説明

樹脂チューブの高速曲げに用いる3次元曲げ型

【課題】曲げ装置の動力機構として作用するヘッド機構を曲げの軌道溝を彫った曲げ型に倣わせて水平方向に移動させるとき、「1軸、又は2軸に力を加える」だけで直管状の合成樹脂チューブを3次元曲げができる曲げ型。
【解決手段】チューブの手前側の端末(以下、前端末という)を、X,Y,Zの各軸による直交座標の原点を加工基準点にし、そのチューブの前端末から向こう側の端末(以下、後端末という)までの間で、当該チューブの3次元曲げ軌道の変位が、曲げ部を含む複数点がそのチューブの曲げ設計値を損うことなく、3次元曲げされるチューブの姿勢(座標)変換を行い、変換された曲げ形態を垂直方向から彫り込んだ溝(以下、軌道溝1という)を備え、該軌道溝の底から等距離で水平な面を軌跡とする上面(以下、上面倣い部2という)と、当該軌道溝の中心から等距離の垂直面(以下、両サイド倣い部3という)を備えた3次元曲げ型G。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として合成樹脂チューブを高速で3次元曲げに用いる3次元曲げ型に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブを3次元に曲げる工程は、自動車用燃料チューブや他の高精度が要求されるチューブを用いる産業分野に広く利用される工程である
【0003】
従来の曲げ方法によるチューブの3次元曲げでは、曲げ方向と同一方向から加圧する。例えば、図6に例示したロール曲げでは3ッの曲げ機構B1〜B3をそれぞれのチューブに付与される曲げ部の姿勢に応じて複数組設けたり、産業ロボットを用いて3次元制御する必要があった。このため3次元曲げ加工設備が専用化したり、複雑な装置が必要となり多くの設備投資が余儀なくされた。
【0004】
一方、図7に例示したように、曲げ機構Bを1箇所のみとしチューブTの直線部をチャックchで握り、該チャックでチューブを送り出し、回転捻りながら曲げを行う数値制御ベンダーによる曲げも広く普及している。しかし、作業が断続的、且つ、時間も要するほか曲げ部間が接近している場合、2ッの曲げ部が接近し、しかも同じ面内にない場合使用できないなどの原理的な限界もある。
【0005】
上記のように、従来の3次元曲げ技術ではそれぞれの曲げ部にその曲げ平面内で曲げ方向に応じた力を加えることを不可欠としている、同時に、加熱、曲げ、冷却作業を同一工程内で行うことが求められるため、樹脂チューブ曲げ技術の問題点となっている。しかし、このような問題点を解決することのできる技術は、特許文献1などの従来技術においてもいまだ解決できていない。
【特許文献1】特開2000−158529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術における問題点に鑑み、曲げ装置の動力機構として作用するヘッド機構を曲げの軌道溝を彫った曲げ型に倣わせて水平方向に移動させるとき「1軸、又は2軸に力を加える」だけで、直管状の合成樹脂チューブを3次元曲げができる手法を提供し、この手法の特徴を利用して材料チューブの加熱から曲げ、冷却を連続作業として行うことにより高精度の3次元曲げを短時間で行うことを可能にした3次元曲げ方法に用いる3次元曲げ型を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明曲げ型の構成は、3次元曲げされるチューブの手前側の端末(以下、前端末という)を、X,Y,Zの各軸による直交座標の原点を加工基準点にし、そのチューブの前端末から向こう側の端末(以下、後端末という)までの間で、当該チューブの3次元曲げ軌道の変位が、曲げ部を含む複数点がそのチューブの曲げ設計値を損うことなく、かつ、前記ヘッド機構のX,Y,Zの各軸における可動範囲に入るように、3次元曲げされるチューブの姿勢(座標)変換を行い、変換された曲げ形態を垂直方向から彫り込んだ溝(以下、軌道溝という)を備えると共に、該軌道溝の底から等距離で水平な面を軌跡とする上面(以下、上面倣い部という)と、当該軌道溝の中心から等距離の垂直面(以下、両サイド倣い部という)を備えて成り、上記曲げ型の軌道溝の始端部に直管状チューブの前端末をセットし、セット部の前記チュ−ブにヘッド機構をZ軸に沿って降下させ水平ローラーで前記チューブの上面を押えたまま当該ヘッド機構をX軸方向に動させると、そのヘッド機構が、前記上面倣い部と両サイド倣い部に案内されて軌道溝に沿って移動し、前記直管状チューブをその軌道溝に入れてしまうことにより、直管状チューブに3次元曲げを施すことを特徴とするものである。
ここで、上記曲げ型を適用する曲げ方法は、(a) 曲げ装置の動力として駆動されるX軸スライド部を水平に配置し、このX軸スライド部に水平面内で交叉するアームを設け、このアームの先端例に垂直方向に動くスライド機構をZ軸スライド部として取り付けると共に、Z軸スライド部の先端部に水平に動くY軸スライド部を設け、更に、3次元曲げされる管の長さ方向での角度変化に追従するため、Y軸スライド部の中心に、水平回転機構とZ軸方向に追従昇降可能な水平ローラと該水平ローラの両端の鉛直下方に互いに向き合った球状の自在ベアリング又は縦ローラを備えたヘッド機構を設け、3次元曲げされる管の曲げ軌道に対して3軸方向に自由に追従可能な一体形構造で動作するように形成した曲げ装置の動力機構と、(b) 3次元曲げ形態におけるチューブの手前側の端末(前端末という)を、X,Y,Zの各軸による直交座標の原点を加工基準点にし、そのチューブの前端末から向こう側の端末(後端末という)までの間で、当該チューブの3次元曲げ軌道の変位が、曲げ部を含む複数点がそのチューブの曲げ設計値を損うことなく、かつ、前記ヘッド機構がX,Y,Zの各軸における可動範囲に入るように、3次元曲げされるチューブの姿勢(座標)変換を行い、変換されたチューブの曲げ形態を垂直方向から彫り込んだ溝(軌道溝という)と、該軌道溝の底から等距離で水平な面を軌跡とする上面(上面倣い部という)と、当該軌道溝の内側壁から等距離の垂直面(両サイド倣い部という)を備えて形成した3次元曲げ型と、(c) 上記動力機構と曲げ型を組み合わせ、予め昇温された曲げようとする直管状のチューブの前端末を恒温化した曲げ型の軌道溝の始端部に対して、そのチューブの先端を予め適量手前にセットし、ヘッド機構をZ軸に沿って降下させてX軸方向に移動させることにより、このヘッド機構のX軸に沿った駆動に同期して前記動力機構と曲げ型の一連の機能が連動し、直管状チューブに3次元曲げを高速で実現する曲げ装置の動力機構と3次元曲げ型組み合わせて行うことを特徴とする
【0008】
曲げの動力として作動する動力機構は、駆動源を有する1軸を水平に配置してX軸スライド部とし、垂直方向の変化に追従するため、X軸スライド部にX軸と交叉する方向に延びたアームを取り付け、このアーム先端に垂直方向に動くスライド機構を取り付けてZ軸スライド部とした。また、水平方向で、X軸に直交する方向での変化に追従するために、Z軸の先端部分に水平に動くスライド機構を取り付けY軸スライド部とした。これにより動力機構は、X,Y,Zの3軸方向に自由に変位(移動)することができるから、Y軸スライド部に曲げ力を作用させるヘッド機構を設けたことによってそのヘッド機構が曲げ型の曲げ軌道溝に沿って自在にチューブの曲げ姿勢に追従することができる。
【0009】
即ち、本発明曲げ型を適用する曲げ工程では、3次元曲げされる合成樹脂チューブの水平方向の角度の変化に追従するためにY軸スライド部の中心に位置するヘッド機構に水平回転機構を設けて、3次元曲げチューブの垂直方向の変化に追従できるようにし、そして回転部の下に円筒状の水平ローラを横向きに取り付けると共に、水平ローラ両端の鉛直下方に互いに向き合った球状のベアリンク、又は、縦ローラを取り付けてヘッド機構としたので,ヘッド機構における水平回転部、水平ローラ、縦ローラ等の取り付け位置は、Y軸スライド部の中心を芯とする位置に配置されることとなり、円滑でバランス良好な動作を実現でき、従って、効率のよい3次元曲げを実現できる。
【0010】
このため、上記の曲げ装置における動力機構の動きが許容される範囲に見合うように、かつ、3次元曲げされるチューブの曲げの設計値を損なうことなく、当該曲げチューブの座標を変換する。具体的には、3次元曲げチューブの前端末がX軸の始端側、後端末がX軸の終点側に向く姿勢を基本とし、且つ、垂直方向での変換姿勢が山なりの形状になるように3次元曲げされたチューブの姿勢(座標)を変換するのである。この際、3次元曲げチューブの曲がりの軌道とX軸がなす水平角度の絶対値が70度を超えないように、また、垂直方向での角度の絶対値が40度を超えないように3次元曲げチューブの姿勢変換、つまり座標変換を行うことが肝要である。また、変換した3次元曲げチューブにおける複数の曲げ部の変位は、曲げ装置におけるヘッド機構のX軸、Y軸、Z軸の可動範囲に中に入るような姿勢(座標)に変換しなければいけない。
【0011】
次に、上記曲げ方法に用いる本発明曲げ型の構成について説明する。3次元曲げ形態におけるチューブの手前側の端末(前端末という)を、X,Y,Zの各軸による直交座標の原点において加工基準にし、そのチューブの前端末から向こう側の端末(後端末という)までの曲げ部を含む複数点について、前記座標の各軸上での位置と各位置における座標上での2つの垂直面に対する角度と水平面に対する角度を求め、得られた位置データと角度データに基づいて前記チューブの曲げ軌道をブロック上の型部材に3三次元曲げの軌道溝として彫り込む。この軌道溝は、曲げようとする(曲げる前の)チューブ、曲げた後のチューブの着脱がいずれにおいても容易に行える溝幅とする。
【0012】
ついで、上記ヘッド機構が軌道溝に追従し、このヘッド機構の水平ローラの回転方向が常にチューブの曲げ軌道に向くように以下のような手法で算出される面を、上面倣い部として作成する。このため軌道溝の中心軌道を複数の線分に分解し、各線分の垂直面に対し等距離はなれたところに並行する直線を作成する。次に、各線分の交点を結んで連続した軌道を算出し、更に、この線分が連続した軌道をなす線分の中点を通り、各線分と直交する水平な線分を作成し、この線分に中点で交差する垂直面を形成する。こうして作成された線分の軌跡に平行な面を作成し、その面の両側を軌道溝から等距離となる垂直な面である両サイド倣い部として形成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明曲げ型を適用する曲げ方法では、上記の(a)曲げ装置の動力機構と(b)3次元曲げ型を組合せて使用し、当該機構と曲げ型の作用を連繋的に協働させることにより、直管状チューブを高速で3次元曲げ加工することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記の本発明曲げ型を用いた曲げ方法を実施する例について、図1〜図3を参照して説明する。図1は3次元曲げする直管チューブをセットした本発明曲げを適用した装置の一例における要部の正面斜視図、図2は図1の装置の右側面斜視図、図3は図1の装置において曲げ型を平面内で旋回させた例の正面斜視図である。
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、直交座標は図2において左右方向をX軸、図1において左右方向をY軸、図1,図2において上下方向をZ軸とする。従って、曲げ型Gを設けたブロックBLにおいて型の軌道溝が延びる方向がX軸に沿い、軌道溝と交叉する方向がY軸に沿い、垂直方向がZ軸となり、軌道溝1の始点を座標原点とする。
【0015】
図1〜図3において、まず、金属,樹脂,セラミックなど、曲げ対象の材料に応じた素材によるブロックBLに、3次元曲げしようとするチューブの3次元曲げ形態での曲げ軌道を軌道溝1として彫込む。次に、前記溝1の中心線を通過し、且つ、鉛直下方と軌道溝1の中心線の両方に対し垂直を保ち、且つ、その溝1の中心線から等距離にあって適宜の幅を有する軌道溝1の縁に上面2を作成する。(以下、この上面を曲げ型の上面倣い部2という)。更に、型の上面倣い部2以外の部分のブロックBLは鉛直下方に切削することにより、チューブの曲げ軌道と水平方向において等距離にある垂直面3(以下、この垂直面を曲げ型の両サイド倣い部3という)を作成する。こうして素材ブロックBLに作成された軌道溝1,上面倣い部2,両サイド倣い部3を備えた部品全体を本発明方法における3次元曲げ型G、又は、単に曲げ型Gという。この曲げ型Gは、そのブロックBLごと、基盤BPに回転可能に載せられている。曲げ型Gの平面内での回転については、段落0030〜0031でのべる。
【0016】
上記のような曲げ型Gを作成する手法としては、先端が曲面となった垂直軸回転刃(フライス盤のカッタなど)の先端でNC制御によってブロックBLを切削する方法や、角度制御を有する切削機で作成する方法、或は、水平回転する刃物を用い、3軸の制御とヘッドの角度制御で作成する方法などが考えられるが、その手法は問わない。
【0017】
図1〜図3において、前記曲げ型Gの上面倣い部2の上方側には、円形の水平ローラ4が垂下した脚部5a,5bを有するローラブラケット5の当該脚部5a,5bに水平な軸を介して回転自在に設置されている。脚部5a,5bにおいて水平ローラ4の中心軸の鉛直下方には球状ベアリング6a,6bが向い合って設けられており、この対向したベアリング6a,6bが前記側面倣い部3を挟み込むことによりこのブラケット5の姿勢が一定に保持される。球状ベアリング6a,6bに代えて縦ローラ(図示せず)を設けることもある。前記ベアリング6a,6bと水平ローラ4を備えたローラブラケット5は、その上部に配置した支持部材7と前記ローラ4の中心(重心)を通る垂直なフリー旋回軸(図に表れず)を介してY軸スライド部8のフリースライダ8aの下部側に支持させることにより、支持部材7に水平ローラ4,球状ベアリング6a,6bが組み込まれた水平旋回フリーのヘッド機構Hを形成する。なお、Y軸スライド部8は、その上部に縦方向に設けたガイド部材8bを備えている。そして、前記ヘッド機構Hは、その上方から押下げ力を受けるためのシリンダをZ軸スライド部9としてシリンダホルダ9aに具備し、このホルダ9aの裏面側に設けたZ軸スライダ9bがY軸スライド部8のガイド部材8bにZ軸方向でスライド可能に結合されている。なお、Z軸のシリンダロッド9cはY軸スライド部8の連結部8cに結合されている。
【0018】
一方、上記のシリンダホルダ9aは、X軸として設けた一例として油圧シリンダを駆動源とするX軸スライド部10に、スライド自在で当該X軸と直交する方向に延びた支持アーム11の先端部に取付けられている。この結果、ヘッド機構Hは、垂直軸回りにフリー旋回可能である一方、Y軸方向に自由スライドが許容された状態で、Z軸のシリンダ9により昇降させられると共に、X軸スライド部10の作用によってX軸方向で、移動させられる。このようにヘッド機構Hは、Y軸スライド部8に水平を保ったまま支持され、このY軸スライド部8をX軸スライド部10のシリンダによりX軸水平方向へ、そして、Z軸スライド部9のシリンダによりZ軸方向に移動させるように形成することによって、前記ヘッド機構Hを曲げ型Gの上面倣い部2と両サイド倣い部3に倣って移動させられつつ水平ローラ4によりチューブPをその上面から軌道溝1の内部に押付ける構造に形成される。
【0019】
ヘッド機構Hをチューブの3次元曲げ加工において水平移動、及び、垂直移動させるためのX軸とZ軸のシリンダの制御方法に関しては、カム機構の機械制御、電気的なNC駆動制御、シリンダとシーケンサによる制御などを利用でき、本発明においては制御方法は限定されない。また、上記ローラブラケット5の支持部材7のフリー旋回軸は、それを回転させる回転制御機器を用いても対応可能であり、この場合には球状ベアリング6a,6bやそれに代わる縦ローラの省略が可能になる。更に、水平ローラ4自体に駆動力を持たせると、駆動機構やその制御機構を簡略化することができる場合もある。このようにして本発明方法を実施することができる3次元曲げ装置の一例が形成されるが、この曲げ装置における曲げの原理は以下の通りである。
【0020】
本発明曲げ型を用いる曲げ方法は、曲げ装置の動力機構と本発明曲げ型の一例としての曲げ型Gを用い、一例として165℃前後に昇温した直管状のチューブPの前端末を曲げ型Gの始端部にセットし、ヘッド機構HをZ軸スライド部9の作用で下し、X軸スライド部10を駆動させると、この駆動に同期して前記ヘッド機構を含む動力機構と曲げ型Gの一連の機能,作用が連繋して連動し、直管チューブに3次元の曲げが行われることが、本発明曲げ型を用いる曲げ方法の最大の特徴である。
【0021】
樹脂チューブPの曲げ工程では、曲げ前にチューブを十分に昇温すると曲げ時の残留応力が小さく、且つ、冷却後の戻りも少ない良質の曲げが実現できることは既知である。これを実現するには、昇温して軟化したチューブPの断面形状を確保したままで曲げる必要があり、以下に述べる曲げの「受け点」と「作用点」が離れていて、且つ、力の方向が直接的でない必要がある。
【0022】
本発明曲げ型を用いた曲げは、軌道溝1の中にチューブPが挿入される時、曲げの外側の軌道溝1の壁が「受け点」、ヘッド機構Hの水平ローラ4とチューブPの上面の接点が「作用点」となるが、「受け点」は常に「作用点」より先の軌道上に位置するため、ローラ4の作用によって軌道溝1の上下方向において垂直な曲げ応力が発生し、この力が軌道溝1の水平方向の応力より大きくなった時点で曲げが発生することになる。この作用の抑止力として働くのが軌道溝1の内壁面とチューブPの摩擦力になるわけで、この反作用は、チューブPの断面方向に直接作用するのでなく、ローラ4と軌道溝1の外側の作用点との間のチューブを旋回させる力として働く。このため、曲げの力が分散され、結果として応力が分散して軟化したチューブを高速で曲げることが可能となった。ここで、水平ローラ4と曲げ型Gにおける「受け点」と「作用点」を、上記の状態を実現させるため、曲げたいチューブPの外径に応じたローラ4の外径を選択する。水平ローラ4の外径の選択には、その外周面にチューブPの外径に応じて凹状の窪みを入れたものも含まれる。
【0023】
また、常温空気中でのチューブPの温度が低下することを防止し、軌道溝1とチューブPの摩擦を低減するため、曲げる前のチューブPと同じように曲げ型Gを昇温して恒温化することが有用である。この手法の採用によって曲げによってチューブPに生じた曲げ時のひずみや変形等の早期回復が可能となり、良質な曲げを実現し、また、曲げた後も、チューブPを曲げ型Gの軌道溝1内に数秒間保持することで安定した曲げ形状の確保が出来ることを確認できた。
【0024】
次に、曲げた直後のチューブPの内部に冷却した空気を流しこむことにより、チューブ内側から順次冷却していくが、チューブPの前端末の側が冷却の影響が大きくなるため、断面方向での変形が大きくなる。そこでこの曲げ方法では、曲げ型GにチューブPをセットする際、予め手前にセットしてヘッド機構Hが1番目の曲がり部を1/4程度を過ぎたあたりにおいて、そのチューブPの前端末部を正規位置に移動させると、断面方向での変形を防止する上で有用である。
【0025】
型内での曲げが終わったら曲げ型Gから曲げたチューブPを外して型外での冷却を行い、チューブ全体を室温以下に冷却することによって本発明曲げ型を用いたチューブの3次元曲げ加工が完了する。
【0026】
次に、上記の3次元曲げ装置における作業手順について簡単に説明する。
まず、曲げ型Gの軌道溝1の始端に、曲げる前の直管状のチューブPの前端末を挿入してこの上にヘッド機構Hを降ろし、水平ローラ4と曲げ型Gの上面倣い部2を密着させシリンダ9により一定の押下げ圧力をかける。この状態で、ヘッド機構Hの全体を軌道溝1の始端部から終端側に向けてX軸スライド部10の駆動力とY軸スライド部9のフリースライド作用により当該溝1に沿わせ移動させる。水平ローラ4の軌道溝1に沿った転動によってチューブPが逐次軌道溝1へ押し込まれる。軌道溝1が直線の部分ではこの力が直接チューブPを直下に押下げるように作用し、チューブPを軌道溝1に順次挿入していく。軌道溝1が平面内で直線でない部分では、前記水平ローラ4の力がチューブPを軌道溝1の内側の壁面に押しつける力を発生させるので、その応力によって、チューブPが曲げられながら曲がった軌道溝1の中に順次曲げられ乍ら挿入されていく。このようにして、ヘッド機構Hを軌道溝1に沿わせ移動させることにより、曲げ型Gに形成された任意の3次元軌道溝1に沿ってチューブPを曲げることができる。
【0027】
本発明曲げ型を用いた曲げ方法では、上記態様によって常温のチューブPを3次元曲げ成形することが可能であるが、チューブPを曲げに先立って予め加熱昇温し、チューブPのヤング率と、限界ひずみの大きさを低下させておくと、より高速での3次元曲げ成形が可能となることは先に述べた通りである。また、上記曲げ方法では、予熱しない常温下のチューブPを曲げるとき、その曲げ工程中(軌道溝1にローラ4によりチューブPが押込まれる際中)、或は、曲げ終了後に軌道溝1の中でチューブPを加熱することもある。なお、曲げ型Gの加熱方法は、チューブの予熱も含め、電気抵抗式ヒーター,熱交換管,マイクロ波,高周波,遠赤外線など、その熱源と加熱手法は限定されない。
【0028】
一方、本発明曲げ型を用いる曲げでは、チューブPの物性に応じての対応も可能である。即ち、ヤング率の大きなチューブPへの対応としては曲げ装置の機械的な強度を強化することにより対応可能である。このほかに、図示しないが、水平ローラ4にチューブPの径に応じた窪みをつけると曲げ加工に有効である。また、図示しないが、ヘッド機構Hの移動方向の前方に、曲げ型Gにおける両サイド倣い部3に案内される首振自在のガイド部材に取付けた縦向きガイドローラを設置することも有効である。即ち、ローラブラケット5のフリー旋回軸と同軸上に、首振自在のガイド部材(図示せず)を設け、このガイド部材の両側に、自在ベアリング6a,6bに代えて前記ブラケット5の脚部5a,5bに設ける垂直ローラと同じ向きのガイドローラを設け、ヘッド機構Hの軌道溝1に沿った移動を、その移動先端側でガイドし、支持するようにするのである。
【0029】
本発明曲げ型を用いる曲げでは、先にも述べたようにチューブPを曲げる前に予熱するが、弾性限度内のひずみが大きい材料のチューブでは、加熱等の前処理によりその物性を変化させると、高速3次元曲げに有用である。また、多層構造チューブなどの複合材料を用いたチューブPや、付属するゴム製プロテクターを備えた樹脂チューブPにおいても、本発明曲げ型を用いたげは有効であるが、特に、表面に摩擦抵抗の大きな材料を有するチューブPでは、曲げ型Gの軌道溝1の内表面に硬質メッキ,樹脂コート,シリコンコート等の摩擦低減処理を施すことが有効である。
【0030】
以上の説明は、曲げ型Gに形成した軌道溝1が、水平ローラ4(又は、ヘッド機構H)の進行方向に関し、常時、正方向側に変位(移動)する平面形状を具備した例である。
しかし、チューブPの3次元曲げ形態によっては、そのチューブPを座標の原点において中心軸の回りに360度回転させても、軌道溝1が反転する(換言すれば、図4,図5に実線で示すように、直線ABで示す方向に関し水平ローラ4の移動方向が後退側(逆方向に戻る)ことがある。
水平ローラ4には、そのヘッド機構HにX軸スライド部10の作用で図4に直線ABで示す正方向の移動力が加えられるので、軌道溝1の軌跡が曲げ型Gと一体のブロックBL上で反転していると、高速曲げが実現できない(図4のC部参照)。この点は、曲げ角が大きい場合にも、同様な問題を惹起する。
【0031】
そこで本発明曲げ型を用いる曲げでは、軌道溝1が反転したり曲げ角が大きい(例えば、90度程度乃至はそれに近い角など)場合には、その溝1が形成された曲げ型GをブロックBLごと、基盤BP上の平面内で旋回させるようにした。即ち、図4,図5に仮想線で示すように、図4の場合には、曲げ型Gをこの型Gが載っている基盤BPの上で、軌道溝1の始点乃至はその近傍の点P1で時計回り方向に角回転させ、また、図5の場合には、曲げ型Gを基盤BPの上でその型Gの中心又はその近傍の点P2で時計回り方向に角回転させることにより、軌道溝1の反転を解消するようにした。本発明曲げ型を用いる曲げでは、反転や大きな曲げ角が解消されればよいので、点P1,P2における回転方向は、時計回り方向、反時計回り方向のいずれの方向でもよい。
【0032】
(実施例)
外形8mm,内径6mm,長さ270mmの直管のナイロン製燃料チューブを、表1の条件で曲げ成形した。
使用機器は、図1〜図3により説明した本発明方法を実施する3次元曲げ装置である。
曲げるべきチューブを予め常温から一例として150℃〜160℃程度に加熱した。このチューブの前端末を上記曲げ装置の軌道溝1にセットし、ヘッド機構Hを軌道溝1の始端部から終端部に向け約3秒で移動させた。ヘッド機構Hの移動後、チューブ内部を約15秒間冷却して常温に戻した。このチューブの曲げに要したサイクルタイムは、予熱時間を除き約20秒であった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は以上の通りであって、曲げ対象が、合成樹脂製の直管チューブの場合、その昇温から3次元曲げ加工を経て冷却完了までに、20秒から40秒で良質な曲げが可能となるため、3次元曲げの全工程を1個流しの自動化ラインとして実現できる。
【0035】
また、3次元チューブの姿勢を本発明曲げ型を用いる曲げ方法を適用した装置に見合うように座標変換し、その変換姿勢をベースとした専用型を作成しておけば、曲げ型の交換のみで段取り替え、加熱部、駆動装置、冷却装置などは、汎用設備として使用出来るので、多様な3次元曲げ姿勢のチューブの曲げ加工を単一の設備で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明曲げ型を用いる曲げ方法を実施するための曲げ装置の一例の要部の正面斜視図。
【図2】図1の曲げ装置の右側面斜視図。
【図3】曲げ型Gを回転させた状態の正面斜視図。
【図4】本発明曲げ型Gを水平面内で回転させる一例の平面図。
【図5】本発明曲げ型Gを水平面内で回転させる別例の平面図。
【図6】従来のロール曲げ装置を説明するための斜視図。
【図7】従来のNCベンダーを説明するための斜視図。
【符号の説明】
【0037】
BP 基盤
BL 曲げ型と一体のブロック
G 3次元曲げ型
1 軌道溝
2 上面倣い部
3 両サイド倣い部
H ヘッド機構
4 水平ローラ
5 ローラブラケット
5a,5b ブラケットの脚部
6a,6b 球状自在ベアリング
7 支持部材
8 Y軸スライド部
9 Z軸スライド部
10 X軸スライド部
P 合成樹脂チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ装置の動力として駆動される水平に配置したX軸スライド部と、このX軸スライド部に対し水平面内で交叉方向に延びて設けたアームの先端側に垂直方向を向けて取付けた駆動可能なZ軸スライド部と、Z軸スライド部の下端部に設けて水平に動くY軸スライド部とを具備すると共に、3次元曲げされるチューブの長さ方向での角度変化に追従するため、前記Y軸スライド部の中心に、水平回転機構を介してZ軸方向に追従昇降できる水平ローラと該水平ローラにおける左右両端の鉛直下方に互いに向き合った球状の自在ベアリング又は縦ローラを備えたヘッド機構を具備した曲げ装置の動力機構に対して配置される3次元曲げ型であって、その曲げ型は、
3次元曲げされるチューブの手前側の端末(以下、前端末という)を、X,Y,Zの各軸による直交座標の原点を加工基準点にし、そのチューブの前端末から向こう側の端末(以下、後端末という)までの間で、当該チューブの3次元曲げ軌道の変位が、曲げ部を含む複数点がそのチューブの曲げ設計値を損うことなく、かつ、前記ヘッド機構のX,Y,Zの各軸における可動範囲に入るように、3次元曲げされるチューブの姿勢(座標)変換を行い、変換された曲げ形態を垂直方向から彫り込んだ溝(以下、軌道溝という)を備えると共に、該軌道溝の底から等距離で水平な面を軌跡とする上面(以下、上面倣い部という)と、当該軌道溝の中心から等距離の垂直面(以下、両サイド倣い部という)を備えて成り、
上記曲げ型の軌道溝の始端部に直管状チューブの前端末をセットし、セット部の前記チュ−ブにヘッド機構をZ軸に沿って降下させ水平ローラーで前記チューブの上面を押えたまま当該ヘッド機構をX軸方向に動させると、そのヘッド機構が、前記上面倣い部と両サイド倣い部に案内されて軌道溝に沿って移動し、前記直管状チューブをその軌道溝に入れてしまうことにより、直管状チューブに次元曲げを施すことを特徴とする3次元曲げ型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−79318(P2011−79318A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243695(P2010−243695)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2005−305590(P2005−305590)の分割
【原出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504431256)株式会社早川製作所 (2)
【出願人】(505405283)
【Fターム(参考)】