説明

標的核酸の塩基配列を解析するための解析素子、解析装置、及び解析方法

【課題】ポリメラーゼの固定化密度を低下させることなく、ポリメラーゼあるいはポリメラーゼによって伸長される2本鎖化した核酸が互いに干渉せず、標的核酸の塩基配列の解析可能な長さが長い解析装置及び解析方法を提供すること。
【解決手段】標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、前記解析装置が、基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、前記解析素子に液体を流す送液手段と、プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段とを有し、前記基体がセンサー部材領域を表面に有し、前記センサー部材領域が複数のポリメラーゼ固定化領域を有し、前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であり、前記送液手段が発生させる液体の流れ方向における前記複数のポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が、前記標的核酸の長さよりも長くなるように設定されていることを特徴とする解析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSequencing by synthesis法による標的核酸の塩基配列を解析するために有用な支持体上にポリメラーゼを固定させた標的核酸の塩基配列を解析するための解析素子、解析装置、及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸の塩基配列を高速に解読するための方法として、Sequencing by synthesis法と呼ばれる方法が提案されている。これはDNAポリメラーゼの触媒作用により、標的核酸の逆相補鎖を、プライマーの3' 末端に一塩基ずつ伸長する工程と、伸長されたヌクレオチドの種類を逐一同定する工程を含むものである。
【0003】
Sequencing by synthesis法の一実施形態として、支持体上にポリメラーゼを固定化したDNA塩基配列解析装置が使用される場合がある。
【0004】
従来、支持体上にポリメラーゼを固定化したDNA塩基配列解析装置には、光導波路上にポリメラーゼを担持したものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特表2002−543847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持体上にポリメラーゼを固定化した標的核酸の塩基配列解析装置は、標的核酸の塩基配列の解析可能な長さが短いという課題があった。
【0006】
また、支持体上に固定化されたポリメラーゼが、標的核酸を二本鎖化しても、互いに干渉しない手段として、ポリメラーゼの固定化密度を疎にするという方法がある。しかしながらこの方法では、DNA塩基配列解析装置から得られる信号強度が弱まってしまうという点が課題となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、信号強度を弱めることなく、すなわち、ポリメラーゼの固定化密度を低下させることなく、ポリメラーゼあるいはポリメラーゼによって伸長される2本鎖化した核酸が互いに干渉しない構成を設けることにより、標的核酸の塩基配列の解析可能な長さが長い標的核酸解析装置、及び標的核酸の解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、
前記解析装置が、
基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、を有し、
前記基体がセンサー部材領域を有し、
前記センサー部材領域が表面に複数のポリメラーゼ固定化領域を有し、
前記ポリメラーゼが前記ポリメラーゼ固定化領域に固定化されており、
前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であり、
前記送液手段が発生させる液体の流れ方向における前記複数のポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が、前記標的核酸の長さよりも長くなるように設定されていることを特徴とする解析装置である。
また、別の本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、
前記解析装置が、
基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、を有し、
前記基体が多孔質体からなり、
前記基体が、センサー部材領域と、前記センサー部材領域が表面に有する複数のポリメラーゼ固定化領域とを有し、
前記ポリメラーゼが前記ポリメラーゼ固定化領域に固定化されており、
前記送液手段が、前記基体を横断する方向に液流を発生させることを特徴とする解析装置。
また、別の本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
ポリメラーゼと、センサー部材領域を表面に有する基体と、前記センサー部材領域のうち前記ポリメラーゼが固定された複数のポリメラーゼ固定化領域とからなる解析素子に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む検体を添加する工程と、
前記ポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が前記標的核酸の長さよりも長くなる方向にヌクレオチド誘導体を送液する工程と、
前記プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する工程と、
を有し、
前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であることを特徴とする解析方法である。
また、別の本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析素子であって、
前記解析素子が、
導電体領域と絶縁体領域とからなる基体と、ポリメラーゼとを有し、
前記導電体領域が有するポリメラーゼ固定化領域に前記ポリメラーゼが固定されており、
前記基体が前記基体の厚み方向を深さ方向とする複数の孔を有し、
前記導電体領域が前記孔を形成する面の一部をなしており、
前記貫通孔の径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする解析素子である。
また、別の本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する標的核酸解析装置であって、
前記標的核酸解析装置が、
解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、を有し、
前記解析素子が、
導電体領域と絶縁体領域とからなる基体と、ポリメラーゼとを有し、
前記導電体領域が有するポリメラーゼ固定化領域に前記ポリメラーゼが固定されており、
前記基体が前記基体の厚み方向を深さ方向とする複数の孔を有し、
前記導電体領域が前記孔を形成する面の一部をなしており、
前記貫通孔の径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする標的核酸解析装置である。
また、別の本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
解析素子に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む検体を添加する工程と、
ヌクレオチド誘導体を送液する工程と、
前記ポリメラーゼにより前記プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する工程とを有し、
前記解析素子が、
導電体領域と絶縁体領域とからなる基体と、ポリメラーゼとを有し、
前記導電体領域が有するポリメラーゼ固定化領域に前記ポリメラーゼが固定されており、
前記基体が前記基体の厚み方向を深さ方向とする複数の孔を有し、
前記導電体領域が前記孔を形成する面の一部をなしており、
前記貫通孔の径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする解析方法である。
また、別の本発明は、
ポリメラーゼと、センサー部材領域を表面に有する基体と、前記センサー部材領域のうち前記ポリメラーゼが固定された複数のポリメラーゼ固定化領域とからなる解析素子を用いて標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
少なくともポリメラーゼによる前記標的核酸と対合したプライマーの伸長反応を行う工程において、該伸長反応を行う反応液に2本鎖DNAに特異的なエキソヌクレアーゼを共存させることを特徴とする解析方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサー部材領域の表面に保持される複数のポリメラーゼにより伸長される二本鎖化した標的核酸が相互に干渉しないため、基体表面に固定されたポリメラーゼで長い2本鎖DNAの合成が可能となる。すなわち標的核酸の塩基配列の解析可能な長さが長い解析素子、標的核酸解析装置、及び標的核酸の解析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための第1〜第4の形態について説明する。
(第1の形態)
以下、本発明の第1の形態について説明する。
本発明は、
標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、
前記解析装置が、
基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段とを有し、
前記基体がセンサー部材領域を有し、
前記センサー部材領域が表面に複数のポリメラーゼ固定化領域を有し、
前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であり、
前記送液手段が発生させる液体の流れ方向における前記複数のポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が、前記標的核酸の長さよりも長くなるように設定されている解析装置である。
【0011】
以下、第1の形態の標的核酸の塩基配列を解析する解析装置を構成する各部分について説明する。
【0012】
(1)解析素子
(1−1)基体
基体は、標的核酸の塩基配列を検知するためのセンサー部材領域と、非センサー部材領域で構成される。また、センサー部材領域の表面は、複数のポリメラーゼ固定化領域で構成される。
【0013】
センサー部材領域は、プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析するために、電気を流したり、光を導波したり、磁気抵抗の機能を有するものである。このようなセンサー部材領域としては、光学的、電気的あるいは磁気的信号を検知可能な材料を用いることができる。例えば、ガラス、表面を改変したガラス、シリコン、金属、半導体、高屈折率誘電体、水晶、ゲル、ポリマーなどの導電性材料や光導波路を用いてセンサー部材料域を形成することができる。
【0014】
ポリメラーゼ固定化領域の幅は10nm以上50nm以下であることが好ましい。これは、ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であると、ポリメラーゼ固定化領域の幅内に実質的にポリメラーゼ1分子が固定化されていることとなるからである。また、ポリメラーゼ固定化領域の長さは、送液手段により発生される液体の流路幅程度であることが好ましい。さらに、ポリメラーゼ固定化領域は、送液手段の送液方向(液流の方向)における複数のポリメラーゼ固定化領域同士の最短距離が、標的核酸の長さよりも長くなるよう配置する。
【0015】
一方、非センサー部材領域は、絶縁性、光不透過性の機能を有するものである。このような非センサー部材領域としては、ガラス、シリコン、金属、半導体、水晶、ゲル、ポリマーなどでセンサー部材領域を構成する部材と異なる部材が挙げられる。
【0016】
また、基体は、基板形状(板状形状)であっても良いし、円筒形状であっても良い。なお、基体は多孔質体であっても良い。基体の表面にセンサー部材領域が存在する場合には、図8の上面図に示すように、センサー部材領域701が幅の狭い長方形形状もしくは楕円形状であることが好ましい。ここで、また、前記センサー部材領域に固定化される複数のポリメラーゼ固定化領域204同士が略平行に存在していることが好ましい。ここで、ポリメラーゼ固定化領域が互いに平行とは、各々のポリメラーゼ固定化領域に存在する線分のうち、最も長い線分同士が平行であるという意味である。また、「略」平行とは送液手段により発生させる液体の流れる幅において上記線分同士が交わらないことである。
(1−2)ポリメラーゼ
ポリメラーゼは、標的核酸を鋳型として標的核酸に相補的なプライマーの3’末端に、標的核酸の対応する塩基に相補的な塩基を有するヌクレオシド三リン酸を、伸長する機能を有する。
【0017】
ポリメラーゼは、センサー部材領域が表面に有するポリメラーゼ固定化領域に固定され、かつセンサー部材領域が検知可能な範囲に存在していれば良い。ここで、センサー部材領域がポリメラーゼ固定化領域を表面に有するとは、センサー部材領域がセンサー部材領域と外界との界面にポリメラーゼ固定化領域を有していることである。また、ポリメラーゼ固定化領域の幅は10nm以上50nm以下であることが好ましい。したがって、ポリメラーゼは、ポリメラーゼ固定化領域に直接固定されていても良いし、リンカーなどを介して固定されていても良い。なお、ポリメラーゼは、ポリメラーゼ固定化領域内で可能な限り高い密度でセンサー部材領域の表面上に保持されていることが望ましく、ポリメラーゼ同士が互いに隣接して配置されることが好ましい。
【0018】
このようなポリメラーゼとしては、酵素番号EC 2.7.7.7に分類され、以下の反応を触媒する酵素であれば、その由来については限定されない。
【0019】
deoxynucleoside triphosphate + DNA(n) = diphosphate + DNA(n+1)
第1の形態の解析素子を作製する方法を以下に述べる。
【0020】
まず、少なくとも表面が非センサー部材である基板上にセンサー部材を積層させる。非センサー部材である基板としては、センサー部材と異なる性質を有する部材であれば特に制限はないが、センサー部材が導電体材料である場合には、非センサー部材である基板としては、シリコン、酸化アルミニウム、石英、ガラス、セラミック、プラスティックなどが挙げられる。またセンサー部材が光導波機能を有する材料である場合には、非センサー部材である基板としては、シリコン、酸化アルミニウム、セラミックなどが挙げられる。センサー部材として導電体材料を用いる場合には、導電体材料としては金属、導電性高分子、金属酸化物及び炭素材料などが挙げられる。金属酸化物は、他の導電体材料によって導電性を向上、もしくは、付与されていてよい。成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(chemical vapor deposition)法、ディッピング法、MBE法、蒸着法などが挙げられる。センサー部材として光導波機能を有する材料を用いる場合、センサー部材としては、ガラス、高屈折率誘電体、水晶、ゲル、ポリマーなどが用いられる。成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(chemical vapor deposition)法、ディッピング法、MBE法、蒸着法などが挙げられる。
【0021】
続いて積層したセンサー部材領域上に、ポリメラーゼ又はポリメラーゼと標的核酸及びプライマーとからなる合成複合体を、固定化する。センサー部材領域表面へのポリメラーゼの固定化方法としては、例えば、以下に述べる(1)から(3)の方法を挙げることができる。
【0022】
前記ポリメラーゼ固定化領域又は多孔性の膜上にポリメラーゼを固定化する方法としては、例えば以下に述べる(i)〜(iii)の方法を挙げることができる。
【0023】
(i)共有結合法
センサー部材領域表面に直接官能基を導入し、この官能基とポリメラーゼとを共有結合させてポリメラーゼを固定化する。あるいは、センサー部材領域に接触して配置した担体に官能基を導入し、この官能基とポリメラーゼとを共有結合させて酵素を固定化する。
【0024】
このような共有結合に利用できる官能基として例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドラジノ基、チオシアネート基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲン基、酸エステル基、リン酸基、チオール基、ジスルフィド基、ジチオカルバメート基、ジチオホスフェート基、ジチオホスホネート基、チオエーテル基、チオ硫酸基、チオ尿素基を挙げることができる。
【0025】
また、アルキルチオールのチオール基が金などの金属に作用して結合し容易に単分子膜(自己組織化単分子膜)を形成できることを利用し、アルキルチオールのアルキル基に予め導入した官能基を介して共有結合により酵素を金属に結合させて酵素を固定化する。
アルキルチオールのアルキル基に予め導入した官能基と酵素との共有結合は、例えば二官能性試薬を用いて形成することができる。
【0026】
代表的な二官能性試薬としては、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸、N,N’−o−フェニレンジマレイミド、N−スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシニミジルマレイミド酢酸、N−スクシニミジル−4−マレイミド酪酸、N−スクシニミジル−6−マレイミドヘキサン酸、N−スルホスクシニミジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スルホスクシニミジル−3−マレイミド安息香酸、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(8−マレイミドカプリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(11−マレイミドウンデカノイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N[2−(1−ピペラジニル)エチル]マレイミド・二塩酸、ジスルホン化合物(例えば、ジビニルスルホン化合物など)等が挙げられる。
また、導電体領域に接触して配置する担体としてはアガロース、アガロース分解物、κ−カラギーナン、寒天、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0027】
(ii)吸着法(その1)
センサー部材領域とポリメラーゼとの疎水性相互作用や静電相互作用を利用した物理的吸着法によりポリメラーゼを固定化する。センサー部材領域へのポリメラーゼの物理的吸着が不可能あるいは不十分である場合には、ポリメラーゼが物理的吸着を起こす担体を介してポリメラーゼを固定化できる。このような担体としては、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリビニルピリジン、アミノ基で変性したデキストラン(たとえばDEAE−デキストラン)、キトサン、ポリグルタメート、ポリスチレンスルホン酸、硫酸デキストラン等のポリアニオンやポリカチオンからなる担体を用いることができる。担体とポリメラーゼとの静電相互作用を利用したイオン結合法によりポリメラーゼを担体に固定し、このポリメラーゼ固定化担体をセンサー部材領域に接触させ配置する。
【0028】
(iii)吸着法(その2)
遺伝子組換えタンパク質の精製を容易にするために用いられる各種のアフィニティータグを利用して固定化する。例えば、HA(ヘマグルチニン)、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジンタグを利用してポリメラーゼを固定化する。
【0029】
(2)解析装置
本発明の解析装置は、上記解析素子に加えて以下の構成を有している。
(2−1)送液手段
送液手段は、検体などの液体を前記解析素子に流す機能を有し、送液手段が発生させる液体の流れ(送液)の方向におけるポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が標的核酸の長さよりも長くなる方向に送液する送液手段である。このような方向で送液することにより、ポリメラーゼによる標的核酸の伸長工程において、2本鎖化した核酸同士が、互いに接触せず、干渉しないようにすることができる。なお、前記解析素子のポリメラーゼ固定化領域間の距離が標的核酸の長さよりも大きければ、送液手段が発生させる液体の流れの方向が一定方向であればいずれの方向であっても標的核酸の長さよりも送液手段が発生させる液体の流れの方向におけるポリメラーゼ固定化領域間の距離が長くなる。
【0030】
このような送液手段としては、前記解析素子にヌクレオチド誘導体の含まれた溶液あるいは洗浄液を送液するためのポンプなどをいう。
【0031】
送液手段が発生させる送液の速度は、合成された2本鎖DNAと基体との親和力に打ち勝って合成された2本鎖DNAを送液方向に流す程度であることが望ましい。また支持体上に固定化されたポリメラーゼと合成された2本鎖DNAとの合成複合体が脱離しない程度の速度で、流路の機械的限界強度以下であることが望ましい。そのような点から送液速度は、線流速10乃至3000 cm/h、好ましくは150乃至1000cm/hであることが好ましい。
(2−2)解析手段
プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段とは、ヌクレオチド誘導体に導入された修飾基の構造によって、選択される光学的評価手段、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段である。
【0032】
光学的評価手段としては、分光光度計,蛍光光度計など投光系−受光系を有するものを挙げることができる。解析装置におけるセンサー部材領域として、光透過性の導波路の一部を使用した場合には、該導波路を投光系として用いることができる。
【0033】
電気化学的評価手段としては、ポテンシオスタットなど電圧を印加する手段と、電流を検知する手段とを兼ね備えたものを挙げることができる。解析装置においては、導電体領域で電圧の印加と電流の検出をするため、対極と参照電極とを必要とする。対極と参照電極は解析素子に予め作り込んでおくこともできるし、解析装置側に設けてもよい。
【0034】
磁気的検出手段としては、ホール素子、磁気抵抗効果素子などを挙げることができる。
【0035】
(第2の形態)
第2の形態の解析装置は、基体が多孔質体であり、かつ、送液手段が発生させる液体の流れ方向における前記複数のポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が、前記標的核酸の長さよりも長くなるように設定されている代わりに、送液手段が発生させる液流が、前記基体を横断する一定の方向に液流を発生させる点以外は第1の形態と同様である。
【0036】
基体が有するセンサー部材領域は、基体の表面に存在していても良いし、基体の内部に存在していても良い。なお、基体の内部にセンサー部材領域が存在する場合であっても、センサー部材領域が表面にポリメラーゼ固定化領域を有するという表現を用いるものとする。
【0037】
基体が内部にセンサー部材領域を有している場合の解析素子の例を図9に示す。
【0038】
基体401は多孔質体であり、基体401の内部にセンサー部材領域701が存在する。このようなセンサー部材領域401は、幅の狭い長方形形状もしくは楕円形状であることが好ましい。また、基体である多孔質体全体がセンサー部材領域であっても良い。
【0039】
また、ポリメラーゼが多孔質からなる基体の表面に固定される場合には、基体が有する空孔の径は、ポリメラーゼや標的核酸を通すには小さいが、ヌクレオシド 5’‐三リン酸の誘導体を通すには大きいことが好ましい。一方、ポリメラーゼが基体の内部に固定されている場合には、基体が有する空孔は十分大きいことが好ましい。例えば、空孔の平均径は100nm以上であることが好ましい。このような基体の材料としては、金属、導電性高分子、金属酸化物、炭素材料もしくはこれらの混合体などが挙げられる。金属で形成される多孔質体の例としては、発泡金属、電析金属、電解金属、焼結金属、繊維状金属が挙げられる。
【0040】
また、解析装置が有する送液手段は、該送液手段が発生させる液流が前記基体を横断する一定の方向に液流を発生させる。言い換えれば、前記送液手段が発生させる一定方向の液流が該解析素子の基体を横断するように、解析素子が配置されている。
【0041】
送液手段が、基体を横断する一定の方向に液流を発生させることで、第1の形態と同様、ポリメラーゼによる標的核酸の伸長工程において、2本鎖化した核酸同士が、互いに接触せず、干渉しないようにすることができる。
【0042】
(第3の形態)
第3の形態としては、基体が柱状の孔を有しており、前記孔を形成する壁面の一部である導電体領域に前記ポリメラーゼを固定させた形態である。
【0043】
以下、以下、第3の形態の標的核酸の塩基配列を解析する解析装置を構成する各部分について説明する。
【0044】
(1)解析素子
第3の形態の標的核酸解析装置に用いる解析素子に関しては、基体以外の構成要件は第1の形態と同様であるため、基体についてのみ述べる。
(1−1)基体
基体は、図4の上面図に示すように、貫通孔を有する。貫通孔同士は接触することなく、間隔を空けて存在する。
【0045】
貫通孔の大きさは、使用するポリメラーゼ1分子もしくは2本鎖DNAの径のいずれか大きい方のサイズより大きく、その2倍を超えないことが望ましい。これは、それぞれの貫通孔に2分子以上のポリメラーゼのDNA合成複合体を固定化させないためである。具体的には、10nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0046】
また、貫通孔の深さは、特に規定はないが、貫通していない孔の場合には、ポリメラーゼ固定化領域と前記孔の底部との長さが標的核酸の長さよりも長いことが好ましい。これは貫通していない孔の場合、孔の深さが標的核酸より浅いと、合成された2本鎖DNAが孔の底面と接触するからである。
【0047】
基体が有する貫通孔を形成する壁面の一部は導電体領域で構成される。このような導電体領域の深さ方向の大きさは、ポリメラーゼ一分子の径より大きく、その2倍を超えないことが好ましい。
【0048】
また、第3の形態の解析素子は、例えば、以下のような方法で作製することができる。
【0049】
まず、少なくとも表面が絶縁性である基板上に導電体材料を積層させる。絶縁性基板としては、絶縁性であれば特に制限はないが、シリコン、酸化アルミニウム、石英、ガラス、セラミック、プラスティックなどが挙げられる。導電体材料としては金属、導電性高分子、金属酸化物及び炭素材料などが挙げられる。金属酸化物は、他の導電体材料によって導電性を向上、もしくは、付与されていてよい。成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(chemical vapor deposition)法、ディッピング法、MBE法、蒸着法などが挙げられる。
【0050】
続いて積層した導電体材料上に絶縁性の部材を積層させる。絶縁性部材としては絶縁性であれば特に制限はないが、シリコン、酸化アルミニウム、石英、ガラス、セラミック、プラスティックなどが挙げられる。成膜方法としては先に挙げた方法が挙げられる。
【0051】
次に、例えば電子線描画装置、収束イオンビーム加工装置により貫通孔をパターニングする。特に基板としてアルミニウムを用い、陽極酸化アルミナナノホールを貫通孔とした構成を、次の様にして作製することができる。即ち前記パターニング工程により、最表面の絶縁性膜及びその下層の導電体材料層を除去後、酸性又はアルカリ性電解液中で陽極酸化することにより、先述のパターニングにより露出したアルミニウム表面から、膜面に対し垂直に配向した微小な細孔を形成させる。次に基板の裏面を機械的に研磨して、貫通孔を作製する。
【0052】
最後に、ポリメラーゼ又はポリメラーゼと標的核酸及びプライマーとからなる合成複合体を、露出された貫通孔側面の導電体領域表面に固定化する。これにより、基体及び解析素子が形成される。導電体領域表面へのポリメラーゼの固定化方法としては、例えば、以下に述べる(1)から(3)の方法を挙げることができる。
【0053】
(1)共有結合法
導電体領域表面に直接官能基を導入し、この官能基とポリメラーゼとを共有結合させてポリメラーゼを固定化する。あるいは、導電体領域に固定させた担体に官能基を導入し、この官能基とポリメラーゼとを共有結合させて酵素を固定化する。
【0054】
このような共有結合に利用できる官能基として例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドラジノ基、チオシアネート基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲン基、酸エステル基、リン酸基、チオール基、ジスルフィド基、ジチオカルバメート基、ジチオホスフェート基、ジチオホスホネート基、チオエーテル基、チオ硫酸基、チオ尿素基を挙げることができる。
【0055】
また、アルキルチオールのチオール基が金などの金属に作用して結合し容易に単分子膜(自己組織化単分子膜)を形成できることを利用し、アルキルチオールのアルキル基に予め導入した官能基を介して共有結合により酵素を金属に結合させて酵素を固定化する。アルキルチオールのアルキル基に予め導入した官能基と酵素との共有結合は、例えば二官能性試薬を用いて形成することができる。
【0056】
代表的な二官能性試薬としては、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸、N,N'−o−フェニレンジマレイミド、N−スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシニミジルマレイミド酢酸、N−スクシニミジル−4−マレイミド酪酸、N−スクシニミジル−6−マレイミドヘキサン酸、N−スルホスクシニミジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スルホスクシニミジル−3−マレイミド安息香酸、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(8−マレイミドカプリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(11−マレイミドウンデカノイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N[2−(1−ピペラジニル)エチル]マレイミド・二塩酸、ジスルホン化合物(例えば、ジビニルスルホン化合物など)等が挙げられる。
また、導電体領域に接触して配置する担体としてはアガロース、アガロース分解物、κ−カラギーナン、寒天、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0057】
(2)吸着法(その1)
導電体領域とポリメラーゼとの疎水性相互作用や静電相互作用を利用した物理的吸着法によりポリメラーゼを固定化する。導電体領域へのポリメラーゼの物理的吸着が不可能あるいは不十分である場合には、ポリメラーゼが物理的吸着を起こす担体を介してポリメラーゼを固定化できる。このような担体としては、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリビニルピリジン、アミノ基で変性したデキストラン(たとえばDEAE−デキストラン)、キトサン、ポリグルタメート、ポリスチレンスルホン酸、硫酸デキストラン等のポリアニオンやポリカチオンからなる担体を用いることができる。担体とポリメラーゼとの静電相互作用を利用したイオン結合法によりポリメラーゼを担体に固定し、このポリメラーゼ固定化担体を導電体領域に接触させ配置する。
【0058】
(3)吸着法(その2)
遺伝子組換えタンパク質の精製を容易にするために用いられる各種のアフィニティータグを利用して固定化する。例えば、HA(ヘマグルチニン)、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジンタグを利用してポリメラーゼを固定化する。
【0059】
以上の工程により、導電体領域を、貫通孔を有する基板における該貫通孔の側面に配置することを特徴とする解析素子を作製することができる。
【0060】
このような解析素子に、一定方向のフローを流す手段と、塩基種別解析手段を設けることで第3の形態の解析装置を得ることができる。
【0061】
また、前記解析素子を用いたDNA塩基配列の解析方法としては、以下の工程を有する方法を挙げることができる。
工程1:前記解析素子に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む試料を添加する。これにより標的核酸とプライマーとの相補的結合対は、解析素子のポリメラーゼにより捕捉される。
工程2:ヌクレオチド誘導体を前記ポリメラーゼと共存させる。このヌクレオチド誘導体は、塩基部分は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、又はチミン(T)(又はウラシル(U))であり、各々の塩基に対応して、それらのリボース又デオキシリボース部位が相異なる構造で修飾されている。この修飾基の構造は、光学的評価手段、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、各々判別することができるものとする。またヌクレオチド誘導体は、ポリメラーゼの触媒作用によりプライマーの3'末端に、1塩基伸長されると、それ以上の伸長反応が阻害されるように、前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基で修飾されているものとする。この工程により、標的核酸とプライマーとの相補的結合対におけるプライマーの3'末端に、標的核酸と相補的な塩基を有するヌクレオチド誘導体が、一塩基だけ伸長される。
工程3:必要であれば、伸長反応に取り込まれなかった余分のヌクレオチド誘導体を除去する。
工程4:ヌクレオチド誘導体に導入された修飾基の構造によって、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する。
工程5:前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基を除去する。除去した後にはプライマーの3'末端は、再びポリメラーゼの触媒作用による伸長反応を受けることが可能になるものとする。
上記工程2から工程5を繰返すことにより、標的核酸のDNA塩基配列を逐一解析していくことができる。
【0062】
前述の解析装置を用いたDNA塩基配列の解析方法としては、以下の工程を有する方法を挙げることができる。
工程1:解析装置に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む試料を添加する。これにより標的核酸とプライマーとの相補的結合対は、解析装置のポリメラーゼにより捕捉される。なお解析装置が予め標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む場合にはこの工程は省略できる。
工程2:ヌクレオチド誘導体を前記ポリメラーゼと共存させる。このヌクレオチド誘導体は、塩基部分は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、又はチミン(T)(又はウラシル(U))であり、各々の塩基に対応して、それらのリボース又デオキシリボース部位が相異なる構造で修飾されている。この修飾基の構造は、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、各々判別することができるものとする。またヌクレオチド誘導体は、ポリメラーゼの触媒作用によりプライマーの3'末端に、1塩基伸長されると、それ以上の伸長反応が阻害されるように、前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基で修飾されているものとする。この工程により、標的核酸とプライマーとの相補的結合対におけるプライマーの3'末端に、標的核酸と相補的な塩基を有するヌクレオチド誘導体が、一塩基だけ伸長される。
工程3:必要であれば、伸長反応に取り込まれなかった余分のヌクレオチド誘導体を除去する。
工程4:ヌクレオチド誘導体に導入された修飾基の構造によって、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する。
工程5:前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基を除去する工程。この工程の後にはプライマーの3'末端は、再びポリメラーゼの触媒作用による伸長反応を受けることが可能になるものとする。
上記工程2から工程5を繰返すことにより、標的核酸のDNA塩基配列を逐一解析していくことができる。
【0063】
(第4の形態)
以下、本発明の第4の形態について説明する。
【0064】
本発明は、ポリメラーゼと、センサー部材領域を表面に有する基体と、前記センサー部材領域のうち前記ポリメラーゼが固定された複数のポリメラーゼ固定化領域とからなる解析素子を用いて標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
少なくともポリメラーゼによる前記標的核酸と対合したプライマーの伸長反応を行う工程において、該伸長反応を行う反応液に2本鎖DNAに特異的なエキソヌクレアーゼを共存させることを特徴とする解析方法である。
【0065】
このような方法を用いることにより、ポリメラーゼの固定化密度を疎にすることなく、ポリメラーゼの触媒作用により標的核酸の2本鎖化が進行した状況において、合成された2本鎖DNAは、共存するエキソヌクレアーゼにより分解される。そのため、合成された2本鎖DNAは、他のポリメラーゼやDNA分子に接触することが防止されるので、標的核酸の塩基配列の解析可能な長さが長くなる。
【0066】
合成された2本鎖DNAを分解する手段は、具体的にはラムダエキソヌクレアーゼやエキソヌクレアーゼIIIなどの2本鎖DNA特異的なエキソヌクレアーゼを共存させることによって達成できる。ラムダエキソヌクレアーゼ(EC 3.1.11.3)は、2本鎖DNAにのみ作用し、その5'末端から3'末端方向へ、一塩基ずつヌクレオシド5'-リン酸を加水分解により切出す酵素である。そうした触媒作用を有していれば、その由来については限定されない。エキソヌクレアーゼIII(EC 3.1.11.2)は、2本鎖DNAにのみ作用し、その3'末端から5'末端方向へ、一塩基ずつヌクレオシド5'-リン酸を加水分解により切出す酵素である。そうした触媒作用を有していれば、その由来については限定されない。
ラムダエキソヌクレアーゼにより切出されるストランドはプライマー鎖であるので、プライマーの5'末端はリン酸化されている必要がある。
【0067】
前記解析方法としては、例えば、以下の工程により行うことができる。
工程1:解析装置に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む試料を添加する。これにより標的核酸とプライマーとの相補的結合対は、解析装置のポリメラーゼにより捕捉される。
工程2:ヌクレオチド誘導体を前記ポリメラーゼと共存させる。このヌクレオチド誘導体は、塩基部分は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、又はチミン(T)(又はウラシル(U))であり、各々の塩基に対応して、それらのリボース又デオキシリボース部位が相異なる構造で修飾されている。この修飾基の構造は、光学的評価手段、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、各々判別することができるものとする。またヌクレオチド誘導体は、ポリメラーゼの触媒作用によりプライマーの3'末端に、1塩基伸長されると、それ以上の伸長反応が阻害されるように、前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基で修飾されているものとする。この工程により、標的核酸とプライマーとの相補的結合対におけるプライマーの3'末端に、標的核酸と相補的な塩基を有するヌクレオチド誘導体が、一塩基だけ伸長される。
工程3:必要であれば、伸長反応に取り込まれなかった余分のヌクレオチド誘導体を除去する。
工程4:ヌクレオチド誘導体に導入された修飾基の構造によって、光学的評価手段、電気化学的評価手段、あるいは磁気的評価手段により、伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する。
工程5:前記修飾基又は前記修飾基とは別の種類の修飾基を除去する。除去した後にはプライマーの3'末端は、再びポリメラーゼの触媒作用による伸長反応を受けることが可能になるものとする。
上記工程2から工程5を繰返すことにより、標的核酸のDNA塩基配列を逐一解析していくことができるが、本発明は、特に上記工程2において、伸長反応を行う反応液中にエキソヌクレアーゼを共存させることを特徴とする。
【実施例】
【0068】
すべての実施例に共通する事項として、センサー部材領域上に固定化されたポリメラーゼの定量方法や、ポリメラーゼにより合成される2本鎖DNAの平均的長さ(塩基数)の測定方法について説明する。
【0069】
センサー部材領域上にポリメラーゼが固定化された解析素子に対して、適当な緩衝液中で1本鎖標的核酸とプライマーを添加する。プライマーは、標的核酸にハイブリダイゼーションし、3'伸長末端に隣接する1塩基目と2塩基目が相異なる様に設計しておく。
続いて伸長される1塩基目に対応するヌクレオシド5'−三リン酸を添加する。
この工程で添加したヌクレオシド5'−三リン酸はプライマーの3'末端に付加され、ピロリン酸が遊離する。適当な時間経過後、反応溶液を回収する。回収した反応溶液に、ATP sulfurylase (EC 2. 7. 7. 4)及び、Adenylylsulfateを添加することによって、次の反応:
Pyrophosphate + Adenylylsulfate = ATP + Sulfate
を惹起させ、ATPを合成する。
更に、この反応溶液にルシフェラーゼ(EC 1. 13. 12. 7)及び、ルシフェリンを添加することによって、次の反応:
luciferin + O2 + ATP = oxidized luciferin + CO2 + AMP + diphosphate + hn
を惹起する。ルミノメータを用いて、この反応に伴う発光量(L1)を計測する。
【0070】
発光量(L1)は反応溶液中のATP量に比例し、これは先の反応溶液中のピロリン酸量に比例する。ピロリン酸の量は、プライマーの3'末端に伸長されたヌクレオチドの数に相当するので、発光量(L1)は、固定化されたポリメラーゼの量に比例する。
【0071】
続いて、解析素子に対して、4種類のヌクレオシド5'−三リン酸の混合溶液を添加し、伸長反応を開始させる。適当な時間の経過後、反応溶液を回収し、前述の酵素及び基質を添加することによって、ルシフェリンの発光反応に導き、発光量(L2)をルミノメータにより計測する。
【0072】
発光量(L2)は反応溶液の回収時点までに伸長されたヌクレオチドの総量に比例する。
計測される2つの発光量を用いて計算される次の値:
(L2+L1)/L1
を、ポリメラーゼにより合成される2本鎖DNAの平均的長さ(塩基数換算)として、以下の実施例における評価方法として用いる。
【0073】
次にすべての実施例に共通する事項として、DNAポリメラーゼの調製方法について説明する。
Thermus aquaticus [ATCC 25104]より常法によりゲノムDNAを取得する。このゲノムDNAを鋳型にして、以下の合成オリゴDNAをプライマーとして用いてPCRを行い、2487bpのDNA増幅産物を得る。
5’- aataatACCGGTctgcccctctttgagcccaagggccgggtc -3’ (AgeI) [配列番号1]、及び
5’- aataatGTCGACtcactccttggcggagagccagtcctcccc-3’ (SalI) [配列番号2]
このDNA増幅産物を制限酵素AgeI及びSalIで消化切断し、pET-45b(+)(Novagen社製)の同じ制限酵素サイトに挿入することによって、発現ベクターpET45-TaqDPを作製する。
発現ベクターpET45-TaqDPを常法に従いE.coli BL21(DE3)に形質転換する。形質転換体は抗生物質アンピシリンに対する耐性株として選別することができる。
【0074】
形質転換体を、抗生物質としてアンピシリンを添加したLB培地10mLで一晩プレ・カルチャーする。その後、その0.2mLを、100mLのLB-Amp培地に添加し、30℃、170rpmで4時間振とう培養する。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続ける。IPTG 誘導した形質転換体を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁する。凍結融解及びソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導発現されたHisタグ融合タンパク質をニッケルキレートカラムを用いて精製する。
【0075】
上記測定方法に供される標的核酸のモデルとして、大腸菌由来のゲノムDNA(Escherichia coli K-12, ATCC 10798D-5)を、またプライマーとして以下の合成オリゴDNA
5'- aaattgaagagtttgatcatggctc -3' [配列番号3]
を用いた。配列番号3で表されるプライマーは、16SリボゾーマルRNAをコードする遺伝子に相補的な配列で、3'末端に最初に伸長される塩基は、アデニン(A)である。
【0076】
(実施例1)
本実施例は、伸長される二本鎖化した標的核酸が互いに干渉しない手段として、一定方向のフローを与えることで、二本鎖化した標的核酸間にフローによる障壁を形成させることを特徴とする例を説明する。なお、標的核酸は、大腸菌由来のゲノムDNA(Escherichia coli K-12, ATCC 10798D-5)を、制限酵素Nru Iで消化したフラグメントを用い、プライマーとして以下の合成オリゴDNA5'- aaattgaagagtttgatcatggctc -3' [配列番号3]を用いる。このプライマーにより解析される標的核酸の長さは、1,439塩基対で、約480 nmである。
【0077】
図1は本実施例の検出素子の一部を示す概略図である。基板101上に流路102が形成されており、流路102に交差して導波路103が設けられている。導波路103の一部が流路の底面で露出しており、ポリメラーゼが固定化される支持体表面(センサー部材領域)104として利用される。
【0078】
図2は図1における支持体表面104部分を拡大した模式図である。図2において、支持体表面104上には、ポリメラーゼ固定化領域204とポリメラーゼ非固定化領域205とが交互に、送液方向に交叉して順次形成されている。ポリメラーゼ固定化領域の幅は10乃至50nmで、ここにポリメラーゼ201が固定化されている。ポリメラーゼ非固定化領域の幅は、約500nmであり、標的核酸202が2本鎖化されても、下流のポリメラーゼに衝突しない程度の距離で保たれている。
【0079】
図3はポリメラーゼ固定化領域204とポリメラーゼ非固定化領域205とを支持体表面104上に順次形成する方法の一例を示した概略図である。支持体表面104上にレジスト301を塗布し、電子線描画プロセスによってポリメラーゼ固定化領域204をパターニングする。ここに、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)を反応させ、シランカップリングによりポリメラーゼ固定化領域204上にチオール基を修飾する。次にMaleimido-C3-NTA(商品名、同仁化学研究所製、化学名:
N-[5-(3'-Maleimidopropylamido)-1-carboxypentyl]iminodiacetic acid, disodium salt, monohydrate)を反応させ、ポリメラーゼ固定化領域204上にニトリロトリ酢酸基を修飾する。
次にレジスト301を剥離し、ここに、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)を反応させ、シランカップリングによりポリメラーゼ非固定化領域205上にチオール基を修飾する。次に4-Maleimidobutyric acid(シグマ−アルドリッチ社製)を反応させ、ポリメラーゼ非固定化領域205上にカルボキシル基を修飾する。
【0080】
次にニッケルイオンを添加し、ポリメラーゼ固定化領域204上にニトリロトリ酢酸のニッケル錯体(Ni−NTA)を修飾する。
【0081】
最後にポリメラーゼ又はポリメラーゼと標的核酸及びプライマーとからなる複合体を添加し、ポリメラーゼに付加されたヒスチジンタグを利用して、これらをポリメラーゼ固定化領域204上に固定化する。
【0082】
本実施例の解析装置においては、導波路上に固定化されたポリメラーゼを利用して、Sequencing by synthesis法により標的核酸の塩基配列を解析する目的に使用することができる。その解析手順の一例について説明する。
【0083】
ポリメラーゼ固定化領域204上に固定化されたポリメラーゼに、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を添加することにより、ポリメラーゼと相補的結合対との複合体を形成させる。次に蛍光物質により標識されたヌクレオシド5'−三リン酸を添加する。蛍光物質により標識されたヌクレオシド5'−三リン酸は、標的核酸の塩基種別に応じて、それと相補的な塩基をもつものが、選択されプライマーの3'末端に付加される。蛍光物質の標識部位は、例えばリボースの3'水酸基であり、一塩基伸長されると、それ以降の更なる伸長反応は停止される。
【0084】
伸長反応に利用されなかった余分のヌクレオシド5'−三リン酸を洗浄して除去した後、導波路103を通じて蛍光物質の励起光を照射することにより、伸長された塩基種別に応じた蛍光を情報として取得する。
【0085】
次に、酸、アルカリ、又は光照射により、蛍光標識を脱離させ、3'伸長末端を伸長可能な状態に変化させる。
【0086】
以上の工程を繰返すことにより、標的核酸の塩基配列情報を取得する。プライマーの3’末端の伸長工程において、ペリスタポンプを用いて流路102に線流速200cm/hのフローを発生させた場合と、発生させない場合で、合成される2本鎖DNAの平均的長さを、ルシフェリンの発光反応を用いて評価する。
【0087】
ポリメラーゼにより合成される2本鎖DNAの平均的長さ(塩基数換算)は、フローを行わない場合より長くなることが確認される。
【0088】
(実施例2)
本実施例は、実施例1と同様、伸長される二本鎖化した標的核酸が互いに干渉しない手段として、一定方向のフローを与えることで、二本鎖化した標的核酸間にフローによる障壁を形成させることを特徴とする例である。
【0089】
図6は本実施例の解析素子の構成を示す概略図である。導電性を有する多孔質体401の一方の表面に、ポリメラーゼ201が固定化されている。多孔質体401の一方の側から、ポリメラーゼの固定化されている側へ、フローを有しており、合成された2本鎖DNAは、他のポリメラーゼに衝突しない様になっている。
【0090】
本実施例の構成の解析素子の作製方法は次の通りである。
金めっきを行ったステンレス製の発泡金属(三菱マテリアル、SUS316L、厚み0.5mm、金めっき厚0.5μm、空孔径50μm)を3mm角に切断、洗浄、乾燥を行った後、UVオゾン処理を行い親水化する。Dithiobis(C2-NTA)(商品名、同仁化学研究所製、化学名:
3,3'-Dithiobis[N-(5-amino-5-carboxypentyl)propionamide-N',N'-diacetic acid] dihydrochloride)
を反応させ、多孔質体401の表面にニトリロトリ酢酸基を修飾する。次にニッケルイオンを添加し、多孔質体401の表面にニトリロトリ酢酸のニッケル錯体(Ni−NTA)を修飾する。
最後にポリメラーゼ又はポリメラーゼと標的核酸及びプライマーとからなる複合体を添加し、ポリメラーゼに付加されたヒスチジンタグを利用して、これらを多孔質体401の表面に固定化する。
【0091】
本実施例の解析素子においては、導電体領域上に固定化されたポリメラーゼを利用して、Sequencing by synthesis法により標的核酸の塩基配列を解析する目的に使用することができる。その解析手順の一例について説明する。
【0092】
導電体領域上に固定化されたポリメラーゼに、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を添加することにより、ポリメラーゼと相補的結合対との複合体を形成させる。次に電気化学的活性基により標識されたヌクレオシド5'−三リン酸を添加する。電気化学的活性基により標識されたヌクレオシド5'−三リン酸は、標的核酸の塩基種別に応じて、それと相補的な塩基をもつものが、選択されプライマーの3'末端に付加される。電気化学的活性基は、例えばリボースの3'水酸基における水素原子の置換基であり、一塩基伸長されると、それ以降の更なる伸長反応は停止される。
伸長反応に利用されなかった余分のヌクレオシド5'−三リン酸を洗浄して除去した後、導電体領域を通じて電気化学的活性基を電気化学的に酸化又は還元することにより、その酸化還元電位から伸長された塩基種別を判別する。
【0093】
ここで、電気化学的活性基の電気化学的変換にともなって、該電気化学的活性基が脱離する反応が惹起され、3’伸長末端が伸長可能な状態に変化するようにしておくことが望ましい。そうすることにより、伸長反応が再開されるので、以上の工程を繰返すことにより、標的核酸の塩基配列情報を順次取得することができる。
【0094】
プライマーの3’末端の伸長工程において、ペリスタポンプを用いて多孔質体401の一方の側から、ポリメラーゼの固定化されている側へ、線流速200cm/hのフローを発生させる。フローを発生させた場合と、発生させない場合で、合成される2本鎖DNAの平均的長さを、ルシフェリンの発光反応を用いて評価する。
【0095】
ポリメラーゼにより合成される2本鎖DNAの平均的長さ(塩基数換算)は、フローを行わない場合より長くなることが確認される。
【0096】
(実施例3)
本実施例は、伸長される二本鎖化した標的核酸が互いに干渉しない手段の例として、次の構成の基板を有する解析素子について説明する。すなわち、本実施例の解析素子の基板は、導電体領域が貫通孔を有する基板における該貫通孔の側面に配置されており、該貫通孔の径が10乃至50nmであり、また導電体領域の貫通孔深さ方向の厚みが10乃至50nmである。
【0097】
図4及び図5は本実施例の検出素子の構成を示す概略図である。図4は解析素子の上面図を示し、図5は図4におけるA−A’間の素子の断面図を示す。絶縁性の基板101上に導電体領域601が厚み10乃至50nmで積層し、更にその上に絶縁性膜501が積層している。基板101、導電体領域601、及び絶縁体領域501を貫通して孔が設けられており、露出した導電体領域601の側面にポリメラーゼ201と標的核酸202の複合体が固定化されている。
【0098】
この構成の構造体は、絶縁性の基板101、導電体領域601、及び絶縁体領域501の積層構造体に、例えば電子線描画装置、収束イオンビーム加工装置により貫通孔をパターニングすることにより作製することができる。
【0099】
露出した導電体領域601の側面にポリメラーゼ201と標的核酸202の複合体が固定化する手順は、実施例2と同様にDithiobis(C2-NTA)(商品名、同仁化学研究所製、化学名:3,3'-Dithiobis[N-(5-amino-5-carboxypentyl)propionamide-N',N'-diacetic acid] dihydrochloride)
を反応させ、露出した導電体領域601の側面にニトリロトリ酢酸基を修飾する。次にニッケルイオンを添加し、露出した導電体領域601の側面にニトリロトリ酢酸のニッケル錯体(Ni−NTA)を修飾する。
【0100】
最後にポリメラーゼ又はポリメラーゼと標的核酸、及びプライマーとからなる複合体を添加し、ポリメラーゼに付加されたヒスチジンタグを利用して、これらを露出した導電体領域601の側面上に固定化する。
【0101】
図7は本実施例の解析装置の構成を示す概略図である。このDNA塩基配列解析装置において、解析素子(作用電極)、対極、参照電極により3極セルが構成されており、これらはポテンショスタットに接続されている。電極電位設定のためのファンクションジェネレーター、及び計測、及びデータ処理のためのコンピュータが更にポテンショスタットに接続されている。作用電極に印加される電圧は、ファンクションジェネレーターによりプログラムされており、ポテンショスタットを経て印加される。印加された電圧とこのとき観測される電流値はコンピュータに送られ収集される。コンピュータでは、解析素子に印加された電圧と電流値から伸長鎖に結合したヌクレオチド誘導体の種類すなわち伸長された塩基の種類を同定する。
【0102】
(実施例4)
本実施例は、伸長される二本鎖化した標的核酸が互いに干渉しない手段として、伸長反応を行う反応液に2本鎖DNAに特異的なエキソヌクレアーゼを共存させる、DNA塩基配列解析方法の例である。
【0103】
図1は本実施例の解析素子の全体構成を示す概略図である。基板101上に流路102が形成されており、流路102に交差して導波路103が設けられている。導波路103の一部が流路の底面で露出しており、ポリメラーゼが固定化される支持体表面104として利用される。実施例1とは異なり、支持体表面104上にはポリメラーゼがランダムに固定化されている。支持体表面104上に固定化されているポリメラーゼの密度は2.2×108分子/mm2である。標的核酸のモデルとして、大腸菌由来のゲノムDNA(Escherichia coli K-12, ATCC 10798D-5)を、またプライマーとして以下の合成オリゴDNA
5'- aaattgaagagtttgatcatggctc -3' [配列番号3]
を用いる。
【0104】
ゲノムDNAとプライマーとの混合物を解析素子に送液し、解析素子上のポリメラーゼにより捕捉させる。捕捉されなかったゲノムDNAとプライマーとの混合物を、緩衝液を送液することで除いた後、2’デオキシアデノシン−5’−三リン酸を含む緩衝液を送液することで、最初の1塩基だけ伸長反応を惹起させる。伸長反応により遊離されたピロリン酸を回収し、前述の発光反応に導き定量することで、ポリメラーゼにより捕捉された標的核酸/プライマーの複合体の量(L1)とする。
【0105】
次に、アデニン、シトシン、グアニン及びチミンの4種の塩基からなる2’デオキシヌクレオシド−5’−三リン酸の混合物を送液することで、伸長反応を惹起させる。一定時間後反応溶液を回収し、発光反応に導き遊離されたピロリン酸を定量することで、その時間にポリメラーゼにより伸長された標的核酸量(L2)を見積もる。
二つの量を用いて計算される次の値
(L2+L1)/L1
を、ポリメラーゼにより合成される2本鎖DNAの平均的長さ(塩基数換算)とする。
上記4種の塩基からなる2’デオキシヌクレオシド−5’−三リン酸の混合物を送液する際に、
ラムダエキソヌクレアーゼ(EC 3.1.11.3)を共存させるか否かにより、合成される2本鎖DNAの平均的長さを比較する。
【0106】
ラムダエキソヌクレアーゼを共存させない場合、上記ポリメラーゼの固定化密度では合成される2本鎖DNAの平均的長さは150塩基となる。それに対し、ラムダエキソヌクレアーゼを共存させた場合には合成される2本鎖DNAの平均的長さは4500塩基と大幅に改善され、伸長反応時にエキソヌクレアーゼを共存させることの効果が確認される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施例の解析素子の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1における支持体表面104部分を拡大した模式図である。
【図3】ポリメラーゼ固定化領域とポリメラーゼ非固定化領域とを支持体表面上に順次形成する方法の一例を示した概略図である。
【図4】本実施例の解析素子の構成を示す概略図である。
【図5】本実施例の解析素子の構成を示す概略図である。
【図6】本実施例の解析素子の構成を示す概略図である。
【図7】本実施例の解析装置の構成を示す概略図である。
【図8】第1の形態の解析装置が有する解析素子の例を示す図である。
【図9】第2の形態の解析装置が有する解析素子の例を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
101 基板
102 流路
103 導波路
104 支持体表面
105 上部カバー
201 ポリメラーゼ
202 標的核酸
203 2本鎖DNA
204 ポリメラーゼ固定化領域
205 ポリメラーゼ非固定化領域
301 レジスト
401 多孔質体
501 絶縁体領域
601 導電体領域
701 センサー部材領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、
前記解析装置が、
基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、を有し、
前記基体がセンサー部材領域を有し、
前記センサー部材領域が表面に複数のポリメラーゼ固定化領域を有し、
前記ポリメラーゼが前記ポリメラーゼ固定化領域に固定化されており、
前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であり、
前記送液手段が発生させる液体の流れ方向における前記複数のポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が、前記標的核酸の長さよりも長くなるように設定されていることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
標的核酸の塩基配列を解析する解析装置であって、
前記解析装置が、
基体とポリメラーゼとからなる解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、を有し、
前記基体が多孔質体からなり、
前記基体が、センサー部材領域と、前記センサー部材領域が表面に有する複数のポリメラーゼ固定化領域とを有し、
前記ポリメラーゼが前記ポリメラーゼ固定化領域に固定化されており、
前記送液手段が、前記基体を横断する一定の方向に液流を発生させることを特徴とする解析装置。
【請求項3】
標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
ポリメラーゼと、センサー部材領域を表面に有する基体と、前記センサー部材領域のうち前記ポリメラーゼが固定された複数のポリメラーゼ固定化領域とからなる解析素子に、標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む検体を添加する工程と、
前記ポリメラーゼ固定化領域間の最短距離が前記標的核酸の長さよりも長くなる方向にヌクレオチド誘導体を送液する工程と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する工程と、
を有し、
前記ポリメラーゼ固定化領域の幅が10nm以上50nm以下であることを特徴とする解析方法。
【請求項4】
標的核酸の塩基配列を解析する解析素子であって、
前記解析素子が、
導電体領域と絶縁体領域とからなる基体と、ポリメラーゼとを有し、
前記導電体領域が有するポリメラーゼ固定化領域に前記ポリメラーゼが固定されており、
前記基体が前記基体の厚み方向を深さ方向とする複数の孔を有し、
前記導電体領域が前記孔を形成する面の一部をなしており、
前記貫通孔の径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする解析素子。
【請求項5】
前記孔が貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載の解析素子。
【請求項6】
前記孔が貫通していない孔であり、前記ポリメラーゼ固定化領域と前記孔の底部との長さが標的核酸の長さよりも長いことを特徴とする請求項4に記載の解析素子。
【請求項7】
標的核酸の塩基配列を解析する標的核酸解析装置であって、
前記標的核酸解析装置が、
請求項4乃至6のいずれかに記載の解析素子と、
前記解析素子に液体を流す送液手段と、
前記ポリメラーゼによりプライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を解析する手段と、
を有することを特徴とする標的核酸解析装置。
【請求項8】
標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
請求項4乃至6のいずれかに記載の解析素子に、
標的核酸とプライマーとの相補的結合対を含む検体を添加する工程と、
ヌクレオチド誘導体を送液する工程と、
前記ポリメラーゼにより前記プライマーに伸長されたヌクレオチド誘導体の塩基種別を判定する工程と、
を有することを特徴とする解析方法。
【請求項9】
ポリメラーゼと、センサー部材領域を表面に有する基体と、前記センサー部材領域のうち前記ポリメラーゼが固定された複数のポリメラーゼ固定化領域とからなる解析素子を用いて標的核酸の塩基配列を解析する解析方法であって、
少なくともポリメラーゼによる前記標的核酸と対合したプライマーの伸長反応を行う工程において、該伸長反応を行う反応液に2本鎖DNAに特異的なエキソヌクレアーゼを共存させることを特徴とする解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−5631(P2009−5631A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170539(P2007−170539)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】