説明

構造体の形成方法

【課題】 高アスペクトな構造体を、安価にかつ容易に形成する。
【解決手段】 下地基板12上に高アスペクト構造体11を形成する構造体の形成方法であって、下地基板12上に、中央導電部13a及び中央導電部13aを囲う外周導電部13bを形成し、これら中央導電部13a及び外周導電部13bに無電解界めっきによってめっき23を析出させ、その後、外周導電部13bに析出しためっき23を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、MEMSなどに用いる構造体の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)などに用いる構造体をめっきにより形成することが行われている。
一般的に、この構造体の形成方法としては、LIGAプロセスと呼ばれるものを応用したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで、このLIGAプロセスについて、図7を参照して説明する。
まず、図7(a)に示すように、導電層1を形成した下地基板2に対し、厚膜レジスト3を形成する。次に、図7(b)に示すように、厚膜レジスト3にパターンニング(主にX線露光)を行う。そして、図7(c)に示すように、導電層1にNiめっき処理を行い、その後、図7(d)に示すように、厚膜レジスト3を除去することにより、Niめっきからなる構造体4を形成する。
【0004】
そして、このようにして形成された構造体4によれば、金型として用いて樹脂の成型品の製造も可能である。また、構造体の形成方法としては、紫外線を用いてパターニングを行うLIGAライクプロセスも知られている。
【特許文献1】特開平7−263379号公報
【特許文献2】特開平5−94937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記プロセスによって構造体を形成する方法では、高アスペクトな金属を積層させるために、レジスト自体も高アスペクトとすべく厚膜レジストを用いる必要がある。つまり、50μmの高さの構造体を形成するためには、レジスト高さは50μm以上必要となる。
【0006】
しかしながら、高アスペクトなパターンを形成することができる厚膜レジストは極めて高価であり、したがって、安価で容易に高アスペクトな構造体を形成する方法の開発が望まれているのが現状である。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高アスペクトな構造体を、安価にかつ容易に形成することが可能な構造体の形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の構造体の形成方法は、基板上に、中央導電部及び該中央導電部を囲う外周導電部を形成し、前記中央導電部及び前記外周導電部にめっきを析出させ、その後、前記外周導電部および前記外周導電部に析出しためっきを除去することにより、前記中央導電部上に構造体を形成させることを特徴としている。
【0009】
このようにすれば、中央導電部および外周導電部から成長しためっきは、両者の中間点で出合い、その後は上方に向かって成長する。しかしながら、両めっきの出合部の低層領域では、両めっき間に微小な隙間が形成されるので、両めっきは接合されない。しかも、中央導電部を囲うように外周導電部が形成されているので、両めっきの出合部は環状に形成され、出合部に対して横からめっき液が流入しない。その結果、両めっきは出合部に隙間を保持したまま上方に向かって成長するので、中央導電部上のめっきにより高アスペクトの構造体を形成することができる。
したがって、高アスペクトなパターンを形成するための高価な厚膜レジストを用いることなく、例えば、アスペクト比3以上の高アスペクトな構造体を、安価で容易に形成することができる。
【0010】
また、前記構造体の形成方法は、前記外周導電部に対して前記中央導電部を上方へ配置することを特徴としている。
このようにすれば、上方へ向かって外側へ広がる逆テーパ型の高アスペクトな構造体を容易に形成することができる。
さらに、前記構造体の形成方法は、前記外周導電部に対して前記中央導電部を下方へ配置することを特徴としている。
このようにすれば、上方へ向かって内側へ窄まるテーパ型の高アスペクトな構造体を容易に形成することができる。
【0011】
また、前記外周導電部にめっきを析出させる前に、予め前記外周導電部の表面の一部をマスクしておき、前記外周導電部に析出しためっきを除去する工程では、前記マスクを除去することによって露出した前記外周導電部の表面の一部から、前記外周導電部を除去することによって行うことを特徴としている。
なお、前記外周導電部の除去は、前記外周導電部に析出しためっきに対するエッチング速度より前記外周導電部に対するエッチング速度が速いエッチャントを用いて、エッチングにより行うことが望ましい。
このようにすれば、外周導電部およびそこに析出しためっきのみを簡単に除去することが可能になり、中央導電部およびそこに析出しためっきにより所望の高アスペクトな構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の構造体の形成方法について、図1から図4を参照して説明する。
ここで、図1は構造体を示す断面図、図2は構造体を示す平面図、図3は構造体の形成方法を説明する断面図、図4は構造体の形成方法を説明する平面図である。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の構造体の形成方法によって形成される構造体11は、下地基板12に積層された導電層13からなる中央導電部13aに形成されている。
この構造体11は、外径10μmに対して高さ寸法が50μmの高アスペクトな略円柱形状であり、この構造体11が形成された導電層13の膜厚は1μmである。
【0014】
次に、第1の実施形態に係る構造体の形成方法として、高さ50μmで外径10μmの高アスペクト円柱形状の上記構造体11を形成する場合について図3及び図4を参照して説明する。
【0015】
図3(a)及び図4(a)に示すように、アルミニウムをベースにした5000〜8000Åの厚みの導電層13を形成した下地基板12に対し、レジスト21を塗布する。このレジスト21としては、一般的なパターンニングに用いられるノボラック樹脂ベースのポジレジストが使用可能であり、厚みは1μm程度のものである。
【0016】
次に、図3(b)及び図4(b)に示すように、レジスト21にパターンニングを行う。なお、レジスト21に形成するパターンとしては、中央の十字状部分と、この十字状部分に対して間隔をあけた中抜きの十字状部分とを有するものとする。なお、中央の十字状部分は、その外径を5μmとし、この十字状部分のレジスト21に対して5μmの間隔をあけて外周のレジスト21が配置された形状とする。
【0017】
次いで、エッチングすることにより、図3(c)及び図4(c)に示すように、導電層13をパターンニングし、中央の十字状に形成された中央導電部13a及び、この中央導電部13aに対して間隔をあけた中抜きの十字状に形成された外周導電部13bを形成する。
【0018】
その後、図3(d)及び図4(d)に示すように、レジスト21を除去し、外周導電部13bの上面における縁部に、マスキングテープ22を貼り付ける。
【0019】
次に、中央導電部13a及び外周導電部13bにめっき処理を行い、図3(e)及び図4(e)に示すように、中央導電部13a及び外周導電部13bのそれぞれにNiめっき23を析出させる。このようにすると、中央導電部13a及び外周導電部13bにてそれぞれめっき23が等方成長する。
【0020】
ここで、中央導電部13aから等方成長するめっき23は、外側に2.5μm成長した時点で、外周導電部13bからのめっき23と出合い、その後は、図3(f)及び図4(f)に示すように上方に向かって成長する。しかしながら、両めっきの出合部の低層領域では、両めっき間に微小な隙間が形成されるので、両めっきは接合されない。しかも、中央導電部13aを囲うように外周導電部13bが形成されているので、両めっきの出合部は環状に形成され、出合部に対して横からめっき液が流入しない。その結果、両めっきは出合部に微小スペースを保持したまま上方に向かって成長する。
なお、めっき処理としては、以下の処理プロセスにより無電解めっきを施す。
【0021】
まず、アルミニウムの導電層13の表面の濡れ性の向上、残さ除去の目的で、フッ酸が0.01〜0.1%、硫酸が0.01〜1%含有した水溶液中に1〜5分浸漬する。あるいは、0.1〜10%の水酸化ナトリウムなどのアルカリベースの水溶液に1〜10分浸漬しても良い。
【0022】
その次に、水酸化ナトリウムベースでpHが9〜13のアルカリ性水溶液を20〜60℃に加温した中に1秒〜5分浸漬し、表面の酸化膜を除去する。なお、5〜30%硝酸をベースとしたpH1〜3の酸性水溶液を20〜60℃に加温した中に1秒から5分浸漬しても良い。
【0023】
その後、ZnOを含有したpH11〜13のジンケート液中に1秒〜2分浸漬し、中央導電部13a及び外周導電部13bの表面をZnに置換する。
次に、5〜30%の硝酸水溶液に1〜60秒浸漬し、Znを剥離する。
そして、再度ジンケート浴中に1秒〜2分浸漬し、緻密なZn粒子を配線25の表面に析出させる。
【0024】
その後、無電解Niめっき浴に浸漬し、Niめっき23を形成する。
ここで、めっきは、50μm程度の高さまで析出させる。また、めっき浴は次亜リン酸を還元剤とした浴であり、pH4〜5、浴温8085〜95℃である。次亜リン酸浴のため、リンが共析する。
さらに、置換Auめっき欲中に浸漬し、Ni表面をAuにしても良い。なお、Auは、0.05μm〜0.3μm程度形成する。また、Au浴は、シアンフリータイプを用い、pH6〜8、浴温50〜80℃とし、1〜30分浸漬する。
【0025】
このようにしてアルミニウムの中央導電部13a及び外周導電部13b上にNiあるいはNi−Auめっき23を形成する。
なお、各化学処理の間には、水洗処理を行う。水洗槽としては、オーバーフロー構造あるいはQDR機構を有したものを用い、最下面からNバブリングを行う。なお、バブリング方法は樹脂製のチューブなどに穴をあけ、Nを出す方法や燒結体などを通じてNを出す方法がある。こうすることで、短時間で十分効果のあるリンスをすることができる。
【0026】
上記のようにして下地基板12の中央導電部13aに高さ50μmのめっき23を析出させたら、図3(g)及び図4(g)に示すように、マスキングテープ22を除去する。
【0027】
次に、エッチングによって、外周導電部13bを、マスキングテープ22によりめっき23が析出されなかった部分から溶解させて除去する。なお、エッチャントとしては、外周導電部13bに析出しためっき23に対するエッチング速度より、外周導電部13bに対するエッチング速度が速いものを用いる。例えば、KOH等のアルカリ溶液などのNiめっき層を溶解せず、アルミニウムの導電層13のみをエッチングする材料を選定する。
【0028】
そして、外周導電部13bをエッチングによって除去すると、図3(h)及び図4(h)に示すように、この外周導電部13bに析出した外周側のめっき23のみが下地基板12から除去される。なお、中央導電部13aはめっき23に覆われているためエッチングされない。
これにより、下地基板12には、中央導電部13aおよびそこに析出しためっき23により、高さ50μmで外径10μmの高アスペクト円柱形状の構造体11が形成される。
【0029】
上述したように、第1の実施形態に係る構造体の形成方法によれば、高アスペクトなパターンを形成するための高価な厚膜レジストを用いることなく、例えば、アスペクト比3以上の高アスペクトな構造体11を、安価で容易に形成することができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、第2の実施形態として、逆テーパ型の高アスペクト円柱形状の構造体を形成する場合について図5を参照して説明する。
ここでは、高さ50μm、外径10μmの構造体を形成する場合を例にとって説明する。
図5(a)に示すように、構造体11を形成する部分が上方へ配置するように段差をつけた下地基板12に導電層13を形成し、外周導電部13bに対して中央導電部13aを上方へ配置する。また、外周導電部13bの上面における縁部にマスキングテープ22を貼り付ける。
【0031】
次に、中央導電部13a及び外周導電部13bに前述と同様にめっき処理を行い、図5(b)に示すように、めっき23を析出させる。このようにすると、中央導電部13a及び外周導電部13bにてそれぞれめっき23が等方成長する。
【0032】
ここで、中央から等方成長するめっき23は、外周側からのめっき23と接触し、その後、図5(c)に示すように、これら中央部分のめっき23は、外周部分のめっき23とが界面をつくり、互いに一体化することなく、あるスペースを保ったまま斜め外側に広がりながら上方へ成長する。
【0033】
上記のようにして中央部分に高さ50μmで外径10μmの逆テーパ型のめっき23を析出させたら、図5(d)に示すように、マスキングテープ22を除去する。
【0034】
次に、エッチングによって、外周導電部13bを、マスキングテープ22によりめっき23が析出されなかった部分から溶解させて除去する。
そして、外周導電部13bをエッチングによって除去すると、図5(e)に示すように、この外周導電部13bに析出した外周側のめっき23のみが下地基板12から除去される。
これにより、下地基板12の中央には、高さ50μmで外径10μmの逆テーパ型の高アスペクト円柱形状の構造体11が形成される。
【0035】
このように、上記第2の実施形態に係る構造体の形成方法によれば、上方へ向かって外側へ広がる逆テーパ型の高アスペクトな構造体11を容易に形成することができる。
【0036】
[第3実施形態]
次に、第3の実施形態として、テーパ型の高アスペクト円柱形状の構造体を形成する場合について図6を参照して説明する。
ここでは、高さ50μm、外径10μmの構造体を形成する場合を例にとって説明する。
【0037】
図6(a)に示すように、構造体11を形成する部分が下方へ配置するように段差をつけた下地基板12に導電層13を形成し、外周導電部13bに対して中央導電部13aを下方へ配置する。また、外周導電部13bの上面における縁部にマスキングテープ22を貼り付ける。
【0038】
次に、中央導電部13a及び外周導電部13bに前述と同様にめっき処理を行い、図6(b)に示すように、めっき23を析出させる。このようにすると、中央導電部13a及び外周導電部13bにてそれぞれめっき23が等方成長する。
【0039】
ここで、中央から等方成長するめっき23は、外周側からのめっき23と接触し、その後、図6(c)に示すように、これら中央部分のめっき23は、外周部分のめっき23とが界面をつくり、一体化することなく、あるスペースを保ったまま斜め内側に窄まりながら上方へ成長する。
【0040】
上記のようにして中央部分に高さ50μmで外径10μmのテーパ型のめっき23を析出させたら、図6(d)に示すように、マスキングテープ22を除去する。
【0041】
次に、エッチングによって、外周導電部13bを、マスキングテープ22によりめっき23が析出されなかった部分から溶解させて除去する。
そして、外周導電部13bをエッチングによって除去すると、図6(e)に示すように、この外周導電部13bに析出した外周側のめっき23のみが下地基板12から除去される。
これにより、下地基板12の中央には、高さ50μmで外径10μmのテーパ型の高アスペクト円柱形状の構造体11が形成される。
【0042】
このように、上記第3の実施形態に係る構造体の形成方法よれば、上方へ向かって内側へ窄まるテーパ型の高アスペクトな構造体11を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態に係る構造体の形成方法により形成される構造体の断面図。
【図2】第1の実施形態に係る構造体の形成方法により形成される構造体の平面図。
【図3】第1の実施形態に係る構造体の形成方法を説明する断面図。
【図4】第1の実施形態に係る構造体の形成方法を説明する平面図。
【図5】第2の実施形態に係る構造体の形成方法を説明する断面図。
【図6】第3の実施形態に係る構造体の形成方法を説明する断面図。
【図7】高アスペクトな構造体を形成する従来技術を説明する断面図。
【符号の説明】
【0044】
11…構造体、12…下地基板、13a…中央導電部、13b…外周導電部、23…めっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、中央導電部及び該中央導電部を囲う外周導電部を形成し、前記中央導電部及び前記外周導電部にめっきを析出させ、その後、前記外周導電部および前記外周導電部に析出しためっきを除去することにより、前記中央導電部上に構造体を形成させることを特徴とする構造体の形成方法。
【請求項2】
前記外周導電部に対して前記中央導電部を上方へ配置することを特徴とする請求項1に記載の構造体の形成方法。
【請求項3】
前記外周導電部に対して前記中央導電部を下方へ配置することを特徴とする請求項1に記載の構造体の形成方法。
【請求項4】
前記外周導電部にめっきを析出させる前に、予め前記外周導電部の表面の一部をマスクしておき、
前記外周導電部に析出しためっきを除去する工程では、前記マスクを除去することによって露出した前記外周導電部の表面の一部から、前記外周導電部を除去することによって行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の構造体の形成方法。
【請求項5】
前記外周導電部の除去は、前記外周導電部に析出しためっきに対するエッチング速度より前記外周導電部に対するエッチング速度が速いエッチャントを用いて、エッチングにより行うことを特徴とする請求項4に記載の構造体の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−77287(P2006−77287A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261992(P2004−261992)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】