説明

標高値特定装置及びその方法、並びに標高値を特定するためのコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】道路リンク上の各点の標高値を自動的に特定する装置及びその方法に関する。
【解決手段】地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出し、標高データベースに記憶された標高データに基づき当該対象リンク上の各点の標高値を特定し、当該標高値特定ステップは、予め優先順位が設定された複数の標高データベースの中から、当該優先順位が高く、かつ、当該対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて当該対象リンク上の各点の標高値を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク上の各点の標高値を特定する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経路探索を行うナビゲーション装置において、エネルギー消費量を考慮した経路探索技術への要求の高まりから、道路勾配データを用いて当該エネルギー消費量を計算する技術が提案されている。
このような技術として特許文献1では、リンクごとに記憶された道路勾配データに基づいて、各リンクにおける推定燃費を計算し、計算された推定燃費を利用して最適な経路探索を行う車両用経路探索装置等が提案されている。
上記道路勾配データは、一般にリンク上の所定ポイント(座標)の標高値に基づき定められる。そして、当該リンク上の所定ポイントの標高値は基準標高データ(例えば、10mメッシュ標高データ)に基づいて演算される。
本件発明に関連する従来技術を開示する特許文献2も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3551634号公報
【特許文献2】特開2009−002847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、リンク上の所定ポイントの標高値は、所定の基準標高データベースに基づいて演算することにより特定されていた。そして、この基準標高データベースとしては、地図の全域をカバーするものが好ましいことから、もっぱら国土地理院の提供する10mメッシュ標高データが用いられてきた。
一方で、リンク上の所定ポイントの標高をより正確に求めたいという要望がある。
本発明者らは、この要望に応えるべく検討し、上記特定の標高データベースの使用に限らず、複数の標高データベースの中から標高値をより正確に求めることができる標高データベースを使用することに想到した。近年、標高データベースとして、上記10mメッシュ標高データの他、5mメッシュ標高データ、プローブデータ等が整備されつつあるからである。
【0005】
ここで、リンク上の各ポイントの標高値をより正確に演算するには、リンク付近に標高データベースの基準点(標高データ保有点)が多く存在することが好ましい。すなわち、標高データベースにおける単位面積あたりの基準点の数が多いほど、リンク上の各ポイントの標高値をより正確に演算することができると考えられる。例えば、5mメッシュ標高データは、10mメッシュ標高データに比べ、リンク付近に標高データベースの基準点が多く存在する点で、より確からしい標高データベースであるといえ、標高値をより正確に演算可能な標高データベースであると推定できる。
【0006】
しかしながら、上述したように基準標高データベースとしては、地図の全域をカバーするものが好ましいものの、上記5mメッシュ標高データでは、地図の全域をカバーできていないのが実情である。
そこで、部分的にでもより確からしい標高データベースを用いて、正確な標高データを得るべく、5mメッシュ標高データがカバーしている領域については、当該5mメッシュ標高データを使用し、その他の領域については、従来どおり10mメッシュ標高データを使用することが考えられる。
【0007】
図1(A)に示すのは、上記のように複数の標高データベースを併用した場合の標高データの模式図である。
標高データベースDB1は5mメッシュ標高データを、標高データベースDB2は、10mメッシュ標高データを示しており、上述の理由からDB1はDB2に比べ、より確からしい標高データベースといえる。
図1(A)に示すように、より確からしいDB1の標高データがリンクLの一部に存在すれば、リンクL全体に標高データを持たない場合であっても、その一部においてDB1の標高データを優先的に採用する。すなわち、リンクLの片端ノードN1から地点Xまでは、DB1の標高データを採用し、地点Xから片端ノードN2まではDB2の標高データを採用することとなる。
【0008】
しかしながら、同じ地点であっても、標高データベースの種類の違いによって標高値が異なることがあることから、このように部分的に異なるデータベースを採用すると、採用データベースが切り替わる地点Xに段差dが生じてしまうことがある。この場合、当該段差を含む勾配データは、実際の勾配データに比べ大きな値として計算されることとなる。このような勾配データに基づけば、精度良くエネルギー消費量を演算することは困難である。
【0009】
このような課題を従来技術に基づいて解決しようとすると、図1(B)に示すように、地点Xに対応する地点にノードN3を追加してリンクLをリンクL1及びL2に分割する処理を行い、分割されたリンクごとに勾配データやエネルギー消費データを保有させることが考えられる。この方法によれば、上記と同様にノードN1からノードN3までは、より確からしいDB1の標高データを採用し、ノードN3からノードN2まではDB2の標高データを採用しても、上記段差dの影響を排除することが可能である。しかしながら、この処理方法では、エネルギー消費量の精度は向上するものの、リンクやノードの数が増えることからデータサイズの増加やデータ作成の処理速度低下が懸念される。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題に鑑み、複数の標高データベースの中からいずれの標高データベースを選択すべきか、また、当該標高データベースが地図の全域をカバーしていないときどのように処理すべきか、鋭意検討を重ねてきた。その結果、複数の標高データベース間で予め優先順位を設定し、当該優先順位がより高く、かつ、リンク全体を包含する標高データベースを採用することで、リンク内において一貫性を保持しつつ、リンク上の各点の標高値を特定できることに想到した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出部と、
標高データを記憶した標高データベースを格納する標高データベース格納部と、
前記標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定部と、を備える標高値特定装置において、
前記標高データベース格納部は、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースを格納し、
前記標高値特定部は、前記複数の標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とする標高値特定装置。
【0012】
このように規定される第1の局面の標高値特定装置によれば、地図データ保存部から対象リンクを抽出し、予め優先順位が設定された複数の標高データベースが格納された標高データベース格納部から、優先順位が高く、かつ、抽出された対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、当該標高データベースに基づいて対象リンク上の各点の標高値を特定する。このように選択されたデータベースを用いれば、リンクやノードの数が増えることによるデータサイズの増加やデータ作成の処理速度低下を伴うことなく、リンク内において一貫性を保持しつつ、リンク上の各点の標高値を特定することが可能となる。また、当該標高値に基づけば、リンク内の勾配データやエネルギー消費データを、既存のリンク単位で精度良く演算することができる。
【0013】
上記標高データベース格納部に格納される標高データベースとしては、特に制限されないが、例えば、計測車により取得された標高データに基づき作成されたデータベース、5mメッシュ標高データや10mメッシュ標高データを格納したデータベース等が挙げられる。
ここで、メッシュ標高データとは、国土地理院より提供される標高データであり、ナビソフトと同様にCD−ROM等の記録媒体の形態で入手可能である。当該メッシュ標高データは、全国の地図が、1辺の長さが5m又は10m程度の小さな正方形の領域に細かく区分され、地図データにおいて所定領域に含まれる任意の点の標高値はこの点を取り囲む4つの格子点の標高(メッシュ標高データ)に基づき一般的に線形補間の手法により定めることができる。
【0014】
また、上記標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースには、標高値の特定に際し優先的に使用するための優先順位が予め設定されている。当該優先順位は、適宜設定すればよく、例えば、標高データベースに格納された標高データの確からしさの度合い等に基づき設定することとできる。当該確からしさの度合いは、例えば、抽出された対象リンクを含む所定領域における、標高データベース中に存在する標高データ保有点の数を基準に、当該所定領域内に当該標高データ保有点が多いほど確からしさの度合いが高いと決定することができる。また、当該対象リンクに対応する道路領域上の標高データ保有点の数を基準とし、上記と同様に決定しても良い。また別の方法として、オペレータの手動による優先順位の設定を許容するよう設計されていても良い。
【0015】
さらに、「対象リンクの全体を包含する標高データベース」とは、標高データベースが標高データを保有する領域に、対象リンクの一方のノードから他方のノードに至るリンク上各点の座標が全て含まれるデータベースをいい、リンク上の点を部分的に欠損する標高データベースを含まない。
「標高データベースに基づいて対象リンク上の各点の標高値を特定する」とは、例えば、計測車により取得された標高データに基づき作成されたデータベース等のように、標高データベースがリンク上各点の標高データを保有している場合には、当該標高データを当該リンク上各点の標高値として特定でき、また、メッシュ標高データ等のデータベースである場合には、当該リンク上各点につき、当該点を取り囲む4つの格子点の標高データに基づき線形補間の手法等により標高値を特定することができる。
【0016】
ここで、樹木等が存在する地形において、標高データベースとしての5mメッシュ標高データは、地表標高と大きく異なる樹木最上部の標高データを取得している。このような場合、通常、当該標高データには、表層面属性等の属性が付されている。
そこで、この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の標高値特定装置において、前記標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタ部を備える。
【0017】
このように規定される第2の局面の標高値特定装置によれば、標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースについて、指定された条件に基づきフィルタリングし、当該条件に合致しない標高データベースを除外する。よって、リンク内の標高値の一貫性を保持しつつ、標高値特定により適した標高データベースを用いて標高値を特定することができる。また、上記標高値特定部は、フィルタリングされた標高データベースから、優先順位が高く、かつ、抽出された対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択することとなるため、最適な標高データベースの選択をスムーズに行うことができる。
ここで、当該指定された条件は、目的に応じて適宜指定すれば良く、例えば、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件とすることができる(第3の局面)。また、当該標高データに設定された属性としては、例えば、樹木最上部の標高等である旨の表層面属性等を挙げることができる。
【0018】
また、この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出ステップと、
標高データベースに記憶された標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定ステップと、を備える標高値特定方法において、
前記標高値特定ステップは、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とする標高値特定方法。
このように規定される第4の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0019】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
第4の局面に規定の標高値特定方法において、複数の前記標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタステップを備える。
このように規定される第5の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0020】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第5の局面に規定の標高値特定方法において、前記指定された条件は、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件である。
このように規定される第6の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0021】
更に、この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
標高値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出手段と、
標高データベースに記憶された標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定手段、として機能させ、
前記標高値特定手段は、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第7の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0022】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
複数の前記標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタ手段、として機能させる。
このように規定される第8の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0023】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第8の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記指定された条件は、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件である。
このように規定される第9の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0024】
第7〜第9のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第10の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)従来の勾配計算に採用されている標高データベースを示す模式図、(B)従来技術に基づき想定される解決方法を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態の標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の標高値特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施の形態の標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の標高値特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例の標高値特定装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態の標高値特定装置を構成するコンピュータプログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施の形態の標高値特定装置を説明する。
図2に、標高値特定装置1の概略構成を示す。
図2に示すように、この標高値特定装置1は、地図データ保存部3、標高データベース格納部4、対象リンク抽出部5、対象リンク保存部6、標高値特定部7及び標高値保存部8を備えている。
【0027】
地図データ保存部3には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
標高データベース格納部4は、複数の標高データベース(DB1〜DB3)41、43、45を備え、DB1〜DB3にはリンク上各点の標高値を特定するのに用いられる標高データが夫々記憶されている。また、当該DB1〜DB3には、標高値の特定に際し優先的に使用するための優先順位がDB1、DB2、DB3の順に予め設定されており、当該優先順位に関する情報が当該DB1〜DB3に夫々関連付けられている。
【0028】
対象リンク抽出部5は、地図データ保存部3を参照し、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する。当該抽出の方法は、特に限定されないが、例えば、当該地図データから任意に選択された領域内に存在するリンクを自動的に抽出することとできる。また、別の方法として、オペレータの手動によるリンク抽出を許容するよう設計されていても良い。抽出される対象リンクとして、特に、幹線道路を抽出することとしても良い。ナビゲーションシステムにおいて、案内ルートとして選択されるのは主に幹線道路となるためである。また、対象リンク抽出部5は、対象リンクの両端ノードを併せて抽出することとしても良い。抽出された当該対象リンクは、対象リンク保存部6に保存される。
【0029】
標高値特定部7は、選択部71及び特定部73を備え、標高データベース格納部4及び対象リンク保存部6を参照して、上記対象リンク上各点の標高値を特定する。
選択部71は、標高データベース格納部4及び対象リンク保存部6を参照し、リンク内において標高データベースの一貫性を維持しつつ、標高値の特定に適した標高データベースを選択する。すなわち、選択部71は、標高データベースが標高データを保有する領域と、対象リンクの一方のノードから他方のノードに至るリンク上各点の座標とを比較し、上記データ保有領域に当該座標が全て含まれるデータベースを標高値特定に用いる標高データベースとして選択する。当該比較は、上述の優先順位が高い標高データベースから順に行うこととしても良いし、全ての標高データベースについて比較を行った後、優先順位のより高い標高データベースを選択することとしても良い。
【0030】
特定部73は、対象リンク保存部6を参照し、上記選択された標高データベースを用いて、当該対象リンク上各点の標高値を特定する。当該標高値は、標高データベースのデータ構成に応じて、適宜特定することができる。例えば、計測車により取得された標高データに基づき作成されたデータベースであれば、標高データベースがリンク上各点の標高データを保有しているため、当該標高データを当該リンク上各点の標高値として特定でき、また、メッシュ標高データ等のデータベースであれば、当該リンク上各点につき、上述のように線形補間の手法等により標高値を特定することとできる。特定された当該標高値は、リンク上各点の座標と関連付けて標高値保存部8に保存される。
【0031】
図3を用いて、図2に示す標高値特定装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、地図データ保存部3を参照し、標高値を特定する対象となるリンクを対象リンクとして抽出し、保存する。
ステップ3では、標高データベース格納部4及び対象リンク保存部6を参照し、リンク内において標高データベースの一貫性を維持しつつ、標高値の特定に適した標高データベースを選択する。
【0032】
図4を用いて、ステップ3の詳細動作の一例を説明する。
ステップ31では、標高データベース格納部4に格納された標高データベースDB1〜DB3の中から、設定された優先順位が最も高い標高データベース(DBx=DB1)を指定する。
ステップ33では、DBxが標高データを保有する領域とステップ1で抽出された対象リンク上各点の座標とを比較する。
次に、ステップ35では、上記領域が対象リンク上各点の座標の全てを含むか否か判定し、上記領域が対象リンク上各点の座標の全てを含むとき(ステップ35:Yes)、当該標高データベースDBxを標高値特定に用いる標高データベースとして選択する(ステップ37)。
一方、ステップ35においてNoのとき、DBxに続く優先順位のDBx+1についてステップ31、33、35を実行する(ステップ39、41)。
図3に戻り、ステップ5では、対象リンク保存部6を参照し、ステップ3で選択された標高データベースを用いて、当該対象リンク上各点の標高値を特定し、保存する。
【0033】
図5に、他の実施の形態の標高値特定装置21を示す。図5において、図2と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図5に示すのは、標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースを指定された条件に基づいてフィルタリング可能な標高値特定装置21である。すなわち、当該標高値特定装置21は、図2に示す標高値特定装置1において、フィルタ部23を更に備えている。
フィルタ部23は、対象リンク保存部6を参照し、標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースを指定された条件に基づきフィルタリングする。すなわち、フィルタ部23は、標高データベース内において、上記対象リンクに対応する領域内に存在する標高データが上記条件に合致しない標高データを含むとき、当該標高データベースを除外する。当該指定された条件としては、標高データに設定された属性に基づき指定される条件とすることができ、例えば、標高データに樹木最上部の標高等である旨の表層面属性が設定されていないこと等を挙げることができる。
【0034】
標高値特定部7は、フィルタ部23でフィルタリングされた標高データベースから、優先順位が高く、かつ、抽出された対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、当該標高データベースに基づいて対象リンク上の各点の標高値を特定する。
別の例として、フィルタ部23は、標高値特定部7内の選択部71で選択された標高データベースを上記指定された条件に照らし、当該条件に合致しないとき、当該標高データベースを除外することとしても良い。この場合、標高値特定部7内選択部71は、再度標高データベースの選択を行うこととできる。
【0035】
図6に、この発明の実施例の標高値特定装置31を示す。図6において、図2及び図5と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図6に示すのは、標高データベース格納部4に格納されている標高データベースの優先順位を決定可能な標高値特定装置31である。すなわち、当該標高値特定装置31は、図2に示す標高値特定装置1において、優先順位決定部33を更に備えている。
優先順位決定部33は、対象リンク領域形成部35、基準点カウンタ37及び決定部39を備え、標高データベース格納部4及び対象リンク保存部6を参照して、複数の標高データベース間で対象リンクの標高値特定により適した標高データベースの順に優先順位を決定する。
【0036】
対象リンク領域形成部35は、対象リンク保存部6を参照して、当該対象リンクに対応する道路領域を対象リンク領域として形成する。
基準点カウンタ37は、上記形成された対象リンク領域に存在する、標高データベース中の標高データ保有点(基準点)の数をカウントし、標高データベース格納部4に格納されたDB1〜DB3の基準点の数をそれぞれカウントする第1〜第3カウンタを備える。
決定部39は、基準点カウンタ37を参照し、カウント数の最も多い順に標高データベースDB1〜DB3の優先順位を決定する。
標高値特定部7は、決定された優先順位を参照して、当該優先順位が高く、かつ、抽出された対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、当該標高データベースに基づき、対象リンク上各点の標高値を特定する。
【0037】
図7は標高値特定装置21のハード構成を示すブロック図である。
この装置21のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを標高値特定装置21として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域が、標高値特定部7の特定結果を保存する保存部用に割り付けられる。
ハードディスク装置227の他の領域が地図データ保存部3及び標高データベース格納部4用に割り付けられる。
【0038】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0039】
このコンピュータシステムからなる標高値特定装置21を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0041】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 21 標高値特定装置
3 地図データ保存部
4 標高データベース格納部
5 対象リンク抽出部
7 標高値特定部
33 優先順位決定部
35 対象リンク領域設定部
37 基準点カウンタ
39 決定部
71 選択部
73 特定部
75 フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出部と、
標高データを記憶した標高データベースを格納する標高データベース格納部と、
前記標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定部と、を備える標高値特定装置において、
前記標高データベース格納部は、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースを格納し、
前記標高値特定部は、前記複数の標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とする標高値特定装置。
【請求項2】
前記標高データベース格納部に格納された複数の標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタ部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の標高値特定装置。
【請求項3】
前記指定された条件は、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件である、ことを特徴とする請求項2に記載の標高値特定装置。
【請求項4】
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出ステップと、
標高データベースに記憶された標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定ステップと、を備える標高値特定方法において、
前記標高値特定ステップは、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とする標高値特定方法。
【請求項5】
複数の前記標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタステップを備える、ことを特徴とする請求項4に記載の標高値特定方法。
【請求項6】
前記指定された条件は、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件である、ことを特徴とする請求項5に記載の標高値特定方法。
【請求項7】
標高値を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして抽出する対象リンク抽出手段と、
標高データベースに記憶された標高データに基づき前記対象リンク上の各点の標高値を特定する標高値特定手段、として機能させ、
前記標高値特定手段は、予め優先順位が設定された複数の前記標高データベースの中から、前記優先順位が高く、かつ、前記対象リンクの全体を包含する標高データベースを選択し、該標高データベースに基づいて前記対象リンク上の各点の標高値を特定する、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、更に、
複数の前記標高データベースを、指定された条件に基づいてフィルタリングするフィルタ手段、として機能させることを特徴とする請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記指定された条件は、前記標高データに設定された属性に基づき指定される条件である、ことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220900(P2012−220900A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89673(P2011−89673)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】