説明

樹脂の透明な線材及びそれを用いた販促用品

【課題】
アイキャッチャーやミニのぼりなどの販促用具の支柱に適応可能な樹脂線材を、透明な線材として提供できるようにする。
【解決手段】
テレフタル酸及び/又はその誘導体と、グリコール変性物との脱水縮合により得られた樹脂からなる棒状品を加熱しながら3〜10倍に延伸加工して巻き取り、該巻き取り品を間隔のある2本のポールに巻きつけて、加熱乾燥した後、直線部分を切り取って得られる透明な線材及びそれを用いた販促用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に用いられる樹脂の透明な線材、特に、商品陳列棚などに取り付けられるアイキャッチャーやミニのぼり等の販促用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、客の視線を引くためや購買意欲を高めるため商品陳列棚などに取り付けられる販促用具には、商品の説明を表記するカードなどの表示部を該商品が並ぶ棚の略上方に掲げられるようにして、離れた場所に居る客の視線をも引くことができるよう構成したものがあり、例えば、陳列棚の棚壁に挟着するクリップに固定した金属や樹脂の支柱の先端に商品の説明を表記するカード表示部を取り付けるアイキャッチャーなどである。
【0003】
しかしながら、商品の説明が表記されるカード表示部を支持する支柱は、針金等の金属や、白濁した樹脂であったため見た目も悪く、特に、新商品や食料品の販促用に用いる場合には、該支柱の白濁が商品イメージを低下させてしまう恐れもあるため、商品の説明が表記されるカード表示部を支持する樹脂支柱の透明化が望まれていた。
また、金属(針金等)が主流であった、アイキャッチャーやミニのぼりの支柱は、安全性(得に処分時)に問題があった。
【0004】
特許文献1には、ポリ乳酸等の結晶性樹脂(段落0021参照)からなる棒状部材の両端部を結晶化して硬化させた後、該両端部をそれぞれ把持具で把持し、該把持具を互いに離れていく方向に相対移動させることにより、前記棒状部材を延伸する樹脂棒延伸方法(請求項1参照)が記載されている。
しかし、段落0017に、「樹脂は通常この結晶化により白化するので結晶化はこの白化により目視確認できる。」と記載されているように、剛性(硬化性)のある樹脂棒は白化する結晶性樹脂でしか作ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−98495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、アイキャッチャーなどの販促用具の支柱に適応可能な、透明な樹脂の線材を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)テレフタル酸及び/又はその誘導体と、グリコール変性物との脱水縮合により得られた樹脂からなる棒状品を加熱しながら、3〜10倍に延伸加工して巻き取り、得られた巻き取り品を再度加熱して直線に伸ばした後、切断して得られる透明な線材。
(2)前記得られた巻き取り品を、間隔のある2本のポールに巻きつけて、加熱乾燥した後、直線部分を切り取って得られる前記(1)に記載の透明な線材。
(3)直径が0.5〜5mmである前記(1)又は(2)に記載の透明な線材。
(4)グリコール変性物が、エチレングリコール及び/又はその誘導体と、シクロヘキサン及び/又はその誘導体との混合物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明な線材。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明な線材からなる販促用具。
(6)アイキャッチャー、又はミニのぼりである前記(5)記載の販促用具。
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る樹脂の透明な線材は、テレフタル酸及び/又はその誘導体と、グリコール変性物との脱水縮合により得られた樹脂からなる棒状品を加熱しながら3〜10倍に延伸加工して巻き取り、得られた巻き取り品を再度加熱して直線に伸ばした後、切断して得られることを特徴とするものである。
【0009】
また、延伸加工して巻き取られた巻き取り品は、間隔のある2本のポールに巻きつけて、加熱乾燥した後、直線部分を切り取ることが望ましい。
【0010】
また、上述の方法で得られる透明な線材は、該直径を0.5〜5mmとするものである。0.5mm未満の場合は、十分な剛性を得ることができず、また、5mm以上の場合は、アイキャッチャーやミニのぼりとして使用するためには、太すぎるためである。
【0011】
本発明に使用する棒状品は、グリコール変性物が、エチレングリコール及び/又はその誘導体と、シクロヘキサン及び/又はその誘導体との混合物を、脱水縮合により得られた樹脂からなるものが好ましい。
【0012】
テレフタル酸及び/又はその誘導体は、具体的にはテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル等が挙げられる。
エチレングリコール及び/又はその誘導体は、具体的には、エチレングリコール等が挙げられる。
また、シクロヘキサン及び/又はその誘導体は、具体的には、シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0013】
そして、得られた透明な線材を、商品の説明が表記されるカード表示部を支持する支柱に用いることにより、アイキャッチャーや、ミニのぼり等の販促用具が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る透明な線材は、従来、白濁により見た目にも悪いアイキャッチャーやミニのぼりなどの販促用具における商品説明が表記されるカード表示部を支持する樹脂支柱を透明にできるので、該支柱の見た目を、スッキリとした清潔感のあるものに変えることができる。
【0015】
したがって、アイキャッチャーやミニのぼりなどの販促用具を新商品や食料品の販促用に用いた場合でも、これらの商品イメージを低下させる恐れがなく、また、支柱の剛性も高になり十分に販促用具の機能を発揮することができる。
【0016】
特に、新鮮、清潔のイメージを重要視する例えば生鮮食料品に対しては、商品説明が表記されるカード表示部を支持する樹脂支柱がスッキリとした清潔感のある透明支柱になるので、商品のイメージ低下を心配せずに安心して使用できる。
【0017】
また、金属(針金)等の支柱を用いたアイキャッチャーやミニのぼりなどの販促用具は、見た目にはいいが、安全性(特に廃棄時)に問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】樹脂の透明な線材の製造工程を示すブロック構成図
【図2】棒状品形成工程
【図3】加熱延伸加工工程
【図4】ポール装置の斜視図
【図5】アイキャッチャーの図
【図6】ミニのぼりの図
【図7】剛性試験の写真の模写(写真は補足資料として提出)
【図8】写真の模写に数値を記入したもの(写真は補足資料として提出)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る樹脂の透明な線材の製造工程を、以下、添付図面に基づいて説明する。
【0020】
本発明に係る樹脂の透明な線材は、棒状品形成工程(図1A参照)で、先ず、テレフタル酸及び/又はその誘導体と、グリコール変性物との脱水縮合により得られた樹脂を、押出機1(図2参照)を用いて棒状品(太い)2を丸巻取り3に巻き取る。
【0021】
次いで、得られた棒状品(太い)2を図3に示す加熱延伸加工程(図1B参照)において、延伸加工機(炉)5(図3参照)で90℃以上、好ましくは120℃以上の温度で加熱しながら3〜10倍に引っ張り伸ばして、丸巻取り3に巻き取り、剛性のある直径が0.5〜5mmの棒状品(細い)2aを得る。
【0022】
次いで、上記直径0.5〜5mmに延伸加工が行われた棒状品(細い)2aを、間隔のある2本のポール7、7(図4参照)に巻きつける(図1C参照)。
【0023】
次いで、上記ポール装置6に巻き付けた棒状品(細い)2aを、ポール装置6と共に加熱乾燥する(図1D参照)。
なお、棒状品(細い)2aを加熱乾燥する乾燥機(図示せず)は、公知の乾燥機を用いればよい。
【0024】
次いで、上記ポール装置6に巻き付けられている棒状品(細い)2aの直線部を、所定の長さに切断(図1E参照)すると、本発明の透明な線材(まっすぐ(直線)に伸びている線材)が得られる(図1F参照)。
【0025】
図5に、上記製造方法で得た透明な線材を支柱に用いたアイキャッチャーを示しており、図中の符合2bは、本発明の樹脂の透明な線材からなる支柱、符合8は、商品陳列棚の棚壁などに挟着するクリップ、符合9は、商品の説明などが表記されるカードである。
【0026】
図6に、上記製造方法で得た透明な線材を支柱に用いたミニのぼりを示しており、図中の符合2bは、透明な線材からなる支柱、符合10は、商品陳列棚の棚壁や棚面などに吸着する吸盤又はプラスチックの台、符合11は、商品の説明などが表記されるのぼりである。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕本発明の線材の製造
テレフタル酸ジメチルと、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物を、重縮合反応させ、本発明で使用する非晶性樹脂を得た。
得られた非晶性樹脂を図2の押出機1から公知の押出成形法によって得られた棒状品(太い)2を丸巻取り3に巻き取る。
次いで、巻き取った棒状品(太い)2を図3に示す延伸加工機(炉)5で、150℃の温度で加熱しながら、5倍に引っ張り伸ばして、直径2mmの線材を得、丸巻取り3に巻き取る。
次に、巻き取った直径2mmの棒状品(細い)2aを、間隔が1mの2本のポール7、7に巻き付け、80℃で1時間乾燥させる。
その後、ポールに接している部分を切り取って、直径2mm、長さ1mの本発明の線材を得た。得られた線材は、透明で、優れた剛性を有していた。
【0028】
〔比較例〕比較線材の製造
実施例1と同様にして、非晶性樹脂を得た。
得られた非晶性樹脂を図2の押出機1から公知の押出成形法によって、直径2mmの棒状品(細い)2aを得、丸巻取り3に巻き取る。
次に、巻き取った直径2mmの棒状品(細い)2aを、間隔が1mの2本のポール7、7に、巻き取った直径2mmの棒状品(細い)2aを巻き付け、80℃で1時間乾燥させる。
その後、ポールに接している部分を切り取って、直径2mm、長さ1mの比較線材を得た。得られた比較線材は、透明であった。
【0029】
〔剛性試験〕
実施例1で得られた直径2mm、長さ1mの本発明の線材と、比較例で得られた直径2mm、長さ1mの比較線材の先端部30mmを壁にビニールテープで、床と垂直方向に端部固定して、自然に垂れ下がった状態の様子(剛性)を比較した。
【0030】
図7は、壁に端部固定した線材の剛性を写した写真(補足資料として提出)の模写である。図8は、図7の模写に端部固定したA地点からの距離(長さ)を記入したものである。
図8において、本発明の線材ABは、先端Bが地点Aより760mm高い地点でも上を向いている優れた剛性を有している。
一方、延伸加工処理を行っていない比較線材ACDは、A地点からわずか100mmの高さ(地点C)にピークがあり、その先は先端Dまで垂れ下がっていて、剛性のないことが確認された。
このように、本発明の線材ABは、優れた剛性を有しているため、アイキャッチャー等の販促用具として、有用である。
【0031】
透明性について
本発明の線材、比較線材とも透明であった。
このことは、補足資料として提出する写真で、A地点、C地点及びD地点の線材の色が、格子と同じ茶色を示していることから、透明であることがわかる。
なお、B地点の線材が茶色でないのは、蛍光灯の照明の影響で線材が光っているためである。
【0032】
〔実施例2〕アイキャッチャーの製造
実施例1で得られた直径2mmの本発明の線材に、公知の方法でクリップ8とカード9を取り付け、本発明のアイキャッチャーを得た。
得られたアイキャッチャーは、支柱2bが透明であるため、特に食料品や新商品等の販促用として、新鮮なイメージがある。
【0033】
〔実施例3〕ミニのぼりの製造
実施例1で得られた直径2mmの本発明の線材に、公知の方法で吸盤10とのぼり11を取り付け、本発明のミニのぼりを得た。
得られたミニのぼりは、支柱2bが透明であるため、新商品等の販促用として、新鮮なイメージがある。
【符号の説明】
【0034】
1 押出機
2 棒状品(太い)
2a 棒状品(細い)
2b 支柱
3 丸巻取り
4 ローラー
5 延伸加工機(炉)
6 ポール装置
7 ポール
8 クリップ
9 カード
10 吸盤又はプラスチックの台
11 のぼり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸及び/又はその誘導体と、グリコール変性物との脱水縮合により得られた樹脂からなる棒状品を加熱しながら、3〜10倍に延伸加工して巻き取り、得られた巻き取り品を再度加熱して直線に伸ばした後、切断して得られる透明な線材。
【請求項2】
前記得られた巻き取り品を、間隔のある2本のポールに巻きつけて、加熱乾燥した後、直線部分を切り取って得られる請求項1に記載の透明な線材。
【請求項3】
直径が0.5〜5mmである請求項1又は2に記載の透明な線材。
【請求項4】
グリコール変性物が、エチレングリコール及び/又はその誘導体と、シクロヘキサン及び/又はその誘導体との混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明な線材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明な線材からなる販促用具。
【請求項6】
アイキャッチャー、又はミニのぼりである請求項5記載の販促用具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39758(P2013−39758A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178770(P2011−178770)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(592178071)弘進化工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】