説明

構造的に強化された分解触媒

実質的に不活性な芯部と活性な鞘部とからなり、該活性な鞘部がゼオライト触媒とマトリックスとを含むことを特徴とする分解触媒。前記分解触媒の製造方法及び使用方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例外的に高い活性や他の望ましい特性を有するゼオライト含有マイクロスフェアーを含む新規の流体接触分解触媒と、このような触媒の製造方法、及びこのような触媒の分解石油系供給原料の特に短滞留時間の工程での利用に関する。
【背景技術】
【0002】
精油所分解プロセスにより、ガス油や蒸留残渣などの重質の原油蒸留留分からの液化石油ガス(LPG)やガソリンなどの軽質製品の生産が可能となる。現在の分解技術は、二つの一般的なグループ、熱分解(水蒸気分解とも呼ばれる)と触媒分解に分類される。詳しくは、流体接触分解(FCC)は、低価値の重質炭化水素類を高価値の軽質蒸留物とLPGとに改良するための精油所における変換プロセスである。このプロセスは、ライザー反応器/流動床再生器系における分解反応を促進するために、ゼオライトなどの固体酸触媒を使用する。
【0003】
1960年代より、ほとんどの工業的な流体接触分解触媒は、ゼオライトを活性成分として含んでいる。このような触媒はマイクロスフェアーと呼ばれる小型粒子の形状をとり、活性なゼオライト成分と非ゼオライト成分の両方を含んでいる。この非ゼオライト系成分は、しばしばこの触媒のゼオライト系成分のマトリックスとよばれる。
【0004】
先行技術の流体接触分解触媒では、この活性なゼオライト系成分が、二つの一般的な方法の一つにより触媒のマイクロスフェアー内に導入される。一つの方法は、ゼオライト系成分を結晶化させ、別の工程でマイクロスフェアー内に導入させる。第二の方法、系内法では、まずマイクロスフェアーを形成し、次いでゼオライト系成分をマイクロスフェアー内で結晶化させ、ゼオライト系成分と非ゼオライト系成分の両方を含むマイクロスフェアーを得る。
【0005】
工業的に成功する流体接触分解触媒には工業的に望ましい活性や選択性、安定性が求められることが長年知られている。活性が十分に高く、経済的に魅力のある収量が得え、所望の生成物製造への選択性が高く、所望しない生成物を与えないことが必要であり、十分に水熱的に安定で磨耗耐性を有して工業的な有効寿命が長い必要がある。
【0006】
工業的な触媒分解プロセスにおいて、特に望ましくない二つの生成物がコークスと水素である。ガソリンの収量に対してこれらの生成物の収量がわずかにでも増加すると、大きな実用的な問題が引起される。例えば、コークスの生産量が増加すると、好ましくないことに、触媒の高発熱的な再生の際にコークスの燃焼により生成する熱が増加する。逆に、コークスの生産が不十分だと、分解プロセスの熱バランスが歪むこととなる。また、工業的な製油所では、水素などの高体積ガスを取り扱うのに高価な圧縮機が使用されている。したがって、生産される水素体積の増加は実質的に精油所の資本支出を増加させる。
【0007】
米国特許4,493,902(この記述を参照として本出願に組み込むものとする)は、約40%を超える、好ましくは50〜70重量%のγファージャサイトを含む、耐磨耗性で高ゼオライト含量である触媒的に活性なマイクロスフェアーを含む新規の流体分解触媒と、約40%を超えるナトリウムγゼオライトを、二つの異なる形の化学反応可能な焼成粘土、即ちメタカオリン(脱水酸化に伴う強い吸熱反応をするまで焼成したカオリン)とカオリンをメタカオリンの変換に用いられる条件よりも過酷な条件で焼成されたカオリンクレー、即ち独特のカオリン発熱反応をするまで焼成されたカオリンクレー(場合によってはスピネル型の焼成カオリンと呼ばれる)の混合物からなる多孔性マイクロスフェアー内で、結晶化させるこのような触媒の製造方法を開示している。ある好ましい実施様態においては、最大量のγファージャサイトがマイクロスフェアー内に晶析するまで、二つの形の焼成カオリンクレーを含むマイクロスフェアーを、加熱したアルカリ性ケイ酸ナトリウム溶液に浸漬する。
【0008】
’902特許に記載の発明を実施する場合、発熱するまで焼成したカオリンからなるマイクロスフェアーとメタカオリンとを、結晶化開始剤(種結晶)の存在下で、苛性アルカリを添加したケイ酸ナトリウム溶液と反応させ、マイクロスフェアー内のシリカとアルミナを合成ナトリウムファージャサイト(γゼオライト)に変換させる。このマイクロスフェアーをケイ酸ナトリウム母液から分離し、希土類、アンモニウムイオンまたはこれらの両方でイオン交換して、希土類またはいろいろな既知の安定化型の触媒を形成する。’902特許の方法は、高ゼオライト含量と高活性、高選択性及び高熱安定性、及び耐磨耗性の望ましいまたユニークな組み合わせを達成する手段を提供する。
【0009】
上記の方法は、広い工業的な成功をはたした。耐磨耗性を有する高ゼオライト含量のマイクロスフェアーの入手は容易であるため、コストのかかる機械的な再設計を行うことなく、特異な性能目標、例えば改善された活性及び/又は選択性を持つ製油所用のテーラーメイド触媒が入手可能である。国内外の製油所に供給されるFCC触媒の大部分がこの方法によるものである。
【0010】
FCC装置が再生器の最高許容温度または空気ブロワーの性能により制限されている製油所では、コークス生産量の減少をもたらす選択性の改良が求められており、ガス圧縮機の制限は、ガス量を減少させる触媒が望ましいとしている。コークスを少し減少させると、空気ブロワーまたは再生器温度の制限を持つFCC装置の運転で大きな経済的メリットをもたらすことができる。分解触媒の分解活性とガソリン選択性の両方の改良を同時に行えるとは限らない。したがって、ある分解触媒が非常に高い分解活性を示すとしても、この活性の結果、ガソリンの消費によりコークス及び/又はガスへの高レベルの変換が起こるのなら、この触媒の実用性は制限される。現在のFCC触媒の触媒分解活性は、ゼオライト成分と非ゼオライト(例えば、マトリックス)成分の両方に依存するものである。ゼオライト分解は、ガソリン選択的であることが多い。マトリックス分解は、ガソリン選択的でないことが多い。’902特許に記載の系内法で生産された高ゼオライト含量のマイクロスフェアーは、適当に希土類カチオンでイオン交換処理すると、高活性であると共に高ガソリン選択的となる。これらの非ブレンド型のマイクロスフェアーのゼオライト含量が増加すると、両方の活性と選択性の両方が増加する傾向を示す。これは、ゼオライト含量の増加と非選択的マトリックス分解の顕著な役割の減少に伴うマトリックス含量の減少で説明できるであろう。したがって、高ゼオライト含量のマイクロスフェアーのゼオライト含量の増加は非常に望ましいと報告されている。
【0011】
一般に、これらの触媒は、ゼオライトをマトリックス中に導入して得られる流体接触分解触媒と較べて比較的低い総空隙率をもつが、’902特許の方法で形成された触媒の活性と選択性の特徴が得られる。特にいくらかの場合では、このような触媒のマイクロスフェアーの総空隙率は約0.15cc/g未満であり、または約0.10cc/g未満である。一般に、’902特許のマイクロスフェアーの総空隙率は0.30cc/g未満である。本明細書において「総空隙率」とは、水銀ポロシメトリー法により求めた、35〜20.000Åの範囲の直径を持つ空隙の体積を意味する。’902特許は、総空隙率が約0.15cc/g未満のマイクロスフェアーがこのような活性と選択性を持つことは驚くべきことであると述べている。例えば、このような結果は、低空隙体積が「拡散上の制約から選択性の減少を導くことがある」という先行技術の開示とは反対である。
【0012】
本特許の時点で使用されていた典型的なFCC処理条件と比較すると、’902特許のマイクロスフェアーが拡散により制限されていないため、’902特許のようにして形成された触媒マイクロスフェアーの比較的低い空隙率が活性と選択性に悪影響を及ぼすとは考えられない。特に、分解される供給液との触媒接触時間は、通常5秒以上である。したがって、マトリックス中にゼオライトを機械的に導入して形成した典型的なFCC触媒はより多孔質であるが、従来のFCCライザー中での反応時間は、活性または選択性のどちら点においても利点も与えることはない。この結果は、FCC触媒中では、少なくともゼオライト構造の外側では輸送プロセスが決して制限的ではないという結論を支持している。反対の主張は事実と一致せず、身勝手な意見として容易に排除される。重要なことに、’902特許により製造されたマイクロスフェアーの耐磨耗性は、ゼオライト触媒的成分の結晶が物理的に非ゼオライト系マトリックス中に導入された従来のFCC触媒に較べて優れていた。
【0013】
しかしながら、近年、触媒と分解される供給液との接触時間を大幅に減少させるFCC装置が開発された。従来、この反応器はライザーであり、触媒と炭化水素供給液はライザーの塔底に供給されライザー中を輸送される。ライザー中の輸送の間にまたライザーからの排出後に、熱触媒が炭化水素の分解を行いこの分解生成物が触媒から分離される。この触媒は次いで再生器に送られ、ここでコークスが除かれ、このようにして触媒が洗浄され、同時にライザー反応器中の触媒に必要な熱が与えられる。新しいライザー反応器は、低滞留時間と高動作温度で作動し、コークス選択性とΔコークスを最小とする。多くの設計ではライザーを使用することなく、さらに接触時間を短縮して1秒以下としている。装置を変更することでガソリンとドライガス選択性を向上させることができる。これらの改良FCC装置は、購入触媒の種類によらない装置として販売されており、従来技術の触媒技術でもシステム的な問題を起こさないことを示している。
【0014】
より重質の供給液のFCC型プロセスでの処理のため、またこのような供給液がコークス生産を増加させ望ましくない生成物を増加させる傾向のため、供給液を触媒に接触させる新しい方法が開発された。FCC触媒を非常に短時間接触させる方法が特に興味深い。したがって、ライザー中での3秒未満の短い接触時間、また1秒以下の極めて短接触時間は、ガソリン選択性を上げ、コークスとドライガスの生産を低下させた。
【0015】
FCCでの加工の際の触媒−油間の接触時間のさらなる短縮を補償するために、使用される「平衡」触媒がより高活性となってきている。したがって、触媒総表面積の増加が必要となり、また触媒に添加する希土酸化物促進剤のレベルが増加する。また、変換率の減少を補償するために分解温度が上がってきている。残念かことに、装置の改修後、しばしば短い接触時間(SCT)FCCの際に形成される塔底物のAPI重力が増加が見られ、このためいくらかの人は、炭化水素供給液の重質部分の分解には長時間がかかると述べている。また、触媒の総表面積が高いことは重要であるが、FCCプロセスでは耐磨耗性がやはり重要である。したがって、従来の技術に関与する人には明らかではないが、現在用いられている新しい短接触時間や超短接触時間での加工用のFCC触媒の最適化が必要であるようである。
【0016】
炭化水素類の短接触時間での加工においては、現在の触媒のいまだに存在する拡散の制限を除くことでこの更なる改良を行うことができると現在考えられている。これらの材料がその用途で優れているとしてもこれはあてはまる。触媒空隙率の最適化と、活性点の閉塞の除去と、いわゆる導入法により製造した触媒中に存在するバインダー相の拡散上の抑制の除去により、これらの触媒の改良を行うことができると考えられている。
【0017】
よく用いられるU.S.6,656,347(2003年2月発行、参照として本出願に組み込む)においては、マクロ孔質なゼオライトマイクロスフェアーが形成されるが、これは十分なレベルのゼオライトを含み非常に活性であり、ユニークな形態をもち、SCT・FCC加工下では塔底物の分解が改善されていて炭化水素類を分解ガソリン生成物に効果的に変換する。本発明の新規ゼオライト系マイクロスフェアーは、米国特許4,493,902に記載の方法を変更した新規の加工法で生産される。触媒の非ゼオライト系アルミナ高含有マトリックスが、含水カオリン粒子の90重量%が2ミクロン以下であり粒子サイズをもつ極微細の含水カオリン源であって微細化後に発熱焼成したもの由来のものである場合、マクロ孔質のゼオライトマイクロスフェアーが生産可能であることが明らかなった。より一般的には、FCC触媒のマクロ多孔度を達成する本発明で有用なFCC触媒マトリックスは、触媒マトリックスの形成に用いられる先行技術の焼成カオリンとは異なる特定の水孔体積を有するアルミナ源、例えば発熱焼成したカオリンなどに由来する。この水孔体積は、上記特許に記載の初期スラリーポイント(ISP)試験によるものである。
【0018】
生成するマイクロスフェアー触媒の形態は、前もって形成した系内マイクロスフェアー触媒と較べてユニークである。微細化された発熱焼成した極微含水カオリンを使用すると、結晶化後にその構造のマクロ孔がゼオライトで実質的に覆われているか縁取られているようなマクロ孔構造を持つ系内ゼオライトマイクロスフェアーが得られる。本明細書の「マクロ孔質」とは、その触媒が、空孔直径範囲が600〜20,000Aであり、水銀侵入度が少なくとも0.07cc/gm、好ましくは少なくとも0.10cc/gmであり、総空隙率が0.30cc/gより大きなマクロ孔体積を持つことを意味する。このマクロ孔質触媒のBET表面積は500m2/g未満である。FCC加工では、これらの触媒が、例えば炭化水素供給液が約3秒間以内で触媒に接触させられるような短接触時間加工に最適であることが明らかとなった。
【0019】
U.S.6,656,347に記載のマイクロスフェアー触媒は、マクロ孔性のため触媒中への拡散が早くまたマトリックスの分散が早くなる形態を有しており、ゼオライトが空孔の壁面に自由に塗布されている限り、ゼオライトへの接近が最も容易となる。「自由に」とは、ゼオライト相がマトリックスの表面に存在し、いずれのバインダー相によってもさえぎられていないことを意味する。従来の導入触媒もよく似たマクロ孔性を持つため、マクロ孔性を有しているだけで上記の結果が得られるわけではない。したがって、驚くべき選択性の結果を与えるのは、空隙率とゼオライトが塗布されたマクロ孔壁面の組合わせである。
【0020】
6,656,347に準じて形成されたマクロ孔質ゼオライトマイクロスフェアーはガソリンやプロピレンの収量の改善などで巾広い工業的な成功を収めた。しかしながら、これらの高空隙体積触媒は、短接触時間FCC加工においては、まだ部分的に物質移動により制限を受けていると考えられている。残念ながら、これらの触媒は高空隙率であるため、これらの触媒は、耐磨耗性において、U.S.4,493,902または6,696,378に開示されている技術で形成された従来の系内FCC触媒より劣る。しかし、高空隙体積触媒の低い耐磨耗性は、公的機関による規制対象となりうる、再生器の煙突不透明性に、即ち粉塵排出の増加に敏感な特定のFCC装置での利用を制限することとなる。このように制限を受ける製油所は、高空隙体積触媒により高収量で得られる高価値ガソリンやプロピレンの利益を手に入れることができない。むしろ、これらの規制は、間接的に製油所に、低不透明性で低摩耗減量値の触媒の使用を強制し、わざとガソリン収量の低下を招いている。
【0021】
U.S.4,493,902または6,696,378に開示されているように、上記技術で生産されたものなどの低空隙体積の系内ゼオライトマイクロスフェアーの形成も、高ゼオライト含量マイクロスフェアーの活性、またこのような触媒の好ましい耐磨耗性のため工業的な成功をみた。しかしながら、低空隙体積触媒の優れた耐磨耗性を持ち、U.S.6,656,347に開示されている触媒と同等の改善されたガソリンやプロピレン収量を与えるFCCゼオライト触媒マイクロスフェアーを提供することも有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以下に示すのは、本発明のいくつかの側面の基本的な認識のための発明の要約である。この要約は本発明を詳細に述べるものではない。本発明の鍵となる要素あるいは重要な要素を示すものでなく、また本発明の範囲を示すものでもない。むしろ、この要約の唯一の目的は、本発明のいくつかの概念を単純な形で、また以下に記すより詳細な説明の前書きとして提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
触媒体積の大部分がマトリックスとゼオライトトを含む活性鞘部にあり、触媒体積の一部が実質的に単位体積当たりの活性が低い、好ましくは単位体積当たりの分解活性がほとんどない芯部にある芯鞘型FCC触媒が記載されている。したがって、触媒の外側から利用可能な活性触媒を通過する拡散経路の長さは、芯部を有さないが全体として同一のマイクロスフェアー直径をもつ従来の触媒より小さい。
【0024】
ある実施様態においては、鞘部は従来の系内触媒と比較して低い空隙体積を有し、したがって鞘部は磨耗耐性が非常に高く、この触媒は微粉排出量が少なく煙突不透明性が低い。しかしながら、拡散経路長が短いため、同等の空隙体積と耐磨耗性をもつ従来の系内触媒より分解収量が改善された。
【0025】
もう一つの実施様態においては、鞘部が、高い空隙体積を有し、上記のU.S.6,656,347の特許取得済の構造的に強化された分解触媒に特徴的なマトリックス上にマクロ孔質ゼオライトが乗った形態を有している。この改良は、拡散経路長を短縮するほぼ不活性の芯部の存在にあり、これは、新規の芯鞘型触媒の短い接触時間条件下においてガソリンなどの主たる分解生成物中の収量を、特許取得済のマクロ孔質触媒以上にさらに改善すると考えられる。
【0026】
他の実施様態においては、この鞘部がなんらか型の活性な触媒的分解機能を持っていてもよく、金属類不動態化や耐磨耗性等のFCC性を向上させる他の特徴を持っていてもよい。
【0027】
さらに他の実施様態においては、この不活性な芯部/活性な鞘部が、導入FCC触媒の製造に既に使用されている既知の成分や方法を用いて製造できる。例えば、既知の導入FCC触媒の製造方法が使用できる。新規なのは、本発明の活性芯部/不活性鞘部の構造である。
【0028】
さらにもう一つの本発明の側面は、炭化水素供給流を、実質的に不活性な芯部と活性な鞘部(なお、該活性鞘部はゼオライト触媒とマトリックスとを含む)を含有する分解触媒に、FCC反応器内で適当な温度で接触させる分解プロセスに関する。
【0029】
上記の目的また関連する目的を達成するために、本発明は、以下の記載されるまた特に請求項において指摘される特徴を含んでいる。以下の明細書及び添付図面により、本発明の特定の側面とその意義とを詳細に述べる。これらは例示であって、本発明の原理が用いられるいろいろな方式のいくつかの例に過ぎない。本発明の他の目的や利点新規の特徴は、以下の発明の詳細な説明を図面とともに考慮することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例18〜23で求めた触媒性能を示す棒グラフである。
【図2】図2は、実施例18〜23で求めた触媒性能を示す棒グラフである。
【0031】
本明細書に記載のFCC触媒は、従来のFCC触媒と比較して、耐摩耗性を維持したまま本触媒プロセスにより生産される分解生成物、例えばガソリン及び/又はプロピレンの収量を改善するか、分解生成物の収量を犠牲とすることなく耐磨耗性を向上させる。一方を改善すると他方が低下するため、収量増と耐磨耗性の改善を同時に行うことは難しい。従来の技術は、これらの二律背反の性能曲線上を上下する方法を与える。本明細書に記載のFCC触媒は、先行技術の性能曲線から離れて運転する手段を提供する。本発見の一側面は、この物質移動がFCC触媒プロセスの制限の原因であると認識することによる。本明細書に記載のFCC触媒が物質移動の問題を引起す様式の一つは、本触媒中の拡散経路の長さを低下させることである。
【0032】
触媒体積の大部分がマトリックスとゼオライトトを含む活性鞘部にあり、触媒体積の一部が実質的に単位体積当たりの活性が低い実質的に不活性な芯部にあるように芯鞘型FCC触媒が提供される。ある実施様態においては、この芯部には単位体積当たりの分解活性がほとんどない。したがって、触媒の外側から存在する活性な触媒を通過する拡散経路の長さは、実質的に不活性な芯部を持たないため、全体としての同じ径をもつ従来の触媒より短い。大量または大部分とは50%以上を意味し、少量または一部は50%未満を意味する。
【0033】
一般に、FCC触媒は、体積で50%〜約95%の活性な鞘部と体積で約5〜50%未満の実質的に不活性な芯部をもつ。特に、FCC触媒は、約60〜約90体積%の活性な鞘部と約10〜約40体積%の実質的に不活性な芯部とを有する。より好ましくは、FCC触媒は、約65〜約85体積%の活性な鞘部と約15〜約35体積%の実質的に不活性な芯部を有する。約70〜約80体積%の活性な鞘部と約20〜約30体積%の実質的に不活性な芯部を持つFCC触媒も好ましい実施様態に含まれる。
【0034】
一般に、FCC触媒は、約50〜約100ミクロンの全体平均粒度(直径)を、好ましくは約60〜約90ミクロン、より好ましくは約70〜約85ミクロンの全体平均粒度を有する。
【0035】
全体のFCC触媒粒度と実質的に不活性な芯部と活性な鞘部の厚みの相対的な大きさは、目的のFCCプロセスの具体的な要望に応じて選択される。例えば、一般的に、実質的に不活性な芯部が大きくなると拡散経路長が短くなるため、得られる選択性が高くなる(高選択性とは、望ましくない分解生成物、例えばコークスやガスの収量を大幅にあるいは一部削減しながら所望の分解生成物であるガソリン/ポリプロピレンの収量を増加させることをいう)。これ対して、一般に活性な鞘部の厚みが増加すると活性な触媒の量が層化するため、より高活性が得られる。
【0036】
一般に、実質的に不活性な芯部の平均粒度(直径)は、約30〜60ミクロンである。好ましい実施様態においては、この実質的に不活性な芯部の平均粒度は、約35〜約55ミクロン、あるいは約40〜約50ミクロンである。
【0037】
一般に、この活性な鞘部の平均厚み(実質的に不活性な芯部の外表面からFCC触媒粒子の外表面)は、約5〜約30ミクロンである。好ましい実施様態においては、鞘部の平均厚みが約7〜約25ミクロン、または約10〜約20ミクロンである。
【0038】
本発明の触媒に経済的な制約が課せられない場合には、触媒に有用な組成物は実質的に変化しうる。拡散の制限を完全に除くために、鞘部の厚みを数ミクロンにまで低下させることもできる。鞘部厚みの5μmは、触媒の体積の約1/3に相当し、これが、精油所では経済的に好適であろう。また、45μmより大きいな鞘部厚も希釈効果が小さいため魅力的であることもあり、これがまたいくらかの収量増をもたらすであろう。上記以外の芯鞘型の直径や厚み、相対体積も、本発明の範囲の中に含まれると考えるべきである。
【0039】
実質的に不活性な芯部の表面のすべての箇所が、活性な鞘部で覆われている必要はない。ある実施様態においては、この活性な鞘部が、実質的に不活性な芯部表面の少なくとも約60%を覆うか囲んでいる。もう一つの実施様態においては、この活性な鞘部が、実質的に不活性な芯部表面の少なくとも約75%を覆うか囲んでいる。更に別の実施態様においては、この活性な鞘部が、実質的に不活性な芯部表面少なくとも約90%を覆うか囲んでいる。さらに他の実施様態においては、この活性な鞘部カバーが、実質的に不活性な芯部表の実質的にすべてを覆うか囲んでいる。
【0040】
具体的な分解化合物や分解の目的産物、分解プロセスの制約などの多くの因子にもよるが、この活性な鞘部は、比較的に低い空隙体積、即ち0.30cc/gm未満、好ましくは0.25cc/gm未満の総空隙率を有しても、あるいは比較的に高い空隙体積、即ち0.25cc/gmを超える、好ましく0.30cc/gmを超える総空隙率、(40−20,000オングストローム直径)を有してもよい。活性な鞘部が比較的に低い空隙体積を有してもよい実施様態においては、この活性な鞘部が耐磨耗性であり、触媒が微粉をほとんど生成せず、不透明なばい煙を生成しないことが望ましい。本明細書に記載のFCC触媒の拡散経路長の低下のため、実質的に不活性な芯部を有さない従来の触媒と比較すると、両触媒が同じような空隙体積と耐磨耗性を有しているとしても分解収量が改善される。
【0041】
活性な鞘部が比較的に高い空隙体積を有してもよい実施様態においては、本触媒プロセスにより、上述の構造的に強化された分解触媒や他の実質的に不活性な芯部をもつより古い触媒と比較して、高収量の分解生成物、例えばガソリンが得られる。何らかの理論に拘泥するわけではないが、実質的に不活性な芯部は、拡散経路長を短縮して分解生成物収量の向上をもたらしているようである。比較的に高い空隙体積を持つ先行技術のFCC触媒は、比較的低い耐磨耗性を有するが、その高い空隙体積はガソリン生成量を最大とするために有用である。触媒空隙体積をさらに増加させるとガソリン収量に影響を与えるかどうかは不明であり、実際、多くの人が考えるように、粒子内物質移動が決して制限を与えるのでないなら改良は期待できない。また、「再生器煙突不透明性」やエキスパンダー触媒の析出などの触媒磨耗損失への実際的な制約が、実際に触媒空隙体積を増加できる限度を制限する。したがって、高空隙体積によりガソリンのさらなる改良が実質的にできなくなる。
【0042】
本発明の触媒を製造する最も効果的な方法は、適当な径の不活性の(芯部)マイクロスフェアーを、先行技術の触媒前駆体の噴霧乾燥用スラリーに添加し、この混合物を噴霧乾燥して、通常必要とされるFCC触媒粒度を得ることである。先行技術の触媒前駆体スラリーの非制限的な例が、例えば、γゼオライトの製造によく用いられる米国特許4,493,902;6,656,347;6,673,235;6,696,378;6,716,338や、ZSM−5の製造に用いられる米国特許7,344,695に開示されている。なお、これらの記述すべてを、引用として本出願に組み込むものとする。この噴霧乾燥工程により、実質的に均一とはいえないものの、先行技術の系内反応性の前駆体の鞘部で、不活性の芯部を覆う塗装が可能となる。この実質的に不活性な芯部は、触媒的分解プロセスに直接関与しない、あるいはほとんど関与しない材料を含んでいる。不活性の芯部の性質が適当なら、噴霧乾燥後の結晶化(下記)で、主として活性な鞘部に含まれるゼオライトと活性なマトリックス残渣と、内部の実質的に不活性な芯部に残存する、あるとしても比較的少量の残存ゼオライトまたは活性マトリックス表面を生成する。
【0043】
ストックウェルらの鞘被覆のFCC触媒(U.S.5,082,814)は、芯鞘型FCC触媒の製造方法を提供する。FCC触媒の粒径が非常に小さい(75〜82μmAPS)ため、従来の塗装方法およびマイクロカプセル化方法は利用できないか及び/又は不経済であった。本特許の方法は、本発明の触媒を製造するための本発明の製剤に応用された。簡単に説明すると、混合することなく芯材を懸濁するのに十分な低剪断で一定粘度を有するスラリーを調整し、この材料を噴霧乾燥した。残る加工は、先行技術と同様に、本組成物が均一であるとして行った。低剪断でも高粘度であるということが、管内の線速度が十分低いため、管内で芯部が析出して管を閉塞させるようなパイロットプラントや、供給タンク中のスラリーが連続的に攪拌されていないパイロットプラントスケールで主に必要となる。もしこれが修正されないなら、鞘部の低均一性や鞘部の低負荷量に導く。線速度が十分に高い場合は、噴霧乾燥機ヘの管内では主に乱流が発生し、層流に必要な低剪断で高粘度は不必要となるであろう。もちろん、噴霧乾燥スラリーは、高せん断で十分低粘度であり、容易にポンプ輸送されて気化する必要がある。すなわち、このスラリーは、ダイラタント流体でなく擬似塑性流体として挙動する必要がある。周知のように擬似塑性的な増粘効果を与えるのにカルボキシメチルセルロースを添加することができる。あるいは、増粘のためにカオリンスラリーを多量に分散させてもよい。また、この目的のためにケイ酸ナトリウム溶液がよく使用されている。スラリー中のケイ酸ナトリウムのレベルが粘土の分散に必要なレベル以上であると、もちろん粘土のゲル化を引起こし、噴霧乾燥後には、ケイ酸ナトリウムがマイクロスフェアー前駆体のバインダーとなる。一般に、輸送、製造、およびゼオライト結晶化の初期に、マイクロスフェアーを保持するのにバインダーが必要となる。この場合には、このバインダーはゼオライトが成長するまで芯部の上に鞘部を保持し、成長するとこのゼオライトが本発明の触媒のバインダーとなる。
【0044】
系内処理を用いる場合、芯材の組成と構造が、芯内でのゼオライトの核形成及び/又は成長を除くか、最小限に抑えるのに重要である。この芯部は、好ましくは最小限のメソポーラスマトリックス表面積と最小限の結晶化後の分解活性を有する。上記のよく使用される先行技術特許に記載の不活性カオリン活性低下性(配合)マイクロスフェアーが、特にムライトの収量増加のための焼成後に、好適な不活性芯材となることが見出された。これらの芯部マイクロスフェアーは、分散カオリンを目的粒度にまで噴霧乾燥し、マイクロスフェアーを焼成して、嵩密度が実質的に増加し、空隙体積の減少とムライト含量と結晶子サイズを増加するように焼成して、比較的に高比率の、即ち>20%、好ましくは>40%のムライトとして形成される。焼成は、>2050°Fで、好ましくは>2100°Fで、理想的には>2300°Fで約2〜4時間行う。このような条件下では、ムライト結晶子のサイズが大きく、ゼオライト結晶化の際にリーチング後に露出するマトリックス表面積が小さく、具体的には<100m2/gであり、好ましくは<50m2/g、理想的には<40m2/g)である。低空隙体積とするための焼成は、ゼオライトが成長可能な空間を制限し、その結果として、低ゼオライト、低マトリックス面積、低活性、準不活性の芯部を与える。
【0045】
あるいは、適当な径のαアルミナマイクロスフェアーを形成するために、よく似た温度で焼成されたギブサイト凝集体から不活性芯部を形成してもよい。αアルミナ材料の表面積と空隙体積は最小と考えられ、このような材料がゼオライトの結晶化を干渉するとは考えられず、焼成カオリンマイクロスフェアーの代替物として好適である。
【0046】
組成物への不活性芯材の添加量が増えるにしたがって、触媒中のゼオライト量と触媒の活性が低下するのは当然であろう。したがって、芯部の径を増加すると、鞘部の厚みと拡散経路長が低下するため、ある一定の全体触媒粒度での選択性のために好ましいが、表面積と活性の低下のため、ある点で増加が不可能となる。上記のよく用いられる特許の触媒は、通常、水蒸気処理された表面を、200m2/gより大きな、好ましくは少なくとも230m2/gの表面積で有している。本発明の触媒が、同程度の水蒸気処理活性を持っていない場合に、高活性材料を低活性材料で置換すると、製造プラントと製油産業の両方に正味で経済的な損失を与えることとなろう。
【0047】
しかしながら、経済的に望ましい表面積や分解活性は、従来から使用されているFCC触媒のものに較べてずっと大きい。導入触媒は、通常、ゼオライト粉とカオリンと任意の顆粒状アルミナマトリックスと無機バインダーの混合物を噴霧乾燥して製造される。この導入触媒技術は、主に無機バインダーの選択に差があり、ほとんどの市販の触媒は、アルミニウムで安定化されたSiO2ハイドロゾル、分散可能な擬ベーマイトバインダーで強化されたシリカ、またはアルミニウムクロロハイドロバインダーを使用している。通常、これらの系は、25〜35%のγゼオライトを含み、水蒸気処理表面積が120〜140m2/gであり、時には約175m2/gの高表面積となることもある。したがって、本発明の触媒は、水蒸気処理表面積が少なくとも100m2/gであれば、好ましくは少なくとも120m2/g、最も好ましくは140−150m2/gであれば、有用であるとみなされる。しかしながら、先行技術の高活性からの経済的な圧力が大きく、上記の必須要求性能を高レベルに設定する必要がある。
【0048】
本組成物にかかる実際的な制約を理解するには、本発明にかかる経済的な制約を認識することが必須である。不活性の芯部の添加で先行技術の触媒の活性が希釈される場合、活性の希釈を実際に克服するには、何らかの手段を講ずる必要がある。FCC触媒の表面積と活性のほとんどはゼオライトに由来するが、よく用いられる先行技術のゼオライト含量は、すでに化学量論的なあるいは利用可能な空隙空間的な限界に達している。希土類でのイオン交換でゼオライトの活性が上がるが、希土類レベルは、任意の変数ではなく、実際はオクタンとプロピレンを考慮した上での制限がかかっている。したがって、本発明の触媒において、不活性の芯部での希釈を克服するのに十分な量で、水熱養生に対するゼオライトの安定性を向上させることが有用である。事実上、芯部の比率と直径の実際的な限度または鞘部の厚みの限度は、本発明のゼオライト安定性がどれほど改善されるかにより決まる。
【0049】
簡単に述べると、上述の米国特許4,493,902;6,656,347;6,673,235;6,696,378;6,716,338、及び7,344,695に記載のように、本発明の芯鞘型触媒の鞘部の全体は、系内でγゼオライト及びZSM−5の形成に用いられる既知の前駆体スラリーから形成されている。したがって、本発明のFCC芯鞘型触媒は、一般的には実質的に不活性な芯部マイクロスフェアーを当業界では公知のゼオライト/マトリックス前駆体スラリーに添加し、このスラリーを噴霧乾燥することにより提供される。
【0050】
FCC触媒を製造するプロセスには、いくつかの作業が含まれる。活性鞘部前駆体と実質的に不活性な芯部マイクロスフェアーを水中に分散する。活性鞘部前駆体の例としては、含水カオリンや、ベントナイトまたはアタパルジャイトなどの他の粘土、メタカオリン、ムライト含有又は非含有の焼成発熱性カオリン、ムライト、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、種々の焼成アルミナ、焼成シリカ、焼成アルミナ−シリカ、またもちろんこれらの混合物があげられる。ゼオライト開始剤とケイ酸ナトリウムの原料を、この前駆体スラリーに添加してもよい。
【0051】
必要に応じて用いられるこのゼオライト開始剤は、多くの原料から供給され、上述のよく用いられる米国特許中に記載されている。例えば、このゼオライト開始剤が、結晶化工程中で生産された回収微粉末を含んでいてもよい。使用可能な他のゼオライト開始剤としては、ケイ酸ナトリウム溶液中での、他のゼオライト製品または非晶質ゼオライト開始剤の結晶化工程で得られる微粉末があげられる。本明細書において、「非晶質のゼオライト開始剤」は、X線回折により検出可能な結晶性を示さないゼオライト開始剤を意味する。
【0052】
このスラリーを噴霧乾燥機に導入する。噴霧乾燥により、必ずしも均一ではないが本質的に不活性な芯部を覆う前駆体鞘部が効果的に形成される。この実質的に不活性な芯部の性質が適当なら、続くアルカリの添加、例えば水酸化ナトリウムと、ケイ酸ナトリウムと、必要に応じて核剤の添加による系内法での結晶化で、主に触媒鞘部に偏在するゼオライトと活性なマトリックス残渣と、内部の実質的に不活性な芯部に残留する比較的少量のゼオライト含量または活性なマトリックス表面積とを与える。所望のカオリン含有及び/またはアルミナ含有先駆体の相対量、これらと苛性アルカリ及びケイ酸塩の比率および反応プロセス条件の温度とpHと期間などの既知の系内結晶化条件下では、触媒の重量に対して約30〜70重量%のゼオライトが結晶化する。
【0053】
系内結晶化ゼオライト含有マイクロスフェアーの製造分野では周知のように、結晶化プロセスの終了後、少なくともその母液の大部分から、マイクロスフェアーが活性な鞘部中に結晶化したゼオライトとともに分離される。これは、例えばベルトフィルターでろ過することで行うことができる。残存する母液をマイクロスフェアーから洗い流すため、また実質的に残留母液を含まない芯鞘型マイクロスフェアーを得るために、ベルトフィルターの末端部分でマイクロスフェアーを水に接触させてもよい。
【0054】
当業界では周知のように、ベルトフィルターで母液から結晶化反応生成物を濾別後、このプロセスの次の作業は、シリカの保持によりマイクロスフェアーのマイクロポア体積を減少させることが望ましいかどうかにかかるが、またもしそうなら、どれほど減少さえるべきかどうかにかかる。シリカ保持がもし望ましいなら、これを以下の二つのプロセスのどちらかで行うことができる。
【0055】
第一の方法においては、活性な鞘部中に晶析したマイクロスフェアーとゼオライトは、ゼオライト結晶化母液から分離されるが、母液の一部は、マイクロスフェアー内に入ったままとする。これは、マイクロスフェアーを水で洗浄することなく、単にマイクロスフェアーをベルトフィルターで濾過することで実施できる。このマイクロスフェアーを次いで乾燥し、母液(ケイ酸ナトリウムを含む)の一部をその中に含ませる。
【0056】
第二の方法では、ベルトフィルターで分離されたマイクロスフェアーがケイ酸塩接触装置に導かれ、そこでケイ酸ナトリウム溶液、例えば約20重量%のケイ酸ナトリウムを含む溶液に接触させられる。ある実施様態においては、ケイ酸ナトリウム溶液をマイクロスフェアーの床中に移動させて接触させる。次いで、このマイクロスフェアーを乾燥し、ケイ酸ナトリウムの一部をその中に封入する。いずれの方法においても、乾燥は、好ましくはフラッシュ乾燥機内で、空気入口温度が約約800°Fで行われる。
【0057】
ベルトフィルターで濾過されたマイクロスフェアーは、結晶化されたゼオライトをナトリウム型で含んでいる。通常、このマイクロスフェアーは、約5重量%を超える量のNa2Oを含んでいる。ある実施様態においては、FCC触媒を製造するのに、マイクロスフェアー内のナトリウムイオンのかなりの部分が、アンモニウムまたは希土類イオンまたは両方イオンでイオン交換により置換される。
【0058】
イオン交換は、いくつかの既知の異なるイオン交換法により行われる。ある実施様態においては、pHが約2.7〜約7で、このマイクロスフェアーをまず硝酸アンモニウム溶液で1回以上交換する。アンモニウムイオンでのイオン交換の後で、pHが約2.7〜約7で一回以上、希土類イオンでイオン交換してもよい。この希土類は、単一希土類材料として提供してもよいし、希土類材料の混合物として提供してもよい。これらの希土類は、通常硝酸塩または塩化物の形で提供される。通常、このFCC触媒は、イオン交換により、1〜10重量%のREOと約0.7重量%未満のNa2Oを含むようにされ、より具体的にはNa2Oが約0.25重量%となるようにされる。
【0059】
イオン交換の終了後、活性な鞘部と実質的に不活性な芯部を有するこのFCC触媒マイクロスフェアーを濾過し乾燥する。完全のイオン交換を行うには、一回以上の中間焼成作業を行う必要がある。実質的に不活性な芯部マイクロスフェアーを噴霧乾燥するスラリーに添加することを除いて、米国特許4,493,902;6,656,347;6,673,235;6,696,378;及び6,716,338(これらの文献は、参照として本願明細書に組み込むこととする)に記載される一般的なプロセスを、FCC触媒の製造に用いてもよい。
【0060】
外側の鞘部を形成する好ましい前駆体組成物のより具体的な例を以下に示す。これらの例とともに、系内で結晶化されたゼオライトとマトリックスを含む外側の鞘部を形成するこれらの好ましい前駆体組成物が、本発明の芯鞘型FCC触媒の有用で非限定的な例である。上述のように、γゼオライトとZSM−5を含む系内ゼオライト形成用の組成物は、当業界では公知である。
【0061】
本発明の触媒に経済的な制約が課せられないなら、有用な触媒組成物はかなり大きく変化する。しかしながら、経済的な制約や物理的性質上の制約を課したうえで、最も好ましい組成物が決められた。この前駆体マイクロスフェアーの組成物は、25部の含水カオリン、25部のスピネル型焼成カオリン、25部のムライト型カオリン粉末、及び25部の平均粒度が約45μmのよく結晶化したムライト型の芯部マイクロスフェアーを含んでいる。化学量論的には、この製剤は結晶化生成物中で約48%のNaγを与える。非常に大雑把ではあるが鞘部と芯部が同じ密度をもつと仮定すると、鞘部の厚みは約15μmで、マイクロスフェアー全体の直径は75μm以上である。
【0062】
好ましいカオリンは、U.S.6,656,347に記載されている。好ましくはこの含水カオリンがLHTであり、スピネルはアンシレックス−93であり、ムライト粉末はM−93である。これらはすべてBASF社の製品である。ムライトの芯部は、上述のとおりである。当業界では周知のように、他のカオリン粉末供給原料を使用することもでき、もしこれらが使用される場合は、U.S.6,656,347に記載のように、前駆体マイクロスフェアーにおいて水銀空隙体積にいくらかの変動が予測され、また、このため最終の触媒空隙体積と耐磨耗性によく似た変動が予測される。最も好ましい焼成カオリンが50〜60%固体で最小の高せん断粘度のスラリー中で製造され、最も好ましい含水カオリンと、ケイ酸ナトリウムバインダー含量が合計のカオリンに対して6%SiO2である芯材とともに用いられる場合、鞘部の空隙体積と耐磨耗性は、U.S.6,656,347のそれに、つまりガソリンを最大とする高空隙体積に近くなる。製造(または好ましくはISP)後のスピネルまたはムライトスラリー固体が低い場合、得られる触媒空隙体積は高くなるであろう。U.S.6,656,347に記載のように、コントロールされた又は特定の空隙体積と耐磨耗性性質を有する本発明の触媒を得るために、必要に応じて、本発明のマイクロスフェアー前駆体とともに、少量の反応性のメタカオリンマイクロスフェアー、ゼオライト結晶化プロセスに添加することができる。
【0063】
その場合ある実施様態においては、ほとんど又は全くメタカオリンマイクロスフェアーが結晶化に添加されず、本発明の生成物は、鞘部において、U.S.6,656,347の高い空隙体積と適度な耐磨耗性を有する。この生成物は、同程度の空隙体積であるが拡散経路長が短いため、U.S.6,656,347より事実上大きなガソリン及びコークス収量を持つと予想される。
【0064】
もう一つの実施様態においては、大量(通常7.5%)のメタカオリンマイクロスフェアーが本発明の芯鞘型マイクロスフェアーの結晶化に添加され、U.S.4,943,902、U.S.6,696,378、またはU.S.6,716,338と同等の低空隙体積でより耐磨耗性高い鞘部が形成される。低空隙体積はガソリンの収率を低下させる方向だが、芯鞘構造のため、この実施様態のガソリン収量は、U.S.6,696,378よりも大きく、より大きな空隙体積の先行技術触媒U.S.6,656,347と同等となる。しかしながら、この実施様態は、U.S.6,696,378の優れた耐磨耗性をも有し、ある意味では従来不可能であった二つの技術の利点を併用している。一般に拡散支配型の問題の解決にための触媒では、芯鞘型の概念はよく知られているが、この場合において、低活性または不活性の芯部の比率がかなり高く、活性な分解鞘部の厚みと耐久性がかなり高く、工業利用のための調整や妥協がなくても好適な水蒸気処理表面積をもつFCC用芯鞘型触媒を製造することができるかどうかは明らかでない。これらの障害のために、この発見に至るのが大幅に遅れた。実際、10年以上の長きにわたって粒子内での拡散の制限が理論的に示されていたのだが。
【0065】
多くの因子が、たとえばマトリックスの相対活性が、FCC触媒でのガソリン等の収量に悪影響を与える。マトリックス活性を増加すると、一般的にはLC/塔底物の収量比率を増加させ、場合よってはガソリンまたはコークス収量を増加させる。U.S.6,656,347に記載のように、スピネル型カオリンとムライト型カオリンの比を増加させることで、あるいは発熱焼成された一部のカオリン中のムライトの結晶性を低下させることで、このマトリックス活性を増加させることができる。本発明の触媒のゼオライト安定性が望ましい程度にまで改善されると、最も好ましい25スピネル−25ムライト組成が、工業的に利用されているU.S.6,656,347に近い水蒸気処理ゼオライト/マトリックス表面積比率を与える。他の組成物も成功裏に使用できるかもしれないが、これらの比率とゼオライト上での同等レベルの希土類の使用により、二次的な人為要素なくして本発明と先行技術間の分解収量の直接的な比較が可能となる。U.S.6,656,347の最も好ましい生成物が、市場にむけて最適化されており、実際にはこれらの性質がまた最も有用である。
【0066】
US6,656,347(ストックウェルら、構造的に強化された分解触媒)は、組成比と、それに伴なう焼成カオリンからの系内でのNaγゼオライトの結晶化に対する仮定を示している。芯材がムライトである場合、結晶化の際の芯鞘型マイクロスフェアーの組成は、このムライトの分離量を単に反映するのみあり、この結晶化は、通常は、芯材がマイクロスフェアー内に均一に分散したかのように進行する。カオリンのムライトへの焼成の間に生成する相分離したSiO2は、ほとんど溶解し、芯部の空隙率を上げ、分解活性のあるムライト表面を露出させる。この理由で、芯部のムライト結晶子が比較的大きいことが重要である。
【0067】
もう一つの実施様態においては、これまで述べてきたカオリンのみの製剤の上に、金属類許容性が与えられる。U.S.6,673,235(ハリスらのニッケルとバナジウムを含有する流体用のFCC触媒)では、マクロ孔質触媒に、金属類不動態化アルミナ、即ち分散可能なベーマイトアルミナを含む壁面を自由に覆うゼオライトが与えられているが、マイクロスフェアーの性質は、空間的に均一でランダムである。本発明の触媒は、U.S.6,673,235に記載の触媒の性質が鞘部において再現されているがマイクロスフェアーの中心は不活性か低活性の芯部である改良である。最も好ましくは、芯部の直径が約45μmであり、鞘部の厚みが平均して約15〜18μmであり、鞘部がマクロ孔質で従来の耐磨耗性を有するものである。この組成物の耐磨耗性は、従来と変わらず、U.S.6,673,235に相当するが、ガソリン等の収量は、U.S.6,673,235より優れていると考えられる。
【0068】
更に別の実施態様においては、低煙突不透明性用途に必要な、金属類許容性と優れた耐磨耗性を有し、さらに分解収量が先行技術より改善された芯鞘型触媒が提供される。この実施様態は、不活性の芯部をU.S.6,716,338またはU.S.6,673,235の触媒に添加して得られる。後者の場合、他のメタカオリンマイクロスフェアーが結晶化に加えられる。U.S.6,716,338は、マクロな穴あるいは壁面を自由に覆うゼオライを有さない金属許容型触媒を提供する。ガソリン収量は、U.S.6,673,235に対して減少するが、耐磨耗性と煙突不透明性で優れている。U.S.6,716,338を鞘材として用いてできた本発明の触媒は、優れた耐磨耗性を示すであろうが、新しい芯鞘型構造のためガソリン収量が増加し、U.S.6,673,235と同等になるであろう。U.S.6,673,235が鞘材として用いられる場合、結晶化の際に追加のメタカオリンマイクロスフェアーが添加されると優れた耐磨耗性が得られることとなる。他の場合と同様に、これが、制限試薬であるアルミナが結晶化の際により多く存在するようにさせ、このためゼオライト収量が増加し、空隙体積が減少し、耐磨耗性が向上する。メタカオリンを含まない本発明に対して分解収量でいくらかの犠牲がでるが、収量はU.S.6,673,235と同等で、U.S.6,716,338よりも優れているようである。
【0069】
好ましい触媒のすべてが、マイクロスフェアー中でのゼオライトの系内成長で製造された。しかしながら、芯鞘型技術の経済的な側面から、導入経路を用いる本発明の触媒の製造が可能となる。この場合に、ゼオライト粉末とカオリン、必要に応じて顆粒状アルミナ、及び無機バインダーが、通常通り噴霧乾燥されるが、その場合の改良は、不活性または低活性の芯材を噴霧乾燥用の製剤に添加することである。実用的な考察と経済的な圧力から、拡散経路長の短縮と活性の低下の間で妥協が求められる。しかしながら、導入の場合は、少なくとも原理的には、ゼオライトレベルと鞘部分解活性の増加の自由度が高い。ゼオライトが過剰に導入されると耐磨耗性と不透明性性能が低下するが、既知のバインダーのいくつかは非常に効果的である。特に、U.S.6,884,744は、少なくとも70%のゼオライトを含む超高活性導入触媒を開示するが、これが次いで低活性成分で置換される。この特許は本発明の用途に好適な材料を提供するが、低活性または実質的に不活性な芯部の概念は、当業界の熟練者により開示されていない。
【0070】
もう一つのアプローチは、水蒸気処理表面積が小さいが希土類が多いもの、あるいは同一の希土類だが置換率の高いもの用いて、精油所において処方することである。これらのいずれもが実際に触媒活性を増加させるであろう。
【0071】
芯鞘型触媒の導入形成法において、FCC触媒の活性な鞘部は、系内法と同じように、ゼオライト成分とマトリックス成分とを含んでいる。他の成分が存在していてもよい。このゼオライトが触媒活性に寄与する主なものである。導入するゼオライト成分の例に制限はなく、FCC用の具体例にとしては、γゼオライトや、βゼオライト、ZSM−5などが含まれる。活性または安定性などの性質を向上させるため、このゼオライトにいろいろな処理をすることが可能で、例えばアルミニウム除去や、希土類イオン交換、リン処理などを行うことができる。「ゼオライト」は、通常シリカとアルミナを含む材料を含むと考えられているが、本明細書においては、ゼオライトはさらに、シリカとアルミナの部分が、全部または一部他の酸化物で置き換わっている化合物をも含nでいる。例えば、酸化ゲルマニウム,酸化スズ、リン酸化物、およびこれらの混合物が、シリカ部分を置き換えていてもよい。ホウ素酸化物、酸化鉄、ガリウム酸化物、酸化インジウム、およびこれらの混合物が、アルミナ部分を置き換えていてもよい。したがって、本明細書で用いる導入法用のゼオライトは、結晶格子構造中にシリコンとアルミニウムの原子を含む材料だけでなく、ケイ素やアルミニウムの適当な置換原子を含む材料、例えばガロケイ酸塩、ボロケイ酸塩、フェロケイ酸塩等が含まれる。
【0072】
導入法用の典型的なマトリックス材料の例にも制限はないが、通常シリカ、γ−アルミナなどのアルミナ、ムライト、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、チタニア、ジルコニアなどの一種以上の化合物や、ベントナイト、アタパルジャイト、クラリット、フラー土、ケイ藻土、カオリナイト、ハロイサイト、またはモンモリロナイトなどの粘土があげられる。マトリックス成分は多くの目的を有している。ゼオライト成分を結合させて触媒粒子の活性な鞘部を形成するのに、また実質的に不活性な芯部に活性な鞘部を結合させるのに用いることができる。供給液や生成物分子の輸送用の拡散媒体にもなりうる。多くの場合、このマトリックスは、それ自体に分解活性を有し、活性の底を持ち上げるのに役立つ。活性な鞘部を希釈して適当な触媒活性とするフィラーとしても作用する。また、このマトリックスは、バルクの性質(再生と分解の際の熱伝達及び大規模な接触分解の際の蓄熱)を提供して伝熱を補助することができる。このマトリックスは、ナトリウムのシンクとして作用し、活性な鞘部に存在するゼオライトに安定性をもたらすことができる。このマトリックスは、さらに加熱や蒸気や機械的な磨耗に対してFCC触媒を安定化するのに役立つ。いくつかの例では、このマトリックスが、高い空隙率を与え、活性鞘部のゼオライトがその最大の性能で使用できるようにする。
【0073】
本発明の芯鞘型触媒を、不活性の芯部をもって説明したが、本発明を他の実施様態で記述することもできる。例えば、芯部と鞘部の両方が触媒的に活性(ただし、活性、空隙体積、組成物、機能性等では異なる)であっても芯鞘型構造を得ることができる。それぞれの芯部と鞘部の形成に、系内生成法と導入法の両方を利用できる。特に有用な芯鞘型触媒は、U.S.6,656,347に記載のように高空隙体積の芯部から作ることができ、またU.S.6,673,235やU.S.6,716,338のように、金属類不動態化機能を持つ活性な鞘部を形成することもできる。したがって、本発明の芯鞘型触媒は、必要に応じて、6,673,235に記載の噴霧乾燥工程において、6,656,347のように調整したゼオライト前駆体芯部マイクロスフェアーを含んで形成できる。その際、生成する芯鞘型ゼオライト前駆体マイクロスフェアーは、結晶化されてγゼオライトを含むようになる。芯部と鞘部の少なくとも一つが、より好ましくは両方が、ゼオライトとマトリックスを含むことが好ましい。例えば焼成カオリンなどの反応性のアルミナ原料を含むマトリックスから系内生成法で形成する場合、ゼオライト前駆体芯部の周りにゼオライト前駆体鞘部が形成された後にゼオライト結晶化反応が行われることが最も有用である。外側の鞘部を形成するのに、例えば、形成された反応性メタカオリンを含むマイクロスフェアーを反応性のメタカオリンなどの成分と共に噴霧乾燥することもできる。噴霧乾燥に続いて、適当なレベルの苛性アルカリやケイ酸ナトリウムを添加して、芯部と鞘部の両方にゼオライト結晶化を起こすことができる。この実施様態の有用性は、不活性な芯部による活性の希釈がないことであり、このため、ゼオライトの安定性の改善なくしてこの触媒を経済的に得ることができる。
【0074】
流体接触分解(FCC)は、高沸点石油系留分を低沸点生成物、例えばガソリンや分解ナフサ、ポリプロピレンなどの軽質オレフィン類に変換する好ましい精製プロセスである。本明細書に記載のFCC触媒は、微粒子状であり、流体のように振る舞い、分解反応器とこれとは別の再生器との間をクローズドサイクルで循環する。
【0075】
一般的に、FCCプロセスでは、効果的な触媒反応条件下で少なくとも一種の炭化水素供給流を本明細書に記載のFCC触媒に接触させて分解生成物を製造する。分解プロセスの一つの例では、少なくとも一種の炭化水素供給流と本明細書に記載のFCC触媒とをFCC反応器中で接触させ、適当な熱を反応器にかける。次いで分解生成物が回収される。典型的な反応器加熱温度は約300〜約800℃である。もう一つの実施様態においては、この反応器が約400〜約700℃で、通常約500〜550℃の間で加熱される。
【0076】
この炭化水素供給流は、通常炭化水素系の油類、例えば沸点が約200〜約700℃のものを含んでいる。炭化水素供給流成分の例としては、一種以上のガス状石油、水蒸気分解ガス油及び残渣、重質還元石油系原油、石油系常圧蒸留塔底物、石油系真空蒸留塔底物、ピッチ、アスファルト、瀝青、他の重質炭化水素残渣、タール砂油類、シェール油、石炭液化プロセス由来の液体生成物、フィッシャートロプシュ液、ガソリン、蒸留物、バージンナフサなどが挙げられる。本明細書に記載の分解プロセスからの分解生成物の例としては、水素や軽質オレフィン類(炭素原子数が5未満)、軽質パラフィン類、オレフィン類、炭素原子数が5を超えるパラフィン類、分解ナフサ、分解ガス油、コークスの一種以上を含む。分解生成物は液体及び/又はガス状であってよい。
【0077】
本明細書に記載のFCC触媒の結果として、いろいろな利点が得られる。例えば、このFCC触媒は、微粉発生が少なく煙突不透明性が少ないFCC触媒の使用が必要であるFCC装置内でのガソリンやプロピレンなどの分解生成物への変換を増加させる。このFCC触媒は、特に不透明性の規制で制限されることなく、また煙突不透明性と触媒ロスをさらに増加させることなく、従来のFCC装置でのガソリンやプロピレンなどの分解生成物への変換を増加させる。このFCC触媒は、ガソリンやプロピレンへの高い変換率を維持しながら、摩耗による触媒ロスを減らし及び/又はFCC用触媒の微粉による空気配管の閉塞や圧縮機ブレードの汚染を減らす。また、このFCC触媒が同時に汚染金属類不動態化機能を持つことで、上記の利点が得られる。さらに、FCC触媒が同時に、従来のFCC触媒と同等の水蒸気処理表面積と平衡活性を持つ場合に、上記の利点が場合によって得られる。さらにもう一つの利点は、このFCC触媒が、FCC装置に添加される新しい触媒のほんの一部として添加されても、系内生成のFCC触媒ばかりか導入FCC触媒の分解変換率及び収量を向上させることである。
【0078】
結果として、本明細書では、分解プロセス以外に、供給流の分解生成物への変換を増加/改善すると共に、微粉の発生を減少、煙突不透明性を改善する方法と、変換of供給流の分解生成物への変換を増加/改善するとともに耐磨耗性を増加/改善する方法が提供される。
【0079】
実施例
以下の実施例により本発明を説明する。以下の実施例及び本明細書及び請求の範囲の他の部分で特に特記しない限り、「部」と「%」のすべては、質量換算の値であり、温度はすべて℃であり、圧力は、大気圧またはその近傍である。
【0080】
本明細書に記載のFCC触媒を代表する試料を調整し、ローラー磨耗試験とACE固定流動床分解試験で分析した。先行技術の系内FCC触媒(構造的に強化された触媒や従来の系内触媒)を、ゼオライト安定性と耐磨耗性が先行技術の状態である比較サンプルとともに調整した。本明細書に記載のFCC触媒は、結晶化前に25%の実質的に不活性な芯部を有しており、新しいまたは水蒸気処理された触媒は通常還元されていた。理由はよくわからないが、本明細書に記載のFCC触媒の試料は、芯部による希釈効果を克服するのに十分な改善されたゼオライト安定性を有していた。したがって、本明細書に記載のFCC触媒の試料は、FCC触媒に対する工業的な規格を充たす能力を減少させないため、経済的に実現可能である。上述のFCC触媒の試料が、高い耐磨耗性と収量と、従来の表面積と分解活性の品質とを有していことは驚くべきことである。実施例とその図面により、これらの結果を説明する。
【0081】
例1.本発明のマイクロスフェアー前駆体
25部のLHT含水カオリンと、25部のアンシレックス93(TM)スピネル型焼成カオリン、25部のM−93ムライト型焼成カオリン粉末、25部のムライト型カオリン芯部マイクロスフェアーを含むマイクロスフェアーを調整した。この含水及び焼成カオリンの混合物に、2.56部のNブランド(TM)ケイ酸ナトリウム由来のSiO2を添加した。含水カオリンの原料は、LHT、いわゆるグレーγカオリンクレーを遠心分離して1ミクロンより小さな大きさの粒子90重量%を得る際の粗大な副生成物の60%固体スラリーである。
【0082】
【表1】

【0083】
アンシレックス−93[A−93]顔料とM−93とを市販の回転型焼成機で焼成した。通常、X線回折によるA−93ムライト含量は<5%であるが、この試料の含量は12%であった。M−93ムライトの含量は38%であった。A−93とM−93はそれぞれ、バッチプロセスにより電気駆動の強力カウレスミキサーを用いて製造した。その際、乾燥焼成カオリンをコロイド211界面活性剤を含む水に添加した。混合物を濃縮しながら、カオリンをこの水にゆっくりと添加した。非常に膨張性のスラリーが得られたが、続けて混合すると粘度が低下した。焼成カオリンを徐々に添加し、45分間以上連続混合して、50%固体のスラリーを得た。このスラリーには、見かけ上膨張性は見られなかった。少量の試料を乾燥してISPとTBDの測定に用いた。50%固体と乾燥での製造後のTBDの増加は、部分的には製造中の出発原料によるものであり、より可能性の高いのが乾燥製品の不完全な粉砕によるものである。50%固体スラリーからの乾燥カオリンのISPは、許容範囲であった。
【0084】
芯材は、市販の焼成カオリンマイクロスフェアー製品(APS=75〜80μm)を230メッシュの篩下でふるって製造した。十分に結晶化したムライトを最高収量で得るために、この製品をコージェライトの皿中で2400°Fで4時間焼成し、次いで粉砕し、230メッシュの篩でふるった。この芯材の平均粒度は44ミクロンであり、嵩密度は1.1g/ml、ムライト含量は55%であった。芯部の嵩密度はA−93とM−93の粉末より大幅に大きく、空隙体積が低いことを示した。
【0085】
噴霧乾燥用のスラリーは、上記三成分スラリーと乾燥芯部とを25:25:25:25の比率(乾燥質量比)で、全体として乾重量で4kgとして、上述のように空気駆動カウレスミキサー中で混合して得られた。0.857kgのN−ブランドケイ酸ナトリウムをこのスラリーに直接添加して、目的の6%SiO2バインダーを得た。ケイ酸塩の添加の際にこのスラリーの濃度が上昇し、2kgを超える水の添加が必要となった。事故により目標のケイ酸ナトリウムの大部分がこぼれ落ちたため、実際のバインダー含量は、後ほどナトリウム分析により100gのカオリン中2.56gのSiO2であるとわかった。この最終混合物は、ぎりぎりポンプ輸送可能で、#10ノズルを持つ直径が3フィートのストークボーウェン噴霧乾燥機中で、空気噴霧圧力を70psiとして噴霧乾燥した。ある時点で、このノズルが閉塞したが、収量で1.86kgの規格生成物と0.32kgの微粉が得られた。
【0086】
噴霧乾燥後の材料のABD(見掛けの嵩密度)は0.68gm/mlであり、Na2Oの含量は1.35%で、APSは79ミクロンであった。噴霧乾燥したマイクロスフェアーをバケツ中で攪拌されている冷水道水中に供給し、また同時に十分な量の40重量%H2SO4を供給してスラリーのpHを約2.5〜4に維持して、この生成物を酸中和した。すべての固体を添加後、pHを測定しながら10分間コントロール後、濾過、水道水水洗し、次いで約250°Fで一夜乾燥した。
【0087】
酸中和されたマイクロスフェアーは、開放されたコージェライト皿を用いて事前に加熱された炉の中で、1150°Fで2時間さらに1400°Fで2時間と、合計4時間焼成した。この生成物は、X線回折の結果、21%のムライトを含有し、9.35%の酸可溶性物質を含有し、水銀ポロシメトリーによる直径が40〜20,000オングストロームのレンジでの空隙体積が0.577cc/gmであり、マイクロトラックによるAPSが90ミクロンであり、ABDは0.68gm/ccであった。
【0088】
例2.鞘部の品質に劣る芯鞘型触媒
実施例1に述べた成功裏の噴霧乾燥の前に、適当な平均粒度を得るために、同一組成物ではあるが異なるノズル径と噴霧器空気圧で、数回試験を行った。試験のいくつかでは、より小さなAPSが得られ、試験のいくつかでは望ましい噴霧乾燥APSより大きなものが得られた。これらの規格外試験の粉末は、混合してゼオライトの結晶化と安定性の試験用の噴霧乾燥複合物とし、また鞘部の均一性と形態が劣りかなり性能の劣る一例とした。
【0089】
酸中和されたマイクロスフェアーは、前もって加熱された炉中で開放コージェライト皿を用いて4時間、1400°Fで焼成した。生成物のX線回折による含量は25%ムライトであり、酸可溶性成分量は8.3%、水銀ポロシメトリーによる直径40〜20,000オングストローム範囲での空隙体積は0.398cc/gmであり、マイクロトラックAPSは73ミクロンであり、ABDは0.75gm/ccであった。
【0090】
実施例3〜5.本発明のマイクロスフェアー(本発明のマイクロスフェアー前駆体)と鞘部品質の劣る芯鞘型触媒の結晶化
次いで、米国特許6,656,347の実施例4〜6に記載のプロセスを用いて、N−ブランドケイ酸ナトリウムを用いて、また米国特許4,631,262の種結晶を用いて、試験室において実施例1と2のマイクロスフェアーを結晶化させた。なおこれらの特許を本出願に参照として組み込むものとする。実施例1の発明において二回結晶化を行った。第一回目は、追加のメタカオリンマイクロスフェアーのないもの(MS−2;実施例3)であり、第二回目は、7.5%のマイクロスフェアーが用いられたものである(MS−2メタカオリン)。MS−2の使用は、制限試薬である反応性アルミナの存在量を増加させ、したがって理論的化学量論的なNaγゼオライト(米国特許6,656,347)の収量を増加させる。7.5%のMS−2を、実施例2の複合物の結晶化にも用いた。結晶化比率とその生成物のデータを表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
20〜24hでの結晶化によるNaγ収量の収量は約50%であり、理論値に近かった。水洗後、表面積、単位セルサイズ(UCS)、レーザー粒度、ローラー磨耗減量試験、および水銀注入法による孔径分布を測定した。MS−2を添加しないと、本発明の耐磨耗性は、従来のFCCでの利用許容限度(14重量%/hが目標)の上限であるが、同一噴霧乾燥したマイクロスフェアーが、追加のメタカオリンと結晶化可能で、低不透明性のFCCの運転(<8重量%/hが目標)に好適な耐磨耗性を有する触媒を得ることができるようである。このように、一つの基本供給原料マイクロスフェアーから、二つの有用な実施例が得られる。
【0093】
さらに検討の結果、初期のHg法による合計空隙体積の0.332ml/gは、このようにローラー磨耗率の低い試料では驚くほど高いようであることがわかった。元の試料を再試験した結果は0.262ml/gであり、これも驚くほど高いようである。これはローラー磨耗回数の妥当性に疑問を抱かせるが、当初得られた6重量%/hの結果は、7.5%MS2を用いて行った多くの結晶化試験から予測されるものに合致する。例えば、実施例5の複合物試料のローラー値は、同じ7.5%MS2である。実施例4の十分なナトリウム型はローラー試験を再度行うには量的に不十分であったため、その最終製品2×2(二回のイオン交換と二回の焼成)を二度試験した。その結果は、5重量%/hと4重量%/hであり、元のローラー試験結果を確認するものであった。
【0094】
実施例6.高空隙率比較触媒用のマイクロスフェアー
本実施例6では、米国特許6,656,347の実施例11にしたがって、マイクロスフェアーを商業的に噴霧乾燥した。
【0095】
例7.低空隙率比較触媒用のマイクロスフェアー
本実施例7では、米国特許6,656,347にしたがって、マイクロスフェアーを商業的に噴霧乾燥した。
【0096】
実施例8〜10.比較用触媒の結晶化
実施例6と7のマイクロスフェアーを、そこに記載のプロセスから取り出された濃縮ジケイ酸ナトリウム塩母液リサイクル流体(SDS)を用いて、試験室で結晶化させた。この結晶化比率と得られた生成物のデータを表3に示す。高空隙体積比較触媒(例6)用のマイクロスフェアー前駆体上で、二回の結晶化を行った。第一回目は20%の追加メタカオリンマイクロスフェアーとともに(MS−2;実施例8)行い、第二回目は15%のMS−2メタカオリン(例9)のマイクロスフェアーとともに行った。低空隙体積比較触媒(例7)用のマイクロスフェアー前駆体上での結晶化に7.5%のMS−2も用いた。
【0097】
【表3】

【0098】
約21hの結晶化により、対表面積で約64−68%のNaγ収量が得られ、これは理論値に近かった。水洗後、特性を測定した。高空隙体積比較用触媒と低空隙体積比較用触媒の耐磨耗性は、MS−2添加で本発明に見つかった範囲であり、低空隙体積の本発明の触媒と比較用触媒のローラー磨耗減量は同じである。
【0099】
実施例11〜13.本発明のイオン交換と水蒸気処理
実施例3〜5のナトリウム型触媒を、次のようにイオン交換して最終製品とした。ナトリウム型触媒を、180°FでpHが2.8〜3.2の27重量%の硝酸アンモニウム溶液に攪拌下で添加し、50%のHNO3を滴下してpHをコントロールした。すべての触媒の添加後、スラリーを15分間攪拌し、濾過後、そのケーキを乾燥触媒重量の二倍の脱イオン水で洗浄した。このようなイオン交換を二回実施した。その際の触媒と27重量%硝酸アンモニウムの重量比は1:2であった。次いで、試料を180°Fで、pH4で希土類とイオン交換し、最終的に完成触媒上に約2.25%REOを得た。
【0100】
この部分交換した材料を乾燥し、次いでフタのあるシリカ皿を用いて当初25重量%の水分を含有する材料を、1150°Fで運転する加熱炉を用いて2時間焼成した。しかし、温度コントローラの問題のため、最終温度が1400°Fを超える温度となった。焼成後、「1×1」の性質を測定し、表4に示した。この1×1試料を用いて、アンモニウム交換操作を三回繰り返し(実施例11〜13)、試料を25%の湿度と1150°Fで再度焼成し、最終の「2×2」生成物を得た。最終生成物を、次いで100%水蒸気中で4時間1500°Fで水蒸気処理した。
【0101】
【表4】

【0102】
最初に得られた本発明(例12)の触媒上の空隙体積は、このようなナトリウム型の耐磨耗性に優れた材料(例4)に対して驚くほど高かった。上述のように、不一致のため実施例12のHg−PVの再試験を行った。第二回目の試験では0.296ml/gの総空隙体積を与え、これはこのような低磨耗率では驚くほど高い。続く実施例12のローラー磨耗測定用最終製品の試験では、4重量%/h、次いで5重量%/hが得られ、これはナトリウム型の6重量%/hと実質的に同一である。低空隙体積の実施様態における本発明の低不透明性/良磨耗性質が確認された。ただし、空隙体積自体は驚くほど高い。
【0103】
水蒸気処理後、これらの材料の比較的低い出発ゼオライト含量を考えると優れた水蒸気処理表面積が、実施例11と12に観測された。理由は不明だが、規格外材料の複合物(及び他の多くの試料)が、高活性の先行技術と比べると低いゼオライト安定性と低い水蒸気処理表面積を与えた。一方、水蒸気処理表面積の180m2/gは、導入触媒(通常<150m2/g)に対して得られる値よりかなり大きい。
【0104】
MS−2を使用しない実施例3の結晶化の希土類イオン交換体のSEM/EDS元素マッピングを行った。芯部が高密度であるため、この芯材では背部散乱電子イメージの強度が大きかった。この芯部は、ムライトの組成3Al23:2SiO2を反映してアルミナ含量が多く、通常シリカ含量が少ない。形態は決して完全なものでないが、芯部のほとんどが単一であり、おおむねマイクロスフェアーの中心にあり、すべての側面が覆われていた。
【0105】
7.5%MS−2(複合物)を用いて行った実施例6の結晶化の希土類イオン交換体上でのSEM/EDS元素マッピングも行った。この芯材は芯部が高密度であるため、背部散乱電子イメージの強度が大きかった。多くのマイクロスフェアーが複数の芯部と薄い鞘部をもつことから、鞘部均一性が低いことは明らかであった。実施例12は、精油所における低不透明性レベルを代表する従来の系内実施例10または19(ローラー=6)に相当するローラー磨耗(6)を有する本発明の低空隙体積(LPV)試料である。耐磨耗性が低下することなく収量が劇的に改善された。改善の程度は驚くべき程度である。
【0106】
実施例14〜16.目的表面が水蒸気処理された複合物
物質移動の制限があると仮定すると、低触媒活性で低表面積のいずれの試料も、その結果として仮想的に、改善された選択性を有している。したがって、高表面積の実施例11と12または高活性の先行技術試料に対する実施例13の性能試験は、実施例13にとって好ましい内蔵された偏りを与えるであろう。この試験の偏りを除くために、実施例13と類似の実施例5の残存試料を混合し、水熱安定性を向上させるために0.11重量%のNa2Oでイオン交換させた。これは、水蒸気安定性において不十分であることがわかり、このため、三回の1500°Fでの短時間水蒸気処理を行った。この結果、90分の水蒸気処理が実施例11と12に近い水蒸気処理表面積と単位セルサイズを与えることがわかった。この試料は、鞘部の形態が収量に与える影響を評価するのにより適当である。
【0107】
実施例17〜19.比較用触媒のイオン交換と水蒸気処理
上の実施例と同じ方法で、実施例8〜10のナトリウム型触媒をイオン交換し焼成して最終製品とした。出発ゼオライトの高レベルを考えると希土類の目標値は高く、ゼオライト上の希土類のレベルを一定とするように調整を行った。焼成は、1150°Fで、蓋つきの皿中で25%水蒸気中で2時間行った。これら二種の高空隙体積触媒を第二の焼成を行った2×2生成物にまで処理したが、低空隙体積生成物は最終の焼成を行うことなく2×1生成物にまで処理した。
【0108】
高空隙体積の比較例18のHg空隙体積は、このような低ローラー磨耗に対して
驚くほど高く、疑問を抱かせる程度にまで実施例17に近い。同一の結晶化組成で以前に合成した低希土類生成物は、よく似た空隙体積を与えた。
【0109】
加工後の触媒生成物を次いで、100%の水蒸気中で4時間1500°Fで水蒸気処理した。その結果を表5に示す。
【0110】
【表5】

【0111】
これらの商業的に生産されたマイクロスフェアーを、試験室においてプラントの条件下で成長させ処理し、先行技術の代表的な性質を求めた。水蒸気処理表面積は220m2/gより大きい。
【0112】
実施例20〜25
9グラムの触媒とあるガス油供給物[米国特許6,656,347の表5の供給物A]を、米国特許6,069,012に記載の方法で2.125”の噴射器位置から供給しながら、見かけ上8WHSVで1000°Fで運転するACE(TM)小型固定流動床装置を用いて、触媒性能を測定した。この特許では、この噴射器の位置が2〜2.5秒のライザー滞留時間に相当するとしている。触媒ストリップ時刻は、575秒で一定とした。実施例11と12、16〜19の触媒を、ブラウンらの米国特許4,943,902に開示されているように、活性調整用マイクロスフェアーで希釈した。しかしながら、米国特許6,069,012や従来の反応エンジニアリングの方法と正しく比較するためには、異なる触媒を同じ床体積で評価する必要があることは明らかである。このため、供給物注入点の上の触媒床の高さが比較して一定とすることが必要となる。このために、これらの触媒製剤を混合してABDを等しくし、一定の重量で試験した。これは、適当量の、ブラウンに記載の活性調節用マイクロスフェアー(約0.98ABD)と酸中和されまた水蒸気処理されたABDが0.63のカオリンマイクロスフェアーを使用して行われた。
【0113】
触媒の結果を図1と図2に示す。
【0114】
実施例12は、精油所における低不透明性レベルを代表する従来の系内実施例19(ローラー=6)に相当するローラー磨耗(6)を持つ本発明の低空隙体積(LPV)試料である。耐磨耗性が低下することなく収量が劇的に改善された。改善の程度は驚くべき程度である。
【0115】
実施例11は、ローラー試験における磨耗率の(21)高い本発明の高空隙体積(HPV)試料である。これらの収量もまた、低空隙体積の系内コントロールより劇的に改善された。試料のローラー磨耗が望んだ以上に大きいが、低磨耗率をもつ低空隙体積の実施例12や先行技術の実施例17と18と較べて、見かけ上利点はない。これは、たぶん空隙体積の目標よりローラー磨耗の目標を満たすように試料が作られたからであろう。LPV系内比較用触媒以外の試料では、空隙体積が異常に高い。通常LPVは<0.2であり、HPVは0.3〜0.36ml/gである。他の試験により、ACE収量は約0.3ml/gまでの空隙体積に敏感であるが、この範囲を超えると敏感でなくなることが示された。水蒸気不活性化とACE操作条件の選択もまた、結果に対して大きな役割を果たす。工業的に可能な空隙体積と磨耗率で、これらの芯鞘型触媒が利益を与えることが期待される。
【0116】
比較例17と18のうち、同じ磨耗率(9)をもつ一試料がずっとよい収量を与えた。この性能差は予想外であり、偽の結果であると考えられる。もう一つの試料は実施例17と似た収量を与えるが、実施例18の結果は、表を完全とするために報告されている。正確な性能ランクを決めるには、より徹底的なライザーパイロットプラント試験が必要であると考えられる。しかしながら、従来の系内触媒からの改善は、正しいと考えられる。
【0117】
本発明の実施例が磨耗の目標値を達成するが、これらがまた空隙体積の目標値より大きいこと、また収量の改善をもたらしたのが芯鞘構造ではなく空隙体積であると議論する人もあるかもしれない。しかし、本発明者等は、実施例12の本発明の空隙体積が、実施例17のHPV比較用触媒と同一またはこれより低いこと、また水蒸気処理されたZSA/MSAも低いことに注目する。これらの有害な差異にもかかわらず、本発明は、それでも75%変換率で15%低いコークス選択性を有している。拡散経路長と鞘部の品質が分解収量に悪影響を与えるという論点を支持するように、規格外の芯部/鞘材複合物は、低ガソリンと高コークスを与える。
【0118】
精油所のFCC装置は、一定コークスの制約下で運転される。ACE運転とデータ分析の標準的な方法が批判されたが、実際には、これらの方法が精油所において実際に観察される改良を少なく見積もることが本発明者らにより明らかとなっている。図2の結果より、本発明のために観察される低コークスが、比較用系内触媒の煙突不透明性を維持しながら、ガソリンとプロピレンへの変換の増加をもたらすことがわかる。
【0119】
まとめると、本発明の触媒を用いることで、主たる分解生成物選択性が、LPV比較用触媒例19より改善された。しかしながら、本発明の低空隙体積と低不透明性触媒(実施例12、ローラー=5または6重量%/h)は、LPV比較例19と同様に、同じ耐磨耗性でこれを行った。したがって、これらの触媒は、一定の磨耗率と煙突不透明性、水蒸気処理活性、単位セルサイズでの高ガソリン選択性という珍しいまた好ましい性質を示す。一定の変換率での高LC選択性が観察され、これは極端に低い水蒸気処理ZSA/MSAで説明されるが、驚くべきことに、我々は同時に、本発明の高マトリックスにもかかわらず低コークス選択性を見出す。本発明の触媒と米国特許6,656,347の前には、このような性能特性は二律背反的であった。
【0120】
本発明をいくつかの実施様態をもとに説明してきたが、本明細書を読むことにより、これらのいろいろな変更が当業界の熟練者に浮かんでくることを理解すべきである。したがって、ここに開示されている本発明が、このような変更もまた添付の請求の範囲内に含んでいることを理解すべきである。
【0121】
・関連出願の相互参照
この出願は、U.S.P.No.11/765,784(2007年6月20日出願)の一部継続である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に不活性な芯部と
前記芯部の周りの活性な触媒鞘部とからなり、
前記触媒鞘部がゼオライト触媒とマトリックスとを含むことを特徴とする流動化可能な分解触媒。
【請求項2】
前記実質的に不活性な芯部が、少なくとも一種のムライトまたはα−アルミナを含む請求項1に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項3】
前記ゼオライト触媒が、前記活性な鞘部中で系内結晶化され、30〜70重量%の前記触媒を含む請求項1に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項4】
前記活性な鞘部がバインダーにより前記マトリックス中に導入されたゼオライト触媒を含む請求項1に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項5】
前記活性な鞘部が金属類不動態化機能を有するアルミナを含んでいる請求項1〜4のいずれか一項に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項6】
触媒的に活性な鞘部で覆われた触媒的に活性な芯部からなる流動化可能な分解触媒であって、前記芯部または鞘部の少なくとも一つがゼオライト触媒とマトリックスを含み、
前記芯部または鞘部の少なくとも一つが前記芯部または鞘部内で系内生成されたゼオライトを含むことを特徴とする流動化可能な分解触媒。
【請求項7】
前記芯部がゼオライト触媒とマトリックスを含み、前記触媒の40〜20,000オングストローム直径の範囲の空孔に対するHg空隙体積が0.30gm/ccより大きい請求項6に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項8】
前記活性な鞘部が金属類不動態化機能を有するアルミナを含む請求項6または7に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項9】
前記外側の鞘部がゼオライトとマトリックスとを含む請求項6〜8のいずれか一項に記載の流動化可能な分解触媒。
【請求項10】
流動化触媒分解条件下で、炭化水素供給原料を、請求項1〜9のいずれか一項に記載の流動化分解触媒に接触させることを特徴とする分解方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−530307(P2010−530307A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513336(P2010−513336)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/066637
【国際公開番号】WO2008/157199
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【氏名又は名称原語表記】BASF Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, NJ 07932, USA
【Fターム(参考)】