説明

樹脂シート折曲げ用加熱装置

【課題】樹脂シートの折曲げ部分を略均一に加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置を提供する。
【解決手段】樹脂シート1を折曲げる際に当該樹脂シート1の折曲げ部分2を加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置10であって、熱源11と、線状に開口した温風吹出口13と、温風の温度を調節する温風温度調節部と、温風吹出口の長手方向に沿って温風の温度を均一化する温度平滑機構14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの折曲げを容易にするために、当該樹脂シートの折曲げ部分を加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂シートに折曲げ加工を施す方法として、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分を加熱したのち折曲げる方法が用いられている。すなわち、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分を加熱し、当該部分の樹脂を軟化させることで、樹脂シートの折曲げが容易となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−210424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂シートの折曲げ部分全体を折曲げに最適な温度に加熱することは、折曲げ線が長くなるほど、折曲げ部分の加熱温度にばらつきが発生しやすくなり、容易ではない。折曲げ部分の加熱温度にばらつきが発生し、例えば、折曲げに最適な温度より低温の領域が生じると、折曲げ部分に応力が残留し、ひび割れ・白化が発生するおそれがある。反対に、折曲げ部分の加熱温度が高くなり過ぎると、折曲げ部分の周囲が不必要に変形してしまう。
【0005】
そこで、本発明では、樹脂シートの折曲げ部分を略均一に加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂シート折曲げ用加熱装置の第1特徴構成は、樹脂シートを折曲げる際に当該樹脂シートの折曲げ部分を加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置であって、熱源と、線状に開口した温風吹出口と、前記温風の温度を調節する温風温度調節部と、前記温風吹出口の長手方向に沿って前記温風の温度を均一化する温度平滑機構と、を有する点にある。
【0007】
このように、樹脂シート折曲げ用加熱装置が、温風温度調節部を有することで、折曲げ加工を施す樹脂シートの樹脂の種類に最適な温風温度を調節し、温度調節された温風を温風吹出口から吹出して、樹脂シートの折曲げ部分を加熱することができる。したがって、樹脂シートの折曲げ加工が容易になる。
【0008】
また、樹脂シート折曲げ用加熱装置には、線状に開口した温風吹出口の長手方向に沿って温風の温度を均一化する温度平滑機構を有するので、折曲げ部分の長手方向の温度の均一化が容易に行える。このため、折曲げ部分の長手方向の温度ムラが抑制されて、加熱温度が低下して応力が残存したり、加熱温度が高くなって折曲げ部分の周囲まで過熱状態となるといった不具合が防止できる。すなわち、樹脂の強度低下を抑制し、さらに、樹脂の折曲げ精度が向上し、折曲げ部分の外観の見栄えも向上する。
【0009】
本発明に係る樹脂シート折曲げ用加熱装置の第2特徴構成は、前記温度平滑機構として、前記温風温度調節部が、前記熱源と温風吹出口との間に温風滞留部を備える点にある。
【0010】
この構成により、熱源によって加熱された温風は、温風吹出口から排出される前に、まず、温風滞留部に貯留される。温風滞留部内に貯留された温風の温度を所定温度に調整した後、温風吹出口から樹脂シートの折曲げ部分に吹き付けることで、温風吹出口の長手方向に沿って温風温度を均一化することができる。すなわち、温風温度調節部に備えられた温風滞留部が温度平滑機構として機能する。
【0011】
本発明に係る樹脂シート折曲げ用加熱装置の第3特徴構成は、前記温度平滑機構が、少なくとも前記温風吹出口の長手方向の両側部分に、前記樹脂シートの折曲げ部分に吹き付けられる温風の拡散を防止する拡散防止板を備える点にある。
【0012】
このように、樹脂シート折曲げ用加熱装置は、温風吹出口の長手方向の両側部分に拡散防止板を備えるので、温風吹出口から樹脂シートの折曲げ部分に吹き付けられる温風は、温風吹出口の長手方向の両側に位置する拡散防止板の内側に案内されて折曲げ部分の周囲への拡散が防止される。したがって、温風吹出口から吹出される温風を、樹脂シートの折曲げ部分に対して効率的に吹き付けることができる。
【0013】
本発明に係る樹脂シート折曲げ用加熱装置の第4特徴構成は、前記温度平滑機構が、前記温風の吹出し位置及び吹出し方向の少なくとも何れか一方を調節する吹出温風流調節部を備える点にある。
【0014】
温風吹出口において、樹脂シートの折曲げ部分に沿う方向の開口幅が広い場合等では、温風吹出口の中央部分と両端部分との間で温風に温度差が生じ易い。また、折曲げ部分の形状等によって、折曲げ部分の温度が均一に上昇しない場合も存在する。
そこで、本発明の樹脂シート折曲げ用加熱装置では、温度平滑機構に、温風の吹出し位置及び吹出し方向の少なくとも何れか一方を調節する吹出温風流調節部を設けてある。
【0015】
したがって、この吹出温風流調節部により温風の吹出し位置や吹出し方向を適宜調節することで、折曲げ部分の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】樹脂シートの折曲げ工程等であって、(a)は樹脂シートの一例、(b)は折曲げ部分の加熱工程、(c)は折曲げ工程をそれぞれ示す。
【図2】第1実施形態を示す図であって、(a)は正面縦断面図、(b)は底面図、(c)は温風吹出口の近傍をそれぞれ示す。
【図3】第2実施形態の正面縦断面図である。
【図4】別実施形態を示す図であって、(a)は正面縦断面図、(b)は温風吹出口の側方縦断面図をそれぞれ示す。
【図5】別実施形態を示す図であって、(a)は首振り可能に構成された温風吹出口、(b)は平行移動可能に構成された温風吹出口をそれぞれ示す。
【図6】別実施形態の正面縦断面図である。
【図7】別実施形態の正面縦断面図である。
【図8】他の樹脂シートの折曲げ工程を示す図であって、(a)は折曲げ部分の加熱工程、(b)は折曲げ工程をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明に係る樹脂シート折曲げ用加熱装置10は、図1及び図2に示すように、熱源11と、送風手段(不図示)と、温風流路管12と、温風流路管12の端部に線状に開口した温風吹出口13とを備える。熱源11で加熱された温風を温風吹出口13から樹脂シート1の折曲げ部分2に向けて吹き付けることで、当該折曲げ部分2を加熱する。さらに、樹脂シート折曲げ用加熱装置10は、温風の温度を調節する温風温度調節部Cを有している。温風温度調節部Cは、熱源11の熱量や送風手段の出力等を変更可能に構成されており、各種の樹脂シート1に適した温風温度に適宜調節することができる。
【0018】
本実施形態では、折曲げ部分2に沿って折曲げる樹脂成形品として、図1(a)に示すように、一方の面に凹部1aを形成して折曲げ部分2を薄肉にした樹脂シート1を用いる。この折曲げ部分2はインテグラルヒンジと呼ばれる構造であり、長さL,厚さTのヒンジ部分が折曲げ部分2に相当する。ヒンジ部分の長さL、厚さT、及び、ヒンジ部分の端部から樹脂シート1の通常の厚み部分に向かう曲率Rは、熱可塑性樹脂の種類や樹脂シート1の厚み等に応じて適宜設定されている。なお、この樹脂シート1では、折曲げ部分2の凹部1aを内側にして折曲げられる。
【0019】
樹脂シート1の折曲げに際し、加熱された折曲げ部分2のみが変形する。このため、折曲げ後の樹脂シート1は、折曲げ部分2の周囲にシワ等がほとんど発生せず、外観の見栄えが良好なものとなる。樹脂シート1は、押出し成形、射出成形、ブロー成形等の成形方法により得られる。
【0020】
樹脂シート1を折曲げる際には、図1(b)に示すように、まず、樹脂シート1を支持台21に支持させ、固定部材22を用いて樹脂シート1の端部を保持する。固定部材22は同時に、樹脂シート1の折曲げ部分2の位置を樹脂シート折曲げ用加熱装置10の温風吹出口13に対向する位置に位置決めする機能も備える。なお、樹脂シート1は、折曲げ部分2の凹部1aの裏側の面が樹脂シート折曲げ用加熱装置10の温風吹出口13に対向するよう支持されている。
【0021】
こうして、樹脂シート1を支持台21上にセットした後、樹脂シート折曲げ用加熱装置10の温風吹出口13を折曲げ部分2の上方近くに移動し、折曲げ部分2に温風を吹き付けて加熱する。折曲げ部分2の加熱を所定時間継続し、折曲げ部分2の樹脂の温度を所定温度まで上昇させた後、図1(c)に示すように、下方に力を加えて、樹脂シート1を折曲げ部分2に沿って折曲げる。折曲げ部分2は加熱されて軟化しているので、樹脂シート1を容易に折曲げることができる。
【0022】
樹脂シート1の折曲げ部分2を加熱する際に、温風吹出口の長手方向に沿った温風の温度にバラツキがあると、折曲げ部分2の加熱温度が最適温度と比較して部分的に低くなったり、高くなったりする。そうなると、折曲げ部分2の一部に加熱温度が低いことによる応力の残存や、加熱温度が高いことによる折曲げ部分2の周囲の変形が見られることとなり、製品上好ましくない。
【0023】
そこで、本発明の樹脂シート折曲げ用加熱装置10の温風温度調節部Cは、図2(a)に示すように、熱源11と温風吹出口13との間に温風流路管12に温風滞留部15を備える。温風滞留部15では、熱源11によって加熱された温風を一旦貯留され、温風滞留部15内の温風の温度が略均一で樹脂シート1の折曲げに最適な温度に調整される。温風滞留部15内の温風の温度調整の完了後、温風滞留部15内の温風を温風吹出し口12から樹脂シート1の折曲げ部分2に吹き付けて加熱する。すなわち、温風滞留部15が温度平滑機構14として機能し、温風吹出口13の長手方向に沿った温風の温度を均一化する。
【0024】
樹脂シート折曲げ用加熱装置10は、図2(b),図2(c)に示されるように、温風吹出口13の長手方向の両側部分に、拡散防止板16が温風の吹出し方向に沿って備えられている。この拡散防止板16によって、樹脂シート1の折曲げ部分2に吹き付けられる温風の折曲げ部分2の周囲への拡散が防止される。よって、温風吹出口13から吹き付けられる温風の折曲げ部分2に対する加熱効率が向上し、温風吹出口13から吹き付けられる温風の温度低下も抑制される。拡散防止板16は温風吹出口13の長手方向の両側部分だけでなく、温風吹出口13の全周に備えるようにしてもよい。なお、本実施形態では、樹脂シート1は、折曲げ部分2の凹部1aを内側にして折曲げられているが、別の実施形態として、凹部1aを外側にして折曲げることもできる。
【0025】
〔第2実施形態〕
本第2実施形態では、温風温度調節部Cが、温度平滑機構14として、温風滞留部15ではなく、熱源11から温風吹出口13までの温風流路を切換える流路切換部材17を備える構成である。流路切換部材17は、図3に示すように、回動軸17aを備えた羽根板17bで構成されており、温風吹出口13に向かう温風流路に複数配置されている。各羽根板17bを回動軸17aを中心に回動させて、羽根板17bの角度を個別に変更することで、結果的に温風吹出口13に向かう温風流路を切換える。こうして、温風吹出口13に向かう温風流路を切換えると、温風吹出口13の長手方向に沿った温風温度に変化を与えることになる。したがって、各羽根板17bの角度を適宜変更することで、温風吹出口13の長手方向に沿った温風の温度が均一化するように、温風吹出口13に向かう温風流路が切換えることができる。
【0026】
〔別実施形態〕
(1)第2実施形態の回動可能な羽根板で構成された流路切換部材に代えて、流路切換部材として、図4(a),図4(b)に示すように、加熱装置10の温風吹出口に向かう温風流路に対して、突出姿勢と退避姿勢に変更可能な流路切換部材17を複数配置してもよい。この流路切換部材17は、温風流路に対して突出姿勢になると温風の流れの妨げとなり、退避姿勢になると温風の流れを許容する。したがって、各流路切換部材17を突出姿勢と退避姿勢とに適宜変更することで、温風吹出口13の長手方向に沿った温風の温度が均一化するように、温風吹出口13に向かう温風流路が切換えることができる。
【0027】
(2)温度平滑機構が、温風の吹出し位置及び吹出し方向の少なくとも何れか一方を調節する吹出温風流調節部を備える構成であってもよい。吹出温風流調節部は、図5(a)に示すように、温風吹出口13が首振り可能にして、折曲げ部分2に対する温風の吹出し方向を前後左右等に調節可能にした構成や、図5(b)に示すように、温風吹出口13を樹脂シート1対して略平行に移動可能にして、折曲げ部分2に対する温風の吹出し位置を前後左右等に調節可能にした構成である。
【0028】
(3)折曲げ部分2の長さが温風吹出口13の幅より小さい場合に対応できるよう、流路切換部材17を調節して温風の流路域の幅を変更することもできる。
図6に示すように、例えば、温風吹出口13に向かう流路が徐々に狭くなる形状である場合には、温風吹出口13の開閉切換部材として複数の丸棒材18を温風流路管12に上下動自在に配置して、温風吹出口13を部分的に閉鎖して温風吹出口13の吹出領域を変更する構成にしてもよい。また、図7に示すように、温風吹出口13に開閉切換部材として複数の開閉切換板18を備えるようにして、各開閉切換板18の開放状態と閉鎖状態とを適宜調節して温風吹出口13の温風吹出領域を変更する構成にしてもよい。
【0029】
(4)上記の実施形態では、樹脂シート1の折曲げ部分2の外側の面に温風吹出口13から温風を吹き付けて加熱したが、折曲げ部分2の内側の面に温風吹出口13から温風を吹き付けて加熱してもよい。また、上記の実施形態では、折曲げ部分2を薄肉にした樹脂シート1を用いたが、図8(a),図8(b)に示すように、シート全体が平板状の樹脂シート1であってもよい。
【0030】
(5)上記の実施形態において、樹脂シート1の折曲げ部分2の加熱を部分的に強めたい場合には、温風吹出し口13から吹出される温風の風量の分布を変更し、加熱を強めたい部分に吹付けられる温風の風量を増加させる構成にしてもよい、
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の樹脂シート折曲げ用加熱装置は、各種樹脂製の外装品、内装品の折曲げ加工の際に広く使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 樹脂シート
1a 凹部
2 折曲げ部分
11 熱源
12 温風流路管
13 温風吹出口
14 温度平滑機構
15 温風滞留部
16 拡散防止板
17 流路切換部材
18 開閉切換部材
C 温風温度調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを折曲げる際に当該樹脂シートの折曲げ部分を加熱する樹脂シート折曲げ用加熱装置であって、
熱源と、
線状に開口した温風吹出口と、
前記温風の温度を調節する温風温度調節部と、
前記温風吹出口の長手方向に沿って前記温風の温度を均一化する温度平滑機構と、を有する樹脂シート折曲げ用加熱装置。
【請求項2】
前記温度平滑機構として、前記温風温度調節部が、前記熱源と温風吹出口との間に温風滞留部を備える請求項1記載の樹脂シート折曲げ用加熱装置。
【請求項3】
前記温度平滑機構が、少なくとも前記温風吹出口の長手方向の両側部分に、前記樹脂シートの折曲げ部分に吹き付けられる温風の拡散を防止する拡散防止板を備える請求項1又は2に記載の樹脂シート折曲げ用加熱装置。
【請求項4】
前記温度平滑機構が、前記温風の吹出し位置及び吹出し方向の少なくとも何れか一方を調節する吹出温風流調節部を備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂シート折曲げ用加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−167984(P2011−167984A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35154(P2010−35154)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】