説明

標的化された造影剤および造影剤を標的化するための方法

造影タンパク質を有する造影剤は、造影特性および少なくとも1つの標的部分を有し、ここで、少なくとも1つの標的部分が、造影タンパク質に有効に結合するかまたは組み入れられる。造影剤を標的化するための方法およびそのような薬剤を調製するための方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/715493号明細書(2005年、9月9日出願、現在係属中)、米国特許出願第11/530398号明細書(2006年9月8日出願、現在係属中)に基づく優先権を主張し、米国特許出願第11/457370号明細書(2006年7月13日出願、現在係属中)の一部継続出願であり、すべてそのまま参考文献として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、画像診断および新規の造影剤調製ならびに画像診断におけるそれらの使用に関する。より詳細には、標的化された造影剤、ならびに例えば組織を可視化する、磁気共鳴画像中での選択的蓄積および保持のために、細胞および組織に造影剤を標的化するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴画像(MRI)を含む画像技術は、癌病巣ならびに他の病気の検出および治療において不可欠な役割を果たす。例えば、MRI技術は、軟組織の構造および機能をマッピングし、探査するための強力な非浸潤的ツールを提供する。事実、高い強度の磁石および高周波信号の使用を介するMRIは、組織の三次元画像を提供することができる。機械的画像システムの改善により、腫瘍性病変を検出することが可能である。しかし、早期腫瘍病変および転移の検出はなお、依然として課題である。
【0004】
MRI造影剤は、画像技術由来の画像固有のコントラストを改善するために使用されている。この方法は、病理組織と正常組織との間の撮像におけるコントラストを増幅するための造影剤の投与に依存する。ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)のような最も広範に使用される種類のMRI造影剤は、T1反射性(reflexivity)を伴う厳密な細胞外低分子量化合物であるガドリニウムイオン(Gd3+)、マンガンイオン(Mn2+)、および鉄イオン(Fe3+)キレートに基づく。究極的に、造影剤の効力は、画像を改善する内在的能力および薬物動態学の両方に依存する。
【0005】
例えば、臨床用途について承認されたGd3+に基づく造影剤は、主に、非特異的小分子である。このようなGd3+造影剤は、通常、予想される値より20〜50倍低い<10mM−1−1の緩和能を有する。緩和能は、主に、分子の回転相関時間によって制限される。最も一般的に使用される造影剤、DTPAは5mM−1−1のR1緩和能を有する。この緩和能では、十分なコントラストに到達するかまたは許容可能な画像を作成するために、堅牢な臨床試験では、通常大きな用量(>0.1mMの局所濃度)を必要とする。さらに、この種類の造影剤は、データ収集の時間を制限する極めて短い循環時間を有する。そのような造影剤を改善するための努力は、小さなGd3+薬剤のデンドリマーもしくはコポリマーのような高分子への共有または非共有結合を含む。
【0006】
造影剤の分野はかなり進歩しているが、特定の細胞および組織に効果的に標的化され得る造影剤はまだ存在しない。造影剤の送達は、より重要な問題である一方、特定の分子マーカーを標的化することが可能なMRI造影剤の開発が不足している。多くの組織特異的造影剤が有望な緩和特性を実証する一方、そのような造影剤が特異的細胞マーカーを認識するように設計される傾向にはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、特定の組織に標的化され得る、改善された造影剤の必要性が常にある。また、多様な組織、腫瘍、癌、および疾患の分子画像化において広範な適用可能性を伴う、標的化可能なタンパク質に基づく造影剤の必要性もある。より安全な造影剤の必要性もある。本発明は、特にこれらの必要性に対して関するの。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単に説明すると、本発明は、改良した画像診断用の、特定の細胞に標的化され得る新規造影剤群に関する。より詳細には、本発明は、特定の細胞および組織を標的化および蓄積する種類の磁気共鳴画像造影剤に関する。新規造影剤は、任意のペプチドまたはタンパク質または小分子である標的部分、ならびに好ましくは造影剤であり、常磁性金属イオンおよび重金属イオンとキレートを形成することが可能な、少なくとも1つの金属イオン結合部位を有するタンパク質のような有機ポリマーであり得る造影タンパク質を含む。
【0009】
造影剤は、造影タンパク質および標的部分もしくは分子を有効に連結または取り込むことによって、現像することができる。本発明の適切な造影タンパク質は、しばしば、造影剤として本質的に機能するため、造影タンパク質および標的部分または分子は、例えば、タンパク質に基づく造影剤のCもしくはN末端において標的部分または分子を結合することによって、造影タンパク質を変性しない様式で連結あるいは取り込まれることが好ましい。1つの実施態様では、得られるタンパク質は、特定の細胞の表面に結合し、それら特定の細胞によってエンドサイトーシスされ得る造影剤である。
【0010】
標的化造影剤の1つの利点は、それらが造影剤を送達するためのより安全な方法を提供することである。具体的には、標的とする細胞または組織による造影剤のより効率的な標的化および取り込みは、正常細胞の造影剤のより少ない暴露を提供し得る。造影タンパク質は、部分的に重金属により、通常毒性であるため、正常細胞の造影タンパク質への暴露を低減するのに最適であり得る。1つの実施態様では、造影剤は、標的細胞に結合し、標的とする細胞によってエンドサイトーシスされる。従って、造影剤を特定の細胞および組織にのみ送達することによって、正常細胞への造影剤および重金属の暴露を低減することが可能である。
【0011】
好ましい実施態様についての以下の詳細な説明を添付の図面(いくつかの図を通して同じ参照番号は同じ成分を表す)と合わせて読む場合、これらの特徴、ならびに本発明の他の特徴および利点は、関連技術の当業者により明らかとなろう。
【0012】
定義
他で具体的に示さない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が関連する当該技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語が規定される。
【0013】
用語「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖もしくは二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、他で具体的に示さない限り、天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で機能することができる、天然に存在するヌクレオチドの既知の類似体を含有するポリヌクレオチドを包含する。例えば、本用語は、一本鎖および二本鎖形態のDNAまたはRNAを指すことができる。核酸配列は、アミノ酸配列から容易に明らかである。
【0014】
用語「組換え核酸分子」は、2つもしくはそれ以上の連結したポリヌクレオチド配列を含有する天然には存在しないポリヌクレオチドを指す。組換え核酸分子は、組換え方法、特に、遺伝子操作技術によって生成することができるか、または化学合成方法によって生成することができる。組換え核酸分子は、融合タンパク質、例えば、目的のポリペプチドに連結された蛍光タンパク質をコードすることができる。用語「組換え宿主細胞」は、組換え核酸分子を含有するかまたは発現することができる細胞を指す。
【0015】
ポリペプチドに関する用語「コードする」は、ポリヌクレオチドの転写およびそれから産生されるmRNAの翻訳を指す。コードしているポリヌクレオチドは、そのヌクレオチド配列がmRNAに同一であるコーディング鎖、ならびにその相補鎖の両方を含むと考えられる。コードしているポリヌクレオチドは、同じアミノ酸残基をコードする縮重ヌクレオチド配列を含むと考えられることが認識される。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、イントロンおよびエキソンを含有するポリヌクレオチドを含むことができる。核酸配列は、アミノ酸配列から容易に明らかであり、そしてその逆も同様である。
【0016】
用語「制御配列」は、コーディングおよび非コーディング配列の発現を生じるのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含むことができる。用語「制御配列」は、最低でも、その存在が発現に影響を及ぼし得る成分を含むことが意図され、および、その存在が有利であるさらなる成分を含むことができる。例えば、リーダー配列および融合パートナー配列は制御配列である。
【0017】
用語「有効に取り込まれる」などは、相互の物理的および機能的関係で配置されるポリペプチド配列を指す。最も好ましい実施態様では、キメラ分子のポリペプチド成分の機能は、部分単体の機能的活性と比較して変化しない。例えば、蛍光タンパク質は、目的のポリペプチドと融合され、そして融合された状態で、目的のポリペプチドがその本来の生物学的活性を保持する一方、その蛍光を保持することができる。
【0018】
用語「有効に連結する」などは、並列を指し、ここで、そのように記載される成分が、それらの意図する様式で機能する関係にある。コーディング配列に有効に連結する制御配列は、コーディング配列の発現が制御配列に適合する条件下で実現されるように連結される。
【0019】
蛍光タンパク質に関する用語「輝度」は、所定の波長における吸光係数(EC)および蛍光量子収率(QY)の生成として測定される。
【0020】
用語「プローブ」は、別の物質(「標的」)に特異的に結合する物質を指す。プローブは、例えば、抗体、ポリヌクレオチド、受容体およびそれらのリガンドを含み、一般的に、プローブが特異的に結合している分子を同定または単離するための手段を提供するように標識され得る。
【0021】
用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、2つもしくはそれ以上のアミノ酸残基のポリマーを指す。「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミド結合を介して接続されるアミノ酸残基のポリマーである。本明細書において定義されるように、ペプチドは、天然アミノ酸ならびに非天然アミノ酸(例えば、β−アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニン)の両方を含む。アミノ酸は、L−光学異性体またはD−光学異性体のいずれか一方であり得るα−アミノ酸であるが、L−光学異性体が好適である。そのようなアミノ酸はよく認められる遺伝子コードされないアミノ酸であるが、好ましいアミノ酸はコード可能であるものである。
【0022】
用語「単離物」または「精製物」は、通常固有の自然状態を伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度は、一般的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどのような分析化学技術を使用して、決定することができる。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、調製物において少なくとも顕著な分子種である場合、単離されたと考えられる。
【0023】
用語「天然に存在する」は、天然において生じるタンパク質、核酸分子、細胞、または他の材料を指す。天然に存在する材料は、天然において存在する形態で存在し、例えば、単離形態であるように、人の手によって改変され得る。
【0024】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、相互に、もしくは所定の比較窓(comparison window)にわたって少なくとも80%の配列を共有する場合、2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列または2つもしくはそれ以上のヌクレオチド配列は、「実質的に同一」または「実質的に類似」であると考えられる。従って、実質的に類似の配列は、例えば、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0025】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、相互に、もしくは所定の比較窓にわたって少なくとも50%の配列を共有する場合、2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列または2つもしくはそれ以上のヌクレオチド配列は、「類似」であると考えられる。従って、実質的に類似な配列は、「実質的に同一な」または「実質的に類似」であると考えられるヌクレオチド配列を含む。
【0026】
用語「蛍光特性」は、適切な励起波長におけるモル吸光係数、蛍光量子効率、励起スペクトルまたは発光スペクトルの形状、最大励起波長および最大発光波長、異なる2つの波長における励起振幅の比、異なる2つの波長における発光振幅の比、励起状態の寿命、または蛍光異方性を指す。
【0027】
用語「蛍光タンパク質」は、適切な電磁エネルギーで励起される場合に光放射が可能な、任意のタンパク質を指す。蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)蛍光タンパク質由来の蛍光タンパク質のような天然または設計されたアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。
【0028】
本明細書において使用する用語「変異体」または「変種」は、対応する野生型蛍光タンパク質に対する変異を含有する蛍光タンパク質である。さらに、対応する野生型蛍光タンパク質に対して異なる蛍光特徴を有する変異蛍光タンパク質を示す蛍光タンパク質の「スペクトル変種」または「スペクトル変異体」について言及する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施態様は、水分子プロトン緩和率に影響を及ぼすことによって、画像コントラストを増強することが可能な造影剤を含む。部分的に、標的組織における水プロトン緩和率は、周囲組織における水プロトンの緩和率とは別に影響を受けるため、このような造影剤は、磁気共鳴画像に有効である。本明細書において開示される造影剤は、隣接する核の緩和率を変更するように金属イオンと錯体を形成する常磁性種である。
【0030】
より詳細には、本発明の実施態様は、腫瘍または血管形成細胞のような特定の細胞に標的化および蓄積することが可能な新規の診断用造影剤群である。本発明の好ましいな実施態様は、特定の細胞および組織において蓄積することが可能な種類の磁気共鳴造影剤である。
【0031】
図1において概略的に示されるように、これらの新規造影剤は、(a)造影剤を特定の細胞および組織を標的とすることが可能な、任意のペプチドもしくはタンパク質または小分子である標的部分、(b)造影剤自体、ならびに常磁性および重金属イオンをキレート化することが可能な少なくとも1つの金属イオン結合部位を有するタンパク質のような有機ポリマーである造影タンパク質、ならびに(c)造影タンパク質と標的部分との間の任意のリンカーを含む。
【0032】
より具体的には、本発明により有用な標的部分は、撮像しようとする部位における造影剤の濃度を増加させ、造影剤をタンパク質または他の標的に結合させる配列を含む。1つの実施態様では、標的部分は、所定の受容体または細胞を標的化するのに適切な分子または配列である。さらに、これらの標的配列は、病変細胞に対する配列を含むことができる。例えば、GRP受容体に対するボンベシン/GRPは、造影剤を癌細胞に標的化するのに適切である。本発明に有用な特定の標的部分は、標的および結合の特定要件の性質に依る。
【0033】
さらに、造影タンパク質は、内在的造影特性を有することができる。1つの実施態様では、本発明は、調節した特性を有する新規の診断用造影剤群と共に、さらにより詳細には、組織に蓄積する種類の磁気共鳴造影剤に有用である。これらの新規の造影剤は、(a)タンパク質のような有機ポリマーである足場タンパク質および(b)常磁性および重金属イオンをキレート化することが可能な少なくとも1つの調整された金属イオン結合部位であって、足場タンパク質内の選択フォールディングポケット(select folding pockets)に取り込まれる少なくとも1つの調整された金属イオン結合部位、を含む。一方で、任意のタンパク質に基づく造影剤が、本発明により使用できることが理解される。
【0034】
さらに、所定の実施例の造影剤は、標的部分が足場タンパク質に付着される任意のリンカーを含むことができる。任意のリンカーは、好ましくは、造影部分および標的部分の両方が機能的部分を有するような可動性を有する。これらのリンカーは、長さを変えることができ、また、例えば、異なる長さおよびアミノ酸配列を含むことができる。例示的なリンカーは、単結合または多重結合によって共有結合した1〜30個の炭素原子を含む小さなサブユニットを含む。
【0035】
1つの実施態様では、本明細書において開示する造影剤は、造影タンパク質および標的部分または分子を有効に連結することによって、開発することができる。より具体的には、造影タンパク質および標的部分または分子は、それらが意図される様式で機能することを可能にする並列型の関係で連結される。本発明により適切な造影タンパク質は、しばしば、造影剤として内在的に機能するため、造影タンパク質および標的部分は、造影タンパク質を変性しない様式で連結することが好ましい。得られるタンパク質は、特定の細胞において蓄積される造影剤である。
【0036】
好ましくは、造影タンパク質および標的部分は、ペプチド結合を介して有効に連結される。1つの実施態様では、標的部分および造影タンパク質は、ペプチド結合を介して、造影剤のCもしくはN末端で標的部分を連結または融合することによって、連結される。末端で標的部分を付着または融合することによって、造影タンパク質は、造影タンパク質の機能性および標的部分の構造的完全性を維持しながら、特定の細胞を標的化する。この実施態様では、造影剤を、単一のタンパク質として発現させることができる。さらに、より安定な構造を確実にするため、アミノ酸、例えば、グリシンを末端に添加することができる。
【0037】
さらに、造影タンパク質および標的部分は、より良好な結合特異性および親和性を伴うリン酸化、グリコシル化およびメチル化のようなさらなる修飾を可能にするために、他のタイプの共有結合によって残基に有効に連結される。
【0038】
さらにその上、標的部分を、造影タンパク質内の残基に有効に連結するかまたは組み入れることができる。この実施態様では、造影タンパク質が引き続き造影タンパク質として機能するように、標的部分を造影タンパク質に組み入れることができる。例えば、標的部分を、造影タンパク質のループ領域に接合することができる。NまたはC末端付着は構造的な影響がより少ないため、この実施態様は、より活性な結合配置を伴う造影剤を得ることができる。さらに、この標的部分を、タンパク質造影部分のループ領域に接合して、より良好なコンフォメーションを確実にすることができる。この場合、標的部分の両方の末端の側面に位置する2つの可動性リンカーが好ましい。さらに、接合された標的配列は、より安定であり、アミノもしくはカルボキシルペプチダーゼによる切断または分解の影響をあまり受けずに済む可能性がある。
【0039】
1つの実施態様では、特定のタイプの細胞または組織上で発現される受容体と相互作用し、エンドサイトーシスを誘導する能力について、標的部分を選択してもよい。例えば、そのような細胞は、特定の密度で表面上に発現される特異的受容体である細胞バイオマーカーまたは癌バイオマーカーに標的とされる。さらに、これらの受容体またはバイオマーカーは文献に示されており、また常に発見され、報告されている。当該技術分野における当業者は、結合可能で、特定のタイプの細胞においてエンドサイトーシスを誘導することができるペプチドを見出すための文献を検討することによって、過度の実験を伴わずに標的ペプチドを選択し得る。
【0040】
1つの実施例では、標的部分は、癌細胞または組織において高度に発現される特定のタイプの細胞表面受容体、即ち、GRP受容体に結合することができるガストリン放出ペプチド(GRP)の部分である。GRP受容体は癌バイオマーカーであり、多くの神経内分泌腫瘍において発現される一方、GRP受容体は、正常細胞においてそれほど高度には発現されない。より詳細には、悪性形質転換された前立腺および胸部組織において発現されるGRP受容体は、造影剤の形質転換された前立腺および胸部組織に対する選択的標的である。従って、造影タンパク質およびGRP標的配列の両方を有する造影剤は、そのような癌細胞に結合し、癌細胞に中により多くの造影剤と、改善されたMR画像をもたらすエンドサイトーシスを誘導することができる。
【0041】
他の適切な標的部分は、特定の型の細胞もしくは腫瘍に結合し、細胞中へのエンドサイトーシスを誘導することが可能なペプチドまたはタンパク質である。このような標的部分は、特定の癌における受容体を標的とし、コレシストキニン、成長ホルモン放出ペプチド、プロラクチン、サイトカイン、神経伝達物質、神経修飾物質、EGF受容体およびTNF受容体を含むことができるリガンドを含む(例えば、図2を参照のこと)。例えば、標的部分は、ヒト神経内分泌腫瘍および他のリンパ腫において見出されるソマトスタチン受容体サブタイプsstl−5を標的とすることができるソマトスタチンであってもよい。他の適切な標的部分は、葉酸もしくは炭水化物のような小分子、リン酸化ペプチドおよび糖タンパク質またはペプチドであってもよい。適切なリガンドおよびそれらのそれぞれの受容体を図1に示す。従って作製可能な、例示的な標的化造影剤を、配列番号14〜26に示す。
【0042】
2つ以上の標的部分を造影タンパク質に有効に連結または組込むことが可能である。2つ以上の標的配列を造影タンパク質に有効に連結することにより、特定の細胞または癌細胞の認識のために2つ以上の型の分子相互作用を提供することによる、特定の細胞または癌細胞に対してより大きな特異性を伴う造影剤を作製することが可能である。さらに、結合親和性および造影効果は、2つ以上の標的ペプチド(縦列反復であり得る)を添加することによって増大され、局所有効濃度を増加する。
【0043】
造影剤の標的特異性は、受容体仲介エンドサイトーシスを誘発する造影剤の性質に起因する。標的部分の受容体への結合は、被覆ピットと呼ばれる形質膜の分化した領域の陥入から開始する、受容体仲介エンドサイトーシスを誘発することができる。次いで、クラスリンは、被覆ピットの周りに格子を形成し、エンドソームと融合する小胞を形成する。次いで、造影剤が、エンドソームから細胞に放出される。造影剤は、標的化された細胞および組織内に蓄積する。
【0044】
本明細書において開示する造影剤の造影特性の一部は、標的部分とは独立して造影剤として機能する造影タンパク質の能力に起因する。好ましくは、造影タンパク質は、常磁性および重金属イオンをキレート化することが可能な少なくとも1つの金属イオン結合部位を有するタンパク質のような有機ポリマーであり、造影剤として機能することができる。このような造影タンパク質は、構築もしくは改変された先行技術の造影剤であってもよく、または新たに構築された薬剤であってもよい。本発明により使用される例示的なタンパク質に基づく造影剤として、CD2のドメイン1および緑色蛍光タンパク質(GFP)が含まれる。後により詳細に考察するように、新規の造影剤は多くの場合、標的部分の使用を介して特定の細胞に指向される既知の造影剤である。
【0045】
本発明の造影剤は、従来の薬学的または獣医学的機構および材料に従って処方してもよい。本発明の造影剤組成物は、粉末、溶液、懸濁液、分散液などのような従来の薬学的投与剤形であってもよいが、生理学的に許容可能な担体媒体中の溶液、懸濁液および分散液、例えば、注射用水が一般的に好ましい。例えば、そのような材料として、乳化剤、脂肪酸エステル、ゲル化剤、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、保存剤、抗微生物剤、およびpH調整剤を含む。さらに、送達機構として、非経口投与(注射または直接的点滴)を含む。従って、本発明に従う組成物は、当該技術レベルの十分な範囲内の様式で、生理学的に許容可能な担体または賦形剤を使用する投与のために処方される。
【0046】
使用および設計において、造影剤は、特定の細胞または組織において標的化もしくは蓄積される。標的部分は、造影剤の部分として、細胞(またはその表面)上に存在する受容体と会合し、エンドサイトーシスを誘導する。具体的には、特に、標的部分の細胞の膜上の受容体または輸送タンパク質への結合である、造影剤の結合は、造影剤と共に受容体のエンドサイトーシスを誘導することができる。エンドサイトーシスの工程は、一定量の造影剤を効果的に内在化する。結合せず、また実質的にエンドサイトーシスしない任意の造影剤は排泄される可能性があるため、造影剤は、特異的受容体もしくは輸送タンパク質を伴う細胞または組織において蓄積される。
【0047】
造影剤は、所望される作用(affects)を実現するのに有効な用量で投与することができる。このような用量は、用いられる造影剤、撮像しようとする器官または組織、使用している撮像装置などに依存して、広範に変動し得る。本発明の診断用組成物は、従来の様式で使用される。組成物は、一般的には患者である温血動物に、全身的または撮像しようとする器官もしくは組織に局所的のいずれかで投与され、続いて、患者は画像手順に供される。
【0048】
免疫原性を克服するために、造影剤は、特定の生物体による使用のために、当該技術分野における当業者によって改変され得る。例えば、造影剤がラットにおいて使用される場合、ラット自体の配列を組み入れるように造影剤を改変してもよい。
【0049】
造影剤の点滴の速度は、組織または細胞における造影剤の細胞蓄積を最大限にするために、細胞取り込みの速度と一致させることができる。細胞標的への造影剤送達の効率は、一般的に、管外漏出(vascular extravastion)の速度および血漿中造影剤の薬物動態学に依存する。
【0050】
本発明の造影剤の生体排泄経路の1つは腎臓であり得る。マクロ構造は、細網内皮系(RES)によって最終的に取り除かれ、キレート付着は、例えば60KD未満、好ましくは10KD未満、特に好ましくは200〜5000Dの分子量を伴う腎排泄可能なフラグメントを切断時に放出する生分解性結合を介するものであることが好ましい。生体排泄経路を変更するために、融合タンパク質または非分解性粒子部分を、可動性リンカーを伴うタンパク質造影剤に添加することができる。
【0051】
本発明の1つの利点は、造影剤を送達するためのより安全な方法を提供することである。具体的には、標的とした細胞または組織による造影剤のより効率的な標的化および取り込みは、造影剤の正常細胞へのより少ない暴露を提供する。造影タンパク質は、部分的に金属イオンなため、通常毒性があり、正常細胞の造影タンパク質への暴露を低減するのに最適である。
【0052】
I.タンパク質に基づく造影剤
本発明は、調節された特性を有する新規の診断用造影剤群により、およびさらにより詳細には、組織に蓄積する種類の磁気共鳴造影剤に有用である。これらの新規の造影剤は、(a)タンパク質のような有機ポリマーである足場タンパク質および(b)常磁性および重金属イオンをキレート化することが可能な少なくとも1つの調整された金属イオン結合部位であって、足場タンパク質内の選択フォールディングポケットに取り込まれる、少なくとも1つの調整された金属イオン結合部位を含む。
【0053】
新規の造影剤は、調整された結合部位を設計し、これらの部位を足場タンパク質に有効に組込むことによって、開発することができる。後により詳細に考察するように、結合部位は、設計手法または接合手法によって開発してもよい。部位が開発された後、1つまたは複数の部位は、足場タンパク質の選択領域に有効に取り込まれる。次いで、造影剤は、既知の送達方法を介して、動物またはヒトに投与される。
【0054】
例示的な実施態様では、金属キレート部位の少なくとも1つが足場タンパク質に包埋される。このような実施態様では、金属キレート部位が造影剤の内部にあるように、金属キレート部位を足場タンパク質内に配置することができる。好ましくは、金属イオンをキレート化するためのリガンドとして足場タンパク質のアミノ酸を使用し、金属キレート部位の少なくとも1つを包埋する。より好ましくは、足場タンパク質が少なくとも部分的にタンパク質自体に類似する相関関係を有するように、少なくとも1つの金属結合部位をタンパク質内に包埋する。
【0055】
例示的な実施態様では、MRIアプリケーションの足場タンパク質は、調整された金属イオン結合部位のホストになるタンパク質であり、以下の特徴を有する:
(a)切断および変性に対する、生理学的環境における安定性;
(b)金属イオン部位の組込みに適切なトポロジー;
(c)磁場に対して最適化された回転相関時間(例えば、1.3〜3Tの磁場で約100ミリ秒)、例えば、より高い磁場アプリケーションをタンパク質の部位を変更することによって、調製することができる;ならびに
(d)タンパク質の緩和率が水交換率によって制限されないような水交換率。
【0056】
足場タンパク質の好ましい特性はまた、水溶性、他の細胞の金属イオンとの低い相互作用および低い毒性を含む。これらの特性のすべてが必要というわけではないが、足場タンパク質の至適な特性は、撮像アプリケーションの特定のパラメータに依存することができ、また実際に依存する。
【0057】
足場タンパク質の1つの重要な特性は、その中に金属イオン結合部位の誘導を受容する能力である。好ましくは、足場タンパク質は、折り畳まれたコンフォメーション、三次元構造またはその構造が少なくとも部分的に解明されているタンパク質といくつかの相同性を伴うアミノ配列を有する。例えば、足場タンパク質は、それが過度の変性を伴わずに多様な結合部位の組込みを認容することができるかどうかを決定するために、スクリーニングすることができる。例えば、金属イオン結合部位の足場タンパク質への組込みは、タンパク質を変性またはアンフォールドすべきではない。従って、金属イオン結合部位は、疎水性コアを変異することによって配置されたり、または実質的な構造的撹乱を生じる位置に配置されたりするべきではない。このことは、同じファミリーにおけるタンパク質の配列アラインメントによって調べることができる。好ましくは、構造のフォールディングまたは機能における本質的役割を有するアミノ酸は、同型のタンパク質の異なる種の間で保存される。
【0058】
別の実施態様では、足場タンパク質は、金属イオンをキレート化する天然のタンパク質である。このような実施態様では、重金属もしくは常磁性金属または画像診断において有用な他の金属をキレートするように天然の金属結合部位を改変することが可能である。例えば、通例、Ca2+に結合する足場タンパク質のアミノ酸配列を、それに含まれる窒素または酸素分子を改変することによって、Gd3+に結合するように調整することが可能である。
【0059】
好ましくは、金属がタンパク質と共に移動することが可能であるように、金属イオン結合部位は足場タンパク質に配置される。補正時間が一致するように、タンパク質本体ほど可動性でないかまたはそのタンパク質本体と同じ可動性である位置を見出すとさらによい。この場合、タンパク質における結合ポケットを設計または作製することが好ましい。挿入もまた行うべきであるが、比較的可動性でない領域で行うのが好ましい。通常、タンパク質は、構造のpdb(タンパク質データバンク)ファイルのB因子(X線の温度因子)またはS因子(NMRの動的可動性因子)を調べることによって、確認することができる。
【0060】
2つ以上の金属結合部位が足場タンパク質に組込まれる。2つ以上の結合部位を含めることにより、造影剤の感度が改善される。さらに、2つ以上の結合部位がタンパク質に組込まれる場合、部位は異なる親和性を有しているが、しかしなお、生理学的金属イオンとの競合を回避するように、選択される金属に対して十分に強力な親和性を有するべきである。両方の金属イオンは、MRIコントラストに増加した感度を提供するために、好ましい回転相関時間及び水交換率を伴うホストタンパク質に包埋されるべきである。
【0061】
好ましい実施態様では、造影剤は、特定の金属イオン(例えば、Gd3+、Mn2+またはFe3+)に高い親和性を有し、優先的に、その特定の金属イオンを選択することができる。1つの実施例では、例示的な造影剤は、生理学的金属イオンを有する環境中で、Gd3+について10[M]未満の解離定数Kdを示し、生理学的条件下でのそれらの金属イオンの沈殿を防止した。従って、本発明は、特定の金属イオンに対する至適選択性を有する造影剤を作製するために使用される。
【0062】
本発明は、造影剤の緩和能を増加するための新たな機構を提供することができる。これは、タンパク質において例えばGd3+との金属イオン結合部位を設計することによって実現され、現在利用可能な造影剤と会合するキレート部分の移動性および可動性を排除することができる。より詳細には、結合部位を調整することによって、より高い緩和能を伴う造影剤を調製することが可能である。造影剤による高いプロトン緩和能は、画像をさらに増強することができる。
【0063】
足場タンパク質
本発明により適切な足場タンパク質は、タンパク質またはアミノ酸を含有する有機ポリマーを含む。このような足場タンパク質は、天然アミノ酸ならびに非天然アミノ酸(例えば、β−アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニン)の両方を含む。アミノ酸は、L−光学異性体またはD−光学異性体のいずれかであるα−アミノ酸である場合、D−光学異性体が好適であり、当該異性体はタンパク質分解をそれほど受けない。このようなアミノ酸は遺伝子によりコードされない、よく認められるアミノ酸であるが、好ましいアミノ酸はコード可能であるものである。
【0064】
多様な足場タンパク質を本発明に従って使用できるが、一般にそれらはタンパク質、末端改変タンパク質、および有機ポリマーである。より具体的には、適切な足場タンパク質は、診断アプリケーションに適切な特性によって選択することができる。本発明による使用のための足場タンパク質は、単体構造(粒子、ポリキレート剤(polychelant)またはデンドリマーポリマー)である。本発明に適切な足場タンパク質は、過度の実験を伴わずに選択され得る。
【0065】
足場タンパク質はまた、通常、金属イオンに結合する天然のタンパク質である。このような実施態様では、重金属もしくは常磁性金属または画像診断において有用な他の金属をキレート化するように天然の金属結合部位を改変することが可能である。例えば、通常、Ca2+に結合する足場タンパク質のアミノ酸配列を、それに含有されるアミノ酸のリガンド残基を改変することによって、Gd3+に結合するように調整することが可能である。例えば、α−ラクトアルブミンの結合部位を、Gd3+に結合するように改変することができる。別の実施例では、カルモジュリンのようなタンパク質におけるEF−ハンドカルシウム結合部位を、Gd3+に結合するように改変することが可能である(例えば、CA9.CD2)。
【0066】
例示的な実施態様では、足場タンパク質は、以下の基準について選択される:
1)pH変性に対する耐性およびタンパク質分解的切断に対する耐性に関して強力な安定性の提示。
2)タンパク質についての構造的情報の利用可能性。最適化された内圏、二次圏および外圏緩和ならびに金属結合特性を伴う金属結合部位の合理的な設計を可能にする構造的情報がそれほど利用できない場合、構造の推定は、タンパク質の改変を可能にすることができる。
3)生来のコンフォメーションおよびフォールディングの犠牲を伴わない変異の許容性。
4)分子サイズは、特定のアプリケーションに適切である。至適サイズは、特定の診断アプリケーションに依存することができる。例えば、緻密な構造、例えば、11〜30KDaの間の分子量、および約10〜30nsの回転相関時間は、多くの特定の診断アプリケーションについて至適サイズである。さらに、分子サイズは、循環保持時間および組織浸透性を改善することができる。例えば、より強力な生体内腎臓画像および延長された保持時間は、腎癌のような腎臓疾患を診断するための腎臓系のより詳細な撮像を可能にすることができ、また血流および血量のより正確な測定を可能にすることができる。さらに、タンパク質フレームの適切なサイズは、改善された組織浸透性および分子標的化を提供することができ、デンドリマー(dentrimers)、ナノ粒子、および超常磁性粒子のいくつかの大きなサイズの限界となり得る。
5)場合により、足場タンパク質はまた、固有の特性を有することができ、多機能性プローブの構築、および他の蛍光物質の必要性を伴わない分子画像化のためのMRI造影剤の設計を援助するためのツールとしての蛍光の使用を可能にすることができる。
【0067】
適切なタンパク質は、タンパク質分解、温度条件(Tm67℃)、pH(2〜10)、および塩(0〜4M NaCl)変性に対して高い安定性を示すCD2タンパク質(細胞接着タンパク質)のような免疫グロブリンG(IgG)スーパーファミリー由来のタンパク質を含む。このようなタンパク質は、生理学的環境下で安定であり、少なくとも1つもしくは複数の金属イオンキレート部位の組込みに適切なトポロジーを有し、そして一般的に、10mM−1−1(それらのいくつかは約50mM−1−1までである)を超える緩和能を有するため、CD2タンパク質は本発明に適切である。さらに、CD2は、タンパク質をアンフォールドすることなく、複数の表面変異を認容することができる。他の研究は、カルシウム結合部位を設計するためのホストタンパク質として、CD2を使用できることを示している。CD2を使用する実施例を以下に記載する。
【0068】
蛍光タンパク質は、タンパク質分解およびpH変性(pH5〜10)に対して生理学的環境において安定であるため、本発明のための別種類の好ましい足場タンパク質である。このような蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea)に関連する蛍光タンパク質を含む、蛍光タンパク質の配列を含む。適切な蛍光タンパク質は、有用な励起および蛍光スペクトルを有するべきであり、天然に存在するオワンクラゲ(Aequorea victoria)緑色蛍光タンパク質(GFP)から設計されていてもよい。このように改変されたGFPは、改変された核酸およびタンパク質配列を有してもよく、他のタンパク質由来の要素を含んでもよい。GFPのcDNAは、多くの他のタンパク質をコードするcDNAと連結され得る。得られるキメラはしばしば蛍光性であり、そしてパートナータンパク質の生化学的特徴を保持する。黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質もまた、造影剤のための足場タンパク質として使用することができる。このようなタンパク質もまた、本発明に含まれる。
【0069】
他の適切なタンパク質は、タンパク質切断に対して安定であることが公知である細胞外受容体および増殖因子を含む。さらに、4本ヘリックス束ファミリー(例えばRop)、マルトース結合タンパク質ファミリー、およびチオレドキシンファミリー由来のタンパク質が、変異および金属結合部位を受容することが示されている。本発明者らは、足場タンパク質としての適性についてすべてのタンパク質を試験したわけではないが、調べたタンパク質の様々な配列は、本発明が、本明細書において開示する基準を有するすべてのタンパク質を含むことを実証する。当該技術分野における当業者は、通常の研究技術および本明細書において開示する基準を使用することに基づいて適切な足場タンパク質を開発および選択することができることが想定される。
【0070】
蛍光タンパク質を使用することの1つの利点は、このようなタンパク質から構築される造影剤が多機能性プローブであることである。このような実施態様では、蛍光タンパク質から構築される造影剤は、蛍光およびMR撮像の両方を使用して、スクリーニングすることができる。このような特性は、造影剤に、蛍光検出方法に必要な蛍光およびMRIからの深部組織検出に必要な感度の両方を備えるため、極めて有利である。そのような造影剤は多機能性造影剤である。
【0071】
本発明のための足場タンパク質として、他のタンパク質を使用してもよい。好ましくは、足場タンパク質は、その構造の実質的な崩壊を伴わない金属イオン結合部位の添加を認容することが可能である。当該技術分野における当業者は、過度の実験を伴わずに選好に基づいて足場タンパク質を選択することができる。
【0072】
金属イオン結合部位
金属イオン結合部位の親和性は、金属イオンの造影剤親和性を変動し得る。具体的には、金属イオン結合部位の親和性および感度は改変されるために、造影剤の緩和能および金属親和性は改変される。好ましくは、金属イオン結合部位は、金属結合親和性、選択性、緩和能、核磁気緩和分散(NMRD)プロファイル、及び水交換率を含む至適画像特性を有する。
【0073】
当該技術分野における当業者は、当該技術分野において公知であるかまたはその後開発される方法を使用して、至適特徴を有する金属結合部位を開発することができる。例えば、本発明の金属イオン結合部位は、少なくともこれらの方法を使用して構築することができる:
(1)金属イオンの他の部分との至適結合特徴に基づいて、金属イオンに対する選択性および親和性を伴う金属イオン結合部位が設計され、そして新規に合理的に設計される、コンピュータによる設計手法;
(2)同定された結合部位の一次、二次、三次、および/または四次構造を変動することによって、金属イオンに対する選択性および親和性を伴う金属イオン結合部位が設計され、選択的に構築される接合方法;ならびに
(3)公知であるかまたはその後開発される他の方法、および公知であるかまたはその後開発される方法との組み合わせ。
【0074】
1.コンピュータによる設計手法
コンピュータによる設計手法は、新規に金属イオン結合部位を設計することを重点的に取り扱う。この設計手法は、至適結合部位を構築し、設計するためのアルゴリズムを使用することを重点的に取り扱う。好ましくは、コンピュータ計算設計手法は、例えば、部位の配位構造、配位殻の水の数、リガンド型、および電荷を変動することによって、至適結合部位を作製するために使用される。
【0075】
コンピュータによる設計手法は、以下の工程を含む:
(1)金属イオン結合部位の構造的、配位、および/または三次元構造もしくはモデルを有する1つもしくはそれ以上のデータベースにアクセスすること、あるいは他の金属結合部位に対する配列相同性に基づくモデル構造を作成すること;
(2)構造データの部分から1つ以上の予備的金属イオン結合部位を作製すること;
(3)例えば、配位構造に基づいて、作製された予備的結合部位から1つもしくはそれ以上の適切な金属イオン結合部位を合理的に選択すること;ならびに
(4)選択された金属イオン結合部位を調整および調節することによって、金属イオン結合部位を作製すること。
【0076】
金属イオン結合部位は、足場タンパク質、例えば、蛍光またはCD2タンパク質に組み入れられる。さらに、このような方法を使用して、タンパク質の金属イオン結合特性を改変し、多様なイオン結合親和性を伴う新たな材料を作製し得る。
【0077】
より詳細には、本方法は、金属イオン結合部位の好ましい成分についての公的およびまたは私的データベースを検索およびアクセスすることに関与する。基準または成分について検索し得るこのようなデータベースとして、公的なドメインバンク(例えば、National Center for Biotechnology Information (NBCI)もしくはPubMed of the US National Institution of Health)またはタンパク質モデリング構造データバンクのような既知のバンク(例えば、CambridgeもしくはRCSB Protein Data Bank Data BankおよびBioMagResBankデータベース)あるいは他の生物技術データバンクを含む。さらに、データベースとして、その構造が予め特徴付けされている金属イオン結合タンパク質由来の構造データを含む。当該技術分野における当業者は、データベースおよび本発明により適切なデータベースのための材料の供給源を同定することができる。インターネットまたはイントラネット能力を伴うコンピュータの使用は、明らかに検索処理速度を顕著に向上し、好適である。
【0078】
これらのデータベースは、タンパク質に結合する1〜数千の異なる小分子または金属イオンの構造解析を提供するために使用される。このような解析は、局所配位特性、所望される金属イオンに結合するために一般に使用される残基または原子の型、化学的特徴(例えば、pKaもしくは電荷)、部位上の荷電残基の数、および既知の結合部位の範囲または偏差を含む。さらに、このような解析は、結合部位の原子の型、残基、疎水性、溶媒接近性、金属結合部位の形状、静電ポテンシャル、および力学的特性(例えば、タンパク質のB因子またはオーダー因子)のような環境を含む。このような解析はまた、特定の金属イオンについての結合部位が連続的または非連続的結合部位のいずれであるかを含む。
【0079】
一旦、予備的金属イオン結合部位が見出されたら、構造データおよび解析を使用して、1つもしくはそれ以上の適切な金属イオン結合部位を、合理的因子に基づいて作製し得る。具体的には、例えば、幾何学記述子を加えた他の重要な特徴に基づいて、異なる検索アルゴリズムを使用し潜在的金属イオン結合部位を作製し得る。これらの重要な特徴として、足場タンパク質における本来の残基の特性、タンパク質フォールディングに必須であるリガンド位置、荷電残基の数ならびに配位殻におけるそれらの配置および水分子の数を含む。水素結合ネットワークおよび設計されたリガンド残基との静電相互作用もまた、評価することができる。さらに加えて、溶媒接近性、荷電分布、骨格可動性、および足場タンパク質の特性に従って、金属イオン結合部位のタンパク質環境を解析することができる。従って、当該技術分野における当業者は、所望されるパラメータに基づいて、結合部位を合理的に選択し得る。
【0080】
一旦、金属イオン結合部位が作製されたら、コンピュータによる設計および接合の2つの相補的手法を使用して、部位を調整し得る(以下を参照のこと)。第1に、上記で考察したように、一次、二次、三次、および/または四次構造が調節される接合方法を使用して、金属イオン結合部位を調整する。第2に、コンピュータによる設計手法を使用して、金属イオン結合部位を調整する。これらの手法の一方または両方を使用して、結合部位を調整することが理解される。
【0081】
コンピュータによる設計手法は、金属イオン結合部位の足場における残基を改変することによって、金属イオン結合部位を改変することを含む。1つの実施態様では、金属イオン近傍のリガンド、タンパク質の骨格の三次元構造、およびアミノ酸の側鎖回転異性体(または主鎖由来の原子)のライブラリーの幾何学的または統計的描写は、コンピュータを使用して、潜在的金属結合部位の組を同定し得る。金属(金属イオン)結合ポケットを形成させるために、特定の金属イオン部位の幾何学的およびグラフ描写を使用して、重要なリガンド残基がアミノ酸配列中に注意深く配置される。この結合ポケットは、配位描写および使用者が好む親和性に従って設計されるコンピュータアルゴリズムによって、自動的に作製することができる。
【0082】
作製された潜在的金属イオン結合部位は、仕様に対して最適化および調節することができる。異なる程度の可動性を伴う金属イオン結合部位の骨格構造が、金属イオン結合部位の必要性または可動性に従って使用し得る。作製される金属イオン結合部位はさらに検索条件を追加され、そして金属イオン結合部位の形状、局在、電荷数、力学的特性、必要とされる変異の数、溶媒接近性、および側鎖衝突(side chain clashes)を含む局所因子に基づいて評価される。最大緩和能を実現するために、必要とされる結合親和性および選択性を低減することなく、配位殻における溶媒水分子由来の1〜2個の酸素原子を有することは重要である。
【0083】
設計される部位のより強力な金属イオン結合親和性は、金属イオン親和性に寄与するいくつかのモデル化された因子に基づいて開発し得る。例えば、リガンド残基の数は、特定の金属イオンを直接キレート化するための因子である。いくつかの場合では、金属イオン濃度を測定するのに必要なKと共に強力な金属イオン親和性を有するために、至適金属イオン結合のためのタンパク質フレーム由来の残基を含む必要がある。他の場合では、荷電残基の数は、金属イオン親和性を変更することが可能である。なお他の場合では、キレートの結合優先傾向は特定のリガンド型に依存するため、リガンド型が因子である。負に荷電した環境のような他の因子は、金属イオン結合タンパク質の結合親和性に寄与し、また過度の実験を伴わずに、当該技術分野における当業者によって考慮され得る。これらの荷電残基は水交換率を増加して、必要とされる緩和能の限界を回避することができる。
【0084】
このコンピュータ手法の例示的なバージョンは、金属イオン結合部位に関して選択された基準を使用し、選択された基準との適合性に基づいてデータベース情報から少なくとも1つの予備的な金属イオン結合部位を作製し、そして選択された基準との至適適合性に基づいて予備的な金属イオン結合部位から1つもしくはそれ以上の適切な金属イオン結合部位を選択する金属イオン結合部位に関連する構造データを含む、1つもしくはそれ以上のデータベースでコンピュータ処理される(または自動化された)検索要求である。一旦、適切な金属イオン結合部位が選択されると、選択される金属イオン結合部位の核酸配列が得られ、調整され、そして足場タンパク質配列に有効に連結され、それによって、金属イオンに対して所望される特異性を有する金属イオン結合部位が実現されるように、選択される金属イオン結合部位の核酸配列が調整される。さらに、予備的な結合部位をコードする核酸配列を、構造またはモデルデータから作製することができる。コンピュータ手法もまた、金属イオン結合部位を生成するのに使用することができる。
【0085】
コンピュータ手法は、金属イオン結合部位に関する構造データを含む少なくとも1つのデータベース、金属イオン結合部位に関連する選択される基準を使用して構造またはモデルデータの部分から予備的な金属イオン結合部位を作製し、選択される金属イオンに対する特異性に基づいて予備的な金属イオン結合部位を評価するためのアルゴリズム、および予備的金属イオン結合部位を作製するためにデータベース検索要求するようにアルゴリズムを実行するためのコンピュータを含む、システム上でまたはそのシステムによって実施することができる。アルゴリズムは、一般的に、入力された基準に基づいてデータベースに検索要求する比較的単純な検索アルゴリズムである。
【0086】
2.接合化方法
接合化方法は、同定された結合部位の一次、二次、三次、および/または四次構造を改変することによって、金属イオン結合部位を設計および構築することを重点的に取り扱う。結合部位の構造を選択的に設計することによって、タンパク質を大幅に変性することなく、足場タンパク質、例えば、CD2または蛍光タンパク質に設計可能な金属イオン結合部位を得ることが可能である。接合化方法を使用して、ある金属イオンより別の金属イオンに対してより強力に優先する結合部位が実現可能である。このような改変は、改善されたコントラスト能力を可能にする。
【0087】
最初に、接合化方法の使用に供される同定された結合部位は、金属イオンに対するある程度の親和性を有する任意の連続配列部位である。このような結合部位は、個々のEF−ハンド部位のような既知の結合ペプチドまたはα−ラクトアルブミンのような特定の金属イオンに結合する能力を実証している短いフラグメントのいずれか一方に由来する。このようなペプチドは、自然界において高度に保存され、でおよび自然界全体で一般的か、または非天然であるが、特定の金属イオンに対する親和性を有することが公知である。当該技術分野における当業者は、過度の実験を伴わずに、金属イオンに対する親和性を伴う結合部位を同定することが可能である。一旦結合部位が同定されたら、金属イオン結合部位の一次構造は、改善された結合特性を伴う金属イオン結合部位を実現するために、改変および調節される。例えば、部位または足場タンパク質の応答性を調整するように、金属イオン結合部位にコドンを挿入することによって、アスパラギン酸およびグルタミン酸のようなより荷電したリガンド残基を設計し得る。さらに荷電したリガンドの封入は、造影剤の選択される常磁性金属イオンに対する親和性を実現し、そして所望される選択性を有することを可能にする。さらにまた、リガンド残基およびそれらの周辺を除去または改変することによって、1もしくは2個の水分子を配位殻に導入することができる。さらに、一次構造の他の変異は、アミノ酸を除去または添加して、部位の可動性もしくは剛性のような特性を変更することを含む。結合部位にアミノ酸を付加または除去することにより、結合部位の一次構造が変更される。
【0088】
金属イオン結合部位の二次構造、即ち、直鎖状配列において相互に近いアミノ酸残基の空間配置を改変して、金属イオン結合部位の感度および応答性を調節し得る。部位自体の残基、ヘリックス、ベータ鎖、またはターンのようなフランキングもしくは隣接構造は、すべて内在的に二次構造を変更し得る、疎水性、塩橋、二次構造傾向(例えば、螺旋性、およびβ−シート)、ならびに異なるアミノ酸との荷電相互作用のような特性を変更することによって、改変される。
【0089】
金属イオン結合部位の三次構造は、金属イオン結合部位の感度および応答性をさらに調整するために、改変され得る。金属イオンの対する金属イオン結合部位の親和性は、ヘリックス、ループ、架橋および/またはリンカーならびに水素結合、静電相互作用および疎水性相互作用のような化学特性を選択的に操作し、そして添加することによって、変動する。事実、三次構造におけるこのような変動は、二次構造傾向の増大、側鎖の荷電相互作用の添加、および金属イオン結合配位化学の安定化によって、安定性および親和性を添加し得る。従って、金属イオン結合部位の三次構造を調節することによって、連続結合部位の結合親和性を増大または低減することが可能である。さらに、力学的特性は、タンパク質のパッキングを増加し、残基をより剛性(例えば、Pro)もしくは可動性(例えば、Gly)特性を伴うアミノ酸または他の部分で置換するか、あるいはジスルフィド結合を添加することによって、改変される。
【0090】
金属イオン結合部位の一次、二次、および/または三次構造を直接変更する1つの方法は、部位の荷電の変更である。任意の結合部位における電荷は、部位の構造において重要な役割を果たすため、電荷または電荷比を変更することは、部位の構造に重要な影響を及ぼす。より重要なことに、リガンドとして直接関与しなくても、荷電側鎖は金属イオン結合親和性に対して強力な影響を示すため、これらの鎖の変動は、金属イオン結合親和性および感受性の変動を生じる。金属イオン結合部位は、例えば、荷電したリガンド残基の数を変更し、金属イオン結合ポケットを形成することによって、部位を設計または改変して、競合的金属イオンより所望される金属イオンに対してより強力な親和性およびより良好な選択性を有する。例えば、金属イオン結合部位の金属イオン結合親和性は、金属イオン結合部位および/または隣接する周囲に存在する荷電側鎖を変更することによって、変動する。アスパラギン酸またはグルタミン酸のような荷電残基のアラニンのような残基との置換は、金属イオンに対する結合親和性を最大100倍まで劇的に低減する。
【0091】
例えば、造影剤が蛍光タンパク質である多機能性造影剤の場合、発色団環境を有意に変更して、蛍光/光学的シグナルを低減することなく、金属結合部位を導入することが重要である。これらの金属結合部位は、発色団または蛍光部分への簡単な融合部から離れた位置で添加される。このような位置は、配列およびタンパク質フォールディングから明白である。
【0092】
他の実施態様では、接合化手法は、至適金属結合部位を作製するための設計手法と共に使用される。例えば、金属結合部位は、連続結合部位の一部およびコンピュータ設計により作製されるリガンド残基の一部を使用することによって、作製することができる。必要とされる至適結合親和性、金属選択性、緩和能および安定性を実現するために、タンパク質のループまたは任意の配列を除去または改変することができる。従って、金属イオン結合部位の一次、二次、および/または三次構造を変動することによって、所望される特異性および親和性ならびにより重要なコントラスト能力を伴う金属イオン結合部位を実現することが可能である。
【0093】
3.他の方法
金属イオンキレート化または結合は、公知またはその後開発される方法によって、開発することができる。このような方法は、当該技術分野において容易に利用可能であるタンパク質設計方法であって、存在する金属結合部位を改変して、金属結合特異性および力学的特性を変更することを含む。このような方法はまた、タンパク質リガンド残基に存在する結合部位を改変するための、またはタンパク質−造影剤と他の分子とを融合するための技術であって、他の分子/非天然アミノ酸もしくは炭水化物もしくはリン酸を含む補欠分子族を伴う金属結合部位の形成を含む。タンパク質設計のためまたは設計適切方法のための例示的な方法もまた、両方ともそれらの全体が参考として援用される、バロンデア D.P.(Barondeau DP.)およびゲッゾフ E.D.(Getzoff E.D.)、Structural Insights into Protein−Metal Ion Partnerships、Current Opinion in Chemical Biology、2004年、14:7;ならびにルー,Y(Lu,Y)、Design and Engineering of Metalloproteins Containing Unnatural Amino Acids or Non−Native Metal−Containing Cofactors、Current Opinion in Chemical Biology、2005年中に開示されている。
【0094】
さらに、所望される金属イオンキレート部位を調製するために、方法を組み合わせることが可能である。
【0095】
足場タンパク質における金属イオン結合部位の選択
金属イオン結合部位は、その二次構造を実質的に損なうことなく、足場タンパク質の多数の部位に選択的に挿入される。CD2タンパク質、蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、CFP、およびRFP)のようなタンパク質における組み込み部位を同定するための多くの方法が当該分野において公知であり、例えば、部位特異的変異、挿入変異、および欠失変異を含む。以下および実施例において例示されるものを含む他の方法も公知であるか、または当該分野における当業者により容易に確かめられる。
【0096】
金属イオン結合部位の挿入を認容可能な蛍光タンパク質の部位もまた、遺伝子操作およびスクリーニングによって決定および同定される。変異タンパク質を作製することおよびDNA配列を操作することによって、様々な異なる挿入を得ることが可能であり、次いで、タンパク質がその固有の活性を維持するかどうかを決定するためにスクリーニングされる。好ましくは、蛍光タンパク質の固有の蛍光を除去または妨害する部位は最適ではなく、選別により除いてもよい。この形式で同定される変種は、蛍光を保持する一方、挿入を認容することができる部位を示す。
【0097】
足場タンパク質による使用のための好ましい金属イオン結合部位は、金属結合部位、蛍光タンパク質、およびタンパク質周辺の局所特性を最適化するように5つの基準を考慮することによって、選択される。第1に、金属イオン結合部位の構造は、所望される配位構造より比較的軽微なずれを有するべきである。第2に、負に荷電した残基は、金属イオン(K)に対する所望される親和性に従って、わずか3〜5個の電荷によって変動されるべきである。第3に、金属イオンキレート部位の水の配位殻は、少なくとも1〜2個の水分子を配位可能であるべきである。第4に、良好な溶媒接近性を伴う二次構造間のループ由来の残基が、タンパク質のフォールディングおよび造影剤な高速動力学の両方について所望される。
【0098】
第5に、金属イオン結合部位の変異または導入は、タンパク質の合成およびフォールディングを実質的に妨害すべきではない。より詳細には、金属イオン結合部位の導入は、翻訳後の発色団形成またはタンパク質フレームの発色団およびフォールディングを安定化するのに必要とされる分子内相互作用のどちらも妨害すべきでない。さらに、導入される側鎖は、過剰にパッキングされるべきでなく、また足場タンパク質(例えば、蛍光タンパク質)のタンパク質フレームと衝突すべきでない。キレート部位としての発色団残基の直接使用は好ましくはないが、本発明の範囲内にある。
【0099】
II.標的部分
本発明により有用な標的部分は、撮像しようとする部位における造影剤の濃度を増加する、造影剤をタンパク質または他の標的に結合させる配列を含む。本発明に有用な特定の標的部分は、標的の性質および結合の特定の要件に依存する。有用な標的部分の例として、薬物、脂肪親和性または両親媒性有機分子、ポルフィリン、受容体リガンド、ステロイド、脂質、ホルモン、ペプチド、オリゴヌクレオチド(DNA、RNAもしくはそれらの化学修飾されたバージョン)、炭水化物あるいは撮像することが所望される特定の組織において十分に高い親和性で1つもしくはそれ以上の成分に結合することが公知である他の生体分子または物質が挙げられる。所定の標的部分は、他の標的部分よりも標的に対するより高い親和性を有することができることが想定される。
【0100】
造影剤のための標的または標的タンパク質は広範囲に及ぶ。これらの標的は、任意の身体の部分、細胞、器官、もしくは組織またはそれらの成分であることができる。より好ましい標的は、標的が疾患または疾患状態と関連するような診断用および治療用関連物である。例えば、このような標的は、血液、血漿、リンパおよび中枢神経系の液における体液を含むことができる。さらに、これらの標的は、高濃度で存在するかもしくは所定のリガンドに対し多数の結合部位を有するかのいずれかである、ポリペプチドまたはタンパク質を含むことができる。
【0101】
本発明により適切な標的部分は、当該技術分野における当業者によって発見されているか、または発見されるであろう。例えば、脈管血液プール画像化において、血清アルブミンを標的部分として使用することができる。血塊を画像化するために、フィブリンを標的として使用することができる。他のタンパク質標的として、α酸糖タンパク質、フィブリノーゲン、フィブリン、およびコラーゲンを含むが、これらに限定されない。標的部分は、好ましくは、特異性および高い親和性で標的に結合するタンパク質または分子である。
【0102】
広範囲の脂肪親和性または両親媒性TBMは、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む多様な標的に効率的に結合することができることも公知である。これらは、芳香族、および4〜200個の炭素を伴う飽和または不飽和脂肪族基を含み、各炭素は、場合により、酸素、窒素、ハロゲン、イオウ、もしくは炭素に共有結合することができる他の原子で置換されるかまたは取り換えられるが、これらに限定されない。高い特異性を伴う他のタンパク質標的に結合するために、特別な標的基が、しばしば必要とされる。十分に高い親和性および特異性の標的基は、コンビナトリアルケミストリー、ハイスループットスクリーニング、ファージディスプレイ、試験管内進化(systemic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)ならびに例えば、本明細書において参考として援用される米国特許第5,475,096号明細書、同第5,595,877号明細書および同第5,270,163号明細書(ゴールド(Gold)ら、Ann.Rev.of Biochem.、64:763−797頁(1995年)を参照のこと)に記載の他の方法のような現代の技術を使用して、同定される。
【0103】
III.リンカー
所定の実施例の造影剤は、標的部分が足場タンパク質に付着される任意のリンカーを含むことができる。好ましくは、リンカーは、単一または複数の結合によって共有結合する1〜30個の炭素原子を含む任意の小さなサブユニットであり、ここで、10個までの炭素原子がO、N、P、S、F、およびClで置換される。リンカーは、IEMを足場に接続するように機能する。リンカーの例として、カルボニル、エーテル、アミド、アミン、尿素、チオエーテル、アリール、リン酸、スルホンアミドなどのような官能基で置換される直鎖または分岐したアルカン、アルケン、またはアルキンを含む。所定の実施態様の好ましいリンカーは、2つもしくはそれ以上の官能性化学基を含み、それらのうち1つは足場に付着され、他のものはIEMに付着される。通常C末端でのフォールドがより少ない短いペプチドフラグメントが好まし。Fまたはアフィボディー(affibody)のようなフォールドされたドメインでは、リンカーは、タンパク質造影剤のN末端に配置される。リンカーは、造影部分および標的部分の両方がそれらの機能的特性を回復することを確実にするのに役立つように、可動性であり得る。
【0104】
好ましいリンカーは、アミノ酸、特に、グリシン、アラニン、セリン、ホモセリン、スレオニン、チロシン、システイン、アミノフェニルアラニン、リジン、オルニチン、2,4−ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸、ジオール、特に、エチレングリコール、ジハロゲン化物、特に、二塩化エチレン、2−メルカプトエタノール、2−アミノエタノール、1,2−ジアミノエタノール、ジカルボン酸、特に、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、およびアジピン酸、ならびに他の二機能性、三機能性および多機能性小分子である。例示的なリンカーとして、GGSGG、LGGSGGS、GGSGGSおよびGSGが挙げられる。
【0105】
なお他のリンカーは、制限を伴わなければ、尿素、アセタール、ケタール、ダブルエステル、カルボニル、チオ尿素、スルホン、チオエステル、エステル、エーテル、ジスルフィド、ラクトン、イミン、ホスホリル、またはホスホジエステル結合;置換または非置換飽和もしくは不飽和アルキル鎖;単一アミノ酸または異なるアミノ酸の直鎖、分岐、もしくは環式アミノ酸鎖(例えば、フィブリン結合部分のNまたはC末端の伸長);マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸およびピメリン酸;カプロン酸;簡単なジアミンおよびジアルコールであってもよい。
【0106】
好ましくは、リンカーの分子量は明確である。分子量は、100未満〜1000を超えるサイズの範囲である。好ましくは、リンカーの分子量は200未満であり、そしてさらにより好ましくは、100未満である。さらに、生体内で生分解性であるリンカーを利用して、本発明の画像化剤の排泄の有効な経路を提供することが所望される。リンカー内のこれらの位置に依存して、そのような生分解性官能性(functionalities)として、エステル、ジエステル、アミド、ホスホエステル、エーテル、アセタール、およびケタール官能性を含む。
【0107】
当該技術分野における当業者は、過度の実験を伴わずに適切なリンカーを選択することができる。
【0108】
IV.金属イオン
金属イオンは原子およびイオンであって、タンパク質またはペプチドに結合することができるそれぞれの同位元素および放射性同位元素を含む。金属イオンは可逆的または不可逆的に結合し、またこのような結合は、共有結合的または非共有結合的である。Gd3+は、MRI造影剤のための例示的な金属イオンとして本発明の好ましい実施態様において使用される一方、本発明による金属イオンは、常磁性金属イオン、遷移金属イオン、およびランタノイド系イオンを含む金属イオンを含むがこれらに限定されないことが理解される。例示的な金属イオンとして、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、鉄、ホウ素、クロム、コバルト、ニッケル、銅(cooper)、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、イットリウム、ストロンチウム、テクネチウム、ルテニウム、インジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびビスマスのイオン、同位元素、ならびに/または放射性同位元素形態が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明による金属の放射性同位元素を使用することも可能である。常磁性金属イオンは、本発明による使用に好ましい金属イオンである。
【0109】
造影剤によりキレート化されるように選択される金属イオンは、部分的に、イオンの診断的役割に依存する。例えば、キレート化を介して組み入れられ得る金属は、ランタノイドおよび他の金属イオンを含む、その同位元素および放射性同位元素を含む。MR撮像アプリケーションでは、好ましいな金属イオンは、ガドリニウムのような常磁性金属イオンである。当該技術分野における当業者は、過度の実験を伴わずに、意図される診断アプリケーションに基づいて、キレート化のための金属イオンを選択することができる。
【0110】
前述のように、本発明の造影剤によってキレート錯体において保持される金属イオンの選択は、薬剤が使用されるべき診断用技術に依存する。MRIまたはMRSまたはEPRアプリケーションでは、金属イオンは、常磁性(不対電子を伴う金属イオン)であるべきであり、好ましくは、非放射性である。X線および超音波撮像では、例えば、少なくとも37、好ましくは少なくとも50の原子番号を伴う重金属イオンが使用されるべきであり、さらに好ましくは、非放射性種が使用される。シンチグラフィーでは、金属イオンは、放射性同位元素のイオンであるべきである。MR、X線、EITまたは磁力計撮像では、重金属クラスター(例えば、ポリオキソアニオンおよび完全もしくは部分的イオウアナログ)あるいは酸化鉄または他の超常磁性多原子種に結合させるためにキレート基を使用し得る。
【0111】
金属イオンをキレート剤(chelant)およびポリキレート剤(polychelant)でキレート化する方法は、当該技術分野における当業者に公知である。金属は、直接、テンプレート合成、および金属交換反応によって、造影剤、即ち、調整された結合部位に組み入れられる。好ましくは、金属イオンは、半化学量論的レベルの溶液を完全に取り込むまでの滴定を伴う、直接取り込みによって、造影剤にキレート化される。
【0112】
使用および調製
本発明に従って調製された造影剤は、多くの従来のMRIおよび光学的造影剤と同じ様式で使用することができる。組成物は、ヒトまたは動物モデル系への静脈内投与に適合する薬学的組成物として、常法に従って、処方される。
【実施例】
【0113】
実施例1
本実施例は、ガストリン受容体ペプチド(GRP)受容体を伴う造影剤が癌細胞に結合することを実証する。3つの細胞系統におけるELISAアッセイは、ガストリン受容体ペプチド(GNQWAVGHLM)の標的部分を伴う例示的な造影剤CD2.CA1.CD2−Bom(以下を参照のこと)が、ガストリン受容体ペプチド受容体(GRPR)を発現する癌細胞に標的化されることを示している。具体的には、ELISAアッセイを、3つの細胞系統、即ち、PC−3細胞系統、SW620細胞系統、およびHCT116細胞系統に対して実施した。PC−3細胞系統およびSW620細胞系統は両方ともGRPR細胞を発現するが、SW620細胞系統はPC−3細胞系統よりGRPRを発現しない。HCT116細胞系統は、GRPRをほとんど発現せず、対照群とした。
【0114】
GSTに対する抗体を使用して、GST融合タンパク質のN末端を検出する細胞結合分析を使用して、アッセイを行なった。細胞を、ウェルにおいて1晩培養した。次いで、GST−融合タンパク質を培養培地に添加した。細胞を、45分間さらにインキュベートした。次いで、細胞を、3.7%ホルムアルデヒド溶液で固定化した。タンパク質の細胞への結合を、ELISAによって分析した。
【0115】
図3において示されるように、造影剤は、GRPRを有する細胞系統に優先的に結合する。また、設計された造影剤は、SW620に結合するよりもかなり強力にPC−3に結合し、2つの細胞系統のGRPRレベルと相関関係があることも明らかであった。予想されたように、有意なレベルのGRPR発現を欠くHCT116細胞では、結合は観察されなかった。
【0116】
実施例2
本実施例は、GRPに連結した造影剤が受容体仲介エンドサイトーシスを起こすことを示す。造影タンパク質GST−CA1.CD2−BomのGRPR仲介内在化が観察された。造影剤の内在化は、局所Gd3+濃度を顕著に増加させた。45分間〜1時間の間後、ほとんどのGST−CA1.CD2−Bomが、受容体仲介エンドサイトーシスを介して内在化された。内在化されたGST−CA1.CD2−Bomは、膜に付着したサイトゾル側に対して蓄積するようである。しかし、GST−CA1.CD2−Bomのエンドサイトーシスは、30分後、有意なレベルでは生じなかったことが観察されている。
【0117】
図4A〜4Fに示されるように、GRPを伴う造影剤は受容体仲介エンドサイトーシスを起こす。設計されたGST−CA1.CD2−Bomの3つの細胞系統への結合を、GSTに対する抗体を用いた免疫染色によって調べた。Zeiss510レーザー走査型共焦点顕微鏡によって、染色を可視化した。HCT116細胞では、有意な結合は観察されなかった(データ示さず)。一貫して、2時間のさらなるインキュベーションで有意な細胞死が観察されなかったため、試験細胞については、Gd3+の毒性効果は観察されなかった(データ示さず)。
【0118】
より具体的には、図4Aに示されるように、SW620およびPC−3細胞の両方で、造影剤は、30分間にGRP受容体の細胞表面に鮮明な膜染色パターンで結合する。タンパク質の大部分は、PC−3細胞において、120分間のインキュベーション後に細胞に侵入した(図4Dおよび4E)。興味深いことに、タンパク質は、120分間での内在化後に安定であり、コントラストがエンドサイトーシスによるタンパク質分解に耐えることを示した。
【0119】
実施例3
本実施例は、標的部分を伴う造影剤が有意な細胞障害性を示さなかったことを示す。当該技術分野において公知の実験手順によるMTTアッセイにより、細胞系統SW620、SW480およびHEK293で、設計された造影剤の細胞障害性ついて調べた。簡単に説明すると、試験細胞を、48時間、Gd3+(50μMまでの濃度を伴う)の有無で、設計された造影剤と共にインキュベートした。次いで、細胞培養培地をインキュベーションから取り出した。次いで、細胞生存率を、MTTアッセイによって分析した。野生型(w.t.)CD2およびCA1.CD2タンパク質で処置したHEK293細胞において、生存率の僅かな減少が観察された。最大50μMまでの濃度で設計した造影剤で処置した試験したすべての細胞において、有意な毒性は観察されなかった(図5を参照のこと)。
【0120】
公開された文献は、GRPペプチド配列が、K<10−10で受容体に対して強力な親和性を有することを示唆する。GRPは、その受容体GRPRへの結合後、迅速な内在化を起こすことが公知である。上記で考察したように、GST−CA1.CD2−Bomは、PC−3およびSW620細胞において内在化を起こした。これらの研究に基づいて、CD2−GRP(配列)も同様に内在化されることが予想された。時間間隔の共焦点および免疫染色実験は、内在化の時間枠およびCD2−GRPの内在化後の細胞局在を実証することができる。さらに重要なことに、これらの実験は、内在化後のCD2−GRPの安定性および造影剤の安定性を示すことができる。図5を参照のこと。
【0121】
造影剤が安定性を欠くかまたは細胞分解の傾向がある場合、適宜標的配列を改変することができる。図6において示されるように、Nおよび/またはC末端のいずれかを阻止することによって、プロテアーゼによる分解およびGRP受容体への結合親和性を低減するようにGRP標的配列を改変することができる。さらに、接合または設計することによって、安定な造影タンパク質内の標的部分は、カルボキシラーゼまたはアミノペプチダーゼによるプロテイナーゼ分解を保護する。さらに、適切な可動性リンカーを伴うこの接合化標的ペプチド配列は、より良好な活性コンフォメーションを提供する。
【0122】
実施例4
設計されたタンパク質に結合する細胞のMR撮像
PC−3、SW480、およびHCT116のような3つの同じ細胞系統で、MR画像解析を行うことができる。PC−3細胞は、懸濁液において増殖させることができる。SW480およびHCT116細胞は懸濁液において増殖させることができないため、これらの細胞を、ペトリ皿において、7ml培地あたり4×10細胞の密度で播種することができる。異なる濃度のタンパク質造影剤を伴ういくらかのペトリ皿を、それぞれの画像化実験に供する(seed)ことができる。野生型CD2のような非造影タンパク質は、負の対照として使用することができ、蛍光プローブによって誘発されるGRPペプチドは、正の対照として使用することができる。異なる時間点におけるインキュベーション後、細胞をペレット化することができる。細胞を5mlのPBSで3回洗浄し、200μlのPBSに回収することができる。細胞を800gで5分間、遠心分離して、上清を取り出すことができる。
【0123】
60mm内径を伴うバードケージ共振子を具備した3T画像解析装置(imager)(Pharmascan300)などの画像解析装置を使用して、画像を得ることができる。画像を得るために使用される配列は、励起の反復時間/エコー時間/数 100/8.45/24、視野3.5cm、および1スライス1mmを伴うスピンエコーである。
【0124】
図6は、CA1.CD2−Bomがより強力なT1秤量した細胞画像化の増強を提供することを示す。T1緩和能は、HCT−116(1162ms/mM)へと比較して、PC−3(814ms/mM)へのCA1.CD2−Bom、およびPC−3(1555ms/mM)へのGd−DTPAにより、有意に短くなったが、これは、PC−3が高いGRPrを発現するという事実と一致する。結果は、CA1.CD2−Bomが選択的に、より高いGRPr発現レベルを伴う癌細胞のMR撮像を増強したことを示す。
【0125】
実施例5
本実験は、本発明に従って、標的化されることが可能な例示的な造影剤を示す。作製した標的化された造影剤の例を配列番号1〜13に示す。
【0126】
実施例6
本実施例は、蛍光タンパク質から誘導される多機能性プローブが、特定の位置に指向され得ることを実証する。図7は、例示的なプローブ(EGFP−CA1.CD2−a−Bom10)が、標的化されたマーカー(ボンベシン)を有する細胞に指向され得ることを示す。例えば、配列番号12および13を参照のこと。
【0127】
好適な実施例に関する上記の詳細な説明および添付の図面は、例示および説明のみの目的で提示されている。これらはすべてを網羅することを意図するものではなく、また、本発明の範囲および趣旨を制限することを意図するものでもない。実施態様は、本発明の原理およびその実施アプリケーションを最良の形で説明するために選択し、そして記載した。当該技術分野における当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本特許明細書について開示された本発明に多くのバリエーション加えることができることを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様に従う標的化された造影剤のスキーム図である。
【図2】図2は、本発明に適切な標的部分の表である。
【図3】図3は、ELISAにより、CA1.CD2−BomのPC−3細胞(GRPR発現細胞)ならびにHCT−116細胞(GRPR発現がより少ない細胞)への結合および標的化を示す。
【図4】図4A〜4Fは、造影剤が特定の細胞に対して標的化され、そして経時的に内在化されることを示す免疫蛍光染色によって得られる共焦点顕微鏡画像である。
【図5】図5は、造影剤が経時的に安定かつ活性状態(viable)であることを示す。
【図6】図6は、MR画像がGd−CA1.CD2−BomのPC−3細胞への標的化によって増強されること、およびHCT−116細胞よりPC−3細胞において、より強度の画像の増強が認められることを示す。
【図7】図7は、CA1.CD2N末端に融合したEGFPおよび造影剤CA1.CD2のC末端においてbom標的配列を伴うEGFP−CA1.CD2−a−Bom10を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)造影特性を有する造影タンパク質;および
b)少なくとも1つの標的部分、
を含む造影剤であって、前記少なくとも1つの標的部分が、前記造影タンパク質に有効に連結するかまたは取り込まれる、造影剤。
【請求項2】
前記造影タンパク質および前記標的部分が、末端において有効に連結する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
前記造影タンパク質および前記標的部分が、前記造影タンパク質に有効に連結するかまたは取り込まれる、請求項1に記載の造影剤。
【請求項4】
2つ以上の標的部分が、前記造影タンパク質に有効に連結する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項5】
前記造影タンパク質が磁気共鳴画像に適切である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項6】
前記標的部分が、特定の細胞においてエンドサイトーシスを誘導する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項7】
前記標的部分および造影配列が、共有結合またはペプチド結合を介して有効に連結する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項8】
前記造影タンパク質が、常磁性金属イオンにおいてキレート化する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項9】
標的ペプチドがガストリン放出ペプチドである、請求項1に記載の造影剤。
【請求項10】
前記常磁性(parametic)金属イオンがGd(III)である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項11】
c)前記少なくとも1つの標的部分の1つと前記造影タンパク質との間のリンカータンパク質をさらに含む、請求項1に記載の造影剤。
【請求項12】
造影剤を調製するための方法であって、以下の工程: a)造影タンパク質を選択する工程と;
b)標的タンパク質に結合することが可能な少なくとも1つの標的部分を選択する工程と;
c)前記標的部分および前記造影タンパク質を有効に連結させるかまたは取り込ませる工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
前記標的部分が、ガストリン放出ペプチド受容体に優先的に結合されるように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的部分が、癌細胞受容体に優先的に結合されるように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記造影タンパク質が、末端において前記標的部分に有効に連結する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記標的部分が、特定の細胞中への標的エンドサイトーシスを誘導するために選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記造影タンパク質が、常磁性金属イオンをキレート化する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記造影タンパク質が磁気共鳴画像に適切である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
動物またはヒト被験体の磁気共鳴画像のための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体に、標的タンパク質に結合することが可能なタンパク質造影剤を投与する工程と;
b)前記造影剤を前記標的タンパク質に結合させる工程と;および
c)前記標的化されたタンパク質の位置において前記被験体を撮像する工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
前記被験体が、優先的に前記標的タンパク質の部位において撮像される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体が、腫瘍位置において撮像される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が、核磁気共鳴によって撮像される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記標的造影剤、および本明細書において開示される造影剤を調製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−511428(P2009−511428A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530007(P2008−530007)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/035221
【国際公開番号】WO2007/030802
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(506036530)ジョージア ステート ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】