説明

樹脂シートの製造方法

【課題】成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートを製造した際に、欠陥なく所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】ダイ12より押し出したシート状の樹脂材料14を型ローラと型ローラに対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に転写し、転写後の樹脂材料を型ローラに対向配置される剥離ローラ24に巻き掛けることにより型ローラより剥離する樹脂シートの製造方法である。樹脂シートの凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し型ローラの凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂シートの凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂シートの製造方法に係り、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学素子に使用される樹脂シートとして、フレネルレンズやレンチキュラーレンズ等が様々な分野で使用されている。このような樹脂シートの表面には、規則的な凹凸形状が形成されており、この凹凸形状により、フレネルレンズやレンチキュラーレンズとしての光学的性能を発揮している。
【0003】
このような樹脂シートを製造する方法として、これまでに各種の提案がなされている(特許文献1〜4参照)。これらの提案においては、いずれも、生産性向上の観点よりローラ成形方式が採用されている。
【0004】
たとえば、特許文献1は、樹脂シートをローラから剥離するまでの間の冷却手段に工夫を施すことにより、転写性の向上を図っている。特許文献2は、ローラに金型を巻き付けてフレネルレンズを製造する方法を開示している。
【0005】
特許文献3は、成形ローラの内部に熱緩衝部材を配して、生産性及び転写性の向上を図っている。特許文献4は、コロナ放電処理を採用することにより、転写性の向上、欠陥の低減を図っている。
【0006】
これら従来技術の代表的なローラ成形方式は、図6に示される構成のようになっている。この装置構成は、押出し機(図示略)によって溶融された樹脂材料1をシート状に賦形するためのシート用のダイ2と、表面に凹凸形状が形成されたスタンパーローラ3と、スタンパーローラ3に対向配置される鏡面ローラ4と、スタンパーローラ3に対向するとともに、鏡面ローラ4の反対側に配置される剥離用鏡面ローラ5よりなる。
【0007】
そして、ダイ2より押し出したシート状の樹脂材料1を、スタンパーローラ3と鏡面ローラ4とで挟圧し、スタンパーローラ3表面の凹凸形状を樹脂材料1に転写し、樹脂材料1を剥離用鏡面ローラ5に巻き掛けることによりスタンパーローラ3より剥離する。
【特許文献1】特開平8−31025号公報
【特許文献2】特開平7−314567号公報
【特許文献3】特開2003−53834号公報
【特許文献4】特開平8−287530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の提案は、いずれも、比較的薄肉の樹脂シートを製造する方法に関するものであり、比較的厚肉の樹脂シートの製造には適していない。特に、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートを製造した場合には、所望の断面形状を得るのが非常に困難である。
【0009】
たとえば、PMMA(ポリメチルメタクリレート樹脂)を押し出し後にローラ成形する際に、幅方向に厚さ分布を付け、最厚肉部と最薄肉部との厚さの差を1mm以上とした場合、表面又は裏面に凹凸(樹脂の硬化時の収縮による引け、弾性回復量分布)を生じたり、全体的に表面形状転写率が低下したり、シャープエッジ形状が転写できなかったり、各種の問題がある。
【0010】
また、上記従来の提案では、既述の図6に示される構成において、スタンパーローラ3表面の凹凸形状を樹脂材料1に転写した後に、樹脂材料1が収縮して凹凸形状が設計形状と相違することとなる問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートを製造した際に、欠陥なく所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を型ローラと該型ローラに対向配置されるニップローラとで挟圧し、該型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、転写後の前記樹脂材料を該型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより該型ローラより剥離する樹脂シートの製造方法であって、樹脂シートの凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂シートの凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることを特徴とする樹脂シートの製造方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、ダイより押し出した樹脂材料を型ローラとニップローラとで挟圧し、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に転写する方法において、樹脂シートの凹凸形状の設計値に対し型ローラの厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とする。このような型ローラを使用することにより、樹脂材料が収縮しても凹凸形状が設計形状と相違する量は非常に小さいか、実質上ゼロとなる。
【0014】
したがって、本発明によれば、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートであっても、欠陥なく所望の断面形状を得ることができる。
【0015】
なお、上記の樹脂シートの凹凸形状の設計値に対する型ローラの倍率(比率)は、常温(室温)状態での値である。
【0016】
また、本発明は、ダイより押し出したシート状の樹脂材料と該樹脂材料の片面側に供給されるバックアップシートとを前記樹脂材料が型ローラ側に、前記バックアップシートがニップローラ側になるようにして、前記型ローラと該型ローラに対向配置される前記ニップローラとで挟圧し、該型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、転写後の前記樹脂材料と前記バックアップシートとの積層体を該型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより該型ローラより剥離する樹脂シートの製造方法であって、樹脂シートの凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂シートの凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることを特徴とする樹脂シートの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、ダイより押し出した樹脂材料と、この樹脂材料の片面側に供給されるバックアップシートとを樹脂材料が型ローラ側に、バックアップシートがニップローラ側になるようにして、型ローラとニップローラとで挟圧し、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に転写する方法において、樹脂シートの凹凸形状の設計値に対し型ローラの厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とする。このような型ローラを使用することにより、樹脂材料が収縮しても凹凸形状が設計形状と相違する量は非常に小さいか、実質上ゼロとなる。
【0018】
したがって、本発明によれば、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートであっても、欠陥なく所望の断面形状を得ることができる。
【0019】
本発明において、前記樹脂材料に転写される凹凸形状により、該樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が1mm以上となることが好ましい。また、本発明において、前記樹脂材料の最薄肉部の厚さが5mm以下であることが好ましい。このように、従来、成形が困難であった、断面形状の樹脂材料の成形において、本発明の効果が発揮できる。
【0020】
また、本発明において、前記樹脂材料がポリメチルメタクリレート樹脂であることが好ましい。ポリメチルメタクリレート樹脂(以下、PMMAと略す)は、熱可塑性樹脂として成形性及び形状安定性がよく、本発明の用途の最適である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートであっても、欠陥なく所望の断面形状を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明に係る樹脂シートの製造方法及び装置の好ましい実施の形態(第1実施形態)について詳説する。図1は、本発明に係る樹脂シートの製造方法が適用される、樹脂シートの製造ラインの例を示す構成図である。
【0023】
この樹脂シートの製造ライン10は、押出し機11によって溶融された樹脂材料14をシート状に賦形するためのシート用のダイ12と、表面に凹凸形状が形成された型ローラ16と、型ローラ16に対向配置されるニップローラ18と、型ローラ16に対向配置される剥離ローラ24と、バックアップシート20を連続的に供給するシート繰り出し手段26と、バックアップシート20を収納するシート巻回手段28と、樹脂材料14及びバックアップシート20の搬送を支持する複数のガイドローラ22、22…等とより構成されている。
【0024】
ダイ12のスリットサイズは、成形された溶融樹脂材料14の幅が型ローラ16の型の幅よりも広くなるように形成され、また、このダイ12から押し出される溶融樹脂材料14が型ローラ16とニップローラ18との間に押し出されるように配置されている。ここで重要なことは、ダイ12の吐出口(中心線が符号Cで示される)を、型ローラ16とニップローラ18との共通接線Sに対し型ローラ16側に設けることである。このような配置とすることにより、樹脂材料14とバックアップシート20との間に空気を混入することが大幅に低減し、成形後の樹脂シートの裏面欠陥が大幅に低減する。
【0025】
型ローラ16の表面には、規則的な凹凸形状が形成されている。この規則的な凹凸形状は、たとえば、図2に示される成形後の樹脂材料14の反転形状とすることができる。この図2は、成形後の樹脂材料14の端面14Aを直線状に切り取った状態の斜視図である。
【0026】
すなわち、樹脂材料14の裏面は平面であり、樹脂材料14の表面に矢印に平行な直線状の凹凸パターンが形成されている。この矢印は、樹脂材料14の走行方向を示す。したがって、型ローラ16の表面には、端面14Aの反転形状のエンドレス溝を形成すればよい。なお、樹脂材料14表面の凹凸パターン形状の詳細については後述する。
【0027】
型ローラ16の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0028】
型ローラ16表面の凹凸パターン形成方法としては、凹凸パターン(ピッチ、深さ、等)や型ローラ16表面の材質にもよるが、一般的にはNC旋盤による切削加工と仕上げバフ加工との組み合わせが好ましく採用できる。また、他の公知の加工方法(研削加工、超音波加工、放電加工、等)も採用できる。
【0029】
型ローラ16表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0030】
型ローラ16は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。また、型ローラ16には、温度調節手段が施されている。このような温度調節手段が設けられることにより、高温状態の樹脂材料14による型ローラ16の温度上昇や急激な温度低下を抑制すべく制御できる。
【0031】
このような温度調節手段としては、ローラ内部に温度調節したオイルを循環させる構成が好ましく採用できる。このオイルの供給と排出は、ローラの端部にロータリージョイントを設ける構成により実現できる。図1の樹脂シートの製造ライン10においては、この温度調節手段が採用されている。
【0032】
ニップローラ18は、型ローラ16に対向配置され、型ローラ16とにより樹脂材料14とこの背面に積層されたバックアップシート20を挟圧するためのローラで、走行方向上流側において型ローラ16と同一高さに配置されている。
【0033】
ニップローラ18の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる。そして、ニップローラ18表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0034】
ニップローラ18の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0035】
ニップローラ18は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。なお、ニップローラ18に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0036】
ニップローラ18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラ16との間の樹脂材料14を所定の圧力で挟圧できるようになっている。この加圧手段は、ニップローラ18と型ローラ16との接触点における法線方向に圧力を印加する構成のもので、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段が採用できる。
【0037】
ニップローラ18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラ18の背面側(型ローラ16の反対側)にバックアップローラを設ける構成、クラウン形状(中高形状とする)を採用する構成、ローラの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラの構成、及びこれらを組み合わせた構成等が採用できる。
【0038】
ニップローラ18には、温度調節手段が施されている。ニップローラ18のローラ設定温度は、樹脂材料14の材質、樹脂材料14の溶融時(たとえば、ダイ12のスリット出口)の温度、樹脂材料14の搬送速度、型ローラ16の外径、型ローラ16の凹凸パターン形状等によって最適な値を選択すべきである。
【0039】
ニップローラ18のローラ温度調節手段としては、ローラ内部に温度調節したオイルを循環させる構成が好ましく採用できる。このオイルの供給と排出は、ローラの端部にロータリージョイントを設ける構成により実現できる。図1の樹脂シートの製造ライン10においては、この温度調節手段が採用されている。
【0040】
他の温度調節手段としては、たとえば、ローラの内部にシースヒータを埋め込む構成、ローラの近傍に誘電加熱手段を配する構成等、公知の各種手段が採用できる。
【0041】
バックアップシート20としては、樹脂フィルム、金属箔(アルミニウムウェブ、鉄、ステンレス鋼、銅、真鍮、亜鉛等)等を使用できる。樹脂フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート等の公知のものが使用できる。これらのうち、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましく使用できる。
【0042】
バックアップシート20のガラス転移温度Tg20は、樹脂材料14のガラス転移温度Tg14より大であることが好ましい。このように、バックアップシート20の熱変形が樹脂材料14より小であれば、バックアップシート20の変形が防止できる。
【0043】
また、バックアップシート20の縦弾性係数が使用環境下で1×10N/mm以上であることが好ましい。このように、バックアップシート20の縦弾性係数(いわゆるヤング率)が適正範囲にあれば、バックアップシート20の剛性により樹脂材料14の過度の変形が防止できる。
【0044】
また、バックアップシート20の厚さが0. 5〜100μmであることが好ましい。このような厚さのバックアップシート20であれば、適度な可撓性と適度な剛性が得られる。
【0045】
バックアップシート20の幅としては、樹脂材料14の幅と略同一サイズが好ましく、、バックアップシート20の長さとしては、1000〜100000mが一般的に採用される。ただし、これ以外のサイズの適用も妨げられるものではない。
【0046】
これらのバックアップシート20は、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行っておいてもよい。バックアップシート20の表面粗さRaはカットオフ値0.25mmにおいて3〜10nmが好ましい。
【0047】
なお、バックアップシート20の樹脂材料14と接する面の略全面に凹凸形状、たとえば、エンボス加工形状、ブラッシング形状、ブラスト形状、ピーニング形状、プリズム形状等を施すこともできる。このようにすれば、樹脂材料14の裏面もこの反転形状にできる。
【0048】
シート繰り出し手段26は、バックアップシート20を連続的に供給するものであり、支持腕26Dの両端部に、バックアップシート20が巻回され繰り出し中の原反ロール26Aと、新規の(予備の)原反ロール26Bが設けられており、支点26Cを回動中心とした支持腕26Dの回動により、バックアップシート20を連続走行させながら、繰り出し中の原反ロール26Aと、新規の(予備の)原反ロール26Bとを交換できるようになっている。
【0049】
シート繰り出し手段26より繰り出されたバックアップシート20は、ガイドローラ22を経て樹脂材料14の背面に供給され、型ローラ16とニップローラ18との間に送り込まれるようになっている。
【0050】
型ローラ16の下側には、ニップローラ18から剥離ローラ24に向って3個の補助ローラ19(上流から順に、第1の補助ローラ19A、第2の補助ローラ19B、第3の補助ローラ19C)が配されている。この補助ローラ19は、ニップローラ18の押圧の補助、及び樹脂材料14の冷却を目的として設けられている。
【0051】
したがって、補助ローラ19には、温度調節手段が施されている。補助ローラ19のローラ設定温度は、樹脂材料14の材質、樹脂材料14の溶融時(たとえば、ダイ12のスリット出口)の温度、樹脂材料14の搬送速度、型ローラ16の外径、型ローラ16の凹凸パターン形状等によって最適な値を選択すべきである。
【0052】
剥離ローラ24は、型ローラ16に対向配置され、樹脂材料14とバックアップシート20の積層体を巻き掛けることにより樹脂材料14を型ローラ16より剥離するためのローラで、型ローラ16を挟んでニップローラ18の180度下流側に配置されている。なお、剥離ローラ24の配置は、これ以外の態様も可能である。
【0053】
剥離ローラ24の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる。そして、剥離ローラ24表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0054】
剥離ローラ24の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0055】
剥離ローラ24は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。なお、剥離ローラ24に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0056】
剥離ローラ24には、温度調節手段が施されている。そして、適正な設定温度にすることにより、樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状を良好にできる。
【0057】
以上に説明した各ローラ、及び、樹脂材料14の各箇所の表面温度がモニターできるように、表面温度測定手段(図示略)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
【0058】
このような表面温度測定手段による測定箇所としては、たとえば、ダイ12と型ローラ16との間の樹脂材料14の幅方向の複数点、剥離ローラ24の直後の樹脂材料14の幅方向の複数点、型ローラ16や剥離ローラ24に巻き掛けられている樹脂材料14の幅方向の複数点の表面(ローラの反対面側)、等が考えられる。
【0059】
また、このような表面温度測定手段のモニター結果を各ローラの温度調節手段やダイ12等にフィードバックして各ローラ等の温度制御に反映させることもできる。なお、表面温度測定手段を設けずに、フィードフォワード制御により運転することも可能である。
【0060】
図1の樹脂シートの製造ライン10又はその下流に、樹脂材料14の張力を検出するテンション検出手段を設けたり、樹脂材料14の板厚を検出する板厚検出手段(厚さセンサ)を設けたりすることも、好ましく採用できる。また、このような検出手段による検出結果を設定値と比較し、ドロー制御(下流に行く程増速する実施形態)にフィードバックすることもできる。
【0061】
徐冷ゾーン30(又はアニーリングゾーン)は、剥離ローラ24の下流における樹脂材料14の急激な温度変化を防止するために設けられたものである。樹脂材料14に急激な温度変化を生じた場合、たとえば、樹脂材料14の表面近傍が弾性状態になっているのに、樹脂材料14の内部が塑性状態であり、この部分の硬化による収縮で樹脂材料14の表面形状が悪化する。また、樹脂材料14の表裏面に温度差を生じ、樹脂材料14に反りを生じる不具合もある。
【0062】
徐冷ゾーン30としては、水平方向のトンネル形状とし、トンネル内部に温度調節手段を設け、樹脂材料14の冷却温度プロファイルを制御できる構成が採用できる。温度調節手段としては、複数のノズルより温度制御されたエア(温風又は冷風)を樹脂材料14に向けて噴出させる構成、加熱手段(ニクロム線ヒータ、赤外線ヒータ、誘電加熱手段等)により、樹脂材料14の表裏面をそれぞれ加熱する構成等、公知の各種手段が採用できる。
【0063】
徐冷ゾーン30(又はアニーリングゾーン)の下流には、剥離部32が形成されている。この剥離部32において、樹脂材料14はガイドローラ22、22…で支持されて、直線状に右方に搬送され、バックアップシート20はガイドローラ22、22…で支持されて、右下方に搬送される。
【0064】
このように、剥離部32において樹脂材料14よりバックアップシート20を剥離すれば、製品としての樹脂材料14の扱いが容易となる。
【0065】
剥離部32の下流には、樹脂材料14に対して、洗浄装置(洗浄ゾーン)、欠陥検査装置(検査ゾーン)、ラミネート装置、サイドカッター、クロスカッター、集積部が順に設けられる(いずれも図示を略す)。
【0066】
このうち、ラミネート装置は、樹脂材料14の表裏面に保護フィルム(ポリエチレン等のフィルム)を貼り付ける装置であり、サイドカッターは、樹脂材料14の幅方向両端部分(捨て部分)を切除する装置であり、クロスカッターは、樹脂材料14を所定長さに切り揃える装置である。
【0067】
上記装置のうち、用途に応じて、いくつかを省略することもできる。
【0068】
剥離部32の下流には、バックアップシート20に対して、ダンサーローラ34、クリーニング手段(図示略)、駆動ローラ36、シート巻回手段28が順に設けられている。
【0069】
このうち、ダンサーローラ34は、バックアップシート20のテンション(張力)を調整するためのもので、回動支点34Aと、一端が回動支点34Aで支持される回動腕34Bと、回動腕34Bの他端に支持されるローラ34Cとより構成される。そして、回動腕34Bが図の矢印方向に付勢されることにより、バックアップシート20のテンションが調整できるようになっている。
【0070】
クリーニング手段は、バックアップシート20の表面に付着した塵埃等の汚染(コンタミネーション)を除去するためのもので、クリーニングテープ又はクリーニングローラをバックアップシート20に押し付けるタイプのものや、除電したクリーンエア(窒素ガス等でも可)をバックアップシート20に吹き付けるタイプのもの等、公知の各種手段が採用できる。
【0071】
駆動ローラ36は、ローラ36Aとローラ36Bとでバックアップシート20を挟み(ニップし)バックアップシート20を搬送させるための機構であり、ローラ36Aとローラ36Bの少なくとも1方が回転駆動されるようになっている。
【0072】
シート巻回手段28は、バックアップシート20を収納するものであり、支持腕28Dの両端部に、バックアップシート20が巻回され収納中の巻き芯28Aと、新規の(予備の)巻き芯28Bが設けられており、支点28Cを回動中心とした支持腕28Dの回動により、バックアップシート20を連続走行させながら、収納中の巻き芯28Aと、新規の(予備の)巻き芯28Bとを交換できるようになっている。
【0073】
次に、図1に示される樹脂シートの製造ライン10による樹脂シートの製造方法について説明する。
【0074】
本発明に適用される樹脂材料14としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0075】
ダイ12より押し出したシート状の樹脂材料14と、シート繰り出し手段26より繰り出され、樹脂材料14の裏面に供給されたバックアップシート20との積層体を、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ16表面の凹凸形状を樹脂材料14に転写し、樹脂材料14とバックアップシート20との積層体を型ローラ16に対向配置される剥離ローラ24に巻き掛けることにより型ローラ16より剥離する。
【0076】
この際、型ローラ16とニップローラ18と剥離ローラ24の表面温度を、型ローラ16、ニップローラ18、剥離ローラ24の順で低くなるように制御する。これにより、バックアップシート20の使用による効果と相俟って、各ローラからの樹脂材料14の剥離性が向上する。
【0077】
また、ダイ12の吐出口(中心線が符号Cで示される)が、型ローラ16とニップローラ18との共通接線Sに対し型ローラ16側に設けられているので、樹脂材料14とバックアップシート20との間に空気を混入することが大幅に低減され、成形後の樹脂シートの裏面欠陥が大幅に低減する。
【0078】
型ローラ16より剥離した樹脂材料14(バックアップシート20との積層体)を、水平方向に搬送し、徐冷ゾーン30を通過することにより徐冷し、歪みが除去された状態で、剥離部32においてバックアップシート20を分離し、下流の製品取り部において所定長さに切断し、樹脂シートの製品として収容する。
【0079】
一方、剥離部32において樹脂材料14より分離されたバックアップシート20は、クリーニング手段において汚染が除去され、シート巻回手段28において巻き芯28Aに巻回され収納される。この巻き芯28Aに巻回されたバックアップシート20は、再度使用が可能である。
【0080】
この樹脂シート14の製造において、ダイ12よりの樹脂材料14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速、ニップローラ18の周速、及びバックアップシート20の搬送速度も略これに一致させる。
【0081】
なお、各ローラの速度ムラは、設定値に対して1%以内になるように制御することが好ましい。
【0082】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(0〜200kgf/cm)とするのが好ましく、0〜100kN/m(0〜100kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0083】
ニップローラ18及び剥離ローラ24の温度制御は、既述のようにし、個々のローラ毎に行うことが好ましい。そして、剥離ローラ24の箇所における樹脂材料14が樹脂の軟化点Ta以下の温度になっていることが好ましい。この際、樹脂材料14にポリメチルメタクリレート樹脂を採用した場合、剥離ローラ24の設定温度は、50〜110°Cとできる。
【0084】
次に、樹脂材料14表面の凹凸パターン形状の詳細について説明する。図2は、既述したように、成形後の樹脂材料14の端面14Aを直線状に切り取った状態の斜視図である。樹脂材料14の裏面は平面である。
【0085】
樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状は、長手方向(図の矢印方向)の直線状の凹凸パターンである。このパターンは、樹脂材料14の最厚肉部14Bに形成されるV溝50と、このV溝50の両縁より樹脂材料14の最薄肉部14Cに向かって直線状に板厚が減少していくテーパ部52、52が繰り返される形状である。すなわち、V溝50の中心線に対して線対象となる、V溝50及び両側のテーパ部52、52を1単位(1ピッチ)とした連続形状である。
【0086】
図2において、樹脂材料14の最薄肉部14Cの厚さは、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとの厚さの差は、1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に使用できる。
【0087】
成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、V溝50の内部に円柱状の冷陰極管が配され、この冷陰極管より照射される光線が、V溝50の表面より樹脂材料14の内部に入射し、テーパ部52、52で反射し、樹脂材料14の裏面より面状に照射されることとなる。
【0088】
このように成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、V溝50の幅Pを2mm以上にすることが好ましく、V溝50の頂角θ1を40〜80度にするのが好ましい。また、V溝50の深さΔtは1mm以上にすることが好ましく、2.5mm以上にするのがより好ましい。テーパ部52、52の傾斜角度θ2は3〜20度にするのが好ましい。また、テーパ部52、52の幅P2は5mm以上にすることが好ましく、10mm以上にするのがより好ましい。
【0089】
本発明において、特に重要なことは、樹脂材料14(樹脂シート)の凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し型ローラ16の凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂材料14の凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し型ローラ16の凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることである。
【0090】
したがって、図2の形状に即して述べれば、V溝50の深さΔtに対し、型ローラ16の対応部分の段差を1.05Δt〜1.09Δtとし、V溝50の幅Pやテーパ部52の幅P2に対し、型ローラ16の対応部分の幅を1.00P〜1.02Pや1.00P2〜1.02P2とする。
【0091】
このような型ローラ16を使用することにより、樹脂材料14が収縮しても凹凸形状が設計形状と相違する量は非常に小さいか、実質上ゼロとなる。
【0092】
次に、樹脂材料14表面の他の凹凸パターン形状について説明する。図3は、成形後の樹脂材料14の端面14Aを直線状に切り取った状態の斜視図である。樹脂材料14の裏面は平面である。
【0093】
樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状は、長手方向(図の矢印方向)の直線状の凹凸パターンである。この断面が鋸刃状パターンは、樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとを繋ぐ鉛直壁54と、この鉛直壁54の上縁(最厚肉部14B)より樹脂材料14の最薄肉部14Cに向かって直線状に板厚が減少していくテーパ部56が繰り返される形状である。
【0094】
図3において、樹脂材料14の最薄肉部14Cの厚さは、5mm以下であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとの厚さの差は、1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に使用できる。
【0095】
成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、鉛直壁54の側面に円柱状の冷陰極管が配され、この冷陰極管より照射される光線が、鉛直壁54の表面(側面)より樹脂材料14の内部に入射し、テーパ部56で反射し、樹脂材料14の裏面より面状に照射されることとなる。
【0096】
このように成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、テーパ部56傾斜角度θ3を3〜20度とするのが好ましい。
【0097】
既述のように、本発明において、特に重要なことは、樹脂材料14(樹脂シート)の凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し型ローラ16の凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂材料14の凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し型ローラ16の凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることである。
【0098】
したがって、図3の形状においても図2の場合と同様に、型ローラ16の対応部分の段差及び対応部分の幅を上記の範囲とする。このような型ローラ16を使用することにより、樹脂材料14が収縮しても凹凸形状が設計形状と相違する量は非常に小さいか、実質上ゼロとなる。
【0099】
なお、成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合、これら以外の形状を採用することもできる。たとえば、図2の樹脂材料14のV溝50の断面形状はV字状となっているが、これ以外の形状、たとえば、矩形状、台形状、円弧状、放物線状等の断面形状も、光学的特性、成形性等を満足できれば採用できる。
【0100】
また、型ローラ16表面の凹凸形状も、図2又は図3の樹脂材料14表面の反転形状である必要はなく、樹脂材料14の収縮代等を考慮して、樹脂材料14の製品形状が図2又は図3の形状となるように、この形状よりオフセットした形状とすることもできる。
【0101】
次に、本発明に係る樹脂シートの製造方法及び装置の他の実施の形態(第2実施形態)について詳説する。図4は、本発明に係る樹脂シートの製造方法が適用される、樹脂シートの製造ライン10’を示す構成図である。なお、図1に示される第1実施形態と同一、類似の部材については、同様の符号を附し、その説明を省略する。
【0102】
本実施形態においては、第1実施形態と異なり、バックアップシート20を使用せず、型ローラ16とニップローラ18とで樹脂材料14を挟圧し、型ローラ16表面の凹凸形状を樹脂材料14に転写する方式を採用している。したがって、シート繰り出し手段26やシート巻回手段28を使用しない比較的シンプルな構成となっている。
【0103】
次に、図4に示される樹脂シートの製造ライン10’による樹脂シートの製造方法について説明する。
【0104】
ダイ12より押し出したシート状の樹脂材料14を、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ16表面の凹凸形状を樹脂材料14に転写し、樹脂材料14を型ローラ16に対向配置される剥離ローラ24に巻き掛けることにより型ローラ16より剥離する。
【0105】
この樹脂シートの製造において、ダイ12よりの樹脂材料14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速も略これに一致させる。また、各ローラの速度ムラは、設定値に対して1%以内になるように制御することが好ましい。
【0106】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(0〜200kgf/cm)とするのが好ましく、0〜100kN/m(0〜100kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0107】
ニップローラ18及び剥離ローラ24の温度制御は、既述したように、個々のローラ毎に行うことが好ましい。そして、剥離ローラ24の箇所における樹脂材料14が樹脂の軟化点Ta以下の温度になっていることが好ましい。この際、樹脂材料14にポリメチルメタクリレート樹脂を採用した場合、剥離ローラ24の設定温度は、50〜110°Cとできる。
【0108】
型ローラ16より剥離した樹脂材料14を、水平方向に搬送し、徐冷ゾーン30を通過することにより徐冷し、歪みが除去された状態で、下流の製品取り部において所定長さに切断し、樹脂シートの製品として収容する。
【0109】
以上に説明した本発明に係る樹脂シートの製造方法及び装置(第1及び第2実施形態)によれば、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートであっても、欠陥なく所望の断面形状を得ることができる。
【0110】
以上、本発明に係る樹脂シートの製造方法及び装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0111】
たとえば、ニップローラの本数及び配置は、同様の機能が得られるのであれば、本実施形態以外の各種の態様が採り得る。
【0112】
また、温度調節手段や、冷却装置(38等)、徐冷ゾーン30等についても、同様の機能が得られるのであれば、本実施形態以外の各種の態様が採り得る。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0114】
図1に示される樹脂シートの製造ライン10を使用して実施例及び比較例の樹脂シートを製造した。樹脂シート製品の設計値の断面形状は、図5に示される形状とした。繰返し単位であるPは28mm、Wは4.2mm、Dは3.5mm、t1は1mm、t2は1.64mmとした。また、繰返し単位の両端は斜面と接する円弧であり、その曲率半径Rは15mmとした。
【0115】
[実施例1]
樹脂シート製品の設計値に対し、型ローラ16の該当部位のPを28.25mm、Dを3.71mm、Rを15mmとした。
【0116】
[実施例2]
樹脂シート製品の設計値に対し、型ローラ16の該当部位のPを28.43mm、Dを3.60mm、Rを15mmとした。
【0117】
[比較例]
樹脂シート製品の設計値に対し、型ローラ16の該当部位のPを28.00mm、Dを3.50mm、Rを15mmとした。
【0118】
実施例及び比較例に共通する製造条件は以下のようにした。
【0119】
型ローラ16の周速度:1.3m/分
樹脂材料14の組成:PMMA(三菱レイヨン製、型番:VH001)
ダイ12の吐出口における樹脂材料14の温度:255°C
成形後の樹脂シート形状の評価は、接触式(触針式)の形状測定機を使用して各々の寸法を評価した。成形後の樹脂シートの評価結果は以下のようになった。
【0120】
実施例1:Pは28.00mm、Dは3.50mm、Rは15mm
実施例2:Pは28.17mm、Dは3.32mm、Rは15mm
比較例:Pは27.72mm、Dは3.23mm、Rは15mm
以上の比較結果により本発明の効果が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明が適用される樹脂シートの製造ラインの例を示す構成図
【図2】成形後の樹脂材料の端面を直線状に切り取った状態の斜視図
【図3】成形後の樹脂材料の端面を直線状に切り取った状態の斜視図
【図4】本発明が適用される樹脂シートの製造ラインの他の例を示す構成図
【図5】実施例における樹脂シートの断面図
【図6】従来例の樹脂シートの製造ラインを示す構成図
【符号の説明】
【0122】
10、10’…樹脂シートの製造ライン、12…ダイ、14…樹脂材料、16…型ローラ、18…ニップローラ、20…バックアップシート、22…ガイドローラ、24…剥離ローラ、26…シート繰り出し手段、28…シート巻回手段、30…徐冷ゾーン、38…冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイより押し出したシート状の樹脂材料を型ローラと該型ローラに対向配置されるニップローラとで挟圧し、
該型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、
転写後の前記樹脂材料を該型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより該型ローラより剥離する樹脂シートの製造方法であって、
樹脂シートの凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂シートの凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることを特徴とする樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
ダイより押し出したシート状の樹脂材料と該樹脂材料の片面側に供給されるバックアップシートとを前記樹脂材料が型ローラ側に、前記バックアップシートがニップローラ側になるようにして、前記型ローラと該型ローラに対向配置される前記ニップローラとで挟圧し、
該型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、
転写後の前記樹脂材料と前記バックアップシートとの積層体を該型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより該型ローラより剥離する樹脂シートの製造方法であって、
樹脂シートの凹凸形状の厚さ方向の段差の設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の厚さ方向の段差を1.05〜1.09倍とし、樹脂シートの凹凸形状の幅方向の長さの設計値に対し前記型ローラの凹凸形状の幅方向の長さを1.00〜1.02倍とすることを特徴とする樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂材料に転写される凹凸形状により、該樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が1mm以上となることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料の最薄肉部の厚さが5mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料がポリメチルメタクリレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210200(P2007−210200A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32327(P2006−32327)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】