説明

楽器の譜面板支持構造

【課題】楽器本体などに形成する支持具貫通用の開口部を小さくでき、楽器の外観を良好にできる譜面板支持構造の提供。
【解決手段】回動支点41を中心に回動可能な譜面板40と、一端60aの譜面板側連結部61が譜面板40に対して回動可能に連結され、他端60bの本体側連結部62が本体部10のガイド部材50の案内路51に対して移動可能に連結された支持棒60と、支持棒60を貫通させる開口部33を有し、譜面板40とガイド部材50との間に配置される響板30とを備えた譜面板支持構造において、譜面板40が倒伏状態のとき、回動支点41を基準として支持棒60の本体側連結部62が譜面板側連結部61よりも後方かつ下方に配置され、かつ、ガイド部50に設けられた本体側連結部62を停止させる倒伏時停止部55が、開口部33の後端よりも後側に位置するようにして、開口部33の奥行寸法が小さくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノなどの鍵盤楽器に取り付けた譜面板の支持に用いて好適な楽器の譜面板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、鍵盤楽器に取り付けた譜面板を支持するための譜面板支持構造がある。特許文献1に記載の譜面板支持構造は、譜面板の下方の左右に設けたガイド部材で譜面板下端に設けた軸部をガイドすることで、譜面板を立設姿勢と倒伏姿勢とに切り換えて支持可能としている。また、この支持構造において、軸部を多段階に停止させる複数のストッパー部をガイド部に形成すれば、譜面板の立設角度を多段階に調節可能となる。
【特許文献1】特開2005−181905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような譜面板支持構造では、楽器本体の内外に設置したガイド部材と譜面板との間に介在する外装部材(外装板)に、譜面板とガイド部材とを繋ぐための開口部が形成されている。この開口部は、楽器の外観の一部をなすうえ、開口部を覗き込むようにした場合、ガイド部材など楽器の内部構造の一部が外から見えることもある。そのため、特に高級感が求められる上位機種の鍵盤楽器においては、開口部を出来るだけ小さくして目立たないようにすることが望ましい。
【0004】
ところが、特許文献1に記載された譜面板支持構造では、ガイド部材の案内路は、譜面板の軸部を開口部の直下の該開口部と平行な面(外装板と平行な面)内でのみ直線移動させるように形成されている。この構造では、軸部の移動方向(この場合は、楽器本体の前後方向)における開口部の長さ寸法を軸部の移動寸法とほぼ同じかそれ以上としなければならない。これにより、開口部の奥行寸法が大きくなるため、開口部が目立ち易くなり、楽器の良好な外観が損なわれるおそれがあった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、譜面板の傾斜角度を調節可能でありながら、楽器本体などに形成する開口部の寸法を小さくでき、楽器の外観を良好にできる譜面板支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、楽器本体(10)に対して支点(41)を中心に回動することで、立設姿勢と倒伏姿勢との間で傾斜角度を変更可能な譜面板(40)と、一端(60a)に設けた譜面板側連結部(61)が譜面板(40)に対して回動可能に連結され、他端(60b)に設けた本体側連結部(62)が楽器本体(10)に対して移動可能に連結されており、該本体側連結部(62)の移動により、譜面板(40)の傾斜角度を切り換えて支持可能な長尺状の支持具(60)と、楽器本体(10)に設けられ、支持具(60)の本体側連結部(62)を移動可能に係合させるガイド部(50)と、ガイド部(50)に設けた本体側連結部(62)の移動を案内する案内路(51)と、譜面板(40)を立設姿勢で支持する際に案内路(51)の途中で本体側連結部(62)を係止するためのストッパー部(56,57)と、支持具(60)を貫通させる開口部(33)を有し、譜面板(40)とガイド部(50)との間に配置される中間部材(30)と、を備える楽器の譜面板支持構造であって、譜面板(40)が倒伏状態のとき、支点(41)を基準として支持具(60)の本体側連結部(62)が譜面板側連結部(61)よりも後方かつ下方に配置され、かつ、ガイド部(50)に設けられた本体側連結部(62)を停止させる倒伏時停止部(55)は、開口部(33)の後端(33a)よりも後側に位置するように構成したことを特徴とする。なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【0007】
本発明にかかる譜面板支持構造によれば、譜面板が倒伏状態のとき、譜面板の回動支点を基準として、支持具はその一端の譜面板側連結部から他端の本体側連結部に向かって後側に延び、かつ、本体側連結部が位置するガイド部材の倒伏時停止部が開口部の後端よりも後側に配置されている。これにより、支点から開口部に向かう前後方向における開口部の寸法(開口部の奥行寸法)を小さくすることが可能となる。したがって、本体側連結部の移動により譜面板の傾斜角度を調節可能としながらも、楽器本体などに形成する開口部の寸法を小さくできる。これにより、楽器の外観の一部をなす開口部、あるいは該開口部から見える楽器本体の内部構造を目立たなくできるので、楽器の外観を良好にすることができる。
【0008】
また、この譜面板支持構造では、譜面板(40)を倒伏姿勢から立設姿勢に移行させる際、支持具(60)の本体側連結部(62)を支点(41)に近い前側かつ開口部(33)に近い上側に向かって移動させるように形成するとよい。これによれば、譜面板の姿勢を倒伏姿勢から立設姿勢に切り換える際、支持具がその長手方向に沿って移動するようになるので、開口部における支持具の位置(支点を基準とする前後方向の位置)の移動量を少なくできる。したがって、開口部の寸法を小さくすることが可能となる。
【0009】
また、上記の譜面板支持構造では、ガイド部(50)のストッパー部(56,57)は、倒伏時停止部(55)よりも支点(41)に近い前側かつ開口部(33)に近い上側の位置に設けるとよい。これによれば、譜面板を倒伏姿勢から立設姿勢に移行させる際、倒伏時停止部からストッパー部に移動する本体側連結部が支持具の長手方向に沿って移動するようになる。したがって、開口部内における支持具の位置(支点を基準とする前後方向の位置)の移動量を少なく抑えながらも、譜面板の立設角度の変化量を大きく取ることが可能となるので、譜面板の立設角度の調節が行い易くなる。
【0010】
また、上記の譜面板支持構造では、ストッパー部(56,57)は、譜面板(40)を異なる複数の立設角度で支持可能となるように複数箇所に設けられており、該複数箇所のストッパー部(56,57)は、対応する譜面板(40)の立設角度が大きい程、支点(41)に近い前側かつ開口部(33)に近い上側に配置するとよい。これによれば、譜面板の立設角度を複数段階に調節可能となるので、譜面板の使い勝手を向上させることができる。加えて、支持具の本体側連結部が支点に向かって移動するようになるので、開口部内における支持具の位置(支点を基準とする前後方向の位置)の移動量を少なく抑えながら、譜面板の立設角度の変化量を大きくすることが可能となる。したがって、譜面板の立設角度の調節が行い易くなる。
【0011】
また、上記の譜面板支持構造では、案内路(51)は、本体側連結部(62)に設けた突起状の係合部(62a)を案内する壁面(51a)を有しており、案内路(51)におけるストッパー部(57)に対向する壁面(51a)には、ストッパー部(57)に向かって突出する誘導壁(59)を設けるとよい。これによれば、案内路を移動する突起状の係合部をストッパー部へ確実に導入できるようになる。したがって、譜面板を所定の立設角度で確実にロックできるようになり、譜面板の使い勝手が向上する。
【0012】
また、上記の譜面板支持構造では、支持具(60)は、譜面板(40)の回動方向に対する幅方向の中間を支持する単一の棒状部材(60)であり、ガイド部(50)は、支持具(60)の一方の側部のみに設けるとよい。これによれば、支持具及びガイド部を一つずつ設ければよいので、譜面板支持構造の部品点数を少なくでき、楽器の製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる楽器の譜面板支持構造によれば、譜面板の立設角度を良好に調節可能でありながら、楽器本体などに形成する開口部の寸法を小さくできるので、楽器の外観を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる譜面板支持構造を備えたグランドピアノ型の外観を有する電子ピアノを示す図で、電子ピアノの本体部(楽器本体)10を一部分解した状態で示す分解斜視図である。また、図2は、電子ピアノの本体部10に取り付けた譜面板40及びその支持構造を示す概略側断面図である。以下の説明では、電子ピアノの本体部10における演奏者側を手前側あるいは前側、演奏者側と反対側を後側と称し、後述する鍵盤13が備える鍵13aの配列方向を横方向あるいは左右方向と称す。また、上下というときは、図1に示す状態での本体部10の上下方向を示すものとする。さらに、各部材における向きや方向を示す場合も、各部材を本体部10に取り付けた状態での本体部10の向きで示す。
【0015】
本実施形態の譜面台支持構造は、電子ピアノの本体部10に対して回動可能に取り付けられた譜面板40と、譜面板40を立設姿勢と倒伏姿勢とに切り換えて支持可能な支持棒(長尺状の支持具)60と、本体部10に設けた支持棒60を移動可能に係合させるガイド部材(ガイド部)50と、譜面板40とガイド部材50との間に配された本体部10の外装部品である響板(中間部材)30とを備えている。響板30には、支持棒60を貫通させる開口部33が形成されている。以下、譜面板支持構造の各部の構成を順に説明する。
【0016】
本体部10の手前側には、複数の鍵13aが配列された鍵盤13が設置されており、鍵盤13の後側には、本体部10の両側面を囲む横側板12,12と後端を囲む後側板11とによって画成された収納部14が設けられている。収納部14の上部は開口14aになっている。開口14aには、一辺を支点として上下に回動することで開閉可能な大屋根が設置されるが、図1では、大屋根の図示を省略している。
【0017】
収納部14内の後側には、図示しないスピーカボックスが設置されており、スピーカボックスの上部には、中板20が設置されている。そして、収納部14におけるスピーカボックスの手前側には、左右の横側板12,12間に架け渡された二本の角柱状の支持部材23,24が設置されている。支持部材23,24は、前後に所定間隔で互いに平行に設置されている。支持部材23,24の長手方向の中央、すなわち収納部14の横方向の中央には、ガイド部材50を取り付けてなるガイド部材取付体46が設置されている。ガイド部材取付体46は、支持部材23,24間に架け渡されたガイド部材取付具45にガイド部材50を取り付けた構成である。ガイド部材50及びガイド部材取付体46の詳細については後述する。また、支持部材23,24の両側近傍には、響板30の上方に設置される装飾台31,31を取り付けるための装飾台取付具32,32が設置されている。装飾台取付具32は、支持部材23と支持部材24の間に架け渡された略棒状の部材で、上方に突出する小突起状の固定片32aを有している。
【0018】
収納部14における中板20の手前側には、支持部材23,24及びガイド部材取付体46の上部を覆う響板(中間部材)30が設置されている。響板30に設けた開口部33は、その長手方向が本体部10の前後方向に向かう略長方形状の小貫通穴からなり、響板30の横方向の中央に形成されている。譜面板40は、響板30の上面側における開口部33に対応する位置に設置される。また、響板30の両側には、装飾台取付具32の固定片32aを貫通させるための貫通穴34が形成されている。
【0019】
図2に示すように、譜面板40は、その下端40aに設けた回動支点41が響板30の手前側端部に対応する位置で支持部材23に対して回動自在に支持されている。回動支点41には、譜面板40の下端40aを支持部材23に対して回動自在に取り付ける蝶番41aが設けられている。したがって、譜面板40は、下端40aの回動支点41を中心として上端40bが上下に回動することで、響板30に沿って回動支点41の後側に倒される倒伏姿勢と、響板30の面(水平面)に対して所定角度を成した状態で斜めに立接される立設姿勢とを取ることが可能である。
【0020】
なお、譜面板40の下端40aに設けた蝶番41aは、蝶番取付具25を介して支持部材23に取り付けられており、響板30には当接していない。すなわち、回動支点41の蝶番41aあるいは蝶番取付具25と響板30との間には、僅かな隙間が設けられている。これにより、譜面板40やその支持構造が電子ピアノの演奏時における響板30の振動に影響を及ぼさないようになっている。また、譜面板40の上端40b近傍の下面40d側には、倒伏姿勢の譜面板40と響板30との衝突を防止するためのクッション材42が取り付けられている。
【0021】
また、譜面板40の上面40cには、譜面を支持するための譜面受け43けが設けられている。譜面受け43は、譜面板40の上面40cの下端40aよりも若干上方の位置に取り付けられた板状の部材であり、譜面板40の幅方向の略全体に渡る細長い板状に形成されている。譜面受け43は、譜面板40の上面40cに蝶番43aで回動自在に取り付けられており、譜面板40の上面40cに対して略直交する開位置と、譜面板40の上面40cに沿う閉位置との間で回動可能となっている。
【0022】
また、譜面板40を支持する支持棒60は、響板30の開口部33を貫通しており、一端60aが響板30の上方(譜面板40側)に突出し、他端60bが響板30の下方(ガイド部材50側)に突出している。そして、一端60aに設けた譜面板側連結部61が譜面板40の下面40dに連結され、他端60bに設けた本体側連結部62が本体部10側のガイド部材50に連結されている。なお、支持棒60の一端60aは、譜面板40の下面40dにおける幅方向の中央で上下方向の中央より若干下側の位置に連結されている。
【0023】
図3(a)乃至(c)は、ガイド部材取付体46を示す図で、(a)は、ガイド部材取付体46の平面図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図、(c)は、ガイド部材取付体46の斜視図である。また、図3(d)は、支持棒60を示す斜視図である。図3(a)乃至(c)に示すように、ガイド部材取付具45は、支持部材23,24間に架け渡される細長い略薄板状の部材で、長手方向の両端にはそれぞれ、支持部材23,24に対して固定される固定部45aが設けられている。固定部45aは、ネジ(図2参照)45bを締結固定するためのネジ穴からなる。
【0024】
また、ガイド部材取付具45の長手方向の中間には、上面側が開口する凹形状の収納部47が設けられている。収納部47には、略矩形の板状に形成されたガイド部材50が収納されている。ガイド部材50は、収納部47の左側の側面に沿う位置に収納されており、ガイド部材50の右側には、ガイド部材50の厚みと同等の幅寸法を有する隙間47aが形成されている。隙間47aには、支持棒60が挿入されるようになっている。また、隙間47aを挟んでガイド部材50と反対側の面、すなわち収納部47の右側の内面には、ガイド部材50で案内される支持棒60を摺接させる摺接部48が設けられている。摺接部48は、収納部47の右側の内壁に付した表面の摺動性が良好なシート材などで構成されている。摺接部48が支持棒60に接していることで、後述するガイド部材50の案内路51に係合する支持棒60の係合突起62aが案内路51から抜け出ることを防止できる。
【0025】
一方、図3(d)に示す支持棒60は、直線棒状の部材で、一端60aの譜面板側連結部61には、譜面板40の下面40dに回動自在に連結される軸部61aを備えている。また、支持棒60の他端60bの本体側連結部62は、該他端60bの左側面60cに形成した略円柱状の小突起からなる係合突起62aを備えている。係合突起62aは、ガイド部材50の案内路51に係合する。これにより、本体側連結部62が案内路51に沿って移動することで、開口部33から上方(譜面板40側)へ突出する支持棒60の突出長さ及び角度が変化し、支持棒60で支持された譜面板40の傾斜角度が変化するようになっている。
【0026】
図4は、ガイド部材50の詳細構成を示す図で、(a)は、右側面(案内路51の形成面)
50aから見た平面図、(b)は、斜視図である。ガイド部材50の右側面50aに形成された案内路51は、支持棒60の係合突起62aを案内する壁面51aで構成された通路で、ガイド部材50の上面50bの前側に設けた初期挿入口52からガイド部材50の前側の下端を経て後側の下端まで略L字状に形成された導入路53と、ガイド部材50の後側の下端を始点及び終点として、手前側の上方に向かってループ状に形成された循環路54とを備えている。
【0027】
循環路54は、ガイド部材50の後側の下端に設けた倒伏時停止部55から第1上昇路54aを経て第1ストッパー部56に連通している。第1上昇路54aは、図4(a)の前側(譜面板40の回動支点41側)かつ上側(開口部33側)に向かうよう斜め上方に延びている。循環路54はさらに、第1ストッパー部56から第2上昇路54bを経て第2ストッパー部57に連通している。第2上昇路54bは、図4(a)の前側(譜面板40の回動支点41側)かつ上側(開口部33側)に向かうよう斜め上方に延び、その後前側に向かって横方向に延びている。循環路54はさらに、第2ストッパー部57から下降路54cを経て導入路53に合流してから倒伏時停止部55に戻るようになっている。下降路54cは、図4(a)の後側(譜面板40の回動支点41と反対側)かつ下側(開口部33と反対側)に向かうよう斜め下方に延びている。
【0028】
また、導入路53と合流した後の倒伏時停止部55の直前位置には、案内路51の断面に配された弾性片からなる戻り防止部58が形成されている。戻り防止部58により、循環路54における係合突起62aの逆行が防止されるようになっている。
【0029】
第1ストッパー部56は、第1上昇路54aの上端54dに対して下側かつ後側(斜め下側)に向かって窪んだ形状の部位で、第1上昇路54aを進行した係合突起62aが上端54dから落ち込んで第1ストッパー部56に係止されるようになっている。また、第2ストッパー部57は、第2上昇路54bの前端54eに対して下側かつ後側(斜め下側)に向かって窪んだ形状の部位で、第2上昇路54bを進行した係合突起62aが前端54eから落ち込んで第2ストッパー部57に係止されるようになっている。また、案内路51における第2ストッパー部57に対向する壁面51aには、第2ストッパー部57に向かって突出する突起状の誘導壁59が設けられている。すなわち、第2ストッパー部57の斜め上方に配置された誘導壁59は、下側かつ後側に向かって突出しており、第2上昇路54eの前端54eから落ち込む係合突起62aを第2ストッパー部57へ押し込むように誘導可能な部位である。なお、第2ストッパー部57を出た係合突起62aは、一度前側かつ上側に戻った後、下降路54cに導入されるようになっている。
【0030】
また、図2に示すように、本体部10の前後方向において、開口部33とガイド部材50は、それら一部が重なった状態で、ガイド部材50が開口部33の後端33aよりも後側まで配置されている。したがって、支持棒60の本体側連結部62を案内する案内路51も、開口部33の後端33aよりも後側の位置まで及んでいる。
【0031】
次に、上記構成の譜面板支持構造を用いて行なう譜面板40の角度調整について説明する。図5は、当該角度調整の動作を説明するための図である。同図(a)は、譜面板40が倒伏姿勢の状態を示している。このとき、譜面板40は、響板30に沿って略水平に倒された状態となっており、支持棒60の係合突起(本体側連結部)62aが案内路51の倒伏時停止部55に位置している。この状態で、開口部33からガイド部50側に出る支持棒60が譜面板40の回動支点41に対して開口部33より後側に延び、係合突起62aが位置する倒伏時停止部55が開口部33の後端33aよりも後側に配置された状態になる。
【0032】
また、この譜面板40の倒伏状態では、支持棒60は、その長手方向が譜面板40の下面40dと略平行ではなく、譜面板側連結部61より本体側連結部62の方が上下方向の位置が低くなるように譜面板40に対して角度を成した状態、すなわち、譜面板側連結部61から本体側連結部62に向かって次第に譜面板40の下面40dとの離間距離が大きくなるように角度を成した状態で配置される。さらに、この譜面板40の倒伏状態では、ガイド部材50から上方に突出する支持棒40の譜面板側連結部61は、響板30の開口部33の内部(響板30の板厚の範囲内)に位置する。
【0033】
上記の倒伏姿勢において、譜面板40の上端40bを手などで上方へ引き起こすと、譜面板40の上昇に伴い支持棒60が開口部33から斜め前上方へ引き出されるように移動する。これにより、支持棒60の係合突起62aが倒伏時停止部55から出て第1上昇路54aを進行する。その後、係合突起62aは、第1上昇路54aの上端54dから落下し、第1ストッパー部56に係止される。このとき、図5(b)に示すように、支持棒60で支持された譜面板40が響板30(水平面)に対して第1の角度θ1を成した状態で立設される。この状態で、開位置の譜面受け43に譜面を載せることで、譜面板40を使用することができる。
【0034】
また、図5(b)に示す状態(第1の角度θ1で立設された状態)の譜面板40の上端40bを持ち上げてさらに手前側に起こすと、この場合も、譜面板40の上昇に伴い支持棒60が開口部33から斜め前上方へ引き出されるように移動する。これにより、支持棒60の係合突起62aが第1ストッパー部56を出て第2上昇路54bを進行する。その後、係合突起62aは、第2上昇路54bの前端54eから落下し、第2ストッパー部57に係止される。これにより、図5(c)に示すように、支持棒60で支持された譜面板40が響板30に対して第2の角度θ2(θ1<θ2)を成した状態で立設される。
【0035】
このように、立設姿勢の譜面板40を異なる複数の角度で支持可能とする第1ストッパー部56と第2ストッパー部57とを設けたことで、譜面板40の立設角度を複数段階に調節可能となり、譜面板40の使い勝手を向上させることができる。また、第2ストッパー部57は、第1ストッパー部56よりも回動支点41に近い手前側かつ上側に位置している。これにより、開口部33における支持棒60の移動量を少なく抑えながらも、譜面板40の立設角度の変化量を大きくすることが可能である。したがって、譜面板40の立設角度の調節が行い易くなる。なお、ここでは、案内路51に二段のストッパー部56,57を設けた場合を示したが、ストッパー部は、三段以上を設けることも可能である。
【0036】
また、係合突起62aが第2ストッパー部57に係止される際、係合突起62aを第2ストッパー部57に導くための誘導壁59により、係合突起62aが第2ストッパー部57を通過することを防止できるので、係合突起62aが第2ストッパー部57に確実に係合するようになる。したがって、譜面板40を所定の立設角度(θ2)で確実にロックでき、譜面板40の使い勝手が向上する。
【0037】
また、図5(c)に示す状態(第2の角度θ2で立設された状態)の譜面板40の上端40bをさらに手前上方へ引くと、譜面板40の手前側への回動に伴い支持棒60が引き上げられて斜め上方へ移動する。これにより、支持棒60の係合突起62aが第2ストッパー部57を出て下降路54cに導入される。その後、譜面板40の上端40bを後側下方へ戻せば、係合突起62aが下降路54cを進行する。そして、係合突起62aが戻り防止部58を越えて倒伏時停止部55に戻ったとき、譜面板40は、図5(a)の倒伏姿勢に戻る。なお、交換やメンテナンスに伴う譜面板40の取り外しを行なう場合は、戻り防止部58を越える前の係合突起62aを導入路53に導くことで、係合突起62aを初期挿入口52から取り出して、支持棒60をガイド部材50から取り外すことができる。譜面板40を取り付ける際は、これとは逆に、初期挿入口52から挿入した係合突起62aを導入路53を経由して循環路54へ導くようにする。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の譜面板支持構造によれば、譜面板40が倒伏状態のとき、係合突起62aが位置する倒伏時停止部55が回動支点41から見て開口部33の後端33aよりも後側の位置となるようにしたので、開口部33での支持棒60の位置の移動量を少なく抑えることができる。これにより、開口部33の寸法を小さくすることが可能となる。したがって、電子ピアノの外観の一部をなす開口部33、あるいは該開口部33から見える本体部10の内部構造を目立たなくでき、楽器の外観を良好にすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、ガイド部材50の案内路51は、支持棒60の係合突起62aが譜面板40の下面40dに向かう向き及び該下面40dから遠ざかる向きへ進退移動するように形成されている。これにより、譜面板40を立設姿勢と倒伏姿勢とに移行させる際、回動する譜面板40の下面40d(詳細には、譜面板側連結部61)に向かう向き(あるいは、回動支点41に近い前側かつ開口部33に近い上側に向かう向き)及び該下面40dから遠ざかる向きへ支持棒60が進退移動するので、開口部33内での支持棒60の位置の移動量を少なくできる。したがって、開口部33の寸法を小さくすることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、支持棒60は、譜面板40の回動方向に対する幅方向の中央を支持する単一の支持棒60とし、ガイド部材50を支持棒60の一方の側部のみに設置している。したがって、支持棒60及びガイド部材50を各1個ずつ設ければよいので、譜面板支持構造の部品点数を少なくでき、電子ピアノの製造コストを抑えることができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態にかかる譜面板支持構造を備えた電子ピアノの本体部を示す分解斜視図である。
【図2】電子ピアノの本体部に取り付けた譜面板及びその支持構造を示す概略側断面図である。
【図3】ガイド部材取付体及び支持棒を示す図で、(a)は、ガイド部材取付体の平面図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図、(c)は、ガイド部材取付体の斜視図、(d)は、支持棒の斜視図である。
【図4】ガイド部材を示す図で、(a)は、案内路が形成された右側面の平面図、(b)は、右側面から見た斜視図である。
【図5】譜面板支持構造の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
10 本体部
13 鍵盤
30 響板(中間部材)
33 開口部
40 譜面板
40d 下面
41 回動支点
41a 蝶番
45 ガイド部材取付具
46 ガイド部材取付体
47 収納部
47a 隙間
48 摺接部
50 ガイド部材
51 案内路
51a 壁面
52 初期挿入口
53 導入路
54 循環路
54a 第1上昇路
54b 第2上昇路
54c 下降路
55 倒伏時停止部
56 第1ストッパー部
57 第2ストッパー部
58 戻り防止部
59 誘導壁
60 支持棒
60a 一端
60b 他端
60c 左側面
61 譜面板側連結部
61a 回動軸
61a 軸部
62 本体側連結部
62a 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体に対して支点を中心に回動することで、立設姿勢と倒伏姿勢との間で傾斜角度を変更可能な譜面板と、
一端に設けた譜面板側連結部が前記譜面板に対して回動可能に連結され、他端に設けた本体側連結部が前記楽器本体に対して移動可能に連結されており、該本体側連結部の移動により、前記譜面板の傾斜角度を切り換えて支持可能な長尺状の支持具と、
前記楽器本体に設けられ、前記支持具の前記本体側連結部を移動可能に係合させるガイド部と、前記ガイド部に設けた前記本体側連結部の移動を案内する案内路と、前記譜面板を立設姿勢で支持する際に前記案内路の途中で前記本体側連結部を係止するためのストッパー部と、
前記支持具を貫通させる開口部を有し、前記譜面板と前記ガイド部との間に配置される中間部材と、
を備える楽器の譜面板支持構造であって、
前記譜面板が倒伏状態のとき、前記支点を基準として前記支持具の前記本体側連結部が前記譜面板側連結部よりも後方かつ下方に配置され、かつ、前記ガイド部に設けられた前記本体側連結部を停止させる倒伏時停止部は、前記開口部の後端よりも後側に位置するように構成した
ことを特徴とする楽器の譜面板支持構造。
【請求項2】
前記ガイド部の前記案内路は、前記譜面板を前記倒伏姿勢から前記立設姿勢に移行させる際、前記支持具の前記本体側連結部を前記支点に近い前側かつ前記開口部に近い上側に向かって移動させるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項3】
前記ガイド部の前記ストッパー部は、前記倒伏時停止部よりも前記支点に近い前側かつ前記開口部に近い上側の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項4】
前記ストッパー部は、前記譜面板を異なる複数の立設角度で支持可能となるように複数箇所に設けられており、該複数箇所のストッパー部は、対応する前記譜面板の立設角度が大きい程、前記支点に近い前側かつ前記開口部に近い上側に位置するように配されている
ことを特徴とする請求項3に記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項5】
前記案内路は、前記本体側連結部に設けた突起状の係合部を案内する壁面を有しており、
前記案内路における前記ストッパー部に対向する壁面には、前記ストッパー部に向かって突出する誘導壁が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の楽器の譜面板支持構造。
【請求項6】
前記支持具は、前記譜面板の回動方向に対する幅方向の中間を支持する単一の棒状部材であり、
前記ガイド部は、前記支持具の一方の側部のみに設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の楽器の譜面板支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145934(P2010−145934A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325687(P2008−325687)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】