説明

標準時間策定装置、標準時間策定システム、標準時間策定方法、及びプログラム

【課題】実際の作業者のスキルに応じた標準時間を策定する。
【解決手段】標準時間記憶部11が記憶する標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するスケジュール作成部13と、スケジュール作成部13が作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集する実作業時間収集部14と、作業者の経験年数毎に、実作業時間収集部14が収集した実作業時間の平均値を算出する平均算出部と、経験年数と平均算出部16が算出した平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する関数導出部17と、関数導出部17が導出した関数を用いて標準時間記憶部11が記憶する標準時間を修正する標準時間修正部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準時間策定装置、標準時間策定システム、標準時間策定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場のラインなどの製造分野において、各工程の標準時間を設定しておくことが求められている。標準時間とは、一定の経験を積んだ作業者が、ある工程を一定の品質を保って実行するために要する時間のことである。標準時間を設定し、当該標準時間を用いて作業スケジュールを組むことで、無駄な作業の発生を抑え、作業時間及び品質のムラを無くし、作業者への負担を減らすことができる。
【0003】
なお、特許文献1には、標準時間の見積もり方法が開示されており、特許文献2には、標準時間を策定した後の工程の管理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−242102号公報
【特許文献2】特許第3720283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の技術を用いる場合、予め標準時間を策定しておき、当該標準時間を用いてスケジュールを作成することとなる。しかしながら、作業者毎にスキルの個人差があるため、効率の良いスケジュールが立てにくく、また同一ラインにおける標準時間・標準手順の策定ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、工程毎に、当該工程の実行に要する標準時間を記憶する標準時間記憶部と、前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するスケジュール作成部と、前記スケジュール作成部が作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集する実作業時間収集部と、前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の平均値を算出する平均算出部と、前記経験年数と前記平均算出部が算出した平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する関数導出部と、前記関数導出部が導出した関数を用いて前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を修正する標準時間修正部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明においては、前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の標準偏差を算出する標準偏差算出部を備え、前記平均算出部は、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間のうち、前記実作業時間の平均値より前記標準偏差算出部が算出した標準偏差の定数倍以上離れた実作業時間を除外した実作業時間を用いて平均値を算出することが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、工程の種別及び前記作業者の経験年数毎に、当該種別の工程を実行した時間と当該工程の後に実行する工程における作業時間の増加度合いとの関係を記憶する疲労遅延記憶部を備え、標準時間修正部は、標準時間の修正対象となる工程の前に実行した工程による作業時間の増加度合いを前記疲労遅延記憶部から読み出し、前記関数導出部が導出した関数と前記作業時間の増加度合いとを用いてスケジュールを作成することが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記標準時間策定装置と作業者による工程の作業時間を測定する作業者端末とを備え、前記作業者端末は、前記標準時間策定装置のスケジュール作成部が作成したスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記スケジュール記憶部が記憶するスケジュールが示す各工程の開始時刻及び終了時刻を実作業時間記憶部に記録する実作業時間記録部と、前記実作業時間記憶部が記憶する開始時刻及び終了時刻を前記標準時間策定装置に出力する出力部と、を備え、前記標準時間策定装置の前記実作業時間収集部は、前記作業者端末から各工程の作業時間を収集することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、工程の実行に要する時間である各工程の標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するステップと、前記作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集するステップと、作業者の経験年数毎に、前記収集した実作業時間の平均値を算出するステップと、前記経験年数と前記平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出するステップと、前記関数を用いて標準時間を修正するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、工程毎に、当該工程の実行に要する標準時間を記憶する標準時間記憶部を備える標準時間策定装置を、前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するスケジュール作成部、前記スケジュール作成部が作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集する実作業時間収集部、前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の平均値を算出する平均算出部、前記経験年数と前記平均算出部が算出した平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する関数導出部、前記関数導出部が導出した関数を用いて前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を修正する標準時間修正部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スケジュール作成部がスケジュールを作成し、当該スケジュールに基づいて実行された作業の作業時間を用いて、標準時間の修正を行う。これにより、実際の作業者のスキルに応じた標準時間を策定することができるため、効率の良いスケジュールを立てることができ、また同一ラインにおける標準時間・標準手順を策定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による標準時間策定システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】標準時間策定システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】経験年数と実作業時間との関係の例を示す図である。
【図4】ある経験年数の作業員の実作業時間のばらつきの例を示す図である。
【図5】実作業時間の平均値から導出した関数を示す図である。
【図6】作業時間の間隔が等しくなるように分割した経験年数の範囲を示す図である。
【図7】前の工程の作業時間と後の工程の作業時間の増加量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による標準時間策定システムの構成を示す概略ブロック図である。
標準時間策定システムは、工場のラインなどの製造過程における各工程の標準時間を策定するものであり、標準時間策定装置と複数の作業者端末とを備える。
【0015】
標準時間策定装置1は、作業者端末2から収集した情報を用いて標準時間の策定を行うものであり、標準時間記憶部11、作業者情報記憶部12、スケジュール作成部13、実作業時間収集部14、標準偏差算出部15、平均算出部16、関数導出部17、標準時間修正部18、疲労遅延記憶部19を備える。
標準時間記憶部11は、工程と作業者の経験年数とに関連付けて、当該工程の実行に要する標準時間を記憶する。標準時間記憶部11が記憶する標準時間は、一定の経験を積んだ作業者が、ある工程において1つの製品に対する処理を一定の品質を保って実行するために要する時間のことである。なお、初期状態において、標準時間記憶部11は、予めヒアリング手法やストップウォッチ手法を用いて策定された標準時間を記憶する。なお、ヒアリング手法とは、一定の経験を積んだ作業者に当該工程の作業時間の見積もりを聴取する方法であり、ストップウォッチ手法とは、ストップウォッチを用いて実際に作業者による作業時間を測定する方法である。
作業者情報記憶部12は、作業者に関連付けて、当該作業者の作業の経験年数を記憶する。
スケジュール作成部13は、作業者情報記憶部12が記憶する各作業者の経験年数、及び標準時間記憶部11が記憶する標準時間に基づいて、各作業者の作業スケジュールを作成する。また、スケジュール作成部13が作成した作業スケジュールは、作業者端末2に出力される。
【0016】
実作業時間収集部14は、各作業者の作業者端末2から、作業スケジュールに基づいて実行した作業における実作業時間を受信・収集する。また、実作業時間収集部14は、収集した各作業時間に、作業者の経験年数を関連付ける。
標準偏差算出部15は、実作業時間収集部14が収集した実作業時間を、作業者の経験年数毎に標準偏差を算出する。
平均算出部16は、実作業時間収集部14が収集した実作業時間のうち、前記実作業時間の平均値より標準偏差算出部15が算出した標準偏差の定数倍(例えば、2倍)だけ離れた実作業時間を除外する。そして、平均算出部16は、作業者の経験年数毎に実作業時間の平均値を算出する。
【0017】
関数導出部17は、平均算出部16が算出した、経験年数毎の実作業時間の平均値を用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する。
標準時間修正部18は、関数導出部17が導出した関数と疲労遅延記憶部19が記憶する作業時間の増加量とに基づいて標準時間記憶部11が記憶する標準時間を修正する。
疲労遅延記憶部19は、工程の種別と作業者の経験年数との組み合わせに関連付けて、当該種別の工程を実行した時間と当該工程の後に実行する工程における作業時間の増加量を記憶する。
【0018】
作業者端末2は、作業者による実作業時間の測定を行うものであり、スケジュール記録部21、スケジュール記憶部22、実作業時間記録部23、通知部24、実作業時間記憶部25、出力部26を備える。なお、作業者端末2は、作業者それぞれによって1つずつ所持される。
スケジュール記録部21は、標準時間策定装置1から、作業者端末2の使用者である作業者のスケジュールを受け付け、当該スケジュールをスケジュール記憶部22に記録する。
実作業時間記録部23は、作業者から開始ボタン・完了ボタンの押下を検出し、開始ボタンが押下されてから完了ボタンが押下されるまでの時間を、スケジュール記憶部22が記憶するスケジュールが示す各工程の実作業時間として算出し、当該実作業時間を実作業時間記憶部25に記録する。
通知部24は、開始ボタンが押下されてから完了ボタンが押下されるまで、定期的にアラーム音を発することで、作業者による完了ボタンの押し忘れを防ぐ。
出力部26は、実作業時間記憶部25が記憶する各工程の実作業時間を標準時間策定装置1に出力する。
【0019】
図2は、標準時間策定システムの動作を示すシーケンス図である。
標準時間策定装置1のスケジュール作成部13は、作業者情報記憶部12を参照してスケジュール作成対象の作業者の経験年数のリストを生成する(ステップS1)。次に、スケジュール作成部13は、当該リストの中から1つ経験年数を読み出す(ステップS2)。次に、スケジュール作成部13は、ステップS2で読み出した経験年数に関連付けられた標準時間のうち、作業を構成するある工程の標準時間を標準時間記憶部11から読み出す(ステップS3)。次に、スケジュール作成部13は、ステップS1で決定した作業者に処理させる製品の個数を当該標準時間に乗算することで、当該工程の作業時間を決定する(ステップS4)。次に、スケジュール作成部13は、作業を構成する全ての工程に対してステップS3、ステップS4の処理を実行したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS3、ステップS4の処理を実行していない工程が残っている場合(ステップS5:NO)、ステップS3に戻り、残りの工程の作業時間の決定を行う。
【0020】
作業を構成する全ての工程に対してステップS3、ステップS4の処理を実行した場合(ステップS5:YES)、スケジュール作成部13は、ステップS4で決定した各工程の作業時間を、予め定められた作業の順に組み合わせることで、ステップS2で読み出した経験年数の作業者の作業のスケジュールを作成する(ステップS6)。
次に、スケジュール作成部13は、作業を実施する全ての経験年数のスケジュールを作成したか否かを判定する(ステップS7)。スケジュールを作成していない経験年数が残っている場合(ステップS7:NO)、ステップS2に戻り、残りの経験年数の作業者のスケジュールの作成を行う。
スケジュール作成部13は、全ての経験年数の作業者に対してスケジュールの作成を完了すると(ステップS7:YES)、作成したスケジュールを作業者端末2に出力する(ステップS8)。
【0021】
作業者端末2のスケジュール記録部21は、標準時間策定装置1からスケジュールの入力を受け付けると(ステップS9)、当該スケジュールをスケジュール記憶部22に記録する(ステップS10)。
作業者は、作業を開始すると、作業者端末2の開始ボタンを押下することで、作業者端末2に作業の開始を通知する。作業者端末2の実作業時間記録部23及び通知部24は、開始ボタンの押下を検知すると、現在時刻からの経過時間の計時を開始する(ステップS11)。
【0022】
通知部24は、計時している経過時間が所定の時間(例えば、1分)を経過したか否かを判定する(ステップS12)。通知部24が計時している経過時間が所定の時間を経過した場合(ステップS12:YES)、通知部24は、アラーム音を発し(ステップS13)、経過時間を0にリセットし、再度現在時刻からの経過時間の計時を開始する(ステップS14)。
通知部24が計時している経過時間が所定の時間を経過していないと判定した場合(ステップS12:NO)、またはステップS14で通知部24が経過時間をリセットした場合、実作業時間記録部23は、作業者によって終了ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS15)。実作業時間記録部23は、終了ボタンが押下されていないと判定した場合(ステップS15:NO)、ステップS12に処理を戻す。他方、終了ボタンが押下されたと判定した場合(ステップS15:YES)、実作業時間記録部23及び通知部24は、経過時間の計時を終了する(ステップS16)。
【0023】
次に、実作業時間記録部23は、作業者端末2が起動してから現在時刻までに開始ボタンが押下された回数に相当する順番の工程をスケジュール記憶部22から読み出すことで、現在実行を終了した工程を読み出す(ステップS17)。つまり、開始ボタンが1回押下されている場合、実作業時間記録部23は、作業スケジュールの最初の工程を読み出し、開始ボタンが2回押下されている場合、実作業時間記録部23は、作業スケジュールの2番目の工程を読み出す。そして、実作業時間記録部23は、ステップS16で計時を終了した経過時間を、読み出した工程の実作業時間として、実作業時間記憶部25に記録する(ステップS18)。
【0024】
次に、実作業時間記録部23は、開始ボタンが押下された回数が、スケジュール記憶部22が記憶する工程の数と同じ数となったか否かを判定することで、作業スケジュールの全ての工程の実行が終了したか否かを判定する(ステップS19)。全ての工程の実行が終了していない場合(ステップS19:NO)、作業者が次の作業を開始するまで、すなわち作業者が開始ボタンを押下するまで待機し、その後ステップS11に処理を戻す。
他方、実作業時間記録部23が全ての工程の実行が終了したと判定した場合(ステップS19:YES)、出力部26は、実作業時間記憶部25が記憶する実作業時間の情報を標準時間策定装置1に出力する(ステップS20)。
【0025】
標準時間策定装置1の実作業時間収集部14は、作業者端末2から実作業時間の情報を収集する(ステップS21)。実作業時間収集部14は、全ての作業者端末2から実作業時間の情報を収集すると、各作業者端末2の使用者である作業者の経験年数を作業者情報記憶部12から読み出し、当該経験年数を各作業者端末2から収集した実作業時間の情報に関連付ける(ステップS22)。
【0026】
図3は、経験年数と実作業時間との関係の例を示す図である。
なお、ある工程における実作業時間と経験年数との間には、例えば図3に示すように、経験年数の少ない新人ほど作業時間が多く、経験年数が多い熟練者ほど作業時間が短くなるような相関関係がある。但し、作業時間は個人の能力やコンディション、工具の不良、データ取得ミスなどによって変わるため、経験年数が少なくても作業時間が極端に短い作業者や、経験年数が多くても体調不良などにより作業時間が長くなってしまう作業者(図3に示す「特異点」)が現れることもある。本実施形態による標準時間策定装置1は、工程の標準時間を策定することを目的とするため、このような特異点を除外して標準時間を算出することが好ましい。そのため、以下に示すステップS23〜S25の処理により、特異点を除外する。
【0027】
次に、標準偏差算出部15は、実作業時間収集部14が収集した実作業時間の標準偏差を、工程及び経験年数毎に算出する(ステップS23)。また、平均算出部16は、実作業時間収集部14が収集した実作業時間の平均値を、工程及び経験年数毎に算出する(ステップS24)。なお、実作業時間の平均値は、平均算出部16で算出せずに、標準偏差算出部15が標準偏差の算出に用いた平均値をそのまま用いても良い。次に、平均算出部16は、実作業時間収集部14が収集した実作業時間のうち、ステップS24で算出した平均値から標準偏差算出部15が算出した標準偏差の定数倍(例えば2倍)以上離れた実作業時間を除外した実作業時間を用いて、工程及び経験年数毎の平均値を算出する(ステップS25)。
【0028】
図4は、ある経験年数の作業員の実作業時間のばらつきの例を示す図である。
各経験年数における作業時間のばらつきは、一般的には図4に示すように正規分布によって表すことができる。そのため、平均値から標準偏差の定数倍以上離れた実作業時間を除外することで、特異点を除外することができる。例えば、平均値から標準偏差の2倍以上離れた実作業時間を除外することで、平均値を中心とした95.45%の範囲内の実作業時間を抽出することができる。これにより、経験年数が少なくても作業時間が極端に短い作業者や、経験年数が多くても体調不良などにより作業時間が長くなってしまう作業者などによる特異点を除外した平均値を算出することができる。
【0029】
図5は、実作業時間の平均値から導出した関数を示す図である。
次に、関数導出部17は、平均算出部16が算出した実作業時間の平均値を用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を工程毎に導出する(ステップS26)。具体的には、関数導出部17は、回帰分析によりカーブフィッティング処理を行う。カーブフィッティング処理に用いる関数としては、n次元多項式や、指数関数、対数関数などを、工程に応じて適宜選択すると良い。これにより、関数導出部17は、図5に示すように経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出することができる。
【0030】
図6は、作業時間の間隔が等しくなるように分割した経験年数の範囲を示す図である。
次に、標準時間修正部18は、以下に示すステップS27〜ステップS32を実行することで、標準時間記憶部11が記憶する各工程の標準時間を修正する。まず、標準時間修正部18は、作業スケジュールの最初の工程の標準時間を修正する。
標準時間修正部18は、作業者情報記憶部12が記憶する経験年数のうち、最も少ない経験年数と最も多い経験年数を読み出す(ステップS27)。次に、標準時間修正部18は、関数導出部17が導出した関数のうち、標準時間の修正対象となる工程における経験年数と作業時間との関係を示す関数から、最も少ない経験年数に対応する作業時間(最大標準時間)と最も多い経験年数に対応する作業時間(最小標準時間)を読み出す(ステップS28)。次に、標準時間修正部18は、最大標準時間と最小標準時間の差を所定数(例えば10)に等分し、等分した各作業時間の範囲に対応する経験年数の範囲を特定する(ステップS29)。
【0031】
次に、標準時間修正部18は、標準時間の修正対象となる工程の前に実行する工程の標準時間を標準時間記憶部11から読み出す(ステップS30)。次に、標準時間修正部18は、ステップS30で読み出した前の工程の作業時間と疲労遅延記憶部19が記憶する情報とに基づいて、標準時間の修正対象となる工程の作業時間の増加量を、ステップS29で特定した経験年数の範囲の中央値毎に特定する(ステップS31)。
【0032】
図7は、前の工程の作業時間と後の工程の作業時間の増加量との関係を示す図である。
疲労遅延記憶部19は、図7に示すように、ある工程の前の工程の作業時間とある工程を実行する際の作業時間の増加量の関係を記憶する。なお、前に実行した工程の種別によって疲労の度合いが異なるため、疲労遅延記憶部19は、各工程に対応付けて、ある工程を実行する際の作業時間の増加量と前の工程を実行する作業時間との関係を記憶する。なお、作業時間が長いほど疲労がたまっていくため、図7に示すように、作業時間の増加度合いは前の工程を作業時間が長いほど大きい。また、疲労は年齢と共にたまりやすくなるため、図7に示すように、作業時間の増加量は、作業者の経験年数が多いほど大きい。
【0033】
そして、標準時間修正部18は、ステップS26で関数導出部17が導出した関数から、ステップS29で特定した経験年数の各範囲の中央値に対応する作業時間を読み出し、当該作業時間にステップS31で特定した作業時間の増加量を加算した値を、ステップS29で特定した経験年数の各範囲の標準時間に決定し、標準時間記憶部11が記憶する標準時間を修正する(ステップS32)。
次に、標準時間修正部18は、標準時間記憶部11が記憶する全ての工程の標準時間を修正したか否かを判定する(ステップS33)。標準時間を修正していない工程がある場合(ステップS33:NO)、標準時間修正部18は、ステップS32で修正した工程の次の工程の標準時間の修正を行う。
【0034】
他方、全ての工程の標準時間を修正すると(ステップS33:YES)、ステップS1に戻り、再度スケジュールの作成を行う。このとき、スケジュール作成部13は、各作業者が同じ順番で各工程を実行し、作業者毎の作業時間が同じになるように各工程で処理する製品の個数を設定する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、スケジュール作成部13が標準時間に基づいてスケジュールを作成し、標準時間修正部18が当該スケジュールに基づいて実行された作業の作業時間を用いて、標準時間の修正を行う。これにより、実際の作業者のスキルに応じた標準時間を策定することができるため、効率の良いスケジュールを立てることができ、また同一ラインにおける標準時間・標準手順を策定することができる。
【0036】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、標準時間策定システムが作業者端末2を備える場合を説明したが、これに限られず、例えば作業者端末2を備えずに工程の開始時刻と終了時刻とを作業カードに記録し、当該記録された時刻を手入力で実作業時間収集部14に入力することで、実作業時間収集部14が実作業時間の収集を行っても良い。
【0037】
また、本実施形態では、疲労遅延記憶部19が工程の作業時間の増加量を記憶し、標準時間修正部18が、当該作業時間の増加量を関数導出部17が導出した関数から読み出した作業時間に加算することで標準時間を修正する場合を説明したが、これに限られない。例えば、疲労遅延記憶部19が工程の作業時間の増加率を記憶し、標準時間修正部18が、当該作業時間の増加率に1を加えた値を関数導出部17が導出した関数から読み出した作業時間に乗算することで標準時間を修正するようにしても良い。
【0038】
上述の標準時間策定装置1及び作業者端末2は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0039】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…標準時間策定装置 2…作業者端末 11…標準時間記憶部 12…作業者情報記憶部 13…スケジュール作成部 14…実作業時間収集部 15…標準偏差算出部 16…平均算出部 17…関数導出部 18…標準時間修正部 19…疲労遅延記憶部 21…スケジュール記録部 22…スケジュール記憶部 23…実作業時間記録部 24…通知部 25…実作業時間記憶部 26…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程毎に、当該工程の実行に要する標準時間を記憶する標準時間記憶部と、
前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するスケジュール作成部と、
前記スケジュール作成部が作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集する実作業時間収集部と、
前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の平均値を算出する平均算出部と、
前記経験年数と前記平均算出部が算出した平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する関数導出部と、
前記関数導出部が導出した関数を用いて前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を修正する標準時間修正部と
を備えることを特徴とする標準時間策定装置。
【請求項2】
前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の標準偏差を算出する標準偏差算出部を備え、
前記平均算出部は、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間のうち、前記実作業時間の平均値より前記標準偏差算出部が算出した標準偏差の定数倍以上離れた実作業時間を除外した実作業時間を用いて平均値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の標準時間策定装置。
【請求項3】
工程の種別及び前記作業者の経験年数毎に、当該種別の工程を実行した時間と当該工程の後に実行する工程における作業時間の増加度合いとの関係を記憶する疲労遅延記憶部を備え、
標準時間修正部は、標準時間の修正対象となる工程の前に実行した工程による作業時間の増加度合いを前記疲労遅延記憶部から読み出し、前記関数導出部が導出した関数と前記作業時間の増加度合いとを用いてスケジュールを作成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の標準時間策定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の標準時間策定装置と作業者による工程の作業時間を測定する作業者端末とを備え、
前記作業者端末は、
前記標準時間策定装置のスケジュール作成部が作成したスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記スケジュール記憶部が記憶するスケジュールが示す各工程の開始時刻及び終了時刻を実作業時間記憶部に記録する実作業時間記録部と、
前記実作業時間記憶部が記憶する開始時刻及び終了時刻を前記標準時間策定装置に出力する出力部と、
を備え、
前記標準時間策定装置の前記実作業時間収集部は、前記作業者端末から各工程の作業時間を収集する
ことを特徴とする標準時間策定システム。
【請求項5】
工程の実行に要する時間である各工程の標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するステップと、
前記作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集するステップと、
作業者の経験年数毎に、前記収集した実作業時間の平均値を算出するステップと、
前記経験年数と前記平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出するステップと、
前記関数を用いて標準時間を修正するステップと
を有することを特徴とする標準時間策定方法。
【請求項6】
工程毎に、当該工程の実行に要する標準時間を記憶する標準時間記憶部を備える標準時間策定装置を、
前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を用いて、複数の工程からなる作業のスケジュールを作成するスケジュール作成部、
前記スケジュール作成部が作成したスケジュールに基づいて実行した作業において測定された各工程の作業時間を収集する実作業時間収集部、
前記作業者の経験年数毎に、前記実作業時間収集部が収集した実作業時間の平均値を算出する平均算出部、
前記経験年数と前記平均算出部が算出した平均値とを用いて、経験年数と作業時間との関係を示す関数を導出する関数導出部、
前記関数導出部が導出した関数を用いて前記標準時間記憶部が記憶する標準時間を修正する標準時間修正部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128736(P2012−128736A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280856(P2010−280856)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】