模様付金属薄片およびその製造方法
【課題】 固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法を提供することを目的としている。また、模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる該模様付金属薄片の製法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明に係る模様付金属薄片は、表面に模様を有し、断面が略台形である。この模様付金属薄片は、模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングすることで得られる。
【解決手段】 本発明に係る模様付金属薄片は、表面に模様を有し、断面が略台形である。この模様付金属薄片は、模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングすることで得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品ロゴや装飾部品等に用いられる模様付金属薄片およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、ホログラムパターン、布目、紙目、石目などの微細模様が表面に形成されてなる模様付金属薄片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品ロゴや装飾部品等の微細で複雑な形状を有する金属製品の製造にあっては、たとえば、特開平7−331479号公報、特開平8−27597号公報等に記載の電着画像法が採用されている。近年、このような商品ロゴ等においては、さらに装飾性の向上が求められており、たとえば表面に微細な模様を形成することが求められる。しかし、これら公報に記載の方法では、電着画像表面に模様を形成することは開示されていない。
【0003】
特許文献1には、模様付電着画像およびその製法が開示されている。その製法は、模様を有する物品の表面模様を、導電性薄膜に転写し、該導電性薄膜の模様面に、電着画像を形成する工程からなる。
【特許文献1】特開2001−342595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1によれば、表面に模様を有する電着画像が提供され、市場においても高い評価が与えられているが、なお、下記の点で改善が求められていた。
(1)電着画像法により文字パターンを形成しているため、模様面の反対面(以下「固着面」と呼ぶ)のエッジ部(端部)が丸みを帯びることがある。特にこの傾向は、文字パターンが小さな場合、あるいは幅の狭い文字パターンにあっては顕著である。電着画像は、固着面に形成された固着用接着剤層により被着体に貼着されるが、固着面が丸みを帯びていると、充分な量の接着剤を塗工できず、必要とする接着力が得られない場合がある。このため、被着体に固定後に、電着画像が脱落することがある。
(2)電着画像を導電性薄膜から剥離する際に、導電性薄膜を湾曲して行う。このため、導電性薄膜が歪むため再使用できない。
(3)電着画像は、それぞれが独立した文字パターン毎に形成される。形成された電着画像は、支持フィルム上に転写され、模様面が露出する。文字パターンがそれぞれ独立しており、また支持フィルムは絶縁性であるため、模様面に仕上げ処理としての電解メッキを施すことはできない。無電解メッキの場合には、浴温が100℃程度になるため、支持フィルムが軟化し、フィルムの伸縮により文字パターンが脱落することがある。
(4)上記(3)のため、特許文献1においては、電着画像の形成前に、予め導電性薄膜の模様面に装飾用薄膜層を形成しておき、この上に電着を行うことが教示されている。これにより、表面に装飾用薄膜層を有する模様付電着画像が得られる。しかし、この工程は煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法を提供することを目的としている。また、本発明は模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる模様付金属薄片の製法を提供することを目的としている。
【0006】
このような課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]表面に模様を有し、断面が略台形の模様付金属薄片。
[2]模様表面に耐腐食性メッキが施されてなる[1]に記載の模様付金属薄片。
[3]模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
[4]模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を導電性鋳型から剥離し、該模様付金属薄膜の模様面に耐腐食性メッキを施し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法が提供される。また本発明の製法によれば、模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る模様付金属薄片およびその製造方法について、図面を参照しながら、さらに具体的に説明する。
図1、2に示すように、本発明に係る模様付金属薄片1は、表面が凹凸状の模様面になっており、その断面が略台形の形状をしている。
【0009】
模様は特に限定はされず、布、紙、石目、木目、輝石、葉、花弁、貝殻、皮革、各種人工物(人造皮革、彫刻、彫金)の微細模様、ホログラム、グリーティング、ヘアライン等の極めて微細なパターンであってもよい。
【0010】
模様付金属薄片1は、電鋳可能な種々の金属から形成されうるが、コスト、入手の容易性等の観点から、ニッケル、銅、鉄などの金属が好ましく用いられる。
このような模様付金属薄片1は、後述するような本発明に係る模様付金属薄片の製法により得ることができ、その断面は、略台形の形状をしている。ここで略台形とは、模様面側の平均平面Aと固着面(固着用接着剤層3が形成される面)とが平行であることを意味する。平均平面Aは、模様面の凹凸の算術平均により定義される。
【0011】
模様付金属薄片1において、側面と固着面のなす底角θは、図1に示した模様面である上底の方が固着面である下底よりも長い態様では、100°を超えて150°以下であることが好ましく、特に100°を超えて120°以下であることが好ましい。2つの底角は同一でも異なっていても良い。
【0012】
また、図2に示した上底の方が下底よりも短い態様では、底角θは80°未満50°以上であることが好ましく、特に80°未満60°以上であることが好ましい。2つの底角は同一でも異なっていても良い。
【0013】
本発明の模様付金属薄片1の使用態様には、図1および図2に示したような使用態様がある。図1の態様は、模様面である上底が長く、固着面である下底が短い。したがって、これを模様面側より目視した場合には、側面が見えず、シャープな印象が与えられる。また、図2の態様は、上底が短く、下底が長い。したがって、これを模様面側より目視した場合には、側面が見え、立体感のある印象が与えられる。本発明の模様付金属薄片は、目的とする視覚効果に応じて、適宜に使用態様を選択できる。
【0014】
模様付金属薄片1は、後述する本発明の製法により得られるため、前記特許文献1等に記載の電着画像法とは異なり、固着面の端部が丸みを帯びることはない。したがって、固着面に充分な量の接着剤を塗工でき、被着体3に貼付後、薄片1の脱落が起き難い。
【0015】
模様付金属薄片1の厚みは、その用途により様々であるが、一般的には20〜300μ
m程度、好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは100〜150μmである。また、模様面の凹凸は、形成される模様に応じて様々である。
【0016】
このような模様付金属薄片1は、図1、2に示すように固着用接着剤層2を介して被着体3上に固着することができる。
固着用接着剤層2は、たとえばゴム系、アクリル系、エポキシ系等の粘着剤または接着剤であって、800〜3000g/25mm幅程度の剥離強度を有する比較的強力な粘着剤または接着剤から形成される。また、ホットメルト接着剤、紫外線硬化型接着剤であってもよい。
【0017】
また、被着体3は、模様付金属薄片1の用途により様々であり、たとえば、時計用文字盤、各種電化製品、各種装飾品等である。また、被着体3に、模様付金属薄片1と略同等サイズの凹部を設け、この凹部内に模様付金属薄片1を埋め込むようにしてもよい。
【0018】
本発明の模様付金属薄片1においては図3に示すように、その装飾性や耐腐食性をさらに高めるため、模様面に被覆層4が形成されていてもよい。被覆層4の厚さは、その素材により様々であるが、一般的には、0.1〜3μm程度が好適である。この被覆層4は、インク、塗料、樹脂などの絶縁性材料から形成されていてもよい。また、金、銀、白金、錫コバルト合金などからなる電解メッキ膜であってもよく、無電解メッキ膜あるいはイオンプレーティング膜、スパッタリング膜であってもよい。特に耐腐食性の付与を目的とする場合には、クロム、金等、とりわけクロムの耐腐食性の電解メッキ膜が好ましい。
【0019】
次に本発明に係る模様付金属薄片の製造方法について説明する。
本発明に係る模様付金属薄片の製造方法は、模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含むことを特徴としている。
【0020】
模様を有する導電性鋳型は、種々の方法により得られる。たとえば、模様を有する物品の表面に、導電性塗料または導電性重合体を塗布・硬化することで、模様が転写された導電性樹脂膜として導電性鋳型を得ることができるし、また模様を有する物品の表面に、無電解メッキを施すことで、模様が転写された無電解メッキ膜として導電性鋳型を得ることもできる。
【0021】
しかし、本発明においては、強度、経済性、操作性および品質の均一性などの点から、電気成形法(電鋳法ともいう)により、模様を有する物品の表面模様を金型化して得られる導電性鋳型を用いることが特に好ましい。
【0022】
模様を有する物品の表面模様を、電気成形法により金型化するためには、模様を有する物品11に電鋳を施す。該物品11が導電性を有しない場合には、図4に示すように、物品11表面に金属膜12を形成するなどして、該物品11に導電性を付与する。
【0023】
ここで、該模様を有する物品11としては、布、紙、石目、木目、輝石、葉、花弁、貝殻、皮革、各種の微細パターンを有する人工物(人造皮革、彫刻、彫金)などが挙げられ、好ましくは布、紙、石目、木目、輝石、葉、彫刻、彫金が用いられる。さらに、ホログラム、グリーティング、ヘアライン等の極めて微細なパターンであってもよい。
【0024】
図4に示すように、物品11の表面には、模様が形成されている(図4における表面の凹凸)。図4においては、物品11の裏面については記載を省略した。
まず、物品11の表面に導電性を付与するために、物品11の表面を清浄にした後、物品11の表面に金属膜12を形成する。金属膜12の形成は、たとえば真空蒸着法、イオ
ンプレーティング法、スパッタリング法、無電解メッキ法、銀鏡反応などにより行われる。金属膜12は、銀、金等の金属またはこれらの合金から形成され、その厚さは特に限定はされないが、模様面の凹凸を埋没させない程度であり、1〜30μm程度、好ましくは
1〜10μm程度が適当である。
【0025】
なお、前述したように、物品11が導電性を有する場合には、金属膜12を形成する必要はない。
次いで、必要に応じ、金属膜12の表面に剥離処理を施す。物品11が導電性を有する場合には、物品11の表面に直接剥離処理を施す。剥離処理は、アセレン酸処理、重クロム酸カリウム処理、陽極酸化などにより行える。剥離処理を施しておくと、導電性鋳型13(電気成形型)の剥離が容易になる。
【0026】
次に、図5に示すように、前記物品11の表面または金属膜12の表面に、電気成形法(電鋳法)により金属を析出させて模様が転写された導電性鋳型13を形成する。
導電性鋳型13の材質としては、ニッケル、銅、鉄等の金属、またはこれらの合金が好ましく用いられる。
【0027】
導電性鋳型13の厚さは、100〜500μmの範囲にある。導電性鋳型13の厚さがこの範
囲にあると、適度なコシを有するため、操作性が良好である。
転写される模様の深さが10μm未満の場合は、導電性鋳型13の厚さは、100〜200μm程度が好ましい。また、模様の深さが10〜50μmの場合は、導電性鋳型13の厚さは、200〜300μm程度が好ましい。さらに模様の深さが50〜100μmの場合は、導電性鋳型13の厚さは、300〜500μm程度が好ましい。
【0028】
電気成形時の条件は、特に制限されることなく、従来公知の電気成形(メッキ)条件から適宜に選択される。なんら限定されるものではないが、以下にニッケル金属を用い、厚さ200μmの導電性鋳型13を得る場合の電気成形条件を簡単に説明する。
【0029】
まず前処理として、模様を有する物品11または金属膜12の表面に、電解脱脂、水洗、酸中和、水洗、剥離処理(重クロム酸カリウム)、水洗の各処理を行う。
次いで、ニッケルメッキ浴(スルファミン酸ニッケル450 g/リットル、ホウ酸40 g/リ
ットル)を用いて、液温50℃にて、265 AH (1A/dm2)で電鋳を行うことで、厚さ200μm
の導電性鋳型13が得られる。
【0030】
次いで、前記物品11の表面または金属膜12の表面から、導電性鋳型13を剥離することで、金型化した模様面を有する導電性鋳型13(電気成形型)が得られる。
なお、模様を有する物品11自体が導電性を有する場合には、物品11を導電性鋳型13として用いることもできる。
【0031】
本発明においては、導電性鋳型13の模様面に電鋳を施すことで、模様付金属薄膜を得る。模様付金属薄膜の製造は、導電性鋳型13の製造と同様に通常の電鋳法に準じて行うことができるが、品質の向上および操作性点等の観点から、以下のような工程を付加することが特に望ましい。
【0032】
導電性鋳型13は、前述したようにその厚みが、100〜500μm程度と薄いため、取扱い
が困難になる場合がある。したがって、本発明では、図6に示すように、導電性鋳型13の平滑面(模様面の反対側)を導電性基材14上に固定して模様付金属薄膜の製造を行うことが好ましい。
【0033】
ここで、導電性基材14としては、充分な強度を有し、導電性を有し、かつ導電性鋳型
13を固定できるものであれば、種々の板状部材を用いることができる。したがって、たとえば導電性基材14としては、導電性マグネットラバー、磁性金属板等の磁性導電板が好ましく用いられる。また、通常の金属板、導電性ポリマーシートなどに、導電性の再剥離型粘着剤を介して、導電性鋳型13を固定してもよい。導電性鋳型13の平滑面(模様面の反対側)を導電性基材14上に固定しておくと、導電性鋳型13の取扱いが容易になるとともに、電鋳時の振動等も防止できるため、品質の高い模様付金属薄膜15が得られる。
【0034】
模様付金属薄膜15は、導電性鋳型13の模様面に、電鋳により金属を析出させることで得られる。これにより、図7に示すように、導電性鋳型13の模様面の凹凸が、析出する金属薄膜にも同様に形成されるため、模様付金属薄膜15が得られる。
【0035】
ここに、模様付金属薄膜15を形成する金属として、例えばニッケルを使用した場合には、ワット液として硫酸ニッケル液を使用することにより、導電性鋳型13の模様面上にニッケルを電着させる。この時の電着条件としては、例えば150mm×150mmの電鋳有効面積に対して、3A/dm2 の電流を流すことにより、3時間で100μm±10μmの金属薄膜を得ることができる。
【0036】
なお、前記ニッケルの他に、金、銀、銅、鉄または合金等の任意の金属を析出させて、模様付金属薄膜15を形成しても良いことは勿論であり、また電鋳条件を変えることにより、例えば20〜300μm位の範囲で、任意の肉厚の模様付金属薄膜15を得ることができる。
【0037】
本発明においては、電鋳に先立ち、導電性鋳型13の模様面に、離型処理を施すことが好ましい。離型処理は、前記と同様の方法で行うことができる。離型処理を施しておくと、得られる模様付金属薄膜15を、導電性鋳型13から容易に剥離できる。
【0038】
模様付金属薄膜15を、導電性鋳型13から剥離した後、模様付金属薄膜15を所定の文字、図形パターンにエッチングすることで、本発明の模様付金属薄片1が得られる。
また、エッチングに先立ち、模様付金属薄膜15の模様面に、前記した被覆層4、好ましくは耐腐食性メッキ膜を形成しておいてもよい。
【0039】
模様付金属薄膜15のエッチングは、金属箔をエッチングする公知の手法に準じて行うことができる。具体的には、模様付金属薄膜15に液レジスト、レジストインクを塗布乾燥あるいはドライレジストフィルムを貼着することで、レジスト膜を形成し、これを所望の文字、図形パターン状に露光、現像を行い、その後エッチングを行うことで、所望形状の模様付金属薄片1が得られる。
【0040】
レジスト膜の形成は、模様付金属薄膜15の模様面に行ってもよく、また模様面の反対面(固着面)に行ってもよい。模様付金属薄膜15の固着面にレジスト膜を形成し、固着面側からエッチングを行うと、図1に示すような断面形状の模様付金属薄片が得られる。模様付金属薄膜15の模様面にレジスト膜を形成し、模様面側からエッチングを行うと、図2に示すような断面形状の模様付金属薄片が得られる。
【0041】
また、所望形状の模様付金属薄片を形成すると同時に、位置決め、固着用接着剤層2形成時のマスクなどに用いられる工程管理用金属薄片を形成してもよい。
以下、模様付金属薄膜15の固着面にレジスト膜を形成し、固着面側からエッチングする場合について、さらに具体的に説明する。
【0042】
まず、必要とするネガまたはポジのフォトマスクフィルムを写真や印刷等によって作成
する。このフィルムには、目的とする模様付金属薄片に対応する文字、図形パターンの画像図と、必要に応じて形成される工程管理用金属薄片の形状に対応する画像図が黒インク等で描かれている。
【0043】
一方、模様付金属薄膜15の固着面に、液レジスト、ドライフィルムレジストまたは印刷用レジストインク等のフォトレジストを塗布し、焼き付けを行う。そして、フォトレジスト上に前記フォトマスクフィルムを乗せ、この状態で露光機等による露光を行う。この露光後に現像を行って、露光されなかったフォトレジストを除去し、これによって、図8に示すように、模様付金属薄膜15の固着面に前記画像図の形状に沿った形状のレジスト膜16および露出部17を形成する。
【0044】
固着面側からエッチングを行う場合には、上記フォトマスクは、目的とする文字、図形の反転パターンである。
なお、この際、模様面側にエッチング液が浸入し不必要なエッチングが行われることを防止し、またエッチング後のパターンの位置ずれおよび脱落を防止するために、模様付金属薄膜15の模様面側に粘着シート18を貼着しておくことが好ましい。粘着シートとしては、後の剥離が容易であることから、紫外線硬化型粘着シートが特に好ましく用いられる。紫外線硬化型粘着シートは、紫外線の照射前に充分な接着力で被着体に接着し、紫外線照射によって重合硬化し、接着力を失う性質を有する。このような紫外線硬化型粘着シートは種々市販されている。
【0045】
次いで、レジスト膜が形成された固着面側からエッチング液を噴霧し、フルエッチングを行う。これにより前記露出部17にエッチング液が浸入し、この部分の金属薄膜15が除去され、所望の文字、図形パターンが形成され、図9に示すように、模様付金属薄片1が得られる。
【0046】
エッチング液、エッチング条件は、金属薄膜15の材質、厚さを考慮して、公知の範囲から適宜に選択される。エッチングは固着面側から進行するため、固着面側が大きくエッチングされ、模様面側がわずかにエッチングされるのみとなる。このため、金属薄片1の側面はテーパ状にエッチングされることになり、固着面側からエッチングを行った場合には、図1に示した断面形状の模様付金属薄片が得られる。また、模様面側からエッチングを行った場合には、図2に示した断面形状の模様付金属薄片が得られる。しかし、エッチング時間が長すぎると、過剰にサイドエッチングされることがある。したがって、所望の断面形状を達成するために、エッチング時間を適宜に調整することが好ましい。
【0047】
その後、剥離液に浸漬させて固着面上に残着しているフォトレジストを除去すると、図10に示すように、粘着シート18上に、模様付金属薄片1と、必要に応じて形成される工程管理用金属薄片21、22が残留する。図11に、図10の平面図の一例を示す。この例では、目標とする模様付金属薄片1は、文字パターン「XYZ」であり、工程管理用位置決めパターン21および工程管理用マスクパターン22が形成されている。文字パターンであるXYZは、固着面側が示されているため、反転パターンとなる。
【0048】
次いで、固着面側に固着用接着剤層2を形成する。固着用接着剤の具体例は、前述のとおりである。固着用接着剤層2は、被着体に不要の接着剤が付着することを防止するため、模様付金属薄片1の固着面にのみ形成することが好ましい。したがって、固着用接着剤層2を形成する際に、文字パターン形状の開口部を有する別途準備したマスクを文字パターン上に位置合わせして乗せ、固着用接着剤層を形成し、その後、該マスクを除去することが推奨される。しかし、図11に示したように、工程管理用マスクパターン22を形成した場合には、別途マスクを準備する必要はない。この場合、模様付金属薄片1および工程管理用マスクパターン22の露出面全面に固着用接着剤層を形成し、その後、工程管理
用マスクパターン22を除去すれば、模様付金属薄片1の固着面にのみ固着用接着剤層2が形成されることになる。
【0049】
次いで、固着用接着剤層2を介して模様付金属薄片1を所望の被着体3に固着する。固着用接着剤として、前記粘着シート18の接着力よりも大きな接着力を有する接着剤を選択すると、粘着シート18上に整列仮着された模様付金属薄片1を、固着用接着剤層2を介して被着体3に固着し、その後粘着シート18を除去すれば、模様付金属薄片1は被着体側に転写固着される。また、粘着シート18が紫外線硬化型粘着シートである場合には、紫外線照射により粘着シート18の接着力が激減するため、模様付金属薄片1の被着体への転写が確実に行えるようになる。
【0050】
このような工程を経て、図1に示したような、模様付金属薄片1の被着体3への固着が行われる。
なお、模様面側からエッチングを行った場合には、粘着シート18上に整列仮着された模様付金属薄片1および工程管理用パターンを、いったん他の粘着シートに転写し、固着面側を露出させ、固着用接着剤層2を形成する。その他の工程は前記と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法が提供される。また本発明の製法によれば、模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図2】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図3】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図4】導電性鋳型の製造法の一工程を示す。
【図5】導電性鋳型の製造法の一工程を示す。
【図6】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図7】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図8】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図9】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図10】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図11】図10の平面図を示す。
【符号の説明】
【0053】
1…模様付金属薄片
2…固着用接着剤層
3…被着体
4…耐腐食性メッキ膜
11…模様を有する物品
12…金属膜
13…導電性鋳型
14…導電性基材
15…模様付金属薄膜
16…レジスト膜
17…露出部
18…粘着シート
21…工程管理用位置決めパターン
22…工程管理用マスクパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品ロゴや装飾部品等に用いられる模様付金属薄片およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、ホログラムパターン、布目、紙目、石目などの微細模様が表面に形成されてなる模様付金属薄片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品ロゴや装飾部品等の微細で複雑な形状を有する金属製品の製造にあっては、たとえば、特開平7−331479号公報、特開平8−27597号公報等に記載の電着画像法が採用されている。近年、このような商品ロゴ等においては、さらに装飾性の向上が求められており、たとえば表面に微細な模様を形成することが求められる。しかし、これら公報に記載の方法では、電着画像表面に模様を形成することは開示されていない。
【0003】
特許文献1には、模様付電着画像およびその製法が開示されている。その製法は、模様を有する物品の表面模様を、導電性薄膜に転写し、該導電性薄膜の模様面に、電着画像を形成する工程からなる。
【特許文献1】特開2001−342595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1によれば、表面に模様を有する電着画像が提供され、市場においても高い評価が与えられているが、なお、下記の点で改善が求められていた。
(1)電着画像法により文字パターンを形成しているため、模様面の反対面(以下「固着面」と呼ぶ)のエッジ部(端部)が丸みを帯びることがある。特にこの傾向は、文字パターンが小さな場合、あるいは幅の狭い文字パターンにあっては顕著である。電着画像は、固着面に形成された固着用接着剤層により被着体に貼着されるが、固着面が丸みを帯びていると、充分な量の接着剤を塗工できず、必要とする接着力が得られない場合がある。このため、被着体に固定後に、電着画像が脱落することがある。
(2)電着画像を導電性薄膜から剥離する際に、導電性薄膜を湾曲して行う。このため、導電性薄膜が歪むため再使用できない。
(3)電着画像は、それぞれが独立した文字パターン毎に形成される。形成された電着画像は、支持フィルム上に転写され、模様面が露出する。文字パターンがそれぞれ独立しており、また支持フィルムは絶縁性であるため、模様面に仕上げ処理としての電解メッキを施すことはできない。無電解メッキの場合には、浴温が100℃程度になるため、支持フィルムが軟化し、フィルムの伸縮により文字パターンが脱落することがある。
(4)上記(3)のため、特許文献1においては、電着画像の形成前に、予め導電性薄膜の模様面に装飾用薄膜層を形成しておき、この上に電着を行うことが教示されている。これにより、表面に装飾用薄膜層を有する模様付電着画像が得られる。しかし、この工程は煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法を提供することを目的としている。また、本発明は模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる模様付金属薄片の製法を提供することを目的としている。
【0006】
このような課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]表面に模様を有し、断面が略台形の模様付金属薄片。
[2]模様表面に耐腐食性メッキが施されてなる[1]に記載の模様付金属薄片。
[3]模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
[4]模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を導電性鋳型から剥離し、該模様付金属薄膜の模様面に耐腐食性メッキを施し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法が提供される。また本発明の製法によれば、模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る模様付金属薄片およびその製造方法について、図面を参照しながら、さらに具体的に説明する。
図1、2に示すように、本発明に係る模様付金属薄片1は、表面が凹凸状の模様面になっており、その断面が略台形の形状をしている。
【0009】
模様は特に限定はされず、布、紙、石目、木目、輝石、葉、花弁、貝殻、皮革、各種人工物(人造皮革、彫刻、彫金)の微細模様、ホログラム、グリーティング、ヘアライン等の極めて微細なパターンであってもよい。
【0010】
模様付金属薄片1は、電鋳可能な種々の金属から形成されうるが、コスト、入手の容易性等の観点から、ニッケル、銅、鉄などの金属が好ましく用いられる。
このような模様付金属薄片1は、後述するような本発明に係る模様付金属薄片の製法により得ることができ、その断面は、略台形の形状をしている。ここで略台形とは、模様面側の平均平面Aと固着面(固着用接着剤層3が形成される面)とが平行であることを意味する。平均平面Aは、模様面の凹凸の算術平均により定義される。
【0011】
模様付金属薄片1において、側面と固着面のなす底角θは、図1に示した模様面である上底の方が固着面である下底よりも長い態様では、100°を超えて150°以下であることが好ましく、特に100°を超えて120°以下であることが好ましい。2つの底角は同一でも異なっていても良い。
【0012】
また、図2に示した上底の方が下底よりも短い態様では、底角θは80°未満50°以上であることが好ましく、特に80°未満60°以上であることが好ましい。2つの底角は同一でも異なっていても良い。
【0013】
本発明の模様付金属薄片1の使用態様には、図1および図2に示したような使用態様がある。図1の態様は、模様面である上底が長く、固着面である下底が短い。したがって、これを模様面側より目視した場合には、側面が見えず、シャープな印象が与えられる。また、図2の態様は、上底が短く、下底が長い。したがって、これを模様面側より目視した場合には、側面が見え、立体感のある印象が与えられる。本発明の模様付金属薄片は、目的とする視覚効果に応じて、適宜に使用態様を選択できる。
【0014】
模様付金属薄片1は、後述する本発明の製法により得られるため、前記特許文献1等に記載の電着画像法とは異なり、固着面の端部が丸みを帯びることはない。したがって、固着面に充分な量の接着剤を塗工でき、被着体3に貼付後、薄片1の脱落が起き難い。
【0015】
模様付金属薄片1の厚みは、その用途により様々であるが、一般的には20〜300μ
m程度、好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは100〜150μmである。また、模様面の凹凸は、形成される模様に応じて様々である。
【0016】
このような模様付金属薄片1は、図1、2に示すように固着用接着剤層2を介して被着体3上に固着することができる。
固着用接着剤層2は、たとえばゴム系、アクリル系、エポキシ系等の粘着剤または接着剤であって、800〜3000g/25mm幅程度の剥離強度を有する比較的強力な粘着剤または接着剤から形成される。また、ホットメルト接着剤、紫外線硬化型接着剤であってもよい。
【0017】
また、被着体3は、模様付金属薄片1の用途により様々であり、たとえば、時計用文字盤、各種電化製品、各種装飾品等である。また、被着体3に、模様付金属薄片1と略同等サイズの凹部を設け、この凹部内に模様付金属薄片1を埋め込むようにしてもよい。
【0018】
本発明の模様付金属薄片1においては図3に示すように、その装飾性や耐腐食性をさらに高めるため、模様面に被覆層4が形成されていてもよい。被覆層4の厚さは、その素材により様々であるが、一般的には、0.1〜3μm程度が好適である。この被覆層4は、インク、塗料、樹脂などの絶縁性材料から形成されていてもよい。また、金、銀、白金、錫コバルト合金などからなる電解メッキ膜であってもよく、無電解メッキ膜あるいはイオンプレーティング膜、スパッタリング膜であってもよい。特に耐腐食性の付与を目的とする場合には、クロム、金等、とりわけクロムの耐腐食性の電解メッキ膜が好ましい。
【0019】
次に本発明に係る模様付金属薄片の製造方法について説明する。
本発明に係る模様付金属薄片の製造方法は、模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含むことを特徴としている。
【0020】
模様を有する導電性鋳型は、種々の方法により得られる。たとえば、模様を有する物品の表面に、導電性塗料または導電性重合体を塗布・硬化することで、模様が転写された導電性樹脂膜として導電性鋳型を得ることができるし、また模様を有する物品の表面に、無電解メッキを施すことで、模様が転写された無電解メッキ膜として導電性鋳型を得ることもできる。
【0021】
しかし、本発明においては、強度、経済性、操作性および品質の均一性などの点から、電気成形法(電鋳法ともいう)により、模様を有する物品の表面模様を金型化して得られる導電性鋳型を用いることが特に好ましい。
【0022】
模様を有する物品の表面模様を、電気成形法により金型化するためには、模様を有する物品11に電鋳を施す。該物品11が導電性を有しない場合には、図4に示すように、物品11表面に金属膜12を形成するなどして、該物品11に導電性を付与する。
【0023】
ここで、該模様を有する物品11としては、布、紙、石目、木目、輝石、葉、花弁、貝殻、皮革、各種の微細パターンを有する人工物(人造皮革、彫刻、彫金)などが挙げられ、好ましくは布、紙、石目、木目、輝石、葉、彫刻、彫金が用いられる。さらに、ホログラム、グリーティング、ヘアライン等の極めて微細なパターンであってもよい。
【0024】
図4に示すように、物品11の表面には、模様が形成されている(図4における表面の凹凸)。図4においては、物品11の裏面については記載を省略した。
まず、物品11の表面に導電性を付与するために、物品11の表面を清浄にした後、物品11の表面に金属膜12を形成する。金属膜12の形成は、たとえば真空蒸着法、イオ
ンプレーティング法、スパッタリング法、無電解メッキ法、銀鏡反応などにより行われる。金属膜12は、銀、金等の金属またはこれらの合金から形成され、その厚さは特に限定はされないが、模様面の凹凸を埋没させない程度であり、1〜30μm程度、好ましくは
1〜10μm程度が適当である。
【0025】
なお、前述したように、物品11が導電性を有する場合には、金属膜12を形成する必要はない。
次いで、必要に応じ、金属膜12の表面に剥離処理を施す。物品11が導電性を有する場合には、物品11の表面に直接剥離処理を施す。剥離処理は、アセレン酸処理、重クロム酸カリウム処理、陽極酸化などにより行える。剥離処理を施しておくと、導電性鋳型13(電気成形型)の剥離が容易になる。
【0026】
次に、図5に示すように、前記物品11の表面または金属膜12の表面に、電気成形法(電鋳法)により金属を析出させて模様が転写された導電性鋳型13を形成する。
導電性鋳型13の材質としては、ニッケル、銅、鉄等の金属、またはこれらの合金が好ましく用いられる。
【0027】
導電性鋳型13の厚さは、100〜500μmの範囲にある。導電性鋳型13の厚さがこの範
囲にあると、適度なコシを有するため、操作性が良好である。
転写される模様の深さが10μm未満の場合は、導電性鋳型13の厚さは、100〜200μm程度が好ましい。また、模様の深さが10〜50μmの場合は、導電性鋳型13の厚さは、200〜300μm程度が好ましい。さらに模様の深さが50〜100μmの場合は、導電性鋳型13の厚さは、300〜500μm程度が好ましい。
【0028】
電気成形時の条件は、特に制限されることなく、従来公知の電気成形(メッキ)条件から適宜に選択される。なんら限定されるものではないが、以下にニッケル金属を用い、厚さ200μmの導電性鋳型13を得る場合の電気成形条件を簡単に説明する。
【0029】
まず前処理として、模様を有する物品11または金属膜12の表面に、電解脱脂、水洗、酸中和、水洗、剥離処理(重クロム酸カリウム)、水洗の各処理を行う。
次いで、ニッケルメッキ浴(スルファミン酸ニッケル450 g/リットル、ホウ酸40 g/リ
ットル)を用いて、液温50℃にて、265 AH (1A/dm2)で電鋳を行うことで、厚さ200μm
の導電性鋳型13が得られる。
【0030】
次いで、前記物品11の表面または金属膜12の表面から、導電性鋳型13を剥離することで、金型化した模様面を有する導電性鋳型13(電気成形型)が得られる。
なお、模様を有する物品11自体が導電性を有する場合には、物品11を導電性鋳型13として用いることもできる。
【0031】
本発明においては、導電性鋳型13の模様面に電鋳を施すことで、模様付金属薄膜を得る。模様付金属薄膜の製造は、導電性鋳型13の製造と同様に通常の電鋳法に準じて行うことができるが、品質の向上および操作性点等の観点から、以下のような工程を付加することが特に望ましい。
【0032】
導電性鋳型13は、前述したようにその厚みが、100〜500μm程度と薄いため、取扱い
が困難になる場合がある。したがって、本発明では、図6に示すように、導電性鋳型13の平滑面(模様面の反対側)を導電性基材14上に固定して模様付金属薄膜の製造を行うことが好ましい。
【0033】
ここで、導電性基材14としては、充分な強度を有し、導電性を有し、かつ導電性鋳型
13を固定できるものであれば、種々の板状部材を用いることができる。したがって、たとえば導電性基材14としては、導電性マグネットラバー、磁性金属板等の磁性導電板が好ましく用いられる。また、通常の金属板、導電性ポリマーシートなどに、導電性の再剥離型粘着剤を介して、導電性鋳型13を固定してもよい。導電性鋳型13の平滑面(模様面の反対側)を導電性基材14上に固定しておくと、導電性鋳型13の取扱いが容易になるとともに、電鋳時の振動等も防止できるため、品質の高い模様付金属薄膜15が得られる。
【0034】
模様付金属薄膜15は、導電性鋳型13の模様面に、電鋳により金属を析出させることで得られる。これにより、図7に示すように、導電性鋳型13の模様面の凹凸が、析出する金属薄膜にも同様に形成されるため、模様付金属薄膜15が得られる。
【0035】
ここに、模様付金属薄膜15を形成する金属として、例えばニッケルを使用した場合には、ワット液として硫酸ニッケル液を使用することにより、導電性鋳型13の模様面上にニッケルを電着させる。この時の電着条件としては、例えば150mm×150mmの電鋳有効面積に対して、3A/dm2 の電流を流すことにより、3時間で100μm±10μmの金属薄膜を得ることができる。
【0036】
なお、前記ニッケルの他に、金、銀、銅、鉄または合金等の任意の金属を析出させて、模様付金属薄膜15を形成しても良いことは勿論であり、また電鋳条件を変えることにより、例えば20〜300μm位の範囲で、任意の肉厚の模様付金属薄膜15を得ることができる。
【0037】
本発明においては、電鋳に先立ち、導電性鋳型13の模様面に、離型処理を施すことが好ましい。離型処理は、前記と同様の方法で行うことができる。離型処理を施しておくと、得られる模様付金属薄膜15を、導電性鋳型13から容易に剥離できる。
【0038】
模様付金属薄膜15を、導電性鋳型13から剥離した後、模様付金属薄膜15を所定の文字、図形パターンにエッチングすることで、本発明の模様付金属薄片1が得られる。
また、エッチングに先立ち、模様付金属薄膜15の模様面に、前記した被覆層4、好ましくは耐腐食性メッキ膜を形成しておいてもよい。
【0039】
模様付金属薄膜15のエッチングは、金属箔をエッチングする公知の手法に準じて行うことができる。具体的には、模様付金属薄膜15に液レジスト、レジストインクを塗布乾燥あるいはドライレジストフィルムを貼着することで、レジスト膜を形成し、これを所望の文字、図形パターン状に露光、現像を行い、その後エッチングを行うことで、所望形状の模様付金属薄片1が得られる。
【0040】
レジスト膜の形成は、模様付金属薄膜15の模様面に行ってもよく、また模様面の反対面(固着面)に行ってもよい。模様付金属薄膜15の固着面にレジスト膜を形成し、固着面側からエッチングを行うと、図1に示すような断面形状の模様付金属薄片が得られる。模様付金属薄膜15の模様面にレジスト膜を形成し、模様面側からエッチングを行うと、図2に示すような断面形状の模様付金属薄片が得られる。
【0041】
また、所望形状の模様付金属薄片を形成すると同時に、位置決め、固着用接着剤層2形成時のマスクなどに用いられる工程管理用金属薄片を形成してもよい。
以下、模様付金属薄膜15の固着面にレジスト膜を形成し、固着面側からエッチングする場合について、さらに具体的に説明する。
【0042】
まず、必要とするネガまたはポジのフォトマスクフィルムを写真や印刷等によって作成
する。このフィルムには、目的とする模様付金属薄片に対応する文字、図形パターンの画像図と、必要に応じて形成される工程管理用金属薄片の形状に対応する画像図が黒インク等で描かれている。
【0043】
一方、模様付金属薄膜15の固着面に、液レジスト、ドライフィルムレジストまたは印刷用レジストインク等のフォトレジストを塗布し、焼き付けを行う。そして、フォトレジスト上に前記フォトマスクフィルムを乗せ、この状態で露光機等による露光を行う。この露光後に現像を行って、露光されなかったフォトレジストを除去し、これによって、図8に示すように、模様付金属薄膜15の固着面に前記画像図の形状に沿った形状のレジスト膜16および露出部17を形成する。
【0044】
固着面側からエッチングを行う場合には、上記フォトマスクは、目的とする文字、図形の反転パターンである。
なお、この際、模様面側にエッチング液が浸入し不必要なエッチングが行われることを防止し、またエッチング後のパターンの位置ずれおよび脱落を防止するために、模様付金属薄膜15の模様面側に粘着シート18を貼着しておくことが好ましい。粘着シートとしては、後の剥離が容易であることから、紫外線硬化型粘着シートが特に好ましく用いられる。紫外線硬化型粘着シートは、紫外線の照射前に充分な接着力で被着体に接着し、紫外線照射によって重合硬化し、接着力を失う性質を有する。このような紫外線硬化型粘着シートは種々市販されている。
【0045】
次いで、レジスト膜が形成された固着面側からエッチング液を噴霧し、フルエッチングを行う。これにより前記露出部17にエッチング液が浸入し、この部分の金属薄膜15が除去され、所望の文字、図形パターンが形成され、図9に示すように、模様付金属薄片1が得られる。
【0046】
エッチング液、エッチング条件は、金属薄膜15の材質、厚さを考慮して、公知の範囲から適宜に選択される。エッチングは固着面側から進行するため、固着面側が大きくエッチングされ、模様面側がわずかにエッチングされるのみとなる。このため、金属薄片1の側面はテーパ状にエッチングされることになり、固着面側からエッチングを行った場合には、図1に示した断面形状の模様付金属薄片が得られる。また、模様面側からエッチングを行った場合には、図2に示した断面形状の模様付金属薄片が得られる。しかし、エッチング時間が長すぎると、過剰にサイドエッチングされることがある。したがって、所望の断面形状を達成するために、エッチング時間を適宜に調整することが好ましい。
【0047】
その後、剥離液に浸漬させて固着面上に残着しているフォトレジストを除去すると、図10に示すように、粘着シート18上に、模様付金属薄片1と、必要に応じて形成される工程管理用金属薄片21、22が残留する。図11に、図10の平面図の一例を示す。この例では、目標とする模様付金属薄片1は、文字パターン「XYZ」であり、工程管理用位置決めパターン21および工程管理用マスクパターン22が形成されている。文字パターンであるXYZは、固着面側が示されているため、反転パターンとなる。
【0048】
次いで、固着面側に固着用接着剤層2を形成する。固着用接着剤の具体例は、前述のとおりである。固着用接着剤層2は、被着体に不要の接着剤が付着することを防止するため、模様付金属薄片1の固着面にのみ形成することが好ましい。したがって、固着用接着剤層2を形成する際に、文字パターン形状の開口部を有する別途準備したマスクを文字パターン上に位置合わせして乗せ、固着用接着剤層を形成し、その後、該マスクを除去することが推奨される。しかし、図11に示したように、工程管理用マスクパターン22を形成した場合には、別途マスクを準備する必要はない。この場合、模様付金属薄片1および工程管理用マスクパターン22の露出面全面に固着用接着剤層を形成し、その後、工程管理
用マスクパターン22を除去すれば、模様付金属薄片1の固着面にのみ固着用接着剤層2が形成されることになる。
【0049】
次いで、固着用接着剤層2を介して模様付金属薄片1を所望の被着体3に固着する。固着用接着剤として、前記粘着シート18の接着力よりも大きな接着力を有する接着剤を選択すると、粘着シート18上に整列仮着された模様付金属薄片1を、固着用接着剤層2を介して被着体3に固着し、その後粘着シート18を除去すれば、模様付金属薄片1は被着体側に転写固着される。また、粘着シート18が紫外線硬化型粘着シートである場合には、紫外線照射により粘着シート18の接着力が激減するため、模様付金属薄片1の被着体への転写が確実に行えるようになる。
【0050】
このような工程を経て、図1に示したような、模様付金属薄片1の被着体3への固着が行われる。
なお、模様面側からエッチングを行った場合には、粘着シート18上に整列仮着された模様付金属薄片1および工程管理用パターンを、いったん他の粘着シートに転写し、固着面側を露出させ、固着用接着剤層2を形成する。その他の工程は前記と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、固着面が平面であり充分な量の接着剤を塗工できる模様付金属薄片およびその製法が提供される。また本発明の製法によれば、模様面に耐腐食性メッキ層を簡便に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図2】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図3】本発明に係る模様付金属薄片の一態様の断面図を示す。
【図4】導電性鋳型の製造法の一工程を示す。
【図5】導電性鋳型の製造法の一工程を示す。
【図6】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図7】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図8】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図9】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図10】本発明の製造方法の一工程を示す。
【図11】図10の平面図を示す。
【符号の説明】
【0053】
1…模様付金属薄片
2…固着用接着剤層
3…被着体
4…耐腐食性メッキ膜
11…模様を有する物品
12…金属膜
13…導電性鋳型
14…導電性基材
15…模様付金属薄膜
16…レジスト膜
17…露出部
18…粘着シート
21…工程管理用位置決めパターン
22…工程管理用マスクパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に模様を有し、断面が略台形の模様付金属薄片。
【請求項2】
模様表面に耐腐食性メッキが施されてなる請求項1に記載の模様付金属薄片。
【請求項3】
模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【請求項4】
模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を導電性鋳型から剥離し、該模様付金属薄膜の模様面に耐腐食性メッキを施し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【請求項1】
表面に模様を有し、断面が略台形の模様付金属薄片。
【請求項2】
模様表面に耐腐食性メッキが施されてなる請求項1に記載の模様付金属薄片。
【請求項3】
模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【請求項4】
模様を有する導電性鋳型に電鋳を行い模様付金属薄膜を形成し、該模様付金属薄膜を導電性鋳型から剥離し、該模様付金属薄膜の模様面に耐腐食性メッキを施し、該模様付金属薄膜を所定のパターン状にエッチングする工程を含む模様付金属薄片の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−52448(P2006−52448A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235486(P2004−235486)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(594091927)テフコ青森株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(594091927)テフコ青森株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]