説明

樹状細胞組成物および方法

対象から単離されたときから約6〜96時間にわたり1℃〜34℃の温度においてインキュベートされた単球から樹状細胞の作製のための方法が提供される。インキュベート時間経過後、単球は樹状細胞へ分化するように誘導されうる。本発明の方法により作製された成熟樹状細胞は、対象から単離されたときから少なくとも6時間にわたり1℃〜34℃において保持されなかった単球から作製された成熟樹状細胞と比較して、CD80、CD83、CD86、MHCクラスI分子、またはMHCクラスII分子のうち1種以上を高レベルで有している。本発明の方法により作製された樹状細胞は、ワクチンの製造およびT細胞の刺激に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、病気の治療に有用な樹状細胞および関連組成物の作製法に関する。
【0002】
背景技術
多くの臨床試験により樹状細胞ワクチンの安全性が証明されており、1000例以上の患者が樹状細胞ワクチンを受け、重度の有害事象なく、そして患者の半数において治療および臨床反応を示した(Ridgeway(2003)Cancer Invest.,21:873-876)。例えば、最近の研究においては、4種の黒色腫ペプチド、gp100、melan‐A/MART‐1、チロシン黒色腫抗原(MAGE‐3)、KLHとfluマトリックスとにより負荷された樹状細胞を用いた予防接種において、4回の隔月予防接種後に転移黒色腫の退行がみられたことが示されている(Banchereau et al.(2001)Cancer Res.,61:6451-6458)。
【0003】
樹状細胞(DC)の一般的な作製方法は、対象から末梢血単核細胞(PBMC)を採取し、次いでPBMCの小集団である単球をDCへ分化させることである。樹状細胞のインビトロ作製に適した前駆体として作用するためには、単球は対象から単離後すぐに凍結または培養されねばならないと、広く考えられていた。したがって、樹状細胞ワクチンが、単球から作製されていた以前の臨床試験においては、PBMCまたは単球が患者からPBMCの採取後数時間以内に約37℃において培養または凍結された。しかしながら、製造の実際を考慮すると、新鮮な単離PBMCまたは単球の培養または凍結を要する方法により処理されたワクチンの広範な使用は制限される。PBMCからDCへの分化には約1週間を必要とし、GMP施設と熟練した専門家を必要とする。したがって、PBMCが患者から得られる各臨床現場またはその近くにおいてDCワクチンを製造するための施設とその要員の用意には、法外な費用が必要となる。
【0004】
DCワクチンを製造する上で商業的に有効なモデルによれば、臨床現場において採取されて製造現場へ運ばれた患者PBMCまたは単球からDCワクチンを製造できる、一つまたは比較的少数の施設を用意することになる。しかしながら、このようなモデルにおいては新鮮なPBMCまたは単球を必要とする現行のDC作製法に適用できない。新鮮な単球を凍結するには白血球搬出後に採取現場において追加の操作を必要とし、よって望ましい代替法ではない。したがって、製造施設への運搬に際して貯蔵されたPBMCまたは単球を用いてDCワクチンを製造するための方法を開発することが求められている。本発明はこの必要性を満足し、更なる利点も有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、対象から単離後6〜96時間にわたり1〜34℃において貯蔵された単球から樹状細胞および樹状細胞ワクチンを製造できる方法を見出した。貯蔵単球からDCを作製しうる能力は、採取現場から製造施設への単球の柔軟性と運搬性とを増大させる。加えて、本発明者らは、貯蔵単球から製造された樹状細胞ワクチンが新鮮単球から作製された樹状細胞より表現型において優れていることを見出した。例えば、貯蔵単球から製造された樹状細胞ワクチンは、新鮮単球から作製された樹状細胞と比較して、高レベルの共刺激分子、例えばCD80、CD83、およびCD86ならびに高レベルのMHCクラスIおよびMHCクラスII分子を有している。
【0006】
従って、一つの態様において、本発明は:
a.対象から単離されたときから6〜96時間にわたり1℃〜34℃の温度においてインキュベートされた単球を用意し、そして
b.上記単球から樹状細胞への分化を誘導する
ことを含んでなる、単球から樹状細胞を作製するための方法を提供する。
【0007】
好ましい態様においては、単球を含んでなる末梢血単核細胞(PBMC)を採取する白血球搬出法(leukapheresis)により単球が得られる。
【0008】
好ましくは、未成熟樹状細胞への単球の分化を誘導する有効量の組成物、例えば限定されないが、GM‐CSF、GM‐CSFおよびIL‐4、GM‐CSFおよびIL‐13、GM‐CSFおよびIL‐15、およびIFNαを含んでなる培地と単球とを接触させることにより、分化が誘導される。次いで、成熟樹状細胞を作製するために未成熟樹状細胞が成熟させられる。
【0009】
本発明の方法により作製された成熟樹状細胞は、従来の成熟樹状細胞とは表現型において異る。例えば、本発明は、細胞中ALOX15 RNA対アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である、成熟単球由来樹状細胞を提供する。これは、新鮮単球から作製された成熟樹状細胞におけるALOX15対アクチンまたはGAPDH RNAの比率と比較して、低い比率である。他の態様において、本発明は、細胞中CD52 RNA対アクチンRNAまたはGAPDHの定常状態比が1.0より大きい、成熟単球由来樹状細胞を提供する。更に他の態様において、本発明は細胞中TLR1 RNA、TLR2 RNA、IL‐1β RNAまたはCD69 RNA対アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である、成熟単球由来樹状細胞を提供する。
【0010】
更に他の態様において、本発明は、新鮮単球から作製された成熟樹状細胞と比較して高レベルでCD80、CD83、CD86、MHCクラスI分子、またはMHCクラスII分子のうち1種以上を成熟樹状細胞が有している、成熟単球由来樹状細胞を含んでなる組成物を提供する。加えて、本発明はALOX15 RNA、CD52 RNA、TLR1 RNA、TLR2 RNA、IL‐1β RNA、またはCD69 RNAの定常状態レベルの変化した成熟単球由来樹状細胞を提供する。
【0011】
本発明の方法により作製された樹状細胞は、ワクチンを製造する上で特に有用である。そのため、関連した樹状細胞組成物およびワクチンも提供される。好ましい態様において、ワクチンは対象と自家である。好ましくは、樹状細胞ワクチンは対象に存在する癌細胞または病原体からの抗原により負荷されている。
【0012】
意外にも、本発明者らは、DMSOにより凍結された樹状細胞ワクチンが融解後少なくとも2時間にわたりDMSOの存在下において安定であることを見出した。したがって、本発明は癌または病原体感染症の治療または予防用の凍結薬剤の製造のための抗原負荷樹状細胞の使用を提供し、ここで該薬剤は少なくとも2%のDMSOを含んでなり、融解していつでも投与しうるものである。他の態様において、本発明は:
a.少なくとも2%のDMSOを含んでなる凍結樹状細胞ワクチンを融解し、および
b.投与前に細胞対DMSOの比率を変えることなく対象へ融解ワクチンを投与する
ことを含んでなる、対象に予防接種する方法を提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、細胞がインビトロにおいて単球から分化され、≧5%DMSOの存在下において凍結させて、融解後も少なくとも24時間にわたりインビトロにおいて生存しうる、抗原負荷樹状細胞を提供する。好ましい態様において、抗原負荷樹状細胞は≧10%DMSOの存在下において凍結させて、融解後も少なくとも24時間にわたりインビトロにおいて生存しうる。
【0014】
他の態様において、本発明は約5〜15%DMSOを含んでなる樹状細胞ワクチンを提供し、該ワクチンは対象へいつでも投与しうる。
【発明の具体的説明】
【0015】
この開示の全体にわたり、様々な刊行物、特許、および公開特許明細書が具体的に引用されている。これら刊行物、特許、および公開特許明細書の開示は、本発明が関係する技術水準を更に詳細に説明するために、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0016】
本発明の実施に際しては、別記されない限り、当業界の技術内に属する分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学において常用される技術を用いる。このような技術は文献において詳細に説明される。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition(1989)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.eds.(1987))、the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、PCR:A Practical Approach(M.MacPherson et al.,IRL Press at Oxford University Press(1991))、PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995))、Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane eds.(1988))、Using Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane eds.(1999))、およびAnimal Cell Culture(R.I.Freshney ed.(1987))参照。
【0017】
定義
ここで用いられるように、ある用語は以下で定義された意味を有する。
【0018】
明細書および特許請求の範囲において用いられている単数形“a”、“an”、および“the”は、内容が明らかにそれ以外のことを記載していない限り、複数の言及を含んでいる。例えば、“細胞”という用語は、その混合物を含めて、複数種の細胞を含む。
【0019】
“抗原”という用語は当業界においてよく理解されており、免疫原性である物質、即ち免疫原と抗原エピトープとを含む。抗原の使用が、本発明において使用上想定されており、そのため自己抗原(正常または病気関連)、感染性抗原(例えば、微生物抗原、ウイルス抗原など)、または一部他の外来抗原(例えば、食品成分、花粉など)に限定されないが、それらを含むことは明らかであろう。“抗原”または代わりに“免疫原”という用語は2種以上の免疫原の集合にも該当し、そのため複数の免疫原に対する免疫応答が同時に調節されることがある。更に、該用語は免疫原または抗原の様々な異なる処方を含んでいる。好ましい態様において、抗原は癌細胞または病原体からのものである。好ましくは、癌細胞は腎臓癌細胞、多発性骨髄腫細胞、または黒色腫細胞である。好ましい病原体は、HIVおよびHCVである。好ましい態様において、抗原は癌細胞または病原体から単離または誘導されたRNAの形態により抗原提示細胞(APC)へ導入される。“から誘導される”とは、非関連または関連配列への融合を含めて、天然配列の組み換え変異体を含むが、それに限定されない。細胞(例えば、癌細胞または病原体細胞)から抽出されたRNAのRT‐PCRとインビトロ転写に関する方法は、同時係属の米国仮特許出願第60/525,076号およびPCT/US05/053271号において開示されており、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0020】
“癌”とは比較的自律的な成長を示す細胞の異常な存在を意味し、そのため癌細胞は細胞増殖コントロールの有意な喪失により特徴付けられる異常成長表現型を示す。癌性細胞は良性でもまたは悪性でもよい。様々な態様において、癌は膀胱、血液、脳、乳房、結腸、消化管、肺、卵巣、膵臓、前立腺、または皮膚の細胞に罹る。ここで用いられている癌細胞の定義には、一次癌細胞のみならず、癌細胞由来の細胞も含む。これには転移癌細胞と、インビトロ培養物および癌細胞由来の細胞系とを含む。癌には固形腫瘍、液体腫瘍、血液悪性疾患、腎臓細胞癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、神経芽腫、神経膠芽腫、網膜芽腫、白血病、骨髄腫、リンパ腫、肝癌、腺腫、肉腫、癌腫、芽細胞腫などがあるが、それらに限定されない。
【0021】
ここで用いられる“含んでなる”という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含み、その他を除外しないことを意味する。“から本質的になる”とは、組成物および方法を定義するために用いられている場合、組合せに必須の重要な他の要素を除外する意味である。そのため、ここで定義されている要素から本質的になる組成物は、単離および精製法からの微量汚染物および薬学上許容される担体、例えばリン酸緩衝液、保存剤などを除外しない。“からなる”とは、本発明の組成物を投与するための他成分および実質的方法の工程の微量以上の要素を除外する意味である。これら移行句(transition terms)の各々により定義される態様は本発明の範囲内に属する。
【0022】
ここで用いられる“サイトカイン”という用語は、例えば成長または増殖を含めて、細胞において様々な効果を発揮する多数因子のうちいずれか一つに関する。本発明の実施に際して単独または組合せにより用いられるサイトカインの非限定的な例として、インターロイキン‐2(IL‐2)、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン‐3(IL‐3)、インターロイキン‐4(IL‐4)、インターロイキン‐6(IL‐6)、インターロイキン‐11(IL‐11)、インターロイキン‐12(IL‐12)、インターロイキン‐13(IL‐13)、インターロイキン‐15(IL‐15)、顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)、インターロイキン‐1β(IL‐1β)、インターフェロン‐γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子‐α(TNFα)、プロスタグランジンE(PGE)、MIP‐11、白血病増殖阻止因子(LIF)、c‐kitリガンド、トロンボポエチン(TPO)、およびflt3リガンドがある。サイトカインは、例えばGenzyme(Framingham,MA)、Genentech(South San Francisco,CA)、Amgen(Thousand Oaks,CA)、R&D Systems(Minneapolis,MN)、およびImmunex(Seattle,WA)のようないくつかの販売者から市販されている。常に断言できるわけではないが、野生型または精製サイトカイン(例えば、その組み換え産生または突然変異タンパク質)として類似の生物活性を有する分子は、本発明の精神および範囲内において用いられるはずである。
【0023】
“樹状細胞(DC)”という用語は、様々なリンパ系および非リンパ系組織において見られる形態学的に類似した細胞型の多様な群に関する(Steinman(1991)Ann.Rev.Immunol.,9:271-296)。樹状細胞は生物において最も強力で好ましいAPCを構成している。樹状細胞は単球から分化でき、単球とは異なる表現型を有する。例えば、具体的な分化マーカー、CD14抗原は樹状細胞において見られないが、単球により保持されている。成熟DCはT細胞活性化および増殖に必要な全てのシグナルを有する。しかも、成熟樹状細胞は食細胞でなく、一方単球および未成熟樹状細胞は強い食作用を有する細胞である。未成熟DCは飲食作用、食作用、マクロ飲作用、または吸着飲作用およびレセプター媒介抗原取込みにより抗原を捕捉でき、表現型がCD80またはCD80low、CD83またはCD83low、CD86lowであり、高細胞内濃度のMHCクラスII分子を有している。成熟DCはベールで覆われた形態、低い飲食作用能力を有し、未成熟DCと比較して表現型がCD80high、CD83high、CD86highである。好ましくは、成熟DCはIL‐12 p70ポリペプチドまたはタンパク質を分泌し、および/または有意に低レベル(DC百万個当たり0〜500pg/mL)のIL‐10を分泌する。IL‐10およびIL‐12レベルは、未成熟DCからDC成熟の誘導後36時間以内に採取された培養上清のELISAにより調べられる。Wierda W.G.et al.(2000)Blood,96:2917。Ajdary S.et al.(2000)Infection and Immunity,68:1760。概説としてBanchereau and Steinman(1998)Nature,392:245を参照。
【0024】
“有効量”は有益なまたは望ましい結果を得るために十分な量である。有効量が1回以上の投与、塗布、または服用により投与される。
【0025】
ここで用いられている“発現”とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され、および/またはmRNAがペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳される工程に関する。ポリヌクレオチドが適切な真核細胞宿主のゲノムDNAから導かれたものであれば、発現にはmRNAのスプライシングを含むことがある。発現に必要な調節要素には、RNAポリメラーゼとリボソーム結合用の転写開始配列とを結合させるプロモーター配列がある。例えば、細菌発現ベクターまたはカセットは、プロモーター(例えばlacプロモーター)、転写開始用にはシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列および開始コドンAUGを含む(Sambrook et al.(1989)前掲)。同様に、真核細胞発現ベクターまたはカセットは、典型的にはRNAポリメラーゼII用の異種または同種プロモーター、Kozak配列、開始コドンAUG、リボソーム解離用の終止コドンおよび下流ポリアデニル化シグナルを含む。このようなベクターは商業的に得られるか、または当業界において知られている方法により記載された配列により組み立てられる。
【0026】
“遺伝子修飾された”という用語は、外来遺伝子または核酸配列を含有および/または発現させ、次いで細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を変えることを意味している。換言すると、それは細胞の内在ヌクレオチドに対する何らかの付加、欠失、または分断に関する。
【0027】
“単離された”という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片が、自然において通常結合している諸成分、細胞、およびその他から分離されることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドに関すると、単離されたポリヌクレオチドとは、それが染色体において通常結合している5′および3′配列から分離されたものをいう。当業者に明らかなように、非天然ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、それをその天然対応物から識別する上で“単離”を必要としない。加えて、“濃縮された”、“分離された”、または“希釈された”ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、容積当たり分子の濃度または数がその天然対応物の場合より“濃縮されている”またはその場合ほど“分離されて”いないという点において、その天然対応物から識別しうる。その一次配列で、または例えばそのグリコシル化パターンにより天然対応物とは異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、その単離形により存在する必要がなく、なぜならそれはその一次配列でまたは他の特性、例えばそのグリコシル化パターンによりその天然対応物から識別しうるからである。ここで開示されている発明の各々については断言されないが、以下においておよび適切な条件下において開示されている組成物の各々に関する上記態様の全てが本発明により提供されている、と理解すべきである。そのため、非天然ポリヌクレオチドは単離天然ポリヌクレオチドとは別の態様として提供される。細菌細胞において産生されるタンパク質は、自然に産生されている真核細胞から単離された天然タンパク質とは別の態様として提供される。単離哺乳動物細胞は、それが体内において通常みられる箇所から分離されるか、または体内から取り出される。例えば、白血球搬出法により採取された白血球は“単離された”ものであり、インビトロにおいて単球から分化された樹状細胞も“単離された”ものである。
【0028】
“主要組織適合遺伝子複合体”または“MHC”という用語は、T細胞への抗原提示および急激な移植片拒絶に必要な細胞表面分子をコードする遺伝子の複合体に関する。ヒトにおいては、MHCは“ヒト白血球抗原”または“HLA”複合体としても知られている。MHCによりコードされたタンパク質は“MHC分子”として知られ、クラスIおよびクラスII MHC分子に分類される。クラスI MHC分子は、β2‐ミクログロブリンと非共有結合されたMHCでコードされるα鎖とから構成されている膜ヘテロダイマータンパク質を含有している。クラスI MHC分子はほぼ全ての有核細胞において発現され、CD8T細胞への抗原提示により機能することが示されていた。クラスI分子には、ヒトの場合においてHLA‐A、B、およびCがある。クラスII MHC分子も、非共有結合αおよびβ鎖からなる膜ヘテロダイマータンパク質を含有している。クラスII MHC分子はCD4T細胞において機能することが知られ、ヒトの場合においてHLA‐DP、DQ、およびDRがある。
【0029】
単球とは、GM‐CSFおよびIL‐4に応答して未成熟樹状細胞へ分化しうるCD14末梢血単核細胞を意味する。
【0030】
ここで用いられている“病原体”とは、病気を引き起こす生物またはウイルス、更にはその弱毒化誘導体に関する。
【0031】
“医薬組成物”とは、インビトロ、インビボ、またはエクスビボにおいて診断または治療用に適した組成物にさせる不活性または活性な担体と活性剤(例えば抗原負荷DC)との組合せを含めた意味である。
【0032】
ここで用いられている“薬学上許容される担体”という用語は、あらゆる標準の薬学上の担体、例えば熱不活化血清+10%DMSO+5%デキストロース、リン酸緩衝液、水、およびエマルジョン、例えば油/水または水/油エマルジョン、および様々な種類の湿潤剤を包含している。該組成物はアジュバント、安定剤、および保存剤も含有しうる。担体、安定剤、およびアジュバントの例に関しては、Remington’s Pharm.Sci.,18th Ed.(Mack Publ.Co.,Easton(1990))参照。
【0033】
“ポリヌクレオチド”および“核酸分子”という用語は、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態に言及するために、互換的に用いられる。ポリヌクレオチドにはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらの類似体を含む。ヌクレオチドは何らかの三次元構造を有してもよく、既知または未知の何らかの機能を発揮しうる。“ポリヌクレオチド”という用語には、例えば、一本鎖、二本鎖、および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、何らかの配列の単離DNA、何らかの配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーを含んでいる。自然核酸分子に加えて、本発明の核酸分子には修飾核酸分子も含む。
【0034】
“ペプチド”という用語は、2以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣薬(peptidomimetics)の化合物に関する最広義の意味により用いられる。サブユニットはペプチド結合により繋がれている。他の態様において、サブユニットは他の結合、例えばエステル、エーテルなどにより繋がれてもよい。ここで用いられている“アミノ酸”という用語は、グリシンとDおよびL双方の光学異性体、アミノ酸類似体およびペプチド模倣薬を含めた、天然および/または非天然または合成アミノ酸に関する。アミノ酸3個以上のペプチドは、そのペプチド鎖が短ければ、オリゴペプチドと通称される。ペプチド鎖が長ければ、ペプチドはポリペプチドまたはタンパク質と通称される。
【0035】
ここで用いられている“対象”とは、ヒトおよび他の霊長類、げっ歯類、イヌ、およびネコに限定されないが、それらを含めた哺乳動物に関する。好ましくは、対象はヒトである。
【0036】
本発明者らは、患者から単球の採取後1℃〜34℃において約6〜96時間貯蔵された単球から未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞、および抗原負荷樹状細胞が作製されうることを見出した。かなりの時間にわたり環境温度において貯蔵された単球からよりもむしろ、新鮮な単離単球から樹状細胞を作製する方が一般的に難しいと考えられていたことから、これらの結果は意外である。更に、本発明以前に行われた臨床試験において用いられた単球由来DCワクチンは、患者から採取後6時間以内において単球を培養するか、または採取後直ちにPBMCを凍結した後、融解および単球の培養のためにPBMCを貯蔵することにより製造された。
【0037】
本発明者らは、1℃〜34℃において約6〜96時間貯蔵された単球から樹状細胞および樹状細胞ワクチンを作製することが可能であることを見出したのみならず、更に意外にもこの方法により作製された樹状細胞が新鮮単球から作製された樹状細胞より表現型において優れていることも見出した。これらの方法により作製された樹状細胞ワクチンの製造方法および特性は、ワクチン効力、広域にわたる商品化の成功、および投与しやすさと特に関係している。第一に、本発明の方法を用いて作製された成熟樹状細胞は、従来法により作製されたDCと比較した場合、高レベルのCD80、CD83、およびCD86共刺激分子と高レベルのMHCクラスIおよびMHCクラスII分子とを発現し、それらの全てがDC成熟および効力を示している。加えて、本発明の成熟DCは抗原特異的に記憶T細胞からIL‐2産生を誘導させることができる。
【0038】
第二に、患者PBMCが採取される各現場付近において樹状細胞製造能を確立することは商業的に実現不可能であった。したがって、自家樹状細胞ワクチンの広域商品化の成功は、未成熟および成熟樹状細胞への分化と、ワクチンの製造用の集中製造施設へPBMCまたはPBMCから単離された単球を運搬しうる能力とに依存するのである。しかしながら、本発明以前には、PBMCは患者から取出後直ちに凍結または培養されねばならない、と広く考えられていた。本発明の方法は、一晩またはそれ以上かけて運搬されたPBMCまたはPBMCから単離された単球の処理を行うことにより、この問題を解決した。
【0039】
第三に、抗原負荷樹状細胞は典型的にはDMSO中において凍結され、貯蔵された後、融解され、患者への投与前にDMSOなしの薬学上許容される担体により洗浄および再懸濁される。洗浄工程は従来のDCワクチン臨床試験に含まれていたが、それはDMSOが未凍結または融解DCにおいて有害な作用を有すると考えられていたからである。意外にも、本発明者らはDMSOが樹状細胞において目立つほどの有害作用を有しないことを見出した。そのため、投与前に融解DCワクチンを洗浄および再懸濁する必要性はない。この工程を省略することにより、投与しやすさを増し、更なる操作によるDCの汚染と副作用双方の危険とを減らすことができる。
【0040】
したがって、一つの態様において、本発明は:
a.対象から取り出されてから約6〜96時間にわたり1℃〜34℃の温度においてインキュベートされた単球を用意し、および
b.インキュベートされた単球から樹状細胞への分化を誘導する
ことを含んでなる、単球から樹状細胞を作製するための方法を提供する。
【0041】
ここで用いられている“単球”とは、樹状細胞へ分化する能力を有したCD14白血球に関する。単球はいかなる哺乳動物からのものでもよいが、好ましくはヒト単球である。単球は、血液、血液フラクション(例えば、白血球(WBC)、バフィーコート、末梢血単核細胞(PBMC)など)に限定されないが、それらのような組成物と、単球について更に濃縮された組成物で供給およびインキュベートしうる。好ましい態様において、単球は、例えば白血球搬出産物として、他の末梢血単核細胞(PBMC)と一緒に用意される。他の態様において、単球はPBMCから濃縮されるか、または末梢血から直接単離される。単球または単球を含有したPBMCを単離する方法は当業者に知られている。好ましい態様において、単球は白血球搬出法により他のPBMCと一緒に採取される。白血球搬出の方法は当業界において知られている。本発明の好ましい態様において、単球を含んでなるPBMCは病院、診療所、医院などにおいて白血球搬出法により対象から採取される。白血球搬出法は白血球が対象の血液から取り出される操作法であり、その残りは後に対象へ逆注入される。白血球搬出産物は典型的にはPBMCについて濃縮された血液フラクションであり、低レベルの混入赤血球、顆粒球、および血小板を含有している。白血球搬出を行うための方法および装置は当業界において周知である。例えば、白血球搬出法の詳細な情報に関してはgambrobct.com/Products & Services/参照。白血球搬出装置の例として、GAMBRO BCT製造のCOBESpectraおよびBaxter Fenwal製造のCS3000 Plus Blood Cell Separatorがある。
【0042】
単球は1℃〜34℃インキュベート時間中またはその後に血液または血液フラクション(例えば、PBMC)から濃縮しうる。ここで用いられている“単球を濃縮する”とは、本方法の開始時に存在する他の細胞型に対して単球の割合を増加させる方法を意味する。PBMC、血液、または他の血液フラクションから単球を濃縮させる方法は当業者に知られており、水簸、FACS、パンニング、磁気選別、低密度フィコール勾配遠心などがあるが、それらに限定されない。好ましくは、単球は水簸によりによりPBMCから濃縮される。一つの代替態様において、細胞培養時にプラスチックへ付着する単球の選択により、6〜96時間インキュベート時間経過後にPBMCから単球が濃縮される。他の態様において、単球は免疫磁気選択により濃縮される。免疫磁気選択は単球と結合する正の選択でも、または単球ではない細胞(例えば、T細胞、B細胞など)と結合する負の選択でもよい。
【0043】
対象から単離されると、単球(例えば、精製単球、濃縮単球、単球を含んでなるPBMCなど)は、対象から単離されたときから約6〜96時間にわたり1℃〜34℃の温度においてインキュベートされる。ここで用いられている、単球または単球を含有したPBMCが対象から単離されたときとは、対象から単球を取り出す工程の完了時に関する。例えば、PBMCが4時間の白血球搬出操作により患者から単離される場合、単離のときとは白血球搬出法によるPBMCの採取が終了したときである。
【0044】
好ましくは、単球は3℃〜34℃、4℃〜32℃、または5℃〜30℃の温度、更に好ましくは6℃〜28℃の温度、更に一層好ましくは6℃〜27℃、8℃〜26℃、または約14℃〜24℃の温度において6〜96時間インキュベートされる。好ましい下限温度範囲は6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、および14℃である。好ましい上限温度範囲は20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、および34℃である。好ましくは、インキュベート時間は8〜72時間、更に好ましくは10〜48時間、更に一層好ましくは12〜24時間、最も好ましくは15〜22時間である。インキュベート時間の他の好ましい範囲は8〜48時間、10〜30時間、26〜72時間、および48〜80時間である。インキュベート時間の好ましい下限は、6、7、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、36、および48時間から選択される。インキュベート時間の好ましい上限は、24、26、28、30、36、48、60、72、84、および96時間から選択される。
【0045】
いかなる形態の単球(例えば、血液、血液フラクション、PBMC、精製単球中の単球など)も1℃〜34℃インキュベート時間中に臨床現場から樹状細胞製造現場へ運搬してよい。好ましくは、単球は温度制御容器により運搬される。インキュベート時間中に1℃〜34℃において単球の温度を維持する方法は当業者に知られている。例えば、単球は室温または1℃〜34℃においてインキュベーター中においてインキュベートされる。好ましくは、単球はインキュベート時間中に多少の運動(時々または継続的)に付される。運動は運搬と関連した運動でよい。他の態様において、細胞はインキュベート中に穏やかに振動または回転される。理論に拘束されないが、運動は沈降時の圧縮に伴う細胞損傷を防げると考えられる。
【0046】
1℃〜34℃において6〜96時間のインキュベート時間中、単球は培養されることなしにインキュベートされる。“培養されることなしに”とは、6〜96時間のインキュベート時間中に、単球が約36〜38℃の温度において哺乳動物細胞培地(生理学的に適切な濃度(例えば、約1×)の培地、例えばRPMI、DMEM、X‐VIVO 15、AIM‐V、StemSpan H2000などを含むが、それらに限定されない)において培養されないことを意味する。むしろ、本発明の方法により処理される単球は、好ましくは血液または血液フラクション(例えば、血清、血漿、白血球搬出産物(例えば、PBMC)、バフィーコートなど)塩水または生物学的緩衝液、例えばリン酸緩衝液(PBS)中、1℃〜34℃においてインキュベートされる。最も好ましくは、単球を含有した白血球搬出産物は白血球搬出採取容器(例えば、血液採取袋)中1℃〜34℃においてインキュベートされる。前記白血球搬出産物はインキュベート時間中またはその始めに他の容器へ移してもよいが、汚染の可能性を増す不要な移し換えを避けることが好ましい。
【0047】
1℃〜34℃において6〜96時間のインキュベート中またはその後に、単球は分化工程前に濃縮させうる。操作が1℃〜34℃において行われる限り、操作はインキュベート時間中に単球またはPBMCなどで行える。特に、PBMCは更に精製してもよく、または単球はこのインキュベート時間中にPBMCから濃縮させてもよい。このような操作には、遠心、水簸、タンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration)、フィコール密度勾配、希釈フィコール密度勾配遠心、希釈パーコール密度勾配遠心、抗体パンニング、磁気細胞分離、正または負の免疫磁気選択などがあるが、それらに限定されない。一つの態様において、容器(好ましくは、プラスチック容器)中培養によるインキュベート時間および付着単球の選択後に、単球がPBMCから濃縮される。
【0048】
1℃〜34℃において約6〜96時間にわたるインキュベートおよび単球の更なる濃縮の任意工程後に、単球は樹状細胞へ分化するように誘導される。典型的には、単球が未成熟樹状細胞へ分化され、次いで未成熟樹状細胞が成熟樹状細胞へ成熟されられる。単球を樹状細胞へ分化させて、そして樹状細胞を成熟させる様々な方法が当業者に知られている。
【0049】
一つの態様において、単球は単球から未成熟または成熟樹状細胞への分化を誘導する組成物を含んでなる培地において培養される。単球から未成熟樹状細胞への分化を誘導する組成物は当業者に知られている。このような組成物にはGM‐CSF+IL‐4、GM‐CSF+IL‐13、GM‐CSF+IL‐15、IFNα、およびGM‐CSF+TNFαがあるが、それらに限定されない。好ましくは、分化を誘導する組成物はGM‐CSF+IL‐4である。GM‐CSF+IL‐4の濃度は各サイトカインについて約400〜2000U/mLである。好ましくは、GM‐CSF+IL‐4の濃度は各サイトカインについて500〜1000U/mLである。一つの態様において、単球は約4〜7日間、最も好ましくは約5〜6日間にわたりGM‐CSF+IL‐4と接触され、その際に単球が未成熟樹状細胞へ分化する。
【0050】
単球から未成熟樹状細胞への分化後、未成熟樹状細胞は成熟樹状細胞へ成熟させる。樹状細胞を成熟させる方法は当業者に知られている。一つの態様において、未成熟樹状細胞はGM‐CSF、IL‐4、および成熟用カクテル(PGE、TNFα、IL‐6、およびIL‐1β)を含んでなる培地との接触により成熟される。例えばJonuliet et al.(1997)Eur.J.Immunol.,27:3135-3142参照、この内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0051】
他の成熟法において、未成熟樹状細胞は、IFN‐γを含んでなる第一シグナル、次いでCD40Lを含んでなる第二シグナルによりシグナリングされる。例えば、一つの態様において、未成熟樹状細胞は、好ましくはGM‐CSF+IL‐4の存在下において、PGE、IFN‐γ、およびCD40Lと接触される。好ましい態様において、CD40Lとの接触は樹状細胞内において組み換えCD40L mRNAの翻訳時に行われる。好ましくは、樹状細胞は、CD40Lまたはその活性断片をコードするmRNAにより一時的にトランスフェクトされる。
【0052】
最も好ましくは、成熟樹状細胞を作製するために、好ましくはGM‐CSF+IL‐4の存在下において、未成熟樹状細胞がPGE、TNFα、およびIFNγと接触される。樹状細胞の成熟度は、CD40LをコードするRNAによるトランスフェクション、好ましくは一時的なトランスフェクションにより、更に増加させうる。好ましくは、CD40LをコードするRNAおよび/または対象の1種以上の抗原またはエピトープをコードするRNAにより樹状細胞がトランスフェクトされる。上記の成熟法は米国出願第11/246,387号において記載され、この内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0053】
本発明の好ましい態様において、樹状細胞は1種以上の抗原により負荷される。抗原負荷樹状細胞はワクチンとしておよびT細胞のインビトロ刺激に有用である。抗原は未成熟または成熟樹状細胞へ負荷される。抗原が未成熟樹状細胞へ負荷されるならば、未成熟樹状細胞は、負荷自体の工程により、あるいはここで記載された他の成熟法または当業者に公知の代替成熟法により成熟させられる。抗原は抗原自体(例えば、タンパク質、ペプチド、エピトープ、細胞溶解物、ウイルス粒子など)として負荷しても、または抗原をコードする核酸として負荷してもよい。好ましくは、抗原は該抗原をコードする核酸として負荷される。更に好ましくは、核酸はRNA、最も好ましくはmRNAである。好ましい態様では、1種以上の抗原をコードするmRNAがCD40LをコードするmRNAとコトランスフェクトされる。好ましくは、抗原は対象と自家であり、対象へ投与用の抗原負荷自家DCワクチンを製造するために用いられる。樹状細胞にペプチドおよびタンパク質抗原、細胞、細胞または組織溶解物、ウイルスまたはウイルス粒子、核酸などを負荷させる方法は当業者に知られている。
【0054】
好ましい態様において、抗原は核酸、好ましくはmRNAによる樹状細胞(成熟または未成熟)のエレクトロポレーションにより負荷される。好ましくは、樹状細胞は約0.25〜4μg RNA/10樹状細胞、最も好ましくは約2μg RNA/10樹状細胞によりトランスフェクトされる。一つの態様では、1μg 腫瘍RNA/百万個DCがトランスフェクション当たりで用いられる。他の態様では、病原体(例えばHIV)からの4種の別々の抗原をコードするRNA4種の各々について0.25〜1.0μgが10樹状細胞当たりで用いられる。
【0055】
抗原はいかなる起源でもよい。しかしながら、好ましい態様において、抗原は対象と自家である。対象と自家とは、抗原が対象から得られたまたは誘導されたことを意味する。非限定的な例として、抗原は対象から得られた癌細胞または腫瘍組織からのものである。癌抗原は、癌細胞、癌細胞または組織溶解物、癌細胞または組織からの抽出物、癌細胞または組織の精製またはクローン化成分、全RNAまたは全mRNA、あるいはこのような細胞または組織からの選択RNAまたはmRNAとして、抽出物中に存在しようが、精製、増幅、インビトロ翻訳などされていようが、樹状細胞中へ負荷させうる。一方、抗原は対象に存在する病原体または病原体感染細胞から得てもまたは誘導してもよい。
【0056】
本発明の方法は、癌および病原体感染症の治療または予防に特に有用である。好ましい態様において、癌は腎臓細胞癌腫、黒色腫、乳癌、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、肺癌、結腸癌、膵臓癌、胃癌、または前立腺癌である。
【0057】
病原体という用語は、病因に関与するウイルスまたは生物と、更にその弱毒化誘導体に関する。このような病原体には、細菌、原生動物、真菌、およびウイルス病原体、例えばHelicobacter、例えばHelicobacter pylori、Salmonella、Shigella、Enterobacter、Campylobacter、様々なミコバクテリア、例えばMycobacterium leprae、Bacillus anthracis、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Brucella種、Leptospira interrogans、Staphylococcus(例えばS.aureus)、Streptococcus、Clostridum、Candida albicans、Plasmodium、Leishmania、Trypanosoma、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、コロナウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、およびEpstein-Barrウイルス(EBV))、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス、および風疹ウイルスがあるが、それらに限定されない。好ましくは、病原体はウイルス病原体、更に好ましくはレトロウイルス病原体、最も好ましくはHIVまたはHCVである。
【0058】
樹状細胞は、成熟または未成熟でも、抗原負荷されてもまたはそうでなくてもよく、凍結保護剤を含んでなる組成物中において凍結させうる。多くの凍結保護剤が当業者に知られている。凍結保護剤の例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エタノール、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、i‐エリトリトール、D‐リビトール、D‐マンニトール、D‐ソルビトール、D‐ラクトース、i‐イノシトール、塩化コリン、アミノ酸、アルブミン(好ましくは、ヒト血清アルブミン)、ポリビニルピロリドン、デキストラン、スクロース、フィコール、無機塩、およびヒドロキシエチルデンプンがあるが、それらに限定されない。好ましい態様において、凍結保護剤はDMSOである。好ましくは、DMSOの濃度は2〜20%、更に好ましくは5〜15%、最も好ましくは約10%である。しかも、凍結培地は、好ましくは2〜30%、更に好ましくは5〜10%、最も好ましくは5%デキストロールの濃度において、グルコース、デキストロース、スクロースなどのような炭水化物から誘導された1種以上のポリオール化合物を含有してよい。樹状細胞を凍結させる方法は当業者に知られている。例えば米国特許出願第20040253574号参照、この内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。好ましくは、凍結保護剤はジメチルスルホキシド(DMSO)である。好ましい態様において、DMSOの濃度は5%〜20%である。最も好ましくは、組成物中のDMSO濃度は約10%である。
【0059】
意外にも、本発明の方法により作製された樹状細胞および樹状細胞ワクチンは、5%〜20%DMSOの存在下において凍結および融解後に、少なくとも24時間融解後でもインビトロにおいて生存しうる。本発明の抗原負荷樹状細胞はDMSOに耐えうることから、樹状細胞ワクチンを投与する前に細胞を洗浄する必要がない。したがって、本発明の融解樹状細胞ワクチンは融解後、いつでも対象へ投与できる。洗浄工程の省略により、汚染の危険を減らし、樹状細胞に障害を与えうる更なる操作を避けられる。そのため、一つの態様において、本発明は、少なくとも2%〜20%のDMSOを含んでなる凍結樹状細胞ワクチンを融解し、投与前に樹状細胞対DMSOの比率を変えることなく対象へワクチンを投与することからなる、抗原負荷樹状細胞ワクチンの投与法を提供する。好ましくは、ワクチン中DMSOの濃度は約5〜20%、更に好ましくは10%である。
【0060】
他の態様において、本発明は癌または病原体感染症の治療または予防用の凍結薬剤の製造に際する抗原負荷樹状細胞の使用を提供し、ここで該薬剤は少なくとも2%のDMSOを含んでなり、融解していつでも投与しうるものである。
【0061】
本発明の方法によれば、高い機能性と高レベルの成熟マーカーとを有した新規樹状細胞の作製を行える。例えば、一つの態様において、本発明は、成熟樹状細胞が新鮮単球から作製された樹状細胞と比較して高レベルでCD80、CD83、CD86、MHCクラスI分子、またはMHCクラスII分子のうち1種以上を有している、成熟単球由来樹状細胞を提供する。
【0062】
更に他の態様において、本発明は、樹状細胞が記憶T細胞からの抗原特異的IL‐2産生を導ける、成熟単球由来樹状細胞を提供する。IL‐2を測定する方法は当業界において知られている。細胞表面マーカーと、記憶T細胞に特徴的であってそれらをT細胞の他の種類と区別する他分子の発現とは、Immunobiology,6th Edition,Eds.Janeway et al.,Garland Science Publishing,New York,,NY,2005の図10.35において開示されている、その内容は引用するすることにより本明細書の開示の一部とされる。例えば、記憶T細胞は高レベルのCD44、CD45RO、CD45RA、Bcl‐2、IFNγ、CD127、およびLy6C、中レベルのCD122およびCXCR4、低レベルのFasLを発現し、CD69およびCD25は陰性である。
【0063】
ここで開示されているように、定常状態RNAレベルのマイクロアレー分析では、新鮮単球から作製された樹状細胞と比較して、1日経過単球から作製された樹状細胞間において遺伝子発現の変化を示す。そのため、一つの態様において、本発明は細胞中ALOX15 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である成熟単球由来樹状細胞を提供する。好ましくは、比率は0.2〜0.7、更に好ましくは0.4〜0.5、最も好ましくは約0.45である。
【0064】
他の態様において、本発明は細胞中CD52 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDHの定常状態比が1.0より大きい成熟単球由来樹状細胞を提供する。好ましくは比率は1.2〜5.0、更に好ましくは1.5〜2.2または1.8〜1.9であり、最も好ましくは比率は1.86である。
【0065】
更に他の態様において、本発明は細胞中TLR1 RNA、TLR2 RNA、IL‐1β RNAまたはCD69 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である成熟単球由来樹状細胞を提供する。好ましくは、比率は0.2〜0.9、更に好ましくは0.5〜0.8である。
【0066】
ヒトALOX15 mRNA(SEQ ID NO:1)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:2〜12のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトIL‐1β mRNA(SEQ ID NO:13)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:14〜24のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトTLR1 mRNA(SEQ ID NO:25)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:26〜36のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトTLR2 mRNA(SEQ ID NO:37)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:38〜48のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトCD69 mRNA(SEQ ID NO:49)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:50〜60のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトCD52 mRNA(SEQ ID NO:61)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:62〜77のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトGAPDH mRNA(SEQ ID NO:78)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:79〜98のAffymetrixプローブを用いて検出できる。ヒトβ‐アクチン mRNA(SEQ ID NO:99)およびその対立遺伝子変異体は、SEQ ID NO:100〜119のAffymetrixプローブを用いて検出できる。
【0067】
RNA定常状態発現レベルはマイクロアレー、好ましくはAffymetrix Human Genome U133 Plus 2.0 Arrayを用いて検出できる。一方、ハイブリッド形成は前段落において掲載された遺伝子特異的プローブを用いて行える。好ましくは、樹状細胞から抽出されたRNA試料が製造業者の説明(Genechip Expression Analysis Technical Manual,2004)に従い、Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)に適用される。簡単に言えば、Genechip Poly-A RNA Control Kit(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)においてスパイクされた全RNA3μgが、SuperScript II逆転写酵素を用いて、第一鎖cDNAへ変換される。第二鎖cDNA合成に次いで、各転写物の直線的増幅とビオチニル化CTPおよびUTPの取込みとのためにインビトロ転写が行われる。cRNA産物は約100ヌクレオチドに断片化され、16時間かけてマイクロアレーとハイブリッド形成される。次いで、マイクロアレーは低(6×SSPE)および高(100mM MES、0.1M NaCl)ストリンジェンシーにおいて洗浄され、ストレプトアビジン‐フィコエリトリンにより染色される。
【0068】
ビオチニル化抗ストレプトアビジンと追加量のストレプトアビジン‐フィコエリトリン染料を加えることにより、蛍光が増幅される。570nmにおける励起後に3μm分解能により蛍光シグナルを集めるために、GeneChip Scanner 3000(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)が用いられる。2連続走査からの平均シグナルが対象の各マイクロアレー特性について計算される。走査画像がGenechip Operating Software v1.1(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)により分析された。好ましくは、Poly-A RNA Control Kit(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)に含有されたコントロールRNA4種で高い直線的相関(R>0.95)があれば、ラベリング工程の成功のためのコントロールとして確認される。
【0069】
全遺伝子または対象の遺伝子(例えば、ALOX15、IL‐1β、TLR1、TLR2、CD69、および/またはCD52と、β‐アクチンおよび/またはGAPDH)に関するプロファイルデータがコンピュータープログラムGeneSpringへ入力され、標準化される。Affymetrixアレーに関してGeneSpringにより示された標準法に従い、標準化工程において三工程が行われる。
1)データ変換(0.01未満の全値が0.01に設定された)
2)百分順位の50番目に標準化
3)中央値に標準化
【0070】
次いで、対象の定常状態mRNA(ALOX15、IL‐1β、TLR1、TLR2、CD69、またはCD52 mRNA)対定常状態GAPDHまたはβ‐アクチン mRNAの比率が、対象のmRNAの標準化発現をGAPDHまたはβ‐アクチン mRNAの標準化発現によって割ることにより求められる。
【0071】
本発明の抗原負荷樹状細胞は、病気の治療または予防用のワクチンまたは療法に用いうるT細胞の活性化に有用である。例えば、抗原負荷樹状細胞は抗原に対する免疫応答を導くために用いられる。将来の感染症または病気を予防するか、あるいは病原体感染症または癌に限定されないが、それら進行中の病気を治療する上で免疫系を活性化させるために、それらはワクチンとして用いられる。抗原負荷樹状細胞は、適切な担体、例えば生理緩衝液または他の注射液によりワクチンまたは医薬組成物としての使用向けに処方してもよい。ワクチンまたは医薬組成物は、免疫応答を導くために十分な治療有効量により投与される。
【0072】
好ましくは、樹状細胞は該樹状細胞が得られた対象と自家の抗原により負荷され、同対象へ投与される。抗原負荷樹状細胞、特にRNA負荷樹状細胞の作製および使用について記載する、例えば米国特許第5,853,719号(この内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる)参照。一方、樹状細胞はDC療法の所定レシピエントと自家でない抗原により負荷してもよい。このような抗原の例としては、既知の治療標的である抗原、例えばテロメラーゼ、前立腺特異性抗原、および他の腫瘍マーカー、または病原体からの既知抗原があるが、それらに限定されない。
【0073】
単球または単球を含んでなるPBMCを採取するための方法
対象から単球および単球を含んでなるPBMCを採取する様々な方法が当業者に知られている。例えば、PBMC採取のための白血球搬出法と単球の精製のための水簸に関する詳細な情報についてはgambrobct.com/Products & Services/参照。好ましい態様では、Gambro BCT COBE Spectra(Gambro BCT,Lakewood,CO)においてAutoPBSC(Automated Peripheral Blood Stem Cell)操作を用いて、白血球搬出産物および血漿が個々の無菌使い捨て1回使用細胞搬出袋に採取される。
【0074】
白血球搬出法に代わる一つの方法では、ヘパリン処理シリンジによる血液の採取、PBSによる希釈、Histopaque 1077(Sigma)上への積層、遠心および界面におけるPBMCの回収によりPBMCが得られる。Woodhead et al.(2000)International Immunol.,12:1051-1061参照。PBMCを採取、精製、または分別する更なる方法は当業者に知られている。
【0075】
白血球搬出産物または他の血液産物の採取後、そこで得られた単球は1〜34℃において6〜96時間インキュベートされる。一つの態様において、白血球搬出産物は袋に採取され、次いで1〜34℃、好ましくは約6〜28℃、最も好ましくは8〜26℃で維持された温度モニター運搬容器によりワクチン製造施設へ運搬される。温度変化の予防に役立つ、米国特許第4,102,807号において開示されたゲルパックが、運搬容器に入れられる。例えば、単球は図1において示されたThermoSafe U-tekゲルパックおよびゲルマットを詰め込んだ断熱容器(例えば、ThermoSafeモデルE65ポリウレタンフォーム断熱容器)により運搬される。例えば、図1において示されたパッキング操作では、−1℃の温度に調整された16oz U-tekゲルマットがE65容器の底へ平らに置かれる。2枚の16oz U-tekゲルマット(−1℃)が折り畳まれ、第一のゲルマットとE65容器の短壁との間に置かれる。次いで2枚の16oz U-tekゲル(+18℃に調整)が先のゲルマットの隣へ垂直に置かれる。ThermoSafe INF3000移植片容器がゲル間に置かれる。白血球搬出袋が密封内袋(STP711)に入れられる。内袋の温度を記録する装置が運搬中に温度を測定するために用いられる。一つのこのような装置がThermoSafe DataLoggerである。内袋が密封外袋(STP710)に入れられ、次いでその袋がINF3000容器へ入れられる。16oz U-tekゲル(+18℃)が閉じられたINF3000容器の上へ置かれ、クラフト紙、次いで4″フォームプラグにより覆われる。次いで、ボックスがテープにより密封されて、運搬の準備ができる。
【0076】
1〜34℃のインキュベート時間中またはその後、樹状細胞前駆体(単球)を含有した単核細胞フラクションを分離および濃縮するために、例えば50mL円錐管中、室温においてフィコール密度勾配遠心により、白血球搬出産物が更に処理または精製されうる。好ましくは、リン酸緩衝液(PBS)による複数回の洗浄工程の後、細胞濃度および細胞生存率が調べられる。
【0077】
単球の濃縮
単球の濃縮法は当業者に知られており、密度勾配遠心(例えば、希釈フィコール密度勾配遠心、希釈パーコール密度勾配遠心など)、水簸、プラスチックへの付着、タンジェンシャルフロー濾過、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫細胞分離技術(単球を選択するための、または非単球(例えば、白血球、マクロファージ、顆粒球など)を除去するための抗体パンニング、示差溶解、磁気細胞分離など)、プラスチックマイクロ担体ビーズによる被覆されたプラスチック培養袋中においての培養などがあるが、それらに限定されない。例えば、O’Doherty et al.(1993)J.Exp.Med.,178:1067-1076、Young et al.(1990)J.Exp.Med.,171:1315-1332、Freudenthal et al.(1990)PNAS,87:7698-7702、Bernhard et al.(1995)Cancer Res.,55:1099-1104、Caux et al.(1992)Nature,360:258-261、Read et al.(2003)“Evaluation of a Closed Automated System to Isolate Peripheral Blood Monocytes for Dendritic Cell(DC)Immunotherapy”,Ninth annual meeting of the ISCT、Mu et al.(2003)Scand.J.Immunol.,58:578-586、Maffei et al.(2000)Transfusion,40:1419-1420、mitenyibiotec.com、Meyer-Wentrup et al.(2003)J.Hematother.Stem Cell Res.,12:289-299、およびWO2004/000444号参照、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。例えば、正の選択(CD14+細胞)または負の選択(即ち、単球ではない細胞、例えばCD3+、CD19+、およびCD2+細胞の除去)により単球から濃縮させるために磁気細胞分離が用いられる。
【0078】
好ましくは、対象白血球搬出物から単球を単離する自動化方法、水簸により単球が白血球搬出産物から濃縮される。白血球搬出の方法は当業界において知られている。例えば、水簸はGambro BCT Elutra Cell Separation System(Gambro BCT,Lakewood,CO)により行われる。水簸緩衝液は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)の4L袋へ5%ヒトアルブミン血清(HSA)1000mLを加えることにより調製される。細胞は製造業者のプロトコールに従い水簸により分別される。好ましい態様では、製造業者(Gambro)プロトコールの改定版が水簸に用いられ、そこでは最終ローターオフ(rotor off)フラクションが5番目のフラクションではなく4番目のフラクションである。純度および回収率を確認するために示差分析によるCBCが単球フラクションにより行われる。一方、単球純度はCD14により免疫表現型決定することにより評価できる。次いで、濃縮された単球が樹状細胞へ分化され、または後の使用のために凍結および貯蔵される。一つの態様において、細胞は25mLまたは50mL凍結袋により凍結される。凍結袋の例としては、Cryocyte凍結袋、Origen凍結袋(Cryostore)、およびPall凍結袋がある。好ましくは、各凍結袋は約10〜12%DMSOおよび10〜20%熱不活化濾過血清、約107〜507mg/L最終濃度のCaClおよび約44〜241mg/L最終濃度のMgSO入りの培地(例えば、AIM V、X‐VIVO、RPMIなど)中に3×10までの細胞15mLを含有している。細胞は速度制御フリーザーを用いて凍結され、次いで極低温において貯蔵される。
【0079】
代わりの態様において、PBMCのインキュベートおよびフィコール密度勾配による精製後、PBMCはAIM‐V培地に再懸濁され、2.0×10細胞/フラスコによりT150cmフラスコに接種される。不十分な数のPBMCが得られる場合は、PBMCは凍結されて、2回目の白血球搬出物と混合される。37℃、5%CO、≧75%湿度において1〜2時間にわたる無菌組織培養プラスチックフラスコへの付着により、単球がPBMCの単核細胞群から選択される。非付着および半付着細胞は除去される。残留する非付着細胞、半付着細胞、および残留培地を除去するために、フラスコへPBSが加えられる。残留付着細胞は主として単球であり、濃縮単球の群を表わす。
【0080】
単球を樹状細胞へ分化させる方法
単球を樹状細胞へ分化させる様々な方法が当業者に知られている。米国特許第6,607,722号、WO97/29182号、Romani et al.(1994)J.Exp.Med.,180:83-93、Sallusto and Lanzavecchia(1994)J.Exp.Med.,179:1109以下、およびReddy et al.(1997)Blood,90:3640-3646参照、それらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。これら方法のほとんどは、樹状細胞への単球の分化を誘導するサイトカイン存在下において単球を培養している。単球を樹状細胞へ分化させる代替法の例には、物理的摂動(physical perturbation)(例えば、剪断)への暴露、細胞DNA成分と光付加体を形成しうる光活性化剤の存在下における照射、および/またはDNA結合剤での処理、次いで微生物、真菌、ウイルス、および悪性細胞のような病気エフェクター剤とのインキュベートがあるが、それらに限定されない。米国特許第6,607,722号参照、この内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0081】
一つの態様において、樹状細胞への単球の分化を誘導する組成物を含んでなる培地での培養により、単球が樹状細胞へ分化される。単球、未成熟、および成熟樹状細胞の培養に適した培地にはAIM‐V、X‐VIVO‐15、RPMI、DMEMなどがあるが、それらに限定されない。樹状細胞への単球の分化を誘導する組成物は当業界において知られており、GM‐CSF+IL‐4、GM‐CSF+IL‐13、およびIFNαがあるが、それらに限定されない。
【0082】
好ましい態様において、濃縮された単球はGM‐CSFおよびIL‐4の存在下において培養により樹状細胞へ分化される(例えば、WO97/29182号、Sallusto and Lanzavecchia(1994)J.Exp.Med.,179:1109、およびRomani et al.(1994)J.Exp.Med.,180:83-93参照)。簡単に言えば、濃縮された単球は、好ましくは1×10細胞/mLの濃度において、未成熟樹状細胞への単球の分化を行わせるために、37℃、5%CO、≧75%湿度により約4〜7日間、好ましくは6日間にわたり800U/mL GM‐CSFおよび500U/mL IL‐4の存在下において、AIM V培地、X‐VIVO 15培地または他の適切な培地で培養される。サイトカイン濃度は変えられる。例えば、GM‐CSFの好ましい濃度は500〜1500U/mL、更に好ましくは700〜1000U/mL、最も好ましくは800U/mLである。IL‐4の好ましい濃度は400〜1500U/mL、更に好ましくは450〜1000U/mL、最も好ましくは500U/mLである。IL‐13またはIL‐15もIL‐4の代わりにまたはそれに加えて用いられる。IFNαもGM‐CSF+IL‐4、IL‐13またはIL‐15の代わりに用いられる。単球が樹状細胞へ分化すると、それらは次第にCD14の発現を失い、未成熟状態における樹状細胞の表現型と一致するCD80発現を獲得する。
【0083】
未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への成熟のための方法
未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への成熟のための方法は当業者に知られており、抗原の取込みおよび/または成熟を誘導する組成物との接触があるが、それらに限定されない。未成熟樹状細胞の成熟を誘導する組成物には、単球馴化培地(conditioned medium)、PBMC馴化培地、固定Staphylococcus aureus(Pansorbin)、リポ多糖(LPS)、他の細菌細胞産物、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、リポテイコ酸など(ホスホリルコリン)、カルシウムイオノホア(ホルボールエステル(例えばPMA、熱ショックタンパク質、ヌクレオチド、例えばATPなど、リポペプチド、Toll様レセプター4、Toll様レセプター用の人工リガンド、二本鎖RNA、例えばポリI:Cなど、免疫刺激DNA配列、成熟用カクテル(TNF‐α、IL‐6、IL‐1β、およびPGE)、GM‐CSF、IL‐4および成熟用カクテル(TNFα、IL‐6、IL‐1β、およびPGE)、GM‐CSF、IL‐4、PGE、およびIFNγの連続シグナリングに次ぐCD40Lでのシグナリング、およびその他があるが、それらに限定されない。例えば、Cisco et al.(2004)J.Immunol.,172:7162-7168、Jonluit et al.(1997)Eur.J.Immunol.,27:3135-3142、米国特許出願第20040203143号、PCT出願第PCT/US2005/036304号、および米国特許出願第11/246,387号参照、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0084】
一つの態様において、TNFα、IL‐6、IL‐1β、およびPGEを含有した成熟用カクテルが未成熟樹状細胞の培養物へ加えられる。次いで、成熟樹状細胞を作製するために細胞が一晩(約12時間以上)培養される。
【0085】
一つの代替態様において、未成熟樹状細胞は、好ましくはエレクトロポレーションにより、CD40LをコードするmRNAにより、場合により1種以上の抗原をコードするmRNAによりトランスフェクトされ、次いで成熟樹状細胞を作製するためにIFNγ、場合によりPGEの存在下において一晩(約12時間以上)培養される。ヒトCD40L cDNAおよびタンパク質がSEQ ID NO:120およびSEQ ID NO:121で各々示されている。他のCD40L mRNAは当業者に知られている。
【0086】
好ましい態様においては、TNF‐α(10ng/mL)、IFN‐γ(1000U/mL)、およびPGE(1μg/mL)の最終濃度を得るために、AIM V培地中の成熟用処方物が未成熟DCへ直接加えられる。次いで、成熟樹状細胞を作製するために細胞が一晩(約12時間以上)培養される。成熟度は場合により、培地へ加えられるかまたは更に好ましくは細胞内において発現されるCD40リガンド(CD40L)への細胞の暴露により、更に増大される。CD40Lは構造的にまたは一過性に発現される。好ましくは、CD40LをコードするmRNAにより、場合により1種以上の対象抗原をコードするmRNAにより成熟樹状細胞がトランスフェクトされる。
【0087】
抗原
いかなる抗原も未成熟または成熟樹状細胞中へ負荷させうる。抗原は成熟DCにより処理および提示される。抗原の例としては、ウイルス粒子、細菌または他の病原体、タンパク質およびその断片、ポリペプチド、病原体溶解物、病原体抽出物、病原体核酸、癌細胞、癌細胞タンパク質およびその断片、癌細胞溶解物、癌細胞抽出物、および癌細胞核酸があるが、それらに限定されない。抗原は天然でも、化学的処理または組み換え産生してもよい。抗原は、当業界において知られた方法を用いて、ポリペプチド、タンパク質、または核酸として細胞へ導入される。
【0088】
抗原を作製するかまたはそれが樹状細胞と出会う環境へ入れるようにそれを誘導する際にヒトが関与しなかった、その“天然”形態により抗原が導入される。一方または加えて、抗原は、例えば従来のアレルギーショットまたは腫瘍溶解物により通常投与される種類の、粗調製物であってもよい。抗原は一方で、例えば少なくとも約90%純度により、実質的に精製してもよい。
【0089】
抗原がペプチドである場合、例えば単離タンパク質のタンパク質開裂により、それが作製される。限定されないが、ペプシン、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシンなどを含めた様々な開裂剤が利用される。一方、ペプチドは、好ましくは当業界において入手しうるような自動合成装置により、化学的に合成しても、または組み換えにより発現させてもよい。加えて、対象のペプチドをコードする核酸を作製して、望ましい条件下においてそのペプチドを発現させるために、組み換え技術も用いてよい。一方、抗原コード核酸は精製しても、または細胞、組織、またはウイルスから誘導してもよい。
【0090】
抗原は、天然化合物とは異なる構造を有しうる。本発明のある態様において、抗原は、天然抗原のものと実質的に同一であるが、天然化合物の正確な構造と1以上の違いを含む構造を抗原が有している、“修飾抗原”である。
【0091】
例えば、天然抗原がタンパク質またはポリペプチド抗原である場合、修飾抗原は、そのタンパク質またはポリペプチド抗原と比較して、1以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失により天然抗原のものと異なるアミノ酸配列を有している、および/またはアミノ酸に共有結合された1以上の化学部分の付加、置換、または欠失により天然抗原における対応アミノ酸と異なる1以上のアミノ酸配列を有している。一つの態様において、天然および修飾抗原は、少なくとも75%同一である、少なくとも五つのアミノ酸の少なくとも一つの領域を共有している。当業者であれば認識しているのであるが、二つのアミノ酸配列を比較してそれらの同一性の程度を調べる上において、同一アミノ酸のストレッチ(即ち、少なくとも二つの領域)間の間隔が常に正確に保たれている必要はない。天然および修飾タンパク質またはポリペプチド抗原は、少なくとも五つのアミノ酸の少なくとも一つの領域について、アミノ酸配列において少なくとも約80%の同一性、更には85%、90%、95%、または99%以上の同一性を示せる。多くは、アミノ酸配列の更に長い領域(例えば、10、20、50、100、またはそれ以上のアミノ酸)について、所定度の同一性を示すことが有用かもしれない。
【0092】
好ましい態様において、抗原は該抗原をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子として導入され、そのため該遺伝子の発現から処理された個体(インビボにおいて導入される場合)または細胞培養系(インビトロにおいて導入される場合)において抗原産生をもたらす。発現性遺伝子またはmRNAを含む核酸を作製して、発現性遺伝子によりコードされたタンパク質が産生される発現系へこのような核酸を導入するための技術は、当業界において知られており、簡単には以下において記載されている。好ましくは、抗原はmRNAとして導入される。細胞(例えば、癌細胞、病原体細胞、または病原体感染細胞)から得られたRNAまたはmRNAが樹状細胞へ直接負荷される。一方、RNAまたはmRNAは負荷前に増幅させてもよい。一つの態様では、cDNA発現構造体を作製するために、センスプロモーターを含むプライマーを用いて、RT‐PCRにより全部または標的とされたmRNAが増幅される。次いで、発現構造体からインビトロにおいて転写されたRNAが細胞へ負荷させるために用いられる。RNAを単離、増幅、インビトロ転写して、RNAまたは他の核酸を樹状細胞へ負荷させる方法は、当業者に知られている。例えば、PCT/US04/39539号および米国仮出願第60/522,310号参照、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0093】
本発明の一つの態様において、抗原は1種以上のHIVタンパク質またはその断片である。非限定的な例として、HIV感染患者からの血漿がHIV RNAの単離源として働く。一つの態様では、血漿の一部が遠心され、上清が採取され、0.22μmフィルターを用いて濾過され、樹状細胞ワクチンの処方で使用時まで−20℃において貯蔵される。樹状細胞への負荷用に十分量の増幅HIV RNAを供給するために、血漿中に存在するHIV RNAがRT‐PCRおよびインビトロ転写反応により増幅される。簡単に言えば、逆転写酵素、適切な反応緩衝液、およびランダムヘキサマーまたは標的リバースプライマーを用いて、ウイルスRNAが一本鎖(ss)DNAへ逆転写される。次いで、多数のプライマーを用いた一次PCR反応における二本鎖DNAへPCRにより一本鎖cDNAが増幅される。一次PCR反応において増幅された領域の同一性は、それらの領域と隣接する標的配列と相補的な特異的プライマーの選択により調べられる。一次PCR反応の産物はQIAquick PCR Purification Kitを用いて精製され、次いで二次ラウンドまたはネステッドPCR増幅において鋳型として働く。このラウンドの増幅において、5′プライマーはRNAポリメラーゼ結合部位(例えば、T7プロモーター)のある突出部を含有し、3′プライマーはポリTストレッチのある突出部を含有している。PCRのネステッドラウンドにおいて突出領域により導入される修飾から、インビトロにおけるPCR産物の転写と、樹状細胞への導入時に好結果の翻訳とを行える。インビトロ転写RNAの精製はQiagen RNeasy Kitを用いて行われ、RNAがヌクレアーゼフリーの水中に溶出される。必要であれば、エタノール沈降がRNAを濃縮するために行われる。RNAはヌクレアーゼフリーの水に再懸濁され、0.8/0.2μmポリエーテルスルホン(PES)フィルターへ通され、次いで0.5mLセーフロックポリプロピレン管へ分配されて、DC中へ負荷されるか、またはトランスフェクション前に融解時まで≦−150℃において凍結保存される。
【0094】
他の好ましい態様においては、RNAまたはmRNAが1種以上の癌細胞から抽出される。RNAまたはmRNAは樹状細胞へ直接負荷させても、またはそれは最初にPCT/US04/39539号において記載された方法を用いてRT‐PCRおよびインビトロ転写により増幅させてもよい。
【0095】
樹状細胞の抗原負荷
樹状細胞は、未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞として、または未成熟から成熟樹状細胞への分化に際して、1種以上の抗原により負荷される。樹状細胞は、タンパク質、ペプチド、ウイルス、細胞、細胞溶解物などのような抗原を摂取することができる。したがって、抗原負荷は、抗原または該抗原をコードする核酸と樹状細胞を接触させることで、簡単に行える。樹状細胞に負荷させる他の方法も当業者に知られており、核酸トランスフェクション、エキソソーム、ウイルスベクター、ミクロ粒子デリバリーなどがあるが、それらに限定されない。例えば、Mitchell et al.(2000)Curr.Opin.Mol.Ther.,2:176-181、Zitovogel et al.(1998)Nature,4:594-600、Jenne et al.(2001)Trends Immunol.,22:102-106、および米国特許公開第2005/0158856号参照、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。1種以上の抗原が樹状細胞へ直接負荷されても、または1種以上の抗原をコードする核酸が樹状細胞中へ負荷(トランスフェクト)されてもよい。好ましい態様において、樹状細胞は1種以上の抗原をコードする核酸において負荷される。好ましくは、核酸はmRNAである。
【0096】
核酸を樹状細胞へトランスフェクトする方法は当業者に知られており、受動トランスフェクション、脂質媒介トランスフェクション、カチオン脂質媒介トランスフェクション(例えば、DOTAP)、カチオンペプチド媒介トランスフェクション、エレクトロポレーションがあるが、それらに限定されない。Nair et al.(1998)Nat.Biotechnology,16:364-369、Van Tendeloo et al.(2001)Blood,98:49-56、Saeboe-Larssen et al.(2002)J.Immunol.Methods,259:191-203、Boczkowski et al.(2000)Cancer Res.,60:1028-1034、Gilboa et al.,Immunol.Rev.(2004)199:251-263、米国仮出願第60/583,579号、および米国特許出願第10/177,390号参照、これらの内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0097】
ペプチドパルシングによる樹状細胞負荷
タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、細胞、または組織抽出物および他の種類の抗原において樹状細胞へ負荷させる方法は当業者に知られている。好ましい態様では、未成熟樹状細胞が1種以上の抗原が負荷される。本発明の一つの態様では、ペプチド、ポリペプチド、および/または細胞または組織抽出物が培地中未成熟樹状細胞とのインキュベートにより簡単に負荷される。
【0098】
エレクトロポレーションによる抗原負荷、次いでサイトカインカクテルを用いた未成熟樹状細胞の成熟
本発明の一つの態様において、未成熟樹状細胞は培養フラスコを軽く叩いて該細胞を浮動させることにより収集される。次いで、懸濁状態の細胞が円錐管へ移される。残留浮遊細胞と円錐管へ加えられた残留培地を除去するために、PBSが培養フラスコへ加えられる。一部の未成熟樹状細胞はフラスコに付着したままのことがある。PBSを加えて、2℃から室温までのいずれかでフラスコをインキュベートすることにより、これら細胞の脱着が促進される。インキュベート時間の最後に、フラスコが軽く叩かれ、浮動した細胞が円錐管へ加えられる。次いで全細胞懸濁物がペレット化され、PBSにより洗浄され、0.5mL中4×10/mLにより冷却ViaSpanに再懸濁され、氷上に置かれる。DCは抗原をコードするmRNAについて2μg/10細胞においてmRNAと混合され、4mmギャップエレクトロポレーションキュベットに入れられ、275〜350V、100〜300Ωおよび150μFのパルスで、好ましくは325V、200Ωでエレクトロポレートされる。エレクトロポレーション直後に、DCはX‐VIVO 15培地により洗浄され、GM‐CSF(800U/mL)、IL‐4(500U/mL)、PGE(1μg/mL)、TNF‐α(10ng/mL)、IL‐1β(10ng/mL)、およびIL‐6(100ng/mL)を加えたX‐VIVO 15に1×10/mLにより再懸濁される。次いで、安定的に成熟樹状細胞を作製するために、未成熟樹状細胞は37℃、5%CO2、≧75%湿度において一晩インキュベートされる。次いで成熟樹状細胞がPBSにより洗浄される。
【0099】
エレクトロポレーションによる抗原負荷とCD40Lを用いた成熟
本発明の一つの態様において、未成熟樹状細胞はCD40LおよびIFN‐γを用いて成熟される。好ましくは、未成熟DCは、前記のようなエレクトロポレーションにより、10当たり4μgのCD40L mRNAと1種以上の抗原をコードするmRNA(2μg/10細胞)とでトランスフェクトされ、次いで安定な成熟樹状細胞を作製するために、GM‐CSF(800〜1000U/mL)、IL‐4(500〜1000U/mL)、IFN‐γ(500〜1000U/mL)、またはTNF‐α(10ng/mL)およびPGE(1μg/mL)を加えたX‐VIVO 15中において一晩培養される。この工程により成熟された樹状細胞は、前記のサイトカインカクテル工程により成熟された樹状細胞と比較して、より高レベルのIL‐12(T細胞成長因子)と最少のIL‐10を分泌する。
【0100】
成熟樹状細胞のエレクトロポレーションによる抗原負荷
成熟樹状細胞は当業者に知られた方法により抗原により負荷させうる。本発明の一つの非限定的な態様において、未成熟樹状細胞への単球の分化を開始させた後6日目に、最終濃度のTNF‐α(10ng/mL)、IFN‐γ(1000U/mL)、およびPGE(1μg/mL)を得るためにAIM V培地中成熟用処方物が未成熟DCへ直接加えられる。次いで、成熟樹状細胞を作製するために、細胞が一晩培養される。次いでDCが収集され、10細胞当たり1μgの抗原コードRNAと場合により4μgのCD40L RNAによりコエレクトロポレートされる。エレクトロポレーション後、細胞はGM‐CSF(800U/mL)およびIL‐4(500U/mL)を加えた1×10細胞AIM V培地において4時間培養される。次いで、細胞は凍結せずに対象への投与用に処方されるか、または凍結のために処方される。凍結の場合、細胞は好ましくは熱不活化自家血漿、10%DMSOおよび5%デキストロース中2×10細胞/mLにおいて処方される。極低温用バイアルへは1.4×10細胞/バイアルの総数で0.7mLが満たされる。次いでバイアルは最少4時間にわたりアルコールボックス中−85℃において凍結され、貯蔵用の極低温用フリーザーへ移される。次いで、凍結された樹状細胞ワクチンが融解され、洗浄または再処方なしに対象へ投与される。
【0101】
成熟度を評価するためのDCのフローサイトメトリー分析
好ましい方法では、10DCが収集され、冷PBS/1%FCSに再懸濁される。MHC分子(HLA‐ABC、HLA‐DR)、共刺激分子(CD80、CD86)、成熟マーカー(CD83)、および単球マーカー(CD14)に特異的なフィコエリトリン(PE)またはFITC複合化抗体が96ウェルプレート(BD Biosciences)においてウェル当たり1×10DCと混合され、4℃において最少15分間インキュベートされる。イソタイプ適合抗体がコントロールとして用いられた。入念に洗浄した後、蛍光分析がCellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いてFACScaliburフローサイトメーター(BD Biosciences)により行われた。
【0102】
ワクチン処方
樹状細胞ワクチンを処方する方法は当業者に知られている。好ましい態様において、成熟樹状細胞は洗浄され、熱不活化血漿(好ましくは、自家血漿)および10%デキストロースに4×10細胞/mLの濃度により再懸濁される。次いで、熱不活化血漿中5%デキストロース、10%DMSOの最終濃度を得るために、細胞が熱不活化血漿および20%DMSOの混合液により1:1希釈される。目標最終充填処方物は凍結保存に適した容器中において1.4×10細胞/0.7mLである。次いで、樹状細胞が患者へ投与されるか、または好ましくは−85℃において凍結され、好ましくは≦−150℃の温度において、極低温用フリーザー(好ましくは、汚染を防止するように設計された無水液体窒素フリーザー)に貯蔵される。次いで、凍結ワクチンが(好ましくは皮内注射による)患者投与のために臨床現場へ運搬される。融解して、ワクチンは更に処理することなく患者へ直接投与される。
【0103】
投与に適した他の処方物には、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および処方物を所定レシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有しうる水性等張無菌注射液と、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、保存剤、免疫刺激剤、サイトカイン、およびアジュバントを含有しうる水性および非水性無菌懸濁液とがある。
【0104】
好ましい態様において、成熟樹状細胞は熱不活化自家血漿および10%デキストロースに4×10細胞/mLの最終濃度で懸濁される。次いで、5%デキストロースおよび10%DMSOを含有した熱不活化自家血漿中において2×10細胞/mLの最終濃度を得るために、これらの細胞が熱不活化自家血漿および20%DMSOの混合液において1:1希釈される。最終充填処方物は凍結保存に適した容器中において1.4×10細胞/0.7mLである。次いで、ワクチンが凍結され、無水液体窒素フリーザー中 ≦−150℃において貯蔵される。ワクチンは、洗浄および再懸濁の必要性なく、融解後にいつでも投与しうる。
【0105】
投与の方法
樹状細胞ワクチンは、注射(例えば、皮下、皮内、静脈内、リンパ内、関節内、筋肉内、腹腔内)、連続注入、インプラントからの徐放などに限定されないが、そのような様々な方法により投与できる。DCワクチンは典型的には2〜4週間隔により投与された。樹状細胞ワクチンは、生理学上許容される担体、緩衝液、希釈剤、アジュバント、免疫調節剤などと一緒に投与される。好ましくは、樹状細胞ワクチンはそれが投与される患者と自家であるか、またはHLA適合性である。
【0106】
対象へ投与される細胞(例えば、活性化T細胞または樹状細胞)の用量は、経時的に対象において望ましい有益な治療反応を得る、癌細胞の成長を阻止する、または感染症を阻止するために有効な、有効量である。好ましい用量は約10細胞である。生物応答調節剤も、本発明のDCまたは活性化T細胞による治療のために、場合により加えられる。例えば、細胞は場合によりアジュバントまたはサイトカイン、例えばGM‐CSF、IL‐12、またはIL‐2と一緒に投与される。
【0107】
抗原負荷樹状細胞または教育されたT細胞の免疫原性を評価する方法
本発明の方法により作製された抗原負荷樹状細胞または教育されたT細胞の免疫原性は、以下に限定されないが、それらを含めた周知の方法論により調べられる:
【0108】
51Cr放出溶解アッセイ 抗原特異的T細胞によるペプチドパルス51Cr標識標的の溶解が比較しうる。“より活性な”組成物は時間の関数として標的の大きな溶解を示す。溶解の動態と固定時点(例えば、4時間)における全体の標的溶解が、性能を評価するために用いられる。Ware,C.F.et al.(1983)J.Immunol.,131:1312
【0109】
サイトカイン放出アッセイ 修飾APCとの接触でT細胞により分泌されるサイトカインの種類および量の分析が機能活性の尺度となりうる。サイトカイン産生の速度および総量を調べるために、サイトカインはELISAまたはELISPOTアッセイにより測定される。Fujihashi,K.et al.(1993)J.Immunol.Meth.,160:181、Tanquay,S.and Killion,J.J.(1994)Lymphokine Cytokine Res.,13:259
【0110】
インビトロにおけるT細胞の教育 本発明の組成物は、正常ドナーまたは患者由来PBMCから反応性T細胞群を導く能力についてアッセイできる。この系において、導かれたT細胞は溶解活性、サイトカイン放出、ポリクローナリティ、および抗原エピトープとの交差反応性について試験できる。Parkhurst,M.R.et al.(1996)J.Immunol.,157:2539
【0111】
増殖アッセイ T細胞は反応性組成物への応答により増殖する。増殖は、例えば3H‐チミジンの取込みを測定することにより、定量的に測定される。Caruso,A.et al.(1997)Cytometry,27:71
【0112】
トランスジェニック動物モデル 免疫原性は、HLAトランスジェニックマウスを本発明の組成物により予防接種し、誘導された免疫応答の種類および程度を調べることにより、インビボにおいて評価できる。一方、hu‐PBL‐SCIDマウスモデルは、ヒトPBLの適合移植により、マウスにおいてヒト免疫系の再構成を行える。これらの動物は本組成物により予防接種して、Shirai,M.et al.(1995)J.Immunol.,154:2733、Mosier,D.E.et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2443において既に記載されたように免疫応答について分析される。
【0113】
霊長類モデル 非ヒト霊長類(チンパンジー)モデル系がHLA限定リガンドのインビボ免疫原性を測定するために利用できる。チンパンジーがヒトMHC分子と重複したMHCリガンド特異性を有し、そのため相対的インビボ免疫原性についてHLA限定リガンドを人々に試験させうることが証明された。Bertoni,R.et al.(1998)J.Immunol.,161:4447
【0114】
TCRシグナル形質導入現象の測定 いくつかの細胞内シグナル形質導入現象(例えば、リン酸化)が、MHCリガンド複合体によるTCR会合の成功と関連している。これら現象の定性および定量分析が、TCR会合によりエフェクター細胞を活性化しうる組成物の相対的能力と相関していた。Salazar,E.et al.(2000)Int.J.Cancer,85:829、Isakov,N.et al.(1995)J.Exp.Med.,181:375
【0115】
免疫細胞を単離および特徴付ける方法
細胞精製に際する細胞の検出のための細胞単離または免疫アッセイは、いくつかの構成のうちいずれかで、例えば、Maggio(ed.)(1980)Enzyme Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,Fla.、Tijan(1985)“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam、Harlow and Lane,前掲、Chan(ed.)(1987)Immunoassay:A Practical Guide Academic Press,Orlando,Fla.、Price and Newman(eds.)(1991)Principles and Practice of Immunoassays,Stockton Press,NY、およびNgo(ed.)(1988)Non-isotopic Immunoassays,Plenum Press,NYにおいて概説されているものにより行える。
【0116】
細胞はFACS分析のようなフローサイトメトリー法により単離および特徴付けされる。様々なフローサイトメトリー法が知られている。蛍光活性化フローサイトメトリーの一般的概論については、例えばAbbas et al.(1991)Cellular and Molecular immunology,W.B.Saunders Company、特にchapter 3およびKuby(1992)Immunology,W.H.Freeman and Company,特にchapter 6参照。FACS機器は、例えばBecton Dickinsonから入手しうる。
【0117】
細胞抗原を標識するために用いられる標識剤には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、タンパク質、または他のポリマー、例えばアフィニティーマトリックス、炭水化物、または脂質があるが、それらに限定されない。イムノブロット法、ウエスタンブロット分析、放射性または生物発光マーカーの追跡、キャピラリー電気泳動、あるいは大きさ、電荷、または親和性に基づき分子を追跡する他の方法のいずれか公知の方法により検出が進められる。
【0118】
下記例は、本発明を限定するというより、むしろそれを説明するためにある。
【実施例】
【0119】
例1
1日経過白血球搬出物から作製された樹状細胞
末梢血単核細胞(PBMC)をヒトドナー4例から白血球搬出法により採取し、8℃〜26℃の温度に維持された温度モニター運搬容器により樹状細胞製造施設へ翌日配達により輸送した。配達日に、白血球搬出産物は、樹状細胞前駆体(単球)を含有した単核細胞フラクションを分離および濃縮するために、室温(約19〜22℃)において20分間にわたり50mL円錐管でフィコール密度勾配遠心(800×g)を受けた。リン酸緩衝液(PBS)による2回の洗浄工程後、細胞濃度および細胞生存率を調べた。PBSにより3回目の遠心/洗浄工程後、単核細胞をStemSpan H2000培地(StemCell Technologies,Inc.)に再懸濁し、2.0×10細胞/フラスコでT150cmフラスコに接種した。次いで、37℃、5%CO、≧75%湿度において1〜2時間にわたる無菌組織培養プラスチックフラスコへの付着により、単核細胞群から単球を選択した。非付着および半付着細胞(主にリンパ球)は捨てた。主に単球である残留付着細胞をGM‐CSF(800U/mL)およびIL‐4(500U/mL)含有のStemSpan H2000培地において培養した。未成熟樹状細胞への単球の分化を行わせるために、これらの細胞を37℃、5%CO、≧75%湿度において6日間インキュベートした。
【0120】
細胞を浮動させるためにフラスコを軽く叩くことにより、未成熟樹状細胞に富む群を収集した。懸濁状態の細胞を円錐管へ移した。残留浮遊細胞および残留培地を除去するために追加のPBSをフラスコへ加え、円錐管中の細胞懸濁液へ加えた。残留付着細胞の脱着は、PBSを加えて、2〜8℃において約10分間フラスコをインキュベートすることにより終了させた。これらの細胞をインキュベートしながら、円錐管中の細胞懸濁物を遠心し、細胞ペレットをPBSに再懸濁した。インキュベート時間の最後に、フラスコを軽く叩き、内容物を円錐管中の細胞懸濁物へ加えた。全細胞懸濁物をペレット化し、PBSに再懸濁し、試料を細胞濃度、細胞生存率、および免疫表現型決定のために取り出した。下記4組の細胞マーカーをフローサイトメトリーにより試験した:単球系統マーカー(CD3、CD14、CD19、およびCD56)、樹状細胞の存在の指標(CD11c)、抗原提示細胞マーカー(HLA‐DR)、および成熟樹状細胞マーカー(CD83)。未成熟樹状細胞に富む調製物は、非有意レベルの系統マーカーおよびCD83と、高レベルのCD11cおよびHLA‐DRとを発現した。
【0121】
フェノールレッド不含のHEPES緩衝液、L‐グルタミン含有のOPTI-MEM I還元血清培地(GIBCO)により未成熟樹状細胞を1回洗浄した。次いで、樹状細胞を10樹状細胞当たりRNA約2μgの比率でエレクトロポレーションにより増幅腫瘍RNAをトランスフェクトした。5×10細胞/mL含有の細胞懸濁物600μLを含有した4mmギャップキュベット中において500Vのパルスにより500μsエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後に、トランスフェクトされた細胞をIL‐4(500U/mL)およびGM‐CSF(800U/mL)を加えたStemSpan H2000培地(無血清培地)を含有するT150フラスコ(1キュベット/フラスコ)へ移した。トランスフェクトされた細胞は、該細胞をエレクトロポレーションから回収するために、37℃、5%CO2、≧75%湿度において2〜3時間インキュベートした。
【0122】
未成熟のエレクトロポレートされた樹状細胞を、IL‐4(500U/mL)およびGM‐CSF(800U/mL)と成熟用カクテル(IL‐1β 5ng/mL、IL‐6 150ng/mL、TNF‐α 5ng/mLおよびPGE 1μg/mL)を加えたStemSpan H2000培地中、37℃、5%CO2、≧75%湿度において20〜24時間かけて成熟させた。全てのサイトカインとPGEとを1%HSA含有PBSにより再調製または希釈(PGEの場合)した。希釈工程前に、PGEをエタノールにより再調製した。次いで細胞解離用緩衝液(トリプシンフリー)を加える前に成熟樹状細胞をPBSによりすすぎ、次に細胞解離用緩衝液を除去するためにPBSにより3回洗浄した。試料を細胞濃度、生存率、および免疫表現型決定のために採取した。未成熟および成熟樹状細胞の免疫表現型の比較が表1において示される。
【表1】

【0123】
トランスフェクトされた成熟樹状細胞を2×10細胞/mLの最終濃度で自家血漿に懸濁した。次いで、10%DMSO含有90%血漿中において3×10または1×10細胞/mLの最終濃度を得るために、細胞を80%血漿および20%DMSOの混合液により1:1希釈し、次に速度制御凍結を用いてクリオバイアル中において凍結し、≦−150℃において貯蔵した。
【0124】
例2 1日経過の白血球搬出産物から作製された樹状細胞ワクチンは10%DMSOにおいて融解後少なくとも2時間生存する
例1において記載されたように、製造された凍結樹状細胞ワクチンを37℃において融解し、20〜25℃または2〜8℃において2時間保った。生存率を融解直後と30分間隔により2時間にわたり調べた。37℃において融解直後の生存率は92%であった。結果は表2において示されており、ワクチンが融解されてから10%DMSO中において少なくとも2時間貯蔵されうることを立証している。
【表2】

【0125】
例3 患者からの単核細胞の単離と単球から未成熟樹状細胞への分化
末梢血単核細胞および血漿を患者またはボランティアから臨床現場において白血球搬出法により室温において採取した。白血球搬出産物(PBMC)および血清を6〜28℃の温度範囲に維持された温度制御容器において一晩かけて運搬した。白血球搬出の翌日、単球(樹状細胞前駆体)および白血球を含有した単核細胞フラクションを分離および濃縮するために、PBMCを50mL円錐管中、室温においてフィコール密度勾配遠心により精製した。単核細胞をリン酸緩衝液(PBS)により数回洗浄し、細胞濃度を調べた。PBSでの最終遠心/洗浄工程後、単核細胞をAIM‐V培地に再懸濁し、2.0×10細胞/フラスコでT150cmフラスコに接種した。次いで、37℃、5%CO、≧75%湿度において1〜2時間にわたる無菌組織培養フラスコへの付着により、単核細胞群から単球を選択した。非付着および半付着細胞はPBSによる穏やかな洗浄により除去した。主に単球である残留付着細胞をGM‐CSF1000U/mLおよびIL‐4 1000U/mL含有のX‐VIVO 15培地において培養した。未成熟樹状細胞への単球の分化を行わせるために、細胞を37℃、5%CO、≧75%湿度において6日間インキュベートした。
【0126】
インビトロ培養後、細胞を浮動させるためにフラスコを軽く叩くことにより、未成熟樹状細胞に富む群を収集した。懸濁状態の細胞を円錐管へ移した。残留浮遊細胞および残留培地を除去するためにPBSをフラスコへ加え、次いで同円錐管中の細胞懸濁液へ加えた。残留付着未成熟樹状細胞の脱着をPBS中2〜8℃においてインキュベートにより促進させた。インキュベート時間の最後に、フラスコを軽く叩き、内容物を同円錐管中の細胞懸濁物へ加えた。次いで全細胞懸濁物をペレット化し、PBSに再懸濁し、細胞濃度を調べるために試料を取り出した。
【0127】
未成熟樹状細胞を洗浄し、ViaSpanに再懸濁し、10樹状細胞当たり抗原コードmRNA2μgをトランスフェクトした。細胞懸濁物(4×10細胞/mL)0.4mLを含有した4mmギャップキュベット中300V、100Ω、および150μFのパルスによりエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後に、トランスフェクトされた細胞をX‐VIVO 15培地において希釈し、遠心し、GM‐CSF(800U/mL)、IL‐4(500U/mL)、IL‐1β(10ng/mL)、IL‐6(150ng/mL)、TNF‐α(10ng/mL)、およびPGE(1μg/mL)を加えたX‐VIVO 15培地(無血清)に再懸濁した。成熟させるために、細胞を37℃、5%CO、≧75%湿度において一晩インキュベートした。
【0128】
トランスフェクトされた成熟樹状細胞を4×10細胞/mLの最終濃度により熱不活化自家血漿および10%デキストロースに懸濁した。次いで、10%DMSOおよび5%デキストロースを含有した熱不活化自家血漿中において2×10細胞/mLの最終濃度を得るために、細胞を20%DMSOの混合液において1:1希釈し、次に無菌クリオバイアル中、≦−150℃において凍結した。
【0129】
例4 6〜28℃において一晩インキュベートされた単球から作製された樹状細胞の物理的および機能的特性
本例におけるデータは、1日経過アフェレーシス産物からRNAトランスフェクト樹状細胞を作製する機能性および実現可能性について裏付けている。樹状細胞を例3において記載された方法により作製した。下記データは、樹状細胞が単一の1日経過アフェレーシス産物から適切な収率により再現性良く作製され、得られた細胞が(1)古典的な成熟表現型を示し、(2)効率的にRNAによりトランスフェクトされ、および(3)高融解後生存率により凍結保存されることを示す。
【0130】
DCの免疫表現型 最終細胞調製物に存在するまたは不在である分子マーカーについて、FACS染色により成熟DCを詳しく特徴付けた。HLA‐DR、CD83、CD86、CD80、CD1a、およびCD209は高発現を示し、CD14、CD56、CD19、およびCD3は低発現を示す。表3(下記)は、異なる健康なドナーから得られたPBMCから樹状細胞ワクチンを作製する11連続ランからまとめられた結果(陽性細胞率に関する平均および標準偏差)を示している。
【表3】

【0131】
これらのデータは、顕微鏡写真(示さず)と一緒に、本発明条件の方法により作製されたDCが古典的な成熟表現型および形態を示すことを証明している。更に、比較的低い標準偏差は工程の再現性を示している。
【0132】
収率、表現型、および生存率 樹状細胞法は、徹底的に試験したところ、高品質RNAトランスフェクト成熟樹状細胞を再現性良く作製することが示された。表4は、抗原ペイロードとして全増幅腫瘍細胞系RNAおよびビヒクルとして正常ドナー樹状細胞を用いた11のワクチンランの結果を示している。
【表4】

【0133】
成熟RNAトランスフェクトDCはCCR7を発現し、遊走性である 上記の成熟DCにマーカー加えて、インビボにおいてDCのリンパ節遊走にとり重要なCCR7発現を評価した。この研究では、フルスケールGMP工程(同一ラン3、4、6、7、8、および10)を用いて作製された融解RNAトランスフェクトDCを試験するために、CCR7特異的抗体でのFACS分析を用いた。結果が下記表5において示される:
【表5】

【0134】
更に成熟後にDCにおけるCCR7の現実の存在を証明するために、コラーゲンゲルマトリックス自然遊走アッセイを用いたところ、DCも遊走能を有することが証明されたが、このことは発現されたCCR7も機能的であることを示している(データを示さず)。
【0135】
RNAトランスフェクトDCは機能的共刺激サポートをもたらす 上記の実験においては、成熟DCが重要な共刺激マーカーの全てを発現することを示し、同時に以下の実験ではこれらの分子が的であることを証明している。この目的のため、アロ混合リンパ球(MLR)アッセイでPBMCからインターフェロン ガンマ(IFN‐γ)産生を刺激しうるDCの能力が、各ドナーから先に凍結されたPBMCと一緒に、異なるドナー3例から作製された融解DCを用いて調べられた。予想は、DCがそれらのHLA適合自家PBMCからIFN‐γ産生を刺激しないが、非自家PBMCと混合された場合にそうするであろう、というものであった。全対の賢明な組合せが読み出し(readout)としてELISPOT(INF‐γ)を用いて試験された。データが図2に掲載されている。この実験の結果は、予想通りに、不適合DC/PBMC組合せのみがIFN‐γ産生を導き、その特性には機能的MHCおよび共刺激分子の発現を要することを証明している。
【0136】
成熟DCは機能性を加えた この実験において、トランスフェクション後で凍結前のDCを成熟させるために用いられたサイトカインカクテルは、TNF‐α、IL‐1β、IL‐6、およびPGEを含有している。成熟DCが未成熟DCより優れていることを証明するために、自家T細胞からT1サイトカイン産生を刺激しうる(同一ドナーからの)これら2群の能力が調べられた。Fluマトリックスタンパク質をコードするRNAを両群のDCにトランスフェクトし、自家PBMCからFlu特異的記憶CTLを刺激するために用いた。下記図3はELISPOT分析の結果を示している(投入PBMCの関数として#スポット/ウェル)。Flu特異的記憶T細胞からIFN‐γ産生を導く上で未成熟および成熟DC間に統計学的差異が観察されなかった。しかしながら、成熟DCのみはこれらの細胞からIL‐2産生も導くことができた。(1)誘導されたIL‐2分泌がオートクリン抗原特異性CTL増殖を維持し、(2)IFN‐γおよびIL‐2の低産生がHIV患者において死亡の危険性の増加と相関していると最近示され、最近の研究において、IFN‐γまたはIL‐2の分泌の欠乏がT細胞機能不全と中枢記憶応答の維持不能をもたらしたことから、IL‐2誘導は重要であるとみなされている。簡略化のために、陰性コントロールはグラフにしなかった。PBMC単独(即ち、非DC)から観察されるスポットの平均数は9.7(IFN‐γ)および1.3(IL‐2)であった。この実験を独立ドナー3例のPBMCから作製されたワクチンにより繰り返したところ、結果は質的に同一であった。したがって、成熟DCは未成熟DCと比較して優れた機能性を加えていた。
【0137】
融解後RNAトランスフェクトDCは安定である 臨床プロトコールにおいては融解して樹状細胞ワクチンの即時注射を行えるが、投与を遅らせる不測の状況も生じうる。融解して直ちに注射しなくとも、DCが生存して機能的であることを証明するために、以下の実験を行った。異なる健康なドナー2例に対応する二つの樹状細胞調製物の各々について2バイアルを融解した。各ドナーからの1バイアルはアロMLRアッセイにより直ちに試験したが、各調製物から第二のバイアルは同方法によりアッセイされる前に室温において40分間放置させた。この実験において用いられたPBMCには、各ドナーからの自家細胞と、どちらにも無関係のドナーからのPBMCの第3の試料を含めた。このアッセイの読み出しはELISPOT(IFN‐γ)であった。この実験の結果は図4において示され、融解して直ちにアッセイされたDCと室温において40分間放置されたものとの間において、機能にさほどの差異がないことを示している。この機能アッセイに加えて、トリパン色素排除により融解後および融解後40分間目の細胞生存率を調べたところ、同一の結果が得られた(データを示さず)。
【0138】
凍結融解はDC機能に影響を与えない DC機能が凍結融解工程により悪影響を受けるか否かを評価するために、凍結後および融解後DCの機能性を比較した。機能性は、トランスフェクションに用いられたFlu mRNA濃度を減少させる関数として、自家PBMCからの記憶Flu特異的応答を刺激しうるDCの能力により評価した。アッセイの読み出しはELISPOT(INF‐γ)であった。結果は下記図5において示され、凍結融解工程がこのアッセイにおいてDCの機能性に影響を与えないことを示している。トランスフェクション効率を測定するために、一定量のGFP mRNA(0.5μg)を混ぜた。融解後、試料は24時間凍結した後に融解した。
【0139】
mRNAでDCのエレクトロポレーション後におけるタンパク質発現 第一工程として、mRNAにおいてDCのトランスフェクションがmRNAコードタンパク質の適正な発現に至るかどうかを我々は評価した。DCの作製のために、健康なボランティアから白血球搬出法により得られたPBMC(新鮮または凍結)をインビトロにおいて2時間インキュベート後にプラスチックフラスコへの付着により単球について濃縮させた。洗浄後、未成熟DC(iDC)を作製するために、組み換え顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(rGM‐CSF)およびインターロイキン‐4(rIL‐4)を加えたX‐VIVO 15培地において付着細胞を6日間培養した。次いで、ウイルスまたはコントロールタンパク質をコードするRNAによりiDCをエレクトロポレート(300V、150μF、100Ω)し、IL‐1β、IL‐4、IL‐6、GM‐CSF、TNF‐α、およびプロスタグランジンE(PGE)を加えたX‐VIVO 15培地において24時間にわたり成熟するように誘導した。トランスフェクション後にタンパク質の発現を試験するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするRNAによりDCをエレクトロポレートし、発現をフローサイトメトリーにより測定した。図6において示されるように、1日経過単球から作製された成熟DCの大フラクションはトランスフェクション後4日間まで高レベルのGFPを発現し、この方法がDCにおいて長期間タンパク質発現を促進する際に効率的であることを立証している。
【0140】
次いで、CMV感染個体からのPBMCでCD4およびCD8T細胞応答を誘導しうる、CMV pp65タンパク質をコードするmRNAによってエレクトロポレーションによりトランスフェクトされた自家DCの能力を調べた。pp65タンパク質から誘導される明確に規定された免疫優性ペプチドによりいくつかの血液ドナーからのPBMCを刺激し、CD4およびCD8双方のT細胞においてIL‐2/IFN‐γ分泌と細胞増殖とを測定することにより、CMV感染者が特定された。陽性CMV特異的T細胞応答が検出されて、インフォームド・コンセント後に白血球搬出を受けることに同意した個人が、更なる研究のために選択された。
【0141】
これら個体からDCを前記のように調製した。次いで、CMV pp65タンパク質をコードするRNAによりトランスフェクトされた成熟DCを1/40比により自家PBMCと16時間(ICS)または6日間(増殖)インキュベートした。刺激後、CMV特異的CD4およびCD8 T細胞のIL‐2およびIFN‐γ分泌(図7)ならびに増殖(図8)をフローサイトメトリーにより評価した。CMV pp65 RNAによりエレクトロポレートされたDCは、選択的にCMV感染者からのCD8 T細胞において、高いIFN‐γおよびIL‐2発現と増殖を誘導した。しかしながら、CD4 T細胞において検出される低レベルのサイトカイン分泌および増殖において示されるように、このプロトコールは最少のCD4 T細胞活性化を誘導する。
【0142】
例5 500U/mLまたは1000U/mL IL‐4を用いた樹状細胞への単球の分化の比較
6〜28℃の温度において維持された1日経過白血球搬出物からのPBMCを洗浄し、2時間付着工程用のAIM‐V培地に@〜2×10/フラスコにより接種した。2時間後、非付着細胞を除去し、付着細胞を洗浄して、1000U/mL GM‐CSFおよび500U/mLまたは1000U/mL IL‐4を加えたX‐VIVO 15培地に再懸濁し、@37℃において6日間インキュベートした。加えて、1000U/mL GM‐CSFおよび500U/mL IL‐4を加えたX‐VIVO 15により培養した場合に、3日目に培地を交換した効果を培地の交換なしの6日間の培養と比較した。詳しくは、3日目に、培地を懸濁状態で細胞と一緒に除去し、ゆるく付着した細胞を収集するためにフラスコをX‐VIVO培地において穏やかに洗浄し、細胞をペレット化するために培地および洗液を@1300rpmにより8分間遠心した。1000U/mL GM‐CSFおよび500U/mL IL‐4を加えた新鮮X‐VIVO 15培地に細胞を再懸濁し、付着細胞をなお含有したフラスコへ培地および細胞を逆添加し、フラスコを更に3日間@37℃においてインキュベートした。
【0143】
全フラスコをエレクトロポレーション用に個別に収集した。6日目DCを2μg GFP mRNA/10細胞(20μg GFP mRNA/5×10細胞)をトランスフェクトし、X‐VIVO 15に再懸濁し、1×10/mLにより接種し、800U/mL GM‐CSFおよび500U/mL IL‐4を加えて、サイトカインカクテル(TNFα‐10ng/mL、IL‐1β‐10ng/mL、IL‐6‐100ng/mL、PGE‐1μg/mL)により成熟させた。DCを@37℃、5%COにおいて一晩インキュベートした。6日目(未成熟DC、図9)およびトランスフェクション後24時間目(成熟DC、図10)に未成熟DCで表現型を調べた。各培養条件においてトランスフェクション直後とトランスフェクション後24時間目とにおける収率(%Rec)および生存率(%V)が表6A〜Cにおいて示される。
【表6A】

【表6B】

【表6C】

【0144】
例6 水簸による単球の濃縮と未成熟および成熟DCへの分化
温度制御(6〜28℃)容器によって翌日配達により採取箇所から製造施設へ運搬された、1日経過白血球搬出物から単球を単離する自動化方法として、向流遠心としても知られる水簸をElutra Cell Separation System(Gambro BCT,Lakewood,CO)により行った。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS,Cambrex BioScience,Walkersville,MD)の4L袋へ5%ヒトアルブミン血清(HSA,Baxter Healthcare,Westlake,CA)1000mLを加えることにより、水簸緩衝液を調製した。この水簸緩衝液を搬出物に等しい容量により1日経過搬出産物へ加えた。Elutra Cell Separation System(Gambro BCT,Lakewood,CO)を水簸緩衝液で準備し、搬出産物を負荷した。水簸操作を行った後、単球をローターオフフラクションから採取した。単球を凍結貯蔵した。
【0145】
凍結された水簸単球を融解し、次いで未成熟樹状細胞(iDC)を作製するためにフラスコ内において800U/mL GM‐CSF(Berlex Laboratories,Richmond,CA)および500U/mL IL‐4(R&D Systems,Minneapolis,MN)含有のX‐VIVO 15(Cambrex Bioscience,Walkersville,MD)中、百万個細胞/mLで分化させた。iDCを収集し、エレクトロポレーションを用いて増幅RCC腫瘍RNAにより抗原負荷させた。細胞を800U/mL GM‐CSF、500U/mL IL‐4、および成熟用カクテル(TNF‐α、IL‐1β、IL‐6およびPGE)と一緒に培養し、24時間の培養後に収集した。ViCell(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA)によるトリパンブルー排除法を用いて、成熟樹状細胞(mDC)に関する細胞数と生存率とを調べた。得られたmDCの表現型を決定した。フラスコにおいて培養された細胞は99%CD83+および0.2%CD14+であった。mDCの収率はフラスコにおいて培養されたCD14+細胞の34%であった。
【0146】
例7 新鮮 vs.1日経過白血球搬出物から調製されたDCにおける共刺激分子の発現の比較
末梢血を白血球搬出法により3日間各々において健康なヒトドナー3例から採取し、採取後30分以内にモントリオール大学へ輸送した。白血球搬出物20mLを取出し、自家血漿を遠心により調製した。白血球搬出物容量を二部分に等分した。一つの部分は“新鮮”単球を作製するため直ちに処理し、第二部分は“1日経過搬出物”から細胞を作製するために50mL円錐管5個で20mLずつ貯蔵した。各管をボックス内のプラスチック容器に入れ、それを16〜20℃において24時間にわたり揺動台(rocking platform)において傾けて貯蔵した。インキュベート時間経過後、フィコール密度勾配を用いてPBMCを分離させた。
【0147】
樹状細胞前駆体(単球)を含有した単核細胞フラクションを、フィコール密度勾配を用いて、新鮮および1日経過双方の搬出物から分離させた。白血球搬出物を50mL円錐管中のフィコール上に積層し、各管を室温において20分間遠心(800×g)した。細胞をリン酸緩衝液(PBS)により4回洗浄し、細胞濃度および細胞生存率を調べるために計測した。高精製単球群を得るために、CD14マイクロビーズ(Miltenyi)を用いて単核フラクションを更に精製した。PBS、0.5%BSA、および2mM EDTAを含有した緩衝液(Miltenyi緩衝液)8mLに1×10細胞を再懸濁した。1×10細胞を含有した各50mL管へCD14マイクロビーズ2mlを加え、4℃において15分間インキュベートした。細胞を同緩衝液100mLにより洗浄し、300×gにより遠心し、Miltenyi緩衝液20mLに再懸濁した。細胞懸濁物を磁場(Miltenyi Quadromax)下に置かれたLSカラム4本へ適用した。重力流(gravity flow)を用いた細胞の適用後、カラムをMiltenyi緩衝液3mLにより3回洗浄した。磁場が存在しない状態においてMiltenyi緩衝液5mLにより単球を2回溶出させ、300×gにより10分間遠心した。CD3、CD19、CD16、CD56、CD14、およびCD209に特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーにより、溶出およびフロースルーフラクション双方の純度を調べた。溶出フラクションは88〜98%の単球および2%未満の小細胞を含有していた。非付着フラクションは小さな割合(2%)の単球を含有していただけであった。全RNAをこのとき精製単球の一部(5千万個)から抽出した。
【0148】
成熟分化DCを作製するために、IL‐4およびGM‐CSFを含有するX‐VIVO培地の入ったT150cmフラスコへ5千万個の単球を37℃において5日間接種した。腫瘍壊死因子、インターフェロン‐γ、およびプロスタグランジンEを含有したサイトカインカクテル(TIP)を5日目に細胞へ加えた。細胞を培養6日目に収集し、このとき“TIP‐DC”と命名した。フラスコを軽く叩いて細胞を浮動させ、追加のリン酸緩衝液(PBS)により洗浄し、PBS中2〜8℃において約10分間インキュベートして残留付着細胞を脱着させることにより、樹状細胞に富む群を収集した。全細胞懸濁物をペレット化し、PBSに再懸濁し、細胞濃度、細胞生存率、および免疫表現型について分析した。下記組の細胞マーカーをフローサイトメトリーにより試験した:単球系統マーカー(CD3、CD14、CD19、CD16、およびCD56)、樹状細胞の存在の指標(CD11c、CD1a、およびCD209)、抗原提示細胞マーカー(HLA‐II)、遊走のマーカー(CD38およびCCR7)および成熟樹状細胞のマーカー(CD83およびCD86)。
【0149】
2千万個のTIP‐DCをViaSpan600μLに再懸濁し、4μg RNA/百万個樹状細胞の比率により、CD40L RNAをエレクトロポレートした。エレクトロポレーションは4mmギャップキュベット中300Vのパルスにより300μs行った。エレクトロポレーション後、IL‐4およびGM‐CSFを加えたX‐VIVO培地(無血清培地)を含有するT75フラスコ(1キュベット/フラスコ)へ細胞を移した。エレクトロポレーションから細胞を回収するために、トランスフェクトされた細胞を37℃、5%CO2、≧75%湿度において4時間インキュベートした。この細胞を更に成熟させた後、“PME‐CD40L DC”と命名した。作製されたPME‐CD40L DCの一部からRNAを単離した。
【0150】
速度制御凍結を用いてクリオバイアル内の10%DMSO含有90%自家血漿中でPME‐CD40L DCを凍結し、≦−85℃において貯蔵した。上記のように作製された凍結樹状細胞ワクチンを37℃において融解し、20〜25℃において30分間保った。生存率を融解直後と10分間隔で30分間にわたり調べた。単球系統マーカー(CD14)、樹状細胞マーカー(CD11c、CD1a、およびCD209)、抗原提示細胞マーカー(HLA‐II)、遊走のマーカー(CD38およびCCR7)、および成熟樹状細胞のマーカー(CD80、CD83、およびCD86)に特異的な抗体を用いてフローサイトメトリーにより融解後PME‐CD40L DCを分析した。
【0151】
結果
単球の作製
ドナー3例からのデータは、CD14ビーズを用いた陽性選択が単球の88〜98%純度群をもたらすことを証明している(表7)。小細胞汚染物の最大量は2%である(表7)。非付着(フロースルー)フラクションは全3例のドナーにおいて2%以内の単球(大細胞)を含有していた。したがって、非付着フラクションで単球の有意な損失はない。溶出物中に存在する小細胞群汚染物は、高CD3発現と低いCD19、16、または56マーカー発現から明らかなように、主にT細胞から構成されている(データ示さず)。新鮮および1日経過白血球搬出物間で溶出フラクション中、CD83、CD86、CD11c、HLA‐I、またはHLA‐IIマーカーの発現に明らかな差異はなかった。
【表7】

【0152】
TIP‐DC
単球は最初非常に純粋(90%)であり、全3例のドナーからのTIP‐DCで大細胞の割合が98〜99%で、そのため小細胞の割合が2%未満であることから、純度は分化工程に際して更に改善されていた(データ示さず)。フローサイトメトリーによるTIP‐DCの表現型の分析においては、新鮮および1日経過白血球搬出物から作製されたTIP‐DC間においてCD83の発現に差異があることを明らかにした。陽性細胞の割合は、研究下のマーカーに関して陽性である細胞の数に関する。表面成熟マーカーCD83を発現するDCの%は、1日経過白血球搬出物から作製されたものより新鮮白血球搬出物から作製された全3例のドナーからのTIP‐DCにおいて低かった(表8)。新鮮および1日経過白血球搬出物から作製されたTIP‐DCからのいかなる他のマーカーにも、他の差異はなかった。
【表8】

【0153】
PME‐CD40L DC
トランスフェクション後、4時間
トランスフェクション後のDC(PME‐CD40L DC)をトランスフェクション後4時間目にCD154(CD40L)の発現について分析した。1日経過白血球搬出物からのPME‐CD40L DCは、新鮮白血球搬出物から作製されたPME‐CD40L DCより、トランスフェクション後4時間目にドナー1および2において多くのCD40Lを発現した。ドナー1および2において新鮮および1日経過搬出物から作製されたPME‐CD40L DC間においてCD40Lの平均蛍光強度(MFI)にも差異があった。
【0154】
融解後PME‐CD40L DC
PME‐CD40L DCを融解後に様々なDCマーカーの発現について分析した。新鮮 vs.1日経過白血球搬出物から作製された融解後PME‐CD40L DCの表現型に差異があった。新鮮白血球搬出物から作製されたPME‐CD40L DCにおけるCD40L発現の平均蛍光強度は、1日経過白血球搬出物から作製されたDCより低かった(表9)。
【0155】
ドナー2例において、(CD40L発現で陽性率の)トランスフェクション効率が新鮮白血球搬出物から作製されたDCにおいて低いことを示す傾向もあった(表9)。
【表9】

【0156】
フローサイトメトリーにより測定された陽性細胞の割合は、三つのケースのうち二つにおいて、白血球搬出の1日経過物から作製された樹状細胞において多くの細胞がCD83抗体において陽性染色されることを明らかにした(表10)。
【表10】

【0157】
CD80、CD83、およびCD86について陽性細胞の割合の差異は1日経過白血球搬出物から作製されたDCにおいて常に高いわけではないが(ドナー3、表10)、特異的抗体により染色される1日経過白血球搬出物から作製された細胞の平均蛍光強度は全てのドナーにおいて高い(表11)。CD80、CD86、およびCD83に加えて、HLA‐IおよびHLA‐IIも同様の結果を示した(表11)。平均蛍光強度シグナルは細胞当たりで高いタンパク質レベル発現と相関し、CD80、CD83、CD86、HLA‐I、およびHLA‐II分子の発現は成熟DCにおいて上方調節されている。したがって、これら細胞の表現型は全3例のドナーにおいて1日経過物から得られた樹状細胞の多い成熟状態を反映している。これらの変化はDCの成熟状態を反映している。陽性細胞の割合と平均蛍光強度の測定により得られたデータを一緒にすると、白血球搬出の1日経過物から作製された細胞が多い成熟表現型を示している、と我々は結論付ける。
【表11】

【0158】
例8 新鮮 vs.1日経過単球およびそれから作製された樹状細胞における遺伝子発現のマイクロアレー分析
新鮮単球および1日経過単球(白血球搬出後24時間にわたり16〜20℃においてインキュベートされた単球)からのRNA試料と、例8において記載された新鮮および1日経過単球から作製されたDCからのRNAとを、製造業者の説明(Genechip Expression Analysis Technical Manual,2004)に従い、Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)に適用した。簡単に言えば、Genechip Poly-A RNA Control Kit(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)によりスパイクされた全RNA3μgを、SuperScript II逆転写酵素を用いて、第一鎖cDNAへ変換した。第二鎖cDNA合成に次いで、各転写物の直線的増幅とビオチニル化CTPおよびUTPの取込みのためにインビトロ転写を行った。cRNA産物を約100ヌクレオチドに断片化し、16時間かけてマイクロアレーとハイブリッド形成させた。次いで、マイクロアレーを低(6×SSPE)および高(100mM MES,0.1M NaCl)ストリンジェンシーにおいて洗浄し、ストレプトアビジン‐フィコエリトリンにより染色した。
【0159】
ビオチニル化抗ストレプトアビジンと追加量のストレプトアビジン‐フィコエリトリン染料を加えることにより、蛍光を増幅させた。570nmで励起後3μm分解能で蛍光シグナルを集めるために、GeneChip Scanner 3000(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)を用いた。2連続走査からの平均シグナルを各マイクロアレー特性について計算した。走査画像をGenechip Operating Software v1.1(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)により分析した。Poly-A RNA Control Kit(Affymetrix,Santa Clara,Calif.)に含有されたコントロールRNA4種の高い直線的相関(R>0.95)が、ラベリング工程の成功を保証していると確認された。
【0160】
全てのプロファイルデータをコンピュータープログラムGenespringへ入力し、試料の種類に応じて標準化した(即ち、単球には単球試料および樹状には樹状試料)。三つの工程を標準化工程により行い、Affymetrixアレーに関してGenespringにより示された標準法に従った。
4)データ変換(0.01未満の全値が0.01に設定された)
5)百分順位の50番目に標準化
6)中央値に標準化
【0161】
データは欠けたスポットのあるフラッグについて最初にフィルターにかけた。次いで、データをp.05またはp.1からの信頼性レベルでランダム予測モデルなしに一元配置分散分析により分析した。次いで、フィルターにかけて得られた遺伝子のリストをフォールド変化、発現のレベル、または信頼性について分析した。これは平均として試料を用いてまたは個別試料として行った。新鮮および1日経過単球または樹状細胞間における発現のレベルを分散分析前または後に比較した。遺伝子のリストを互いに比較し、いくつかのリストにおいて重複するものをそれらの信頼度に関して選択した。1日経過単球から作製された樹状細胞 vs.新鮮単球から作製された樹状細胞で定常状態RNAレベルの変化した遺伝子が、表12Aにおいて掲載されている。これら遺伝子の説明が表12Bにおいて掲載されている。1日経過単球vs.新鮮単球で定常状態RNAレベルの変化した遺伝子が、表13Aにおいて掲載されている。これら遺伝子の説明が表13Bにおいて掲載されている。これらの結果は、新鮮単球が1日経過単球と表現型において異なり、新鮮単球から作製された樹状細胞が1日経過単球から作製された樹状細胞と表現型で異なることを証明している。
【0162】
【表12A】

【0163】
【表12B】


【0164】
【表13A】

【0165】
【表13B】

【0166】
新鮮および1日経過単球から作製されたDC間で不変のままであることが示された2種ハウスキーピング遺伝子の発現に対して、樹状細胞遺伝子を更に標準化させた。ハウスキーピング遺伝子に対する発現の比率を算出するために、(標準化された)各遺伝子の平均発現をGAPDH(グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ)またはβ‐アクチンの(標準化された)平均発現で割った。6種遺伝子に関する結果が表14において示される。“DCdo”は1日経過単球から作製されたDCに関する。“DC”は新鮮単球から作製されたDCに関する。
【表14】

【0167】
候補遺伝子のうち2種の単球における異なる発現の、現在までの、追加証明が、表15において示されたプライマーを用いて定量的リアルタイムPCR(QPCR)により行われた。製造業者の説明(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)に従い、RT‐PCR用にオリゴ(dT)プライマーおよびSuperScript III First-Strand Synthesis Systemを用いて、各全RNA(GeneChip合成で用いられたものと同一)から第一鎖cDNAを作製した。製造業者の説明(ABI Prism 7900HT Sequence Detection System User Guide)に従い、ABI Prism 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)を用いてQPCRを行った。TaqMan Gene Expression AssaysまたはCustom TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)をTaqManプローブとして用いた。ABsolute QPCR ROX Mix(ABgene,Surrey,UK)を用いてPCR反応を三重に行った。ABI Prism 7700 Sequence Detection System User Bulletin #2(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)において記載されている相対的標準曲線法を用いて、相対的cDNA濃度の定量を行った。GeneChip分析において各遺伝子における最大発現する1種のcDNAを相対的標準曲線の作成に用いた。全てのデータが内部GAPDH発現と比べた発現として示される。APAF‐1およびCDCA2エフェクタータンパク質2は、新鮮および1日経過単球間において、GAPDHと比べて各々少なくとも2.5倍および3倍減少することが証明された。
【表15】

【0168】
例10 ドナーからの単離時から23、48、または71時間にわたり室温においてインキュベートされたPBMCから作製された樹状細胞の比較
方法:
ドナー2例からの‘健康ドナー’白血球搬出産物を翌日配送後に受け取った。各産物の約1/3を次のようにアフェレーシス採取後特定時にDC作製のために処理した。白血球搬出産物(即ち、PBMC)を下記のフィコール‐ヒストパック密度勾配遠心および付着工程前に23、48、または71時間にわたり室温においてインキュベートした。室温インキュベート時間経過後、PBMCの生存率およびB細胞、T細胞、単球、およびNK細胞の割合を調べた。結果が表16において示される。
【表16】

【0169】
DC産物の作製
PBMCをフィコール‐ヒストパック密度遠心により作製し、PBS中、室温において4回洗浄した。2×10PBMCを30mL AIM‐V培地(Invitrogen)に再懸濁し、37℃において2時間かけて150cmプラスチックフラスコへ付着させた。非付着細胞を除去し、残留細胞を1000U/mL GM‐CSF(Leukine)および1000U/mL IL‐4(R&D systems)を加えたX‐VIVO 15培地において37℃、5%COにおいて5日間培養した。未成熟DCを最初にTNF‐α(10ng/mL)、IFN‐γ(1000U/mL)、およびPGE(1μg/mL)の添加により成熟させた。一晩培養後、TIP‐DC中間産物を培地の除去および冷PBS洗浄により収集した。細胞の成熟群の形成を確認するためにTIP‐DCを表現型を決定した。抗原負荷完全成熟DCを作製するために、TIP‐DCをエレクトロポレートした:細胞を冷Viaspanに4×10/mLにより0.5mLに再懸濁し、氷上に置いた。DCをモデル抗原コードペイロードとして1μg/10細胞で増幅全腫瘍腎臓細胞癌腫mRNA+4μg/10 CD40L mRNAと混合し、4mmギャップエレクトロポレーションキュベットへ入れ、次いでBiorad GenePulsar Xcell systemを用いてエレクトロポレートした。エレクトロポレーション直後に、DCをX‐VIVO 15培地により洗浄し、最後にGM‐CSF(800U/mL)およびIL‐4(500U/mL)を加えたX‐VIVO 15 20mLに1×10/mLにより再懸濁し、低付着T75フラスコ中37℃において4時間培養した。製造業者により記載されているようにヨウ化プロピジウムおよびCalTag計数ビーズを用いて細胞計数と生存率測定とを行った。フィコール後PBMC試料、6日目TIP‐DC、エレクトロポレーションおよび培養後4時間目に回収されたDC(PME‐CD40L DC)、および融解後の最終産物を全て、細胞計数と生存率分析に付した。結果が表17において示される。
【表17】

【0170】
PBMCおよびDC産物の表現型決定
全ての抗体をBD Biosciencesから入手し、製造業者により勧められる希釈倍率において用いた。PBMC:3×10細胞を4℃において30分間にわたる抗体とのインキュベートによりCD19‐PE、CD14‐PE、およびCD3‐PEまたは適合イソタイプ複合化コントロールにおいて各々染色した。インキュベート後、染色された細胞を冷1%FBS/PBSにより3回洗浄し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いてFACScaliburフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いる蛍光分析のためにPBSに再懸濁した。取得の3分前に、ゲーティング目的の生存率用染料としてヨウ化プロピジウム(1μg/mL)を各試料へ加えた。DC:1×10細胞(TIP‐DCおよびPME‐CD40L DC)を冷PBS/1%FBSに再懸濁した。MHC分子(HLA‐ABC、HLA‐DR)、共刺激分子(CD80、CD86)、成熟マーカー(CD83)、または単球/DC系統マーカー(CD14、CD209)に特異的なPEまたはFITC複合化抗体を1×10DCと混合し、4℃において30分間インキュベートした。イソタイプ適合抗体をコントロールとして用いた。入念に洗浄した後、細胞を前記のようにフローサイトメトリーに付した。細胞内CD40Lを次のように調べた:2×10PME‐CD40L DCを4℃において最少10分間から2時間にわたりCytofix/Cytoperm溶液(BD Biosciences)250μLに再懸濁した。細胞を染色用緩衝液(PBS、BSA、NaNおよびEDTA)2mLにより2回洗浄し、染色用緩衝液0.5mLに再懸濁し、4℃において一晩貯蔵した。細胞を15分間にわたりPerm/Wash溶液(BD Biosciences)2.0mLに再懸濁し、遠心し、Perm/Wash溶液100μLに再懸濁した。マウス抗ヒトCD40L APCまたはマウスIgG1 APC20μLを各DC調製物へ加え、暗所下4℃において30分間インキュベートした。細胞をPerm/Wash溶液1mLにより2回洗浄し、フローサイトメトリー分析前に染色用緩衝液に再懸濁した。結果が表18において示される。
【表18】

【0171】
ここで記載された具体的態様は説明のために示され、本発明の限定としてではないことが理解されるであろう。この発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な態様により用いられる。当業者であれば、ここで記載された具体的操作に応じた多くの相当物を、ルーチン実験を用いるだけで突き止められるか、またはそれを認識するであろう。このような相当物も本発明の範囲内に属するとみなされ、特許請求の範囲によりカバーされている。
【0172】
明細書において言及された全ての刊行物および特許出願は、本発明が関与する当業者の技術水準を示す。全ての刊行物および特許出願、特にその関連部分は、各個別の刊行物または特許出願が具体的および個別的に示されて引用することにより本明細書の開示の一部とされる程度に、引用することにより本明細書の開示の一部とされる
【0173】
ここで開示および請求された組成物および/または方法の全てが、本開示からみて過度の実験なしに作製および実施しうる。本発明の組成物および方法が好ましい態様に関して記載されてきたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、ここで記載された組成物および/または方法、および該方法の工程または工程の順序に変更を加えうることは、当業者に明らかであろう。更に詳しくは、化学的および生理的双方で関連したある剤がここで記載された剤に置き換えられ、それでも同一または類似の結果が得られることは、明らかであろう。当業者に明らかな全てのこのような類似した置き換えおよび修正が、添付した特許請求の範囲において規定されているように、本発明の精神、範囲、および概念内に属していると思われる。
【0174】
2回の独立実験による表16のデータは、回収された白血球サブセットにおいて有意な偏差なしに、患者から採取後72時間まで保持されたアフェレーシス産物が高生存PBMC群を生み出せることを示す。各時点におけるPBMCにおけるフラスコの接種と、成熟DC(TIP‐DC)の作製のための培養とは、高頻度の生存細胞をもたらすが、長期間にわたり保持されたアフェレーシス産物を用いたDCの全回収率は減少している(表17)。それにもかかわらず、全増幅腫瘍RNAおよびCD40L RNAでのエレクトロポレーションによる更なる処理により、十分なDCが作製されうる。最も重要なことに、表17および18は、様々な出発産物から作製されたTIP‐DCがエレクトロポレーションと回収に等しく応じられ、最終産物、PME‐CD40L DCへ完全成熟することを示す。この研究から作製されたPME‐CD40L DCは‘ワクチン’として処方され、DC調製物の劣化なしに凍結および融解できる。結論として、採取後72時間まで保持されたアフェレーシス産物は、診療所での適用向けDCワクチンの集中製造に適した実行可能な原料である。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】単球(例えば、白血球搬出産物)の温度制御運搬用に好ましい運搬容器および包装材料の略図。
【図2】RNAトランスフェクトDCは機能的共刺激サポートを提供する。混合リンパ球(MLR)アッセイにおいてPBMCからINF‐γ産生を刺激しうる能力について、DCが試験された。異なるドナー3例から作製された融解DCが、各ドナーからの予め凍結されたPBMCと対にされた。全ての対の賢明な組合せが読み出しとしてELISPOT(INF‐γ)を用いて試験された。カラム1、4、および7は自家PBMCと対にされたDCを表わす。カラム2、3、5、6、8、および9は非自家PBMCと対にされたDCを表わす。カラム10〜12はDC単独コントロールを表わす。カラム13〜14はPBMC単独コントロールを表わす。
【図3】サイトカインカクテル成熟DCが、自家T細胞からTh1サイトカイン産生を刺激しうる能力について、同一ドナーからの未成熟DCと比較された。DCの両群がFluマトリックスタンパク質をコードするRNAによりトランスフェクトされ、自家PBMCからFlu特異的記憶CTLを刺激するために用いられた。ELISPOT分析の結果(投入PBMCの関数として#スポット/ウェル)が示される。4カラムの各組が次の順序により並べられている:未成熟DCによりFlu特異的T記憶細胞から導かれるIFNγ産生、成熟DCによりFlu特異的T記憶細胞から導かれるIFNγ産生、未成熟DCによりFlu特異的T記憶細胞から導かれるIL‐2産生、および成熟DCによりFlu特異的T記憶細胞から導かれるIL‐2産生。
【図4】異なる健康なドナー2例から得られた1日経過PBMCから作製された2種のRNA負荷樹状細胞調製物の各々について2バイアルが融解された。各ドナーから1バイアルがアロMLRアッセイにより直ちに試験され、一方各調製物からの第二バイアルが同法でアッセイされる前に室温において40分間放置された。この実験により用いられたPBMCは、各ドナーからの自家細胞と、いずれにも無関係のドナーからのPBMCの第三の試料であった。このアッセイ用の読み出しはELISPOT(INF‐γ)であった。
【図5】凍結前対融解後におけるDCの機能性が、トランスフェクションに用いられたFlu mRNA濃度を減少させる関数として、自家PBMCからの記憶Flu特異的応答を刺激しうるDCの能力により評価された。アッセイの読み出しはELISPOT(INF‐γ)であった。
【図6】GFPをコードするRNAでのエレクトロポレーション後におけるDCによるGFP発現のフローサイトメトリー評価。トランスフェクトしていない(点線)。
【図7】細胞内サイトカイン染色:GFP(陰性コントロール、左パネル)またはCMV pp65(右パネル)をコードするRNAによりトランスフェクトされたDCにおいて刺激後CD4およびCD8T細胞におけるIL‐2/IFN‐γ。
【図8】GFP(陰性コントロール、左パネル)またはCMV pp65(右パネル)をコードするRNAによりトランスフェクトされたDCによる刺激後のCD4およびCD8T細胞におけるCSFE希釈。
【図9】1日経過の白血球搬出産物から作製された6日目未成熟樹状細胞(iDC)の表現型。
【図10】1日経過の白血球搬出産物から作製された7日目成熟樹状細胞(mDC)の表現型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
b.対象から単離されたときから約6〜96時間にわたり1℃〜34℃の温度においてインキュベートされた単球を用意し、そして
c.前記単球から樹状細胞への分化を誘導する
ことを含んでなる、単球から樹状細胞を作製するための方法。
【請求項2】
前記単球がヒト単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インキュベート温度が6℃〜28℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インキュベート温度が8℃〜26℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
前記インキュベート時間が8〜48時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベート時間が10〜30時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インキュベート時間が26〜72時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記インキュベート時間が48〜80時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
単球から未成熟樹状細胞への分化を誘導する組成物の有効量を含んでなる培地と単球とを接触させることにより分化が誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がGM‐CSFおよびIL‐4、GM‐CSFおよびIL‐13、GM‐CSFおよびIL‐15、またはIFNαである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記単球が、インキュベート時間の全部または一部にわたり、末梢血単核細胞(PBMC)と共存される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記PBMCが白血球搬出法により対象から単離されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単球が、インキュベート時間中またはその後に、PBMCから濃縮されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記単球が、水簸、希釈フィコール勾配遠心、希釈パーコール密度勾配遠心、または磁気ビーズ選別により、PBMCから濃縮されるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単球が、インキュベート時間経過後に単球をプラスチックへ付着させることによりPBMCから濃縮されるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
未成熟樹状細胞を成熟樹状細胞へ成熟させる工程を更に含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
1種以上の抗原を前記成熟樹状細胞へ負荷させることを更に含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程が、未成熟樹状細胞をPGE、TNFα、IL‐6、およびIL‐1βと接触させることを含んでなるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記工程が、前記未成熟樹状細胞をIFN‐γによりシグナリングし、次いでその樹状細胞をCD40Lによりシグナリングすることを含んでなるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記CD40Lによるシグナリングが、樹状細胞内における組み換えCD40L mRNAの翻訳時に行われるものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程が、成熟樹状細胞を作製するために未成熟樹状細胞をPGE、TNFα、およびIFNγと接触させることを含んでなるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
CD40LをコードするRNAおよび/または対象の1種以上の抗原またはエピトープをコードするRNAを、前記成熟樹状細胞にトランスフェクトすることを更に含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記RNAが1種以上の癌細胞抗原をコードするものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記RNAが1種以上の病原体抗原をコードするものである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
抗原負荷樹状細胞を作製するために樹状細胞に1種以上の抗原を負荷させることを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記抗原が対象と自家であるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原をコードする1種以上のRNAを前記樹状細胞にトランスフェクトすることにより前記抗原が負荷される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記樹状細胞がエレクトロポレーションによりRNAによってトランスフェクトされるものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が約1〜4μg RNA/10樹状細胞によりトランスフェクトされるものである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記樹状細胞が抗原負荷の際に未成熟であるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
更に、前記抗原負荷未成熟樹状細胞を抗原負荷成熟樹状細胞へ成熟させることを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗原が1種以上の癌細胞または病原体からのもの、またはそれから誘導されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記癌が、腎臓細胞癌、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、黒色腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、および膵臓癌からなる群より選択されるものである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記病原体がHIVまたはHCVである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
a)少なくとも2%のDMSOを含んでなる凍結樹状細胞ワクチンを融解し、そして
b)投与前に細胞対DMSOの比率を変えることなく対象へ前記融解ワクチンを投与することを含んでなる、対象へ樹状細胞ワクチンを投与する方法。
【請求項36】
前記凍結ワクチン中におけるDMSOの濃度が約10%である、請求項44に記載の方法。
【請求項37】
前記樹状細胞が請求項16に記載の方法により作製されるものである、請求項44に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤が少なくとも2%のDMSOを含んでなり、融解していつでも投与しうるものである、癌または病原体感染症の治療または予防用の凍結薬剤の製造に際する抗原負荷樹状細胞の使用。
【請求項39】
前記薬剤が少なくとも10%のDMSOを含んでなるものである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
請求項16に記載の方法により作製された樹状細胞を含んでなる組成物。
【請求項41】
前記樹状細胞が抗原負荷されているものである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記樹状細胞がCD40LをコードするmRNAによりトランスフェクトされるものである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記成熟樹状細胞が、新鮮単球から作製された成熟樹状細胞と比較して、CD80、CD83、CD86、MHCクラスI分子、またはMHCクラスII分子のうち1種以上を高レベルで有するものである、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
前記成熟樹状細胞が、新鮮単球から作製された成熟樹状細胞と比較して、CD80、CD83、CD86、MHCクラスI分子、またはMHCクラスII分子のうち1種以上を高レベルで有するものである、成熟単球由来樹状細胞を含んでなる組成物。
【請求項45】
前記成熟樹状細胞がCD40LをコードするmRNAにより一時的にトランスフェクトされるものである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
細胞中ALOX15 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である、成熟単球由来樹状細胞。
【請求項47】
前記比率が0.2〜0.7である、請求項46に記載の樹状細胞。
【請求項48】
前記比率が0.4〜0.5である、請求項47に記載の樹状細胞。
【請求項49】
細胞中CD52 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDHの定常状態比が1.0より大きい、成熟単球由来樹状細胞。
【請求項50】
前記比率が1.2〜5.0である、請求項49に記載の樹状細胞。
【請求項51】
前記比率が1.5〜2.2である、請求項50に記載の樹状細胞。
【請求項52】
前記比率が1.8〜1.9である、請求項51に記載の樹状細胞。
【請求項53】
細胞中TLR1 RNA、TLR2 RNA、IL‐1β RNA、またはCD69 RNA対β‐アクチンRNAまたはGAPDH RNAの定常状態比が1.0未満である、成熟単球由来樹状細胞。
【請求項54】
前記比率が0.2〜0.9である、請求項53に記載の樹状細胞。
【請求項55】
前記比率が0.5〜0.8である、請求項54に記載の樹状細胞。
【請求項56】
請求項40〜55のいずれか一項に記載の組成物を含んでなるワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−535493(P2008−535493A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505602(P2008−505602)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/013159
【国際公開番号】WO2006/127150
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505182915)アルゴス セラピューティクス,インコーポレイティド (8)
【出願人】(307023122)キリンファーマ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】