標的検体の検出用のナノ粒子を用いた生体表面弾性波(SAW)共振器増幅
本発明は、概して、タンパク質及び核酸を含む標的検体を含むテストサンプルを分析するためのSAW共振器マイクロセンサ用のシグナル増幅方法に関する。該方法は、以下の工程を含む:第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;及び、銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程。そして、少なくとも1つのナノ粒子の増加質量を、SAWセンサによって検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、タンパク質及び核酸を含む標的検体を含むテストサンプルを分析するためのSAW共振器マイクロセンサ用のシグナル増幅方法に関する。該方法は、多くの化学的、環境的、医学的分野における用途を提供する。
該方法は、以下の工程を含む:第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;及び、銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程。そして、少なくとも1つのナノ粒子の増加質量を、SAWセンサによって検出する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な検体などの検体における高感度での検出は、依然として分析的検出法における重要な課題である。多くの場合、検出法では膨大なサンプルの処理を要する。更に、分析的検出法は、容易で、迅速で、再現可能でなければならない。このことは、診断法のような高度の専門的な方法及び試薬が使用できない場合に、特に重要である。
特に、従来の生体分析的方法には、いくつかの欠点がある。例えば、核酸分子のハイブリダイゼーションは、一般的に、ハイブリダイゼーション用のプローブが放射性標識を含む場合にはオートラジオグラフィー又はリン光体イメージ分析器によって検出され、あるいは、ハイブリダイゼーション用のプローブがビオチン又はジゴキシンなどの標識を含む場合には濃度計によって検出される。次に、該標識は、酵素複合抗体又はリガンドによって認識されうる。最も新しい生体分子検出法は、分子、例えばDNA又はRNA又はタンパク質の修飾を必要とし、結果として、従来の検出法を経費のかかる、しかも労力を要する方法にしている。
弾性波センサ技術は、物質を検出することにおいて、広範囲の用途があることが明らかにされている。弾性波センサは、弾性波を生じさせ、該波を観察することで物質を検出する。弾性波は、物質の表面を介して、又はその表面上を伝播するときに、伝播経路の特性のあらゆる変化が、波の速度及び/又は振幅に影響を与える。センサの振幅、振動数、及び/又は、位相特性を測定し、それを対応する物理量と相互に関連付けることができる。
【0003】
様々な異なる型の弾性波デバイスが開発されているが、全て水溶性又は生物学的なサンプルの測定においては、限られた成功を収めているに過ぎなかった。バルク弾性波(Bulk acoustic waves:BAW)は、媒体を通じて伝播する。最も一般的に使用されるBAWデバイスは、厚みせん断モード(thickness shear mode:TSM)の共振器(この中で最も一般的な型は水晶振動子微量てんびんである)、及び、せん断水平弾性プレートモード(shear-horizontal acoustic plate mode:SH-APM)のセンサである。反対に、基板の表面で伝播する波は、表面波として知られている。最も広範に使用される表面波デバイスは、表面弾性波センサ、及び、表面横波(surface transverse wave:STW)のセンサとしても知られるせん断水平表面弾性波(shear-horizontal surface acoustic wave:SH-SAW)のセンサである。全ての弾性波センサは、気相又は真空環境で機能するが、それらほとんどが、液体と接触した際に有効に作動できない。
液体センシング用の弾性センサとして知られているものの中で、ラヴ波(love wave)センサは、せん断水平SAWの特別な種類であり、最も高い感度を有する。ラヴ波センサを作製するために、誘電体導波路被膜を、せん断水平波のエネルギーがその被膜に集中するようにSH-SAWデバイス上に配置する。次いで、生体認識被膜を導波路被膜上に配置し、完全な生体センサを形成する。ポリマーのラヴ波誘導被膜を備える110MHz YZ-断面(cut) SH-SAWを用いることで、ng/mlの濃度範囲での抗-ヤギIgGの検出に成功している[E. Gizeliら 1997. "Antibody Binding to a Functionalized Supported Lipid Layer: A Direct Acoustic Immunosensor," Anal Chem, Vol. 69:4808-4813.]。
【0004】
最近、異なるSAWセンサ間の比較について報告された[Bio-molecular Sensors, Eds. Electra Gizeli and Christoffer R. Lowe (2002)]。それによると、124 MHzのラヴ波センサが1.92 mg/cm2の感度を有することが示されている。生物学的な複合体の検出にSAWセンサを使用することは、例えば、US 5,478,756、WO9201931、及び、WO03019981に報告されている。これらの各文献の全体を、参照によりここに組み入れる。
伝播波の垂直方向成分が液体-気体のバリアによって抑制されるために、従来のSAWデバイスでは、液体検出においてはあまり選択されなかった。液体中で機能する一つの弾性波センサは、せん断水平SAWセンサである。圧電性結晶材料の切断部が適切に回転する場合に、波は液体表面に水平に、かつ、平行に伝播する。このことは、液体が、伝播媒体と接触している場合に、劇的に損失を減らすことができ、SH-SAWセンサを生体センサとして動作することを可能にする。液体溶液検体(生体分子など)を検出するために、弾性波と固体/液体境界の特性との間の相互作用を明らかにすること、並びに、GHz範囲において動作する、より高周波数のSAWデバイスを設計することに焦点が当てられ、多くの力が注がれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、SAWデバイスが、液体中の検体、例えば生体分子を測定できないという問題の解決策を提供する。
免疫アッセイでSAWデバイスを使用することは、以前から報告されている。これらのデバイスは、2つの電極の間に挟まれた単結晶ウエハからなる。電極は、その共鳴振動数で水晶振動子を動かす外付けの発振回路とこれらのデバイスとを接続する手段が備わっている。この振動数は、結晶の質量、並びに、結晶の電極領域に限られたいずれかの層の質量に依存する。従って、振動数は、電極の表面上の質量の変化、又は、それらの電極上のいずれかの層の変化によって変動する。一般的に、これらのデバイスの共鳴振動数の変化は、質量の変化と相関しうる。
【0006】
Riceによる1980年12月2日に公開されたUS 4,235,983は、抗体の特定のサブクラスを決定する方法について開示している。この方法は、特定される抗体に特異的な抗原を、その二次元表面に結合させた圧電発振器を利用する。抗原被覆発振器を、未知量の抗体を含む溶液に接触させる。溶液中の抗体が発振器上の抗原と結合した後に、発振器を、特定される抗体の特異的サブクラスに選択的に結合するいわゆるサンドイッチ型の基質に接触させる。発振器の振動数を、サンドイッチ型の基質と接触させる前と後に乾燥状態で測定する。振動数の変化は、二次元の圧電発振器表面に結合させた抗体のサブクラスの量と相関し、溶液中の抗体のサブクラスの量は標準曲線を参照することで決定することができる。
【0007】
Roedererらは、圧電水晶振動子、特に、表面弾性波デバイスを利用したin-situ免疫アッセイについて開示している。ヤギ抗-ヒトIgGを結合剤で二次元水晶振動子表面に固定した。次いで、圧電水晶振動子を電気発振回路に配置し、抗原ヒトIgGの検出の試験をした。吸着による表面質量変化が結晶の共鳴振動数の変動に反映することをもとに、検出を行った。著者は、該方法が感度不足であり、検出制限があるものと結論付けた。著者は、また、検出される抗原が高分子量で無ければならず、低分子量の検体をこの手順で直接検出できないことも結論付けた[Analytical Chemistry, Vol. 55, (1983)]。
Ngeh-Ngwainbiらは、気相におけるパラチオンのアッセイに使用されるパラチオンに対する抗体で被覆された圧電水晶振動子の利用について報告している。被覆抗体が気相における直接反応によってパラチオンと結合した場合に、結晶において生じた質量変化が、この殺虫剤の濃度に比例する振動数変動を引き起こす[J. Mat. Chem. Soc., Vol. 108, pp. 5444-5447 (1986)]。
【0008】
Wardによる1991年3月12日に公開された米国特許第4,999,284は、水晶振動子微量てんびん(QCM)の上又は近くの表面に結合する検体を複合体によって検出する、水晶振動子微量てんびんアッセイを使用する方法を開示している。該複合体は、基質を、QCMの二次元表面上で蓄積可能あるいは該表面と反応可能な生成物に転化することを触媒できる酵素を含み、QCMで質量変化が生じると、共鳴振動数に変化が生じる。しかしながら、振動数は、抗APSレダクターゼ抗体を使用した場合、濃度0.24 ng/mlの検体APSレダクターゼでは、30分間の変化が単に406Hzであり、濃度0.002 ng/ml (2 pg/ml)の検体APSレダクターゼでは、30分間の変化は、単に6.3 Hzだった。二次元QCM表面に様々な修飾をした場合に、著者は、濃度0.025 ng/ml (25 pg/ml)の検体で、30分間で22 Hzの変化を得ることに成功した。これらの結果は、非常に低い濃度(pg/ml範囲)においては、△(デルタ)Hzの変化が、検出/ノイズレベルより小さくない場合、低下することを示した。
一般的に、質量変化が抗原と抗体との免疫学的反応に起因する圧電ベースの免疫アッセイは、二次元センサ表面を使用する環境において、感度不足であり、検出に制限がありうる。その結果として、さらに高感度なアッセイを提供するために、分子認識コンポーネントとその標的検体との反応を増幅できる圧電ベース特異的結合アッセイが、本分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開示
本発明者は、圧電基板上のIDTE構造体又はリフレクタ構造体の間の三次元マイクロチャンネル構造体における液体/固体の体積比を変化させることで、著しくシステムの振動数及び位相を変えられることを発見した。該マイクロチャンネルの間の液体/固体の体積比の変化を、テストサンプル中の検体濃度に相関させて検出することができる。
本発明は、テストサンプル溶液中の標的検体の存在を検出するためのマイクロセンサに関する。該マイクロセンサが、少なくとも1つ、しかし好ましくは2つ以上の表面弾性波(SAW)共振器ユニットを含み、それぞれが、圧電基板と、該基板表面上の多数のインターデジタルのトランスデューサ電極(IDTE)及びリフレクタを含み、そこで三次元マイクロチャネルが、該電極及びリフレクタの間に形成されている。ここで、該SAW共振器ユニットは、該IDTE構造体及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネルに固定された少なくとも1つの分子認識コンポーネントを有し、テストサンプル中の標的検体を、少なくとも1つの分子認識コンポーネントと反応させ、更に、第二の酵素結合-分子認識コンポーネント、又は、酵素結合-検体と反応させ、更に、該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネル中に蓄積する不溶性沈殿物に転化される基質と反応させ、それによって該マイクロチャンネルにおける固体/液体の体積比を減少させ、該マイクロチャンネル中の該固体/液体の体積比の変化が、シグナルの振動数又は位相の変化をもたらす。
【0010】
SAW共振器センサのタイプに関して、IDTE及びリフレクタ構造体の間の三次元マイクロチャンネルにおける生体フィルムの剛性変化も、設定に応じてSAW共振器ユニットの振動数を増加あるいは減少させる。ヒドロゲル技術を利用する事象は、他にも米国出願番号第20060024813で同じ著者によって説明されている。
本発明は、サンプル中の標的検体を検出する方法であって、
(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程、
(b) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで
銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程、及び、
(c) 析出された銀イオン及び/又は金イオンを含む少なくとも1つのナノ粒子を、SAWセンサによって検出する工程を含む方法に関する。
【0011】
ナノ粒子は金粒子であることが好ましい。本発明におけるナノ粒子の直径は、0.05nm〜20nmであることが好ましく、好ましい態様において、該ナノ粒子の直径は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20 nmである。本発明の方法における沈殿物の析出で、約10nmのサイズのナノ粒子は、5分間以内に約300nmに直径が増大する。
本発明は、サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、
(a) SAWセンサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ、
(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント、
(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、
(d) 還元剤
を含むキットに関する。
【0012】
本出願は、サンプル溶液中の標的検体の存在を検出するためのマイクロセンサを対象とする。該マイクロセンサは、センサ表面上に三次元マイクロチャンネル構造体を有するSAW共振器センサを含む。該マイクロチャネル構造体は、更に、標的検体と結合できる固定された分子認識コンポーネントを含む。標的検体を、更に、好ましくはマイクロチャンネルの中で、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、又は、酵素結合-標的検体と反応させる。それを更に該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネル中に蓄積する不溶性沈殿物に転化する基質と反応させ、それによって該マイクロチャンネルにおける固体/液体の体積比を減少させ、該マイクロチャンネル中の該固体/液体の体積比の変化が、シグナルの振動数又は位相の変化をもたらす。
マイクロセンサは、参照用の表面弾性波共振器マイクロチャンネル構造体も含むことができる。例えば、参照用のマイクロチャンネルは、分子認識コンポーネントを含まない。また、コントロールとは、標的検体を含まないサンプル溶液の測定にすることができる。マイクロ参照チャンネル及びセンサマイクロチャンネルの間の差異から、標的検体の存在を測定する。
【0013】
分子認識コンポーネントの非制限的な例としては、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、PNA及びLNA分子のような核酸類似体、タンパク質、ペプチド、IgA、IgG、IgM、IgEのような抗体、酵素、酵素補因子、酵素基質、酵素阻害剤、レセプター、リガンド、キナーゼ、プロテインA、ポリU、ポリA、ポリリジン、トリアジン染料、ボロン酸、チオール、ヘパリン、ポリサッカライド、クーマシーブルー、アズールA、金属結合ペプチド、糖、炭水化物、キレート剤、原核細胞、及び、真核細胞が挙げられる。
標的検体の非制限的な例としては、核酸、タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、炭水化物、化学化合物、及び気体が挙げられる。ほかの例示的な標的検体は、トロポニン1、トロポニンT、アレルゲン、又はIgEのような免疫グロブリンが挙げられる。特定の用途において、標的検体は、複数の分子認識コンポーネントに結合することができる。
【0014】
本出願は、サンプル溶液中の標的検体を検出する方法も対象とする。分子認識コンポーネントは、表面弾性波センサの表面上に位置するマイクロチャンネルに固定されている。このセンサは、サンプル中の検体と認識コンポーネントとの結合を促進する条件下でサンプルと接触させる。次いで、表面弾性波の位相変動又は振動数の変化を検出する。該変化によって、サンプル中の検体の存在を測定する。
SAW共振器ユニットの振幅をテストサンプル中の標的検体と反応させるための少なくとも1つの分子認識コンポーネントのための最適条件に調整するべきであることに注意する。該振幅が高すぎる場合には、分子認識コンポーネント/検体相互作用のための非最適条件に起因して一貫した結果が得られない。
【0015】
テストサンプル中の検体を検出する方法は以下の工程を含む:テストサンプル中の検体を第一認識コンポーネント及び酵素結合検体の第二酵素結合認識コンポーネントと反応させる工程;該結合酵素によって不溶性沈殿物に転化される基質を添加する工程;ここで、2つの工程は、SAW共振器ユニットとは別の反応容器中で行われ、そして、その中で得られた該不溶性沈殿物は該SAW共振器ユニットに能動的に運ばれ、該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたSAWマクロチャンネルに接触したそれが、該マイクロチャンネル中の固体/液体の体積比を減少させる。該固体/液体の体積比が、シグナルの振動数又は位相の変化にいたる該マイクロチャンネルを変化させ、該シグナル変化が検体特異的シグナルを誘発する。
標的検体をサンプル中で検出できる。例示的なサンプルは、血液、血清、血漿、腹水、糞便、骨髄液(spinal core fluids)、尿、塗沫標本(smears)、唾液を含む。この方法は、診断目的に使用されうる。
本発明を以下に図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】参照番号1及び2により一般的に示される2つのSAW共振器ユニットを示す。各SAW共振器ユニットは、1つのIDTE部(7,8)及び2つのリフレクタ部(9,10)からなる。IDTE(3,6)の間に、マイクロチャンネル(4,5)が位置する。同様のマイクロチャンネルが、リフレクタ構造体(15,16)の間にも位置している。SAW共振器ユニット(1)三次元表面全体に、分子認識コンポーネント(3,17)が固定されており、一方でSAW共振器ユニット(2)には、分子認識コンポーネントは存在しない。反応層(11)は、検体と、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、基質とを表す。基質が不溶性沈殿物に転化した場合、リフレクタ構造体(12,13)の間のマイクロチャンネルスペース(16)が、マイクロチャネル(16)における固体/液体の体積比の変化に応じて減少する。また、SAW共振器ユニット(1)におけるIDTE間のマイクロチャンネルが同じ理由で減少する。SAW共振器ユニット(2)における構造体(14,18)の間で、マイクロチャンネル(15)固体/液体の体積比の変化は見られない。
【図2】同じ基板上に配置した図1と同様の2つのSAW共振器ユニット(1,2)を示す。
【図3】実施例1において詳述する線量反応曲線を示す。
【図4】図1(9)において示されたリフレクタ構造体のAFM写真を示す。番号1は基板を表す。番号2はリフレクタ構造体を表す。番号3,4はリフレクタ構造体の間のマイクロチャンネルの寸法を表す。
【図5】図4で示されたAFM写真からの計算スキームを示す。これは、IDTE及びリフレクタ構造体の例示的な寸法を示す。
【図6】センサ用のカートリッジシーリングを示す。B:カートリッジ中のセンサ、C:分離テープ、D:組立ジグ、E:電子制御ユニット、F:コンピューターへの接続ワイヤ、G:テスト設定の中に組立られたカートリッジを含むセンサ、H:センサホールの中に添加された銀増強液。
【図7】銀増強液を添加した(手順C4)後のシグナルの読取を示す。
【図8】BCIP/NBT溶液を添加した(手順C4)後のシグナルの読取を示す。
【図9】センサ測定の後におけるf2センサホールの視覚的な検査の内容を示す。A:金複合抗体及び銀増強を用いた方法、B:アルカリホスファターゼ複合抗体及びBCIP/NBTを用いた方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
<定義>
本明細書で使用される「結合事象」は、SAWセンサの三次元マイクロチャンネル構造体表面に固定された分子認識コンポーネントへの標的検体の結合を意味する。
「ナノ粒子」は、好ましくは球体で、直径が0.02〜50nmである固体の不溶性粒子である。
本発明は、同じ参照番号が同じ構成要素を示すよう用いられた図面を参照することで理解することができる。
以下、図1を参照して、参照番号1及び2により一般的に示される2つのSAW共振器ユニットからなるマイクロセンサについて確認する。各SAW共振器ユニットは、1つのIDTE部(7,8)及び2つのリフレクタ部(9,10)からなる。IDTE(3,6)の間に、マイクロチャンネル(4,5)が位置する。同様のマイクロチャンネルが、リフレクタ構造体(15,16)の間にも位置している。SAW共振器ユニット(1)三次元表面全体に、分子認識コンポーネント(3,17)が固定されており、一方でSAW共振器ユニット(2)には、分子認識コンポーネントは存在しない。反応層(11)は、検体と、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、基質とを表す。基質が不溶性沈殿物に転化した場合、リフレクタ構造体(12,13)の間のマイクロチャンネルスペース(16)が、マイクロチャネル(16)における固体/液体の体積比の変化に応じて減少する。また、SAW共振器ユニット(1)におけるIDTE間のマイクロチャンネルが同じ理由で減少する。SAW共振器ユニット(2)における構造体(14,18)の間で、マイクロチャンネル(15)固体/液体の体積比の変化は見られない。
【0018】
マイクロチャンネル(16)に蓄積可能な不溶性生成物を生成できる酵素/基質システムの例として、アルカリホスファターゼ及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)が挙げられる。BCIPの酵素的に触媒された加水分解は、マイクロチャンネルに沈殿した不溶性ダイマーを生成する。ガラクトース、グルコース、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び、アミノ酸と同様の加水分解的回裂可能な官能基で置換されたホスフェート基を有する別の同様の基質を、相補的酵素と使用することができる。
他の酵素/基質システムには、ペルオキシダーゼ酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、又は、ミエロペルオキシダーゼ、及び、以下に示すものの1つを含む:ベンジデン、ベンジデン ジヒドロクロリド、ジアミノベンジデン、o-トリデン、o-ジアニシジン、及び、テトラメチルベンジデン、カルバゾール、特に、3-アミノ-9-エチルカルバゾール。これらの全てが、ペルオキシダーゼとの反応で沈殿物を形成することが報告されている。また、アルファヒドロキシ酸 オキシダーゼ、アルデヒド オキシダーゼ、グルコース オキシダーゼ、L-アミノ酸 オキシダーゼ、及び、キサンチン オキシダーゼのようなオキシダーゼをフェナジン メトサルフェート-ニトロブルー テトラゾリウム混合物のような酸化可能基質システムと使用することができる。
【0019】
ここで、図2を参照すると、この図2は同じ基板上に配置した図1と同様の2つのSAW共振器ユニット(1,2)を備える。
ここで、図3を参照すると、この図3は実施例1において詳述する。
図4は、図1(9)において示されたリフレクタ構造体のAFM写真を示す。番号(1)は基板を表す。番号2はリフレクタ構造体を表す。番号3,4はリフレクタ構造体の間のマイクロチャンネルの寸法を表す。
図5は、図4で示されたAFM写真からの計算スキームを示す。これは、リフレクタ及びIDTE構造体の例示的な寸法を示す。
【0020】
<表面弾性波センサ>
ここに記載するマイクロセンサは、少なくとも1つの表面弾性波センサを含む。表面弾性波センサは、圧電層、または圧電基板、および入力および出力トランスデューサを含む。表面弾性波は、該圧電層内で発生し、かつインターデジタル電極によって検出される。以下でより詳細に説明するように、該表面弾性波センサの表面を変更する結合事象が、該伝播する表面弾性波の特性における変化として検出できる。表面弾性波センサは、米国特許第5,130,257号、同第5,283,037号および同第5,306,644号;F. Josseら, Guided Shear Horizontal Surface Acoustic Wave Sensors for Chemical and Biochemical Detection in Liquids, Anal. Chem. 2001, 73:5937;およびW. Welschら, Development of a Surface Acoustic Wave Immunosensor, Anal. Chem. 1996, 68:2000-2004に記載されている。これら各文献全体を、参照によってここに特別に組み入れる。
【0021】
弾性波デバイスを、圧電基板を通る、又は、その上の波動伝搬のモードによって説明する。弾性波は、第一に、その速度と変位方向によって区別される。物質と境界条件に起因する多くの組合せが可能である。各センサのインターデジタルトランスデューサ電極(IDTE)は、基板を変位させ、それに伴って弾性波を形成するために不可欠な電場をもたらす。該波は、基板を通って伝搬され、それが対向電極のIDTEで電場に変換される。横波(S波)は、波動伝搬の方向に垂直である粒子移動を含み、それは偏向しうるので、粒子移動は、センシング表面に対して平行又は垂直である。せん断水平波動(shear horizontal wave motion)がセンシング表面に平行に偏向した横方向変位を示し、せん断垂直波動(shear vertical motion)がセンシング表面に垂直な横方向変位を示す。
【0022】
本明細書で用いられる"表面弾性波センサ"又は"表面弾性波デバイス"は、上記で説明した方法で実質的に作動するデバイスを意味する。いくつかの態様において、"表面弾性波センサ"は、表面変位が伝搬方向と直角でデバイス表面と平行である表面横波デバイスと、少なくとも表面変位の一部がデバイス表面と直角である表面弾性波センサとの双方を示す。表面横波デバイスは、一般的に流体においてより高い感受性を有する一方で、表面変位の一部がデバイス表面に垂直である場合、十分な感度が得られることも明らかになっている(例えば、M. Rappら, Modification of Commercially Available LOW-LOSS SAW devices towards an Immunosensor for in situ Measurements in Water, 1995, IEEE国際超音波シンポジウム(IEEE International Ultrasonics Symposium), 1995, Nov. 7-10, シアトル、ワシントン;およびN. Barieら, Covalent bonding sensing layers on surface acoustic wave biosensors, Biosensors & Bioelectronics, 16 (2001) 979を参照)。これら全てを、参照により特別にここに組み入れる。
【0023】
センサは、フォトリソグラフィ処理方法で製造される。製造方法は、圧電基板を丁寧に研磨し、洗浄することから始まる。次いで、金又はアルミニウムのような金属を、基板の上に均一に蒸着する。デバイスを、フォトレジストでスピンコートし、焼結して硬化する。次に、それを、最終デバイス上で金属被覆される領域に対応する不透明領域を有するマスクを通してUV光に曝す。曝された領域は、それらが現像液で除かれるような化学変化を受ける。最終的に、残ったフォトレジストを、取り除く。デバイス上に残った金属のパターンは、インターデジタルトランスデューサ(IDT)又はインターデジタル電極(IDE)と呼ばれる。IDTの長さ、幅、位置、及び、薄さを変更することで、センサの性能を最大に引き出すことができる。
【0024】
<入力及び出力トランスデューサ>
該入力及び出力トランスデューサは、インターデジタルトランスデューサであることが好ましい。一般に、2つのインターデジタルトランスデューサがある。該入力及び出力トランスデューサのそれぞれが、インターデジタルパターンに配列された2つの電極を含む。入力トランスデューサの2つの電極の間に与えられる電圧差が、圧電基板における表面弾性波の発生をもたらす。電極は、一般に任意の導電性材料を含むことができ、アルミニウムまたは金が好ましい。
【0025】
該電極は、従来の形態を採用することができるが、支持体の表面に沿って波動伝搬の方向に垂直な金属被覆の細長い領域として、フォトリソグラフィで表面を蒸着したものが好ましい。細長い金属領域は、同一の大きさの幅および間隔を持つことが好ましい。該幅は、一般的に、1〜40μm、好ましくは、10〜20μmである。いくつかの態様において、該幅は、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、60μm、70μm、80μmまたは90μmよりも大きいか、あるいはこれに等しい。他の態様では、該電極間の間隔は、100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、45μm、40μm、35μm、30μm、25μm、20μm、15μm、10μm、7.5μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、または75nmに等しいか、それよりも小さくてもよい。この間隔は、該デバイスの周波数と反比例して変化することに注意すべきである。
いくつかの態様においては、該電極の高さは、その幅と同一である。他の態様では、該電極の高さは、例えば10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、または900nmよりも大きいか、あるいはこれに等しい。他の態様では、該電極間の間隔の深さは、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、75nm、50nm、40nm、30nm、または20nmよりも小さいか、それに等しくてもよい。
【0026】
別の態様では、単一のインターデジタルトランスデューサがある。この態様では、該単一のインターデジタルトランスデューサが、入力および出力トランスデューサ両者として機能する。入力および出力トランスデューサ両者として動作する、単一のインターデジタルトランスデューサを使用する態様では、一般にリフレクタ構造体が与えられて、該SAWセンサ内で1以上の共鳴を発生する。該リフレクタ構造体は、例えば薄いフィルム格子であり得る。この格子は、アルミニウムまたは他の導電性材料を含むことができる。この発生した共鳴は、例えば該単一のトランスデューサにおいて、散逸する出力を測定することにより、検出することができる。この薄い構造体における1以上の結合事象が、これらの共鳴を変化させ、該結合事象の検出を可能とする。本態様によるセンサおよび技術の例は、一般的に米国特許第5,846,708号に記載されている。この特許を、本発明の参照により、ここに組入れる。以下に記載するように、他の電子機器および/または回路を、ただ一つのインターデジタルトランスデューサのみを持つSAWセンサを使用する態様で、同様に使用することができる。
【0027】
分子認識分子は、自己組織化単分子層に、直接結合させることができる。例えば、金のIDTEを使用する場合、DNAプローブ分子は、SH基を利用して、該DNAの5'末端に結合することができ、ここでは、当分野において公知であり、また例えばK. Vijayamohananら, Self-assembled monolayers as a tunable platform for biosensor applications, Biosensors & Bioelectronics, 2002, 17:1-12およびGeorge M. Whitesidesら, Array of Self-Assembled Monolayers for studying inhibition of Bacterial Adhesion, Anal. Chem. 2002, 74:1805-1810(これら両者を参照により、ここに組入れる)に記載されているような、自己組織化単分子層を使用する。
【0028】
本発明は、特に(1)サンプル中の検体を検出する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:(a)第一の認識コンポーネント、及び、第二の酵素-結合認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;及び(b)結合された該酵素で沈殿物に転化される基質を添加する工程。ここで、工程(a)及び(b)は、測定チャンバとは別の反応容器の中で行われ、工程(b)で得られた該沈殿物は、SAWセンサ表面と接触すると、検体特異的シグナルを引き起こす該測定チャンバに、能動的に輸送される。
本発明の更なる態様は、以下の通りである:
(2) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、第一の認識コンポーネントが検体を、反応容器の表面に固定させる。
(3) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、表面とは、反応容器内側、又は、容器内部に含まれる材料の表面、又はそれらの組合せとすることができる。
(4) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、認識コンポーネントが、以下の群から選択される:タンパク質、タンパク質類似体、修飾タンパク質、核酸、核酸類似体、及び、修飾核酸。
(5) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、タンパク質が、以下の群から選択される:抗体、抗体フラグメント、修飾抗体、レセプター分子、及び、リガンド分子。
【0029】
(6) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、酵素が、以下の群から選択される:アルカリホスファターゼ(AP)、及び、ウマ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)。
(7) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、基板が、以下の群から選択される:ジアミノベンジジン(DAP)、アミノエチルカルバゾール(AEC)、テトラメチルベンジジン(TMB)、又は、5-ブロモ,4-クロロ,3-インドリルホスフェート(BCIP)/ニトロブルー テトラゾリウム(NBT)。
更に、本発明は、(8) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおけるサンプル中の検体を検出するデバイスに関する。該デバイスは、検体特異的沈殿物を酵素変換によって生じさせる、注入口及び排出口を備える反応容器を含み、これは、SAWセンサを含む、注入口及び排出口を備える測定チャンバと接続されている。ここで、液体フローによって、反応容器から、該沈殿物がSAWセンサ表面に接触して検体特異的シグナルを引き起こす測定チャンバに、該沈殿物を、能動的に輸送する。
(9) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、該デバイスが、更にフローレギュレータと接続されており、レギュレータは、反応容器の前に設置されたポンプシステム、測定チャンバの後方に設置された吸気システム、又はその双方である。
(10) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、反応容器が、以下の群から選択される:チューブ、チューブシステム、チャンバ、及び、接続チャンバのシステム。
【0030】
(11) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、該デバイスが、更に以下の群から選択される反応容器システムの中に保持された材料を含む:ビーズ、ゲル。
(12) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、反応容器システムが、更に以下の群から選択される1つ以上の材料を含む:フィルタ、グリッド。
(13) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、SAWセンサが、SAWフィルタユニット型である。
【0031】
第二の酵素結合-分子認識コンポーネントは、本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子結合-分子認識コンポーネント又はナノプローブで置換てもよい。
シグナル振幅の改善方法については、アトノミックスが最近発明した。今まで、アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体が、発振SAWセンサにおいてシグナルを発生するために用いられてきた。このALPを用いた方法を利用することによって、例えば以下のような様々な改善すべき点が確認されている:
ALP複合抗体は、センサの内壁部及び基板の表面上における金及び樹脂の壁に、非特異的に結合する。このような結合は、非特異的なBCIP/NBT沈殿物を形成し、最終的にはCV値の増加を生じさせる。
【0032】
SAWマイクロチャンネルの中、及び、SAW構造体の上部におけるBCIP/NBT沈殿物は、センサ構造体を全て覆う平板層のようには配置せずに(SAWセンサの発振性質による)、図4Bで示したようにセンサ表面によりランダムな状態に配置する。このこともCV値の増加に寄与しうる。
アルカリホスファターゼの方法は、酵素過程であるため、温度及び処理の問題に起因して、徐々にその活性を緩やかにしなければならない。このこともCV値の増加に寄与しうる。
このような改善すべき点を克服するために、アトノミックスは、アルカリホスファターゼ複合抗体の代わりに、ナノ金複合抗体の試験を開始した。
図2及び図3から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加しているようである。
【0033】
また、好ましい態様において、本発明は、以下の工程を含む、サンプル中の標的検体を検出するための方法に関する:(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;(b)銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、銀及び/又は金が、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程;(c)SAWセンサを使用して、少なくとも1つのナノ粒子の増加質量を検出する工程。
コロイドの(Collodal)金(Au)及び銀(Ag)粒子及び/又はクラスター複合体は、標的分子の標識用に、電子顕微鏡で用いられる。例えば、高い密度で結合した該クラスター複合体を有する細胞は、顕微鏡で暗赤紫色を示すことができる。
【0034】
免疫金銀染色(IGSS)は、1981年に発見され、それ以来、シグナル増幅/増強に使用され、化学発光及び放射能核酸標識の代替として機能する免疫検出システムの感度を向上させてきた。IGSSによって、小サイズ及び少量の標的分子を、例えば顕微鏡(光、電子、走査など)及び比色分析吸光度による外観検査で検出することが可能になった。免疫金銀染色技術は、銀イオン、及び、例えばヒドロキノンのような還元剤の存在をベースとし、コロイドの金粒子は、銀イオンを金属の銀に還元するための触媒として働く。銀は、金粒子の上に析出し、これによって、粒子を拡張する。
本発明のいくらかの態様において、溶液中の金イオンが触媒的に金属の金として析出される場合に、粒子を被覆する析出物を必要とする金染色技術を利用できる。
析出物に起因する粒子質量の増加は、本発明のいくらかの態様において表面弾性波(SAW)デバイスで検出することができる。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、第一の分子反応コンポーネントがSAWセンサの表面に結合された方法に関する。SAWセンサの表面は、特に断りがない場合には、表面全体又は一部の表面として理解されるべきである。一部の表面は、IDT及び/又はリフレクタ構造体として理解してもよいし、それをIDTのマイクロチャンネル及び/又はリフレクタ構造体の中の表面、又は、これらの構造体の上部の表面、又はチャンネルの中とIDT及び/又はリフレクタ構造体の上部との双方の表面として理解してもよい。第一の分子反応コンポーネントは、シグナルコンポーネントとして結合してもよいし、SAWセンサの表面に位置する一部のネットワーク/グリッドを形成してもよい。例えば、第一の分子認識コンポーネントは、米国出願20060024813で開示されているようなヒドロゲルに含まれうる。
【0036】
ある態様において、本発明は、第二の分子反応コンポーネントが、少なくとも1つのナノ粒子と結合し、ナノ粒子が金粒子である方法に関する。金粒子自体は、銀イオン及び/又は金イオンを、金属の銀及び/又は金の析出物に還元するときの触媒として機能することができる。各第二の分子反応コンポーネントは、コンポーネント自体及び少なくとも1つのナノ粒子と結合したナノ粒子の双方のサイズ及び性質によって決めることができる。いくつかの態様において、更に、少なくとも1つのナノ粒子と結合してもよい分子認識コンポーネントが、ネットワーク/グリッド構造体を形成する目的で、及び/又は、該方法の検出シグナルを増幅するために、包含されてもよい。
本発明におけるナノ粒子の直径は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20 nmである。ナノ粒子の直径(サイズ)、従って、質量は、特定の分析の設定、及び、必要とされる感度に応じ、変えることができる。ナノ粒子の直径(サイズ)及びその質量(重量)の間には相関があり、例えば、直径1nmの金粒子の分子量は、15.000 g/molである。
【0037】
いくつかの態様において、本発明は、ナノ粒子の直径が0.05nm〜20nmである方法に関する。
例えば、10nmのサイズのナノ粒子は、5分間以内に300nmに直径が増大することができる。反応時間に応じて、直径を500nm以上に増大することができる。
銀又は金のような好適な物質で形成される析出物に起因して、表面弾性波(SAW)デバイスによって検出可能なナノ粒子の質量の増加が生じる。金属の析出物の発生、つまり、粒子の直径及び質量を増大させることは、例えば純水で洗浄して増強液を除去することにより、簡単に中断することができる。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、更に、サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、(a) SAWセンサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ;(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント;(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液;及び、(d) 還元剤を含むキットに関する。
該方法において、銀イオン及び/又は金イオンを、金属の銀及び/又は金に還元して、銀及び/又は金を少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出させる。そして、少なくとも1つのナノ粒子の質量増加をSAWセンサで検出する。
【実施例】
【0039】
以下の非-限定的な実施例は、上述の本発明の利用法をさらに完全に説明するために用いられる。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、寧ろ例示の目的で提示されるものであると理解される。
実施例1:抗-マウスIgG/抗-HFABP mAb-ALPのアッセイ
この手順は、図1に示したモードに従って行った。
2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)から構成されたマイクロセンサを使用した。SAW共振器ユニットの三次元表面(図1-1)を厚み20nmの金で被覆した。同様のSAW共振器ユニットの三次元表面(図1の2)をSiO2で被覆した。SAW共振器(図1の1)の金の表面に100μg/mlのヤギ抗-マウスIgGを置き一緒にインキュベートし、一方、SAW共振器(図1の2)のSiO2表面にも100μg/mlのヤギ抗-マウスIgGを置き一緒にインキュベートした。
【0040】
第一工程において、金で被覆した三次元SAW表面上に抗-マウス抗体を吸着させた。これは、湿潤環境で、2時間、2μlの100 ug/mLの抗体を含むPBSバッファー溶液を用いて、金/SAW共振器ユニットを平衡して行った。次いで、双方のSAW共振器ユニットを0.05%のtweenを含むPBSバッファーで、3回洗浄した。この処理の後に、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、湿潤環境で、室温で1時間、1%BSAを含むPBSと一緒にインキュベートした。次いで、双方のSAW共振器ユニットをTBSバッファー/0.05%のtweenで、3回洗浄した。次いで、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、15分間、アルカリホスファターゼ酵素(ALP)を含むPBSバッファーを含む様々な濃度のマウス抗体(抗-HFABP mAb-ALP)標識に暴露した。TBS/0.05% tweenで3回洗浄した後に、BCIP/NBT (SIGMA)を添加し、SAW共振器(図1の1)及びSAW共振器ユニット(図2の2)の間でデルタ(△)振動数を、10分後に測定した(実験I〜VII)。
コントロール(実験VIII)−ヤギIgGを双方のSAW共振器ユニット(図1の1,2)上でインキュベートした。
次いで、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、15分間、アルカリホスファターゼ酵素(ALP)を含むPBSバッファーを含む100 ng/mlのマウス抗体(抗-HFABP mAb-ALP)標識に暴露した。TBS/0.05% tweenで3回洗浄した後に、BCIP/NBT (SIGMA)を添加し、SAW共振器(図1の1)及びSAW共振器ユニット(図2-2)の間でデルタ(△)振動数を、10分後に測定した(実験VIII)。
【0041】
表1
表1のデータを用いて、線量反応曲線を作成し、図3に表した。R値 = 1.00
【0042】
実施例2:抗-マウスIgG/抗-HFABP mAb-2ALPのアッセイ
実施例1と同様のアッセイの手順(但し、さらに感度を向上させた)で、抗-マウス IgG/抗-HFABP mAb-2ALP(抗体につき2ALP酵素で標識されている)を検体として使用した。
表2
【0043】
実施例3:金複合抗体と組合せたG3 SAW共振器の感度試験
感度試験のプロトコールは、3つの工程からなる:A. センサ洗浄工程(ヘルマネックス(Hellmanex)-II処理)、B. 複合抗体をSAWセンサに配置する(coding)工程、及び、C. 測定手続
(A. ヘルマネックス-II処理プロトコール)
1. 2%ヘルマネックス-II溶液を調製する:
2. 490mlの再蒸留水に10 mlのヘルマネックス-IIを添加する
3. SAWセンサ表面の張力を、ヘルマネックス-II(2%)を用いて30分間37℃で緩やかに75(rpm)で攪拌することで、除去する
4. 2つの大口ガラス容器の中に、200〜250 mlの2 % ヘルマネックス溶液を添加する
5. 各ガラス容器に、15〜20個のSAWセンサを置く
6. 30分間37℃で緩やかに75(rpm)で攪拌しながら、インキュベートする
7. 100mlの再蒸留水で3回洗浄する
8. 37℃のインキュベータの中で15分間、センサを乾燥させる
9. 室温(RT)(乾燥)でペトリ皿の中で使用するまでセンサを保存する
【0044】
(B. 複合抗体をSAWセンサに配置する)
1. 1μlの400 ng/ml 抗-マウス 金複合抗体(Sigma G7652)をホールF2に添加し、F1は液体が存在しないまま維持する
2. 湿潤環境で2時間インキュベートする
3. 37℃で15分間センサをインキュベートする
4. 乾燥環境の冷蔵庫中で保存する
(C. 測定手続)
1. フローしていないカートリッジ及びG3センサを組立てて、ジグに配置する
2. 測定プログラムを開始させる
3. 5分間、センサ安定試験を行う
4. 双方のセンサホール(f1及びf2)の中に、2μlの銀増強液(SPI 4180, LM銀増強キット)を添加する
5. 測定プログラムをリセットする
6. 7分間測定する
【0045】
実施例4:アルカリホスファターゼ複合抗体及び金複合抗体の間の感度の比較
アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体及び基質溶液:BCIP/NBTを用いた同一実験を行った。
(A. ヘルマネックス-II処理プロトコール)
上記の実施例3と同様
(B. 複合抗体をSAWセンサに配置する)
変更点: 1μlの400 ng/mlのマウスアルカリホスファターゼ複合抗体をホールF2に添加し、F1は液体が存在しないまま維持する
(C. 測定手続)
1. フローしていないカートリッジ及びG3センサを組立てて、ジグに配置する
2. 測定プログラムを開始させる
3. 5分間、センサ安定試験を行う
4. 双方のセンサホール(f1及びf2)の中に、2μlのBCIP/NBT溶液(Sigma B3679)を添加する
5. 測定プログラムをリセットする
6. 15分間測定する
図7(金を用いた方法)及び図8(アルカリホスファターゼを用いた方法)から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加することが分かった。
【0046】
<2つの方法(金複合抗体及びアルカリホスファターゼ複合抗体の方法)の視覚的比較-結論>
シグナル振幅の改善方法については、アトノミックスが最近発明した。今まで、アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体が、発振SAWセンサにおいてシグナルを発生するために用いられてきた。このALPを用いた方法を利用することによって、例えば以下のような様々な改善すべき点が確認されている:
ALP複合抗体は、センサの内壁部及び基板の表面上における金及び樹脂の壁に、非特異的に結合する。このような結合は、非特異的なBCIP/NBT沈殿物を形成し、最終的にはCV値の増加を生じさせる。
【0047】
SAWマイクロチャンネルの中、及び、SAW構造体の上部におけるBCIP/NBT沈殿物は、センサ構造体を全て覆う平板層のようには配置せずに(SAWセンサの発振性質による)、図4Bで示したようにセンサ表面によりランダムな状態に配置する。このこともCV値の増加に寄与しうる。
アルカリホスファターゼの方法は、酵素過程であるため、温度及び処理の問題に起因して、徐々にその活性を緩やかにしなければならない。このこともCV値の増加に寄与しうる。
このような改善すべき点を克服するために、アトノミックスは、アルカリホスファターゼ複合抗体の代わりに、ナノ金複合抗体の試験を開始した。
図2及び図3から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加しているようである。
【0048】
表3:ALPの方法と金複合方法との比較
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、タンパク質及び核酸を含む標的検体を含むテストサンプルを分析するためのSAW共振器マイクロセンサ用のシグナル増幅方法に関する。該方法は、多くの化学的、環境的、医学的分野における用途を提供する。
該方法は、以下の工程を含む:第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;及び、銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程。そして、少なくとも1つのナノ粒子の増加質量を、SAWセンサによって検出する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な検体などの検体における高感度での検出は、依然として分析的検出法における重要な課題である。多くの場合、検出法では膨大なサンプルの処理を要する。更に、分析的検出法は、容易で、迅速で、再現可能でなければならない。このことは、診断法のような高度の専門的な方法及び試薬が使用できない場合に、特に重要である。
特に、従来の生体分析的方法には、いくつかの欠点がある。例えば、核酸分子のハイブリダイゼーションは、一般的に、ハイブリダイゼーション用のプローブが放射性標識を含む場合にはオートラジオグラフィー又はリン光体イメージ分析器によって検出され、あるいは、ハイブリダイゼーション用のプローブがビオチン又はジゴキシンなどの標識を含む場合には濃度計によって検出される。次に、該標識は、酵素複合抗体又はリガンドによって認識されうる。最も新しい生体分子検出法は、分子、例えばDNA又はRNA又はタンパク質の修飾を必要とし、結果として、従来の検出法を経費のかかる、しかも労力を要する方法にしている。
弾性波センサ技術は、物質を検出することにおいて、広範囲の用途があることが明らかにされている。弾性波センサは、弾性波を生じさせ、該波を観察することで物質を検出する。弾性波は、物質の表面を介して、又はその表面上を伝播するときに、伝播経路の特性のあらゆる変化が、波の速度及び/又は振幅に影響を与える。センサの振幅、振動数、及び/又は、位相特性を測定し、それを対応する物理量と相互に関連付けることができる。
【0003】
様々な異なる型の弾性波デバイスが開発されているが、全て水溶性又は生物学的なサンプルの測定においては、限られた成功を収めているに過ぎなかった。バルク弾性波(Bulk acoustic waves:BAW)は、媒体を通じて伝播する。最も一般的に使用されるBAWデバイスは、厚みせん断モード(thickness shear mode:TSM)の共振器(この中で最も一般的な型は水晶振動子微量てんびんである)、及び、せん断水平弾性プレートモード(shear-horizontal acoustic plate mode:SH-APM)のセンサである。反対に、基板の表面で伝播する波は、表面波として知られている。最も広範に使用される表面波デバイスは、表面弾性波センサ、及び、表面横波(surface transverse wave:STW)のセンサとしても知られるせん断水平表面弾性波(shear-horizontal surface acoustic wave:SH-SAW)のセンサである。全ての弾性波センサは、気相又は真空環境で機能するが、それらほとんどが、液体と接触した際に有効に作動できない。
液体センシング用の弾性センサとして知られているものの中で、ラヴ波(love wave)センサは、せん断水平SAWの特別な種類であり、最も高い感度を有する。ラヴ波センサを作製するために、誘電体導波路被膜を、せん断水平波のエネルギーがその被膜に集中するようにSH-SAWデバイス上に配置する。次いで、生体認識被膜を導波路被膜上に配置し、完全な生体センサを形成する。ポリマーのラヴ波誘導被膜を備える110MHz YZ-断面(cut) SH-SAWを用いることで、ng/mlの濃度範囲での抗-ヤギIgGの検出に成功している[E. Gizeliら 1997. "Antibody Binding to a Functionalized Supported Lipid Layer: A Direct Acoustic Immunosensor," Anal Chem, Vol. 69:4808-4813.]。
【0004】
最近、異なるSAWセンサ間の比較について報告された[Bio-molecular Sensors, Eds. Electra Gizeli and Christoffer R. Lowe (2002)]。それによると、124 MHzのラヴ波センサが1.92 mg/cm2の感度を有することが示されている。生物学的な複合体の検出にSAWセンサを使用することは、例えば、US 5,478,756、WO9201931、及び、WO03019981に報告されている。これらの各文献の全体を、参照によりここに組み入れる。
伝播波の垂直方向成分が液体-気体のバリアによって抑制されるために、従来のSAWデバイスでは、液体検出においてはあまり選択されなかった。液体中で機能する一つの弾性波センサは、せん断水平SAWセンサである。圧電性結晶材料の切断部が適切に回転する場合に、波は液体表面に水平に、かつ、平行に伝播する。このことは、液体が、伝播媒体と接触している場合に、劇的に損失を減らすことができ、SH-SAWセンサを生体センサとして動作することを可能にする。液体溶液検体(生体分子など)を検出するために、弾性波と固体/液体境界の特性との間の相互作用を明らかにすること、並びに、GHz範囲において動作する、より高周波数のSAWデバイスを設計することに焦点が当てられ、多くの力が注がれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、SAWデバイスが、液体中の検体、例えば生体分子を測定できないという問題の解決策を提供する。
免疫アッセイでSAWデバイスを使用することは、以前から報告されている。これらのデバイスは、2つの電極の間に挟まれた単結晶ウエハからなる。電極は、その共鳴振動数で水晶振動子を動かす外付けの発振回路とこれらのデバイスとを接続する手段が備わっている。この振動数は、結晶の質量、並びに、結晶の電極領域に限られたいずれかの層の質量に依存する。従って、振動数は、電極の表面上の質量の変化、又は、それらの電極上のいずれかの層の変化によって変動する。一般的に、これらのデバイスの共鳴振動数の変化は、質量の変化と相関しうる。
【0006】
Riceによる1980年12月2日に公開されたUS 4,235,983は、抗体の特定のサブクラスを決定する方法について開示している。この方法は、特定される抗体に特異的な抗原を、その二次元表面に結合させた圧電発振器を利用する。抗原被覆発振器を、未知量の抗体を含む溶液に接触させる。溶液中の抗体が発振器上の抗原と結合した後に、発振器を、特定される抗体の特異的サブクラスに選択的に結合するいわゆるサンドイッチ型の基質に接触させる。発振器の振動数を、サンドイッチ型の基質と接触させる前と後に乾燥状態で測定する。振動数の変化は、二次元の圧電発振器表面に結合させた抗体のサブクラスの量と相関し、溶液中の抗体のサブクラスの量は標準曲線を参照することで決定することができる。
【0007】
Roedererらは、圧電水晶振動子、特に、表面弾性波デバイスを利用したin-situ免疫アッセイについて開示している。ヤギ抗-ヒトIgGを結合剤で二次元水晶振動子表面に固定した。次いで、圧電水晶振動子を電気発振回路に配置し、抗原ヒトIgGの検出の試験をした。吸着による表面質量変化が結晶の共鳴振動数の変動に反映することをもとに、検出を行った。著者は、該方法が感度不足であり、検出制限があるものと結論付けた。著者は、また、検出される抗原が高分子量で無ければならず、低分子量の検体をこの手順で直接検出できないことも結論付けた[Analytical Chemistry, Vol. 55, (1983)]。
Ngeh-Ngwainbiらは、気相におけるパラチオンのアッセイに使用されるパラチオンに対する抗体で被覆された圧電水晶振動子の利用について報告している。被覆抗体が気相における直接反応によってパラチオンと結合した場合に、結晶において生じた質量変化が、この殺虫剤の濃度に比例する振動数変動を引き起こす[J. Mat. Chem. Soc., Vol. 108, pp. 5444-5447 (1986)]。
【0008】
Wardによる1991年3月12日に公開された米国特許第4,999,284は、水晶振動子微量てんびん(QCM)の上又は近くの表面に結合する検体を複合体によって検出する、水晶振動子微量てんびんアッセイを使用する方法を開示している。該複合体は、基質を、QCMの二次元表面上で蓄積可能あるいは該表面と反応可能な生成物に転化することを触媒できる酵素を含み、QCMで質量変化が生じると、共鳴振動数に変化が生じる。しかしながら、振動数は、抗APSレダクターゼ抗体を使用した場合、濃度0.24 ng/mlの検体APSレダクターゼでは、30分間の変化が単に406Hzであり、濃度0.002 ng/ml (2 pg/ml)の検体APSレダクターゼでは、30分間の変化は、単に6.3 Hzだった。二次元QCM表面に様々な修飾をした場合に、著者は、濃度0.025 ng/ml (25 pg/ml)の検体で、30分間で22 Hzの変化を得ることに成功した。これらの結果は、非常に低い濃度(pg/ml範囲)においては、△(デルタ)Hzの変化が、検出/ノイズレベルより小さくない場合、低下することを示した。
一般的に、質量変化が抗原と抗体との免疫学的反応に起因する圧電ベースの免疫アッセイは、二次元センサ表面を使用する環境において、感度不足であり、検出に制限がありうる。その結果として、さらに高感度なアッセイを提供するために、分子認識コンポーネントとその標的検体との反応を増幅できる圧電ベース特異的結合アッセイが、本分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開示
本発明者は、圧電基板上のIDTE構造体又はリフレクタ構造体の間の三次元マイクロチャンネル構造体における液体/固体の体積比を変化させることで、著しくシステムの振動数及び位相を変えられることを発見した。該マイクロチャンネルの間の液体/固体の体積比の変化を、テストサンプル中の検体濃度に相関させて検出することができる。
本発明は、テストサンプル溶液中の標的検体の存在を検出するためのマイクロセンサに関する。該マイクロセンサが、少なくとも1つ、しかし好ましくは2つ以上の表面弾性波(SAW)共振器ユニットを含み、それぞれが、圧電基板と、該基板表面上の多数のインターデジタルのトランスデューサ電極(IDTE)及びリフレクタを含み、そこで三次元マイクロチャネルが、該電極及びリフレクタの間に形成されている。ここで、該SAW共振器ユニットは、該IDTE構造体及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネルに固定された少なくとも1つの分子認識コンポーネントを有し、テストサンプル中の標的検体を、少なくとも1つの分子認識コンポーネントと反応させ、更に、第二の酵素結合-分子認識コンポーネント、又は、酵素結合-検体と反応させ、更に、該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネル中に蓄積する不溶性沈殿物に転化される基質と反応させ、それによって該マイクロチャンネルにおける固体/液体の体積比を減少させ、該マイクロチャンネル中の該固体/液体の体積比の変化が、シグナルの振動数又は位相の変化をもたらす。
【0010】
SAW共振器センサのタイプに関して、IDTE及びリフレクタ構造体の間の三次元マイクロチャンネルにおける生体フィルムの剛性変化も、設定に応じてSAW共振器ユニットの振動数を増加あるいは減少させる。ヒドロゲル技術を利用する事象は、他にも米国出願番号第20060024813で同じ著者によって説明されている。
本発明は、サンプル中の標的検体を検出する方法であって、
(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程、
(b) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで
銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程、及び、
(c) 析出された銀イオン及び/又は金イオンを含む少なくとも1つのナノ粒子を、SAWセンサによって検出する工程を含む方法に関する。
【0011】
ナノ粒子は金粒子であることが好ましい。本発明におけるナノ粒子の直径は、0.05nm〜20nmであることが好ましく、好ましい態様において、該ナノ粒子の直径は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20 nmである。本発明の方法における沈殿物の析出で、約10nmのサイズのナノ粒子は、5分間以内に約300nmに直径が増大する。
本発明は、サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、
(a) SAWセンサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ、
(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント、
(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、
(d) 還元剤
を含むキットに関する。
【0012】
本出願は、サンプル溶液中の標的検体の存在を検出するためのマイクロセンサを対象とする。該マイクロセンサは、センサ表面上に三次元マイクロチャンネル構造体を有するSAW共振器センサを含む。該マイクロチャネル構造体は、更に、標的検体と結合できる固定された分子認識コンポーネントを含む。標的検体を、更に、好ましくはマイクロチャンネルの中で、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、又は、酵素結合-標的検体と反応させる。それを更に該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたマイクロチャンネル中に蓄積する不溶性沈殿物に転化する基質と反応させ、それによって該マイクロチャンネルにおける固体/液体の体積比を減少させ、該マイクロチャンネル中の該固体/液体の体積比の変化が、シグナルの振動数又は位相の変化をもたらす。
マイクロセンサは、参照用の表面弾性波共振器マイクロチャンネル構造体も含むことができる。例えば、参照用のマイクロチャンネルは、分子認識コンポーネントを含まない。また、コントロールとは、標的検体を含まないサンプル溶液の測定にすることができる。マイクロ参照チャンネル及びセンサマイクロチャンネルの間の差異から、標的検体の存在を測定する。
【0013】
分子認識コンポーネントの非制限的な例としては、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、PNA及びLNA分子のような核酸類似体、タンパク質、ペプチド、IgA、IgG、IgM、IgEのような抗体、酵素、酵素補因子、酵素基質、酵素阻害剤、レセプター、リガンド、キナーゼ、プロテインA、ポリU、ポリA、ポリリジン、トリアジン染料、ボロン酸、チオール、ヘパリン、ポリサッカライド、クーマシーブルー、アズールA、金属結合ペプチド、糖、炭水化物、キレート剤、原核細胞、及び、真核細胞が挙げられる。
標的検体の非制限的な例としては、核酸、タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、炭水化物、化学化合物、及び気体が挙げられる。ほかの例示的な標的検体は、トロポニン1、トロポニンT、アレルゲン、又はIgEのような免疫グロブリンが挙げられる。特定の用途において、標的検体は、複数の分子認識コンポーネントに結合することができる。
【0014】
本出願は、サンプル溶液中の標的検体を検出する方法も対象とする。分子認識コンポーネントは、表面弾性波センサの表面上に位置するマイクロチャンネルに固定されている。このセンサは、サンプル中の検体と認識コンポーネントとの結合を促進する条件下でサンプルと接触させる。次いで、表面弾性波の位相変動又は振動数の変化を検出する。該変化によって、サンプル中の検体の存在を測定する。
SAW共振器ユニットの振幅をテストサンプル中の標的検体と反応させるための少なくとも1つの分子認識コンポーネントのための最適条件に調整するべきであることに注意する。該振幅が高すぎる場合には、分子認識コンポーネント/検体相互作用のための非最適条件に起因して一貫した結果が得られない。
【0015】
テストサンプル中の検体を検出する方法は以下の工程を含む:テストサンプル中の検体を第一認識コンポーネント及び酵素結合検体の第二酵素結合認識コンポーネントと反応させる工程;該結合酵素によって不溶性沈殿物に転化される基質を添加する工程;ここで、2つの工程は、SAW共振器ユニットとは別の反応容器中で行われ、そして、その中で得られた該不溶性沈殿物は該SAW共振器ユニットに能動的に運ばれ、該電極及びリフレクタ構造体の間に形成されたSAWマクロチャンネルに接触したそれが、該マイクロチャンネル中の固体/液体の体積比を減少させる。該固体/液体の体積比が、シグナルの振動数又は位相の変化にいたる該マイクロチャンネルを変化させ、該シグナル変化が検体特異的シグナルを誘発する。
標的検体をサンプル中で検出できる。例示的なサンプルは、血液、血清、血漿、腹水、糞便、骨髄液(spinal core fluids)、尿、塗沫標本(smears)、唾液を含む。この方法は、診断目的に使用されうる。
本発明を以下に図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】参照番号1及び2により一般的に示される2つのSAW共振器ユニットを示す。各SAW共振器ユニットは、1つのIDTE部(7,8)及び2つのリフレクタ部(9,10)からなる。IDTE(3,6)の間に、マイクロチャンネル(4,5)が位置する。同様のマイクロチャンネルが、リフレクタ構造体(15,16)の間にも位置している。SAW共振器ユニット(1)三次元表面全体に、分子認識コンポーネント(3,17)が固定されており、一方でSAW共振器ユニット(2)には、分子認識コンポーネントは存在しない。反応層(11)は、検体と、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、基質とを表す。基質が不溶性沈殿物に転化した場合、リフレクタ構造体(12,13)の間のマイクロチャンネルスペース(16)が、マイクロチャネル(16)における固体/液体の体積比の変化に応じて減少する。また、SAW共振器ユニット(1)におけるIDTE間のマイクロチャンネルが同じ理由で減少する。SAW共振器ユニット(2)における構造体(14,18)の間で、マイクロチャンネル(15)固体/液体の体積比の変化は見られない。
【図2】同じ基板上に配置した図1と同様の2つのSAW共振器ユニット(1,2)を示す。
【図3】実施例1において詳述する線量反応曲線を示す。
【図4】図1(9)において示されたリフレクタ構造体のAFM写真を示す。番号1は基板を表す。番号2はリフレクタ構造体を表す。番号3,4はリフレクタ構造体の間のマイクロチャンネルの寸法を表す。
【図5】図4で示されたAFM写真からの計算スキームを示す。これは、IDTE及びリフレクタ構造体の例示的な寸法を示す。
【図6】センサ用のカートリッジシーリングを示す。B:カートリッジ中のセンサ、C:分離テープ、D:組立ジグ、E:電子制御ユニット、F:コンピューターへの接続ワイヤ、G:テスト設定の中に組立られたカートリッジを含むセンサ、H:センサホールの中に添加された銀増強液。
【図7】銀増強液を添加した(手順C4)後のシグナルの読取を示す。
【図8】BCIP/NBT溶液を添加した(手順C4)後のシグナルの読取を示す。
【図9】センサ測定の後におけるf2センサホールの視覚的な検査の内容を示す。A:金複合抗体及び銀増強を用いた方法、B:アルカリホスファターゼ複合抗体及びBCIP/NBTを用いた方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
<定義>
本明細書で使用される「結合事象」は、SAWセンサの三次元マイクロチャンネル構造体表面に固定された分子認識コンポーネントへの標的検体の結合を意味する。
「ナノ粒子」は、好ましくは球体で、直径が0.02〜50nmである固体の不溶性粒子である。
本発明は、同じ参照番号が同じ構成要素を示すよう用いられた図面を参照することで理解することができる。
以下、図1を参照して、参照番号1及び2により一般的に示される2つのSAW共振器ユニットからなるマイクロセンサについて確認する。各SAW共振器ユニットは、1つのIDTE部(7,8)及び2つのリフレクタ部(9,10)からなる。IDTE(3,6)の間に、マイクロチャンネル(4,5)が位置する。同様のマイクロチャンネルが、リフレクタ構造体(15,16)の間にも位置している。SAW共振器ユニット(1)三次元表面全体に、分子認識コンポーネント(3,17)が固定されており、一方でSAW共振器ユニット(2)には、分子認識コンポーネントは存在しない。反応層(11)は、検体と、第二の酵素結合-分子認識コンポーネントと、基質とを表す。基質が不溶性沈殿物に転化した場合、リフレクタ構造体(12,13)の間のマイクロチャンネルスペース(16)が、マイクロチャネル(16)における固体/液体の体積比の変化に応じて減少する。また、SAW共振器ユニット(1)におけるIDTE間のマイクロチャンネルが同じ理由で減少する。SAW共振器ユニット(2)における構造体(14,18)の間で、マイクロチャンネル(15)固体/液体の体積比の変化は見られない。
【0018】
マイクロチャンネル(16)に蓄積可能な不溶性生成物を生成できる酵素/基質システムの例として、アルカリホスファターゼ及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)が挙げられる。BCIPの酵素的に触媒された加水分解は、マイクロチャンネルに沈殿した不溶性ダイマーを生成する。ガラクトース、グルコース、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び、アミノ酸と同様の加水分解的回裂可能な官能基で置換されたホスフェート基を有する別の同様の基質を、相補的酵素と使用することができる。
他の酵素/基質システムには、ペルオキシダーゼ酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、又は、ミエロペルオキシダーゼ、及び、以下に示すものの1つを含む:ベンジデン、ベンジデン ジヒドロクロリド、ジアミノベンジデン、o-トリデン、o-ジアニシジン、及び、テトラメチルベンジデン、カルバゾール、特に、3-アミノ-9-エチルカルバゾール。これらの全てが、ペルオキシダーゼとの反応で沈殿物を形成することが報告されている。また、アルファヒドロキシ酸 オキシダーゼ、アルデヒド オキシダーゼ、グルコース オキシダーゼ、L-アミノ酸 オキシダーゼ、及び、キサンチン オキシダーゼのようなオキシダーゼをフェナジン メトサルフェート-ニトロブルー テトラゾリウム混合物のような酸化可能基質システムと使用することができる。
【0019】
ここで、図2を参照すると、この図2は同じ基板上に配置した図1と同様の2つのSAW共振器ユニット(1,2)を備える。
ここで、図3を参照すると、この図3は実施例1において詳述する。
図4は、図1(9)において示されたリフレクタ構造体のAFM写真を示す。番号(1)は基板を表す。番号2はリフレクタ構造体を表す。番号3,4はリフレクタ構造体の間のマイクロチャンネルの寸法を表す。
図5は、図4で示されたAFM写真からの計算スキームを示す。これは、リフレクタ及びIDTE構造体の例示的な寸法を示す。
【0020】
<表面弾性波センサ>
ここに記載するマイクロセンサは、少なくとも1つの表面弾性波センサを含む。表面弾性波センサは、圧電層、または圧電基板、および入力および出力トランスデューサを含む。表面弾性波は、該圧電層内で発生し、かつインターデジタル電極によって検出される。以下でより詳細に説明するように、該表面弾性波センサの表面を変更する結合事象が、該伝播する表面弾性波の特性における変化として検出できる。表面弾性波センサは、米国特許第5,130,257号、同第5,283,037号および同第5,306,644号;F. Josseら, Guided Shear Horizontal Surface Acoustic Wave Sensors for Chemical and Biochemical Detection in Liquids, Anal. Chem. 2001, 73:5937;およびW. Welschら, Development of a Surface Acoustic Wave Immunosensor, Anal. Chem. 1996, 68:2000-2004に記載されている。これら各文献全体を、参照によってここに特別に組み入れる。
【0021】
弾性波デバイスを、圧電基板を通る、又は、その上の波動伝搬のモードによって説明する。弾性波は、第一に、その速度と変位方向によって区別される。物質と境界条件に起因する多くの組合せが可能である。各センサのインターデジタルトランスデューサ電極(IDTE)は、基板を変位させ、それに伴って弾性波を形成するために不可欠な電場をもたらす。該波は、基板を通って伝搬され、それが対向電極のIDTEで電場に変換される。横波(S波)は、波動伝搬の方向に垂直である粒子移動を含み、それは偏向しうるので、粒子移動は、センシング表面に対して平行又は垂直である。せん断水平波動(shear horizontal wave motion)がセンシング表面に平行に偏向した横方向変位を示し、せん断垂直波動(shear vertical motion)がセンシング表面に垂直な横方向変位を示す。
【0022】
本明細書で用いられる"表面弾性波センサ"又は"表面弾性波デバイス"は、上記で説明した方法で実質的に作動するデバイスを意味する。いくつかの態様において、"表面弾性波センサ"は、表面変位が伝搬方向と直角でデバイス表面と平行である表面横波デバイスと、少なくとも表面変位の一部がデバイス表面と直角である表面弾性波センサとの双方を示す。表面横波デバイスは、一般的に流体においてより高い感受性を有する一方で、表面変位の一部がデバイス表面に垂直である場合、十分な感度が得られることも明らかになっている(例えば、M. Rappら, Modification of Commercially Available LOW-LOSS SAW devices towards an Immunosensor for in situ Measurements in Water, 1995, IEEE国際超音波シンポジウム(IEEE International Ultrasonics Symposium), 1995, Nov. 7-10, シアトル、ワシントン;およびN. Barieら, Covalent bonding sensing layers on surface acoustic wave biosensors, Biosensors & Bioelectronics, 16 (2001) 979を参照)。これら全てを、参照により特別にここに組み入れる。
【0023】
センサは、フォトリソグラフィ処理方法で製造される。製造方法は、圧電基板を丁寧に研磨し、洗浄することから始まる。次いで、金又はアルミニウムのような金属を、基板の上に均一に蒸着する。デバイスを、フォトレジストでスピンコートし、焼結して硬化する。次に、それを、最終デバイス上で金属被覆される領域に対応する不透明領域を有するマスクを通してUV光に曝す。曝された領域は、それらが現像液で除かれるような化学変化を受ける。最終的に、残ったフォトレジストを、取り除く。デバイス上に残った金属のパターンは、インターデジタルトランスデューサ(IDT)又はインターデジタル電極(IDE)と呼ばれる。IDTの長さ、幅、位置、及び、薄さを変更することで、センサの性能を最大に引き出すことができる。
【0024】
<入力及び出力トランスデューサ>
該入力及び出力トランスデューサは、インターデジタルトランスデューサであることが好ましい。一般に、2つのインターデジタルトランスデューサがある。該入力及び出力トランスデューサのそれぞれが、インターデジタルパターンに配列された2つの電極を含む。入力トランスデューサの2つの電極の間に与えられる電圧差が、圧電基板における表面弾性波の発生をもたらす。電極は、一般に任意の導電性材料を含むことができ、アルミニウムまたは金が好ましい。
【0025】
該電極は、従来の形態を採用することができるが、支持体の表面に沿って波動伝搬の方向に垂直な金属被覆の細長い領域として、フォトリソグラフィで表面を蒸着したものが好ましい。細長い金属領域は、同一の大きさの幅および間隔を持つことが好ましい。該幅は、一般的に、1〜40μm、好ましくは、10〜20μmである。いくつかの態様において、該幅は、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、60μm、70μm、80μmまたは90μmよりも大きいか、あるいはこれに等しい。他の態様では、該電極間の間隔は、100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、45μm、40μm、35μm、30μm、25μm、20μm、15μm、10μm、7.5μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、または75nmに等しいか、それよりも小さくてもよい。この間隔は、該デバイスの周波数と反比例して変化することに注意すべきである。
いくつかの態様においては、該電極の高さは、その幅と同一である。他の態様では、該電極の高さは、例えば10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、または900nmよりも大きいか、あるいはこれに等しい。他の態様では、該電極間の間隔の深さは、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、75nm、50nm、40nm、30nm、または20nmよりも小さいか、それに等しくてもよい。
【0026】
別の態様では、単一のインターデジタルトランスデューサがある。この態様では、該単一のインターデジタルトランスデューサが、入力および出力トランスデューサ両者として機能する。入力および出力トランスデューサ両者として動作する、単一のインターデジタルトランスデューサを使用する態様では、一般にリフレクタ構造体が与えられて、該SAWセンサ内で1以上の共鳴を発生する。該リフレクタ構造体は、例えば薄いフィルム格子であり得る。この格子は、アルミニウムまたは他の導電性材料を含むことができる。この発生した共鳴は、例えば該単一のトランスデューサにおいて、散逸する出力を測定することにより、検出することができる。この薄い構造体における1以上の結合事象が、これらの共鳴を変化させ、該結合事象の検出を可能とする。本態様によるセンサおよび技術の例は、一般的に米国特許第5,846,708号に記載されている。この特許を、本発明の参照により、ここに組入れる。以下に記載するように、他の電子機器および/または回路を、ただ一つのインターデジタルトランスデューサのみを持つSAWセンサを使用する態様で、同様に使用することができる。
【0027】
分子認識分子は、自己組織化単分子層に、直接結合させることができる。例えば、金のIDTEを使用する場合、DNAプローブ分子は、SH基を利用して、該DNAの5'末端に結合することができ、ここでは、当分野において公知であり、また例えばK. Vijayamohananら, Self-assembled monolayers as a tunable platform for biosensor applications, Biosensors & Bioelectronics, 2002, 17:1-12およびGeorge M. Whitesidesら, Array of Self-Assembled Monolayers for studying inhibition of Bacterial Adhesion, Anal. Chem. 2002, 74:1805-1810(これら両者を参照により、ここに組入れる)に記載されているような、自己組織化単分子層を使用する。
【0028】
本発明は、特に(1)サンプル中の検体を検出する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:(a)第一の認識コンポーネント、及び、第二の酵素-結合認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;及び(b)結合された該酵素で沈殿物に転化される基質を添加する工程。ここで、工程(a)及び(b)は、測定チャンバとは別の反応容器の中で行われ、工程(b)で得られた該沈殿物は、SAWセンサ表面と接触すると、検体特異的シグナルを引き起こす該測定チャンバに、能動的に輸送される。
本発明の更なる態様は、以下の通りである:
(2) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、第一の認識コンポーネントが検体を、反応容器の表面に固定させる。
(3) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、表面とは、反応容器内側、又は、容器内部に含まれる材料の表面、又はそれらの組合せとすることができる。
(4) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、認識コンポーネントが、以下の群から選択される:タンパク質、タンパク質類似体、修飾タンパク質、核酸、核酸類似体、及び、修飾核酸。
(5) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、タンパク質が、以下の群から選択される:抗体、抗体フラグメント、修飾抗体、レセプター分子、及び、リガンド分子。
【0029】
(6) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、酵素が、以下の群から選択される:アルカリホスファターゼ(AP)、及び、ウマ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)。
(7) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、基板が、以下の群から選択される:ジアミノベンジジン(DAP)、アミノエチルカルバゾール(AEC)、テトラメチルベンジジン(TMB)、又は、5-ブロモ,4-クロロ,3-インドリルホスフェート(BCIP)/ニトロブルー テトラゾリウム(NBT)。
更に、本発明は、(8) 上記(1)のような方法及び/又は後述の態様のいずれかにおけるサンプル中の検体を検出するデバイスに関する。該デバイスは、検体特異的沈殿物を酵素変換によって生じさせる、注入口及び排出口を備える反応容器を含み、これは、SAWセンサを含む、注入口及び排出口を備える測定チャンバと接続されている。ここで、液体フローによって、反応容器から、該沈殿物がSAWセンサ表面に接触して検体特異的シグナルを引き起こす測定チャンバに、該沈殿物を、能動的に輸送する。
(9) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、該デバイスが、更にフローレギュレータと接続されており、レギュレータは、反応容器の前に設置されたポンプシステム、測定チャンバの後方に設置された吸気システム、又はその双方である。
(10) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、反応容器が、以下の群から選択される:チューブ、チューブシステム、チャンバ、及び、接続チャンバのシステム。
【0030】
(11) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、該デバイスが、更に以下の群から選択される反応容器システムの中に保持された材料を含む:ビーズ、ゲル。
(12) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、反応容器システムが、更に以下の群から選択される1つ以上の材料を含む:フィルタ、グリッド。
(13) 上記(8)のようなデバイス及び/又は後述の態様のいずれかにおいて、SAWセンサが、SAWフィルタユニット型である。
【0031】
第二の酵素結合-分子認識コンポーネントは、本発明のいくつかの態様において、ナノ粒子結合-分子認識コンポーネント又はナノプローブで置換てもよい。
シグナル振幅の改善方法については、アトノミックスが最近発明した。今まで、アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体が、発振SAWセンサにおいてシグナルを発生するために用いられてきた。このALPを用いた方法を利用することによって、例えば以下のような様々な改善すべき点が確認されている:
ALP複合抗体は、センサの内壁部及び基板の表面上における金及び樹脂の壁に、非特異的に結合する。このような結合は、非特異的なBCIP/NBT沈殿物を形成し、最終的にはCV値の増加を生じさせる。
【0032】
SAWマイクロチャンネルの中、及び、SAW構造体の上部におけるBCIP/NBT沈殿物は、センサ構造体を全て覆う平板層のようには配置せずに(SAWセンサの発振性質による)、図4Bで示したようにセンサ表面によりランダムな状態に配置する。このこともCV値の増加に寄与しうる。
アルカリホスファターゼの方法は、酵素過程であるため、温度及び処理の問題に起因して、徐々にその活性を緩やかにしなければならない。このこともCV値の増加に寄与しうる。
このような改善すべき点を克服するために、アトノミックスは、アルカリホスファターゼ複合抗体の代わりに、ナノ金複合抗体の試験を開始した。
図2及び図3から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加しているようである。
【0033】
また、好ましい態様において、本発明は、以下の工程を含む、サンプル中の標的検体を検出するための方法に関する:(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を反応させる工程;(b)銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、銀及び/又は金が、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程;(c)SAWセンサを使用して、少なくとも1つのナノ粒子の増加質量を検出する工程。
コロイドの(Collodal)金(Au)及び銀(Ag)粒子及び/又はクラスター複合体は、標的分子の標識用に、電子顕微鏡で用いられる。例えば、高い密度で結合した該クラスター複合体を有する細胞は、顕微鏡で暗赤紫色を示すことができる。
【0034】
免疫金銀染色(IGSS)は、1981年に発見され、それ以来、シグナル増幅/増強に使用され、化学発光及び放射能核酸標識の代替として機能する免疫検出システムの感度を向上させてきた。IGSSによって、小サイズ及び少量の標的分子を、例えば顕微鏡(光、電子、走査など)及び比色分析吸光度による外観検査で検出することが可能になった。免疫金銀染色技術は、銀イオン、及び、例えばヒドロキノンのような還元剤の存在をベースとし、コロイドの金粒子は、銀イオンを金属の銀に還元するための触媒として働く。銀は、金粒子の上に析出し、これによって、粒子を拡張する。
本発明のいくらかの態様において、溶液中の金イオンが触媒的に金属の金として析出される場合に、粒子を被覆する析出物を必要とする金染色技術を利用できる。
析出物に起因する粒子質量の増加は、本発明のいくらかの態様において表面弾性波(SAW)デバイスで検出することができる。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、第一の分子反応コンポーネントがSAWセンサの表面に結合された方法に関する。SAWセンサの表面は、特に断りがない場合には、表面全体又は一部の表面として理解されるべきである。一部の表面は、IDT及び/又はリフレクタ構造体として理解してもよいし、それをIDTのマイクロチャンネル及び/又はリフレクタ構造体の中の表面、又は、これらの構造体の上部の表面、又はチャンネルの中とIDT及び/又はリフレクタ構造体の上部との双方の表面として理解してもよい。第一の分子反応コンポーネントは、シグナルコンポーネントとして結合してもよいし、SAWセンサの表面に位置する一部のネットワーク/グリッドを形成してもよい。例えば、第一の分子認識コンポーネントは、米国出願20060024813で開示されているようなヒドロゲルに含まれうる。
【0036】
ある態様において、本発明は、第二の分子反応コンポーネントが、少なくとも1つのナノ粒子と結合し、ナノ粒子が金粒子である方法に関する。金粒子自体は、銀イオン及び/又は金イオンを、金属の銀及び/又は金の析出物に還元するときの触媒として機能することができる。各第二の分子反応コンポーネントは、コンポーネント自体及び少なくとも1つのナノ粒子と結合したナノ粒子の双方のサイズ及び性質によって決めることができる。いくつかの態様において、更に、少なくとも1つのナノ粒子と結合してもよい分子認識コンポーネントが、ネットワーク/グリッド構造体を形成する目的で、及び/又は、該方法の検出シグナルを増幅するために、包含されてもよい。
本発明におけるナノ粒子の直径は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20 nmである。ナノ粒子の直径(サイズ)、従って、質量は、特定の分析の設定、及び、必要とされる感度に応じ、変えることができる。ナノ粒子の直径(サイズ)及びその質量(重量)の間には相関があり、例えば、直径1nmの金粒子の分子量は、15.000 g/molである。
【0037】
いくつかの態様において、本発明は、ナノ粒子の直径が0.05nm〜20nmである方法に関する。
例えば、10nmのサイズのナノ粒子は、5分間以内に300nmに直径が増大することができる。反応時間に応じて、直径を500nm以上に増大することができる。
銀又は金のような好適な物質で形成される析出物に起因して、表面弾性波(SAW)デバイスによって検出可能なナノ粒子の質量の増加が生じる。金属の析出物の発生、つまり、粒子の直径及び質量を増大させることは、例えば純水で洗浄して増強液を除去することにより、簡単に中断することができる。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、更に、サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、(a) SAWセンサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ;(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント;(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液;及び、(d) 還元剤を含むキットに関する。
該方法において、銀イオン及び/又は金イオンを、金属の銀及び/又は金に還元して、銀及び/又は金を少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出させる。そして、少なくとも1つのナノ粒子の質量増加をSAWセンサで検出する。
【実施例】
【0039】
以下の非-限定的な実施例は、上述の本発明の利用法をさらに完全に説明するために用いられる。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、寧ろ例示の目的で提示されるものであると理解される。
実施例1:抗-マウスIgG/抗-HFABP mAb-ALPのアッセイ
この手順は、図1に示したモードに従って行った。
2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)から構成されたマイクロセンサを使用した。SAW共振器ユニットの三次元表面(図1-1)を厚み20nmの金で被覆した。同様のSAW共振器ユニットの三次元表面(図1の2)をSiO2で被覆した。SAW共振器(図1の1)の金の表面に100μg/mlのヤギ抗-マウスIgGを置き一緒にインキュベートし、一方、SAW共振器(図1の2)のSiO2表面にも100μg/mlのヤギ抗-マウスIgGを置き一緒にインキュベートした。
【0040】
第一工程において、金で被覆した三次元SAW表面上に抗-マウス抗体を吸着させた。これは、湿潤環境で、2時間、2μlの100 ug/mLの抗体を含むPBSバッファー溶液を用いて、金/SAW共振器ユニットを平衡して行った。次いで、双方のSAW共振器ユニットを0.05%のtweenを含むPBSバッファーで、3回洗浄した。この処理の後に、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、湿潤環境で、室温で1時間、1%BSAを含むPBSと一緒にインキュベートした。次いで、双方のSAW共振器ユニットをTBSバッファー/0.05%のtweenで、3回洗浄した。次いで、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、15分間、アルカリホスファターゼ酵素(ALP)を含むPBSバッファーを含む様々な濃度のマウス抗体(抗-HFABP mAb-ALP)標識に暴露した。TBS/0.05% tweenで3回洗浄した後に、BCIP/NBT (SIGMA)を添加し、SAW共振器(図1の1)及びSAW共振器ユニット(図2の2)の間でデルタ(△)振動数を、10分後に測定した(実験I〜VII)。
コントロール(実験VIII)−ヤギIgGを双方のSAW共振器ユニット(図1の1,2)上でインキュベートした。
次いで、2つのSAW共振器ユニット(図1の1,2)を、15分間、アルカリホスファターゼ酵素(ALP)を含むPBSバッファーを含む100 ng/mlのマウス抗体(抗-HFABP mAb-ALP)標識に暴露した。TBS/0.05% tweenで3回洗浄した後に、BCIP/NBT (SIGMA)を添加し、SAW共振器(図1の1)及びSAW共振器ユニット(図2-2)の間でデルタ(△)振動数を、10分後に測定した(実験VIII)。
【0041】
表1
表1のデータを用いて、線量反応曲線を作成し、図3に表した。R値 = 1.00
【0042】
実施例2:抗-マウスIgG/抗-HFABP mAb-2ALPのアッセイ
実施例1と同様のアッセイの手順(但し、さらに感度を向上させた)で、抗-マウス IgG/抗-HFABP mAb-2ALP(抗体につき2ALP酵素で標識されている)を検体として使用した。
表2
【0043】
実施例3:金複合抗体と組合せたG3 SAW共振器の感度試験
感度試験のプロトコールは、3つの工程からなる:A. センサ洗浄工程(ヘルマネックス(Hellmanex)-II処理)、B. 複合抗体をSAWセンサに配置する(coding)工程、及び、C. 測定手続
(A. ヘルマネックス-II処理プロトコール)
1. 2%ヘルマネックス-II溶液を調製する:
2. 490mlの再蒸留水に10 mlのヘルマネックス-IIを添加する
3. SAWセンサ表面の張力を、ヘルマネックス-II(2%)を用いて30分間37℃で緩やかに75(rpm)で攪拌することで、除去する
4. 2つの大口ガラス容器の中に、200〜250 mlの2 % ヘルマネックス溶液を添加する
5. 各ガラス容器に、15〜20個のSAWセンサを置く
6. 30分間37℃で緩やかに75(rpm)で攪拌しながら、インキュベートする
7. 100mlの再蒸留水で3回洗浄する
8. 37℃のインキュベータの中で15分間、センサを乾燥させる
9. 室温(RT)(乾燥)でペトリ皿の中で使用するまでセンサを保存する
【0044】
(B. 複合抗体をSAWセンサに配置する)
1. 1μlの400 ng/ml 抗-マウス 金複合抗体(Sigma G7652)をホールF2に添加し、F1は液体が存在しないまま維持する
2. 湿潤環境で2時間インキュベートする
3. 37℃で15分間センサをインキュベートする
4. 乾燥環境の冷蔵庫中で保存する
(C. 測定手続)
1. フローしていないカートリッジ及びG3センサを組立てて、ジグに配置する
2. 測定プログラムを開始させる
3. 5分間、センサ安定試験を行う
4. 双方のセンサホール(f1及びf2)の中に、2μlの銀増強液(SPI 4180, LM銀増強キット)を添加する
5. 測定プログラムをリセットする
6. 7分間測定する
【0045】
実施例4:アルカリホスファターゼ複合抗体及び金複合抗体の間の感度の比較
アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体及び基質溶液:BCIP/NBTを用いた同一実験を行った。
(A. ヘルマネックス-II処理プロトコール)
上記の実施例3と同様
(B. 複合抗体をSAWセンサに配置する)
変更点: 1μlの400 ng/mlのマウスアルカリホスファターゼ複合抗体をホールF2に添加し、F1は液体が存在しないまま維持する
(C. 測定手続)
1. フローしていないカートリッジ及びG3センサを組立てて、ジグに配置する
2. 測定プログラムを開始させる
3. 5分間、センサ安定試験を行う
4. 双方のセンサホール(f1及びf2)の中に、2μlのBCIP/NBT溶液(Sigma B3679)を添加する
5. 測定プログラムをリセットする
6. 15分間測定する
図7(金を用いた方法)及び図8(アルカリホスファターゼを用いた方法)から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加することが分かった。
【0046】
<2つの方法(金複合抗体及びアルカリホスファターゼ複合抗体の方法)の視覚的比較-結論>
シグナル振幅の改善方法については、アトノミックスが最近発明した。今まで、アルカリホスファターゼ(ALP)複合抗体が、発振SAWセンサにおいてシグナルを発生するために用いられてきた。このALPを用いた方法を利用することによって、例えば以下のような様々な改善すべき点が確認されている:
ALP複合抗体は、センサの内壁部及び基板の表面上における金及び樹脂の壁に、非特異的に結合する。このような結合は、非特異的なBCIP/NBT沈殿物を形成し、最終的にはCV値の増加を生じさせる。
【0047】
SAWマイクロチャンネルの中、及び、SAW構造体の上部におけるBCIP/NBT沈殿物は、センサ構造体を全て覆う平板層のようには配置せずに(SAWセンサの発振性質による)、図4Bで示したようにセンサ表面によりランダムな状態に配置する。このこともCV値の増加に寄与しうる。
アルカリホスファターゼの方法は、酵素過程であるため、温度及び処理の問題に起因して、徐々にその活性を緩やかにしなければならない。このこともCV値の増加に寄与しうる。
このような改善すべき点を克服するために、アトノミックスは、アルカリホスファターゼ複合抗体の代わりに、ナノ金複合抗体の試験を開始した。
図2及び図3から判断して、金を用いた方法は、ALPを用いた方法に比べて、感度の観点から300倍シグナルが増加しているようである。
【0048】
表3:ALPの方法と金複合方法との比較
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的検体を検出する方法であって、
(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を、反応させる工程、
(b) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、
銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程、及び、
(c) 析出された銀イオン及び/又は金イオンを含む少なくとも1つのナノ粒子を、SAWセンサによって検出する工程
を含む方法。
【請求項2】
ナノ粒子が、金の粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ粒子の直径が、0.05 nm〜20 nmである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子の直径が、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は、20 nmである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
約10 nmのサイズのナノ粒子が、5分間以内に、約300 nmに直径が増大する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、
(a) 表面弾性波(SAW)センサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ、
(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント、
(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、
(d) 還元剤
を含むキット。
【請求項1】
サンプル中の標的検体を検出する方法であって、
(a)第一の分子認識コンポーネント、及び、少なくとも1つのナノ粒子と結合された第二の分子認識コンポーネントと、サンプル中の検体を、反応させる工程、
(b) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、還元剤を添加することで、
銀イオン及び/又は金イオンが、金属の銀及び/又は金に還元され、少なくとも1つのナノ粒子の表面上に析出される工程、及び、
(c) 析出された銀イオン及び/又は金イオンを含む少なくとも1つのナノ粒子を、SAWセンサによって検出する工程
を含む方法。
【請求項2】
ナノ粒子が、金の粒子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ粒子の直径が、0.05 nm〜20 nmである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子の直径が、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は、20 nmである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
約10 nmのサイズのナノ粒子が、5分間以内に、約300 nmに直径が増大する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
サンプル中の検体を検出するためのマイクロセンサを含む製品のキットであって、
(a) 表面弾性波(SAW)センサの表面に固定された少なくとも1つの第一の分子認識コンポーネントを含む表面弾性波センサ、
(b) 少なくとも1つのナノ粒子と結合された少なくとも1つの第二の分子認識コンポーネント、
(c) 銀イオン及び/又は金イオンを含む増強液、及び、
(d) 還元剤
を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2010−529422(P2010−529422A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509677(P2010−509677)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000202
【国際公開番号】WO2008/145130
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(506388510)アトノミックス アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000202
【国際公開番号】WO2008/145130
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(506388510)アトノミックス アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】
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