説明

樹脂、樹脂板およびその製造方法

【課題】耐候性や機械的強度に優れ、吸湿や熱による変形が低減された樹脂を提供する。
【解決手段】
JIS A 1415に規定された方法で行なった促進暴露試験(WS−A法、連続照射600時間)の前後の黄変度ΔYIが1.0以下で、JIS K 7171に規定された方法で測定した曲げ応力が80MPa以上、曲げ弾性率が2.5GPa以上である樹脂で、JIS K 7209に規定された方法で測定した際に、飽和含水量が1.6質量%以下、水の拡散係数が1.2×10−6mm/s以上で、JIS K 7191−2に規定された方法(A法)で測定した荷重たわみ温度が90℃以上である樹脂。;このような物性を満足させるアクリル系樹脂;この樹脂からなる樹脂板;およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性や機械的強度に優れ、吸湿や熱による変形が低減された樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂板は、耐候性や機械的強度、成形加工性等にバランスのとれた性質を有しており、シート材料として多方面に使用されている。更に、アクリル系樹脂板は、高透明性、高アッベ数、低複屈折等の光学的にも優れた特性を有している。最近ではこうした特性を活かして、レンズ材料、自動車部品、照明部品、さらに、導光板、光拡散板などのIT用材料として用途が広がっている。
【0003】
しかしながら、アクリル系樹脂板は飽和吸水含量が高く飽和に到達するまでの時間が長いという問題点を有している。すなわち、吸湿による膨張や反りのような変形現象が長時間かけて生じたり、吸湿と乾燥の長期繰り返しサイクルによりクラックが発生したりすることもあるため、その使用が制限されている用途もある。さらに、アクリル系樹脂板は耐熱性が低いため、放熱の激しい光源の周辺材料や車載用途等の適用が制限されることもある。以上の理由から、アクリル系樹脂板の特徴である耐候性や機械的強度を損なうことなく、吸湿や熱による変形を低減させた樹脂が強く望まれている。
【0004】
そこで近年、アクリル系樹脂板の光学的性質を保持しながら、吸湿変形を低減させる技術に関し数多くの提案がなされている。例えばアクリル系樹脂板の飽和含水量を低下させた樹脂として、メタクリル酸メチルとメタクリル酸i−ブチルとの共重合体(例えば、特許文献1参照)、メタクリル酸メチルとメタクリル酸アルキルエステルと少量架橋性単量体の共重合体(例えば、特許文献2、3参照)、メタクリル酸メチルとメタクリル酸シクロヘキシルとの共重合体(例えば、特許文献4参照)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸ベンジルとの共重合体(例えば、特許文献5参照)が提案されている。また、アクリル系樹脂板の飽和含水量を低下させるためスチレンを共重合する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2、3、4、5においては樹脂板の飽和含水量の低下は達成されるものの耐熱性が低下するため、熱による変形が起こりやすくなるほか、特許文献4、5においては樹脂板の機械的強度も低下するという問題を有していた。さらに、スチレンを共重合した樹脂板は透明性や耐候性が低下するという問題があった。
【0006】
また、アクリル系樹脂板を耐熱化する技術に関しても数多くの提案がなされている。例えば、メタクリル酸メチルの重合時に多官能モノマーを添加することにより、架橋構造を導入する方法がある。その一例として、重合時の硬化速度と耐熱性を改良する目的で、メタクリル酸メチル系シロップ系組成物で、炭素数4〜8の直鎖状脂肪族2価アルコールのジ(メタ)アクリル酸エステルを1〜25質量%含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献6参照)。また、主に耐熱性と耐衝撃性を改良する目的で、メタクリル酸メチル単独重合体とメタクリル酸メチルとからなる組成物に、アルキレングリコールの多官能(メタ) アクリル酸エステルを添加して鋳込重合をする方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。さらに、耐熱性を改良する目的で、炭素数1〜4のメタクリル酸アルキルエステルを含むモノエチレン性不飽和単量体およびその(共)重合体を含有するシラップと架橋剤を部分的に重合させて成形する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
【0007】
しかし、特許文献6や7や8においては樹脂板に吸湿による反りが発生する傾向にある。
【特許文献1】特開昭60−26014号公報
【特許文献2】特開昭61−83213号公報
【特許文献3】特開昭61−141716号公報
【特許文献4】特開昭58−5318号公報
【特許文献5】特公平1−20642号公報
【特許文献6】特公平1−41646号公報
【特許文献7】特公平4−75241号公報
【特許文献8】特公平5−6570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐候性に優れ、吸湿や熱による変形が低減され、一定の機械的強度を持つ樹脂に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した従来技術の欠点を解決するために鋭意検討した結果、耐候性に優れ、吸湿や熱による変形が低減され、一定の機械的強度を持つ樹脂を見出した。
【0010】
すなわち本発明の要旨は、JIS A 1415に規定された方法で行なった促進暴露試験(WS−A法、連続照射600時間)の前後の黄変度ΔYIが1.0以下で、JIS K 7171に規定された方法で測定した曲げ応力および曲げ弾性率がそれぞれ80MPa以上、2.5GPa以上であり、JIS K 7209に規定された方法で測定した飽和含水量および水の拡散係数がそれぞれ1.6質量%以下、1.2×10−6mm/s以上であり、さらにJIS K 7191−2に規定された方法(A法)で測定した荷重たわみ温度が90℃以上である樹脂にある。
【0011】
また本発明の要旨は、メタクリル酸メチル単位を含むモノエチレン性不飽和単量体単位20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル単位10〜60質量%を含む前述のアクリル系樹脂にある。
【0012】
さらに本発明の要旨は、メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル10〜60質量%とを含む重合性混合物を重合硬化する工程を有する前述のアクリル系樹脂板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐候性や機械的強度に優れ、吸湿や熱による変形が低減された樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の樹脂は、耐候性の観点から、JIS A 1415に規定された方法で行なった促進暴露試験(WS−A法、連続照射600時間)の前後の黄変度ΔYIが1.0以下であることが必要である。ΔYIが1.0より大きいと、光、特に短波長の光の照射下で樹脂が加速的に劣化する傾向にある。
【0016】
機械的強度の観点から、JIS K 7171に規定された方法で測定した曲げ応力および曲げ弾性率がそれぞれ80MPa以上、2.5GPa以上であることが必要である。曲げ応力が80MPaより小さいと剛性の低い材料となる傾向にあり、曲げ弾性率が2.5GPaより小さいと脆い材料となる傾向にある。樹脂板の成形加工性の観点から、曲げ応力は200MPa以下が好ましく、曲げ弾性率は10GPa以下が好ましい。
【0017】
また、吸湿による変形を低減する観点から、飽和含水量が1.6質量%以下、水の拡散係数が1.2×10−6mm/s以上であることが必要であり、飽和含水量が1.2質量%以下、水の拡散係数が1.5×10mm/s以上であることが好ましい。ここで、飽和含水量、水の拡散係数とはJIS K 7209に規定された方法により測定されたものと定義される。飽和含水量が1.6質量%より大きく、水の拡散係数が1.2×10−6mm/s未満である場合、吸湿による変形が増大する傾向にある。また水の拡散係数が50×10−6mm/s以下であることが好ましい。
【0018】
さらに、熱による変形を低減する観点から、荷重たわみ温度は90℃以上であることが必要であり、100℃以上であることが好ましい。また諸物性の最適化の観点から、荷重たわみ温度は350℃以下であることが好ましい。ここで、荷重たわみ温度とはJIS K 7191−2のA法で測定されたものと定義される。荷重たわみ温度が90℃未満の場合、熱による変形が増大する傾向にある。
【0019】
このような物性を満足させる樹脂は、耐候性の点から(メタ)アクリル酸エステル単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、そのうち特に、メタクリル酸メチル単位を含むモノエチレン性不飽和単量体単位20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル単位10〜60質量%を含むアクリル系樹脂が好ましい。本発明のアクリル系樹脂は、上述の各単位を構成する3種類またはそれ以上の単量体を同時に共重合して得た1種類の共重合体からなる樹脂でもよいし、また、上述の各単位を構成する3種類またはそれ以上の単量体のうち少なくとも1種類の一部をあらかじめ重合体とし、その重合体の存在下に残りの単量体を重合して得た樹脂であってもよい。後者の場合、例えば、メタクリル酸メチルの(共)重合体を含むシラップを用いて重合して樹脂を得ることができる。
【0020】
メタクリル酸メチル単位を含むモノエチレン性不飽和単量体単位の含有量は、樹脂中、20〜80質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%以上であると耐熱性が維持できる傾向にあり、80質量%以下であると飽和含水量が低下し、水の拡散係数が増大する傾向にある。この含有量は、25〜65質量%であることがより好ましい。
【0021】
メタクリル酸メチル単位以外のモノエチレン性不飽和単量体単位としては、後述する炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位以外の各種のものを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリシクロデカニル、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、スチレン、α-メチルスチレン、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、アリルグリシジルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の単量体からなる単位が挙げられる。このうち、熱分解性と耐候性の点で、アクリル酸エステル、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらの単量体単位は、単独で、または2種以上組み合わせてメタクリル酸メチル単位と併用することができる。なお「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」または「アクリル」を意味する。
【0022】
メタクリル酸メチル単位を含むモノエチレン性不飽和単量体単位の総量を100質量部とした場合、メタクリル酸メチル単位の割合は80質量部以上であることが好ましく、それ以外のモノエチレン性不飽和単量体単位の割合は20質量部以下であることが好ましい。この割合にすると、透明性が向上する傾向にある。
【0023】
炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、樹脂中、10〜60質量%であることが好ましい。この含有量が10質量%以上であると飽和含水量が低下し、水の拡散係数が増大するほか、耐候性が向上する傾向にあり、60質量%以下であると耐熱性の低下を比較的抑制できる傾向にある。この含有量は、15〜50質量%であることがより好ましい。
【0024】
炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸n−トリデシル、メタクリル酸n−テトラデシル、メタクリル酸n−ヘキサデシル、メタクリル酸n−ステアリル、メタクリル酸i−ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリシクロデカニル;メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸2−(ペルフルオロオクチル)エチル等のメタクリル酸フルオロアルキルエステル;メタクリル酸3−[18−(ブチルジメチルシリル)オクタデカメチルノナシロキシ]シリルプロピル、メタクリル酸3−[20−(ブチルジメチルシリル)イコサメチルデカシロキシ]シリルプロピル、メタクリル酸3−[22−(ブチルジメチルシリル)ドコサメチルウンデカシロキシ]シリルプロピル等のジメチルシロキサン構造を持つメタクリル酸シリルアルキルエステル;メタクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル等のトリメチルシロキサン構造を持つメタクリル酸シリルアルキルエステル、等の単量体からなる単位が挙げられる。これらは単独で使用することができるし、またこれら2種以上を組み合わせて併用することもできる。
【0025】
ここでのアルキル基は、直鎖構造のもの、側鎖のある分岐構造のもの、環構造のもの、あるいはこれらに置換基を有するものの総称をいう。炭素数2以上のアルキル基が直鎖構造であれば炭素数が多いほど水の拡散係数が増大する傾向にあるため好ましく、アルキル基が分枝構造や環構造であれば耐熱性の低下を抑制できる傾向にあるため好ましい。諸物性の最適化の観点から、炭素数30以下のアルキル基が好ましい。また、水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基であれば、相当するアルキル基と同じ含有量で樹脂の飽和含水量が低くなり、水素がジメチルシロキサン構造およびトリメチルシロキサン構造の少なくとも一方を持つケイ素に置換されたシリルアルキル基であれば、相当するアルキル基と同じ含有量で樹脂の水の拡散係数が増大するため好ましい。
【0026】
3級水酸基を持つ脂肪族アルキルアルコールから誘導されるメタクリル酸アルキルエステル単位の場合、耐熱性の低下を抑制できるが、熱や光に対して不安定で樹脂の劣化を招くことがあるため、1級水酸基、あるいは2級水酸基を持つ脂肪族アルキルアルコールから誘導されるメタクリル酸アルキルエステル単位の方が好ましい。
【0027】
炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、樹脂中、10〜60質量%であることが好ましい。この含有量が10質量%以上であると耐熱性が向上する傾向にあり、60質量%以下であると飽和含水量の上昇と、水の拡散係数の低下を比較的抑制できる傾向にある。この含有量は、15〜50質量%であることがより好ましい。
【0028】
炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル単位としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,2−プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,2−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,5−ペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンなどからなる単位が挙げられる。これらは単独で使用することができるし、またこれら2種以上を組み合わせて併用することもできる。
【0029】
脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールの2つまたは3つの水酸基の間にある炭素数が少ないほど耐熱性が向上する傾向にあるので好ましく、脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールを構成する炭素数が多いほど飽和含水量が低下する傾向にあるので好ましい。このうち、剛直な構造を持ち、透明性、熱や光に対する安定性の点で、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールが特に好ましい。
【0030】
前述の単量体単位を含む樹脂は、公知の重合形式を採用して得ることができる。本発明における重合形式としては、例えばラジカル重合、アニオン重合、グループトランスファー重合(GTP)、配位アニオン重合等が挙げられる。なかでも製造条件の点からラジカル重合が好ましい。
【0031】
ラジカル重合において使用できる重合開始剤としては特に限定されないが、2,2’−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−i−プロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−i−プロピルカーボネート等の過酸化物系開始剤が好ましい。
【0032】
ラジカル重合による重合方法としては特に制限はなく、公知の重合方法を採用し得る。例えば塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。
【0033】
本発明のアクリル系樹脂板の製造方法について、まず、単量体からなる重合性混合物を重合硬化する方法について説明する。この方法においては、メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステルと、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステルとを含む重合性混合物を重合硬化する。
【0034】
メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体の含有量は、重合性混合物中、20〜80質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%以上であると、得られた樹脂板の耐熱性が維持できる傾向にあり、80質量%以下であると飽和含水量が低下し、水の拡散係数が増大する傾向にある。この含有量は、25〜65質量%であることがより好ましい。また、メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体の総量を100質量部とした場合、メタクリル酸メチルの割合は80質量部以上であることが好ましく、それ以外のモノエチレン性不飽和単量体の割合は20質量部以下であることが好ましい。この割合にすると、得られた樹脂板の透明性が向上する傾向にある。
【0035】
炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステルの含有量は、重合性混合物中、10〜60質量%であることが好ましい。この含有量が10質量%以上であると、得られた樹脂板の飽和含水量が低下し、水の拡散係数が増大するほか、耐候性が向上する傾向にあり、60質量%以下であると耐熱性の低下を比較的抑制できる傾向にある。この含有量は、15〜50質量%であることがより好ましい。
【0036】
炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、重合性混合物中、10〜60質量%であることが好ましい。この含有量が10質量%以上であると得られた樹脂板の耐熱性が向上する傾向にあり、60質量%以下であると飽和含水量の上昇と、水の拡散係数の低下を比較的抑制できる傾向にある。この含有量は、15〜50質量%であることがより好ましい。
【0037】
重合性混合物の各成分の具体例は、前述と同様である。
【0038】
次に、シラップを用いた重合性混合物を重合硬化する方法について説明する。
【0039】
シラップは、メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体70〜99質量部およびメタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体からなる(共)重合体1〜30質量部(両者の合計100質量部)からなることが好ましい。
【0040】
シラップ中、モノエチレン性不飽和単量体の含有量が70質量部以上、(共)重合体の含有量が30質量部以下であれば、得られた樹脂板の耐熱性が向上する傾向がある。また、モノエチレン性不飽和単量体の含有量が99質量部以下、(共)重合体の含有量が1質量部以上であれば、外観が向上する傾向がある。シラップを構成するメタクリル酸メチル以外のモノエチレン性不飽和単量体の具体例と両者の好適な組成比は、前述と同様である。ここで、(共)重合体とは、重合体と共重合体との総称を意味する。
【0041】
シラップを構成する(共)重合体は、メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体単位からなるものである。すなわち、メタクリル酸メチル単独重合体、あるいはメタクリル酸メチルおよびこれと共重合し得るモノエチレン性不飽和単量体との共重合体である。(共)重合体を構成するメタクリル酸メチル以外のモノエチレン性不飽和単量体の具体例、およびメタクリル酸メチルとモノエチレン性不飽和単量体の好適な組成比は前述と同様である。また、(共)重合体の数平均分子量は50000以上であれば、得られた樹脂板の外観が向上し重合時間を短縮される傾向にあるため好ましく、数平均分子量が1000000以下であれば、耐候性の低下や熱分解開始温度の低下が回避できる傾向にあるため好ましい。
【0042】
このシラップ20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル10〜60質量%とを含む重合性混合物を重合硬化する。炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステルと、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステルの含有量および具体例は前述と同様である。
【0043】
単量体からなる重合性混合物を重合硬化した場合と、シラップを用いた重合性混合物を重合硬化した場合を比較すると、前者が透過型電子顕微鏡で観察すると均一な構造が観察され、耐熱性も高くなるのに対し、後者が透過型電子顕微鏡で細かい相分離構造が観察され、耐熱性も低くなる。ただし、後者のほうが得られた樹脂板の外観が向上し、重合時間が短縮される傾向にある。
【0044】
重合性混合物の重合のために、前述した公知の重合形式を採用し得る。なかでも製造条件の点からラジカル重合が好ましい。
【0045】
ラジカル重合において使用できる重合開始剤としては特に限定されないが、前述のものが好ましい。
【0046】
ラジカル重合による重合性混合物の重合方法としては特に制限はなく、前述した公知の重合方法を採用し得るが、塊状重合法が好ましい。なかでも、鋳型に重合性混合物を注入し、重合硬化して、鋳型から剥離する、いわゆる鋳込重合法が光学用途のように透明性を要求される用途には特に好ましい。
【0047】
鋳型としては、特に限定されないが、例えば強化ガラスシート、鏡面ステンレスシート,表面に細かな凹凸をつけたガラスシートを一対で使用してもよいし、対向して走行する一対の鏡面ステンレス製のエンドレスベルトを使用してもよい。一対の鋳型間にガスケットを介して空隙を形成することで重合性混合物を注入することができる。
【0048】
重合温度については特に制限はないが、塊状重合の場合、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは40〜160℃の範囲で重合を行なう。また、重合時間は重合硬化の進行に応じて適宜選択することができる。
【0049】
重合性混合物には、必要に応じて、染料、顔料、離型剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤、耐衝撃改質剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、重合調節剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を適宜量配合することができる。
【0050】
本発明のアクリル系樹脂は、前述の重合性混合物に光拡散性フィラーを添加したり、得られた樹脂板の表面にドットパターンを印刷することができ、アクリル系光拡散板用材料として好適なものである。
【0051】
光拡散性フィラーは光を拡散させて光源のイメージを隠蔽する作用を有するものである。光の拡散はフィラーと樹脂との光の屈折率の差によって生じるので、その差は0.03以上であることが好ましい。屈折率の差が小さすぎると隠蔽が不十分となる傾向にある。また成形体の光線透過率を考慮すると屈折率差は1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。
【0052】
なお、汎用性の点からフィラー自体は無色であることが好ましい。フィラーの粒径は隠蔽性や均一性の点で0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。フィラーの含有量は屈折率差や粒径によって左右されるが、隠蔽性や光線透過率を考慮すると、樹脂とフィラーとの合計100質量%中、0.1〜5質量%含有させることが好ましく、0.5〜3質量%含有させることがさらに好ましい。
【0053】
本発明に用いられる光拡散性フィラーの材質は特に制限はないが、上述の性質を兼ね備えた無機物あるいは有機物が好ましい。無機物の例としては、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、クレー、長石、白土、カオリン、セリサイト、ガラス、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカゲル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカゲルが好ましい。
【0054】
有機物の例としては、架橋したポリスチレンや、架橋したポリメタクリル酸メチル、架橋したメタクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、ポリメチルシルセスキオキサン、メラミン樹脂などが挙げられる。またこれらの無機フィラーと有機フィラーを併用することもできる。
【0055】
このように光拡散性フィラーを添加した樹脂板に、さらに表面へのドットパターンの印刷処理を施すことで、高品位性を付与したアクリル系光拡散板が製造可能となる。
【0056】
本発明により、耐候性や機械的強度に優れ、吸湿や熱による変形が低減された樹脂、具体的にはJIS A 1415に規定された方法で行なった促進暴露試験(WS−A法、連続照射600時間)の前後の黄変度ΔYIが1.0以下で、JIS K 7171に規定された方法で測定した曲げ応力および曲げ弾性率がそれぞれ80MPa以上、2.5GPa以上である樹脂であり、かつJIS K 7209に規定された方法で測定した飽和含水量および水の拡散係数がそれぞれ1.6質量%以下、1.2×10−6mm/s以上であり、さらにJIS K 7191−2に規定された方法(A法)で測定した荷重たわみ温度が90℃以上である樹脂を製造することができる。すなわち、この樹脂の物性は前述のように、使用する単量体の組成を適宜所定の割合とすることで得られるものである。そして、このような物性を満足するアクリル系樹脂は、これらの特性が要求される用途としての材料に用いることができ、特に光学材料用途として、光ディスク材料、透明スタンパー用材料、プロジェクションテレビ用レンチキュラーレンズ、プロジェクションテレビ用フレネルレンズ、ピックアップレンズ、カメラ、ビデオ、めがねなどのレンズ用材料、導光板、光拡散板などの液晶ディスプレイ用材料、各種ディスプレイの前面板、プリズム、照明用途、反射材、フィルムなどの材料、家電機器部材用材料、車両用ランプカバーやメーターカバーやバイザーなどの車両用部材の材料、光ファイバー用材料に好適に用いることができる。これらの中でも、特に導光板ならびに光拡散板用材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0058】
(1)ヘーズ
光学特性を評価するために、JIS K 7136に従って測定した。ただし、試験片は50(幅)×50(長手)×2(厚さ)mmのものを用いた。
【0059】
(2)外観
外観を評価するために、ヘーズの測定に用いた試験片と同じ大きさのものを用いて目視により、試験片10個中の白化、ヒケなどの欠陥のない試験片の数をn/10で示した。
【0060】
(3)耐候性
耐候性を評価するために JIS A 1415に規定された促進暴露試験方法のうち、光源としてオープンフレームカーボンアークランプを用いるWS−A法(ブラックパネル温度63±3℃、相対湿度50±5%、水噴霧サイクル;水噴霧12±0.5分、水噴霧停止48±0.5分)を連続照射600時間の条件で行なった。ただし、試験片は75(幅)×50(長手)×2(厚さ)mmのものを用い、片面だけを照射した。JIS K7105に従って、設置前の黄色度(YI)と設置後の黄色度(YI)を測定し、次の式により黄変度ΔYIを求めた。
【0061】
黄変度ΔYI=YI−YI
(4)曲げ応力、曲げ弾性率
機械的強度を評価するために、JIS K 7171に従って測定した。ただし、試験片は12(幅)×126(長手)×3(厚さ)mmのものを用いた。
【0062】
(5)飽和含水量、水の拡散係数
吸湿性を評価するために、JIS K 7209に従って飽和含水量を測定した。ただし、試験片はヘーズの測定に用いた試験片と同じ大きさのものを用いた。試験片の乾燥質量(M1)と、水中への浸漬により平衡に到達した後の吸水質量(M2)を測定し、次の式により飽和含水量Csを求めた。
【0063】
飽和含水量Cs(質量%)=[(M2−M1)/M1]×100
さらに、23度の水に浸漬した際(A法)、水分吸収がフィックの拡散挙動に従うことを確認した上で、飽和含水量の70%の含水量に到達したときの実測時間t70を計測し、下記の近似式により水の拡散係数Dを求めた。
【0064】
拡散係数D(mm/s)=4÷(10×t70
(6)荷重たわみ温度
耐熱性を評価するために、JIS K 7191−2に示されるA法に従って、荷重たわみ温度を測定した。ただし、試験片は曲げ応力と曲げ弾性率の測定に用いたのと同じ大きさのものを用いた。
【0065】
(7)形状安定性
形状安定性を評価するために、画面サイズ20V型の液晶テレビに使用されている光拡散板の大きさ(422(幅)×322(長手)×2(厚さ)mm)の試験片を作成し、60℃、90%RHの環境で平衡に達するまで吸湿させた。シャープ(株)製アクオスLC20シリーズの、光拡散板より画面側にある部材を取り外し、取り付けられている光拡散板の代わりに試験片を装着した。この試験装置を25℃、50%RHの恒温恒湿室に設置し、スイッチを入れることでランプを点灯させ、光拡散板の中心位置における画面の法線方向の変位量をレーザー変位計により計測し、その変位量が1時間で±0.1mm以下になった時点をもって、変位量が安定したと見なし、計測を終えた。安定時の変位量Dsは、試験開始前の位置を基準として、ランプ側の場合プラス値とし、画面側の場合マイナス値とした。同時に安定時までの経過時間Tを求めた。なお、実際のアクオスでは光拡散板から画面側に1mm離れた位置に液晶セルが取り付けられ、光拡散板と液晶セルの間には各種フィルムが設置されているので、光拡散板が画面側に変位した場合(マイナス値)、映像表示の際に画像が乱れる原因となる。また、光拡散板がランプ側に変位した場合(プラス値)も、光拡散板の画面側直上に設置されている光拡散フィルムとの距離が開くため、画面上に輝度分布が生じることになる。
【0066】
(8)光拡散性
光拡散性を評価するために、形状安定性の測定に用いたものと同じ大きさの試験片を40W蛍光灯(松下電器産業(株)製フルホワイトFL40SS N−37)の外器面から5cm離して置き、その試験片と蛍光灯とを結ぶ直線の延長上2m離れて点灯した蛍光灯のランプイメージ(スリムライン)の有無を目視で判定した。
【0067】
(実施例1)
懸濁重合により製造した、数平均分子量80000のメタクリル酸メチル重合体10質量部をメタクリル酸メチル40質量部に溶解して調製したシラップ50質量部と、メタクリル酸i−ブチル35質量部と、ジメタクリル酸エチレングリコール15質量部との混合物100質量部当り、t−ヘキシルパーオキシピバレート0.02質量部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.12質量部、t−ヘキシルパーオキシ−i−プロピルカーボネート0.02質量部、n−オクチルメルカプタン0.05質量部、チヌビン−P0.01質量部(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を添加して均一になるまで攪拌し、脱気して重合性混合物を得た。この重合性混合物を一対の強化ガラスシートにガスケットを挟んで構成された鋳型に注入し、気泡を除き、加熱炉に入れて、80℃で2時間、140℃で2時間重合を行なった。その後、放冷して鋳型を剥離し、アニール処理を施して、厚さが2mmのアクリル系樹脂板を得た。また、上記と同様の組成で厚さが3mmの樹脂板も得た。さらに炭酸カルシウム(重量平均粒子径5μm)3質量部を添加し、同様の製法で光拡散性を評価するための樹脂板(厚さ2mm)を得た。得られた樹脂板の原料組成の一部を表1に、それぞれの樹脂板を切断して作製した試験片による物性評価結果について表2に示す。
【0068】
(実施例2〜5)
表1に示す原料組成を採用したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系樹脂板を製造した。物性評価結果について表2に示す。
【0069】
(実施例6)
原料組成をメタクリル酸メチル49質量部、アクリル酸メチル1質量部、メタクリル酸i−ブチル35質量部と、ジメタクリル酸エチレングリコール15質量部との混合物100質量部に、重合時間を60℃で2時間、80℃で2時間、140℃で2時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系樹脂板を製造した。物性評価結果について表2に示す。
【0070】
(実施例7、8)
表1に示す原料組成を採用したこと以外は、実施例6と同様にしてアクリル系樹脂板を製造した。物性評価結果について表2に示す。
【0071】
(比較例1〜3)
表1に示す原料組成を採用したこと以外は、実施例6と同様にしてアクリル系樹脂板を製造した。物性評価結果について表2に示す。
【0072】
(比較例4)
メタクリル酸メチル単位を90質量部以上含有するアクリル系樹脂板である「アクリライト(登録商標)L」(三菱レイヨン(株)製)の評価結果を表2に示す。
【0073】
(比較例5)
メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体ペレットである「エスチレンMS−600」(新日鐵化学(株)製)を押出成形(成形温度240℃)して得た樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0074】
(比較例6)
ポリカーボネートからなるペレットである「ユーピロンH−3000」(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)を押出成形(成形温度280℃)して得た樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0075】
(比較例7)
シクロオレフィンポリマーからなるペレットである「ゼオノア1420R」(日本ゼオン(株)製)を射出成形(成形温度260℃)して得た樹脂板の評価結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の樹脂は、耐候性や機械的強度に優れ、吸湿や熱による変形が低減された樹脂である。このような樹脂であるアクリル系樹脂は、光ディスク用材料、レンズ用材料、導光板、光拡散板等の液晶ディスプレイ用材料等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A 1415に規定された方法で行なった促進暴露試験(WS−A法、連続照射600時間)の前後の黄変度ΔYIが1.0以下で、JIS K 7171に規定された方法で測定した曲げ応力および曲げ弾性率がそれぞれ80MPa以上、2.5GPa以上であり、JIS K 7209に規定された方法で測定した飽和含水量および水の拡散係数がそれぞれ1.6質量%以下、1.2×10−6mm/s以上であり、さらにJIS K 7191−2に規定された方法(A法)で測定した荷重たわみ温度が90℃以上である樹脂。
【請求項2】
樹脂がアクリル系樹脂である請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
メタクリル酸メチル単位を含むモノエチレン性不飽和単量体単位20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル単位10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル単位10〜60質量%を含む請求項2に記載のアクリル系樹脂。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂板。
【請求項5】
請求項4に記載のアクリル系樹脂板からなる導光板または光拡散板。
【請求項6】
メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル10〜60質量%とを含む重合性混合物を重合硬化する工程を有する請求項4に記載のアクリル系樹脂板の製造方法。
【請求項7】
メタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体70〜99質量部およびメタクリル酸メチルを含むモノエチレン性不飽和単量体からなる(共)重合体1〜30質量部(両者の合計100質量部)から構成されるシラップ20〜80質量%と、炭素数2以上のアルキル基を有する単官能メタクリル酸アルキルエステル10〜60質量%と、炭素数2〜6の脂肪族アルカンジオールまたは脂肪族アルカントリオールから誘導される2官能または3官能(メタ)アクリル酸エステル10〜60質量%とを含む重合性混合物を重合硬化する工程を有する請求項4に記載のアクリル系樹脂板の製造方法。

【公開番号】特開2007−100067(P2007−100067A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178777(P2006−178777)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】