説明

樹脂フィルムの製造方法、樹脂フィルム、それを用いた偏光板、及び液晶表示装置

【課題】ゲル状異物が無く、液晶表示装置等の表示装置に用いられた場合、コントラストの高い画像が得られる樹脂フィルムとその製造方法を提供する。また、当該樹脂フィルムが具備された偏光板及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成する樹脂フィルムの製造方法であって、当該組成物に、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記分子間水素結合を切断する工程を有することを特徴する樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの製造方法及び樹脂フィルムに関する。また、当該樹脂フィルムが具備された偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムはその用途が光学的なものであるため、光の透過に影響を与える光学的な欠点が少ないことが要求される。そして、従来の光学フィルムの用途であれば品質上問題のない微小な表面凹凸や異物、あるいは光学的欠陥でも、近年では、一層高レベルの性能が要求されるため、光学フィルムでは問題となる。特に光学フィルムが液晶表示装置の構成体として用いられる場合には、透明であっても透過光を異常屈折するような、いわゆる輝点異物やゲル状異物のようなものも光学的な欠点となり品質上の問題となる。
【0003】
近年、これらの液晶表示装置が、パソコンの表示装置としての使用のみならず、テレビ受像機やDVD等の表示装置、あるいは携帯電話、PDA(携帯端末)の表示装置としての用途が広がり、より一層光学的な欠点が少ないことが求められている。すなわち、近年パソコン、テレビ受像機、コンピューターゲームの表示装置は、ますます大型化、大画面化され、かつフルハイビジョン液晶テレビに象徴されるように画像形成素子数(いわゆるドット数)は大きくなり、一画像形成素子当たりの領域面積は微小となってきている。
【0004】
このような技術動向に伴い液晶表示装置に用いられる偏光子保護フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルム、あるいは延伸された光学フィルムに求められる性能、性状も多様化してきている。
【0005】
例えば、従来、単位面積当たり、より光学的な欠点が少なく、液晶表示装置等の表示装置に用いられた場合、コントラストの高い画像が得られるフィルムが求められおり、コントラストを向上させるために、ゲル状異物や輝点異物、品種切り替えに伴う異成分やゴミ等を、フィルター改良や原料品質を向上させることによって、光学フィルムの原料から極力排除し、向上させてきた。しかし、近年は、従来の改良により得られるコントラストの向上率よりも要求スペックが上回ってきており、新たなコントラスト改善手段を取り入れる必要性がある。
【0006】
コントラストの向上を阻害する要因に異物が挙げられるが、例えば光学フィルムの原料となる樹脂の製造でゲル状物質の成分を除去するには限界があり、微量は必ず含まれるので、得られた原料をフィルターで濾過し、異物を取り除く工程が必須になるが、フィルターでは有効径未満の異物は除去できない上に、圧力がかかることで変形し、通過する異物も存在する。
【0007】
また、樹脂中の異物全般を取り除く方法として、樹脂にあった有機溶媒で洗浄する方法もあるが、近年、環境付加となる有機溶媒の使用が制限されつつあるのと、樹脂固有の溶剤に限定されるため、樹脂を変更するなどの柔軟性に優れないため、好ましくない。
【0008】
異物除去が求められている樹脂の一例として、セルロースエステル樹脂がある。セルロースエステル樹脂フィルム中に含まれる主な異物には、黒色異物、外来混入異物、熱劣化異物、輝点異物、ゲル状異物等がある。黒色異物や外来混入異物は、主に光を透過させない色付き異物や皮脂や唾液等の蛋白質による屈折率の異なる異物が混入し、光学的欠陥となる。熱劣化異物は、熱により劣化した樹脂が着色して生じる異物で、着色により光の透過率が下がることで光学的欠陥となる。種々の異物の中でもゲル異物と輝点異物は、セルロースエステル中の未反応のヒドロキシル基の酢化が不十分であることによって化学的物性値が異なり発生する。とりわけ未酢化に近いものは偏光板のクロスニコルの状態で光る輝点異物となり、平均置換度まで十分に酢化されたセルロースエステルと輝点異物の中間の酢化度の低酢化セルロースエステル成分は偏光板のクロスニコルの状態でも光らないゲル異物となる。低酢化異物は共に屈折率が異なり透過光が異常屈折して生じ光学的欠陥となる。これら異物の中でもとりわけゲル異物は従来の異物除去技術、例えばフィルターで除去する工程を取り入れても、取り除ききれず、近年のコントラスト向上の要求スペックを満たすためにもゲル異物のさらなる除去効果を発揮する方法の開発が求められてきている。
【0009】
特許文献1では、輝点異物を低減させる方法として、セルロースエステル溶液を濾過後、気散、乾燥する方法が提案されている。また、特許文献2では、セルロースをアシル化する工程において、過剰な酸無水物でアシル化した後、−30〜30℃の温度範囲内で水を含む停止剤を混合することで、微小な異物を低減させる方法が提案されている。しかしながら、前記方法で低減できるのは、輝点異物が殆どであり、ゲル状異物の低減効果においては満足できるものではなかった。
【0010】
一方、特許文献3では、製造工程の温度を制御し、精密ろ過を行うことで、輝点異物を減少させる方法が提案されている。また、特許文献4では、セルロースエステル溶液にセライトを混合し、濾過によって微小異物を低減させる方法が提案されている。この方法によって、輝点異物及びゲル状異物は低減できるものの、ゲル状異物の低減効果が十分でなく、改善が求められていた。
【0011】
そこで、本発明者は、ゲル状異物の生成機構について種々の観点から検討した結果、ゲル状異物の生成の主原因として、原料成分間の水素結合について着目した。
【0012】
特許文献5には、分子間架橋水素結合を形成するポリマーを圧・剪・熱を同時に作用させながら、0.8〜100μmの電磁放射線を与えて分子間架橋水素結合をもつ樹脂を塑性変形させる技術が開示されている。この技術では、分子間水素結合が切断し変形した後に再度水素結合が形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明者は、当該特許文献1に開示されている技術をセルロースエステルフィルム中のゲル状異物の解消のため応用してみたところ、一旦は、ゲル状物質中の水素結合は分断され、照射後、溶融状態時では、ゲル状物質はフィルム中ランダムに細かく分散されるため、ゲル状物質の大きさは細かくなるものの、光散乱等を引き起こす大きさまで再凝集してしまった。さらに、照射時に流動的でない状態では熱や力がかかっている状態でも、バルク成分が溶融しないため、すぐに再凝集してしまい、あまり効果が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−56819号公報
【特許文献2】特開2007−138141号公報
【特許文献3】特開2008−127535号公報
【特許文献4】特開2008−31396号公報
【特許文献5】特許第4486894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、ゲル状異物が無く、液晶表示装置等の表示装置に用いられた場合、コントラストの高い画像が得られる樹脂フィルムとその製造方法を提供することである。また、当該樹脂フィルムが具備された偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0017】
1.分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成する樹脂フィルムの製造方法であって、当該組成物に、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記樹脂の分子間水素結合を切断する工程を有することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【0018】
2.前記分子間水素結合を切断する電磁波が、0.75〜100μmの波長を有する電磁波であることを特徴とする前記第1項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【0019】
3.前記外的力又は外的エネルギーが、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーであることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【0020】
4.前記組成物から溶融流延法にて樹脂フィルムを形成することを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【0021】
5.前記電磁波を前記組成物に照射する時期が、前記組成物の撹拌・調製工程、フィルター部通過時、ダイスから流出直後、又は延伸機投入直前であることを特徴とする前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【0022】
6.分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成された樹脂フィルムであって、当該組成物が、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーを付与されると共に、分子間水素結合を切断する0.75〜100μmの波長を有する電磁波を照射されたことを特徴とする樹脂フィルム。
【0023】
7.前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、又はエステル結合を有する分子から成る樹脂であることを特徴とする前記第6項に記載の樹脂フィルム。
【0024】
8.前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、セルロースエステル樹脂であることを特徴とする前記第6項又第7項に記載の樹脂フィルム。
【0025】
9.前記分子間水素結合を形成し得る樹脂とアクリル樹脂とを含有することを特徴とする前記第6項から第8項までのいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【0026】
10.前記樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物が、30〜5000の範囲内の重量平均分子量を有する化合物であることを特徴とする前記第6項から第9項までのいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【0027】
11.前記第6項から第10項までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが具備されていることを特徴とする偏光板。
【0028】
12.前記第6項から第1項0までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明の上記手段により、ゲル状異物が無く、液晶表示装置等の表示装置に用いられた場合、コントラストの高い画像が得られる樹脂フィルムとその製造方法を提供することができる。また、当該樹脂フィルムが具備された偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
【0030】
本発明では、フィルム製膜工程等において、ゲル状異物の減少と再凝集を防止するために、0.75〜100μmの波長を発する電磁波を照射して、ゲル状異物を構成する樹脂の分子間水素結合を切断すると共に、当該樹脂の分子間水素結合を阻害する30〜5000の分子量の低分子量化合物を添加することで、一旦切断した水素結合形成部位に低分子量化合物を入り込ませる又は結合させることで、樹脂同士の再凝集を防ぐことができ、ゲル状異物の減少及び再凝集を防ぐことができ、その結果、コントラストの良好なフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の樹脂フィルムの製造方法を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成する樹脂フィルムの製造方法であって、当該組成物に、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記樹脂の分子間水素結合を切断する工程を有することを特徴する。この特徴は、請求項1から請求項12までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0033】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記樹脂の分子間水素結合を切断する電磁波が、0.75〜100μmの波長を有する電磁波であることが好ましい。さらに、前記外的力又は外的エネルギーが、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーであることが好ましい。
【0034】
本発明においては、前記組成物から溶融流延法にて樹脂フィルムを形成することが好ましい。また、前記電磁波を前記組成物に照射する時期が、前記組成物の撹拌・調製工程、フィルター部通過時、ダイスから流出直後、又は延伸機投入直前であることが好ましい。すなわち、前記組成物の撹拌・調製工程、フィルター部通過時、ダイスから流出直後のリボン間、又は縦・横延伸ゾーン入口直前であることが好ましい。
【0035】
本発明の樹脂フィルムの製造方法で製造される樹脂フィルムの好ましい態様は、分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成された樹脂フィルムであって、当該組成物が、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーを付与されると共に、分子間水素結合を切断する0.75〜100μmの波長を有する電磁波を照射されたことを特徴とするものである。
【0036】
当該樹脂フィルムの態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、又はエステル結合を有する分子から成る樹脂であることが好ましい。また、前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、セルロースエステル樹脂であることが好ましい。さらに、前記分子間水素結合を形成し得る樹脂とアクリル樹脂とを含有することも好ましい。また、さらに、前記樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物が、30〜5000の範囲内の重量平均分子量を有する化合物であることが好ましい。
【0037】
本発明の樹脂フィルムの製造方法によって製造された樹脂フィルムは、偏光板及び液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0038】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0039】
(本発明の樹脂フィルムの製造方法の概要)
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成する樹脂フィルムの製造方法であって、当該組成物に、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記樹脂の分子間水素結合を切断する工程を有することを特徴する。
【0040】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記樹脂の分子間水素結合を切断する電磁波が、0.75〜100μmの波長を有する電磁波であることが好ましい。
【0041】
<樹脂の分子間水素結合を切断する電磁波>
本発明は、分子間水素結合が電磁波を吸収する事実、特に赤外領域にエネルギーを有する電磁波を吸収する事実を利用している。これらの波長では、電磁放射線によって樹脂(ポリマー)の共有結合が破壊されるおそれはない。したがって、供給される電磁波の波長は、750nm、すなわち0.75μmより長い波長であることが好ましい。エネルギーの高い電磁波は、特に分子間水素結合によっては容易に吸収されない。また、高エネルギーの電磁波を使用すると、樹脂が化学的に変性を受けるリスクが高まる。それに対して、本発明によれば、外的力(機械的エネルギー)と外的エネルギー(熱エネルギー)を付与することで、特に分子間水素結合が弱められる結果、ある条件の下では、エネルギーが非常に小さい電磁波であっても、本発明の方法を実施できるためには充分である。
【0042】
しかし、電磁波の波長が100μmより長いと、その電磁波のエネルギーは、通常、分子間水素結合を切断するには低すぎる。そのため、本発明の方法では、0.75〜100μmの範囲にある波長を有する電磁波が使用されることが好ましい。
【0043】
なお、特開平10−253446号公報に記載されている装置のように、マイクロ波の一部であるサブミリ波領域と遠赤外光領を網羅する0.3〜3THzの周波数帯を持つテラヘルツ波の発生装置が種々存在する。テラヘルツ波は遠赤外線の浸透波長と違い透過波長の性質を持つ点で赤外光と少し異なるが、0.75〜100μmであれば電波の性質を持つテラヘルツ波を発生するレーザーを使用しても同様の効果が得られるため、好ましい。
【0044】
また、テラヘルツ波発生装置を用いても上記の波長領域の範囲から外れると水素結合の切断効率が落ちるので、好ましくない。テラヘルツ波発生装置は、「J.PlasmaFusionRes.Vol.84,No.11(2008)731−739」を参考にした。
【0045】
選択される具体的な波長は、加工すべき樹脂と、他の条件、剪断力や延伸力などの外的力によって系に導入されるエネルギーと、場合によっては追加的に供給することができる外的エネルギー(熱エネルギー)とに依存する。
【0046】
本発明の方法に最適な波長は、例えば、処理すべき樹脂の分子間水素結合が吸収する波長の範囲は、分光光度法で決めることができる。本発明の方法の実施に最適な波長は、このようにして求めた値を出発点とし、適当なルーチン実験を行って決定される。
【0047】
あるいは、水素結合の結合エネルギーから、副原子価結合を切断するための電磁波が持たなければならない量子エネルギー(光子エネルギー)が計算できる。当業者であれば、これらの計算から、本発明の方法に使用すべき電磁波の好適波長の出発値を求め、その値と簡単なルーチン実験とから、選択した樹脂に最適な波長を決定することができる。
【0048】
本発明の方法では、分子間結合が、外的力又は外的エネルギーを付与することによって追加的に弱められるため、概して、上記の分光光度測定による結果及び理論計算の結果より、放射線量子のエネルギーはやや低いかもしれないし、使用される電磁波の波長はわずかに低いかもしれない。
【0049】
本発明によれば、使用する電磁波の波長は、好ましくは1〜50μmの範囲にある。
【0050】
実際的な理由から、電磁波の発生には、レーザーの使用が得策であり、本発明においては、二酸化炭素レーザーは波長が10.6μmの電磁波を発生し、特に好ましい。
【0051】
エネルギーの必要量(電磁波の強度)は、使用する具体的な装置と、樹脂処理量に非常に大きく依存する。多くの場合、ビーム強度は、好ましくは5×10〜10W/cm、そして特に好ましくは10〜10W/cmの範囲である。
【0052】
レーザーを使用する場合、ビームはパルスであってもよいし連続であってもよいが、できればパルスの方が好ましい。
【0053】
照射は、樹脂中に電磁波が十分吸収されるように行うべきである。吸収量は、好ましくは1kJ/mol〜10,000kJ/mol、より好ましくは5kJ/mol〜1000kJ/mol、特に好ましくは5〜30kJ/molの範囲である。
【0054】
<外的力又は外的エネルギー>
本発明においては、樹脂の分子間水素結合を弱め、切断し易くするため、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記樹脂の分子間水素結合を切断することを特徴とする。
【0055】
当該外的力又は外的エネルギーをとして、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーであることが好ましい。
【0056】
なお、当該外的力は、1〜5,000N/mm、好ましくは10〜1,000N/mm、特に50〜500N/mmの範囲の剪断力又は延伸力であることが好ましい。
【0057】
また、本発明においては、前記組成物から溶融流延法にて樹脂フィルムを形成することが好ましい。また、前記電磁波を前記組成物に照射する時期が、前記組成物撹拌・調製工程、フィルター部通過時、ダイスから流出直後、又は延伸機投入直前であることが好ましい。
【0058】
(分子間水素結合を形成し得る樹脂)
本発明において用いることができる「分子間水素結合を形成し得る樹脂」としては、従来公知の種々の親水性基を有する樹脂を用いることができる。親水性を発現する親水性基としては、ヒドロキシシル基(水酸基)、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合及びエステル結合(−CO−O−)などを挙げることができる。
【0059】
本発明においては、特に、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、又はエステル結合が好ましい。
【0060】
親水性樹脂としては、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール及びその変成物、例えばカチオン化ポリビニルアルコール、シラノール化ポリビニルアルコール、スルホン化ポリビニルアルコールなど、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉−アクリロニトリル重合体の加水分解生成物、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエチレンポリアミド系樹脂、ポリアミドポリアミン系樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体等のポリアルキレンオキサイド誘導体、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0061】
以下において、特に好ましく用いられる樹脂について詳しく説明する。
【0062】
<セルロースエステル樹脂>
本発明に用いることができるセルロースエステル樹脂としては、炭素数2以上の脂肪族アシル基を有するセルロースエステルであることが好ましく、更に好ましくは、セルロースエステルのアシル総置換度が1.0〜2.95、かつアシル基総炭素数が2.0〜9.5であるセルロースエステルである。
【0063】
セルロースエステルのアシル基総炭素数は、好ましくは、4.0〜9.0であり、さらに好ましくは5.0〜8.5である。但し、アシル基総炭素数は、セルロースエステルのグルコース単位に置換されている各アシル基の置換度と炭素数の積の総和である。
【0064】
さらに、脂肪族アシル基の炭素数は、セルロース合成の生産性、コストの観点から、2以上6以下が好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。なお、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。
【0065】
β−1,4−グリコシド結合でセルロースを構成しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。本発明におけるセルロースエステルは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル基置換度とは、繰り返し単位の2位、3位及び6位について、セルロースがエステル化している割合の合計を表す。具体的には、セルロースの2位、3位及び6位のそれぞれの水酸基が100%エステル化した場合をそれぞれ置換度1とする。したがって、セルロースの2位、3位及び6位のすべてが100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
【0066】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等が挙げられ、セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースペンタネート等が挙げられる。また、上述の側鎖炭素数を満たせば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等のように混合脂肪酸エステルでもよい。この中でも、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネートが光学フィルム用途として好ましいセルロースエステルである。
【0067】
上述した好ましいセルロースエステルの中で、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとしたとき、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが好ましい。
【0068】
式(I) 1.0≦X+Y≦2.95
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートがより好ましく用いられ、中でも0.01≦X≦2.5、0.1≦Y≦2.94であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。アシル基置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0069】
本発明のセルロースエステルは、重量平均分子量Mwが50000〜500000のものが好ましく、より好ましくは100000〜300000であり、更に好ましくは150000〜250000である。
【0070】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて重量平均分子量(Mw)、分子量分布を算出する。
【0071】
測定条件は以下の通りである。
【0072】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0073】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが。針葉樹パルプが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
【0074】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0075】
本発明では重合度の高いセルロースが好ましく、例えば、リンターパルプが好ましく、セルロースは、少なくともリンターパルプで構成されたセルロースを使用することが好ましい。セルロースの結晶化度の指標となるα−セルロース含有量は、90%以上(例えば、92〜100%、好ましくは95〜100%、さらに好ましくは99.5〜100%程度)である。
【0076】
<本発明の樹脂フィルムの製造方法>
発明の樹脂フィルムは、種々の樹脂を用いて製造することができるが、以下においては、典型的例として、セルロースエステル樹脂を用いた樹脂フィルム、すなわち、セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0077】
セルロースエステルフィルムの製造方法としては、大別して溶液流延製膜法、溶融流延製膜法が挙げられるが、どちらの製造方法をとっても本発明の効果を奏することができる。
【0078】
[溶融流延製膜法]
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法は、少なくとも、フィルムを形成するポリマー、粒子状物質及び添加剤を混合溶融し、該溶融物を濾過装置により濾過し、その後通常のダイから押出し、冷却ロール上に流延する。
【0079】
以下、製造方法の全体について述べる。
【0080】
〈溶融ペレット製造工程〉
溶融押出しに用いるフィルムを形成するポリマー、粒子状物質、可塑剤およびその他の添加剤の混合物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0081】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、フィルムを形成するポリマーや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
【0082】
原材料は、押出する前に予備乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特に光学フィルムを形成するポリマーは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を600ppm以下、さらに300ppm以下、特に100ppm以下にしておくことが好ましい。
【0083】
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。添加剤が溶液の場合はこの限りではなく、その他の混合試料とスクリュー部への投入直前にインライン添加しても良く、押出機にベント口があればそこから投入しても良い。
【0084】
必要により、添加剤を溶剤に溶解しておき、光学フィルムを形成するポリマーに含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
【0085】
真空ナウターミキサなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したNガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
【0086】
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0087】
押出機に溶液を添加する場合、一部が揮発し押出機内部に充満し、内圧が高くなると、押し出した樹脂に不連続な発泡を発生させる場合がある。そのため、押出機にベント口を設けていることが望ましい。
【0088】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0089】
〈溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程〉
作製したペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜350℃程度とし、濾過装置により濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
【0090】
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
【0091】
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
【0092】
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
【0093】
冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体又は冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
【0094】
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0095】
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0096】
本発明において、弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97/028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
【0097】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0098】
上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、延伸操作により延伸することが好ましい。
【0099】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0100】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0101】
[溶液流延製膜法]
〈有機溶媒〉
セルロースエステルフィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0102】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0103】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0104】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、熱可塑性アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0105】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0106】
〈溶液流延法〉
セルロースエステルフィルムの溶液流延法による製造では、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0107】
ドープ中のセルロースエステル、及び添加剤の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0108】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0109】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0110】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
【0111】
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0112】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0113】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0114】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
【0115】
残留溶媒量は下記式で定義される。
【0116】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0117】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0118】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0119】
(樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物)
本発明の樹脂フィルムは、分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成することを特徴とする。
【0120】
当該当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物としては、このような機能を有する種々の化合物を用いることができるが、樹脂を構成する分子間に入り込んで、当該樹脂構成分子と水素結合を形成し、当該当該樹脂構成分子間の水素結合形成を阻害し得る化合物であることが好ましい。
【0121】
したがって、当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物は、例えば、ヒドロキシシル基(水酸基)、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合、又はエステル結合(−CO−O−)などの親水性基を有している化合物であることが好ましい。
【0122】
また、当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物が、30〜5000の範囲内の重量平均分子量を有する化合物であることが、樹脂構成分子間に入り込み易いため、好ましい。
【0123】
本発明において、好適に用いることができる化合物としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール等)、ポリエチレングリコール(「PEG」と略称する。)(PEG600、PEG4000等)、多価アルコールと脂肪酸のエステル(エチレングリコールとコハク酸とのエステル、グリセリンとマレイン酸とのエステル等)を挙げることができる。また、下記の可塑剤等も用いることができる。
【0124】
<可塑剤>
本発明の樹脂フィルムには、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能が好ましい。可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤等から選択される。そのうち、可塑剤を二種以上用いる場合は、少なくとも一種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
【0125】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0126】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
【0127】
一般式(a) Ra−(OH)n
(但し、Raはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性水酸基を表す。)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0128】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0129】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0130】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0131】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0132】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0133】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を二個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0134】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0135】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0136】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0137】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0138】
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0139】
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0140】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0141】
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエートがより好ましく、サッカロースオクタベンゾエートが特に好ましい。例えば市販品として、モノペットSB:第一工業製薬社製、モノペットSOA:第一工業製薬社製が挙げられる。
【0142】
可塑剤は本発明の樹脂フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
【0143】
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0144】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0145】
<その他添加剤>
本発明の樹脂フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また、帯電防止剤を加えて、本発明の樹脂フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0146】
本発明の樹脂フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0147】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0148】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0149】
本発明の樹脂フィルムには、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を添加することができる。マット剤としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0150】
マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。マット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘーズを低くできるので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘーズを低下できるため好ましい。
【0151】
〈熱可塑性アクリル樹脂〉
本発明の樹脂フィルムにおいて、樹脂として、セルロースエステルに熱可塑性アクリル樹脂を混合してもよい。
【0152】
本発明に用いられるアクリル系重合体は、フィルムの延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上1000000以下である重合体を、適宜選択したものであることが好ましい。アクリル系重合体の適正な分子量範囲が上記の通りであるが、30質量%以上含有させる場合は、セルロースエステルとの相溶性の点から重量平均分子量が80000〜1000000であることが好ましい。
【0153】
熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステルの含有質量比は、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であることが好ましい。より好ましくは90:10〜60:40である。
【0154】
熱可塑性アクリル樹脂は、メタクリル樹脂も含まれる。熱可塑性アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0155】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは、110000〜500000の範囲内である。熱可塑性アクリル樹脂の重量平均分子量は、測定条件含めて、上記記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。熱可塑性アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。また、市販品も使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。熱可塑性アクリル樹脂は二種以上を併用することもできる。また、熱可塑性アクリル樹脂には、特開2009−84574号公報に記載の(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体に(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体を用いてもよい。前記グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体がコア(core)を構成し、その周辺に前記(メタ)アクリル系樹脂がシェル(shell)を構成するコア−シェルタイプのグラフト共重合体であることが好ましい。
【0156】
〈樹脂フィルムの物性〉
本発明に係る樹脂フィルムは、「延性破壊が起こらないフィルム」であることが好ましい。ここで、延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じる破断のことであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
【0157】
「延性破壊が起こらないフィルム」であるか否かは、フィルムを2つに折り曲げるような大きな応力を作用させても破断等の破壊がみられないことにより評価するものとする。
【0158】
液晶表示装置が大型化され、バックライト光源の輝度が益々高くなっていることに加え、デジタルサイネージ等の屋外用途への利用により、より高い輝度が求められていることから、樹脂フィルムはより高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、本発明の樹脂フィルムは張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断でき好ましく、特に110℃〜130℃に制御することが好ましい。
【0159】
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、樹脂フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0160】
また、耐熱性の観点で、樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
【0161】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0162】
また、液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして樹脂フィルムが用いられる場合は、吸湿による寸法変化によりムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色むらといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。このため、寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。
【0163】
また、樹脂フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が一個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.一個/10cm四方以下である。
【0164】
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0165】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0166】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
【0167】
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0168】
欠点の個数が一個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0169】
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)をいう。
【0170】
また、樹脂フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0171】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0172】
樹脂フィルムの厚さは、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。
【0173】
厚さの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚さは用途により適宜選定することができる。
【0174】
樹脂フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
【0175】
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、熱可塑性アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0176】
〈返材適性〉
従来の樹脂基材から樹脂フィルムを作る工程において、フィルムの両端部を適宜スリットする工程が設けられ、その際に出る不要な端部フィルムを再利用する。これを一般に返材という。
【0177】
溶液流延製膜においてはスリットされたフィルムは比較的低温で再度溶剤に溶解されるため、新規原料同等の性質を維持でき、光学フィルムになっても特に特性上問題はない。
【0178】
一方、溶融流延製膜フィルムでは溶液流延製膜フィルムの様に返材を使いこなすことは困難である。即ち、溶融流延製膜工程では、例えば、セルロースエステルに溶融時に高温の熱が加わっているため、セルロースエステル分子は劣化や分解が進行しており、再利用した場合は更に分解や劣化が進むため、劣化物やゲル異物、輝点異物といった光学用途フィルムに悪影響を与える成分が発生し易く、実際に返材を利用するに至っていなかった。
【0179】
しかしながら、本発明の樹脂フィルムは、極めて均一性が高く不純物が少ないため、溶融流延製膜することで得られるフィルムを再度返材として使用しても、劣化物の発生や着色が少なく、光学用途フィルムの品質に十分達していることが分かった。
【0180】
返材の使用比率は、主未使用原料の処方値の固形分に対して0〜70質量%が好ましく、10〜50質量%が更に好ましく、さらに20〜40質量%が好ましい。
【0181】
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子など樹脂フィルムムに含まれる添加剤は減量して、最終的な樹脂フィルム組成が設計値になるように調整を行うことが好ましい。
【0182】
<機能性層>
本発明の樹脂フィルムには、帯電防止層、バックコート層、反射防止層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を設けることができる。
【0183】
〈ハードコート層〉
本発明に用いられるハードコート層は活性線硬化樹脂を含有し、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。
【0184】
活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。
【0185】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
【0186】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0187】
又はドコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
【0188】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0189】
又はドコート層には、無機化合物又は有機化合物の微粒子を含むことが好ましい。
【0190】
無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0191】
有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、又はポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を添加することができる。
【0192】
これらの微粒子粉末の平均粒子径は特に制限されないが、0.01〜5μmが好ましく、更には、0.01〜1.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる二種以上の微粒子を含有しても良い。微粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0193】
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、10〜400質量部となるように配合することが望ましく、更に望ましくは、50〜200質量部である。
【0194】
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、ハードコート層を形成する塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することで形成できる。
【0195】
ハードコート層のドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは6〜15μmである。
【0196】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0197】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜200mJ/cmである。
【0198】
〈バックコート層〉
本発明の樹脂フィルムは、フィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面に、カールやくっつき防止のためにバックコート層を設けてもよい。
【0199】
バックコート層に添加される粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0200】
バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘーズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。
【0201】
バインダーとしては、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂が好ましい。
【0202】
〈反射防止層〉
本発明の樹脂フィルムは、ハードコート層の上層に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
【0203】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、三層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる三層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。又は、二層以上の高屈折率層と二層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
【0204】
反射防止フィルムの層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0205】
樹脂フィルム/ハードコート層/低屈折率層
樹脂フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
樹脂フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
樹脂フィルム/ハードコート層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
樹脂フィルム/ハードコート層/防眩性層/低屈折率層
反射防止フィルムには必須である低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、支持体であるセルロースフィルムの屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0206】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0207】
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも一種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
【0208】
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、あるいは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
【0209】
一般式(OSi−1):Si(OR)
前記一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0210】
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0211】
<偏光板>
本発明の樹脂フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の樹脂フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した樹脂フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0212】
もう一方の面に該樹脂フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、特開2003−12859号記載のリターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムが一例として挙げられる。
【0213】
また、他に面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いて、視野角拡大可能な偏光板とすることもできる。これらは例えば、特開2002−71957号の方法で作製することができる。又は、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。
【0214】
また、好ましく用いられる市販の偏光板保護フィルムとしては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が挙げられる。
【0215】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。
【0216】
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。
【0217】
該偏光膜の面上に、本発明の樹脂フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0218】
<液晶表示装置>
本発明の樹脂フィルムを用いて作製した偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。
【0219】
本発明の樹脂フィルムは偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。
【実施例】
【0220】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0221】
なお、本発明において、赤外光を照射する時期は、ペレタイズ工程でも、フィルム製造工程のどちらでもよく、その両方でも良いが、以下に記載する例では、フィルム製造工程において赤外光を照射する態様について説明する。
【0222】
[セルロースエステル樹脂の製造方法]
[樹脂製造例1]
原料パルプ(αセルロース93%以上:日本製紙(株)製)に酢酸50質量部を加え、1時間活性化処理を行った。
【0223】
上記含酢酸パルプを反応器に入れ、更に無水プロピオン酸250質量部、無水プロピオン酸400質量部、硫酸9質量部を投入し室温から徐々に40℃まで温度を上昇させ、40℃に保温しながら1時間保温し、エステル化反応を進行させた。
【0224】
次いで1次中和工程で30%酢酸水溶液250部を加え中和した後、熟成工程にて残った無水カルボン酸類を加水分解するために、80質量%の酢酸水溶液を150質量部入れ、60℃に保持し、1時間撹拌させた。
【0225】
その後反応停止のために、硫酸を中和するため、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部加えた。
【0226】
熟成反応停止後のドープに親水性基を持つ平均粒径30μmの親水性シリカ粒子を投入し、5分間撹拌した後、濾過工程においてガラスフィルターで酢酸ドープを濾過した。
【0227】
次に沈殿工程で析出したセルロースエステル樹脂を濾別し、50℃の温水で5回洗浄し、残っている酢酸水溶液を溶出させた後、70℃で3時間乾燥させ、アセチル置換度0.25、プロピオニル置換度2.43、総置換度2.68のセルロースアセテートプロピオネートである樹脂製造例1のセルロースエステル樹脂を得た。重量平均分子量(Mw)は下記測定法を用いて測定した結果20万であった。
【0228】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
重量平均分子量Mwは、市販のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0229】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0230】
[樹脂製造例2]
上記製造例1の、反応器に無水酢酸500質量部、硫酸12質量部を投入したことと、1次中和工程で30%酢酸水溶液250部を加え中和した後、反応停止のため、硫酸を中和するために、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部加えた。
【0231】
アセチル置換度2.90、総置換度2.90、Mw=25万のトリアセチルセルロースを得たこと以外は樹脂製造例1と同じである樹脂製造例2のセルロースエステルを得た。
【0232】
[樹脂製造例3]
上記製造例1の原料パルプ(αセルロース93%以上:日本製紙(株)製)にプロピオン酸250質量部を加え、1時間活性化処理を行った。
【0233】
反応器には無水プロピオン酸650質量部、無水プロピオン酸400質量部、硫酸12質量部を投入し室温から徐々に40℃まで温度を上昇させ、40℃に保温しながら1時間保温し、エステル化反応を進行させた。次いで1次中和工程で30%酢酸水溶液350部を加え中和した後、熟成工程にて残った無水カルボン酸類を加水分解するために、80質量%の酢酸水溶液を150質量部入れ、60℃に保持し、1時間撹拌させた。その後反応停止のために、硫酸を中和するため、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を25質量部加えたことによりプロピオニル置換度2.63、総置換度2.63、Mw=19万のセルロースプロピオネートであることを除いて樹脂製造例1と同じである樹脂製造例3のセルロースエステル樹脂を得た。
【0234】
[樹脂製造例4]
上記製造例1の、反応器に無水酢酸400質量部、硫酸10質量部を投入し、室温から徐々に40℃まで温度を上昇させ、40℃に保温しながら1時間保温し、エステル化反応を進行させた。1次中和工程で30%酢酸水溶液230部を加え中和した後、熟成工程にて残った無水カルボン酸類を加水分解するために、80質量%の酢酸水溶液を150質量部入れ、60℃に保持し、1時間撹拌させた。さらに反応停止のため、硫酸を中和するために、30質量%の酢酸マグネシウム水溶液を15質量部加えたことにより、アセチル置換度2.10、総置換度2.10、Mw=21万のトリアセチルセルロースを得たこと以外は樹脂製造例1と同じである樹脂製造例4のセルロースエステルを得た。
【0235】
[ペレットの製造方法]
[ペレット製造例1]
ペレット1の製造にはベント口のある二軸押出機を用い、あらかじめ90℃で4時間乾燥させたセルロースエステル樹脂(CAP)とその他下記添加剤等を混合し、二軸押出機内に投入される。下記ポリエチレングリコール600のような添加剤が室温で液体の場合は、前記試料と事前に混合せず二軸押出機投入直前で液体をインラインで添加する工程を設け、スクリュー直前で前記混合樹脂と混合したのち、230℃スクリュー部で混錬する。
【0236】
スクリューを経て押し出されたセルロースエステルの溶融混合樹脂を水冷にて冷却固化しロータリーカッターでカットしペレットを得る。
【0237】
(試料1)
セルロースエステル樹脂[樹脂製造例1] 90質量部
ポリエチレングリコール600(和光純薬(株)製) 10質量部
Tinuvin928(BASFジャパン(株)製) 1.1質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製) 0.25質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
R972V(アエロジル製) 0.15質量部
(ペレット製造例2〜5)
上記試料1の製造において、ポリエチレングリコール600(和光純薬(株))を下記の化合物それぞれに代えて、試料2〜5を製造した。なお、固体のものは事前にその他の添加剤と混合することを除いてペレット製造例1と同じ方法で製造した。
【0238】
試料2:MeOH(関東化学(株))、試料3:PEG4000(和光純薬(株))、試料4:ポリカーボネートジオールジメタクリレートUM90(1/1)、試料5:SYグリスター ML−310(坂本薬品工業)
(ペレット製造例6)
上記試料1の製造において、試料1のセルロースエステル樹脂(CAP)を下記の試料6の樹脂に代えて、乾燥時間が90℃で10時間であり、90質量部であること以外はペレット製造例1と同じ方法で製造した。
【0239】
試料6:ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製)
(ペレット製造例7)
上記試料1の製造において、ポリエチレングリコール600を5質量部、さらに、MeOHを5質量部添加したことを除き、ペレット製造例1と同じ方法で製造した。
【0240】
(ペレット製造例8〜10)
上記試料1の製造において、セルロースエステル樹脂(CAP)を下記の樹脂に代えて、試料8〜10を製造した。なお、90質量部で成型時の温度が以下の通りであること以外はペレット製造例1と同じである。
【0241】
試料8:セルロースエステル樹脂[樹脂製造例2]、270℃
試料9:セルロースエステル樹脂[樹脂製造例3]、220℃
試料10:セルロースエステル樹脂[樹脂製造例4]、260℃
(ペレット製造例11)
以下の試料11に記載の試料を用い、溶融温度が240℃であること以外はペレット製造例1と同じ方法で製造した。
【0242】
(試料11)
セルロースエステル樹脂[樹脂製造例1] 100質量部
Tinuvin928(BASFジャパン(株)製) 1.1質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製) 0.25質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
R972V(アエロジル製) 0.15質量部
(ペレット製造例12)
ペレット製造例1に記載のスクリュー混錬部に炭酸ガスレーザー(DIAMOND E−400:平均出力が400w、COHERENT社製)の光をビームスプリッターで二つに分け、レンズ等で径を絞り有効径を100mmとした二つの光を導光したことを除いてペレット製造例1と同じである。
【0243】
[フィルムの製造方法]
(実施例1)
ペレットの製造例1で得られたペレットを70℃で5時間乾燥させ、一軸のスクリュータイプの押出機に投入し240℃で混錬した。押出機のスクリュー圧縮部直前に炭酸ガスレーザー(DIAMOND E−400:平均出力が400w、COHERENT社製)の光をビームスプリッターで二つに分け、二つの光を導光した。レーザー光を照射する際にはレンズ等で径を絞り有効径を100mmとした。
【0244】
押出機のレーザー照射部は極端に高温になる可能性があるので、その部分に冷却した窒素を流し、240℃を制御した。窒素雰囲気下、240℃にて溶融して流延ダイから第1冷却ロール上に押し出し、第1冷却ロールとタッチロールとの間にフィルムを挟圧して成形し原反フィルムを得た。流延ダイのギャップの幅がフィルムの幅方向端部から15mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。タッチロールとしては、その内部に80℃のオイルを流した。
【0245】
(実施例2〜5)
ペレット製造例2〜5のペレットを用いたこと以外は実施例1と同じである。
【0246】
(実施例6)
ペレット製造例6で得られたペレットを用い、70℃で12時間乾燥させたペレットを230℃で溶融したことを除いて実施例1と同じである。
【0247】
(実施例7)
YAGレーザー(型番3500−350W:300W SPEEDFAM社製)を用いたこと以外は実施例1と同じである。
【0248】
(実施例8)
ペレット製造例7のペレットを用いたこと以外は実施例1と同じである。
【0249】
(実施例9〜11)
ペレット製造例9〜11で得られたペレットを用い以下の温度で溶融したこと以外は実施例1と同じである。
ペレット製造例9:270℃
ペレット製造例10:220℃
ペレット製造例11:260℃
(実施例12〜13)
ペレット製造例1と6、ペレット製造例6と10で得られたペレットをそれぞれ50対50で混合し以下の温度で流延したことを除いて実施例1と同じである。
ペレット製造例1と6:230℃
ペレット製造例6と10:260℃
(比較例1)
ペレット製造例11のペレットを用いて溶融温度が240℃であること以外は製造例1と同じである。
【0250】
(比較例2)
装置がYAGレーザーであることを除いて比較例1と同じである。
【0251】
(比較例3)
装置がマイクロ波発生装置(特開2006−4550号公報に記載の“グリーンモチーフI”(東京電子製)、周波数帯は433.920±0.87MHz、915±50MHz、2450±50MHz、24.125±0.125GHzの領域)であることを除いて実施例1と同じである。
【0252】
(実施例14)
赤外線照射領域を組成物の撹拌・調製工程からフィルター部にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0253】
(実施例15)
赤外線照射領域を組成物の撹拌・調製工程からリボン間にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0254】
(実施例16)
赤外線照射領域を組成物の撹拌・調製工程から縦延伸ゾーン直前にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0255】
(実施例17)
赤外線照射領域を組成物の撹拌・調製工程から横延伸ゾーン直前にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0256】
(実施例18)
ペレット製造例12のペレットを用いたこと以外は実施例1と同じである。
【0257】
(評価項目)
(ゲル状異物の個数測定)
溶融流延製膜で得られた溶融フィルムの巻きから1m分を切り出し、蛍光灯の光をフィルムに当て、表面の凹凸反射を目視でチェックした。チェックした部分を光学顕微鏡で内容を精査し、ゴミ等の外部異物との分離をして、長径(粒子投影像の端部と端部とを結ぶ最も長い直線の長さ)が100μm未満のゲル状異物個数とした。
【0258】
数百個/mレベルのチェック数の場合、適宜評価面積を小さくし、1mに換算した結果をゲル個数とした。
【0259】
(表示パネル実装時のコントラストの測定)
(偏光膜の作製)
コントラストの評価をする液晶表示パネルを作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
【0260】
(原反フィルムの延伸)
偏光板を作製するために、実施例1〜18及び比較例1〜3で得られたフィルムの原反を、延伸工程において延伸して40μmのフィルムを得た。
【0261】
(偏光板の作製)
下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光膜に、実施例1で作製した原反を延伸し、膜厚40μmとしたフィルム(T−1)と、偏光板の対向フィルム用に実施例8で作製した原反を延伸し、膜厚40μmのとしたフィルム(T−8)とを貼り合わせて偏光板1を作製した。
工程1:50℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで、水洗し乾燥し、偏光膜と貼合する側を鹸化したT−1,T−8のフィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き、この偏光膜の両側に、工程1で処理したT−1,T−8のフィルムを積層して配置した。
工程4:工程3で配置した偏光膜とT−1,T−8のフィルムを、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とT−1,T−8のフィルムを2分間乾燥し、偏光板1を作製した。
【0262】
つぎに、液晶表示パネルのもう一方の面に貼り合わせる偏光板2としては、上記の場合と同様にして作製した偏光板1を利用し、その貼合わせ方向が液晶を中心として対称となるように配置した。
【0263】
そのほか実施例2〜18及び比較例1〜3の原反フィルムを実施例1のフィルムと同様に延伸し40μmのフィルムを作製し、対向フィルムにT−8のフィルムを用いて偏光板を作製した。
【0264】
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置である市販の30インチカラー液晶テレビの偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、作製した偏光板二枚を偏光板の偏光軸が元と変わらないように互いに直交するように貼り付け、30インチカラー液晶テレビを作製し、偏光板としての特性を評価した。
【0265】
評価は、上記で得られた液晶テレビに実装時のコントラストの測定を表示パネルの視野角の評価を行うことにより、実施した。
【0266】
ここで、視野角評価は、液晶表示パネルを、ELDIM社製EZ−contrastを用いて視野角を測定した。測定方法は、液晶表示パネルの白表示と、黒表示時のコントラストについて、パネル面に対する法線方向からの傾き角80°に対するコントラストが、全方位において下記値の範囲内でランク付けを行った。
【0267】
◎ :コントラストが全方位40以上
○ :コントラストが全方位30以上40未満
△ :コントラストが全方位20以上30未満
△×:コントラストが全方位15以上20未満
× :コントラストが全方位15未満の領域が存在した
以上の評価結果を表1に示す。
【0268】
【表1】

【0269】
表1に示した結果から、本発明に係る実施例では、ゲル状異物が極めて少なく、その結果として、本発明の樹脂フィルムを用いた偏光板を液晶表示装置に用いた場合、コントラストが良好であることが分かる。
【符号の説明】
【0270】
1 組成物の撹拌・調製工程の赤外線照射領域
2 フィルター部の赤外線照射領域
3 ダイスから流出直後のリボン間の赤外線照射領域
4 縦延伸ゾーン入口直前の赤外線照射領域
5 横延伸ゾーン入口直前の赤外線照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成する樹脂フィルムの製造方法であって、当該組成物に、外的力又は外的エネルギーを付与すると共に、電磁波を照射して前記樹脂の分子間水素結合を切断する工程を有することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記分子間水素結合を切断する電磁波が、0.75〜100μmの波長を有する電磁波であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記外的力又は外的エネルギーが、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記組成物から溶融流延法にて樹脂フィルムを形成することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記電磁波を前記組成物に照射する時期が、前記組成物の撹拌・調製工程、フィルター部通過時、ダイスから流出直後、又は延伸機投入直前であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
分子間水素結合を形成し得る樹脂と当該樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物とを含有する組成物から形成された樹脂フィルムであって、当該組成物が、剪断力、延伸力、又は熱エネルギーを付与されると共に、分子間水素結合を切断する0.75〜100μmの波長を有する電磁波を照射されたことを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項7】
前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、又はエステル結合を有する分子から成る樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記分子間水素結合を形成し得る樹脂が、セルロースエステル樹脂であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
前記分子間水素結合を形成し得る樹脂とアクリル樹脂とを含有することを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記樹脂の分子間水素結合を阻害する化合物が、30〜5000の範囲内の重量平均分子量を有する化合物であることを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが具備されていることを特徴とする偏光板。
【請求項12】
請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが具備されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111887(P2012−111887A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263311(P2010−263311)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】