説明

樹脂の種類分別方法

【課題】2つ以上の種類のプラスチックを重なり合わせて成形した積層樹脂製品や、他の種類の樹脂や部材を挟んで成形した積層樹脂製品、特に、薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品の場合は赤外分析による樹脂の種類判別を行う。
【解決手段】樹脂製品の樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別方法であって、樹脂製品の表裏を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表裏が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別ステップと、測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別ステップと、樹脂製品の比重を測定する比重測定ステップと、比重測定ステップから得られた樹脂製品の比重と識別ステップから得られた樹脂の種類に基づく比重とを照合する照合ステップと、を備えることを特徴とする樹脂の種類分別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み樹脂製品の素材の再利用を目的とし、家庭電化製品や自動車等に使われている樹脂の種類分別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂を利用した工業製品は増加しており、我々の身近な生活製品にも深く浸透してきている。
【0003】
そのような中、資源の有効利用、引いては地球環境問題の保全の観点から、使用した製品や製造工程で生じた不良製品に使われている樹脂などの部材、材料を再利用することが求められている。
【0004】
特に、最近は使用済みプラスチック製品に対しての取組みが積極的になされており、再利用するためには、樹脂の種類を識別し、分別しなければならない。
【0005】
例えば、特許文献1などに記載されているプラスチックの種類判別方法では、近赤外線を照射して、プラスチック試料を透過する透過光またはプラスチック試料から反射される反射光により、プラスチックの種類を判別していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−84350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1などに記載されているプラスチックの種類判別方法は、2種類以上の樹脂を重なり合わせて成形した積層樹脂製品や、他の種類の樹脂や部材を挟んで成形した積層樹脂製品の場合は、単一素材と誤って判定してしまう。
【0008】
その結果、単一の樹脂からなる樹脂製品と複数の樹脂からなる樹脂製品とを誤って判定し、再生した樹脂の物性やその再生樹脂製品に悪影響を及ぼすという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、樹脂製品が構成する樹脂の種類が単一か、複数素材かを正確に判定するとともに、単一である場合は、樹脂の種類を識別することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂製品の樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別方法であって、樹脂製品の表裏を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表裏が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別ステップと、測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別ステップと、樹脂製品の比重を測定する比重測定ステップと、比重測定ステップから得られた樹脂製品の比重と識別ステップから得られた樹脂の種類に基づく比重とを照合する照合ステップと、を備えることを特徴とする樹脂の種類分別方法。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の樹脂の種類分別方法によれば、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品であっても、効率的に分別し樹脂製品が構成する樹脂の種類を効率的かつ正確に識別することができる。
【0012】
その結果、高品質な樹脂の再利用が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態における樹脂製品の概略図
【図2】本発明の第一実施形態における樹脂の種類分別方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[第一実施形態]
<1、樹脂製品>
図1は、第一実施形態における樹脂の種類を分別する樹脂製品の概略図である。
【0016】
図1の点線に示すように、樹脂製品1は、表層部2、内層部3および裏層部4に分けている。
【0017】
各部の厚みは樹脂製品によって異なり、各部における樹脂の種類も樹脂製品によって異なる。
【0018】
<2、樹脂の種類分別方法>
次に、使用済み樹脂製品や製造不良に起因する樹脂製品に関し、樹脂製品を構成する樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別方法について説明する。
【0019】
本発明の第一実施形態における樹脂の種類分別方法の一例として、図2を用いて説明する。
【0020】
図2のフローチャートは、第一実施形態における樹脂の種類分別方法を示している。
【0021】
図2に示すように、一重線の四角は、樹脂の種類分別方法における各ステップを示す。二重線の四角は、直前のステップで出た結果を示す。アンダーラインは、樹脂の種類分別方法で分別された結果を示している。
【0022】
すなわち、図2に示すように、樹脂の種類分別方法は、ステップ1の判別ステップ(図面では、「S1」と略記する。以下、同様とする。)と、ステップ2の識別ステップ(S2)と、ステップ3の比重測定ステップ(S3)と、ステップ4の照合ステップ(S4)とを備える。
【0023】
2−1、判別ステップ
本発明の第一実施形態では、判別ステップ(S1)において、樹脂製品1の表層部2および裏層部4に赤外光を照射し、得られた反射光の中赤外波長域(波長範囲2.5〜25μm)におけるスペクトルを得る。
【0024】
そして、表層部2から得られた測定スペクトルと裏層部4から得られた測定スペクトルを照合して、一致した場合は樹脂製品1の表層部2と裏層部4とが同じ一種類の樹脂(表層部2=裏層部4)であると判定する。
【0025】
反対に、樹脂製品1の表層部2と裏層部4との測定スペクトルが一致しない場合(表層部2≠裏層部4)、少なくとも2種類以上の樹脂からなる樹脂製品であると判定することができる。
【0026】
2−2、識別ステップ
次に、識別ステップ(S2)について説明する。
【0027】
樹脂製品1の表層部2と裏層部4とが同じ種類の樹脂と判定した場合、測定スペクトルを、あらかじめ赤外分析しておいた既知素材のデータベーススペクトルと照合し、樹脂の種類を識別する(S2)。
【0028】
2−3、比重測定ステップ
そして、比重測定ステップ(S3)において、樹脂製品1全体の比重を測定する(S3)。
【0029】
2−4、照合ステップ
照合ステップ(S4)では、比重測定ステップ(S3)で得られた比重と、識別ステップ(S2)で得られた樹脂の種類に基づく比重とを照合し、一致した場合は単一素材(表層部2=内層部3=裏層部4)からなる樹脂製品と判定する。
【0030】
反対に、一致しない場合は、樹脂製品1の表層部2と裏層部4とは、同じ種類の樹脂であるが、樹脂製品1の内層部3は、表層部2と裏層部4の樹脂とは異なる種類の樹脂が含まれていると判定(表層部2=裏層部4≠内層部3)する。そのため、少なくとも2種類以上の樹脂からなる積層樹脂製品であると判定することができる。
【0031】
[実施の形態の特徴]
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0032】
(1)
樹脂の種類分別方法は、樹脂製品(1)の樹脂の種類を分別する。
【0033】
そして、樹脂の種類分別方法は、樹脂製品の表(表層部2)裏(裏層部4)を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表(表層部2)裏(裏層部4)が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別ステップと、測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別ステップと、樹脂製品(1)の比重を測定する比重測定ステップと、比重測定ステップから得られた樹脂製品(1)の比重と識別ステップから得られた樹脂の種類に基づく比重とを照合する照合ステップと、を備えることを特徴とする。
【0034】
これにより、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品を効率的に分別し樹脂製品を構成する樹脂の種類が単一か複数かを判別するだけでなく、単一の場合、樹脂を効率的かつ正確に分別することができる。
【0035】
その結果、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品を効率的に分別し、高品質な樹脂の再利用が促進される。
【0036】
(2)
(1)における樹脂の種類分別方法において、識別された樹脂の比重を出力する比重出力ステップを含むことを特徴とする。
【0037】
これにより、識別ステップの際に樹脂の比重がわかっているため、照合ステップの際に新たに樹脂の比重を出力する必要がなくなる。その結果、迅速に樹脂の種類が分別できる。
【0038】
(3)
樹脂製品(1)の樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別装置であって、樹脂の種類分別装置は、樹脂製品(1)の表(表層部2)裏(裏層部4)を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表(表層部2)裏(裏層部4)が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別部と、測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別部と、識別部で識別された樹脂の比重を出力する比重出力部と、樹脂製品(1)の比重を測定する比重測定部と、比重測定ステップから得られた樹脂製品(1)の比重と比重出力部識別から得られた樹脂の比重とを照合する照合部と、を備えることを特徴とする。
【0039】
これにより、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品を効率的に分別し、樹脂製品(1)を構成する樹脂の種類が単一か複数かを分別するだけでなく、単一の場合、樹脂を効率的かつ正確に判別することができる。
【0040】
その結果、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品を効率的に分別し、高品質な樹脂の再利用が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の樹脂の種類分別方法によれば、特に、赤外分析が困難な薄肉樹脂製品やシート状樹脂製品を効率的に分別し、高品質な樹脂の再利用が促進される。
【符号の説明】
【0042】
1 樹脂製品
2 表層部
3 内層部
4 裏層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製品の樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別方法であって、
前記樹脂製品の表裏を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表裏が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別ステップと、
前記測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別ステップと、
前記樹脂製品の比重を測定する比重測定ステップと、
前記比重測定ステップから得られた前記樹脂製品の比重と前記識別ステップから得られた前記樹脂の種類に基づく比重とを照合する照合ステップと、
を備えることを特徴とする樹脂の種類分別方法。
【請求項2】
前記識別ステップにおいて、
識別された前記樹脂の比重を出力する比重出力ステップを含むことを特徴とする
請求項1に記載の樹脂の種類分別方法。
【請求項3】
樹脂製品の樹脂の種類を分別する樹脂の種類分別装置であって、
前記樹脂製品の表裏を赤外分析し、得られた2つの測定スペクトルを照合して表裏が同一の樹脂か否かを判別する樹脂判別部と、
前記測定スペクトルと既知素材のデータベーススペクトルとを照合して樹脂の種類を識別する識別部と、
前記識別部で識別された樹脂の比重を出力する比重出力部と、
前記樹脂製品の比重を測定する比重測定部と、
前記比重測定ステップから得られた前記樹脂製品の比重と前記比重出力部識別から得られた前記樹脂の比重とを照合する照合部と、
を備えることを特徴とする樹脂の種類分別装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−153882(P2011−153882A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14971(P2010−14971)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】