横軸型すべり軸受装置
【課題】オイルベーパーや油滴の軸受箱外部への漏れを確実に防止することができると共に、外形の増大を抑えて小型に構成でき、かつ分解も容易で保守点検の作業を容易に能率よく実施することができる横軸型すべり軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受箱1と、この軸受箱1内に支持され、強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受2とを備え、軸受2に供給された潤滑油が排油として軸受2の排油穴10から排出され、その排油が軸受箱1の内底部に残留油14として溜まる横軸型すべり軸受装置において、排油穴10から排出される排油は、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路25を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく軸受箱1の内底部の残留油14中に導かれる。
【解決手段】軸受箱1と、この軸受箱1内に支持され、強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受2とを備え、軸受2に供給された潤滑油が排油として軸受2の排油穴10から排出され、その排油が軸受箱1の内底部に残留油14として溜まる横軸型すべり軸受装置において、排油穴10から排出される排油は、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路25を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく軸受箱1の内底部の残留油14中に導かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制給油装置から供給される潤滑油により軸受部が潤滑される横軸型すべり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の軸受装置の一例を図12及び図13に示してある。図12は軸受装置の一部破断の正面図、図13は図12のVI−VI線に沿う断面図である。軸受装置は、軸受箱1を備え、この軸受箱1内にすべり軸受2が設けられ、軸受箱1を貫通した軸3がその軸受2により回転自在に支持されている。
【0003】
軸受箱1は、主箱1aと、この主箱1aの上に取り付けられた蓋箱1bとからなり、これら主箱1a及び蓋箱1bの内側中間部にそれぞれリブ5,6が一体的に形成され、これらリブ5,6で軸受2が挟まれて軸受箱1内に支持されている。
軸受2は、上部片2aと下部片2bとを有する上下分割型構造に構成され、上部片2aで軸3の上半周部が覆われ、下部片2bで軸3の下半周部が覆われ、上部片2aが蓋箱1bのリブ6で支持され、下部片2bが主箱1aのリブ5で支持されている。
【0004】
軸受2の下部片2bには、給油穴9と排油穴10が垂直に形成されている。給油穴9は軸受箱1に設けられた給油路11に接続されている。給油路11は、強制給油装置(図示せず)から延出された給油管12に接続され、その強制給油装置により潤滑油が給油管12、給油路11、給油穴9を通して軸受2と軸3との間に強制的に順次供給され、その軸受2と軸3との間に油膜が形成される。そしてその潤滑油が排油穴10を通して軸受箱1内に排油13として順次排出され、さらに軸受箱1の底部に残留油14として溜まる。
【0005】
軸受箱1の底部には排油管16が接続され、この排油管16は強制給油装置の排油系統へ接続され、軸受箱1の底部に溜まった残留油14がこの排油管16を通して強制給油装置に送られる。
このような横軸型すべり軸受装置については、特開平7−123627公報(特許文献1)や特開2007−327512公報(特許文献2)に開示されている。
【0006】
ところで、排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排油穴10の出口から噴射してオイルベーパーや油滴18となって軸受箱1内に飛散する。また、排油13が残留油14の油面に滴下するときに、オイルベーパーや油滴18が発生して飛散する。そしてこのようなオイルベーパーや油滴18が軸受箱1から外部に漏れる恐れがある。
【0007】
そこで、特許文献1では、図12及び図13に示すように、軸3が貫通する軸受箱1の両側の外側部分にそれぞれ油切20(シール)を設け、これら油切20でオイルベーパーや油滴18の漏れを防止することが記載されている。
【0008】
しかし、軸受箱1の外側部分に油切20を設けると、軸受装置の軸方向寸法が延び、その外形が増し、またその油切20の組み付けの調整に手間と時間がかかる難点があることから、特許文献2では、図14に示すように、油切を設けずに、軸受2に排油穴10から残留油14内に達する排油誘導管21を取り付けるようにしている。排油誘導管21は、断面径が排油穴10よりはるかに大きく、軸受2からその下方に突出し、軸受箱1内の空間を通ってその内底部の残留油14の液中に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−123627号公報
【特許文献2】特開2007−327512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
軸受2に排油誘導管21を取り付ければ、排油穴10から噴出した排油13がその排油誘導管21を通して残留油14内に導かれる。しかしながら、排油誘導管21の断面径が排油穴10よりはるかに大きいからその内部ではオイルベーパーや油滴8が発生し、このオイルベーパーや油滴8が軸受2と排油誘導管21との接合部の隙間から軸受箱1内に漏れ、さらに軸受箱1の外部に漏れる恐れがある。
【0011】
この対策としては、排油誘導管21を軸受2に溶接してその接合部の気密性を高める方法が考えられる。
【0012】
ところで、軸受装置の保守点検などの際には、図15に示すように、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外すことで軸受2を分解し、このような作業で軸受箱1や軸受2を点検する。
【0013】
しかしながら、特許文献2のように軸受2に排油誘導管21が取り付けられている場合、特に溶接されている場合には、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って上に回すときにその排油誘導管21が主箱1aの内壁面に当ってしまい、このため下部片2bを取り外すことが困難となる。主箱1aを排油誘導管21と干渉しない大きさにすれば軸受装置が大型化してしまう。
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、オイルベーパーや油滴の外部への漏れを確実に防止することができると共に、外形の増大を抑えて小型に構成でき、かつ分解も容易で保守点検の作業を容易に能率よく実施することができる横軸型すべり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、強制給油装置に接続された軸受箱と、この軸受箱内に支持され、前記強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受とを備え、前記軸受に供給された潤滑油が排油として該軸受に形成された排油穴から排出され、その排油が前記軸受箱の内底部に残留油として溜まる横軸型すべり軸受装置において、前記排油穴から排出される排油は、該排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく前記軸受箱の内底部の残留油中に導かれることを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受とこの軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブとの接触面に形成された排油通路と、この排油通路と連通し前記リブの壁肉部に形成された排油通路とで構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブの壁肉部にのみ形成された排油通路で構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受箱内の空間部に配置された可撓性のチューブで構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受箱内の空間部に配置され前記軸受の排油穴に着脱可能に接続されたパイプで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通して、排油穴から排出される排油が残留油中まで導かれるので、排油誘導路内にオイルベーパーや油滴そのものが発生せず、したがってオイルベーパーや油滴の外部への漏れを確実に防止することができると共に、外形の増大を抑えて小型に構成でき、かつ分解も容易で保守点検の作業を容易に能率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図4】図3のII−II線に沿う断面図。
【図5】この発明の第3の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図6】図5のIII−III線に沿う断面図。
【図7】この発明の第4の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図8】図7のIV−IV線に沿う断面図。
【図9】第4の実施形態に係る軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図。
【図10】この発明の第5の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図11】図10のV−V線に沿う断面図。
【図12】従来の軸受装置の一部破断の正面図。
【図13】図12のVI−VI線に沿う断面図。
【図14】排油誘導管を備える従来の軸受装置の一部破断の正面図。
【図15】その軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図1〜図11を参照して説明する。なお、図12〜図15に示す従来の構成と同一の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1及び図2には第1の実施形態を示してある。図1は軸受装置の一部破断の正面図、図2は図1のI−I線に沿う断面図である。
【0023】
この実施形態においては、軸受2の外周面の一部と、軸受箱1のリブ5とに排油通路25a,25bが形成され、これら排油通路25a,25bにより一連の排油誘導路25が構成されている。
【0024】
排油通路25aは、軸受2のリブ5と接触するほぼ下側半周部分の外周面にその周方向に沿って延びるように形成された溝からなり、その溝の長手方向沿いの開放部がリブ5で覆われることで軸受箱1内とは気密的に遮断されている。排油通路25bは、リブ5の軸受2の下端部と接触する部分からその下方の壁肉部に垂直に延びるように形成された透孔からなる。そしてこれら排油通路25a,25bは、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されている。
リブ5の下端部には、軸受箱1内の残留油14の液面より下方の位置において、排油通路25bに通じる排油口25b1がリブ5の両側面側に開放するように形成されている。軸受2に形成された排油通路25aの一端部は軸受2の排油穴10に通じ、他端部はリブ5の排油通路25bに通じ、これにより排油穴10からリブ5の下端部の排油口25b1に通じる一連の排油誘導路25が構成されている。
【0025】
この実施形態における軸受装置においては、給油管12から給油された潤滑油は、軸受箱1の給油路11及び軸受2の給油穴9を通り、軸受2と軸3との間に順次供給され、軸3の回転により一部は軸3の上半周部に、他の一部は軸3の下半周部に回って油膜を形成し、さらに軸受2の排油穴10から排油13として排出される。
【0026】
排油穴10から排出された排油13は、軸受2の排油通路25aを通り、さらにリブ5の排油通路25bを通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。なお、軸受箱1内に溜まる残留油14はその増量に応じる分が排油管16を通して強制給油装置に送られる。したがって軸受箱1の内底部には常時ほぼ一定液面の量の残留油14が残る。
【0027】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0028】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25を構成する排油通路25aは、軸受2の下部片2bの外周面に溝状に形成されてリブ5で覆われた構造であるから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図3及び図4には第2の実施形態を示してある。図3は軸受装置の一部破断の正面図、図4は図3のII−II線に沿う断面図である。
【0029】
この実施形態においては、排油誘導路25を構成する排油通路25aが軸受箱1のリブ5に形成されている。すなわち、この排油通路25aは、リブ5における軸受2のほぼ下側半周部分と接触する部分にその軸受2の周方向に沿って延びるように形成された溝からなり、その溝の長手方向沿いの開放部が軸受2の外周面で覆われることで軸受箱1内とは気密的に遮断されている。そしてこの排油通路25aの一端部が軸受2の排油穴10に通じ、他端部が第1の実施形態の場合と同様のリブ5の壁肉部に形成された透孔からなる排油通路25bに通じ、これにより排油穴10からリブ5の下端部の排油口25b1に通じる一連の排油誘導路25が構成されている。なお、この排油誘導路25も第1の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されている。
【0030】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、リブ5に形成された排油通路25a,25bを通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。
【0031】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0032】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25を構成する排油通路25aは、リブ5に溝状に形成されて軸受2で覆われた構造であるから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図5及び図6には第3の実施形態を示してある。図5は軸受装置の一部破断の正面図、図6は図5のIII−III線に沿う断面図である。
【0033】
この実施形態においては、排油誘導路25が軸受箱1のリブ5に形成された単一の透孔のみで構成されている。すなわち、この実施形態では、軸受2に形成された排油穴10に対応する位置において、リブ5の壁肉部にその排油穴10と一直線上に延びて連なる垂直な透孔が形成され、この透孔により排油誘導路25が構成されている。そしてこの排油誘導路25は、第1、第2の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成され、その下端部がリブ5の下端部に形成された排油口25b1を通して軸受箱1の内底部の残留油14の液中に通じ、軸受箱1内とは気密的に遮断されている。
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、リブ5に形成された排油誘導路25を通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。
【0034】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0035】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25はリブ5に形成されているだけでから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図7〜図9には第4の実施形態を示してある。図7は軸受装置の一部破断の正面図、図8は図7のIV−IV線に沿う断面図、図9は軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図である。
【0036】
前記第1〜第3の実施形態においては、軸受2の排油穴10がリブ5に対応する位置に形成されているが、この実施形態においては、排油穴10がリブ5の両側の空間部に対応する位置に形成されている。そして、その各排油穴10に排油誘導路25として、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径の可撓性を有するチューブが気密的に接続されている。排油誘導路25としてのチューブは、例えば合成樹脂で形成され、上端部が排油穴10に気密的に接続されて軸受箱1内に垂下され、下端部が軸受箱1の内底部の残留油14の液中に挿入され、さらにその内底部に沿って延びるように屈曲されている。
【0037】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、チューブからなる排油誘導路25を通って軸受箱1の内底部にまで導かれ、その内底部の残留油14の液中に排出される。
【0038】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2、第3の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回したときには、軸受2の下部片2bに接続された排油誘導路25としてのチューブが可撓性を有するから、その下部片2bの回動に応じて図9に示すように、チューブが下部片2bの外周面に添うように円弧状に湾曲し、したがってチューブが軸受箱1と干渉することがなく、このため軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図10及び図11には第5の実施形態を示してある。図10は軸受装置の一部破断の正面図、図11は図10のV−V線に沿う断面図である。
【0039】
この実施形態においても前記第4の実施形態と同様に、排油穴10がリブ5の両側の空間部に対応する位置に形成されている。そして、その各排油穴10に排油誘導路25として、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径のパイプが接続されている。この排油誘導路25としてのパイプは、例えば金属製で、上端部が軸受2の排油穴10に例えばねじ込み式により気密的にかつ脱着可能に接続され、その下側がほぼ垂直に軸受箱1内に垂下され、下端部が軸受箱1の内底部の残留油14の液中に挿入されている。
【0040】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、パイプからなる排油誘導路25を通って軸受箱1の内底部にまで導かれ、その内底部の残留油14の液中に排出される。
【0041】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2、第3、第4の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。
一方、軸受装置の保守点検などに際しては、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外す。そして、軸受2の下部片2bに接続されている排油誘導路25としてのパイプをその下部片2bから取り外し、この状態で下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して軸3から取り外し、軸受2を分解する。
このように軸受2を分解するときには、排油誘導路25としてのパイプを軸受2から取り外すことができ、したがって下部片2bを回すときに排油誘導路25としてのパイプが軸受箱1と干渉することがなく、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…軸受箱
1a…主箱
1b…蓋箱
2…軸受
2a…上部片
2b…下部片
3…軸
5.6…リブ
9…給油穴
10…排油穴
11…給油路
12…給油管
13…排油
14…残留油
16…排油管
25…排油誘導路
25a.25b…排油通路
25b1…排油口
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制給油装置から供給される潤滑油により軸受部が潤滑される横軸型すべり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の軸受装置の一例を図12及び図13に示してある。図12は軸受装置の一部破断の正面図、図13は図12のVI−VI線に沿う断面図である。軸受装置は、軸受箱1を備え、この軸受箱1内にすべり軸受2が設けられ、軸受箱1を貫通した軸3がその軸受2により回転自在に支持されている。
【0003】
軸受箱1は、主箱1aと、この主箱1aの上に取り付けられた蓋箱1bとからなり、これら主箱1a及び蓋箱1bの内側中間部にそれぞれリブ5,6が一体的に形成され、これらリブ5,6で軸受2が挟まれて軸受箱1内に支持されている。
軸受2は、上部片2aと下部片2bとを有する上下分割型構造に構成され、上部片2aで軸3の上半周部が覆われ、下部片2bで軸3の下半周部が覆われ、上部片2aが蓋箱1bのリブ6で支持され、下部片2bが主箱1aのリブ5で支持されている。
【0004】
軸受2の下部片2bには、給油穴9と排油穴10が垂直に形成されている。給油穴9は軸受箱1に設けられた給油路11に接続されている。給油路11は、強制給油装置(図示せず)から延出された給油管12に接続され、その強制給油装置により潤滑油が給油管12、給油路11、給油穴9を通して軸受2と軸3との間に強制的に順次供給され、その軸受2と軸3との間に油膜が形成される。そしてその潤滑油が排油穴10を通して軸受箱1内に排油13として順次排出され、さらに軸受箱1の底部に残留油14として溜まる。
【0005】
軸受箱1の底部には排油管16が接続され、この排油管16は強制給油装置の排油系統へ接続され、軸受箱1の底部に溜まった残留油14がこの排油管16を通して強制給油装置に送られる。
このような横軸型すべり軸受装置については、特開平7−123627公報(特許文献1)や特開2007−327512公報(特許文献2)に開示されている。
【0006】
ところで、排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排油穴10の出口から噴射してオイルベーパーや油滴18となって軸受箱1内に飛散する。また、排油13が残留油14の油面に滴下するときに、オイルベーパーや油滴18が発生して飛散する。そしてこのようなオイルベーパーや油滴18が軸受箱1から外部に漏れる恐れがある。
【0007】
そこで、特許文献1では、図12及び図13に示すように、軸3が貫通する軸受箱1の両側の外側部分にそれぞれ油切20(シール)を設け、これら油切20でオイルベーパーや油滴18の漏れを防止することが記載されている。
【0008】
しかし、軸受箱1の外側部分に油切20を設けると、軸受装置の軸方向寸法が延び、その外形が増し、またその油切20の組み付けの調整に手間と時間がかかる難点があることから、特許文献2では、図14に示すように、油切を設けずに、軸受2に排油穴10から残留油14内に達する排油誘導管21を取り付けるようにしている。排油誘導管21は、断面径が排油穴10よりはるかに大きく、軸受2からその下方に突出し、軸受箱1内の空間を通ってその内底部の残留油14の液中に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−123627号公報
【特許文献2】特開2007−327512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
軸受2に排油誘導管21を取り付ければ、排油穴10から噴出した排油13がその排油誘導管21を通して残留油14内に導かれる。しかしながら、排油誘導管21の断面径が排油穴10よりはるかに大きいからその内部ではオイルベーパーや油滴8が発生し、このオイルベーパーや油滴8が軸受2と排油誘導管21との接合部の隙間から軸受箱1内に漏れ、さらに軸受箱1の外部に漏れる恐れがある。
【0011】
この対策としては、排油誘導管21を軸受2に溶接してその接合部の気密性を高める方法が考えられる。
【0012】
ところで、軸受装置の保守点検などの際には、図15に示すように、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外すことで軸受2を分解し、このような作業で軸受箱1や軸受2を点検する。
【0013】
しかしながら、特許文献2のように軸受2に排油誘導管21が取り付けられている場合、特に溶接されている場合には、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って上に回すときにその排油誘導管21が主箱1aの内壁面に当ってしまい、このため下部片2bを取り外すことが困難となる。主箱1aを排油誘導管21と干渉しない大きさにすれば軸受装置が大型化してしまう。
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、オイルベーパーや油滴の外部への漏れを確実に防止することができると共に、外形の増大を抑えて小型に構成でき、かつ分解も容易で保守点検の作業を容易に能率よく実施することができる横軸型すべり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、強制給油装置に接続された軸受箱と、この軸受箱内に支持され、前記強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受とを備え、前記軸受に供給された潤滑油が排油として該軸受に形成された排油穴から排出され、その排油が前記軸受箱の内底部に残留油として溜まる横軸型すべり軸受装置において、前記排油穴から排出される排油は、該排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく前記軸受箱の内底部の残留油中に導かれることを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受とこの軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブとの接触面に形成された排油通路と、この排油通路と連通し前記リブの壁肉部に形成された排油通路とで構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブの壁肉部にのみ形成された排油通路で構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受箱内の空間部に配置された可撓性のチューブで構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1における排油誘導路が、前記軸受箱内の空間部に配置され前記軸受の排油穴に着脱可能に接続されたパイプで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通して、排油穴から排出される排油が残留油中まで導かれるので、排油誘導路内にオイルベーパーや油滴そのものが発生せず、したがってオイルベーパーや油滴の外部への漏れを確実に防止することができると共に、外形の増大を抑えて小型に構成でき、かつ分解も容易で保守点検の作業を容易に能率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図4】図3のII−II線に沿う断面図。
【図5】この発明の第3の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図6】図5のIII−III線に沿う断面図。
【図7】この発明の第4の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図8】図7のIV−IV線に沿う断面図。
【図9】第4の実施形態に係る軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図。
【図10】この発明の第5の実施形態に係る軸受装置の一部破断の正面図。
【図11】図10のV−V線に沿う断面図。
【図12】従来の軸受装置の一部破断の正面図。
【図13】図12のVI−VI線に沿う断面図。
【図14】排油誘導管を備える従来の軸受装置の一部破断の正面図。
【図15】その軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図1〜図11を参照して説明する。なお、図12〜図15に示す従来の構成と同一の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1及び図2には第1の実施形態を示してある。図1は軸受装置の一部破断の正面図、図2は図1のI−I線に沿う断面図である。
【0023】
この実施形態においては、軸受2の外周面の一部と、軸受箱1のリブ5とに排油通路25a,25bが形成され、これら排油通路25a,25bにより一連の排油誘導路25が構成されている。
【0024】
排油通路25aは、軸受2のリブ5と接触するほぼ下側半周部分の外周面にその周方向に沿って延びるように形成された溝からなり、その溝の長手方向沿いの開放部がリブ5で覆われることで軸受箱1内とは気密的に遮断されている。排油通路25bは、リブ5の軸受2の下端部と接触する部分からその下方の壁肉部に垂直に延びるように形成された透孔からなる。そしてこれら排油通路25a,25bは、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されている。
リブ5の下端部には、軸受箱1内の残留油14の液面より下方の位置において、排油通路25bに通じる排油口25b1がリブ5の両側面側に開放するように形成されている。軸受2に形成された排油通路25aの一端部は軸受2の排油穴10に通じ、他端部はリブ5の排油通路25bに通じ、これにより排油穴10からリブ5の下端部の排油口25b1に通じる一連の排油誘導路25が構成されている。
【0025】
この実施形態における軸受装置においては、給油管12から給油された潤滑油は、軸受箱1の給油路11及び軸受2の給油穴9を通り、軸受2と軸3との間に順次供給され、軸3の回転により一部は軸3の上半周部に、他の一部は軸3の下半周部に回って油膜を形成し、さらに軸受2の排油穴10から排油13として排出される。
【0026】
排油穴10から排出された排油13は、軸受2の排油通路25aを通り、さらにリブ5の排油通路25bを通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。なお、軸受箱1内に溜まる残留油14はその増量に応じる分が排油管16を通して強制給油装置に送られる。したがって軸受箱1の内底部には常時ほぼ一定液面の量の残留油14が残る。
【0027】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0028】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25を構成する排油通路25aは、軸受2の下部片2bの外周面に溝状に形成されてリブ5で覆われた構造であるから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図3及び図4には第2の実施形態を示してある。図3は軸受装置の一部破断の正面図、図4は図3のII−II線に沿う断面図である。
【0029】
この実施形態においては、排油誘導路25を構成する排油通路25aが軸受箱1のリブ5に形成されている。すなわち、この排油通路25aは、リブ5における軸受2のほぼ下側半周部分と接触する部分にその軸受2の周方向に沿って延びるように形成された溝からなり、その溝の長手方向沿いの開放部が軸受2の外周面で覆われることで軸受箱1内とは気密的に遮断されている。そしてこの排油通路25aの一端部が軸受2の排油穴10に通じ、他端部が第1の実施形態の場合と同様のリブ5の壁肉部に形成された透孔からなる排油通路25bに通じ、これにより排油穴10からリブ5の下端部の排油口25b1に通じる一連の排油誘導路25が構成されている。なお、この排油誘導路25も第1の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されている。
【0030】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、リブ5に形成された排油通路25a,25bを通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。
【0031】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0032】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25を構成する排油通路25aは、リブ5に溝状に形成されて軸受2で覆われた構造であるから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図5及び図6には第3の実施形態を示してある。図5は軸受装置の一部破断の正面図、図6は図5のIII−III線に沿う断面図である。
【0033】
この実施形態においては、排油誘導路25が軸受箱1のリブ5に形成された単一の透孔のみで構成されている。すなわち、この実施形態では、軸受2に形成された排油穴10に対応する位置において、リブ5の壁肉部にその排油穴10と一直線上に延びて連なる垂直な透孔が形成され、この透孔により排油誘導路25が構成されている。そしてこの排油誘導路25は、第1、第2の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成され、その下端部がリブ5の下端部に形成された排油口25b1を通して軸受箱1の内底部の残留油14の液中に通じ、軸受箱1内とは気密的に遮断されている。
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、リブ5に形成された排油誘導路25を通ってリブ5の下端部の排油口25b1にまで導かれ、この排油口25b1から軸受箱1内の残留油14の液中に排出される。
【0034】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。しかも、部品を追加せずに、既存の部品を加工するだけで実施することが可能である。
【0035】
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
この際、排油誘導路25はリブ5に形成されているだけでから、軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って軸受箱1と何ら干渉することなく回すことができ、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図7〜図9には第4の実施形態を示してある。図7は軸受装置の一部破断の正面図、図8は図7のIV−IV線に沿う断面図、図9は軸受装置の分解時の状態を示す一部破断の正面図である。
【0036】
前記第1〜第3の実施形態においては、軸受2の排油穴10がリブ5に対応する位置に形成されているが、この実施形態においては、排油穴10がリブ5の両側の空間部に対応する位置に形成されている。そして、その各排油穴10に排油誘導路25として、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径の可撓性を有するチューブが気密的に接続されている。排油誘導路25としてのチューブは、例えば合成樹脂で形成され、上端部が排油穴10に気密的に接続されて軸受箱1内に垂下され、下端部が軸受箱1の内底部の残留油14の液中に挿入され、さらにその内底部に沿って延びるように屈曲されている。
【0037】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、チューブからなる排油誘導路25を通って軸受箱1の内底部にまで導かれ、その内底部の残留油14の液中に排出される。
【0038】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2、第3の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。
一方、軸受装置の保守点検などの際には、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、次に軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外し、さらに下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して取り外し、軸受2を分解する。
軸受2の下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回したときには、軸受2の下部片2bに接続された排油誘導路25としてのチューブが可撓性を有するから、その下部片2bの回動に応じて図9に示すように、チューブが下部片2bの外周面に添うように円弧状に湾曲し、したがってチューブが軸受箱1と干渉することがなく、このため軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
図10及び図11には第5の実施形態を示してある。図10は軸受装置の一部破断の正面図、図11は図10のV−V線に沿う断面図である。
【0039】
この実施形態においても前記第4の実施形態と同様に、排油穴10がリブ5の両側の空間部に対応する位置に形成されている。そして、その各排油穴10に排油誘導路25として、排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径のパイプが接続されている。この排油誘導路25としてのパイプは、例えば金属製で、上端部が軸受2の排油穴10に例えばねじ込み式により気密的にかつ脱着可能に接続され、その下側がほぼ垂直に軸受箱1内に垂下され、下端部が軸受箱1の内底部の残留油14の液中に挿入されている。
【0040】
この実施形態における軸受装置においては、排油穴10から排出された排油13は、パイプからなる排油誘導路25を通って軸受箱1の内底部にまで導かれ、その内底部の残留油14の液中に排出される。
【0041】
軸受2の排油穴10から排出される排油13は、強制給油装置から供給されるため加圧された状態で排出されるが、排油誘導路25は第1、第2、第3、第4の実施形態と同じく排油穴10とほぼ同じ大きさの断面径に形成されているので、排油誘導路25内には排油がそのまま流入し、オイルベーパーや油滴そのものが発生せずに軸受箱1内の残留油14中に導かれる。このため軸受箱1内にもオイルベーパーや油滴が発生せず、オイルベーパーや油滴による軸受箱1の外部への油漏れも生じない。したがって、油切を設ける必要がなく、軸受装置が大型化することもない。
一方、軸受装置の保守点検などに際しては、主箱1aの上から蓋箱1bを取り外して軸受箱1を開き、軸受2の上部片2aを軸3の上半周部から取り外す。そして、軸受2の下部片2bに接続されている排油誘導路25としてのパイプをその下部片2bから取り外し、この状態で下部片2bを軸3の周面に沿って下から上に回して軸3から取り外し、軸受2を分解する。
このように軸受2を分解するときには、排油誘導路25としてのパイプを軸受2から取り外すことができ、したがって下部片2bを回すときに排油誘導路25としてのパイプが軸受箱1と干渉することがなく、したがって軸受箱1を大型化することなく、軸受2を容易に分解して能率よく点検することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…軸受箱
1a…主箱
1b…蓋箱
2…軸受
2a…上部片
2b…下部片
3…軸
5.6…リブ
9…給油穴
10…排油穴
11…給油路
12…給油管
13…排油
14…残留油
16…排油管
25…排油誘導路
25a.25b…排油通路
25b1…排油口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強制給油装置に接続された軸受箱と、この軸受箱内に支持され、前記強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受とを備え、前記軸受に供給された潤滑油が排油として該軸受に形成された排油穴から排出され、その排油が前記軸受箱の内底部に残留油として溜まる横軸型すべり軸受装置において、
前記排油穴から排出される排油は、該排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく前記軸受箱の内底部の残留油中に導かれることを特徴とする横軸型すべり軸受装置。
【請求項2】
排油誘導路は、前記軸受とこの軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブとの接触面に形成された排油通路と、この排油通路と連通し前記リブの壁肉部に形成された排油通路とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項3】
排油誘導路は、前記軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブの壁肉部にのみ形成された排油通路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項4】
排油誘導路は、前記軸受箱内の空間部に配置された可撓性のチューブで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項5】
排油誘導路は、前記軸受箱内の空間部に配置され前記軸受の排油穴に着脱可能に接続されたパイプで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項1】
強制給油装置に接続された軸受箱と、この軸受箱内に支持され、前記強制給油装置から供給される潤滑油により潤滑される分割型のすべり軸受とを備え、前記軸受に供給された潤滑油が排油として該軸受に形成された排油穴から排出され、その排油が前記軸受箱の内底部に残留油として溜まる横軸型すべり軸受装置において、
前記排油穴から排出される排油は、該排油穴とほぼ同じ大きさの断面径の排油誘導路を通り、この排油誘導路を通ることで、オイルベーパーや油滴を発生することなく前記軸受箱の内底部の残留油中に導かれることを特徴とする横軸型すべり軸受装置。
【請求項2】
排油誘導路は、前記軸受とこの軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブとの接触面に形成された排油通路と、この排油通路と連通し前記リブの壁肉部に形成された排油通路とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項3】
排油誘導路は、前記軸受を支持し前記軸受箱内に設けられたリブの壁肉部にのみ形成された排油通路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項4】
排油誘導路は、前記軸受箱内の空間部に配置された可撓性のチューブで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【請求項5】
排油誘導路は、前記軸受箱内の空間部に配置され前記軸受の排油穴に着脱可能に接続されたパイプで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の横軸型すべり軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−237456(P2012−237456A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193976(P2012−193976)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2010−13543(P2010−13543)の分割
【原出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2010−13543(P2010−13543)の分割
【原出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
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