構造物内中詰材の計測方法、計測装置および水中構造物施工方法
【課題】土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単に精度よく計測可能な計測方法、計測装置およびこれらの計測方法または計測装置を用いた水中構造物施工方法を提供する。
【解決手段】この構造物内中詰材の計測方法は、水中構造物の内壁9に被覆電線11〜17をその先端1〜7が内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、水中構造物内での中詰材の堆積により被覆電線の先端で端末処理部が損傷して導電体が水中に露出することで電気抵抗が低下したことを検知することによって中詰材の天端高および中詰量を計測する。
【解決手段】この構造物内中詰材の計測方法は、水中構造物の内壁9に被覆電線11〜17をその先端1〜7が内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、水中構造物内での中詰材の堆積により被覆電線の先端で端末処理部が損傷して導電体が水中に露出することで電気抵抗が低下したことを検知することによって中詰材の天端高および中詰量を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物に投入する土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材の天端高や中詰量等を計測する計測方法・計測装置およびこれらの計測方法または計測装置を用いた水中構造物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸工事や水中構造物構築工事などにおいてはケーソンや鋼板セル等からなる構造物中に土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材を投入する施工法が公知である(例えば、特許文献1参照)。かかる鋼板セル等に対し中詰材は、鋼板セル等の円周方向に均等な中詰め土圧が加わるようにセル中央部から投入され、また、均等な天端高さを保ちながら投入される。かかる中詰材の天端高や中詰量の計測のために、作業員がケーソンや鋼板セル内に重錘を水中に吊り下げ、重錘が中詰材の天端に着底したことを検知し天端高をもとめる重錘式計測や、ケーソンや鋼板セル内の水に濁り・気泡がなくなってから中詰材の天端を超音波で計測する超音波式計測等の計測方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−268563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業員による重錘式計測法は、作業員の安全確保の観点から中詰材の投入を停止した状態で行われており、投入作業に支障をきたしてしまう。また、鋼板セルの円周方向の複数ヵ所を計測する場合は、作業員の移動に時間を要し、計測値を記録する等の作業手間がかかり、記入間違い等のヒューマンエラー発生の可能性もある。一方、超音波式計測法は、濁り・気泡がなくなるまで待機(待機時間は中詰材によって異なるが1時間程度)する必要があり、計測作業工程に時間を要し投入作業に支障をきたしてしまう。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測可能な計測方法、計測装置およびこれらの計測方法または計測装置を用いた水中構造物施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による構造物内中詰材の計測方法は、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測方法であって、水中構造物の内壁に被覆電線をその先端が前記内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することによって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0007】
この構造物内中詰材の計測方法によれば、水中構造物の内壁に敷設された被覆電線が縦方向の所定位置の先端において、水中構造物内に投入されて堆積した中詰材により損傷を受け、被覆電線の導電体が水中に露出することで被覆電線の絶縁抵抗(被覆電線とアースとの間の電気抵抗)が低下したことを検知することにより、その検知時点の中詰材の天端高を計測することができる。このため、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【0008】
上記構造物内中詰材の計測方法において複数本の前記被覆電線をそれらの先端位置が縦方向に相違するように前記内壁に敷設し、前記各被覆電線の前記電気抵抗の低下を検知することにより、前記各被覆電線の先端の縦方向位置に対応して前記中詰材の天端高を複数段階で計測することができる。
【0009】
また、前記複数本の被覆電線を一束にして前記内壁に敷設するようにできる。
【0010】
また、前記被覆電線を前記内壁の周方向の異なる複数位置に敷設することで、水中構造物における中詰材の天端高の分布状態を検知できる。
【0011】
また、前記端末処理部は、前記被覆電線の絶縁被膜を除去して芯線を露出させ、前記導電体としての前記露出した芯線を絶縁体で覆うことで形成されることができる。
【0012】
また、前記被覆電線は、前記端末処理部の代わりに先端で折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部を先端として敷設され、前記折り返し部が損傷を受けて芯線が露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することができる。
【0013】
また、前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗の測定値に基づいてコンピュータが前記中詰材の天端高を検知し演算処理することで中詰量を算出するようにできる。また、前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示手段により表示するようにできる。表示手段として、モニタ画面や発光ダイオード等からなる表示部を用いることができる。
【0014】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置は、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測装置であって、水中構造物の内壁の縦方向の所定位置にその先端が位置するように前記内壁に敷設された被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定する測定手段を備え、前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことが前記測定手段の測定値に基づいて検知され、前記電気抵抗の低下の検知によって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0015】
この構造物内中詰材の計測装置によれば、水中構造物の内壁に敷設された被覆電線が縦方向の所定位置の先端において、水中構造物内に投入されて堆積した中詰材により損傷を受け、被覆電線の導電体が水中に露出することで、測定手段により測定した被覆電線の絶縁抵抗(被覆電線とアースとの間の電気抵抗)が低下したことが検知されることによって、その検知時点の中詰材の天端高を計測することができる。このため、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【0016】
上記構造物内中詰材の計測装置において前記検知された中詰材の天端高に基づいて中詰量を算出する演算手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示する表示手段を備えることが好ましい。
【0018】
本実施形態による水中構造物施工方法は、水中構造物を水底に設置するステップと、前記水中構造物内に中詰材を投入するステップと、を含み、前記中詰材の投入ステップにおいて上述の構造物内中詰材の計測方法または上述の構造物内中詰材の計測装置を用いて前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0019】
この水中構造物施工方法によれば、上述の構造物内中詰材の計測方法・計測装置により土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測できるので、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができるとともに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造物内中詰材の計測方法・計測装置によれば、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態において水中構造物を水底に設置する水中構造物施工方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。
【図2】図1の水中構造物内に中詰材を投入する様子を概略的に示す図である。
【図3】本実施形態において水中構造物の鋼板セルの内壁に複数本の被覆電線を敷設した様子を概略的に示す側面図(a)および正面図(b)である。
【図4】図3の被覆電線の先端に設けた端末処理部を示す概略図である。
【図5】図3の被覆電線を敷設した鋼板セルの内壁の異なる複数位置を示す平面図(a)および敷設状態を模式的に示す斜視図(b)である。
【図6】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例を説明するための回路図である。
【図7】図6の電圧計の代わりに電流計を測定手段として用いた例を説明するための回路図である。
【図8】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例を説明するための回路図(a)および表示手段の配置例を示す図(b)である。
【図9】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例を説明するためのブロック図(a)およびモニタにおける表示例を示す図(b)である。
【図10】図4の端末処理部の代わりに被覆電線の先端に折り返し部を設けた例を示す概略図である。
【図11】図3の複数本の被覆電線を一束にした被覆電線束を示す図(a)およびb-b線方向に切断してみた断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0023】
最初に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法を適用して好ましい水中構造物の施工方法について図1,図2を参照して説明する。図1は本実施形態において水中構造物を水底に設置する水中構造物施工方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。図2は図1の水中構造物内に中詰材を投入する様子を概略的に示す図である。
【0024】
図2のような鋼板セルSEを水底Gに設置するために、鋼板セルを工事水域まで運搬船等により運搬し(S01)、鋼板セルを水底G内に打設してから(S02)、図2のように、リクレーマ船RSに備え付けられたバックホウBHを用いて土運船DSから土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tをリクレーマ船RSのベルトコンベアBCへと移し、ベルトコンベアBCで鋼板セルSE内に投入する(S03)。この投入の間に、鋼板セルSE内に投入された中詰材Tの天端高と中詰量を計測する(S04)。
【0025】
次に、鋼板セルと鋼板セルとの間に配置される鋼板アークを運搬し(S04)、鋼板アークを打設してから(S05)、鋼板セルと鋼板アークとの間のアーク部内に図2と同様にして土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tを投入する(S06)。なお、アーク部への投入の際に、必要に応じて、アーク部内に投入された中詰材の天端高と中詰量を同様にして計測するようにしてもよい。
【0026】
上述のようにして、鋼板セルおよび鋼板アーク等からなる水中構造物を施工することができるが、中詰材Tの投入ステップS04では、図2の鋼板セルSE内の平面における中詰材Tの天端高の均一性を保ちながら中詰材Tを鋼板セルSE内に投入することが必要である。鋼板セルSEは、鋼板を用いて曲げ加工や溶接加工等により円筒形状につくられるが、鋼板の厚さに比してその直径が大きく全体の剛性が小さいので、投入された中詰材Tが投入の間に片寄って堆積すると、変形してしまいやすい。このため、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法を用いて鋼板セル内の中詰材の天端高を計測する。
【0027】
なお、図2では鋼板セルSEが水底Gの地盤内に打設されるが(根入れ鋼板セル)、これに限定されず、例えば、打設せずに鋼板セルSEを水底Gに置く(置き鋼板セル)構造であってもよい。
【0028】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法について図3〜図6を参照して説明する。
【0029】
図3は本実施形態において水中構造物の鋼板セルの内壁に複数本の被覆電線を敷設した様子を概略的に示す側面図(a)および平面図(b)である。図4は図3の被覆電線の先端に設けた端末処理部を示す概略図である。図5は図3の被覆電線を敷設した鋼板セルの内壁の異なる複数位置を示す平面図(a)および敷設状態を模式的に示す斜視図(b)である。図6は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例を説明するための回路図である。
【0030】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法は、図3(a)(b)のように、鋼板セルの内壁9に複数本の被覆電線11〜17をそれらの先端1〜7が縦方向にほぼ一列に並ぶように敷設し、鋼板セル内に投入された中詰材が堆積して各被覆電線11〜17の先端1〜7が損傷することで各被覆電線11〜17の絶縁抵抗が低下したことを検知することよって中詰材の天端高さを計測するようにしたものである。
【0031】
図3(a)(b)のように、複数本の被覆電線11〜17を鋼板セルの内壁9に縦方向に敷設するが、このとき、被覆電線11〜17は、それらの先端1〜7の各縦方向位置が等間隔になるように敷設される。すなわち、被覆電線17の先端7は鋼板セルの上端10から縦方向に距離h0の位置に、被覆電線16の先端6は上端10から縦方向に距離(h0+h)の位置に、被覆電線15の先端5は上端10から縦方向に距離(h0+2h)の位置に、同様にして、被覆電線11の先端1は上端10から縦方向に距離(h0+6h)の位置に、それぞれ位置する。
【0032】
なお、敷設の際に被覆電線11〜17の先端1〜7の近傍を図3(b)の破線で示すように固定金具19等により固定することが好ましい。被覆電線11〜17の鋼板セルへの敷設は、図1の鋼板セルの運搬ステップS01の前に行うようにしてもよい。
【0033】
図3(a)(b)の各被覆電線11〜17は、図4のように、銅等の導電物質からなる芯線21と、芯線21を覆うように電気絶縁体により被覆された絶縁被膜22とから所定長さに構成されている。被覆電線11〜17は、その先端に端末処理部23を有し、端末処理部23は、被覆電線11〜17の絶縁被膜22を除去して芯線21を所定長さだけ露出させ、その露出した先端の芯線25を電気絶縁体からなる熱収縮性チューブ24で覆うことで形成されている。
【0034】
図4のように、被覆電線の端末処理部23は、通常の状態で水中においても電気絶縁性を確保した状態となっているが、中詰材が鋼板セルに堆積して当たると、熱収縮性チューブ24が損傷して被覆電線から脱落したり破れたりすることで先端の芯線25が水中に露出することになる。
【0035】
図3(a)(b)の複数本の被覆電線11〜17は、図5(a)(b)のように、鋼板セルSEの内壁9の周方向の異なる複数位置a,b,・・・g,hに敷設される。各位置a,b,・・・g,hは周方向に等間隔である。
【0036】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の測定原理について図2〜図6を参照して説明する。
【0037】
図6のように、例えば、図5(a)(b)の周方向位置aに敷設された図3(a)(b)の先端1,2,3を有する被覆電線11,12,13と大地(アース)Eとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)をそれぞれR1,R2,R3とすると、各電気抵抗R1〜R3は、図4の被覆電線11〜13の端末処理部23が熱収縮性チューブ24により電気絶縁性を確保した状態であると、大きく例えば1MΩ以上である。
【0038】
ここで、図3,図5の鋼板セルSE内に図2のように土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tが投入されて鋼板セルSE内の底面G1に堆積し、被覆電線11の先端1の位置近傍に達すると、被覆電線11の端末処理部23の熱収縮性チューブ24(図4)に中詰材が当たる等することで熱収縮性チューブ24が損傷する。このため、熱収縮性チューブ24が脱落したり破れたりすることによって先端の芯線25が鋼板セルSE内に浸入している水中に露出する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1は大きく低下し、0Ω近くになる。
【0039】
したがって、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1を測定し、その測定値が大きく低下したことを検知することで、投入された中詰材の天端位置が図5の周方向位置aにおいてほぼ被覆電線11の先端1の位置であることがわかる。同様にして、被覆電線12,13とアースEとの間の電気抵抗R2,R3の測定値が大きく低下したことを検知することで、投入された中詰材の天端位置がほぼ被覆電線12,13の先端2,3の位置であることがわかる。
【0040】
上述のようにして、図5のすべての周方向位置a〜hにおいて図3の被覆電線11〜17とアースEとの間の各電気抵抗(絶縁抵抗)を測定することより、各計測点(各先端1〜7)において投入された中詰材の天端高を計測することができる。
【0041】
図5の各周方向位置a〜hにおいて図3の被覆電線11〜17(先端1〜7)の電気抵抗が低下したことを検知したとき、中詰材の天端高Aと中詰量Bは次式(1)、(2)から求めることができる。
【0042】
A=H−(h0+(7−n)×h) ・・・(1)
B=A×πR2 ・・・(2)
ただし、
A:鋼板セルの底面G1をゼロとしたときの高さ
H:図3の鋼板セルの底面G1から上端10までの高さ
R:鋼板セルの半径
n:1,2,・・・7(被覆電線の先端1〜7に対応する)
【0043】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例について図6を参照して説明する。被覆電線11,12,13とアースEとの間の電気抵抗R1,R2,R3の低下は図6のような電気回路で検知できる。
【0044】
すなわち、図6のように、各被覆電線11〜13と抵抗値R0である各固定抵抗の一端とをそれぞれ直列接続し、抵抗値R0の固定抵抗の他端とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加し、各被覆電線11〜13とアースEとの間の電圧を測定するための測定手段として電圧計V1,V2,V3を接続する。
【0045】
電源からの所定電圧Vを例えば5V、固定抵抗の抵抗値R0を例えば1〜10KΩの任意の値とすると、被覆電線11の端末処理部23が損傷を受けずに電気絶縁性を維持した状態では、その電気抵抗R1が1MΩ以上であるので、電圧計V1の測定電圧は約5Vであるが、上述のように損傷を受けると、電気抵抗R1が0Ω近くになるので、電圧計V1の測定電圧も0V近くに低下する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1の低下を検知することができる。他の電圧計V2,V3でも同様にして電気抵抗R2,R3の低下を検知できる。
【0046】
図6では、測定手段として電圧計を用いて被覆電線とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)の低下を検知したが、これに限定されず、電流計やテスタを測定手段として用いてもよい。
【0047】
すなわち、図7のように、測定手段として電流計I1,I2,I3を固定抵抗と被覆電線とで直列接続し、抵抗値R0の固定抵抗の他端とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加する。被覆電線の電気抵抗R1が1MΩ以上のときは、電流計I1の測定値は0に近い値であるが、上述のように損傷を受けると、0Ω近くまで低下すると、電流計I1の測定値が大きくなることから、被覆電線とアースEとの間の電気抵抗の低下を検知できる。
【0048】
また、被覆電線とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)をテスタで直接測定してもよい。
【0049】
さらに、図6の電圧値や図7の電流値や被覆電線とアースEとの間の電気抵抗値を計測データとして所定の時間間隔で取り込んで記録しプリント可能なデータロガを用いることで多数点計測を簡単にかつ短時間で行うようにしてもよい。
【0050】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例について図8を参照して説明する。図8は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例を説明するための回路図(a)および表示手段の配置例を示す図(b)である。
【0051】
図8(a)(b)の例は、図3(a)(b)の被覆電線11〜17とアースEとの間の電気抵抗R1〜R7が低下したとき、表示部L1〜L7が点灯するように構成したものである。すなわち、図8(a)のように、表示部L1〜L7として発光ダイオードを用いて、表示部L1〜L7のそれぞれと抵抗値R0の固定抵抗と図3(a)(b)の被覆電線11〜17のそれぞれとを直列接続し、固定抵抗とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加する。
【0052】
被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)R1が、被覆電線11の端末処理部23が損傷を受けずに電気絶縁性を維持した状態では、その電気抵抗R1が1MΩ以上であるので、表示部L1は発光ダイオードに電流が流れずに消灯したままであるが、上述のように損傷を受けると、電気抵抗R1が0Ω近くになるので、表示部L1は発光ダイオードに電流が流れることで発光する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1が低下したことを検知することができる。表示部L2〜L7でも同様にして発光することで各被覆電線12〜17とアースEとの間の各電気抵抗R2〜R7が低下したことを検知できる。
【0053】
図8(a)のような電気回路を図5のすべての周方向位置a〜hの被覆電線11〜17について設け、図8(b)のように表示部L1〜L7を周方向位置aの表示部L1が下端となり表示部L7が上端となるように上下方向に並べ、各周方向位置b〜hについても表示部L1〜L7を同様に並べることで、全体として表示パネル状に構成する。
【0054】
表示部L1〜L7は、図3(a)(b)のように、被覆電線11〜17の先端1(最深部)〜先端7(最高部)とそれぞれ対応するので、例えば、図8(b)で周方向位置aの表示部L1が発光すると、周方向位置aにおける中詰材の天端高が被覆電線11の先端1の近傍であることを検知できる。
【0055】
また、図8(b)のように、各周方向位置a〜hの各表示部L1〜L7の内で図のハッチングで示す表示部が発光したとすると、周方向位置bで中詰材の天端高がもっとも高く、周方向位置gで中詰材の天端高がもっとも低いことを検知できるとともに、周方向位置a〜dの範囲で中詰材の天端高が高く、周方向位置e〜hの範囲で中詰材の天端高が低いといった中詰材の天端高の分布状態を検知できる。
【0056】
上述のような中詰材の天端高の検知に基づいて、例えば、図2のリクレーマ船RSのオペレータに対しベルトコンベアBCの先端投入位置を調整するように指示することができる。また、例えば、図2のリクレーマ船RSのオペレータが図8(b)のような表示パネルを見ながらベルトコンベアBCの先端投入位置を調整するようにしてもよい。
【0057】
なお、図8(b)の周方向位置a〜hの表示部L1〜L7は、他の態様で並べてもよく、例えば、各周方向位置a〜hの表示部L1〜L7を横方向に並べてもよい。また、図8(b)は、周方向位置a〜hの表示部L1〜L7の配置位置を示すものであって、各位置に配置される表示部の発光ダイオードの形状は、ランプ状や平面状等のいずれでもよい。
【0058】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例について図9を参照して説明する。図9は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例を説明するためのブロック図(a)およびモニタにおける表示例を示す図(b)である。
【0059】
図9の構造物内中詰材の計測装置は、図9(a)のように、図3,図5の鋼板セルSEの周方向位置a〜hに敷設された被覆電線11〜17が接続される入力部31と、入力部31に接続された被覆電線11〜17の電気抵抗を測定する測定部32と、測定部32で測定した測定値をデジタル信号(検知信号)に変換する信号変換部33と、信号変換部33からのデジタル信号が入力し演算処理や表示処理を行うパーソナルコンピュータ(パソコン、PC)34と、液晶パネルやCRTからなるモニタ35と、を備える。
【0060】
入力部31は多点計測が可能なようにデータロガを有し、周方向位置a〜hの被覆電線11〜17が接続されて各計測点を所定の時間間隔で切り替えて測定部32で各計測点の電気抵抗を測定する。各計測点は、図3,図5の周方向位置a〜hの被覆電線11〜17の先端1〜7に対応する。なお、測定部32では、図6のように電圧を測定するようにしてもよく、また、図7のように電流を測定するようにしてもよい。
【0061】
測定部32で測定した電気抵抗値が例えば0Ωに近い値であれば、信号変換部33で検知信号を出力するようにして電気抵抗値がデジタル信号に変換される。検知信号は入力部31での各計測点の切り替えと同期してパソコン34に出力する。
【0062】
パソコン34は、図9(b)のように、モニタ35の画面に鋼板セルの模式図を高さ(m)の目盛りとともに表示し、ある計測点の検知信号が入力すると、その計測点(図3の先端1〜7)から上記式(1)により演算処理し中詰材の天端高を求め、表示処理を行い、鋼板セルの模式図中に計測した中詰材の天端高をプロット表示する。図9(b)のように周方向位置a〜hについて計測した中詰材の天端高を表示することで、鋼板セル内の中詰材の天端高と、その分布状態とを簡単に知ることができる。さらに、中詰材の天端高から上記式(2)により演算処理し、中詰量を別に表示するようにしてもよい。
【0063】
なお、パソコン34は、モニタ35にすべての計測点をテーブル形式に並べて表示し、検知信号の入力した計測点を色別表示等にするようにしてもよく、図9(b)の鋼板セルの模式図とあわせて表示するようにしてもよい。
【0064】
また、パソコン34において、図5の周方向位置a〜hで計測した中詰材の天端高の最高値と、最低値との差を演算し、その差が所定値を超えたとき、ブザー音や警告灯やモニタ35での警告表示等により警告を発するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置した後に土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材を投入する際に、水中構造物の内壁に敷設した被覆電線の絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗の低下を検知することによって、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材の天端高および中詰量をリアルタイムに簡単かつ精度よく計測することができる。
【0066】
また、中詰材の天端高および中詰量の計測のための計測装置は、上述のように、複数本の被覆電線、電圧計、電流計またはテスタ、固定抵抗から構成でき、簡単な構成であるので、コストがかからずに、コスト的に有利である。被覆電線は市販の絶縁被覆が施された電線を用いることができる。
【0067】
さらに、本実施形態によれば、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量をリアルタイムに簡単かつ精度よく計測でき、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置した後に中詰材を投入する工程で中詰材が片寄って堆積した場合には直ぐに検知できるので、中詰材の投入位置を調整等することで中詰材の片寄った堆積に迅速に対応することができる。このように、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができる。さらに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり、また、水中に濁り・気泡がなくなるまで待機する必要もなくなり、投入作業を迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【0068】
次に、図3の被覆電線の先端部の別の例について図10を参照して説明する。図10の例は、図4と同様の被覆電線11〜17を端末処理せずに先端で折り曲げてUターンさせ、被覆電線11〜17の先端に折り曲げ部29を設けたものである。被覆電線11〜17が先端の折り曲げ部29近傍で鋼板セル内で堆積した中詰材により損傷を受けると、絶縁被膜22が破壊されて脱落等することで芯線21が水中に露出する。図10の例によれば、被覆電線を単に折り曲げるだけでよく、被覆電線の先端で端末処理が不要であるので、敷設する被覆電線の構造が極めて簡単になる。
【0069】
次に、図3の複数本の被覆電線を一束にした例について図11を参照して説明する。図11(a)(b)の被覆電線束40は、複数本の被覆電線41〜55を被覆チューブ40a内に一束にまとめたものである。鋼板セルの上端10の近傍まで被覆電線束40を敷設し、上端10の近傍で各被覆電線41〜55を鋼板セルの内壁の設置位置まで延ばして敷設する。図11の例によれば、複数本の被覆電線が被覆電線束40として一束になっているので、被覆電線の敷設作業が容易となる。
【0070】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図6〜図8では、アースEを大地とし、大地接地としたが、これに限定されず、水中に接地してもよく、また、鋼板セルに接地してもよいことはもちろんである。
【0071】
また、図3では、各被覆電線の先端1〜7を鋼板セルの縦方向に等間隔に配置したが、等間隔配置に限定されず、適宜変更可能であり、配置間隔を適宜変更してよく、また、計測の必要性に応じて、被覆電線の本数を増減して計測点を増減でき、さらに、被覆電線の周方向位置も図5の配置例に限定されず、適宜変更可能であり、周方向位置の計測点を増減できる。
【0072】
また、図4の被覆電線の端末処理部23は、図4の構造に限定されず、例えば、露出させた芯線25を絶縁テープやシリコンゴムで覆うことで電気絶縁する等の構造としてもよい。
【0073】
また、敷設した被覆電線の絶縁抵抗の低下の検知法として、電圧計、電流計、テスタ、データロガの使用や発光ダイオードの点灯について説明したが、本発明は、これに限定されず、例えば、ブザー等の音や、電子合成音等を用いるようにしてもよい。また、図6〜図8の回路は一例であって、他の回路構成であってもよいことはもちろんである。
【0074】
また、本実施形態では、水中構造物として鋼板セルを例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、ケーソン等であってもよく、また、設置後に中詰材の投入が必要な他の水中構造物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の構造物内中詰材の計測方法・計測装置によれば、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測できるので、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置し中詰材を投入する際に中詰材の天端高や中詰量を計測することで、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができるとともに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【符号の説明】
【0076】
11〜17 被覆電線
1〜7 先端
21 芯線
22 絶縁被膜
23 端末処理部
24 熱収縮性チューブ
31 入力部
32 測定部
33 信号変換部
34 パソコン
35 モニタ
E アース
V1,V2,V3 電圧計
I1,I2,I3 電流計
L1〜L7 表示部
R1〜R7 電気抵抗、絶縁抵抗
SE 鋼板セル
T 中詰材
a〜h 周方向位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物に投入する土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材の天端高や中詰量等を計測する計測方法・計測装置およびこれらの計測方法または計測装置を用いた水中構造物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸工事や水中構造物構築工事などにおいてはケーソンや鋼板セル等からなる構造物中に土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材を投入する施工法が公知である(例えば、特許文献1参照)。かかる鋼板セル等に対し中詰材は、鋼板セル等の円周方向に均等な中詰め土圧が加わるようにセル中央部から投入され、また、均等な天端高さを保ちながら投入される。かかる中詰材の天端高や中詰量の計測のために、作業員がケーソンや鋼板セル内に重錘を水中に吊り下げ、重錘が中詰材の天端に着底したことを検知し天端高をもとめる重錘式計測や、ケーソンや鋼板セル内の水に濁り・気泡がなくなってから中詰材の天端を超音波で計測する超音波式計測等の計測方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−268563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業員による重錘式計測法は、作業員の安全確保の観点から中詰材の投入を停止した状態で行われており、投入作業に支障をきたしてしまう。また、鋼板セルの円周方向の複数ヵ所を計測する場合は、作業員の移動に時間を要し、計測値を記録する等の作業手間がかかり、記入間違い等のヒューマンエラー発生の可能性もある。一方、超音波式計測法は、濁り・気泡がなくなるまで待機(待機時間は中詰材によって異なるが1時間程度)する必要があり、計測作業工程に時間を要し投入作業に支障をきたしてしまう。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測可能な計測方法、計測装置およびこれらの計測方法または計測装置を用いた水中構造物施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による構造物内中詰材の計測方法は、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測方法であって、水中構造物の内壁に被覆電線をその先端が前記内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することによって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0007】
この構造物内中詰材の計測方法によれば、水中構造物の内壁に敷設された被覆電線が縦方向の所定位置の先端において、水中構造物内に投入されて堆積した中詰材により損傷を受け、被覆電線の導電体が水中に露出することで被覆電線の絶縁抵抗(被覆電線とアースとの間の電気抵抗)が低下したことを検知することにより、その検知時点の中詰材の天端高を計測することができる。このため、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【0008】
上記構造物内中詰材の計測方法において複数本の前記被覆電線をそれらの先端位置が縦方向に相違するように前記内壁に敷設し、前記各被覆電線の前記電気抵抗の低下を検知することにより、前記各被覆電線の先端の縦方向位置に対応して前記中詰材の天端高を複数段階で計測することができる。
【0009】
また、前記複数本の被覆電線を一束にして前記内壁に敷設するようにできる。
【0010】
また、前記被覆電線を前記内壁の周方向の異なる複数位置に敷設することで、水中構造物における中詰材の天端高の分布状態を検知できる。
【0011】
また、前記端末処理部は、前記被覆電線の絶縁被膜を除去して芯線を露出させ、前記導電体としての前記露出した芯線を絶縁体で覆うことで形成されることができる。
【0012】
また、前記被覆電線は、前記端末処理部の代わりに先端で折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部を先端として敷設され、前記折り返し部が損傷を受けて芯線が露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することができる。
【0013】
また、前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗の測定値に基づいてコンピュータが前記中詰材の天端高を検知し演算処理することで中詰量を算出するようにできる。また、前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示手段により表示するようにできる。表示手段として、モニタ画面や発光ダイオード等からなる表示部を用いることができる。
【0014】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置は、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測装置であって、水中構造物の内壁の縦方向の所定位置にその先端が位置するように前記内壁に敷設された被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定する測定手段を備え、前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことが前記測定手段の測定値に基づいて検知され、前記電気抵抗の低下の検知によって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0015】
この構造物内中詰材の計測装置によれば、水中構造物の内壁に敷設された被覆電線が縦方向の所定位置の先端において、水中構造物内に投入されて堆積した中詰材により損傷を受け、被覆電線の導電体が水中に露出することで、測定手段により測定した被覆電線の絶縁抵抗(被覆電線とアースとの間の電気抵抗)が低下したことが検知されることによって、その検知時点の中詰材の天端高を計測することができる。このため、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【0016】
上記構造物内中詰材の計測装置において前記検知された中詰材の天端高に基づいて中詰量を算出する演算手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示する表示手段を備えることが好ましい。
【0018】
本実施形態による水中構造物施工方法は、水中構造物を水底に設置するステップと、前記水中構造物内に中詰材を投入するステップと、を含み、前記中詰材の投入ステップにおいて上述の構造物内中詰材の計測方法または上述の構造物内中詰材の計測装置を用いて前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする。
【0019】
この水中構造物施工方法によれば、上述の構造物内中詰材の計測方法・計測装置により土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測できるので、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができるとともに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造物内中詰材の計測方法・計測装置によれば、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態において水中構造物を水底に設置する水中構造物施工方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。
【図2】図1の水中構造物内に中詰材を投入する様子を概略的に示す図である。
【図3】本実施形態において水中構造物の鋼板セルの内壁に複数本の被覆電線を敷設した様子を概略的に示す側面図(a)および正面図(b)である。
【図4】図3の被覆電線の先端に設けた端末処理部を示す概略図である。
【図5】図3の被覆電線を敷設した鋼板セルの内壁の異なる複数位置を示す平面図(a)および敷設状態を模式的に示す斜視図(b)である。
【図6】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例を説明するための回路図である。
【図7】図6の電圧計の代わりに電流計を測定手段として用いた例を説明するための回路図である。
【図8】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例を説明するための回路図(a)および表示手段の配置例を示す図(b)である。
【図9】本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例を説明するためのブロック図(a)およびモニタにおける表示例を示す図(b)である。
【図10】図4の端末処理部の代わりに被覆電線の先端に折り返し部を設けた例を示す概略図である。
【図11】図3の複数本の被覆電線を一束にした被覆電線束を示す図(a)およびb-b線方向に切断してみた断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0023】
最初に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法を適用して好ましい水中構造物の施工方法について図1,図2を参照して説明する。図1は本実施形態において水中構造物を水底に設置する水中構造物施工方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。図2は図1の水中構造物内に中詰材を投入する様子を概略的に示す図である。
【0024】
図2のような鋼板セルSEを水底Gに設置するために、鋼板セルを工事水域まで運搬船等により運搬し(S01)、鋼板セルを水底G内に打設してから(S02)、図2のように、リクレーマ船RSに備え付けられたバックホウBHを用いて土運船DSから土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tをリクレーマ船RSのベルトコンベアBCへと移し、ベルトコンベアBCで鋼板セルSE内に投入する(S03)。この投入の間に、鋼板セルSE内に投入された中詰材Tの天端高と中詰量を計測する(S04)。
【0025】
次に、鋼板セルと鋼板セルとの間に配置される鋼板アークを運搬し(S04)、鋼板アークを打設してから(S05)、鋼板セルと鋼板アークとの間のアーク部内に図2と同様にして土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tを投入する(S06)。なお、アーク部への投入の際に、必要に応じて、アーク部内に投入された中詰材の天端高と中詰量を同様にして計測するようにしてもよい。
【0026】
上述のようにして、鋼板セルおよび鋼板アーク等からなる水中構造物を施工することができるが、中詰材Tの投入ステップS04では、図2の鋼板セルSE内の平面における中詰材Tの天端高の均一性を保ちながら中詰材Tを鋼板セルSE内に投入することが必要である。鋼板セルSEは、鋼板を用いて曲げ加工や溶接加工等により円筒形状につくられるが、鋼板の厚さに比してその直径が大きく全体の剛性が小さいので、投入された中詰材Tが投入の間に片寄って堆積すると、変形してしまいやすい。このため、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法を用いて鋼板セル内の中詰材の天端高を計測する。
【0027】
なお、図2では鋼板セルSEが水底Gの地盤内に打設されるが(根入れ鋼板セル)、これに限定されず、例えば、打設せずに鋼板セルSEを水底Gに置く(置き鋼板セル)構造であってもよい。
【0028】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法について図3〜図6を参照して説明する。
【0029】
図3は本実施形態において水中構造物の鋼板セルの内壁に複数本の被覆電線を敷設した様子を概略的に示す側面図(a)および平面図(b)である。図4は図3の被覆電線の先端に設けた端末処理部を示す概略図である。図5は図3の被覆電線を敷設した鋼板セルの内壁の異なる複数位置を示す平面図(a)および敷設状態を模式的に示す斜視図(b)である。図6は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例を説明するための回路図である。
【0030】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置・計測方法は、図3(a)(b)のように、鋼板セルの内壁9に複数本の被覆電線11〜17をそれらの先端1〜7が縦方向にほぼ一列に並ぶように敷設し、鋼板セル内に投入された中詰材が堆積して各被覆電線11〜17の先端1〜7が損傷することで各被覆電線11〜17の絶縁抵抗が低下したことを検知することよって中詰材の天端高さを計測するようにしたものである。
【0031】
図3(a)(b)のように、複数本の被覆電線11〜17を鋼板セルの内壁9に縦方向に敷設するが、このとき、被覆電線11〜17は、それらの先端1〜7の各縦方向位置が等間隔になるように敷設される。すなわち、被覆電線17の先端7は鋼板セルの上端10から縦方向に距離h0の位置に、被覆電線16の先端6は上端10から縦方向に距離(h0+h)の位置に、被覆電線15の先端5は上端10から縦方向に距離(h0+2h)の位置に、同様にして、被覆電線11の先端1は上端10から縦方向に距離(h0+6h)の位置に、それぞれ位置する。
【0032】
なお、敷設の際に被覆電線11〜17の先端1〜7の近傍を図3(b)の破線で示すように固定金具19等により固定することが好ましい。被覆電線11〜17の鋼板セルへの敷設は、図1の鋼板セルの運搬ステップS01の前に行うようにしてもよい。
【0033】
図3(a)(b)の各被覆電線11〜17は、図4のように、銅等の導電物質からなる芯線21と、芯線21を覆うように電気絶縁体により被覆された絶縁被膜22とから所定長さに構成されている。被覆電線11〜17は、その先端に端末処理部23を有し、端末処理部23は、被覆電線11〜17の絶縁被膜22を除去して芯線21を所定長さだけ露出させ、その露出した先端の芯線25を電気絶縁体からなる熱収縮性チューブ24で覆うことで形成されている。
【0034】
図4のように、被覆電線の端末処理部23は、通常の状態で水中においても電気絶縁性を確保した状態となっているが、中詰材が鋼板セルに堆積して当たると、熱収縮性チューブ24が損傷して被覆電線から脱落したり破れたりすることで先端の芯線25が水中に露出することになる。
【0035】
図3(a)(b)の複数本の被覆電線11〜17は、図5(a)(b)のように、鋼板セルSEの内壁9の周方向の異なる複数位置a,b,・・・g,hに敷設される。各位置a,b,・・・g,hは周方向に等間隔である。
【0036】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の測定原理について図2〜図6を参照して説明する。
【0037】
図6のように、例えば、図5(a)(b)の周方向位置aに敷設された図3(a)(b)の先端1,2,3を有する被覆電線11,12,13と大地(アース)Eとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)をそれぞれR1,R2,R3とすると、各電気抵抗R1〜R3は、図4の被覆電線11〜13の端末処理部23が熱収縮性チューブ24により電気絶縁性を確保した状態であると、大きく例えば1MΩ以上である。
【0038】
ここで、図3,図5の鋼板セルSE内に図2のように土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材Tが投入されて鋼板セルSE内の底面G1に堆積し、被覆電線11の先端1の位置近傍に達すると、被覆電線11の端末処理部23の熱収縮性チューブ24(図4)に中詰材が当たる等することで熱収縮性チューブ24が損傷する。このため、熱収縮性チューブ24が脱落したり破れたりすることによって先端の芯線25が鋼板セルSE内に浸入している水中に露出する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1は大きく低下し、0Ω近くになる。
【0039】
したがって、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1を測定し、その測定値が大きく低下したことを検知することで、投入された中詰材の天端位置が図5の周方向位置aにおいてほぼ被覆電線11の先端1の位置であることがわかる。同様にして、被覆電線12,13とアースEとの間の電気抵抗R2,R3の測定値が大きく低下したことを検知することで、投入された中詰材の天端位置がほぼ被覆電線12,13の先端2,3の位置であることがわかる。
【0040】
上述のようにして、図5のすべての周方向位置a〜hにおいて図3の被覆電線11〜17とアースEとの間の各電気抵抗(絶縁抵抗)を測定することより、各計測点(各先端1〜7)において投入された中詰材の天端高を計測することができる。
【0041】
図5の各周方向位置a〜hにおいて図3の被覆電線11〜17(先端1〜7)の電気抵抗が低下したことを検知したとき、中詰材の天端高Aと中詰量Bは次式(1)、(2)から求めることができる。
【0042】
A=H−(h0+(7−n)×h) ・・・(1)
B=A×πR2 ・・・(2)
ただし、
A:鋼板セルの底面G1をゼロとしたときの高さ
H:図3の鋼板セルの底面G1から上端10までの高さ
R:鋼板セルの半径
n:1,2,・・・7(被覆電線の先端1〜7に対応する)
【0043】
本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の具体例について図6を参照して説明する。被覆電線11,12,13とアースEとの間の電気抵抗R1,R2,R3の低下は図6のような電気回路で検知できる。
【0044】
すなわち、図6のように、各被覆電線11〜13と抵抗値R0である各固定抵抗の一端とをそれぞれ直列接続し、抵抗値R0の固定抵抗の他端とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加し、各被覆電線11〜13とアースEとの間の電圧を測定するための測定手段として電圧計V1,V2,V3を接続する。
【0045】
電源からの所定電圧Vを例えば5V、固定抵抗の抵抗値R0を例えば1〜10KΩの任意の値とすると、被覆電線11の端末処理部23が損傷を受けずに電気絶縁性を維持した状態では、その電気抵抗R1が1MΩ以上であるので、電圧計V1の測定電圧は約5Vであるが、上述のように損傷を受けると、電気抵抗R1が0Ω近くになるので、電圧計V1の測定電圧も0V近くに低下する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1の低下を検知することができる。他の電圧計V2,V3でも同様にして電気抵抗R2,R3の低下を検知できる。
【0046】
図6では、測定手段として電圧計を用いて被覆電線とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)の低下を検知したが、これに限定されず、電流計やテスタを測定手段として用いてもよい。
【0047】
すなわち、図7のように、測定手段として電流計I1,I2,I3を固定抵抗と被覆電線とで直列接続し、抵抗値R0の固定抵抗の他端とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加する。被覆電線の電気抵抗R1が1MΩ以上のときは、電流計I1の測定値は0に近い値であるが、上述のように損傷を受けると、0Ω近くまで低下すると、電流計I1の測定値が大きくなることから、被覆電線とアースEとの間の電気抵抗の低下を検知できる。
【0048】
また、被覆電線とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)をテスタで直接測定してもよい。
【0049】
さらに、図6の電圧値や図7の電流値や被覆電線とアースEとの間の電気抵抗値を計測データとして所定の時間間隔で取り込んで記録しプリント可能なデータロガを用いることで多数点計測を簡単にかつ短時間で行うようにしてもよい。
【0050】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例について図8を参照して説明する。図8は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置の別の例を説明するための回路図(a)および表示手段の配置例を示す図(b)である。
【0051】
図8(a)(b)の例は、図3(a)(b)の被覆電線11〜17とアースEとの間の電気抵抗R1〜R7が低下したとき、表示部L1〜L7が点灯するように構成したものである。すなわち、図8(a)のように、表示部L1〜L7として発光ダイオードを用いて、表示部L1〜L7のそれぞれと抵抗値R0の固定抵抗と図3(a)(b)の被覆電線11〜17のそれぞれとを直列接続し、固定抵抗とアースEとの間に電源から所定電圧Vを印加する。
【0052】
被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗(絶縁抵抗)R1が、被覆電線11の端末処理部23が損傷を受けずに電気絶縁性を維持した状態では、その電気抵抗R1が1MΩ以上であるので、表示部L1は発光ダイオードに電流が流れずに消灯したままであるが、上述のように損傷を受けると、電気抵抗R1が0Ω近くになるので、表示部L1は発光ダイオードに電流が流れることで発光する。これにより、被覆電線11とアースEとの間の電気抵抗R1が低下したことを検知することができる。表示部L2〜L7でも同様にして発光することで各被覆電線12〜17とアースEとの間の各電気抵抗R2〜R7が低下したことを検知できる。
【0053】
図8(a)のような電気回路を図5のすべての周方向位置a〜hの被覆電線11〜17について設け、図8(b)のように表示部L1〜L7を周方向位置aの表示部L1が下端となり表示部L7が上端となるように上下方向に並べ、各周方向位置b〜hについても表示部L1〜L7を同様に並べることで、全体として表示パネル状に構成する。
【0054】
表示部L1〜L7は、図3(a)(b)のように、被覆電線11〜17の先端1(最深部)〜先端7(最高部)とそれぞれ対応するので、例えば、図8(b)で周方向位置aの表示部L1が発光すると、周方向位置aにおける中詰材の天端高が被覆電線11の先端1の近傍であることを検知できる。
【0055】
また、図8(b)のように、各周方向位置a〜hの各表示部L1〜L7の内で図のハッチングで示す表示部が発光したとすると、周方向位置bで中詰材の天端高がもっとも高く、周方向位置gで中詰材の天端高がもっとも低いことを検知できるとともに、周方向位置a〜dの範囲で中詰材の天端高が高く、周方向位置e〜hの範囲で中詰材の天端高が低いといった中詰材の天端高の分布状態を検知できる。
【0056】
上述のような中詰材の天端高の検知に基づいて、例えば、図2のリクレーマ船RSのオペレータに対しベルトコンベアBCの先端投入位置を調整するように指示することができる。また、例えば、図2のリクレーマ船RSのオペレータが図8(b)のような表示パネルを見ながらベルトコンベアBCの先端投入位置を調整するようにしてもよい。
【0057】
なお、図8(b)の周方向位置a〜hの表示部L1〜L7は、他の態様で並べてもよく、例えば、各周方向位置a〜hの表示部L1〜L7を横方向に並べてもよい。また、図8(b)は、周方向位置a〜hの表示部L1〜L7の配置位置を示すものであって、各位置に配置される表示部の発光ダイオードの形状は、ランプ状や平面状等のいずれでもよい。
【0058】
次に、本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例について図9を参照して説明する。図9は本実施形態による構造物内中詰材の計測装置のさらに別の例を説明するためのブロック図(a)およびモニタにおける表示例を示す図(b)である。
【0059】
図9の構造物内中詰材の計測装置は、図9(a)のように、図3,図5の鋼板セルSEの周方向位置a〜hに敷設された被覆電線11〜17が接続される入力部31と、入力部31に接続された被覆電線11〜17の電気抵抗を測定する測定部32と、測定部32で測定した測定値をデジタル信号(検知信号)に変換する信号変換部33と、信号変換部33からのデジタル信号が入力し演算処理や表示処理を行うパーソナルコンピュータ(パソコン、PC)34と、液晶パネルやCRTからなるモニタ35と、を備える。
【0060】
入力部31は多点計測が可能なようにデータロガを有し、周方向位置a〜hの被覆電線11〜17が接続されて各計測点を所定の時間間隔で切り替えて測定部32で各計測点の電気抵抗を測定する。各計測点は、図3,図5の周方向位置a〜hの被覆電線11〜17の先端1〜7に対応する。なお、測定部32では、図6のように電圧を測定するようにしてもよく、また、図7のように電流を測定するようにしてもよい。
【0061】
測定部32で測定した電気抵抗値が例えば0Ωに近い値であれば、信号変換部33で検知信号を出力するようにして電気抵抗値がデジタル信号に変換される。検知信号は入力部31での各計測点の切り替えと同期してパソコン34に出力する。
【0062】
パソコン34は、図9(b)のように、モニタ35の画面に鋼板セルの模式図を高さ(m)の目盛りとともに表示し、ある計測点の検知信号が入力すると、その計測点(図3の先端1〜7)から上記式(1)により演算処理し中詰材の天端高を求め、表示処理を行い、鋼板セルの模式図中に計測した中詰材の天端高をプロット表示する。図9(b)のように周方向位置a〜hについて計測した中詰材の天端高を表示することで、鋼板セル内の中詰材の天端高と、その分布状態とを簡単に知ることができる。さらに、中詰材の天端高から上記式(2)により演算処理し、中詰量を別に表示するようにしてもよい。
【0063】
なお、パソコン34は、モニタ35にすべての計測点をテーブル形式に並べて表示し、検知信号の入力した計測点を色別表示等にするようにしてもよく、図9(b)の鋼板セルの模式図とあわせて表示するようにしてもよい。
【0064】
また、パソコン34において、図5の周方向位置a〜hで計測した中詰材の天端高の最高値と、最低値との差を演算し、その差が所定値を超えたとき、ブザー音や警告灯やモニタ35での警告表示等により警告を発するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置した後に土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材を投入する際に、水中構造物の内壁に敷設した被覆電線の絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗の低下を検知することによって、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材の天端高および中詰量をリアルタイムに簡単かつ精度よく計測することができる。
【0066】
また、中詰材の天端高および中詰量の計測のための計測装置は、上述のように、複数本の被覆電線、電圧計、電流計またはテスタ、固定抵抗から構成でき、簡単な構成であるので、コストがかからずに、コスト的に有利である。被覆電線は市販の絶縁被覆が施された電線を用いることができる。
【0067】
さらに、本実施形態によれば、水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量をリアルタイムに簡単かつ精度よく計測でき、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置した後に中詰材を投入する工程で中詰材が片寄って堆積した場合には直ぐに検知できるので、中詰材の投入位置を調整等することで中詰材の片寄った堆積に迅速に対応することができる。このように、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができる。さらに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり、また、水中に濁り・気泡がなくなるまで待機する必要もなくなり、投入作業を迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【0068】
次に、図3の被覆電線の先端部の別の例について図10を参照して説明する。図10の例は、図4と同様の被覆電線11〜17を端末処理せずに先端で折り曲げてUターンさせ、被覆電線11〜17の先端に折り曲げ部29を設けたものである。被覆電線11〜17が先端の折り曲げ部29近傍で鋼板セル内で堆積した中詰材により損傷を受けると、絶縁被膜22が破壊されて脱落等することで芯線21が水中に露出する。図10の例によれば、被覆電線を単に折り曲げるだけでよく、被覆電線の先端で端末処理が不要であるので、敷設する被覆電線の構造が極めて簡単になる。
【0069】
次に、図3の複数本の被覆電線を一束にした例について図11を参照して説明する。図11(a)(b)の被覆電線束40は、複数本の被覆電線41〜55を被覆チューブ40a内に一束にまとめたものである。鋼板セルの上端10の近傍まで被覆電線束40を敷設し、上端10の近傍で各被覆電線41〜55を鋼板セルの内壁の設置位置まで延ばして敷設する。図11の例によれば、複数本の被覆電線が被覆電線束40として一束になっているので、被覆電線の敷設作業が容易となる。
【0070】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図6〜図8では、アースEを大地とし、大地接地としたが、これに限定されず、水中に接地してもよく、また、鋼板セルに接地してもよいことはもちろんである。
【0071】
また、図3では、各被覆電線の先端1〜7を鋼板セルの縦方向に等間隔に配置したが、等間隔配置に限定されず、適宜変更可能であり、配置間隔を適宜変更してよく、また、計測の必要性に応じて、被覆電線の本数を増減して計測点を増減でき、さらに、被覆電線の周方向位置も図5の配置例に限定されず、適宜変更可能であり、周方向位置の計測点を増減できる。
【0072】
また、図4の被覆電線の端末処理部23は、図4の構造に限定されず、例えば、露出させた芯線25を絶縁テープやシリコンゴムで覆うことで電気絶縁する等の構造としてもよい。
【0073】
また、敷設した被覆電線の絶縁抵抗の低下の検知法として、電圧計、電流計、テスタ、データロガの使用や発光ダイオードの点灯について説明したが、本発明は、これに限定されず、例えば、ブザー等の音や、電子合成音等を用いるようにしてもよい。また、図6〜図8の回路は一例であって、他の回路構成であってもよいことはもちろんである。
【0074】
また、本実施形態では、水中構造物として鋼板セルを例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、ケーソン等であってもよく、また、設置後に中詰材の投入が必要な他の水中構造物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の構造物内中詰材の計測方法・計測装置によれば、土砂、岩ズリ、砕石等の中詰材が投入される水中構造物における中詰材の天端高や中詰量をリアルタイムで簡単にかつ精度よく計測できるので、護岸工事等において鋼板セルやケーソン等の水中構造物を水底に設置し中詰材を投入する際に中詰材の天端高や中詰量を計測することで、中詰材の天端高の均一性を保ちながら水中構造物内への中詰材の投入作業を行うことができるとともに、中詰材の投入作業が中詰材の天端高の計測のため中断されることがなくなり迅速に行うことができ、工期短縮を実現できる。
【符号の説明】
【0076】
11〜17 被覆電線
1〜7 先端
21 芯線
22 絶縁被膜
23 端末処理部
24 熱収縮性チューブ
31 入力部
32 測定部
33 信号変換部
34 パソコン
35 モニタ
E アース
V1,V2,V3 電圧計
I1,I2,I3 電流計
L1〜L7 表示部
R1〜R7 電気抵抗、絶縁抵抗
SE 鋼板セル
T 中詰材
a〜h 周方向位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測方法であって、
水中構造物の内壁に被覆電線をその先端が前記内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、
前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、
前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、
前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することによって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする構造物内中詰材の計測方法。
【請求項2】
複数本の前記被覆電線をそれらの先端位置が縦方向に相違するように前記内壁に敷設し、前記各被覆電線の前記電気抵抗の低下を検知することにより、前記各被覆電線の先端の縦方向位置に対応して前記中詰材の天端高を複数段階で計測する請求項1に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項3】
前記複数本の被覆電線を一束にして前記内壁に敷設する請求項2に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項4】
前記被覆電線を前記内壁の周方向の異なる複数位置に敷設する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項5】
前記端末処理部は、前記被覆電線の絶縁被膜を除去して芯線を露出させ、前記導電体としての前記露出した芯線を絶縁体で覆うことで形成された請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項6】
前記被覆電線は、前記端末処理部の代わりに先端で折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部を先端として敷設され、前記折り返し部が損傷を受けて芯線が露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項7】
前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗の測定値に基づいてコンピュータが前記中詰材の天端高を検知し演算処理することで中詰量を算出する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項8】
前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示手段により表示する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項9】
水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測装置であって、
水中構造物の内壁の縦方向の所定位置にその先端が位置するように前記内壁に敷設された被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定する測定手段を備え、
前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、
前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことが前記測定手段の測定値に基づいて検知され、前記電気抵抗の低下の検知によって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする構造物内中詰材の計測装置。
【請求項10】
前記検知された中詰材の天端高に基づいて中詰量を算出する演算手段を備える請求項9に記載の構造物内中詰材の計測装置。
【請求項11】
前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示する表示手段を備える請求項9または10に記載の構造物内中詰材の計測装置。
【請求項12】
水中構造物を水底に設置するステップと、前記水中構造物内に中詰材を投入するステップと、を含み、
前記中詰材の投入ステップにおいて請求項1乃至8のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法または請求項9乃至11のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測装置を用いて前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする水中構造物施工方法。
【請求項1】
水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測方法であって、
水中構造物の内壁に被覆電線をその先端が前記内壁の縦方向の所定位置に位置するように敷設し、
前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、
前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定し、
前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知することによって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする構造物内中詰材の計測方法。
【請求項2】
複数本の前記被覆電線をそれらの先端位置が縦方向に相違するように前記内壁に敷設し、前記各被覆電線の前記電気抵抗の低下を検知することにより、前記各被覆電線の先端の縦方向位置に対応して前記中詰材の天端高を複数段階で計測する請求項1に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項3】
前記複数本の被覆電線を一束にして前記内壁に敷設する請求項2に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項4】
前記被覆電線を前記内壁の周方向の異なる複数位置に敷設する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項5】
前記端末処理部は、前記被覆電線の絶縁被膜を除去して芯線を露出させ、前記導電体としての前記露出した芯線を絶縁体で覆うことで形成された請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項6】
前記被覆電線は、前記端末処理部の代わりに先端で折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部を先端として敷設され、前記折り返し部が損傷を受けて芯線が露出することで前記電気抵抗が低下したことを検知する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項7】
前記被覆電線とアースとの間の電気抵抗の測定値に基づいてコンピュータが前記中詰材の天端高を検知し演算処理することで中詰量を算出する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項8】
前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示手段により表示する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法。
【請求項9】
水中構造物内に投入される中詰材の天端高および中詰量の計測装置であって、
水中構造物の内壁の縦方向の所定位置にその先端が位置するように前記内壁に敷設された被覆電線とアースとの間の電気抵抗を測定する測定手段を備え、
前記被覆電線はその先端で導電体が絶縁されかつ露出可能なように処理された端末処理部を有し、
前記水中構造物内での中詰材の堆積により前記被覆電線の先端で前記端末処理部が損傷して前記導電体が水中に露出することで前記電気抵抗が低下したことが前記測定手段の測定値に基づいて検知され、前記電気抵抗の低下の検知によって前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする構造物内中詰材の計測装置。
【請求項10】
前記検知された中詰材の天端高に基づいて中詰量を算出する演算手段を備える請求項9に記載の構造物内中詰材の計測装置。
【請求項11】
前記中詰材の天端高および/または中詰量を表示する表示手段を備える請求項9または10に記載の構造物内中詰材の計測装置。
【請求項12】
水中構造物を水底に設置するステップと、前記水中構造物内に中詰材を投入するステップと、を含み、
前記中詰材の投入ステップにおいて請求項1乃至8のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測方法または請求項9乃至11のいずれか1項に記載の構造物内中詰材の計測装置を用いて前記中詰材の天端高および中詰量を計測することを特徴とする水中構造物施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−196438(P2010−196438A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45807(P2009−45807)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]