説明

構築された組み換えポリペプチド融合物の成熟化のためのカスパーゼ酵素の使用

本発明は、成熟化作用プロテアーゼに特異的な認識部位を有する融合タンパク質構築物を用いた組み換えタンパク質の製造方法及び単離方法に関する。特に本発明は、構築した組み換え融合タンパク質又はポリペプチドの成熟化のためのカスパーゼプロテアーゼの使用に関する。これらの分子は、第一の融合部と目的のポリペプチドとの間にカスパーゼに特異的な標的配列を有するように組み換えDNA技術を用いて構築される。プロセシング後に、所望の成熟体のタンパク質又はポリペプチドが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分子生物学、生物工学、又はタンパク質若しくはペプチドの製造のためのプロセス工学の分野に関する。本発明は、成熟化作用プロテアーゼに特異的な認識部位を有する融合タンパク質構築物を用いた組み換えタンパク質の製造方法及び単離方法に関する。特に本発明は、構築された組み換え融合タンパク質又はポリペプチドの成熟化のためのカスパーゼプロテアーゼの使用に関する。これらの分子は、第一の融合部と目的のポリペプチドとの間にカスパーゼに特異的な標的配列を有するように、組み換えDNA技術を用いて構築される。プロセシング後に、タンパク質又はポリペプチドの所望の成熟体が得られる。
【背景技術】
【0002】
組み換えタンパク質の異種発現は幾つかの技術的難点により阻まれる。その発現の程度は種々の理由で不十分になることがある。
【0003】
第一に、翻訳レベルがタンパク質の十分な産生レベルを妨げうる。タンパク質ごとに翻訳レベルを構築し最適化する必要があり、これは時間のかかる作業である。第二に、目的のタンパク質は不安定なことがある。この不安定性は幾つかの理由によることがある。タンパク質のN-末端によりタンパク質の全体の安定性が決まり、それが宿主プロテアーゼにより分解される可能性を決定すると記載されている。第三に、組み換えタンパク質の発現は高効率であるにも拘わらず、大腸菌での組み換えタンパク質の産生では発現タンパク質の不溶性沈殿物が形成されることが主に支障となる。これらの“封入体”はたいてい生物学的に不活性である。従って生物学的に活性な可溶性タンパク質に戻すためには再生工程が必要とされる。これは煩わしいプロセスであり、製造環境に導入すると工程費用がかなり高くなる。再生工程は決してタンパク質の完全な生物学的な活性を保証するものではない。異性体は同じ生体生理学的特性をもって形成されることがあるが、生物学的活性に関してはかなり低いものである。通常、これらの折り畳み異性体は異なる疎水性表面を有し、逆相クロマトグラフィーによって同定できる。更に、大腸菌の細胞質中で成熟タンパク質を産生させる場合に、必須のN-末端メチオニンアミノ酸の除去は効率的であるとはいえないので、タンパク質製造における不均質性が制御されない。またN-末端メチオニンは大腸菌ではホルミル化され、これはヒト及び動物において特異的な免疫原性シグナルとなるので望ましくない。
【0004】
これらの問題は、融合タンパク質の手法を適応することによって克服することができる。融合タンパク質は、1以上のアミノ酸により目的のタンパク質を伸長させたものである。融合タンパク質は、目的のタンパク質にペプチドタグを結合させるか又はより大きなポリペプチドと融合させることで構築することができる。好ましい手法は、目的のポリペプチドのN-末端に付加的なポリペプチド部を融合させることである。この融合タンパク質の手法を用いる利点には、例えば、適切な融合相手を用いれば、発現は概ね高く、かつ更なる最適化が必要ないという事実がある。すなわちN-末端を選択することにより融合タンパク質は分解に対して安定化し、それにより該融合タンパク質は一般にプロテアーゼ分解に対してより保護され、かつ融合構築物の可溶性もしばしば向上するからである。更に、特定の簡単な精製法を融合部に的を絞って設計でき、そして融合タンパク質を簡単なクロマトグラフィー工程で単離できるようになる。かかる精製工程が融合部について存在しないのであれば、親和性“タグ”を融合部に融合させてもよい。次いで新規に構成された融合部は吸着カラム上で特異的な特性挙動を獲得する。例えば、特異抗体によって認識されるペプチドタグ、一定のタンパク質に対して親和性を有するペプチドタグ、タンパク質ドメインであってそれとは別のタンパク質又はタンパク質ドメインに対して親和性を有するタンパク質ドメイン、単離された特異結合ペプチド、特異結合タンパク質ドメイン又は特異結合タンパク質、及び柔軟な支持体に特異的に結合するそのタンパク質又はドメインが挙げられる。これらの親和性タグの1種以上を融合タンパク質に組み合わせてもよい。
【0005】
この目的のために、融合相手は、大腸菌中でいかに良好に産生されるかに基づいて、又はその親水性に基づいて経験的に特定されていた。目的のポリペプチドに融合されるタンパク質の可溶性発現を高めるような経験的に特定された融合相手の例はGST、チオレドキシン又はMBPである。その高い親水特性に基づいて選択される融合相手の例はNusA及びGrpEである。しかしながら、その結果は依然として予測不能であり、発現されるタンパク質の固有の特性に依存する。親和性タグには、例えば、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、抗体に対するペプチド基質、キチン結合ドメイン、RNアーゼSペプチド(RNase S peptide)、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、プロテインA、β-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0006】
関心が持たれてはいるものの、融合タンパク質の研究における製造方法の課題は異なるレベル、すなわち融合部の除去と目的のタンパク質の成熟化ということに移行している。
【0007】
融合タンパク質から出発して目的の成熟タンパク質を得るためには、融合相手又は構成融合部と目的のタンパク質との分離が必要である。この目的のために、幾つかの方法が述べられている。化学的分解法は、特定のアミノ酸の後方での開裂に対して考え出された。しかしながら、目的のタンパク質の成熟部の最初のアミノ酸の前にあるアミノ酸は、特異であるか又は少なくとも目的のタンパク質中に存在してはならない。また、開裂を誘導するために過酷な化学的条件が必要な場合には、化学的なタンパク質分解が生ずる恐れがある。すなわち酸化、脱アミノ、環状イミド形成、イソアスパラギン酸形成がまさにその例である。化学的なタンパク質分解は、最終的なタンパク質調製物に不均質性をもたらし:タンパク質に抗原決定基を導入するか又はその活性を低減させることがあり、タンパク質は治療物質としての使用に不適になる。ある種のペプチド配列に対して幾らか特異性を有するプロテアーゼが記述されている。これらのプロテアーゼを使用するには、融合部と目的のタンパク質との間にリンカーを導入して、式
Fi-L-P
[式中、Fは種々の単位F1、F2、…、Fnから構成されうる融合部を表し、Lは使用されるプロテアーゼのための認識配列を含むリンカー配列および可能であればプロテアーゼが切断部位に接近する可能性を高めるスペーサーであり、Pは目的のタンパク質である]の融合タンパク質を構成する。
【0008】
前記の目的のために使用されるプロテアーゼにはこのリンカーの範囲内を切断するものがある。なぜなら、これらのプロテアーゼの特異性は開裂部位の上流配列(開裂部位からN-末端方向に向かって番号付けされるPi位置)および開裂部位の下流配列(開裂配列からC末端方向に向かって番号付けされるP'i位置)の両方によって規定されるからである。これらの酵素でプロセシングした場合には、成熟タンパク質は得られず、得られるタンパク質は多数の非天然由来アミノ酸に依然として融合したままである。これでも多数の生化学的目的については十分許容されるかもしれないが、治療剤の開発においては、目的のペプチドの所望のタンパク質の成熟配列のみを得ることが高く望まれる。かかるプロテアーゼの例及び切断配列の例は以下が挙げられる:
酵素 配列
IgAプロテアーゼ Thr-Pro-Ala-Pro-Arg-Pro-Pro|^|Thr-Pro
コラゲナーゼ Pro-Xaa|^|Gly-Pro
HRV3C Leu-Glu-Val-Leu-Phe-Gln|^|Gly-Pro
TEV Glu-Xaa-Xaa-Tyr-Gln|^|(Gly/Ser)
記号“|^|”は、その配列においてプロテアーゼが切断する位置を示す。
【0009】
他の酵素は、P'1及びP'2の位置を選ばないか又は殆ど選ばないので、従って融合タンパク質が成熟化すると、目的のタンパク質が得られ、これには如何なる人工アミノ酸も融合していない。ヒト及び動物において治療に使用する物質を得るためには明らかにこれが最も好ましい選択肢である。
【0010】
かかる制限されたプロテアーゼの例及び開裂部位のC-末端側に特異性を有さない切断配列の例は以下が挙げられる:
酵素 配列
トリプシン Arg|^|,Lys|^|
トロンビン Arg-Gly-Pro-Arg|^|
Xa因子 Ile-Glu-Gly-Arg|^|
エンテロキナーゼ Asp-Asp-Asp-Lys|^|
トリプシンなどの酵素の使用が明らかに非常に制限されるのは、目的のタンパク質を分解する可能性が高いからである。
【0011】
またトロンビンも特異性が低い。トロンビンのための最適な開裂部位は以下のとおりである。最初の三例において、認識部位についての式は、
P4-P3-P-R/K|^|P1'-P2'
[式中、P3及びP4は疎水性アミノ酸であり、かつP1'及びP2'は非酸性アミノ酸である]である。R/Kの後方の結合が開裂される。しかしながらトロンビンの開裂可能部位は様々である(アミノ酸を一文字コードで示す):
【表1】

4と5の場合には、開裂部位はあまり明瞭ではなく、これらの配列に類似の部位は天然タンパク質中に定期的に見出される。従ってトロンビンはトリプシンより少し特異的であるにすぎないと思われる。この理由のため、トロンビンによる開裂でも目的のタンパク質が加水分解される可能性は高い。
【0012】
Xa因子の特異性はあまり厳密ではなく、目的のタンパク質が思いもよらない部位で開裂される例が知られており、そして特異性はトロンビンにより認められるものより高くない。これはしばしば目的のタンパク質のプロセシング及び分解をもたらす。短くなったタンパク質部分の更なる分解はしばしば混在するプロテアーゼの活性によるものである。更にXa因子の製造はかなり困難である。なぜならXa因子は哺乳動物細胞を基礎とする発現系において製造する必要があり、そして製造後の活性化工程(希釈ラッセル蛇毒による活性化)を必要とするからである。そのため、該酵素は大規模製造のための最良の選択肢ではない。なぜなら酵素の費用が目的のタンパク質を含む融合タンパク質の製造の費用を超える可能性があるからである。
【0013】
これらのプロテアーゼの特異性が不足していることとは別に、プロセシングの効率及び得られた成熟タンパク質の収率がかなり低く、しばしば不十分であるので、これらの酵素を用いる製造方法の開発は考慮されていない。
【0014】
ウシのエンテロキナーゼは、より高度の特異性を有する酵素であるが、該酵素が目的のタンパク質を開裂しないか又は目的のタンパク質を期待どおりに分解しない場合が幾つか知られている。更にエンテロキナーゼ又はその触媒ドメインは製造及び精製が困難である。
【非特許文献1】J Biol Chem 273(41): 26566-70. (1998)
【非特許文献2】Cell Death Differ 6(4): 362-9. (1999)
【非特許文献3】Cell Death Differ 6(11): 1028-42. (1999)
【非特許文献4】Trends Biochem Sci 22(8): 299-306. (1997)
【非特許文献5】Biochem J 350 Pt 2: 563-8. (2000)
【非特許文献6】J Biol Chem 272(41): 25719-23. (1997)
【非特許文献7】Cell Death Differ 6(11): 1054-9. (1999)
【非特許文献8】Methods Enzymol 322: 100-10. (2000)
【非特許文献9】Cell Death Differ 6(11): 1117-24. (1999)
【特許文献1】米国特許第6379950号
【特許文献2】国際公開第9213955号
【特許文献3】国際公開第9319091号
【特許文献4】国際公開第8809372号
【特許文献5】米国特許第5665566号
【特許文献6】米国特許第5532142号
【発明の開示】
【0015】
(発明の概要)
本発明では、N-末端にて選択された任意のアミノ酸から始まる成熟タンパク質、タンパク質ドメイン又はペプチドを得る工程が使用される。すなわち構築したリンカー配列との連結を介してN-末端融合相手に融合した融合タンパク質としてそれを製造し、次いで、システインプロテアーゼのカスパーゼファミリーに属するプロテアーゼと共にインキュベートしてそれを特異的に遊離させることによる。また本発明は、融合相手を成熟タンパク質に連結するのに使用するペプチドリンカーの設計に関し、このリンカーは前記カスパーゼによって特異的に消化される。更に本発明は、融合部及び目的の成熟タンパク質又はペプチドを有し、カスパーゼプロテアーゼによってプロセシングされるように設計されたリンカー配列を有する融合タンパク質の発現及び精製に関する。本発明を用いることで、組み換えタンパク質を機能型及び/又は成熟型で製造することが容易となり、かつ回収工程が容易になる。
【0016】
本発明では、融合タンパク質を連結するリンカー中に構築したカスパーゼ認識部位および目的のタンパク質を含有する組み換え融合タンパク質に対する成熟化作用プロテアーゼとしてカスパーゼを使用することが記載される。本発明は、カスパーゼを用いて、成熟タンパク質の最初のアミノ酸の選択の制限なく融合部とリンカー配列を目的のタンパク質から分離する方法であって、ヒト及び動物の治療薬を製造するのに適当な方法を記載している。またカスパーゼ酵素は大腸菌発現系において効率的かつ廉価に製造でき、そして引き続き微量の宿主プロテアーゼを残すことなく精製できる。これらの特性により本発明は、ペプチド、タンパク質又はタンパク質の一部を大規模に製造する方法の開発に適している。本発明により、融合部とリンカー配列とを高い特異性で開裂し、数種の特異性を、使用されるカスパーゼに応じてリンカー中に構築する方法が提供される。驚くべきことに、タンパク質配列に基づくと開裂の疑わしい部位を有するタンパク質であっても、構築した部位でのみ切断され、隠れた内在部位では切断されないことが判明した。更に開裂時間は数分から1時間といった短さが可能である。該酵素はプロセシング反応から特異的に除去でき、そして幾つかのプロテアーゼ阻害剤も当業者に公知であるので、プロセシング反応の終結を制御することができる。
【0017】
一実施態様では、本発明は、目的のポリペプチドを生物学的活性型で製造するための方法であって:
− 適当な宿主、好ましくは原核生物、より好ましくは大腸菌において、アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー配列及び目的のポリペプチドを含む融合タンパク質を産生すること、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質を開裂すること、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離すること
を含む方法に関する。
【0018】
更なる実施態様では、本発明は、前記の方法であって、そのカスパーゼ認識部位がアミノ酸配列DXXD(配列番号63)、好ましくはDEVD(配列番号13)又はDEHD(配列番号14)を含むことを特徴とする方法に関する。
【0019】
更に本発明は、前記のいずれかの方法であって、そのカスパーゼがカスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、CED-3、リバースドカスパーゼ(reversed caspase)-3及びリバースドカスパーゼ-7からなる群から選択されることを特徴とする方法に関する。
【0020】
更なる実施態様によれば、本発明は、前記のいずれかの方法であって、融合タンパク質中のリンカー配列が少なくとも4個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個、30個又は40個のアミノ酸を有し、好ましくはそのリンカー配列が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示されることを特徴とする方法に関する。
【0021】
本発明の方法の好ましい実施態様によれば、融合タンパク質のリンカー配列はアミノ酸配列DEVD又はDEHDからなる。
【0022】
更に本発明は、前記の方法であって、前記リンカー配列が少なくとも2個、3個、4個又は5個の親水性アミノ酸、又は少なくとも2個、3個、4個又は5個の荷電アミノ酸、又は少なくとも2個、3個、4個又は5個の小さいアミノ酸を有することを特徴とする方法に関する。
【0023】
更なる実施態様によれば、本発明は、前記の方法であって、カスパーゼによる融合タンパク質の開裂をインビトロで実施し;好ましくは、濃度測定スキャンニング(densitiometric scanning)によって測定又は判断して、目的の成熟ポリペプチドの少なくとも80%の収率が60分間以内に得られることを特徴とする方法に関する。
【0024】
もう一つの実施態様では、本発明は、前記のいずれかの方法による方法であって、更にカスパーゼタンパク質を融合タンパク質と同じ宿主において産生させ、好ましくはカスパーゼタンパク質配列が融合タンパク質の配列中に含まれている、すなわちその一部であることを特徴とする方法に関する。
【0025】
一実施態様では、本発明の方法において、カスパーゼタンパク質の製造(及び/又は製造の誘導)及び融合タンパク質の製造(及び/又は製造の誘導)が連続的であり、好ましくは融合タンパク質の製造(及び/又は製造の誘導)後に、カスパーゼタンパク質が製造される(及び/又はカスパーゼタンパク質の製造が誘導される)。
【0026】
更に本発明は前記のいずれかの方法であって、融合タンパク質の開裂をインビボで実施することを特徴とする方法に関する。
【0027】
もう一つの実施態様では、本発明は、目的のポリペプチドを生物学的に活性な(及び/又は成熟)型で製造するための方法であって、以下の工程:
− 大腸菌において、アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー配列及び目的のポリペプチドを含み、そのリンカー配列が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示される融合タンパク質を製造する工程、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質を開裂する工程、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離する工程
を含む方法に関する。
【0028】
更なる実施態様によれば、本発明は、目的のポリペプチドを生物学的に活性な(及び/又は成熟)型で製造するための方法であって、以下の工程:
− 大腸菌において、(1)アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含み、好ましくは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示されるアミノ酸配列を有するリンカー配列及び目的のポリペプチドを有する融合タンパク質、及び(2)カスパーゼタンパク質、好ましくはカスパーゼ−3又はカスパーゼ−7を産生させる工程、
その際、前記の融合タンパク質及び前記のカスパーゼポリペプチドが異なる誘導性プロモーターの制御下にある、
− 融合タンパク質の発現を誘導する工程、
− カスパーゼタンパク質の発現を誘導する工程、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質をインビボで開裂する工程、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離する工程
を含む方法に関する。
【0029】
更に本発明は、前記のいずれかの方法であって、単独のポリ核酸により融合タンパク質とカスパーゼがコードされるか、又は代替的には、別個のポリ核酸により融合タンパク質とカスパーゼがコードされていることを特徴とする方法に関する。
【0030】
更にもう一つの実施態様によれば、本発明は前記のいずれかの融合タンパク質をコードするポリ核酸に関する。より詳細には、本発明は、アミノ末端ポリペプチド、目的の成熟ポリペプチドを有し、かつそのアミノ末端ポリペプチドと目的の成熟ポリペプチドの間にリンカー配列を有し、そのリンカー配列が、リンカーと目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸との間の連結部にカスパーゼ認識部位を有する融合タンパク質をコードするポリ核酸に関する。
【0031】
更に本発明は、前記のポリ核酸であって、更にカスパーゼタンパク質をコードするポリ核酸に関する。詳細には、前記のカスパーゼタンパク質は、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、CED-3、リバースドカスパーゼ-3及びリバースドカスパーゼ-7からなる群から選択される。
【0032】
本発明の他の実施態様によれば、本発明のポリ核酸によってコードされるアミノ末端ポリペプチドは、好ましくは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子GST、大腸菌のチオレドキシンTRX、NusA、キチン結合ドメインCBD、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼCAT、プロテインA(prot A)、LysRS、マルトース結合タンパク質(MBP)、ユビキチン、カルモジュリン、DsbA、DsbC及びラムダgpVを含む群から選択されるが、これらに限定されない。
【0033】
好ましくは、本発明のポリ核酸のリンカー配列は、少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個、30個又は40個のアミノ酸を有し、好ましくはそのリンカー配列が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示される。
【0034】
もう一つの実施態様によれば、前記のリンカー配列は、アミノ酸配列DXXD、好ましくはDEVD又はDEHDからなるカスパーゼ認識部位を含む4個のアミノ酸からなる。
【0035】
更に本発明は、前記のいずれかのポリ核酸であって、前記の融合タンパク質及び/又は前記のカスパーゼタンパク質の発現が好適なプロモーターの制御下にあり、好ましくはそのプロモーターは誘導性プロモーターであり、かつより一層好ましくは、融合タンパク質とカスパーゼタンパク質が異なる誘導性プロモーターの制御下にあることを特徴とするポリ核酸に関する。
【0036】
更に本発明は、前記のいずれかのポリ核酸であって、前記の融合タンパク質が更に検出タグ又は親和性タグを有し、好ましくはその検出タグ又は親和性タグが、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、ストレプトアビジン結合タグ、ビオチン化タグ及び抗体により認識されるタグからなる群から選択されることを特徴とするポリ核酸に関する。
【0037】
また本発明は、前記のいずれかのポリ核酸を有するベクター及び前記のベクター又は前記のいずれかのポリ核酸を有する宿主細胞に関する。
【0038】
更に本発明は、前記の核酸によってコードされる融合タンパク質及び前記の融合タンパク質に特異的に結合する抗体に関する。
【0039】
更に本発明は、目的のポリペプチドを成熟型及び/又は生物学的活性型で製造するための、前記のいずれかのポリ核酸、ベクター、宿主細胞又は融合タンパク質の使用に関する。
【0040】
更に本発明は、生物学的に活性な目的のタンパク質、すなわち目的の機能的タンパク質及び/又は成熟タンパク質の製造に好適なバイオリアクターであって、
(a)本明細書に記載のいずれかのポリ核酸によってコードされ、支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグを有する融合タンパク質、及び
(b)支持体、
を含み、支持体が融合タンパク質の親和性タグ部が結合している、バイオリアクターに関する。好ましくは支持体は親和性カラム中に含まれている。
【0041】
もう一つの実施態様によれば、本発明は、生物学的に活性な目的のタンパク質、すなわち目的の機能的タンパク質及び/又は成熟タンパク質の製造に好適なバイオリアクターであって:
(a)本明細書に記載のいずれかのポリ核酸によってコードされ、支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグを有する融合タンパク質、及び
(b)固体担体上に結合されたカスパーゼ酵素
を含み、カスパーゼ酵素が融合タンパク質中のカスパーゼ認識部位を特異的に開裂する、バイオリアクターに関する。
【0042】
また本発明は、目的のタンパク質を製造する方法であって:
(a)支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグ又はアミノ末端ポリペプチドを含む前記の融合タンパク質を製造する、
(b)固体担体に結合されたカスパーゼ酵素を含むバイオリアクター中に前記融合タンパク質を導入する、
(c)前記融合タンパク質とカスパーゼ酵素とを少なくとも1時間インキュベートする、及び
(d)該リアクターを洗浄し、そして溶出された融合タンパク質を支持体への結合によって捕捉する
ことを含む方法に関する。好ましくは支持体は親和性カラム中に含まれる。
【0043】
(発明の詳細な説明)
驚くべきことに、特異的プロテアーゼとしてカスパーゼを使用することによって、特別に設計された融合タンパク質を基質として用いた場合に、高度に特異的かつ高効率のプロセシングを達成できることが判明した。
【0044】
カスパーゼは、アスパルチル残基の後方を特異的に開裂するステインプロテアーゼである。これまで、カスパーゼ遺伝子ファミリーには、少なくとも14種の哺乳動物メンバーがあり、そのうち少なくとも11種のヒト酵素が知られている。系統分析に従って初めて分類が可能となり、それによれば前記ファミリーは2つのクラスに分かれる:カスパーゼ-1(ICE)関連酵素及びカスパーゼ-3(CED-3)関連酵素である。短いプロドメイン(カスパーゼ-3、カスパーゼ-6及びカスパーゼ-7)又は長いプロドメイン(カスパーゼ-1、カスパーゼ-2、カスパーゼ-4、カスパーゼ-5及びカスパーゼ-8からカスパーゼ-14)に基づいて更に分けることも可能である。あるいは、該プロテアーゼはその基質特異性に基づいて細分できる。これによれば、カスパーゼは3種の異なる群に分けられる。I群のカスパーゼ(カスパーゼ-1、カスパーゼ-4、カスパーゼ-5、カスパーゼ-13)のP4位は自由に置換するが、嵩高い疎水性アミノ酸、例えばTyr又はTrpを優先する。II群のカスパーゼ(カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7)のS4は非常に厳密であり、P4はAspである必要がある。この群のための好ましい開裂モチーフはDEXDであるが、式DXXDの多くの基質が確認されている。カスパーゼ-2の位置P5は更に厳密である。表1は、天然の基質タンパク質の例を列記するが、これらに限定されない。天然の基質のP1'位置では小さい親水性アミノ酸に高い優先性があり、そしてコンセンサス配列には標的配列の大きな基は適さないことが分かる。また標的は全て同じ効率で開裂されるわけではないことも覚えておくべきである。III群のカスパーゼ(カスパーゼ-6、カスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10)のP4では分枝鎖状の脂肪族アミノ酸が優先される。
【0045】
発現の程度を高め、可溶性を改善し、そしてタンパク質精製を容易にするための融合タンパク質の手法は1983年以来及びそれ以前から存在している。これらのどの手法も大規模製造法には使用されていない。大規模プロセス開発に融合タンパク質戦略を適合させるのに障害となるものは、使用されるプロテアーゼ酵素の特異性、活性、利用可能性及び純度であることは明らかである。特異性は、多数のタンパク質が少なくとも連結リンカー配列中の構築された開裂部位でのみ開裂できる程度に十分に高い必要がある。酵素の活性は、短時間で十分な開裂が可能な程度に高い必要がある。そうすれば、製造中の時間浪費が回避され、そしてインキュベーション中の目的のタンパク質の分解が最小限になる。プロテアーゼは低コストで入手できる必要があるので、効率的な発現系及び低コストの製造方法が必要である。従って親和性タグを有する構築されたプロテアーゼが良い解決策であると思われる。またプロテアーゼは、十分に純粋であることが望ましく、特に微量の非特異的プロテアーゼの混在も宿主生物からなくすことが望ましい。全ての可能な目的のタンパク質について前記の必要条件を満たすプロテアーゼはないので、工業化にはこの工程で使用するために多数のプロテアーゼを開発する必要がある。これらのプロテアーゼは個別の特異性を有するのが好ましい。ケース毎のスクリーニングにより、目的のポリペプチドのそれぞれについて最適なプロセシング戦略を決めることができる。
【0046】
本発明は、融合部としてのタンパク質又はペプチドを含む第一の部分、酵素による切断を最大化するように人工的に設計されたリンカーを含む第二の部分及び成熟型又は機能型で単離されるべき目的のタンパク質又はペプチドを含む第三の部分を有する人工的な融合タンパク質を切断するカスパーゼ活性の使用に関する。
【0047】
カスパーゼタンパク質自体は、例えばカスパーゼ酵素の発現の程度又は可溶性を最適化する、又はカスパーゼ酵素の容易な回収を最適化する、又はカスパーゼ酵素を効率的に固体担体に結合できるように意図した融合タンパク質の一部であることができる。
【0048】
詳述したプロセシングにおける第一工程は、カスパーゼの選択であり、それに引き続き、選択されたカスパーゼにより切断されるリンカー配列を設計、選考又は選択することからなる。
【0049】
カスパーゼのクローニング
カスパーゼ遺伝子の遺伝子配列は、米国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で見出すことができる。カスパーゼは、コーディング配列の始まりと終わりにハイブリダイズする適当なプライマーを用いてcDNAからクローニングすることができる。PCR反応を用いて、増幅されたDNAを得ることができ、そして適切なプラスミド中にクローニングすることができる。あるいは、cDNAライブラリーをクローニングし、そして播種することで単コロニーを得る。次いで、コロニーの溶解物をカスパーゼ遺伝子と特異的にハイブリダイズする標識されたオリゴヌクレオチドを用いてプローブ化することができる。これらの技術は当業者に公知である。
【0050】
融合タンパク質におけるカスパーゼ消化性リンカーの設計
好ましくはリンカー配列は、カスパーゼの天然に存在する基質の標的配列を含む。最も好ましくは、該リンカーは、使用されるカスパーゼについて公知の又は単離された最も効率的に切断される標的配列を含む。この配列は天然に存在する標的配列ではないが、コンセンサス配列から誘導されるか、又はスクリーニング法によって単離されるか、又は生物学的な濃縮方法から選択されるか、又は生物学的選別法によって得られる。
【0051】
表Iは、天然の標的配列を比較するか、又は無作為なライブラリーのスクリーニングによって単離される配列を合成することによって得られる標的配列の例を示している。また最適化された配列は、ペプチド基質に対するカスパーゼの特異的な酵素活性を比較することによっても得ることができる。
【0052】
幾つかの好ましい標的配列は以下である:
【表2】

好ましくは、リンカー配列は更に、融合相手F及びリンカー中のカスパーゼ切断部位との間のスペースを拡大するスペーサー領域を含む。最も好ましくは、該リンカーは、カスパーゼ酵素がカスパーゼ標的配列に容易に接近できるように設計又は最適化される。
【0053】
該リンカー配列を更に最適化して、融合産物の可溶性を高めることができる。このことは、該配列において親水性アミノ酸又は荷電アミノ酸を増やすことによって行うことができるが、これは例示であって限定されない。この技術分野の現状としては、実験の設計により、多くの変異体のスクリーニング又は選択により可溶性を改善するリンカー配列を選択することができる。これらの変異体は、計算した選択から得られるか又は配列の無作為ライブラリーから得られる一定数の選択肢であってよい。
【0054】
また該リンカー配列を更に最適化して、リガンド又は抗体により認識される配列を持たせることで、親和性を基礎とする分離工程で親和性標的として用いるか、又は該配列を編入したタンパク質の簡単かつ高感度の検出のために使用することもできる。
【0055】
また、該リンカーは、高濃度の一定種のアミノ酸を持たせて、非特異的クロマトグラフィーカラムへの吸着、例えばイオン交換、疎水性相互作用、リガンド結合を改善することもできる。
【0056】
融合タンパク質の構築
融合構築物は、一般式
F-L-G
[式中、Fは選択された融合相手であり、Lは選択されたリンカー配列であり、かつGは目的のポリペプチドをコードする目的の遺伝子である]の組合せを含む。
【0057】
選択された融合相手は、遺伝子Gを融合相手Fに融合すると全融合遺伝子の発現レベル及び/又は可溶性が向上するという以前の経験に基づいて、パブリックドメインの情報から選択できる。これらの目的のために記載されている融合相手の例は:
グルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子GST、大腸菌チオレドキシンTRX、NusA、キチン結合ドメインCBD、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Chloramphenical acetyl transferase)CAT、プロテインA(protA)、LysRS、マルトース結合タンパク質(MBP)、ユビキチン、カルモジュリンである。
【0058】
他の融合相手は、より高い発現を得る及び/又は融合構築物の可溶性を改善する融合相手として効果的なタンパク質を予測する法則に基づいて選択できる。米国特許620,7420号は、融合相手として同定されたタンパク質の親水性指数に基づく方法を記載している。
【0059】
また融合相手は、融合タンパク質中に検出タグ又は親和性精製タグを含めて選択することもできる。融合タンパク質の親和性精製を可能にするタグに特に関心が持たれている。これらのタグは化学原理に基づくものであってよく、又は特異抗体についてのエピトープとして選択されている。
【0060】
非常に選択的な精製工程で使用される強力に選択的な化学的相互作用に基づく精製タグの例は、固定化金属親和性クロマトグラフィーで使用できるポリヒスチジンタグ(H)、又は高塩イオン交換クロマトグラフィー中で保持できるポリアルギニンである。
【0061】
融合相手は、融合タンパク質の組合せ、タグの組合せ又はタグと融合相手との組合せから選択できる。例えば、FはN-末端でHISタグHに融合されたGST融合タンパク質F'からなってよく、その際、
F-L-G=H-F'-L-G
であるか、又は融合相手を組み合わせた場合には、
F1-F2-L-G
である。
【0062】
かかる構築物では、親和性ペプチド又は検出ペプチド(タグt)は融合タンパク質又は融合タンパク質ドメインFiの中又はその間に存在してよい:
(t)-F1-(t)-F2-(t)-L-G
F-L-G構造を含む融合タンパク質のN-末端はシグナル配列により修飾されていてよい。シグナル配列は、融合タンパク質を分泌可能にする所定の機能的単位である。真核細胞では、これにより、融合タンパク質は小胞体に輸送され、そしておそらく細胞外媒体に輸送される。グラム陽性細胞では、該シグナルペプチドは細胞質膜を通して融合タンパク質をその媒体中へと導く。グラム陰性細胞では、シグナル配列は、細胞膜と外膜との間の周辺細胞質空間に融合タンパク質を導き、そして場合により該融合タンパク質は培養培地にも遊離される。
【0063】
融合タンパク質が分泌される例では、遺伝子構築物の式は
S-F-L-G
式中、Sはシグナルペプチドであり、かつFは融合相手であり、それらはまた配列tn-Fi[式中、n及びiは本明細書により決められる]の組合せからなってよい。
【0064】
他の融合相手又は融合タグは、リンカーと目的のタンパク質との間か、又は目的のタンパク質のC-末端のいずれかに挿入できる。しかしながら、これらの配列は、リンカー配列Lをカスパーゼ酵素によりプロセシングした後に目的のタンパク質から除去されない。
【0065】
F-L-G部を含む融合タンパク質は、組み換えDNA技術によって作成される。完全な融合遺伝子のコーディング配列は、好ましくはクローニング前に決定することが望ましい。融合遺伝子中の種々の部分のコーディング配列は、DNA分子中の特異的部位で切断する制限酵素を用いて組み立てることができる。適合部位を更に再連結して、融合遺伝子を構築することが可能である。あるいは、融合遺伝子の部分又は完全な融合遺伝子は合成DNA片を組み立てることによって構築することもできる。もう一つの可能性としては、組み合わせる領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって増幅させ、そこで、増幅されたDNA片を、適切な制限酵素を含め及び/又はDNA片における十分な重複を含め、そしてスプライスオーバーラップ伸長(spliceoverlap extension)PCR反応を実施することによって組み立てることができる。これらの技術の全ては当業者に公知であり、そして組み換えDNA技術を扱う近年の研究所マニュアルに見出すことができる。またこれらの技術の他の変法及び組合せにより、融合タンパク質を得ることができる。
【0066】
融合タンパク質の製造
融合遺伝子は、それが宿主生物によってタンパク質に翻訳されるように構築する必要がある。宿主生物としては、全ての生細胞又は生物が該当する。生細胞又は生物は、原核性又は真核性の性質を有していてもよい。組み換え遺伝子の発現のための宿主として用いられる通常の細胞は:
大腸菌、バシラス種、ストレプトマイセス種、酵母株、例えばサッカロマイセス、シゾサッカロマイセス、ピキア又はハンセヌラ株、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞である。また発現宿主は、多細胞生物のレベル、例えば遺伝子導入植物、ヒツジ、ヤギ、ウシ、トリ及びウサギであってよく、その際、器官から又は体液、例えば乳汁、血液又は卵から産物を単離することができる。
【0067】
あるいは、該遺伝子は、無細胞翻訳系を用いて、可能であればインビトロ転写系と組み合わせてタンパク質に翻訳することができる。これらの系は、DNAからタンパク質を得るのに必要な全ての工程を、インビトロ反応で必要な酵素と基質を供給することによって提供する。原則的に、任意の生細胞又は生物は、前記方法に必要な酵素を提供でき、かつかかる酵素系を得るための抽出操作はこの分野で知られている。インビトロの転写/翻訳のために使用される通常の系は網状赤血球(reticolocytes)、小麦胚芽又は大腸菌からの抽出物又は溶解物である。
【0068】
カスパーゼによって成熟化可能な組み換え融合タンパク質の単離
好ましい実施態様では、融合ポリペプチドはカスパーゼプロテアーゼでのプロセシング前に単離及び精製される。この戦略では、融合部の生理化学的特徴を融合タンパク質の均質な、能率化された、かつ高特異的な精製のために使用できる。吸着クロマトグラフィー媒体に対する融合部の特性又は特異的な親和性精製法を考慮することが望ましい。限定されないが、例としては、イオン交換カラム(例えばポリアルギニン)、疎水性相互作用カラム(例えばポリフェニルアラニン)、又は固定化金属キレートクロマトグラフィー(例えばポリヒスチジン)への結合を増大させるペプチドタグを含むことができる。他の例は、限定はされないが、支持体又はリガンドについて親和性を有する融合タンパク質又はドメイン(例えばマルトース結合タンパク質MBP、グルタチオンS-トランスフェラーゼGST、プロテインA、ビオチン化ペプチド又はドメイン、キチン結合ドメインCBD)である。限定はされないが、更なる例は、高温で可溶性に保たれる(例えばチオレドキシン)か、又は一定の条件で可逆的に沈殿する融合相手の使用である。完全な融合タンパク質には、たいてい、融合相手の特性に基づく精製方式が適用できる。融合部が種々のペプチド、ドメイン又はタンパク質からなるか、又は融合部が種々のクロマトグラフィー媒体上で種々の選択的挙動を示す場合には、かかる特異的な精製法の組合せを使用できる。
【0069】
インビトロ開裂反応
カスパーゼによる組み換え融合タンパク質のインビトロ開裂は、好ましくは特定の条件下に実施されることが望ましい。本発明はこれらの反応条件に限定されるものでは決してない。反応のpHは好ましくは6〜9、より好ましくは7〜8に制御される。該反応に塩を添加する必要はないが、開裂反応は1MのNaClまで許容できる。好ましくはNaCl濃度は0.2Mより高くない。幾つかの添加剤はカスパーゼの切断反応を促進できる。かかる添加剤はCHAPS0.1%、スクロース10%又はマンニトール10%である。カスパーゼ酵素は、活性中心におけるシステイン残基の酸化を受けやすい。これを避けるために、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、還元剤(例えばβ-メルカプトエタノール、DTT、システイン)及び酸化を触媒するイオン、例えばZn++を捕捉するキレート化塩(例えばEDTA)が含まれる。
【0070】
カラム上での開裂
融合タンパク質の成熟化、引き続いての酵素の除去及び融合タンパク質から切除された融合部の除去において必要とされる工程数を減らすことができる。親和性タグを融合部に導入するのであれば、同じ親和性タグを、例えば組み換えDNA技術によってカスパーゼに融合することができる。この手法を用いて、融合タンパク質を固体担体(クロマトグラフィーカラムであってよい)上で捕捉でき、そして次いで同じ固体担体について親和性を示すカスパーゼと一緒にインキュベートしてよい。好適なインキュベート時間後に、反応容器の液相は目的のタンパク質を含有するが、一方で融合部と酵素の両方は固相上に吸着される。カスパーゼを酸化条件に曝すことを少なくすることに注意すべきであるが、それというのも、その際活性部位のシステインが酸化され、そして反応が完全な能力を発揮しないからである。還元剤(可能であれば)、酸化防止剤及び酸化触媒を捕捉するキレート化塩が反応中に含まれていてよい。かかる条件の例は、1〜10mMのDTT又はβ-メルカプトエタノール、又は1%のアスコルビン酸又は1mMのEDTAである。
【0071】
インビボ開裂
融合ペプチドの開裂はインビボで誘導することもできる。細胞中又はバイオリアクターの媒体中での開裂は、ポストプロセシングが必要ないという利点を有する。しかしながら、融合部の特性に基づいた特異的な親和性精製の利点はこの場合には失われる。
【0072】
2種の選択的な手法を適用できる。第一に、カスパーゼを融合タンパク質と同時に誘導してよい。これは、カスパーゼ酵素と融合タンパク質の転写オペロンを構築するか、又は融合タンパク質中にカスパーゼを含む翻訳融合物を構築するか、又は融合タンパク質の前方のプロモーターと同時に誘導される別個のプロモーターの後方にカスパーゼをクローニングすることによって実現することができる。後者は、2種の転写カセット中で同じプロモーターを用いるか、又は同じインデューサー(例えばIPTG/ラクトース)で誘導される2種のプロモーターを用いるか、又は同時に添加される異なる剤で誘導される2種のプロモーターを用いることによって実現できる。代替的に、カスパーゼ酵素は、融合タンパク質の製造の開始とは異なる時点で誘導できる。カスパーゼは、融合タンパク質の製造開始前又は、より好ましくはその後に製造できる。後者の場合には、目的のタンパク質はおそらく可溶性の活性タンパク質に折り畳まれる。
【0073】
本発明の第一の態様は、目的のポリペプチドを成熟型で製造する方法であって、
− 適当な宿主中で、アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー及び目的のポリペプチドを有する融合タンパク質を産生させること、
− 前記融合タンパク質をカスパーゼによって開裂すること、
− 目的の成熟ポリペプチドを単離すること
を含む方法である。
【0074】
もう一つの態様では、本発明は、予め規定したアミノ末端アミノ酸残基を有するタンパク質又はポリペプチドを製造する方法であって、
a)タンパク質又はポリペプチドを宿主細胞中で融合タンパク質として発現させること、
その際、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端はリンカーにより1種以上の融合相手に融合され、その融合タンパク質はカスパーゼによって、リンカーとタンパク質又はポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂可能であり、該宿主細胞はリンカーとタンパク質又はポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で融合タンパク質を開裂するカスパーゼを欠いている;b)融合タンパク質を宿主細胞から単離すること、及び;c)該融合タンパク質と、その融合タンパク質をリンカーとタンパク質又はポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼを含有する抽出物とを接触させること、その際、該抽出物は前記のカスパーゼを産生する細胞から組み換えDNA法によって誘導される、を含む方法に関する。
【0075】
好適な宿主は任意の宿主であってよく、そして真核性と原核性の宿主細胞の両方を含む。限定はされないが、例としては、宿主は、哺乳動物細胞及び昆虫細胞、植物細胞又は完全植物、酵母細胞、菌類細胞、グラム陽性細菌、例えばバシラス種若しくは乳酸菌、又はグラム陰性細菌、例えば大腸菌である。好ましくは前記宿主は、原核細胞であり、より好ましくは前記宿主はグラム陰性細菌であり、最も好ましくは該宿主は大腸菌である。
【0076】
好ましくは、前記のカスパーゼ認識部位はアミノ酸配列DXXDを含む。より好ましくは、前記のカスパーゼ認識部位はアミノ酸配列DEVD又はDEHDのいずれかを含む。
【0077】
好ましくは、前記のリンカー配列は最適なカスパーゼプロセシングのために最適化されている。リンカー配列の最適化法は当業者に公知であり、そして、限定はされないが、例としては、カスパーゼ認識部位のアミノ末端部でのスペーサー領域の挿入が含まれる。スペーサー領域は、好ましくは、少なくとも1個、より好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の付加的なアミノ酸を含み、より好ましくは前記のスペーサー領域は少なくとも15個、20個又は25個の付加的なアミノ酸を含む。
【0078】
使用されるカスパーゼは任意のカスパーゼであってよい。しかしながら好ましくは前記のカスパーゼは、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、CED-3、リバースドカスパーゼ-3及びリバースドカスパーゼ-7からなる群から選択される。より好ましくは、前記のカスパーゼはカスパーゼ-3又はカスパーゼ-7である。更により好ましくは、前記のカスパーゼはカスパーゼ-3である。
【0079】
好ましい実施態様では、カスパーゼによる開裂はインビトロで、融合タンパク質を宿主細胞から単離した後に、融合タンパク質とカスパーゼ、好ましくは精製カスパーゼとを適切な反応混合物中で混合することによって実施される。しかしながらカスパーゼ開裂はインビボでも、融合タンパク質が製造されるのと同じ宿主細胞においてカスパーゼ活性を誘導することによって実施することもできる。カスパーゼ活性の誘導は融合タンパク質の製造と同時に生じてもよく、又はカスパーゼと融合タンパク質の製造が連続的であってもよい。
【0080】
カスパーゼのプロセシングは、その高い効率のため、他のプロテアーゼを用いてプロセシングが困難なアミノ末端アミノ酸を含む成熟タンパク質についても関心が持たれている。通常のアミノ末端アミノ酸(すなわちP、D又はEではない)については、好ましくは目的のポリペプチドの少なくとも80%、好ましくは90%の収率が開裂反応の開始後60分以内に得られる。融合タンパク質の開裂は、肉眼によって、すなわちSDS-Pageゲル上で判断又は試験できるか、又は濃度測定スキャンニングによって測定できる。
【0081】
アミノ末端アミノ酸としてプロリンを有する成熟ポリペプチドがプロセシングされた場合には、好ましくは成熟ポリペプチドの少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%の収率が得られる。アミノ末端アミノ酸としてグルタミン又はアスパラギンのいずれかを有する成熟ポリペプチドがプロセシングされた場合には、好ましくは成熟ポリペプチドの少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%の収率が得られる。好ましくは前記の収率は、開裂反応の開始後60分以内に得られる。
【0082】
定義
以下の定義を示し、本明細書で本発明を説明するために使用される種々の用語の意味及び範囲を明確にする。
【0083】
表示“DEVD/S”(配列番号17)は、DEVD認識配列にセリン(S)が続き、そしてセリンはプロセシング後に成熟タンパク質の第一のアミノ酸として遊離されることを意味する。
【0084】
表示“DEVD/”は、ポリペプチドが最後のDの後で切断され、これは切断部位に続く第一のアミノ酸に関係ないことを意味する。
【0085】
本明細書で使用される用語“タンパク質”及び“ポリペプチド”は互換可能である。“ポリペプチド”とは、アミノ酸のポリマーを指し、分子の特定の長さは示さない。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、リン酸化及びアセチル化されたものをも含む。
【0086】
用語“目的のポリペプチド”とは、プロセシングによって製造されることが望ましく、そして更なる用途に使用されるポリペプチドを意味する。好ましくは、生物学的に活性な分子、例えばサイトカインの酵素である。
【0087】
目的の“成熟型”又は“成熟ポリペプチド”とは、プレペプチド又はリーダー配列を含まない、生物学的活性型での目的のポリペプチドを指す。生物学的活性型として生ずる目的のポリペプチドのアミノ末端アミノ酸からタンパク質が出発することを強調したいのであれば、成熟型及び成熟ポリペプチドが用いられる。好ましくは、前記の生物学的活性型は、天然に存在する場合には目的のポリペプチドの成熟型と同一である。
【0088】
開裂反応の“収率”は、全ての融合タンパク質が開裂すると想定して得ることができる目的のタンパク質の理論量に対する、開裂反応によって得られた目的のタンパク質の比として定義され、これは、百分率で表される。
【0089】
(図面の簡単な説明)
図1:特異性に対するカスパーゼの分類。該図面は酵素の活性部位における標的配列を示している。酵素受容ポケットをS1〜S4で示す一方で、標的配列のアミノ酸位置をP1〜P4で示す。II群のカスパーゼは位置P4のアスパルチルを選択し、I群のカスパーゼはこの位置で疎水性残基を選択し、かつIII群のカスパーゼはP4位置で脂肪族基を選択する。
図2:融合タンパク質の設計
種々のリンカー配列(1〜5は配列番号1〜10に相当する:偶数はアミノ酸配列、奇数は核酸配列)を融合相手と目的のタンパク質との間に構築した。全ての構築物は、等しく可溶性タンパク質として発現された。F:融合相手、L:リンカー、P:目的のポリペプチド。
図3a及びb):エンテロキナーゼは、構築されたリンカーをプロセシングしそこなうか、又は目的の標的タンパク質を分解することがある。カスパーゼ-3及びリバースドカスパーゼ-7の両方は、非常に短時間で高い効率をもって融合タンパク質をプロセシングする。EK:エンテロキナーゼ認識部位;H:ヒスチジンタグ;GST:グルタチオンS-トランスフェラーゼ;TRX:チオレドキシン;F、L及びPは図2と同様。
図4:GST-mLIF融合タンパク質のトロンビンによる切断は長いプロセシング時間を必要とする。この切断は、より効率的にかつ非常に短時間でカスパーゼ-3を用いて行うことができる。プロセシング反応で同じ程度に実施される2つの切断部位を比較した(DEVD/及びDEVD/S)。略語は図3と同様。
図5:この図面は、トロンビンについての16時間のインキュベーションとカスパーゼ-3についての45分間のインキュベーションの間の酵素の力価測定を示している。10マイクログラムのGST-mLIF融合タンパク質の>90%をプロセシングするには50ngの量で十分である。
図6A:切断効率に対するP1'部位(切断部位の後方、すなわち下流の第一のアミノ酸)の影響。P1'部位を全ての20個の可能なアミノ酸に変更し、そしてプロセシングの阻害について検定した。
図6B及び6C:切断の効率に対するリンカー配列の影響。1つだけの認識部位からなるリンカー配列は、融合タンパク質の切断においてほとんど有効でない。図6Cでは、100ngだけで融合タンパク質の効果的な開裂がもたらされる対照(右の構築物)に対して、少なくとも2μgのカスパーゼ-3(左の構築物)が必要となることが示されている。
図7:mLIFとhIFNαの両方を、カスパーゼ-3又はリバースドカスパーゼ-7のいずれかを用いて、認識部位DEVD/又はDEVD/Sのいずれかで効率的に切断した。
図8:mLIF、hIFNα、GST及びTRXのアミノ酸配列のスクリーニング。カスパーゼII群認識部位のコンセンサス配列(DXXD)を四角で囲っている。
図9:カスパーゼ酵素の発現及び精製。大腸菌中で産生され、かつ前記のように精製されたカスパーゼ-3の銀染色。
図10:カスパーゼと融合タンパク質との同時発現によりインビボでの開裂が可能となる。A)カスパーゼ-3を同時に又は別個に誘導するためのプラスミド地図。B)カスパーゼ-3と開裂可能な融合タンパク質とを同時発現する微生物のタンパク質ゲル分析。
【実施例】
【0090】
実施例1 カスパーゼ成熟化のための開裂可能なリンカー配列の設計
本発明の方法を使用するには、まず融合タンパク質構築物のための発現ベクターであって、該融合構築物がリンカー配列によって成熟タンパク質から分離される発現ベクターを設計する必要がある。リンカー配列は、カスパーゼタンパク質のための好ましい認識配列を有さねばならない。かかる認識配列の例を表1に示す。図2はカスパーゼ-3による開裂のために使用されたリンカーの幾つかの例を示している。
【0091】
実施例2 カスパーゼ-3による開裂は、効率又は特異性を欠いた工業的に標準的なプロテアーゼによる開裂より優れている
いかなるアミノ酸も、すなわち開裂部位の設計からの残留なしに成熟タンパク質を得るために融合タンパク質をプロセシングする工業的に標準な酵素は必ずしも効率的ではなく、そして効率的な製造方法の設計において障害となる恐れがある。図3a)は、チオレドキシン−マウスインターロイキン15の融合遺伝子であって、エンテロキナーゼに対する認識部位で相互に分離される遺伝子(TRX-EK-mIL15)の開裂実験を示している。エンテロキナーゼによる開裂には、該分子のプロセシングのために長いインキュベート時間を必要とした。最終的に、その分子はプロセシングされ、このことはチオレドキシン(TRX)の遊離によって明らかであったが、マウスのインターロイキン15タンパク質(mIL15)も酵素又は酵素調製物によって分解される。他の実施例としては、図3b)において、TRXとヒトのインターフェロンα(hIFNα)との融合タンパク質であって、エンテロキナーゼ(DDDK)に対する認識部位をコードするリンカー配列を有する融合タンパク質TRX-EK-hIFNαを、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)とhIFNαとの融合構築物であって、リンカー配列中にカスパーゼ-3認識部位(DEVD)を有する融合構築物GST-C-hIFNαと比較した。該融合タンパク質を製造し、精製し、そしてそれぞれエンテロキナーゼ及びカスパーゼ-3でプロセシングした。エンテロキナーゼと一緒に16時間インキュベートしても、融合タンパク質の少量のプロセシングが生じたに過ぎなかった。他方でカスパーゼ-3では、たった45分間のインキュベート後でさえも高収率のプロセシングが得られた。プロテアーゼによって融合タンパク質を切り取り、未変性の成熟タンパク質配列を得るためのもう一つの工業的標準物はトロンビンである。図4は、マウスLIFをGST融合相手及びヘキサヒスチジン融合相手(H)に融合し、連結リンカー中にトロンビンプロテアーゼ認識配列を含む(H-GST-T-mLIF)又はカスパーゼ-3認識配列を含む(H-GST-C-mLIF)例を示している。カスパーゼ-3に対する2つの異なる部位を導入した。天然のカスパーゼ-3部位の分析からP1'位には小さいアミノ酸が好ましいことが明らかであると結論づけられるので、DEVD/認識配列を含み、その配列に成熟mLIF配列が続き、かつ該配列はプロセシング後に遊離されるリンカー配列を、DEVD/Sを含み、そのDEVD認識配列にセリン-mLIFが続き、かつ該配列はプロセシング後に遊離されるリンカー配列と比較した。カスパーゼ-3によるプロセシングは、トロンビンによるのと比較して効率的であり、かつ該反応はカスパーゼ-3を用いると45分後に完了するが、トロンビンではH-GST-T-mLIF融合タンパク質をプロセシングするのに16時間までを必要とした。驚くべきことに、H-GST-DEVD/mLIF又はH-GST-DEVD/S-mLIFの融合タンパク質を用いた場合にもプロセシング効率には何ら差異を見出すことはできなかった。
【0092】
かかる構築された融合タンパク質の切断効率を試験するために、融合タンパク質に対する酵素の力価測定を行った。図5は、H-GST-DEVD/mLIF及びH-GST-DEVD/S-mLIFについての力価測定試験の例を示している。これについても、両方の構築物間に差異を見出すことはできず、そして力価測定反応によれば、10ミリグラムのタンパク質をプロセシングするのに50ngほどの酵素で十分であることが示されている。
【0093】
カスパーゼ−3プロセシングの範囲とP1'配列によって与えられる融合タンパク質のプロセシングにおける制限を試験するために、20種の異なるアミノ酸をmLIF配列の前のP1'位に挿入した。式H-GST-DEVD/X-mLIF[式中、Xは一文字コードで記述された任意の可能な20種のアミノ酸である]を大腸菌中で発現させ、精製し、そしてカスパーゼ-3による開裂のための基質として使用した。図6は該切断試験の結果を示している。全く驚くべきことに、P1'位の全てのアミノ酸をカスパーゼ-3によってプロセシングできた。P1'位でのプロリン(P)はそのプロセシングを約75%阻害し、そして酸性アミノ酸のグルタミン(E)及びアスパラギン(D)は該プロセシングを約25%阻害するが、カスパーゼプロセシングを100%阻害するアミノ酸は存在しなかった。
【0094】
次いで、リンカー配列を短縮及び変更することによる先行するアミノ酸の影響を評価した。DEVD部位の前方にある種々の長さ及び配列のリンカー配列は開裂反応に影響を及ぼさなかった(図2)。しかしながら先行するリンカー配列が存在せず、該融合タンパク質に直接DEVD部位が続いている場合には、切断効率に顕著な低下が指摘された。図6Bは、GST及びmLIFの融合タンパク質であるが、リンカー中にDEVD部位だけを有する配列(L0:DEVD)と、DEVD部位の前方にGPGS配列がある構築物(L1:GPGSDEVD)とを比較したものを示している。L1を有する融合生成物の90%がプロセシングされる(ゲルの濃度測定スキャンニングにより測定した)一方で、L0リンカーを用いた場合にはこれらの条件下に10%だけのプロセシング収率が見られるに過ぎなかった。図6Cは第二の例を示しており、そこでは10マイクログラムのMBP-L0-hIFNαのたった50%だけをプロセシングするのに2マイクログラムのカスパーゼ-3が必要とされる。10マイクログラムの対照構築物については、たった100ngのカスパーゼ-3により効率的な開裂がもたらされる。
【0095】
図7は、カスパーゼ-7又はリバースドカスパーゼ-7を使用することによっても実質的に同じ結果を得ることができることを示している。この場合には、マウスカスパーゼ-7はマウスカスパーゼ-3ほどの活性はなく、同じ開裂効率を得るためには更なる酵素を添加する必要があった。
【0096】
切断反応の特異性を実施例で使用した標的タンパク質の配列分析によって説明する:mLIFとhIFNαは共に、II群のカスパーゼのためのコンセンサス標的配列(DXXD/)を有する。またこれらの試験で使用される融合相手は、II群のカスパーゼに対するDXXDコンセンサス配列を有する。チオレドキシン(TRX)は1つの部位を有するが、GST融合相手は更に2つの標的配列を有する(図8)。これらのタンパク質を含有する融合タンパク質は更なる分解が予想される。非常に驚くべきことに、これらのどの部位も、カスパーゼ-3又はカスパーゼ-7とのインキュベートを延長しても切断されず、従ってリンカー中に構築された配列に対する反応の特異性が証明された。
【0097】
カスパーゼは融合タンパク質へのプロセシング酵素として使用するのによい選択であることが結論づけられるが、それというのもP1'位では任意のアミノ酸が許容され、それらは切断効率が良く(通常は45分間の反応時間後に完全となる)、その配列特異性は、標的タンパク質がカスパーゼ酵素に対するコンセンサス認識配列を有する場合でさえも、構築された部位でのプロセシングを十分に選択するからである。
【0098】
実施例3 カスパーゼの発現と精製
カスパーゼ酵素前駆体又はプロカスパーゼの一次構造はプロドメインからなり、それに引き続き約20kDaの大きなサブドメイン(p20)と約10kDaのより小さいサブドメイン(p10)を有する。p10とp20の組合せをp30として示す。活性のカスパーゼは、別個のサブユニットとしてプロセシングされるサブユニットの同時発現によって得ることができる。真核性の発現宿主では、このことは、プロモーターに引き続きp10又はp20のコーディング遺伝子の両者を有する2つのプラスミドの同時形質転換によって行うことができる。あるいは、内部リボソーム侵入部位を使用して単一の転写物から両方のサブユニットを発現させることができる。原核生物においては、2つのプロモーター構築物を作成することができ、又は2つの遺伝子を単一のオペロン中に配置することもできる。両方のコーディング配列の正しい開始位置を構築して、当業者に公知のように、選択された宿主細胞中で翻訳開始を最適化することが望ましい。
【0099】
またカスパーゼ酵素はp30又はプロカスパーゼとして発現させることができる。殆どのカスパーゼに関して、過剰発現は自己プロセシングによって自己活性化を誘発し、それによりp30又はプロカスパーゼからp10及びp20をインビボで遊離することとなる。p10及びp20はヘテロダイマーを形成して、二量体化するので、最終的な酵素は(p10-p20)2テトラマーである。
【0100】
カスパーゼ遺伝子の全長cDNAを使用してp30カスパーゼをクローニングした。合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、好適な制限部位をその後のクローニングのために構築した。p30カスパーゼcDNAをVan de Craenら、1999年、Cell Death and Differentiation a, 1117-1124に記載されるようにラムダPLプロモーターの後方にクローニングし、そして国際公開第9848025号に記載されるアンチリプレッサー(antirepressor)の導入によって誘導した。簡便化のために、カスパーゼ酵素を、カスパーゼが天然の方向にある場合には、p20配列のN-末端又はp10配列のC-末端にヘキサヒスチジン配列によりタグをつけた。逆方向についても米国特許6379950号(特許文献1)に記載されるように構築することができる。この場合に、ポリヒスチジンタグは、p10のN-末端か、又はp20のC-末端のいずれかに存在した。
【0101】
国際公開第9848025号による大腸菌中でのカスパーゼ遺伝子の誘導により、プロセシングされた形のp10及びp20が得られた。細菌ペレットを、20mMのトリス塩酸(pH7.5);10%のグリセロール;1mMの酸化型グルタチオン、500mMのNaCl、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、50mMのロイペプチン及び20μg/mlのアプロチニンを含有する緩衝液A中に再懸濁させた。懸濁されたペレットを超音波処理又はフレンチプレス中で溶解させた。不溶性タンパク質を遠心分離又は限外濾過によって除去した。細菌培養の澄明な溶解物をDEAEカラムに通して、細菌DNAを除去した。流過液を、50mMのイミダゾールを含有する固定化金属キレート化カラム上に負荷した。結合した材料を、200mMのイミダゾールと一緒に20mMのトリス塩酸(pH7.5)、10%のグリセロール、1mMの酸化型グルタチオン、50mMのNaClを用いてカラムから溶出させ、そして1mMの酸化型グルタチオンを含有するPBS緩衝液に対して透析した。該試料をモノQカラム(アマシャムバイオサイエンス社)上に適用し、そして0〜1MのNaClの勾配で溶出させた。図9は、大腸菌からの精製されたマウスカスパーゼ-3の典型的な調製物を示している。
【0102】
カスパーゼの発現は、融合タンパク質を用いることにより増大させることができた。これらのカスパーゼは、融合相手、例えばチオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、NusA又はその他のC-末端に融合される。融合相手とカスパーゼ遺伝子との間の融合は、産生後にカスパーゼを遊離するプロテアーゼ部位を有してよい。またこのプロテアーゼ部位は、カスパーゼそれ自体のための標的部位であってよいので、融合タンパク質は活性のカスパーゼの産生後に自己プロセシングされる。
【0103】
実施例4:融合タンパク質のインビボでのカスパーゼ成熟化
開裂反応はインビボで、宿主細胞をカスパーゼ酵素のための発現ベクターでコトランスフェクションすることによって誘導することができる。これを、国際公開第9848025号に記載されるpICA2プラスミド上に存在するラムダPRプロモーターの後方にカスパーゼ遺伝子をクローニングすることで説明している。pICA2の誘導体では、antを制御するプロモーター(PN25/O2)がPtacプロモーターに変更されている(pICA10)。次いでマウスのカスパーゼ-3のための遺伝子をPRプロモーターの後方にクローニングした。得られたpICA11ベクターは、融合タンパク質と一緒にカスパーゼを誘導する(図10A)。これにより、リンカー配列中にDEVDを含む融合タンパク質の開裂がもたらされる。図10Bは、このことをGST-L1-IFNα融合タンパク質及びmLIFを有する開裂可能な融合タンパク質を用いて説明している。インビトロで定量的な開裂が生じ、及び未プロセシングの融合タンパク質F-L1-Pは検出できなかった。幾つかの場合に、目的のタンパク質は、融合相手に融合された場合でさえも、正しく折り畳まれるためにある程度の時間を必要としていたので、カスパーゼ酵素の誘導は融合タンパク質の誘導とは無関係に調節されることは好ましい。この手法において、まず融合タンパク質を誘導し、そして試験的に決められた時間後にカスパーゼ酵素を誘導することが最も好ましい。カスパーゼ酵素は大腸菌及び他の宿主生物の細胞質中で活性なので、該融合タンパク質はインビボで切断され、そして成熟タンパク質が遊離される。この手法は、親和性精製についての可能性という長所は失われるが、インビボでの開裂の工程と精製されたカスパーゼ酵素の消費が回避される。
【0104】
カスパーゼ-3のp30タンパク質をクローニングして、PT102705に記載されるキサントシンプロモーターの後方にヘキサヒスチジンタグを融合させた。H-GST-DEVD/mLIF融合タンパク質を、国際公開第9848025号に記載されるラムダPL/ant誘導系を用いて誘導した。IPTGを1mM添加して誘導を行った4時間後に、0.2%のキサントシンをその培地に添加した。カスパーゼ-3活性を誘導し、そしてインビボで該融合タンパク質をプロセシングする。もう一つの手法では、カスパーゼ-3遺伝子をアラビノースプロモーターの後方でクローニングし、そしてpICA10中に挿入した。得られるpICA12(図10A)は0.1%のアラビノースが添加されるとカスパーゼを誘導し、一方で該融合タンパク質はラクトース又はIPTGの添加によって誘導される。
【0105】
実施例5:カスパーゼ成熟化バイオリアクター
親和性精製のために融合構築物を使用し、ただし精製酵素の消費は最小限にする可能性を利用するために、固体担体に結合したカスパーゼ酵素を基礎とするバイオプロセスリアクターを考案することができる。このようにすれば、簡単に再生を達成でき、そして該酵素リアクターを数回再使用できる。また酵素の除去はもはや必要ない。それというのも該酵素は固相担体に結合されたままであるので、液相中にある目的のタンパク質を汚染しないからである。カスパーゼを精製し、そして予備活性化されたNHSカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に供給元の指示に従って結合させた。非結合酵素を数回の洗浄によって除去した。GST-L-mLIFの精製された分画をリアクター中に負荷し、そして2時間インキュベートした。該リアクターをすすぎ、そして固定化された金属親和性カラム上に捕捉されたタンパク質を溶出させた。流過液はプロセシングされた目的のタンパク質を含有するが、一方で融合部はIMACカラム上に捕捉される。カスパーゼ-3リアクターは1回以上使用できた。
【0106】
【表3】

【0107】
参考文献
Colussi, P. A., N. L. Harvey, L. M. Shearwin-Whyatt and S. Kumar (1998). "Conversion of procaspase-3 to an autoactivating caspase by fusion to the caspase-2 prodomain." J Biol Chem 273(41): 26566-70.

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Thornberry, N. A., K. T. Chapman and D. W. Nicholson (2000). "Determination of caspase specificities using a peptide combinatorial library." Methods Enzymol 322: 100-10.

Van de Craen, M., W. Declercq, I. Van den brande, W. Fiers and P. Vandenabeele (1999). "The proteolytic procaspase activation network: an in vitro analysis." Cell Death Differ 6(11): 1117-24.

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Johnston, S. and W. Dougherty (1993). Method of isolation and purification of fusion polypeptides. 米国特許第5532142号
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】特異性に対するカスパーゼの分類を示す図である。
【図2】融合タンパク質の設計を示す図である。
【図3A】エンテロキナーゼが、構築されたリンカーをプロセシングしそこなうか、又は目的の標的タンパク質を分解することがあることを示す図である。
【図3B】エンテロキナーゼが、構築されたリンカーをプロセシングしそこなうか、又は目的の標的タンパク質を分解することがあることを示す図である。
【図4】GST-mLIF融合タンパク質のトロンビンによる切断は長いプロセシング時間を必要とすることを示す図である。
【図5】トロンビンについての16時間のインキュベーションとカスパーゼ-3についての45分間のインキュベーションの間の酵素の力価測定を示す図である。
【図6A】切断効率に対するP1'部位(切断部位の後方、すなわち下流の第一のアミノ酸)の影響を示す図である。
【図6B】切断の効率に対するリンカー配列の影響を示す図である。
【図6C】切断の効率に対するリンカー配列の影響を示す図である。
【図7】mLIFとhIFNαの両方を、カスパーゼ-3又はリバースドカスパーゼ-7のいずれかを用いて、認識部位DEVD/又はDEVD/Sのいずれかで効率的に切断したことを示す図である。
【図8】mLIF、hIFNα、GST及びTRXのアミノ酸配列のスクリーニングを示す図である。
【図9】カスパーゼ酵素の発現及び精製を示す図である。
【図10A】カスパーゼ-3を同時に又は別個に誘導するためのプラスミド地図を示す。
【図10B】カスパーゼ-3と開裂可能な融合タンパク質とを同時発現する微生物のタンパク質ゲル分析を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のポリペプチドを生物学的活性型で製造するための方法であって
− 好適な宿主において、アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー配列及び目的のポリペプチドを有する融合タンパク質を産生させること、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質を開裂すること、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離すること
を含む方法。
【請求項2】
好適な宿主が原核生物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
原核生物が大腸菌である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
カスパーゼ認識部位が、アミノ酸配列DXXD、DEVD又はDEHDを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
カスパーゼが、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、CED-3、リバースドカスパーゼ-3及びリバースドカスパーゼ-7からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
リンカー配列が、少なくとも5個のアミノ酸を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
リンカー配列が、アミノ酸配列DEVD又はDEHDからなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
リンカー配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
カスパーゼによる融合タンパク質の開裂をインビトロで実施する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
目的の成熟ポリペプチドの少なくとも80%の収率が、濃度測定スキャンニングによって判断して、60分以内に得られる、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
カスパーゼタンパク質を融合タンパク質と同一の宿主中で産生させる、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
カスパーゼタンパク質配列が融合タンパク質中に含まれている、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
カスパーゼタンパク質と融合タンパク質の産生が連続している、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
カスパーゼタンパク質が融合タンパク質の後に産生される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
融合タンパク質の開裂をインビボで実施する、請求項10〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の目的のポリペプチドを生物学的活性型で製造するための方法であって、
− 大腸菌において、アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー配列及び目的のポリペプチドを有し、そのリンカー配列が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示される融合タンパク質を、産生させること、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質を開裂すること、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離すること
を含む方法。
【請求項17】
請求項11又は12記載の目的のポリペプチドを生物学的活性型で製造するための方法であって、
− 大腸菌において、(1)アミノ末端ポリペプチド、カスパーゼ認識部位を含むリンカー配列及び目的のポリペプチドを有する融合タンパク質、及び(2)カスパーゼタンパク質を産生させること、その際、前記の融合タンパク質及び前記のカスパーゼポリペプチドが異なる誘導性プロモーターの制御下にある、
− 融合タンパク質の発現を誘導すること、
− カスパーゼタンパク質の発現を誘導すること、
− 前記の融合タンパク質をリンカー配列と目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸残基との連結部で特異的に開裂するカスパーゼによって、前記の融合タンパク質をインビボで開裂すること、及び
− 生物学的に活性な目的のポリペプチドを単離すること
を含む方法。
【請求項18】
リンカーのアミノ酸配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ-3又はカスパーゼ-7である、請求項16〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
単一のポリ核酸が、融合タンパク質とカスパーゼをコードする、請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
別々のポリ核酸により融合タンパク質とカスパーゼがコードされる、請求項17〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の融合タンパク質をコードするポリ核酸。
【請求項23】
アミノ末端ポリペプチド、目的の成熟ポリペプチド、および該アミノ末端ポリペプチドと目的の成熟ポリペプチドの間にリンカー配列を有し、該リンカー配列が、リンカーと目的の成熟ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸との間の連結部にカスパーゼ認識部位を有する融合タンパク質をコードするポリ核酸。
【請求項24】
更にカスパーゼタンパク質をコードする、請求項23記載のポリ核酸。
【請求項25】
カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、CED-3、リバースドカスパーゼ-3及びリバースドカスパーゼ-7からなる群から選択される、請求項24記載のポリ核酸。
【請求項26】
アミノ末端ポリペプチドが、グルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子GST、大腸菌のチオレドキシンTRX、NusA、キチン結合ドメインCBD、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼCAT、プロテインA(protA)、LysRS、マルトース結合タンパク質(MBP)、ユビキチン、カルモジュリン、DsbA、DsbC及びラムダgpVからなる群から選択される、請求項22〜25のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項27】
リンカー配列が少なくとも5個のアミノ酸を含む、請求項22〜26のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項28】
カスパーゼ認識部位が、アミノ酸配列DXXD、DEVD又はDEHDからなる、請求項22〜27のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項29】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10のいずれかによって示されるペプチドをコードするリンカー配列を含む、請求項22〜28のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項30】
融合タンパク質及び/又はカスパーゼタンパク質の発現が好適なプロモーターの制御下にある、請求項22〜29のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項31】
プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項30記載のポリ核酸。
【請求項32】
融合タンパク質及びカスパーゼタンパク質が異なる誘導性プロモーターの制御下にある、請求項31記載のポリ核酸。
【請求項33】
融合タンパク質が更に検出タグ又は親和性タグを含む、請求項22〜32のいずれか1項記載のポリ核酸。
【請求項34】
検出タグ又は親和性タグが、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、ストレプトアビジン結合タグ、ビオチン化タグ及び抗体によって認識されるタグからなる群から選択される、請求項33記載のポリ核酸。
【請求項35】
請求項22〜34のいずれか1項記載のポリ核酸を含むベクター。
【請求項36】
請求項22〜34のいずれか1項記載のポリ核酸を含む、又は請求項35記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項37】
請求項22〜34のいずれか1項記載のポリ核酸によってコードされる融合タンパク質。
【請求項38】
目的のポリペプチドを成熟型及び/又は生物学的活性型で製造するための、請求項22〜34のいずれか1項記載のポリ核酸、請求項35記載のベクター又は請求項36記載の宿主細胞の使用。
【請求項39】
目的の成熟タンパク質の製造に好適なバイオリアクターであって、
(a)請求項33記載のポリ核酸によってコードされた融合タンパク質であって、支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグを含む融合タンパク質、及び
(b)支持体
を含み、融合タンパク質の親和性タグ部が支持体に結合される、バイオリアクター。
【請求項40】
目的の成熟タンパク質の製造に好適なバイオリアクターであって、
(a)請求項33記載のポリ核酸によってコードされた融合タンパク質、支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグを含む融合タンパク質、及び
(b)固体担体に結合されたカスパーゼ酵素、
を含み、カスパーゼ酵素が融合タンパク質中のカスパーゼ認識部位を特異的に開裂する、バイオリアクター。
【請求項41】
目的のタンパク質を製造する方法であって、
(a)支持体に対して特異的な親和性を有する親和性タグ又はアミノ末端ポリペプチドを含む請求項33記載の融合タンパク質を製造すること、
(b)固体担体に結合されたカスパーゼ酵素を含むバイオリアクター中に前記融合タンパク質を導入すること、
(c)前記融合タンパク質とカスパーゼ酵素とを少なくとも1時間インキュベートすること、及び
(d)該リアクターを洗浄し、そして溶出された融合タンパク質を支持体への結合によって捕捉すること
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図10A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図9】
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【図10B】
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【公表番号】特表2006−518207(P2006−518207A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501924(P2006−501924)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001759
【国際公開番号】WO2004/074488
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505308928)ビーオテクノル エス.アー. (1)
【出願人】(505309039)ブラームス インターユニバージテーア インスティテュート ボーア ビーオテクノロジー (1)
【出願人】(505308917)
【Fターム(参考)】