説明

模様付容器の製法およびそれによって得られる模様付容器

【課題】凹凸形状が賦形された容器の凹凸面に、その凹凸面からずれることなく美麗に着色模様を付与することのできる模様付容器の製法およびそれによって得られる模様付容器を提供する。
【解決手段】上面に、平行な5本の突条5からなる凹凸形状が賦形されたプラスチック製蓋体1を準備する工程と、上記蓋体1の凹凸形状を構成する第1、第2の傾斜面5a、5bのうち、第1の傾斜面5aを、非接触型インクジェットプリンタを用いて着色することにより、着色模様を付与する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色された凹凸模様を有する模様付容器の製法およびそれによって得られる模様付容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器の表面に文字や図柄等の模様を付与して付加価値を高める方法としては、例えば、プラスチック容器の容器部材を賦形する際に、同時にその表面に凹凸模様を付与することがよく行われている。しかし、この方法では、凹凸の陰影によって模様が与えられているにすぎず、印象が弱い。そこで、平らな容器表面に、スクリーン印刷等によって直接着色模様を印刷したり、着色模様が印刷されたフィルムを貼着したりして、印象的な着色模様を付与することも行われているが、プラスチック表面に直接印刷された着色模様は、摩擦や劣化によって剥げ落ちやすい。また、フィルムを貼着したものも、経時的にフィルムが容器表面から浮き上がったり剥がれたりしやすい。
【0003】
これに対し、最近、容器表面に、着色された凹凸模様を付与する技術として、着色シートを金型内に配置し、凹凸模様賦形時に、上記着色シートと一体的に容器形状を付与する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平5−38729号公報
【特許文献2】特開2001−63729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法において、例えば、凹凸形状を構成する各面が異なる色で着色された模様を得ようとすれば、凹凸を賦形する型と、着色シートにおける着色部の配置とを、高精度で位置合わせする必要があり、多大な労力が必要となる。そして、計算上では一致する配置であっても、実際の成形時には、着色シートが微妙にずれたり熱の影響で変形が生じたりして、凹凸面と着色模様がずれやすく、美麗な仕上がりが得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、凹凸形状が賦形された容器の凹凸面に、その凹凸面からずれることなく美麗に着色模様を付与することのできる模様付容器の製法およびそれによって得られる模様付容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、プラスチック製の容器部材であって、容器表面を構成する面の少なくとも一部に凹凸形状が賦形された容器部材を準備する工程と、上記容器部材の凹凸形状を構成する凹凸面のうち特定の面を、非接触型インクジェットプリンタを用いて着色することにより、着色模様を付与する工程とを備えた模様付容器の製法を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記凹凸形状が、同一の凹凸形状を連続的に並べたものである模様付容器の製法を第2の要旨とし、上記凹凸形状の高低差が0.1〜5.0mmに設定されている模様付容器の製法を第3の要旨とし、上記非接触型インクジェットプリンタに用いられるインクが、光硬化型顔料である模様付容器の製法を第4の要旨とする。
【0008】
そして、本発明は、上記第1〜第4のいずれかの要旨である模様付容器の製法によって得られる模様付容器を第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、本発明は、凹凸面に着色シートを積層一体化させるのではなく、従来からダンボールのマーキング等に用いられている非接触型インクジェットプリンタを用いて、容器表面に賦形された凹凸形状を構成する凹凸面のうち特定の面を着色するようにしたものである。上記非接触型インクジェットプリンタによれば、予め設定された特定の面に、その面の形状に応じた特定形状で着色を行うことができ、その際、位置ずれを生じないため、凹凸面と着色模様にずれのない、美麗な着色模様を得ることができる。
【0010】
そして、本発明のなかでも、特に、上記凹凸形状が、同一の凹凸形状を連続的に並べたものである場合には、その連続する凹凸形状における各特定面を、上記非接触型インクジェットプリンタによって連続的に着色することができ、効率よく、しかも美麗な仕上がりの模様付容器を得ることができ、好適である。
【0011】
また、本発明のなかでも、特に、上記凹凸形状の高低差が0.1〜5.0mmに設定されている場合、凹凸による陰影と着色とが相俟って、とりわけ美麗な模様付容器を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記非接触型インクジェットプリンタに用いられるインクが、光硬化型顔料である場合、鮮明かつ精巧な着色を行うことができ、好適である。
【0013】
そして、これらの製法によって得られる模様付容器は、凹凸面と着色模様にずれがなく、しかもその模様が長期にわたって摩耗したり剥がれたりせず、美麗な外観を維持することができるという利点を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明にもとづいて得られる模様付容器の蓋体の一実施の形態を示す斜視図、図2は、そのA−A′断面図である。この蓋体1は、図3に示すようなコンパクト容器に用いられるもので、ファンデーション等の化粧料を収容するための凹部2aを備えた本体2の後端部に、ヒンジ構造3によって回転自在に連結されるようになっている。なお、4は、蓋体1の内側の面に貼着される鏡である。
【0016】
上記蓋体1(図1に戻る)の上面には、左右方向に延びる突条5が前後に5本、互いに平行に並んだ状態で設けられており、これによって規則的な凹凸形状が付与されている。そして、各突条5は、容器手前側に向かって下り傾斜となる第1の傾斜面5aと、容器奥側に向かって下り傾斜となる第2の傾斜面5bとで構成されており、各突条5の第1の傾斜面5aにのみ、玉虫色に光る着色層6が形成されている。したがって、上記着色層6によって、蓋体1の上面には、規則的に並んだ突条5に沿う、玉虫色の規則的な縞模様が付与されている。なお、上記着色層6の厚みは、図2において誇張して示している。
【0017】
上記蓋体1は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、成形型を用いて、射出成形等の一般的な成形方法にしたがって蓋体1を成形する。この状態を図4に示す。このものは、上面に、第1の傾斜面5aと第2の傾斜面5bからなる突条5が5本、互いに平行に形成されているが、この段階では、着色層6(図2参照)は形成されていない。
【0018】
つぎに、上記蓋体1の上面に、非接触型インクジェットプリンタを用いて印刷を行い、上記蓋体1の上面のうち、各突条5の第1の傾斜面5aにのみ、玉虫色のインクからなる着色層6を形成する。
【0019】
なお、上記非接触型インクジェットプリンタにおいて、インク吐出ノズルを固定するヘッド部は、蓋体1の上面に対峙する位置を順次移動するようになっており、予め入力されたパターン情報にもとづいて、上記第1の傾斜面5aに向かってインクを吐出するようになっている。そして、上記パターン情報としては、この蓋体1を成形するための成形型の設計に用いられたパターン情報がそのまま利用されており、煩雑な手間を要することなく、突条5の第1の傾斜面5a上に、規則的な縞模様を付与することができる。
【0020】
このようにして得られる蓋体1は、上面に突設された平行な突条5の片側の傾斜面5aに沿って、玉虫色の着色層6が形成され、これが、美麗な縞模様となっているため、これを組み込んだコンパクト容器(図3参照)は、非常に興趣に富む外観を呈している。そして、この縞模様は、経時的に摩耗したり剥がれたりしないため、上記興趣に富む外観が、長期にわたって維持されるという利点を有している。
【0021】
なお、上記の例では、蓋体1の上面に付与する凹凸形状として、前後方向に平行に並ぶ5本の突条5からなる形状を付与したが、凹凸形状は、文字や記号、花びら、動物、キャラクター等を模したもの等、どのようなものであっても差し支えない。
【0022】
そして、上記凹凸形状が、単なる凹凸形状ではなく、同一の凹凸形状を繰り返す連続的な凹凸形状からなるものである場合、特に好適である。すなわち、その連続する凹凸形状における各特定面を、上記非接触型インクジェットプリンタによって連続的に着色することができ、効率よく、しかも美麗な仕上がりの着色模様を得ることができるからである。
【0023】
このような、同一の凹凸形状を繰り返す連続的な凹凸形状としては、特に限定するものではないが、上記の例のような縞模様以外に、例えば、図5に示すような格子模様をあげることができる。このものは、直線状の凹条溝7が前後左右に延び、各凹条溝7の底面が、前記の例と同様、非接触型インクジェットプリンタによって黒色で着色されて、規則的な格子模様になっている。
【0024】
この格子模様付きの蓋体1′は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、図6に示すように、格子模様となる凹条溝7を有する蓋体1′を成形する。つぎに、図7に示すように、上記凹状溝7の底面に、前記の例と同様、非接触型インクジェットプリンタを用いて、黒色インクによる線を引くことにより、規則的な格子模様を得ることができる。
【0025】
このものも、前記の例と同様、成形時に用いられる、凹条溝7の位置に関するパターン情報を利用して、非接触型インクジェットプリンタによる着色位置を、予め設定することができるため、着色による黒い線を、凹条溝7の底面からずれることなくぴったり一致した状態で着色することができ、美麗な格子模様を得ることができる。
【0026】
なお、本発明において、非接触型インクジェットプリンタは、特に限定するものではない。そして、着色に用いるインクも、非接触型インクジェットプリンタにおいてインクとして用いられるものであれば、特に限定するものではないが、プラスチック表面に対し強固に接着して鮮明かつ精巧な着色模様を得る上で、光硬化型顔料を用いることが好適である。
【0027】
また、上記蓋体1の上面に形成する凹凸形状の高低差は、0.1〜5.0mmの範囲内に設定することが好適である。すなわち、高低差が0.1mm以上の場合、凹凸による陰影と着色とが相俟って、とりわけ美麗な着色模様が得られる。そして、凹凸形状の高低差が5.0mmを超えると、着色面が非接触型インクジェットプリンタのインク吐出口から遠ざかりすぎてインクが拡散し、鮮明な着色が損なわれるおそれがある。
【0028】
さらに、本発明において、凹凸形状と着色層による着色模様を付与する個所は、蓋体1の上面に限る必要はなく、容器として用いる部材の外側面であれば、どの部分に形成しても差し支えはない。
【0029】
そして、本発明は、コンパクト容器に限らず、どのような容器に適用することもできるのであり、容器の種類や形状は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例における蓋体の斜視図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】上記蓋体を用いて形成されるコンパクト容器の説明図である。
【図4】上記蓋体の製法の説明図である。
【図5】本発明の他の実施例における蓋体の斜視図である。
【図6】上記蓋体の製法の説明図である。
【図7】上記蓋体の製法の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 蓋体
5 突条
5a 第1の傾斜面
5b 第2の傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の容器部材であって、容器表面を構成する面の少なくとも一部に凹凸形状が賦形された容器部材を準備する工程と、上記容器部材の凹凸形状を構成する凹凸面のうち特定の面を、非接触型インクジェットプリンタを用いて着色することにより、着色模様を付与する工程とを備えたことを特徴とする模様付容器の製法。
【請求項2】
上記凹凸形状が、同一の凹凸形状を連続的に並べたものである請求項1記載の模様付容器の製法。
【請求項3】
上記凹凸形状の高低差が0.1〜5.0mmに設定されている請求項1または2記載の模様付容器の製法。
【請求項4】
上記非接触型インクジェットプリンタに用いられるインクが、光硬化型顔料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の模様付容器の製法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の模様付容器の製法によって得られることを特徴とする模様付容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−335422(P2006−335422A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162233(P2005−162233)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】