本のナノファイバーを切断処理が面倒且つ困難である。
【0025】
そして、ナノファイバーの力学的特性を測定する試験装置の上部クランプ部26aと下部クランプ部26bの中心を結ぶ線と、ナノファイバーLとが一致するように、リング状把持部24がこれらのクランプ部26aおよび26bに固定される。
【0026】
ナノファイバーLは、肉眼で見ることができない程度の細さであるので、倍率1000倍程度のデジタル光学顕微鏡を使用して上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bに対するリング状把持部24の取り付け作業がなされる。取り付け作業を容易とするために、クランプ部26aおよび26bのそれぞれに対して軸の中心を示すマーク27aおよび27bがそれぞれ付されている。矢印で示すように、リング状把持部24を回転させることによって、ナノファイバーLの両端がクランプ部26aおよび26bの中心に位置するように、位置調整がなされる。
【0027】
上部クランプ部26aの一例を図7に示す。軸の先端にスリット28aが形成され、スリット28a内にナノファイバーLの一端が固定されたリング状把持部24が挿入され、リング状把持部24が小型のビス29によってスリット28a内に固定される。下部クランプ部26bも上部クランプ部26aと同様の構成とされている。
【0028】
位置調整がなされ、クランプ部26aおよび26bにリング状把持部24を固定した後に、図8Aにおいて一点鎖線で示す位置で、リング状把持部24の一部を切除する。切除後の状態を図8Bに示す。後述する試験装置において、上部クランプ部26aが上方向の変位し、変位がある値に達すると、ナノファイバーLが破断する。変位と張力の関係からナノファイバーLの力学的特性(引っ張り強度等)が測定される。
【0029】
上述したこの発明の一実施の形態では、図8C、図8Dおよび図8Eに示すように採集されたナノファイバーを試料として使用することができる。すなわち、図8Cに示すように、リング状把持部24の開口25を斜めに横切るナノファイバーL1を試料として使用することができる。図8Dに示すように、リング状把持部24の中心から外れた位置で交差するナノファイバーL2を試料として使用することができる。、図8Eに示すように、リング状把持部24に被着された2本のナノファイバーL3およびL4の一方を試料として使用することができる。
【0030】
図8に示す試料として使用できるナノファイバーは、全ての例ではなく、図示以外の態様でリング状把持部24に被着したナノファイバーを試料として使用できる。したがって、この発明によれば、採集したナノファイバーの中で、試料として使用できる割合(歩留り)を高くすることができ、ナノファイバーの測定を効率的に行うことができる。
【0031】
「試験装置の概略的構成」
この発明によるナノファイバー把持装置を適用できる試験装置について、図9を参照して説明する。図9に示すように、試験装置本体101には、荷重センサー例えば電子天秤が収納されている。電子天秤は、0.01mg程度(または0.1mg以上)の分解能を有する。電子天秤に限らず、同程度の分解能を有する荷重センサーを使用しても良い。図示しないが、電源を供給する電源コードが本体101から導出され、パーソナルコンピュータと接続するためのインターフェース例えばRS−232Cインターフェースが本体101に対して接続されている。
【0032】
試験装置本体101に対して一対の支柱102aおよび102bが所定の間隔の位置に垂直に設けられ、支柱102aおよび102bの先端の間に梁103がかけ渡されている。梁310の下部に取り付け板104が設けられる。取り付け板104の下側に電子天秤の秤量面上のマグネット部105が配されている。秤量面上のマグネット部105は、マグネットの磁力で載置された把持装置107の下部ホルダ109を固定するようになされている。
【0033】
秤量面上のマグネット部105の上方に位置するように、取り付け板104の下部に上下方向に変位する可動部106(昇降ステージ)が取り付けられる。可動部106は、駆動源としてのモータを有する。可動部106が有するバイス部によって把持装置107の上部ホルダ108が固定される。上部ホルダ108が可動部106によって上下方向に所定の速度で変位される。可動部106は、パーソナルコンピュータによってリモートコントロール可能とされ、パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムにしたがって、可動部106の昇降動作がなされる。
【0034】
上部ホルダ108が有する上部クランプ部26aの中心の延長線と、下部ホルダ109が有する下部クランプ部26bの中心の延長線とが一致される。上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bに対して上述したように、試料用ナノファイバーLの両端がそれぞれ固定されたリング状把持部24(図9では省略)が取り付けられる。
【0035】
試験装置本体101の前面パネル111に対して電源スイッチ112等のスイッチが設けられている。前面パネル111に測定された荷重の数値を表示する表示部を設けても良い。
【0036】
図10は、試験装置による測定結果の一例、荷重−変位曲線を示す。例えば試料としてエレクトロスピニング法で採取したナイロン(繊維径:300nm)を使用した。試験の条件は、試料長が5mm、引っ張り速度が5μm/sである。上部ホルダ108を上方向に変位させ、試料が引っ張られるにしたがって、荷重が変化する。そして、試料が破断した時に、荷重が急激に変化する。この試験によって試料の引っ張り強度を試験できる。さらに、変位−荷重のカーブの傾きから試料の弾性率を測定することができる。よりさらに、応力緩和およびクリープを試験することが可能である。
【0037】
「把持装置」
図11に示すように、把持装置107は、試験装置に装着する前に上部ホルダ108および下部ホルダ109は連結固定具67によって片側から水平に固定されている。
【0038】
上部ホルダ108および下部ホルダ109の先端(すなわち、上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26b)には、試料繊維(例えばナノファイバー)Lが付着したリング状把持部24を差し込むためのスリットが設けられている。そこに、リング状把持部24を挿入し、ビスで固定する。
【0039】
上部ホルダ108および下部ホルダ109には、それぞれOリング61および62が設けられている。Oリング61および62は、液中試験用のスリーブ(図示せず)の内周面と密着し、液漏れを防止するためのものである。スリーブは、例えば透明なアクリル樹脂製の円筒である。試料取り付け時、並びに液中試験を行わない時には、上部ホルダに設けられたOリング61によって、係止されている。液中試験時には、下部ホルダに設けられたOリング62によって、係止されるように、下げられる。
【0040】
「把持装置107に対する試料繊維の取り付け手順」
上部ホルダ108および下部ホルダ109がホルダ連結具67により水平に固定されている状態において、予め試料繊維Lが被着されているリング状把持部24を上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bのそれぞれに固定する(図8A参照)。その後、リング状把持部24を切断する(図8B参照)。
【0041】
このように、試料繊維Lが取り付けられた把持装置を試験装置に対して装着する。ホルダ連結具67によって、上部クランプ部26a,下部クランプ部26bおよび試料繊維が一直線上に位置した状態が保持され、この状態を保ったままで、把持装置を試験装置に装着できる。
【0042】
秤量面上のマグネット部105の所定位置に下部ホルダ109の底面を載置する。図示しないが、下部ホルダ109の底面を位置決めするための突起等がマグネット部105に形成されている。その後、上下方向可動部によって、上下方向可動部に取り付けられたバイス部70を下降させ、万力部によって固定する。最後にホルダ連結具67を取り外す。
【0043】
「変形例」
この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばエレクトロスピニング法に限らず、メルトブローン法等でナノファイバーを製造する場合に、試料を採集するのにもこの発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来のナノファイバー把持装置の一例を示す平面図である。
【図2】ナノファイバーの製造時にナノファイバーを採集する方法の説明に用いる略線図である。
【図3】従来のナノファイバー把持装置の他の例を示す平面図である。
【図4】この発明によるナノファイバー把持装置の一実施の形態の平面図である。
【図5】この発明の一実施の形態の各構成部分を示す平面図である。
【図6】この発明の一実施の形態において、ナノファイバーが把持装置に付着した状態を示す平面図である。
【図7】この発明の一実施の形態における上部クランプ部の一例の説明に使用する斜視図である。
【図8】この発明の一実施の形態において、試験装置に取り付ける方法を説明するための略線図である。
【図9】この発明を適用できる試験装置の一例の概略的説明に使用する斜視図である。
【図10】試験装置による試験結果の一例を示すグラフである。
【図11】この発明を適用できる把持装置をスライダ機構上に載せた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
L,L1〜L4・・・・ナノファイバー
22・・・・台紙
24a〜24g・・・・リング状把持部
26a・・・上部クランプ部
26b・・・下部クランプ部
51・・・スライダ機構
67・・・ホルダ連結具
101・・・試験装置本体
105・・・秤量面上のマグネット部
107・・・把持装置
108・・・上部ホルダ
109・・・下部ホルダ
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノファイバーのような極細繊維の力学的試験を行うために使用される極細繊維試料把持装置および把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナノファイバーは、直径が数nm〜数100nm、長さが直径の100倍以上のファイバー状物質と定義されている。かかる繊維径がマイクロ・ナノスケールのナノファイバー(極細繊維)は、先進材料として注目され、さまざまな産業分野で利用されてきている。例えばエンジンフィルタ、超軽量多機能防災のファブリック、抗菌マスク、半導体クリーンルーム用フィルタ、電子デバイス材料、人工血管や人工筋などを製造するための再生医療用培地等で利用されている。
【0003】
ナノファイバーの使用環境は、大気中だけにとどまらず、液中でも使用されるので、各環境下における長寿命化が求められている。したがって、ナノファイバーの力学的特性(引っ張り、摩擦、曲げ等に対する強度評価)を高精度に測定することが望まれている。具体的には、JIS(Japan Industrial Standard)規格において、繊維に関する引っ張り強
度試験法が規定されている。この強度試験法を実施するための試料の作成が必要とされる。
【0004】
従来の試験方法として、複数のナノファイバーをまとめて試料としたり、表面に樹脂を被覆して強度を増したものを試料とすることが知られている。しかしながら、1本のナノファイバーの力学的特性を正確に測定することが困難であった。例えば下記の特許文献1には、1本のナノファイバーの力学的特性を測定することができる試験装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−085737号公報
【0006】
特許文献1に記載の装置では、上部クランプおよび下部クランプ部のそれぞれの細孔にナノファイバーの両端を挿入し、接着剤で固定することによって、試験装置に対してナノファイバーを取り付けている。
【0007】
しかしながら、極細のナノファイバーをクランプに固定する作業は、面倒であり、取り付け作業中にナノファイバーが切断したりする問題があった。そこで、予め把持装置に対して試料のナノファイバーを固定し、把持装置を試験装置に取り付ける方法が知られている。
【0008】
従来の把持装置は、図1に示すように、矩形の開口1を有する矩形の台紙2の構成とされていた。開口1を直角に横切るように、試験用のナノファイバーLの両端が台紙2の中央位置に接着される。そして、破線で示す位置の付近を切断して上部ホルダ3aと下部ホルダ3bとに切り離す。そして、上部ホルダ3aが試験装置の上部クランプに固定され、下部ホルダ3bが試験装置の下部クランプ部に固定される。試験装置では、上部クランプが上方向に引っ張られることによって、ナノファイバーの力学的特性が測定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
台紙2を使用する方法は、ナノファイバーを直接上部クランプおよび下部クランプ部に取り付ける方法に比してナノファイバーを固定する作業がより容易となる。しかしながら、ナノファイバーLの両端の固定位置を結ぶ方向が試験装置の引っ張り方向と完全に一致するように、ナノファイバーLの両端を固定する作業が面倒であった。さらに、試験中に接着部においてナノファイバーLが破断してしまう問題があった。
【0010】
ナノファイバーの製造時に試験用のナノファイバーを採集することが提案されている。エレクトロスピニング法等で作成されるナノファイバーが製造される。エレクトロスピニング法は、図2に概略的に示すように、ノズル5を有する容器6内の原料の高分子溶液と基板7との間に数千ボルトから数万ボルトの高電圧8を印加する。高分子溶液の液面の表面張力を静電気が打ち破ってナノサイズのファイバー9がノズル5から噴射される。噴射されたファイバー9が基板7上にランダムに堆積される。溶媒の蒸発、温度低下によって、基板7上にナノファイバー状物質10が形成される。ナノファイバー状物質10の厚みが薄ければ、ナノファイバーコーティングとなり、厚みが厚ければ、不織布となる。
【0011】
ナノファイバーコーティングや不織布は、ナノファイバーが作るナノスペースやファイバー自身の表面積が大きい等のナノ効果の特徴をいかして、エネルギー、医療、半導体等の多くの産業分野への多くの用途が期待されている。具体的には、超微粒子の高性能フィルタ、ウィルスや細菌の侵入を阻止するマスク、透湿防水テキスタイル、燃料電池や太陽電池等の電荷採集電極等の用途が考えられている。
【0012】
ノズル5から噴射されたナノファイバー9が飛散している空間中を把持装置11を水平方向に移動させることによって、試験用ナノファイバーを採集することができる。例えばナノファイバー9の飛行速度とほぼ等しい速度で把持装置11を移動させる。図3に示すように、把持装置11は、矩形の台紙12に複数の矩形の開口13a,13b,13c,13d,13eが形成されたものである。ナノファイバー9が飛散している空間中を把持装置11を移動させることによって、把持装置11に対して多数のナノファイバーが付着する。台紙12は、粘着性を有する面を有し、ナノファイバーを採集した後に粘着面を別のホルダで覆うようになされる。
【0013】
把持装置11によって採集された多数のナノファイバーの中で、ナノファイバーの両端の固定位置を結ぶ方向が試験装置の引っ張り方向と完全に一致するものが選択される。すなわち、開口の長辺と直交するナノファイバーが試料として使用できる。例えば開口13cに被着したナノファイバーLが選択される。開口13cの両側が一点鎖線に沿って切断され、試験用のナノファイバーが得られる。
【0014】
このような把持装置11は、手作業によってナノファイバーの両端を固定する作業を必要としない利点がある。しかしながら、実際には、開口を斜めに交差するナノファイバーが多いために、試料として使用できるナノファイバーが得られる確率が低く、歩留りが悪い問題があった。
【0015】
したがって、この発明の目的は、簡単な作業で、且つ歩留り良く極細繊維試料を採集し、作成することができる極細繊維試料把持装置および把持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、この発明は、台紙と、
台紙に剥離自在に被着され、台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部と
を備え、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して極細繊維を表面に被着させる極細繊維試料把持装置である。
【0017】
この発明は、台紙と、台紙に剥離自在に被着され、台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部とを備えた極細繊維試料把持装置を、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して極細繊維を表面に被着させ、
極細繊維が被着されたリング状把持部を台紙より剥離し、
試験装置の一対の取り付け部による引っ張り軸の中心の延長方向と、リング状把持部に被着された1本の極細繊維の長さ方向とが一直線上に並ぶように、リング状把持部を取り付け部に固定し、
リング状把持部を試料繊維の延長方向と交差する2箇所の位置で切断する極細繊維試料把持方法である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、極細繊維例えばナノファイバーの製造時にナノファイバーが飛散している空間内を移動させることによって、簡単に試料用ナノファイバーを採集でき、さらに、採集されたナノファイバーの中で試料として使用できるものの確率を高くすることができる。すなわち、歩留りを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0020】
<一実施の形態>
「把持装置」
一実施の形態は、図4に示すような構造を有する。図5Aおよび図5Bに示すように、中央部に矩形の開口21を有する台紙22が使用される。開口21は、必ずしも設ける必要がないが、光にかざして見たり、顕微鏡で見るときには、開口していた方が好ましい。台紙22の一面に粘着層が塗布等によって形成されている。台紙22の長辺に沿って位置決め用のストライプ部23aおよび23bが台紙22の粘着層に被着される。ストライプ部23aおよび23bによって覆われてない台紙22の粘着層の領域が露呈している。
【0021】
ストライプ部23aおよび23bによって挟まれた中央部の領域で、開口21が形成されている部分に、複数例えば7個の円形のリング状把持部24a、24b、24c、24d、24e、24f、24gが被着される。特に、複数のリング状把持部を個々に区別する必要がない場合には、単に、リング状把持部24と称する。図5Cに示すように、リング状把持部24は、所望のナノファイバー試料の長さに対応した円形開口25を有する。リング状把持部24は、紙、合成樹脂で作成されたものである。台紙22、ストライプ部23a、23bおよびリング状把持部24は、絶縁物例えばアート紙やプラスチックからなる。
【0022】
図5Dに示すように、台紙22の粘着層が露呈している領域に対してリング状把持部24が貼り付けられる。リング状把持部24が台紙22と接着/剥離自在となるように、粘着層の粘着力が選定されている。リング状把持部24の高さがストライプ部23aおよび23bの高さよりやや高いものとされている。さらに、リング状把持部24の台紙22と接着されない側に粘着層が設けられる。粘着層上を剥離紙が覆うようになされる。さらに、後述するように捕集したナノファイバーで、一つのリング状把持部24に1本のファイバーの試験が可能なリング状把持部24を取り出す。このままではナノファイバーLがリング状把持部24に軽く載っている状態なので、図5Eに示すように、同一形状の別のリング30の片面に薄く接着剤を塗布したものをナノファイバーが保持されている面に貼り合わせて把持の補強がなされる。
【0023】
「ナノファイバー採集方法」
上述した把持装置によって、ナノファイバーを例えばエレクトロスピニング法によって製造する時に試験用のナノファイバーが採集される。採集に先立って粘着層上を覆う剥離紙が剥がされる。前述したように、ノズルから噴射されたナノファイバーが飛散している空間をナノファイバーの飛行速度と同程度の速度で把持装置を移動させる。P1、P2等で示す方向に、ナノファイバーが飛散しているので、図6に示すように、複数のリング状把持部24に対して、ナノファイバーが被着する。
【0024】
試料として使用できることが可能なナノファイバーが付着したリング状把持部を台紙22から剥がす。図7Aに示すように、試料繊維としてのナノファイバーLが被着されているリング状把持部24を台紙22から剥がす。リング状把持部24の中心開口を横切っており、他のナノファイバーが極めて近い距離で位置していないナノファイバーであれば、試料として使用することが可能である。他のナノファイバーが極めて近い距離で位置していると、1本のナノファイバーを切断処理が面倒且つ困難である。
【0025】
そして、ナノファイバーの力学的特性を測定する試験装置の上部クランプ部26aと下部クランプ部26bの中心を結ぶ線と、ナノファイバーLとが一致するように、リング状把持部24がこれらのクランプ部26aおよび26bに固定される。
【0026】
ナノファイバーLは、肉眼で見ることができない程度の細さであるので、倍率1000倍程度のデジタル光学顕微鏡を使用して上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bに対するリング状把持部24の取り付け作業がなされる。取り付け作業を容易とするために、クランプ部26aおよび26bのそれぞれに対して軸の中心を示すマーク27aおよび27bがそれぞれ付されている。矢印で示すように、リング状把持部24を回転させることによって、ナノファイバーLの両端がクランプ部26aおよび26bの中心に位置するように、位置調整がなされる。
【0027】
上部クランプ部26aの一例を図7に示す。軸の先端にスリット28aが形成され、スリット28a内にナノファイバーLの一端が固定されたリング状把持部24が挿入され、リング状把持部24が小型のビス29によってスリット28a内に固定される。下部クランプ部26bも上部クランプ部26aと同様の構成とされている。
【0028】
位置調整がなされ、クランプ部26aおよび26bにリング状把持部24を固定した後に、図8Aにおいて一点鎖線で示す位置で、リング状把持部24の一部を切除する。切除後の状態を図8Bに示す。後述する試験装置において、上部クランプ部26aが上方向の変位し、変位がある値に達すると、ナノファイバーLが破断する。変位と張力の関係からナノファイバーLの力学的特性(引っ張り強度等)が測定される。
【0029】
上述したこの発明の一実施の形態では、図8C、図8Dおよび図8Eに示すように採集されたナノファイバーを試料として使用することができる。すなわち、図8Cに示すように、リング状把持部24の開口25を斜めに横切るナノファイバーL1を試料として使用することができる。図8Dに示すように、リング状把持部24の中心から外れた位置で交差するナノファイバーL2を試料として使用することができる。、図8Eに示すように、リング状把持部24に被着された2本のナノファイバーL3およびL4の一方を試料として使用することができる。
【0030】
図8に示す試料として使用できるナノファイバーは、全ての例ではなく、図示以外の態様でリング状把持部24に被着したナノファイバーを試料として使用できる。したがって、この発明によれば、採集したナノファイバーの中で、試料として使用できる割合(歩留り)を高くすることができ、ナノファイバーの測定を効率的に行うことができる。
【0031】
「試験装置の概略的構成」
この発明によるナノファイバー把持装置を適用できる試験装置について、図9を参照して説明する。図9に示すように、試験装置本体101には、荷重センサー例えば電子天秤が収納されている。電子天秤は、0.01mg程度(または0.1mg以上)の分解能を有する。電子天秤に限らず、同程度の分解能を有する荷重センサーを使用しても良い。図示しないが、電源を供給する電源コードが本体101から導出され、パーソナルコンピュータと接続するためのインターフェース例えばRS−232Cインターフェースが本体101に対して接続されている。
【0032】
試験装置本体101に対して一対の支柱102aおよび102bが所定の間隔の位置に垂直に設けられ、支柱102aおよび102bの先端の間に梁103がかけ渡されている。梁310の下部に取り付け板104が設けられる。取り付け板104の下側に電子天秤の秤量面上のマグネット部105が配されている。秤量面上のマグネット部105は、マグネットの磁力で載置された把持装置107の下部ホルダ109を固定するようになされている。
【0033】
秤量面上のマグネット部105の上方に位置するように、取り付け板104の下部に上下方向に変位する可動部106(昇降ステージ)が取り付けられる。可動部106は、駆動源としてのモータを有する。可動部106が有するバイス部によって把持装置107の上部ホルダ108が固定される。上部ホルダ108が可動部106によって上下方向に所定の速度で変位される。可動部106は、パーソナルコンピュータによってリモートコントロール可能とされ、パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムにしたがって、可動部106の昇降動作がなされる。
【0034】
上部ホルダ108が有する上部クランプ部26aの中心の延長線と、下部ホルダ109が有する下部クランプ部26bの中心の延長線とが一致される。上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bに対して上述したように、試料用ナノファイバーLの両端がそれぞれ固定されたリング状把持部24(図9では省略)が取り付けられる。
【0035】
試験装置本体101の前面パネル111に対して電源スイッチ112等のスイッチが設けられている。前面パネル111に測定された荷重の数値を表示する表示部を設けても良い。
【0036】
図10は、試験装置による測定結果の一例、荷重−変位曲線を示す。例えば試料としてエレクトロスピニング法で採取したナイロン(繊維径:300nm)を使用した。試験の条件は、試料長が5mm、引っ張り速度が5μm/sである。上部ホルダ108を上方向に変位させ、試料が引っ張られるにしたがって、荷重が変化する。そして、試料が破断した時に、荷重が急激に変化する。この試験によって試料の引っ張り強度を試験できる。さらに、変位−荷重のカーブの傾きから試料の弾性率を測定することができる。よりさらに、応力緩和およびクリープを試験することが可能である。
【0037】
「把持装置」
図11に示すように、把持装置107は、試験装置に装着する前に上部ホルダ108および下部ホルダ109は連結固定具67によって片側から水平に固定されている。
【0038】
上部ホルダ108および下部ホルダ109の先端(すなわち、上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26b)には、試料繊維(例えばナノファイバー)Lが付着したリング状把持部24を差し込むためのスリットが設けられている。そこに、リング状把持部24を挿入し、ビスで固定する。
【0039】
上部ホルダ108および下部ホルダ109には、それぞれOリング61および62が設けられている。Oリング61および62は、液中試験用のスリーブ(図示せず)の内周面と密着し、液漏れを防止するためのものである。スリーブは、例えば透明なアクリル樹脂製の円筒である。試料取り付け時、並びに液中試験を行わない時には、上部ホルダに設けられたOリング61によって、係止されている。液中試験時には、下部ホルダに設けられたOリング62によって、係止されるように、下げられる。
【0040】
「把持装置107に対する試料繊維の取り付け手順」
上部ホルダ108および下部ホルダ109がホルダ連結具67により水平に固定されている状態において、予め試料繊維Lが被着されているリング状把持部24を上部クランプ部26aおよび下部クランプ部26bのそれぞれに固定する(図8A参照)。その後、リング状把持部24を切断する(図8B参照)。
【0041】
このように、試料繊維Lが取り付けられた把持装置を試験装置に対して装着する。ホルダ連結具67によって、上部クランプ部26a,下部クランプ部26bおよび試料繊維が一直線上に位置した状態が保持され、この状態を保ったままで、把持装置を試験装置に装着できる。
【0042】
秤量面上のマグネット部105の所定位置に下部ホルダ109の底面を載置する。図示しないが、下部ホルダ109の底面を位置決めするための突起等がマグネット部105に形成されている。その後、上下方向可動部によって、上下方向可動部に取り付けられたバイス部70を下降させ、万力部によって固定する。最後にホルダ連結具67を取り外す。
【0043】
「変形例」
この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばエレクトロスピニング法に限らず、メルトブローン法等でナノファイバーを製造する場合に、試料を採集するのにもこの発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来のナノファイバー把持装置の一例を示す平面図である。
【図2】ナノファイバーの製造時にナノファイバーを採集する方法の説明に用いる略線図である。
【図3】従来のナノファイバー把持装置の他の例を示す平面図である。
【図4】この発明によるナノファイバー把持装置の一実施の形態の平面図である。
【図5】この発明の一実施の形態の各構成部分を示す平面図である。
【図6】この発明の一実施の形態において、ナノファイバーが把持装置に付着した状態を示す平面図である。
【図7】この発明の一実施の形態における上部クランプ部の一例の説明に使用する斜視図である。
【図8】この発明の一実施の形態において、試験装置に取り付ける方法を説明するための略線図である。
【図9】この発明を適用できる試験装置の一例の概略的説明に使用する斜視図である。
【図10】試験装置による試験結果の一例を示すグラフである。
【図11】この発明を適用できる把持装置をスライダ機構上に載せた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
L,L1〜L4・・・・ナノファイバー
22・・・・台紙
24a〜24g・・・・リング状把持部
26a・・・上部クランプ部
26b・・・下部クランプ部
51・・・スライダ機構
67・・・ホルダ連結具
101・・・試験装置本体
105・・・秤量面上のマグネット部
107・・・把持装置
108・・・上部ホルダ
109・・・下部ホルダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙と、
上記台紙に剥離自在に被着され、上記台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部と
を備え、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して上記極細繊維を上記表面に被着させる極細繊維試料把持装置。
【請求項2】
上記台紙に開口が形成され、上記開口と上記リング状把持部の中心開口とが重なり合うように、上記台紙に剥離自在に被着される請求項1記載の極細繊維試料把持装置。
【請求項3】
台紙と、上記台紙に剥離自在に被着され、上記台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部とを備えた極細繊維試料把持装置を、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して上記極細繊維を上記表面に被着させ、
上記極細繊維が被着された上記リング状把持部を上記台紙より剥離し、
試験装置の一対の取り付け部による引っ張り軸の中心の延長方向と、上記リング状把持部に被着された1本の上記極細繊維の長さ方向とが一直線上に並ぶように、上記リング状把持部を上記取り付け部に固定し、
上記リング状把持部を上記試料繊維の延長方向と交差する2箇所の位置で切断する極細繊維試料把持方法。
【請求項1】
台紙と、
上記台紙に剥離自在に被着され、上記台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部と
を備え、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して上記極細繊維を上記表面に被着させる極細繊維試料把持装置。
【請求項2】
上記台紙に開口が形成され、上記開口と上記リング状把持部の中心開口とが重なり合うように、上記台紙に剥離自在に被着される請求項1記載の極細繊維試料把持装置。
【請求項3】
台紙と、上記台紙に剥離自在に被着され、上記台紙と接着されない表面が粘着性を有する複数のリング状把持部とを備えた極細繊維試料把持装置を、
極細繊維製造時の極細繊維の飛行空間内を移動して上記極細繊維を上記表面に被着させ、
上記極細繊維が被着された上記リング状把持部を上記台紙より剥離し、
試験装置の一対の取り付け部による引っ張り軸の中心の延長方向と、上記リング状把持部に被着された1本の上記極細繊維の長さ方向とが一直線上に並ぶように、上記リング状把持部を上記取り付け部に固定し、
上記リング状把持部を上記試料繊維の延長方向と交差する2箇所の位置で切断する極細繊維試料把持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−145342(P2010−145342A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325656(P2008−325656)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(592158202)株式会社レスカ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(592158202)株式会社レスカ (10)
【Fターム(参考)】
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