説明

樹脂レンズおよび樹脂レンズの製造方法

【課題】ゲート部の切断にコストを大きなコストをかけることなく、有効半径の増大や小径化を図ることができる樹脂レンズを提供する。
【解決手段】レンズ本体25の外周面は、ゲート部24が接続される部分を除いて設定された半径の仮想円28に沿って設けられている。レンズ本体25の外周面のゲート部24が接続される部分には、成形時にゲート部24の幅より広い範囲に渡ってレンズ本体25の半径方向中心側に後退した形状の凹部61が設けられている。凹部61におけるレンズ本体25の外周面が、入子で成形される部分の外縁(境界26)より外側でかつ仮想円28より内側に円弧状に形成されている。ゲート部24を切断することにより形成される平面状の切断面が仮想円28より内側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のレンズである樹脂レンズおよび樹脂レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブルーレイディスク、DVD、CD等の光ディスクの読取や書き込みのための光ピックアップ装置に用いられる対物レンズ(ピックアップレンズ)は、ガラスモールドレンズに代えてたとえば熱可塑性樹脂製のレンズが用いられるようになっており、このような対物レンズはたとえば射出成形により成形されている。
また、所謂デジタルカメラやカメラ付き携帯電話やビデオカメラ等の各種カメラでも、樹脂製のレンズが用いられるようになってきている。
【0003】
また、前記光ピックアップ装置の対物レンズとしての樹脂レンズは、たとえば、集光機能等の光学的機能を有する光学的機能部と、光学装置への位置決めおよび固定に使用されるフランジ部とを有する。そして、フランジ部は、たとえば、光学的機能部の外周に鍔状に形成されている。
【0004】
このような樹脂レンズは、例えば、射出成形により成形される。射出成形金型には、樹脂レンズとなる部分を成形するキャビティと、キャビティに樹脂を充填するために、樹脂が射出されるスプルーと、スプルーから多数個取りのために複数設けられた各キャビティに樹脂を供給するランナと、ランナとキャビティとの間の形成されたゲートを有するものとなっている。したがって、射出成形金型から取り出される成形品は、スプルー、ランナ、ゲートおよびキャビティ内に充填されて冷却して固化されたものとなっており、樹脂レンズとする際には、キャビティで成形された樹脂レンズに繋がるゲートで形成されたゲート部を切断し、成形品から樹脂レンズを切り離す必要がある。なお、ゲート部は、一般的に樹脂レンズの外周部分の一箇所に設けられており、成形品から切り離された樹脂レンズには、その外周の一箇所にゲート部を切断した切断部を有することになる。
【0005】
一般的に、樹脂レンズを光学装置に取り付ける際に円状の外形が基準となることから、ゲート部の切断部や切断部に生じるバリが前記円状の外形の内側となるようにゲート部が切断される。すなわち、樹脂レンズの外形は、ゲート部の切断部があることにより円とはならないが、ゲート部の切断部およびその近傍以外は、設定された径の仮想円の円周上に配置され、ゲート部の切断部は、前記仮想円より内側となるように配置されることで、樹脂レンズの光学装置への取り付けを妨げることがなくなる。
【0006】
このようなゲート部の切断方法として、例えば、図12に示すように、樹脂レンズ1の外形の成形形状を前記仮想円2に沿った概略円形状とし、かつ、前記金型のランナで成形されたランナ部3に繋がるゲート部4が接続される部分だけ前記仮想円2の内側で直線状に成形された直線部5とし、この直線部5に沿ってゲート部4を切断することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この樹脂レンズ1においては、成形時に直線部5が形成され、この直線部5に繋がるゲート部4を切断した際に、切断されたゲート部4の切断痕としてのゲート残部6が直線部5から少し突出した状態となるが、樹脂レンズ1のゲート部4が接続される直線部5が円弧状に凸とならずに直線状となっていることで、前記ゲート残部6や切断時に生じるバリが仮想円2の内側に配置される。
【0007】
この場合に、ゲート部4のゲート残部6が直線部5より少し突出するので、直線部5と仮想円2との間に比較的広い距離を必要とするとともに、ゲート部4が接続される部分が直線状の直線部5とされていることにより、直線部5と仮想円2との最も離れた部分の距離が長くなる。
【0008】
ここで、直線部5は、上述の光学的機能部の光学機能の妨げとならないように、光学的機能部7より外周側のフランジ部8に形成される必要がある。
また、樹脂レンズ1の光が通過する二つの面は、それぞれ軸周りに回転自在な入子を有する金型で形成される。光学的機能部7は、円形で周方向に沿って形状が一様となっているので、光学的機能部7を成形する部分は、回転自在な入子で問題ないが、フランジ部8のゲート部4が接続される部分は、ゲート部4の位置が固定となるので、回転可能な入子で成形することができず、入子の周囲を形成する金型となるホルダで成形することになる。このゲート部4が設けられる部分が直線部5のように樹脂レンズ1の外周面より大きく内側に入り込んでいると、入子の径を大きくできない。
【0009】
これらのことから、フランジ部8の径方向に沿った幅を比較的大きくする必要が生じ、樹脂レンズ1の光学的機能部7として使用可能な有効半径をフランジ部8を含む樹脂レンズの半径に対して大きく取れない虞がある。
そこで、上述の直線部を設けずに、ゲート部が接続される部分の成形形状を前記仮想円に略沿った円弧状とし、ゲート部を切断する際に、切断形状がゲート部の幅より広く、かつ、仮想円より内側で円弧状もしくは外周側に凸となる曲線状となるようにすることが提案されている(例えば、特許文献2から特許文献4参照)。
このような構成とした場合に、ゲート部の切断形状が外周側に凸となる円弧や曲線となっていることにより、その内側に円状の光学的機能部を比較的広く取ることが可能となり、同じ半径の樹脂レンズでも前記有効半径を広く取ることが可能となる。また、有効半径を広くしなければ、樹脂レンズのフランジ部の幅を狭くして、樹脂レンズの小径化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−12694号公報
【特許文献2】特許第3969597号公報
【特許文献3】特開平11−119005号公報
【特許文献4】特開平10−123306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献2から特許文献4においては、樹脂レンズのゲート部を外側に凸となる円弧状もしくは曲線状に切断するために、その切断方法が限られたものとなるとともに、切断の加工コストが高くなる。樹脂レンズにおいては、コストの低減が求められており、コスト面から見ると樹脂レンズとなる部分の外側でゲート部を直線的に切断する特許文献1の樹脂レンズの方が優れている。
【0012】
また、樹脂レンズは、ゲートから切断されることで、個々に分離された状態となる。しかし、樹脂レンズに傷が生じないようにする上では、個々に分離した状態で取り扱うことができないので、多数(複数)の樹脂レンズは、トレイに収容された状態で取り扱われる。また、成形後の樹脂レンズには、ARコーティング(Anti-Reflective-coating)がなされるが、コーティングに際して樹脂レンズを個々に取り扱うのでは作業性が悪いので、上述のようにトレイに収容された複数の樹脂レンズに対して一括してコーティングを行うことが提案されている。
【0013】
トレイ(レンズ保持部材)は、例えば、図13に一部を示すように、上下一対のプレート11,12からなるとともに、それぞれに多数の開口13,14が形成されている。なお、図13では、それぞれのプレートの一個の開口13,14部分のみを図示している。各開口13,14は、2枚のプレート11,12を重ねた際に、上下に重なるように配置されている。また、各開口13,14は、プレート11,12の互いに突き合わされる面側が小径で、反対の面側が大径とされており、小径側は樹脂レンズ1より径が小さく、大径側は樹脂レンズ1より径が大きくなっている。
【0014】
そして、下側のプレート12の上側のプレート11に接触する上面には、各開口14の小径となる部分を樹脂レンズ1の径より少し大きく拡径した形状のレンズ収容部15が設けられている。
レンズ収容部15は、開口14の小径側に設けられるが、レンズ収容部15の直下では、開口14の径が樹脂レンズ1の径より小さくなっていることで、段差が形成され、この段差部分で樹脂レンズ1のフランジ部が支持されている。また、下側のプレート12のレンズ収容部15の上に上側のプレート12の開口13の小径側が重なるが、開口13の小径側の径は、樹脂レンズ1の径より小さく、樹脂レンズ1のフランジ部を開口13の外縁の外側部分が覆った状態となる。これにより上下のプレート11,12に樹脂レンズ1のフランジ部8が略挟まれた状態に保持される。
【0015】
また、上述のようにゲート部の切断部としてのゲート残部6が、樹脂レンズ1の光学装置への取り付けに際し、樹脂レンズ1の光軸周りの角度の位置決めに用いられる場合があるが、この場合にトレイに収容された各樹脂レンズの光軸周りの角度を略同じとすることで、樹脂レンズ1の光学装置への取り付けの際の作業性を向上することができる。
そこで、レンズ収容部15にゲート残部6や直線部5を用いて樹脂レンズ1の角度の位置決めと、樹脂レンズ1の回り止めとなる構造が設けられる場合がある。
【0016】
例えば、図14から図16に示すように、上述の直線部5を有する樹脂レンズ1用のトレイのレンズ収容部15の内周面の形状は、直線部5とゲート残部6の外形に対応した形状となっている。すなわち、レンズ収容部15の平面形状は、上述の仮想円2より少し大きな径の略円筒状の円弧面とされるととともに、前記直線部5に対応する平面部16と、ゲート残部6に対応して平面部16の中央部から矩形状に突出した形状の突出部17とを有するものとなっている。
【0017】
したがって、レンズ収容部15に樹脂レンズ1を収容した際に、ゲート残部6が突出部17内に配置されるとともに、直線部5が平面部16に近距離で対向して配置されことによって、各レンズ収容部15に収容される樹脂レンズ1の向きを揃えられるとともに、レンズ収容部15内で樹脂レンズ1が回転して向きが変わってしまうのを防止することができる。
【0018】
図15に示すように、レンズ収容部15に樹脂レンズ1が収容されるが、トレイに入れた状態で樹脂レンズ1を搬送等した際に、レンズ収容部15内で樹脂レンズ1が回転方向に動く場合がある。この場合に、図16(a),(b)に示すように、樹脂レンズ1の直線部5およびゲート残部6が前記レンズ収容部15の平面部16および突出部17に対して斜めとなり、樹脂レンズ1の直線部5の端の角が、レンズ収容部15の平面部16に当接した状態となる。
この場合に、レンズ収容部15の内径と、樹脂レンズ1の外径とには、大きな差がなく、レンズ収容部15の内周面に対して樹脂レンズ1の平面部16の端の角と、この角の樹脂レンズ1の直径方向に沿って逆側となる外周面とが、レンズ収容部15の平面部16を含む内周面に挟まれた状態となる。
【0019】
この際に、樹脂レンズ1の直線部5の左右の端の角は、射出成形時に金型により成形するため丸みを帯びた状態となっており、エッジが尖った状態とはなっていないので、トレイの移動時に生じる外力程度で、容易に上述のようにレンズ収容部15の内周面に樹脂レンズ1が噛み込んで挟まれた状態となる虞がある。
上述のように樹脂レンズ1が挟まると、樹脂レンズ1をレンズ収容部15から取り出すのに手間がかかり、トレイからの多くの樹脂レンズ1を取り出す際の作業性を悪化させてしまう。
【0020】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ゲート部の切断に大きなコストをかけることなく、有効半径の増大や小径化を図ることができ、さらに、トレイの収容部に向きを決めて収容した際に取り出し難い状態となるのを防止できる樹脂レンズおよび樹脂レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の樹脂レンズは、光が通過する二つの面を有し、これら面のうちの少なくとも一方の面が、この一方の面の外周部を成形する外周側金型と、前記外周部の内側となる内周部を成形する内周側金型とを用いて成形され、
かつ、成形されたレンズ成形品のレンズ本体からゲート部を切り離して得られる樹脂レンズであって、
前記レンズ本体の外周面は、前記ゲート部が接続される部分を除いて設定された半径の仮想円に沿って設けられ、
前記レンズ本体の外周面の前記ゲート部が接続される部分には、成形時に前記ゲート部の幅より広い範囲に渡って前記レンズ本体の半径方向中心側に後退した形状の凹部が設けられ、
前記凹部における前記レンズ本体の外周面が、前記内周側金型で成形される部分の外縁に沿うように成形されるか、または、前記外縁より外側でかつ前記仮想円より内側となる範囲で外方に向って凸となる曲面状に成形され、
前記ゲート部が切り離されることにより形成される平面状の切断面が前記仮想円より内側に設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項1に記載の発明においては、成形時にレンズ成形品のレンズ本体のゲート部が接続される部分に、凹部が成形される。この凹部において、前記レンズ本体の外周面は、内周側金型(入子)に成形される部分の外縁に沿った形状とされるか、内周側金型に成形される部分の外縁より外側で、かつ、前記レンズ本体の外周面のゲート部以外の部分に沿う仮想円より内側となる範囲内で、外側に凸となる曲面状とされている。この凹部に接続されているゲート部を前記仮想円の内側で切断するので、ゲート部を切断した部分が前記仮想円より外側に出ることがなく、また、切断時に発生したバリも仮想円の内側に納めることが可能となる。
【0023】
この際に、前記凹部が従来のように直線状ではなく、外側に凸となる曲面もしくは内周側金型で成形される部分の外縁に沿った形状となるので、樹脂レンズの光学的機能部とすることが可能な有効半径を大きくすることができる。これにより従来と同径の樹脂レンズにおいて、光学的機能部を広くしたり、従来と同径の光学的機能部を有する樹脂レンズをより小径としたりすることが可能となる。
【0024】
なお、入子が周知のように樹脂レンズの略光軸周りに回転可能な構造となっている場合に、樹脂レンズの最外周部分で前記凹部が成形される部分はゲートの位置に対応して固定して設けられる必要があるので、入子で前記凹部を成形することができない。この凹部の仮想円の半径方向に沿った最大幅が小さければ、外周側金型で成形される部分の仮想円の半径方向に沿った幅が狭くなり、レンズを小型化することができる。
従来のようにゲートが切断される部分を直線状に成形とすると、この直線状の部分を仮想円に対する凹部と見なした場合に、直線の中央部で、凹部の仮想円の半径方向に沿った幅が最大となるとともに、この最大となった幅が、前記凹部における樹脂レンズの外周面を外側に凸となる曲面状とした場合の凹部の半径方向に沿った最大幅より大きくなってしまい、樹脂レンズの径を小さくできない。それに対して、前記凹部における樹脂レンズの外周面を外側に凸となる曲面状とした場合に、直線ではなく外側に凸となった分だけ、凹部の仮想円の半径方向に沿った幅を狭くでき、光学的機能部より外周側の部分を狭くして、有効半径の増加や樹脂レンズの小径化を図ることができる。
【0025】
また、従来のように樹脂レンズのゲートが接続される部分を直線状とした場合に上述のように凹部の半径方向に沿った最大幅が広くなるので、レンズ本体に接続されるゲート部が樹脂レンズの中央側に近づくことになる。それに対して本発明では、凹部の半径方向に沿った幅が狭くなることで、従来よりゲート部が樹脂レンズの中央側から離れること、すなわち内周側の光学的機能部から離れることになる。
ここで、金型の樹脂レンズを成形するキャビティに最終的に樹脂を流入させるゲート部近傍では、成形品に歪が生じやすく、ゲート部が光学的機能部に近づくと光学的機能部に前記歪による悪影響を与える可能性があるが、直線部を有する従来の樹脂レンズよりゲート部を樹脂レンズの中央から離すことが可能となることで、光学的機能部への悪影響を抑制することができる。
【0026】
また、成形時に上述の形状の凹部を成形し、ゲート部を切り離す際には切断面が平面状となるように切断しているので、切断の加工コストを低減することができる。すなわち、従来のように、前記凹部と略同形状となるように樹脂レンズのゲート部との接続部分を切削加工する場合に比較して、切断の加工コストが高くなるのを防止することができる。
【0027】
請求項2に記載の樹脂レンズは、請求項1に記載の発明において、前記凹部における前記レンズ本体の外周面が、前記仮想円と同芯の円弧面となっていることを特徴とする。
【0028】
請求項2に記載の樹脂レンズにおいては、凹部におけるレンズ本体の外周面が、仮想円と同芯の円弧面となっているので、凹部の仮想円に半径方向に沿った幅が一様となり、最も効率的に内周側金型や外周側金型を配置可能となる。よって、光学的機能部の径を効率的に大きくできるとともに効率的に樹脂レンズの小径化を図ることができる。
【0029】
請求項3に記載の樹脂レンズは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記一方の面の外周部分には、光学装置への組み込みに際し、位置決め固定の基準となる基準面と、当該基準面の内周側に光軸を有する光学的機能面とが設けられ、
前記基準面および前記光学的機能面が前記内周側金型で成形され、前記基準面より外周側の部分が外周側金型で成形され、
前記基準面からの前記光軸方向に沿った距離を高さとした場合に、
前記基準面より外周側に前記内周側金型で成形された部分と、前記外周側金型で成形された部分との境界が配置され、
前記基準面より外周側で前記境界を含む部分が前記基準面より低くされ、
前記境界を含む部分には、外周側金型で成形された部分が内周側金型で成形された部分より低くされることで、段差が成形されていることを特徴とする。
【0030】
請求項3に記載の発明においては、内周側金型と外周側金型との間のクリアランスがあり、樹脂レンズに内周側金型と外周側金型との境界部分にバリが発生する虞がある。このバリの発生部分が基準面よりも低くなっていることになる。この基準面とバリが発生する境界部分との高低差によりバリの突出量が短ければ、例えば、光学装置の樹脂レンズの取付け枠の受面に基準面を当接させる際にバリが邪魔にならず、樹脂レンズの取付け精度に影響を与えないものとなる。
【0031】
さらに、境界より内周金型で成形される側が高く、境界より外周側金型で成形される側が低く成形されるように、内周側金型の成形面と外周側金型の成形面の位置を設定しておけば、金型組み立て時の誤差等によって、内周金型の成形面と外周金型の成形面の配置にずれが生じても、基準面と境界より外側の面との間の高低差が狭くなってしまうのを防止することができる。これにより、確実にバリが基準面より高くなるのを防止することができる。
したがって、取り付け枠の受面に基準面を当接した際の精度の低下を防止し、かつ、バリ除去を必要としないので樹脂レンズの製造工程を増やすことによるコスト増加も防止することができる。
【0032】
請求項4に記載の樹脂レンズは、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
内周面に前記切断面に係合する係合部を備えて前記切断面の配置位置を位置決め可能な複数の凹状のレンズ収容部を備えたレンズ保持部材の前記レンズ収容部内に収容されて保持されることを特徴とする。
【0033】
請求項4に記載の発明においては、ゲート部が切断されて個々に分離された状態の樹脂レンズを保持部材に保持する際に、樹脂レンズのゲート部の切断面で樹脂レンズの角度を位置決めする場合に、例えば、凹上の収容部の内周面を樹脂レンズの径より少しだけ大きな径とするとともに、前記係合部として、内周面に内周面の内径より内側となり、かつ径方向に略直交する平面状の内側面を設けることで、樹脂レンズの前記切断面に係合して樹脂レンズの回転を止める構造とすることができる。すなわち、極めて簡単な構造で樹脂レンズをゲート部を切断して形成された切断面で位置決めした状態で保持することが可能となる。
また、切断面の仮想円の周方向に沿った両端部の角は、切断により鋭いエッジ状となり、従来のように成形時に樹脂レンズに形成した直線部の両端部の角のように丸くなっていないので、レンズ収容部の径が短くなる平面状の内側面に、樹脂レンズの前記切断面の角を含む外周面が噛み込んだ状態となり難く、レンズ保持部材を移動した際の外力程度で、レンズ収容部の内周面に樹脂レンズの前記角を含む外周面が噛み込んで、レンズ収容部から樹脂レンズを取り出し難くなるようなことがない。これにより、トレイに収容された樹脂レンズを取り扱う際の作業性を向上することができる。
【0034】
請求項5に記載の樹脂レンズの製造方法は、光が通過する二つの面を有する樹脂レンズを成形するに際し、これら面のうちの少なくとも一方の面を、この一方の面の外周部を成形する外周側金型と、前記外周部の内側となる内周部を成形する内周側金型とを用いて成形し、
かつ、成形されたレンズ成形品のレンズ本体からゲート部を切り離すことにより樹脂レンズを製造する樹脂レンズの製造方法であって、
前記レンズ本体を成形するに際し、前記レンズ本体の外周面を、前記ゲート部が接続される部分を除いて設定された半径の仮想円に沿ように成形し、
前記レンズ本体の外周面の前記ゲート部が接続される部分は、成形時に前記ゲート部の幅より広い範囲に渡って前記レンズ本体の半径方向中心側に後退した形状の凹部を設けるにように成形し、
前記凹部における前記レンズ本体の外周面を、前記内周側金型で成形される部分の外縁に沿って成形するか、または、この外縁より外側でかつ前記仮想円より内側に外方に向って凸となる曲面状に成形し、
成形されたレンズ本体の前記ゲート部を切り離すことにより形成される平面状の切断面を前記仮想円より内側に設けるように前記ゲート部を切り離すことを特徴とする。
【0035】
請求項5に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と略同様の優れた作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ゲート部の切断にかかる加工コストを増大させることなく、樹脂レンズの有効半径を大きくしたり、樹脂レンズを小径化したりすることが可能となる。
また、ゲート部を光学機能部から離すことが可能となるため光学特性に優れたレンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂レンズとなるレンズ本体を含むレンズ成形品を示す断面図である。
【図2】前記レンズ本体と金型の入子を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】入子とホルダによるバリの発生を説明するための前記樹脂レンズを示す要部断面図である。
【図5】前記レンズ成形品のレンズ本体を示す平面図である。
【図6】前記樹脂レンズを示す断面図である。
【図7】前記レンズ成形品のレンズ本体を示す要部平面図である。
【図8】前記樹脂レンズを示す要部平面図である。
【図9】(a)は前記樹脂レンズを示す平面図であり、(b)は前記樹脂レンズを保持するトレイのレンズ収容部の外形を示す図である。
【図10】前記レンズ収容部に樹脂レンズを収容した状態を示す平面図である。
【図11】(a)はレンズ収容部に収容された樹脂レンズが傾いた状態を示す要部平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図12】従来のレンズ成形品のレンズ本体を示す平面図である。
【図13】従来のトレイのレンズ収容部に収容された樹脂レンズを示す断面図である。
【図14】(a)は従来の樹脂レンズを示す平面図であり、(b)は従来のトレイのレンズ収容部の外形を示す図である。
【図15】従来の前記レンズ収容部に樹脂レンズを収容した状態を示す平面図である。
【図16】(a)は従来のレンズ収容部に収容された樹脂レンズが傾いた状態を示す要部平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、この例の樹脂レンズ20は、射出成形により成形されるもので、1つのレンズ成形品21から複数個の樹脂レンズ20を複数個取りするようになっている。
このレンズ成形品21は、スプルーで成形されるスプルー部22、ランナで成形されるランナ部23、ゲートで成形されるゲート部24、キャビティで成形されると共に成形される樹脂レンズ20(レンズ成形品21のレンズ本体25)とからなっている。
【0039】
なお、射出成形金型は、図3に一部を示すように固定金型37と可動金型33とを備え、成形時には、固定金型37と可動金型33を付き合わせた状態としてレンズ成形品21となる樹脂が充填される部分を密閉状態とし、樹脂充填後に冷却されてレンズ成形品21がある程度固化した段階で、固定金型37から可動金型33を離すように移動して型開きすることにより、樹脂が充填される部分を開放し、レンズ成形品21を取り出すことになる。この際に、レンズ成形品21は、一般的に型開きした固定金型37と可動金型33のうちの固定金型37から離型され、可動金型33に保持された状態となる。
【0040】
図2から図6に示すように、この樹脂レンズ20は、たとえば、CD、DVD、ブルーレイディスク等の光ピックアップ装置のピックアップレンズ(対物レンズ)として使用されるものである。
ここで、樹脂レンズ20の形状の説明において、光軸に直交し、かつ、肉厚内にある所定の基準となる面を、この例では固定金型37と可動金型33とのパーティングラインに沿った平面とし、当該基準となる面からの前記光軸方向に沿った距離を高さと表現する。なお、基準となる面から離れるほど高く、近づくほど低くなる。また、後述の第1面41側でも第2面42側でも基準となる面からの距離を高さでそれぞれ表すものとする。
【0041】
ピックアップレンズとしての樹脂レンズ20は、集光機能等の光学的機能を有する光学的機能部43と、光学的機能部43の周囲に鍔状に成形されて、光学装置への取り付けに利用されるフランジ部44とを備えている。
また、樹脂レンズ20は、情報の読取や書込みが行われる光ディスク側を向く第2面42と、光源からの光が入射する第1面41とを有し、それぞれが光学的機能部43の表面となる光学的機能面46,47と、フランジ部44の表面となるフランジ面48,49とを有する。
すなわち、第1面41は、その中央部が光学的機能面46となり、その外周部がフランジ面48となっており、第2面42は、その中央部が光学的機能面47となり、その外周
部がフランジ面49となっている。
【0042】
光学的機能部43の第2面42側の光学的機能面47は、光ディスクに向けて近接して配置されることになり、緩やかな凸面状に湾曲した形状となっている。そして、フランジ部44の第2面42側のフランジ面49の最外周部56は、同じ第2面42側の光学的機能面47より、高くなっており、最外周部56の方が、光学的機能部43および後述の鏡面部51より、光ディスク側に突出した状態となっている。
【0043】
この例において、樹脂レンズ20の第2面42のフランジ部44のフランジ面49に鏡面部51が設けられている。
なお、フランジ面49は、光ディスク側を向くことから、光ピックアップ装置の取付け
枠に樹脂レンズ20を取り付けた状態でも鏡面部51が露出するとともに、取付け枠に樹脂レンズ20を設置して固定する際に、鏡面部51に光を照射するとともに、所定のセンサで鏡面部51から反射光を認識させることで、取付け枠上の樹脂レンズ20の傾きを測定可能となっている。
【0044】
また、樹脂レンズ20の第1面41側においては、光学的機能部43の光学的機能面46が湾曲して光源のレーザが照射される側(光ディスクの反対側)に突出した形状となっている。
光ピックアップ装置に当該樹脂レンズ20が取り付けられるが、樹脂レンズ20の取付け位置は、光ピックアップ装置において、光ディスクに最も近接する位置であり、取付け枠(ピックアップホルダ)に樹脂レンズ20がそのフランジ部44を固定された状態となる。なお、この際には、樹脂レンズ20の第1面41側のフランジ面48の基準面52が前記取付け枠の先端面に当接されて、たとえば、接着固定される。光学的機能部43は取付け枠の内部空間に対応し、光が通過可能となっている。
【0045】
また、光学的機能面46の外周側に連続して設けられた円環状の基準面52は、フランジ面48の最外周部55を除くものとなっている。図5および図7に示すように、フランジ部44の最外周部には、前記ゲート部24を切断する部分に、前記ゲート部24の幅より広い範囲に渡ってレンズ本体25(樹脂レンズ20)の半径方向中心側に後退した形状の凹部(切欠部)61が設けられている。なお、図5および図7は、樹脂レンズ20の第1面41を示すものであるが、樹脂レンズ20の外周面27を示す円より内側に外周面27と同芯上に図示される円は、前記可動金型33の後述の入子(内周側金型)31で成形される部分とホルダ(外周側金型)32で成形される部分との境界26を示すものである。
【0046】
図7に示すように、樹脂レンズ20の外周面27は、凹部61以外の部分が設計時に設定された半径を有する仮想円28に沿ったものとなっている。また、樹脂レンズ20の凹部61の外周面は、前記仮想円28と同芯上で、仮想円28より半径の小さい円弧面29となっている。したがって、凹部61は、その左右端部の間が仮想円28の半径方向に沿って同じ幅となっており、凹部61の形状は、円弧状に湾曲する帯状となっている。
【0047】
また、凹部61の左右端部における樹脂レンズ20の外周面は、凹部61の中央から離れるにつれて徐々に仮想円に近づく湾曲した斜面となっている。
また、凹部61における樹脂レンズ20の外周面となる前記円弧面29は、樹脂レンズ20の入子31(入子35)で成形される部分の円状の外縁に沿うか、前記外縁より外周側で、かつ、仮想円28より内周側とされる。
【0048】
この凹部61の部分で、樹脂レンズ20(レンズ本体25)の外周面にゲート部24が接続されている。
なお、第1面41側を成形する入子31と第2面側を成形する入子35(内周側金型)との径が異なる場合に、円弧面29は、径の大きい方の入子31で成形される部分の外縁もしくはその外側とされる。そして、入子31で成形される部分の外縁は、図5および図7において、前記入子31とホルダ32の境界26と一致する。また、入子31と入子35とは、同芯上に配置されている。
【0049】
レンズ成形品21のレンズ本体25からゲート部24を切断することで樹脂レンズ20が得られることになるが、図8に示すようにゲート部24は、レンズ本体25側で切断されており、凹部61における樹脂レンズ20の外周部の切断領域30ごとゲート部24を切断した形状となっている。ゲート部24を切断することにより形成された切断面40は、仮想円28(樹脂レンズ20の外周)の半径方向に直交する平面状となっている。また、切断面40は、仮想円28より内周側で、上述の径の大きい方の入子31で成形される部分の外縁より外側となっている。
【0050】
このような樹脂レンズ20の成形に際し、図2および図3に示すように、例えば、固定金型37側に樹脂レンズ20の第2面42側を形成する成形面が形成され、可動金型33側に樹脂レンズ20の第1面41側を成形する成形面が形成され、これら2つの成形面から射出成形金型のキャビティが構成されることになる。
【0051】
樹脂レンズ20の第2面42側では、光学的機能面47およびフランジ面49のうちの内周側の鏡面部51が入子35により成形され、その周囲となる第2面42側の最外周部56が、入子35を挿入する孔を備えたホルダ(外周側金型)36で成形されるものとなっている。
樹脂レンズ20の第1面41側では、光学的機能面46に加えてその周囲のフランジ面48のうちの内周側となる基準面52とその僅かに外周となる部分が入子31により成形されるようになっている。したがって、光学的機能面46と基準面52とは一体の金型となる入子31により成形されることになる。
【0052】
また、基準面52の外形は、円形となっているので、入子31も基準面52の外形に対応する円形の形成面を有する円柱状とされ、ホルダ32内で回転可能となっている。また、フランジ面48の基準面52より僅かに外周となる部分よりさらに外周側の最外周部55は、入子31を挿入する孔を備えたホルダ32で形成されるようになっている。
【0053】
このような成形において、上述のホルダ32およびホルダ36により上述の凹部61がゲート部24の接続位置に成形されることになる。したがって、凹部61は、ゲート部24を切断する際に設けられるのではなく、成形時に既に設けられている。
レンズ成形品21の成形後にゲート部24を切断することになる。この際には、ゲート部24を直線的に切断して平面状の切断面40が形成されることになる。したがって、切断に係る加工コストが安価なものとなる。この際に、切断位置は、仮想円28より内側で、バリが発生しても、バリが仮想円28より外側に突出しないようになっている。
【0054】
この実施形態では、ゲート部24を切断した切断面40がレンズ本体25の外周部に入り込んだ状態となり、切断面40の幅がゲート部24の幅より広くなっているが、切断面40は凹部61の幅の範囲内に納まっている。したがって、切断面40の左右の端でバリが生じても、バリを仮想円28の内部に納めることができる。
【0055】
上述の凹部61は、ゲート部24との接続部分に位置する必要があることから、回転自在な入子31,35ではなく、回転しないホルダ32,36で形成される必要があるが、凹部61は、ゲート部24を切り離した切断面40の最も樹脂レンズ20の外周に近い部分、すなわち、周方向の両端部が仮想円28の内側となり、この分部でバリが生じても、バリが仮想円28の外側に出ない状態となっていればよいので、円弧状で帯状の凹部61の仮想円の半径方向に沿った幅を狭いものとすることができる。
【0056】
これにより、ホルダ32,36で成形しなければならない樹脂レンズ20の外周部の半径方向に沿った幅も狭くできる。それに対して入子31,35で成形可能な径を相対的に大きくとることが可能となる。これにより、従来の直線部を有する形状の樹脂レンズに比較して樹脂レンズ20の径を同じとした場合に、有効半径を大きく取ることが可能となる。また、有効半径を同じとした場合には、樹脂レンズ20の小径化を図ることができる。
【0057】
ここで、従来の図12に示す直線部5を有する樹脂レンズ1の場合に、直線部5の中央の仮想円2から最も離れた部分において、樹脂レンズ1の直径を10mmとした場合に、仮想円2と直線部5の距離は、0.1mm〜0.3mmとなる。この分部はゲート部が接続される部分なので、金型の入子ではなくその外側のホルダで成形する必要があり、その内側に配置される入子の径(入子で成形される分部の径)は、例えば、9.4mm程度となる。
【0058】
それに対してこの実施形態において、円弧状の凹部61における樹脂レンズ20の外周面となる円弧面29と仮想円28との距離は、樹脂レンズ20の直径を10mmとした場合に、例えば、0.01mm〜0.02mm程度でよい。この凹部61は、ホルダ32,36で成形する必要があるが、ホルダ32,36で成形する部分は、少ないものとなり、その分だけ入子31,35の径を大きくすることができ、例えば、入子31,35の径(入子31,35で成形される分部の径)を最大9.96mm程度とすることも可能である。
【0059】
また、前記凹部61は、樹脂レンズ20の成形時に設けられおり、ゲート部24を切り離す際には、仮想円28の内側で、直線状にゲート部24の基端側を切断すればよいので、ゲート部24の切り離しの加工コストを安価にすることができる。すなわち、従来のように成形後に前記凹部61と同形状に切削してゲート部24を切り離す場合より、加工コストを低減することができる。
【0060】
ここで、第1面41側においては、基準面52の高さと最外周部55の基準面52側となる面の高さとは異なっており、基準面52の方が高く、最外周部55は基準面より低くなっている。その間には段差38が形成されている。なお、段差38は、スロープも含む概念とする。
【0061】
樹脂レンズ20の第1面側41では、この段差38は、フランジ面48の全周に渡って形成されている。そして、入子31で成形される部分とホルダ32で成形される部分との境界26は、この段差38より少し外側となっている。したがって、段差38部分は、入子31で成形される。
【0062】
ホルダ32の内周面と入子31の外周面との間には、入子31を回転可能とするためにクリアランスが設けられている。したがって、入子31で成形される部分とホルダ32で成形される部分との境界26となる部分において前記クリアランスに樹脂が浸入することで、樹脂レンズ20のこの部分にバリ39が発生する。
【0063】
このバリ39の前記光軸方向に沿った突出量は、前記段差38の内周側となる基準面52側と最外周部55との高低差より短くなっており、バリ39は、段差38の上側となる
基準面52より低くなる。
したがって、基準面52を光ピックアップ装置の取付け枠の受面に当接させた際にバリ
39が受面に接触することがない。
【0064】
なお、前記境界26に対応する部分にも半径方向外側の方が低くなる段差50が形成されている。
ここで、前記境界26で入子31とホルダ32とが接触した状態となるが、この部分で段差を設けない設計とした場合でも、入子31およびホルダ32の製造誤差やこれらの組立時の誤差等により段差50が発生する可能性がある。ここで、ホルダ32により成形される最外周部55の境界26より外周側の部分が高くなってしまうと、基準面52と最外周部55の境界26より外周側の部分との高低差が小さくなってしまう。境界34で発生するバリ39は、境界26に段差がある場合に、段差の上となる側より高くなり、基準面52と最外周部55の境界26より外周側の部分との高低差が小さくなってしまうと、バリ39が基準面52より高くなる可能性がある。
【0065】
そこで、予め、境界26において、樹脂レンズ20の第1面41(最外周部55)において境界26より入子31で成形される側が高く、境界26よりホルダ32で成形される側が低く成形されるように、入子31の形成面とホルダの形成面の位置を設定しておけば、誤差等によって、入子31の形成面とホルダの形成面の配置にずれが生じても、基準面52と境界26より外側の面との間の高低差が、前記段差38における高低差より狭くなってしまうのを防止することができる。これにより、確実にバリ39が基準面52より高くなるのを防止することができる。
【0066】
なお、基本的には、ホルダ32と入子31とのそれぞれの形成面の高さ位置は、調整可能となっており、上述の境界26の段差を予め設定しておくことで、境界26の段差分の長さまでは、ホルダ32に対して入子31が前側に突出する方向に入子31をホルダ32に対して移動しても上述のようなバリ39が基準面52より高くなるような問題が生じないことになり、入子31の軸方向に沿った前側への移動の調整しろとなる。
【0067】
上述のようにゲート部24が切断された樹脂レンズ20は、従来と同様にトレイ(レンズ保持部材)に収容されることになる。この樹脂レンズ20用のトレイの基本構成は、従来と同様のものとなっているが、樹脂レンズ20を収容するレンズ収容部65の平面形状(内周面の形状)が異なるものとなっている。
【0068】
樹脂レンズ20を収容するトレイのレンズ収容部65の内周面は、前記仮想円28より少し径の大きな円筒状の円弧面66とされるが、一部に平面状の前記内側面67が設けられ、完全な円筒とはなっていない。この内側面67は、前記円弧面66の半径方向に直交する平面とされるとともに、円弧面66を含む円の内側に配置されている。したがって、円弧面66の中心から内側面67までの距離は、円弧面66の半径より短くなっている。
【0069】
また、円弧面66の円弧を含む円の直径は、樹脂レンズ20の切断面40および凹部61を除く分部の直径より大きくなっているが、円弧面66の円弧含む円の中心を通り、内側面67の中心から内側面67の反対側の円弧面66に至る線分の距離は、樹脂レンズ20の凹部61を除く分部の直径より短くなっている。
【0070】
これにより、樹脂レンズ20の切断面40をレンズ収容部65の内側面67に略沿わせた状態でないと、レンズ収容部65に樹脂レンズ20を収容できないので、樹脂レンズ20をゲート部24の切断面40に係合する係合部としての内側面67に係合させて向きを位置決めした状態に収納することができる。
したがって、トレイに複数設けられるレンズ収容部65に収容された樹脂レンズ20を全て略同方向に向けた状態に収容することができる。
【0071】
さらに、レンズ収容部65に収容された状態の樹脂レンズ20は、トレイの移動等の際に作用する外力により周方向に沿って回転する場合があるが、この場合に、略対向した状態のレンズ収容部65の内側面67と、樹脂レンズ20の切断面40とが、平行ではない状態となり、切断面40の周方向に沿った両端部のうちの一方の端部側の角が内側面67に接触して樹脂レンズ20の回転が規制され、樹脂レンズ20の向きが大きく変わってしまうのが防止される。
【0072】
樹脂レンズ20の回転が規制された際に、切断面40の左右の角は、直線状に切断する加工により生じたことから、丸みを帯びずにエッジが尖った状態となるので、小さな外力で、さらに噛み込む方向に回ることがない。したがって、レンズ収容部65に収容された樹脂レンズ20が回転が規制される範囲を越えて回転してレンズ収容部65に噛み込んで容易に取れない状態となることがない。これにより、トレイから樹脂レンズ20を取り出す際の作業性を向上することができる。
【0073】
この樹脂レンズ20および樹脂レンズ20の製造方法にあっては、ゲート部24が接続される部分に樹脂レンズ20の外周面27に沿った円弧状の凹部61を設けることで、上述のようにゲート部24のレンズ本体25からの切り離しの際の加工コストを安価とし、かつ、樹脂レンズ20の有効半径の拡大や、樹脂レンズ20の小径化を図ることができる。
【0074】
また、第1面41側において、入子31で成形される部分とホルダ32で成形される部分との境界26が配置される最外周部55を、光学装置に樹脂レンズ20を取り付ける際の位置決めに使用される基準面52より低い位置とし、さらに、最外周部55において、入子31で成形される部分よりホルダ32で成形される部分を低くしたことにより、境界26で生じるバリ39の高さを基準面52より低くすることが可能となり、バリ39を取り除くことなく、基準面52を精度高く光学装置に取り付けることが可能となる。
【0075】
また、ゲート部24を切り離す際に設けられた平面状の切断面40を用いて、樹脂レンズ20をトレイのレンズ収容部65に樹脂レンズ20の向きを揃えた状態に配置する構成とする際に、レンズ収容部65に、例えば、略円状の凹部に樹脂レンズ20の切断面40に対応する平面状の内側面67を設ければよく、レンズ収容部65を単純な構造としてトレイのコストの低減を図ることができる。また、上述のようにレンズ収容部65内で樹脂レンズが向きを変えるように外力が作用しても、切断面40の周方向の両端部がそれぞれ切断加工によりエッジが鋭くなっているので、レンズ収容部65の平面状の内側面67を有する内周面に向きを変えた樹脂レンズ20が噛み込んだ状態となるのを防止し、樹脂レンズ20をいつでもトレイから容易に取り出せる状態とし、樹脂レンズの取り扱いの作業性を向上できる。
【0076】
なお、樹脂レンズ20(レンズ本体25)の凹部61における外周面は、仮想円28と同芯上の円弧面29に限られるものではなく、外側に凸となっている曲面であればよい。また、円弧面であっても、同芯上に配置されるものでなく、例えば、仮想円28と同じ径となる円弧面を外周面より内側に配置した形状であってもよい。
また、可動金型33と固定金型37とのうちの一方にだけ入子31,35が設けられているものとしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
20 樹脂レンズ
21 レンズ成形品
24 ゲート部
25 レンズ本体
26 境界
28 仮想円
29 円弧面(樹脂レンズの凹部における外周面)
31 入子(内周側金型)
32 ホルダ(外周側金型)
33 可動金型
35 入子(内周側金型)
36 ホルダ(外周側金型)
37 可動金型
40 切断面
41 第1面(面)
42 第2面(面)
46 光学的機能面
50 段差
52 基準面
55 最外周部(第1面の基準面より外側の面)
61 凹部
65 レンズ収容部
67 内側面(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する二つの面を有し、これら面のうちの少なくとも一方の面が、この一方の面の外周部を成形する外周側金型と、前記外周部の内側となる内周部を成形する内周側金型とを用いて成形され、
かつ、成形されたレンズ成形品のレンズ本体からゲート部を切り離して得られる樹脂レンズであって、
前記レンズ本体の外周面は、前記ゲート部が接続される部分を除いて設定された半径の仮想円に沿って設けられ、
前記レンズ本体の外周面の前記ゲート部が接続される部分には、成形時に前記ゲート部の幅より広い範囲に渡って前記レンズ本体の半径方向中心側に後退した形状の凹部が設けられ、
前記凹部における前記レンズ本体の外周面が、前記内周側金型で成形される部分の外縁に沿うように成形されるか、または、前記外縁より外側でかつ前記仮想円より内側となる範囲で外方に向って凸となる曲面状に成形され、
前記ゲート部が切り離されることにより形成される平面状の切断面が前記仮想円より内側に設けられていることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項2】
前記凹部における前記レンズ本体の外周面が、前記仮想円と同芯の円弧面となっていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂レンズ。
【請求項3】
前記一方の面の外周部分には、光学装置への組み込みに際し、位置決め固定の基準となる基準面と、当該基準面の内周側に光軸を有する光学的機能面とが設けられ、
前記基準面および前記光学的機能面が前記内周側金型で成形され、前記基準面より外周側の部分が外周側金型で成形され、
前記基準面からの前記光軸方向に沿った距離を高さとした場合に、
前記基準面より外周側に前記内周側金型で成形された部分と、前記外周側金型で成形された部分との境界が配置され、
前記基準面より外周側で前記境界を含む部分が前記基準面より低くされ、
前記境界を含む部分には、外周側金型で成形された部分が内周側金型で成形された部分より低くされることで、段差が成形されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂レンズ。
【請求項4】
内周面に前記切断面に係合する係合部を備えて前記切断面の配置位置を位置決め可能な複数の凹状のレンズ収容部を備えたレンズ保持部材の前記レンズ収容部内に収容されて保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項5】
光が通過する二つの面を有する樹脂レンズを成形するに際し、これら面のうちの少なくとも一方の面を、この一方の面の外周部を成形する外周側金型と、前記外周部の内側となる内周部を成形する内周側金型とを用いて成形し、
かつ、成形されたレンズ成形品のレンズ本体からゲート部を切り離すことにより樹脂レンズを製造する樹脂レンズの製造方法であって、
前記レンズ本体を成形するに際し、前記レンズ本体の外周面を、前記ゲート部が接続される部分を除いて設定された半径の仮想円に沿ように成形し、
前記レンズ本体の外周面の前記ゲート部が接続される部分は、成形時に前記ゲート部の幅より広い範囲に渡って前記レンズ本体の半径方向中心側に後退した形状の凹部を設けるにように成形し、
前記凹部における前記レンズ本体の外周面を、前記内周側金型で成形される部分の外縁に沿って成形するか、または、この外縁より外側でかつ前記仮想円より内側に外方に向って凸となる曲面状に成形し、
成形されたレンズ本体の前記ゲート部を切り離すことにより形成される平面状の切断面を前記仮想円より内側に設けるように前記ゲート部を切り離すことを特徴とする樹脂レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−206968(P2011−206968A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75392(P2010−75392)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】