説明

樹脂含有量のみを変化させた高性能同一繊維複合ハイブリッド

本発明は、織繊維パネルおよび/または不織繊維パネル(各パネルは、繊維とポリマー組成物の総重量を基準として種々の量のポリマー組成物を含有する。)から作製される複数パネル弾道抵抗性物品を提供する。このような本発明のハイブリッド構造物は、軽量であることを維持しつつ、優れた弾道貫通抵抗をもたらす。本発明の弾道抵抗性物品は、さまざまな用途向けに、種々のレベルの所望の弾道抵抗性に応じて戦略的に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布の繊維パネル及び/又は不織布の繊維パネルから作製される複数パネル弾道抵抗性物品に関する。ここで各パネルは、繊維とポリマー組成物との総重量を基準として種々の量のポリマー組成物コーティングを含む。
【背景技術】
【0002】
発射体に対して優れた抵抗性をもつ高強度繊維を含有する弾道抵抗性物品がよく知られている。軍装備品である防弾チョッキ、防弾ヘルメット、防弾車両パネル、および防弾構造部材等の物品は、一般には高強度繊維を含む布帛から作製される。従来から使用されている高強度繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)のようなアラミド繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、およびガラス繊維等がある。多くの用途(例えば、ベストもしくはベストの一部)に対し、繊維は、織物もしくは編物の形で使用することができる。他の用途では、繊維は、剛性、半剛性、または可撓性の不織布を形成するよう、ポリマーマトリックス材料中にカプセル封入するか又は埋め込むことができる。
【0003】
ヘルメット、パネル、およびベスト等の硬質もしくは軟質の防護具を作製するのに有用な種々の弾道抵抗性構造物が知られている。例えば、米国特許第4,403,012号、第4,457,985号、第4,613,535号、第4,623,574号、第4,650,710号、第4,737,402号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、第6,846,758号(これら全ての特許を参照により本明細書中に援用する。)は、伸び切り鎖超高分子量ポリエチレン等の材料から作製される高強度繊維を含む弾道抵抗性複合物を開示している。これらの複合物は、発射体(例えば、銃弾、砲弾、および爆弾の破片等)からの高速度衝撃による貫通に対して様々な程度の抵抗性を示す。
【0004】
例えば、米国特許第4,623,574号と第4,748,064号は、エラストマーマトリックス中に埋め込まれた高強度繊維を含む単純な複合構造物を開示している。米国特許第4,650,710号は、高強度の伸び切り鎖ポリオレフィン(ECP)繊維で構成される複数の可撓性層を含む可撓性製品を開示している。ネットワークの繊維が低モジュラスのエラストマー材料でコーティングされている。米国特許第5,552,208号と第5,587,230号は、ビニルエステルとジアリルフタレートを含むマトリックス組成物と少なくとも1種の高強度繊維網とを含む物品、および前記物品の作製法を開示している。米国特許第6,642,159号は、マトリックス中に配列されたフィラメント網状構造を含む複数の繊維層(エラストマー層が間に存在する)を有する、耐衝撃性の剛性複合物を開示している。徹甲発射体に対する保護を強化するために、該複合物が硬質プレートに接着されている。
【0005】
それ自体がハイブリッドの弾道抵抗性構造物が知られている。例えば、米国特許第5,179,244号と第5,180,880号は、異種の弾道抵抗性材料から造られる複数のプライを使用し、アラミド繊維プライと非アラミド繊維プライを複合構造物中に組み込み、そして液体にさらされると変質するポリマーマトリックス材料を使用する、軟質もしくは硬質の防弾チョッキを開示している。米国特許第5,926,842号はさらに、液体にさらされると変質するポリマーマトリックス材料を使用するハイブリッド化弾道抵抗性構造物を開示している。米国特許第6,119,575号はさらに、芳香族繊維の第1セクション、織プラスチックの第2セクション、およびポリオレフィン繊維の第3セクション、を含有するハイブリッド構造物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,403,012号明細書
【特許文献2】米国特許第4,457,985号明細書
【特許文献3】米国特許第4,613,535号明細書
【特許文献4】米国特許第4,623,574号明細書
【特許文献5】米国特許第4,650,710号明細書
【特許文献6】米国特許第4,737,402号明細書
【特許文献7】米国特許第4,748,064号明細書
【特許文献8】米国特許第5,552,208号明細書
【特許文献9】米国特許第5,587,230号明細書
【特許文献10】米国特許第6,642,159号明細書
【特許文献11】米国特許第6,841,492号明細書
【特許文献12】米国特許第6,846,758号明細書
【特許文献13】米国特許第5,179,244号明細書
【特許文献14】米国特許第5,180,880号明細書
【特許文献15】米国特許第5,926,842号明細書
【特許文献16】米国特許第6,119,575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軽量を保持しつつ優れた弾道貫通抵抗性をもたらす新規ハイブリッド構造物を提供する。本発明は特に、防護具構造物中の繊維層をコーティングするポリマーマトリックス組成物の含量を巧みに調整することによって弾道抵抗性能と物品重量がカスタマイズされ得るような物品を提供する。本発明の構造物を使用することで、さまざまな用途に合わせた種々のレベルの弾道抵抗性の要求を満たすように、弾道抵抗性物品を戦略的に配置することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)複数の繊維層を含む第1のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;およびb)第1のパネルとは異なっていて複数の繊維層を含む、第1のパネルに貼り合わせられた第2のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;を順々に含む弾道抵抗性材料であって、c)前記第1のパネルが、第2のパネルの総重量を基準としたときの前記第2のパネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準として、より大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有することを特徴とする前記弾道抵抗性材料を提供する。
【0009】
本発明はさらに、一連の弾道抵抗性パネルを含む弾道抵抗性材料の作製方法であって、a)複数の繊維層を含む第1のパネルを供給すること、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;およびb)第1のパネルとは異なった少なくとも1つの追加的な弾道抵抗性パネルを前記第1のパネルに貼り合わせて、これにより一連の相互連結弾道抵抗性パネルを作製すること、ここで少なくとも1つの追加的なパネルが複数の繊維層を含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;を含み、ここで前記第1のパネルが、少なくとも1つの追加的な弾道抵抗性パネルの総重量を基準とした前記少なくとも1つの追加的な弾道抵抗性パネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準として、より大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有することを特徴とする前記方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、a)複数の繊維層を含む第1のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;およびb)第1のパネルとは異なっていて複数の繊維層を含む、第1のパネルに貼り合わせられた第2のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;を含む弾道抵抗性材料から形成された弾道抵抗性物品であって、c)前記第1のパネルが、第2のパネルの総重量を基準としたときの前記第2のパネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準として、より大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有すること;及び、d)少なくとも1つの追加的なパネルが、第1のパネル、第2のパネル、または第1のパネルと第2のパネルの両方に貼り合わせられていて、ここで前記少なくとも1つの追加的なパネルが複数の繊維層を含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされていることを特徴とする前記弾道抵抗性物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、高エネルギーの弾道脅威〔銃弾および高エネルギーの破片(爆弾の金属片など)を含む〕に対して優れた弾道貫通抵抗を有する弾道抵抗性材料と弾道抵抗性物品を提供する。本発明の弾道抵抗性材料は、2つの以上の個別に貼り合わせられたパネルを含み、各パネルが、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する高強度繊維を含む。大まかに言うと、本発明の弾道抵抗性材料は、第1のパネルと第2パネルを含んでいて、第1のパネルが第2のパネルに貼り合わせられており、各パネルが複数の繊維層を含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている。本明細書に記載のように、第1のパネルは、第2のパネルの総重量を基準としたときの前記第2のパネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準としてより大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有する。本明細書に記載のように、パネルの総重量は、パネルを形成している繊維とポリマー組成物との合計重量である。本発明の弾道抵抗性材料と弾道抵抗性物品は、追加的なパネル(一連の相互連結弾道抵抗性パネルを形成するのが好ましい。)をさらに含んでよく、このとき一連の連続したパネルは、各パネルの総重量を基準として、各パネルが、連結されている一連の弾道抵抗性パネルの前の(previous)パネルより低い重量%のポリマー組成物を含有し、各パネルは、織繊維、不織繊維、またはそれらの組み合わせ物を含んでよい。
【0012】
本発明の目的では、“繊維”は、長さ寸法が幅および厚さの横断寸法よりかなり大きい細長い物体である。本発明において使用する繊維の断面は大きく異なってよい。繊維の断面は、円形であっても、フラットであっても、あるいは長円形であってもよい。従って“繊維”という用語は、規則的もしくは不規則な断面を有するフィラメント、リボン、およびストリップ等を含む。繊維の断面はさらに、繊維の長手方向軸すなわち縦軸から突き出た1つ以上の規則的もしくは不規則なローブを有する、規則的もしくは不規則なマルチローブ断面であってもよい。繊維は、単一のローブを有していて、実質的に円形の断面を有するのが好ましい。
【0013】
本明細書において使用している“ヤーン”とは、多数のフィラメントからなるストランドを表わしている。“配列”とは、繊維またはヤーンの規則的な配置を表わしており、“平行な配列”とは、繊維またはヤーンの規則的なパラレル配列体を表わしている。“繊維層”とは、織繊維もしくはヤーンの、又は不織繊維もしくはヤーンの平面的な配列体を表わしている。繊維「ネットワーク」とは、複数の相互連結繊維層もしくは相互連結ヤーン層を表わしている。本明細書で使用されている“相互連結した”とは、本発明の複数層または複数パネルが、該構造体が単一のユニットとして機能するよう、相互に連結している状態を表わしている。“圧密化されたネットワーク”とは、繊維層とポリマー組成物との圧密化された(併合された)組み合わせを表わしている。本明細書に使用される“単層構造物”とは、単一のユニット構造物に圧密化されている、1つ以上の個別の繊維層で構成されるモノリシック構造物を表わしている。一般には、“布帛”は、織材料の場合でも、あるいは不織材料の場合でもよい。
【0014】
本発明は、2つ以上の弾道抵抗性パネルを含み、ここで各パネルが、不織繊維層、織繊維層、またはこれらの組み合わせ物を含んでよい、という種々の実施態様を提供する。本発明の好ましい実施態様においては、不織繊維層のパネルは、単一層の圧密化された繊維ネットワークとゴム状もしくは剛性のポリマー組成物(当業界ではポリマーマトリックス組成物とも呼ばれる)を含むのが好ましい。“ポリマー組成物”と“ポリマーマトリックス組成物”は、本明細書においては区別なく使用されている。さらに詳細に説明すると、単一層の圧密化された繊維ネットワークが、一緒に積み重ねられた複数の繊維層を含み、各繊維層が、ポリマー組成物でコーティングされていて、共通の繊維方向に沿って互いに実質的に平行となるよう一方向に整列されている複数の繊維を含む。当業界において従来から知られているように、ある層の繊維整列方向が別の層の繊維整列方向に対してある角度で回転されるよう個々の繊維層がクロスプライされるときに、優れた弾道抵抗性が達成される。従ってこのような一方向に整列された繊維の連続層は、前の層に対して回転されるのが好ましい。1つの例は、隣接した層(プライ)が0°/90°の配向にて整列されている場合の2層(2プライ)構造物であり、このとき個別の不織プライは“ユニテープ(unitape)”としても知られている。しかしながら、隣接層は、別の層の縦繊維方向に対して約0°〜約90°の実質的にいかなる角度でも整列させることができる。例えば、5プライ不織構造物は、プライを0°/45°/90°/45°/0°の配向となるように、あるいは他の角度になるように有してよい。本発明の好ましい実施態様においては、2つの個別の不織プライ(0°と90°になるようにクロスプライされている)だけを圧密化して単層ネットワークを形成し、前記単層ネットワークの1つ以上が単一の不織パネルを構成する。しかしながら、理解しておかねばならないことは、本発明の単層圧密化ネットワークは一般に、任意の数のクロスプライされた(またはクロスプライされていない)プライを含んでよい。最も典型的には、単層圧密化ネットワークは1〜約6のプライを含むが、求められる種々の用途に応じて約10〜約20という多くのプライを含んでよい。このような回転された一方向整列については、例えば、米国特許第4,457,985号;第4,748,064号;第4,916,000号;第4,403,012号;第4,623,573号;および第4,737,402号に開示されている。同様に、“パネル”は、任意の数の構成繊維層もしくは構成繊維プライを含んでよいモノリシック構造物であって、一般には1〜約65の繊維層もしくは繊維プライを含み、そして各パネルは、不織繊維を含む複数の繊維層、織繊維を含む複数の繊維層、または織繊維層と不織繊維層との組み合わせ物を含んでよい。本発明の弾道抵抗性材料はさらに、不織繊維を含む複数の繊維層を含む少なくとも1つのパネル、および織繊維を含む複数の繊維層を含む少なくとも1つのパネル、を含んでよい。
【0015】
積み重ねた繊維層を、熱と圧力を加えることによって圧密化又は合体させてモノリシック構造物とし、単層圧密化ネットワークを形成させ、これにより各構成繊維層の繊維とポリマー組成物とを一体化させる。不織繊維ネットワークは、よく知られている方法(例えば、米国特許第6,642,159号に記載の方法)を使用して構築することができる。圧密化されたネットワークはさらに、前記ポリマー組成物でコーティングされ、複数の層に形成され、そして布帛に圧密化された複数のヤーンを含んでよい。不織繊維ネットワークはさらに、既知の方法を使用して形成されるフェルト加工構造物(マットに編まれて一緒に圧縮される適切なポリマー組成物中に繊維がランダムな配向で埋め込まれている。)を含んでよい。
【0016】
本発明の目的のために、“コーティングされた(coated)”という用語は、ポリマー組成物を繊維の表面に塗布する方法を限定することを意図していない。ポリマー組成物の塗布は、繊維層を圧密化する前に行われ、繊維表面にポリマー組成物を塗布するいかなる適切な方法も使用することができる。従って本発明の繊維を、ポリマー組成物でコーティングするか、ポリマー組成物を含浸させるか、ポリマー組成物中に埋め込むか、あるいはポリマー組成物を繊維に塗布し、次いで必要に応じてポリマー組成物/繊維組み合わせ物を圧密化して複合物を形成することができる。前述したように、“圧密化する(consolidating)”とは、ポリマー組成物材料とそれぞれの個別の繊維層とを組み合わせて単一の一体層にする、ということを意味している。圧密化は、乾燥、冷却、加熱、圧力、またはこれらの組み合わせによって行うことができる。“複合物”という用語は、繊維とポリマーマトリックス組成物との圧密化された組み合わせ物を表わしている。本明細書で使用されている“マトリックス”という用語は当業界では周知であり、圧密化後に繊維を結合させるポリマーバインダー材料を表わすために使用されている。
【0017】
本発明の織繊維層はさらに、任意の織物〔例えば、平織物、クローフット織物(crowfoot weave)、バスケット織物、サテン織物、トゥイル織物(twill weave)〕を使用して、当業界で周知の方法を使用して形成される。最も一般的なのは平織物である。織物を織る前に、各織繊維材料の個々の繊維を、不織繊維層の場合と同一のポリマー組成物を使用して、不織繊維層の場合と同様の仕方で、ポリマー組成物でコーティングしても、コーティングしなくてもよい。
【0018】
本明細書に記載のように、織繊維層もしくは不織繊維層の各パネルは複数の繊維層を含むのが好ましく、このとき層の数が多いほど弾道抵抗性も大きくなるが、重量も増加することになる。特に、不織繊維パネルは、モノリシックパネルに圧密化された2つ以上の層を含むのが好ましい。織繊維パネルはさらに、加圧下で成形することによって圧密化されている複数の圧密化された織繊維層を含んでよい。本発明の好ましい構造物においては、10層の圧密化された織繊維材料の層を含む第1のパネルが、単一層ネットワークに圧密化された10層の不織繊維層を含む第2のパネルの一方の表面に貼り合わせられ、そして10層の圧密化された織繊維材料の層を含む第3のパネルが、第2のパネルの反対側の表面に貼り合わせられる。
【0019】
単一のパネルを形成する層の数、および不織複合物を形成する層の数は、所望の弾道抵抗性物品の最終用途に応じて変わる。例えば、軍事用の防弾チョッキにおいて、所望の1.0ポンド/ft(4.9kg/m)の面密度を達成する複合物品を作製するためには、合計で22の個別層(すなわちプライ)が必要とされ、このときプライは、本明細書に記載の高強度繊維から作製される織布、編物、フェルト加工織物、または不織布であってよく、層が一緒に貼り合わせられていても、あるいは貼り合わせられていなくてもよい。他の実施態様において、警察用の防弾チョッキは、ナショナル・インスティチュート・オブ・ジャスティス(National Institute of Justice)(NIJ)の脅威レベルに基づいた層数の層を有してよい。例えば、NIJの脅威レベルがIIIAのベストの場合には、合計で22の層が存在してよい。NIJの脅威レベルがより低い場合は、使用される層がより少なくなる。
【0020】
本発明は特に、パネルを形成する繊維とポリマー組成物との合計重量を基準として種々の量のポリマー組成物を含有する複数のパネルを組み合わせることを特徴とする。本発明の物品は、わずか2つのパネルを含んでよく、このとき各パネルがモノリシック構造物を含み、2つのパネルのそれぞれが異なった量のポリマー組成物を含む。本発明の物品は、3つの以上のモノリシックパネルを含むのがさらに好ましく、このとき各パネルは異なった量のポリマー組成物を含むことが好ましい。さらに、本発明の複数のモノリシックパネルのそれぞれを、さらに圧密化する(一体化する、好ましくは成形する)ことによって貼り合わせて別のモノリシック構造物を形成することができ、このとき前記別のモノリシック構造物が、異なる量のポリマーマトリックス組成物を含有する複数のパネルを組み込んでいて、従って、異なったパネルのそれぞれの場所を画する、異なる量のポリマーマトリックス組成物を含有する異なるセクションを有する、ということも本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
本発明の各実施態様において、幾つかのパネルが同一量のポリマーマトリックス組成物を含んでよい。しかしながら、物品を形成する少なくとも2つのパネルの、全体としてのポリマーマトリックス組成物の含量は異なっていなければならない。本発明の他の実施態様においては、弾道抵抗性物品が少なくとも1つの弾道抵抗性パネルを含み、このときパネルを形成している繊維はポリマー組成物でコーティングされていない。このような、ポリマーマトリックスを含有まないコーティングなしのパネルが存在する場合には、該パネルは一連の相互連結弾道抵抗性パネルの一部であることが好ましく、このとき一連のパネルの少なくとも1つのパネルがポリマー組成物を含む。複数のパネルを貼り合わせるか又は相互連結する方法は当業界においてよく知られており、縫合、キルティング、ボルティング、および接着性物質による接着などがある。複数のパネルは、本明細書中に記載の成形条件下において成形することにより貼り合わせることができる。一連のパネルを形成している前記複数のパネルは、パネルのエッジ部分において縫合することによって相互連結されるのが好ましい。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、各パネルが、パネルの総重量を基準として繊維を少なくとも65重量%、さらに好ましくは少なくとも約70重量%、さらに好ましくは少なくとも約75重量%、そして最も好ましくは少なくとも約80重量%含有する。各パネルを構成するポリマー組成物の割合は、各パネルの繊維とポリマー組成物との総重量を基準として約1〜35重量%を構成するのが好ましく、約3〜30重量%を構成するのがさらに好ましく、約5〜25重量%を構成するのがさらに好ましく、そして約7〜20重量%を構成するのが最も好ましい。これらの重量範囲は、同一のポリマー組成物を使用して作製されたパネルにも、あるいは異なるポリマー組成物を使用して作製されたパネルにも当てはまる。各パネルは、同一のポリマー組成物によるコーティングを有するのが好ましい。好ましい実施態様の例としては:1)第1のパネルが、繊維とポリマー組成物との合計重量を基準として約20重量%のポリマー組成物含量を有し、第2のパネルが、繊維とポリマー組成物との合計重量を基準として約10重量%のポリマー組成物含量を有する、という2枚パネル物品;2)それぞれ順に20%、15%、10%、および7%のポリマー組成物量を有していて、好ましくは一緒に縫合されているのが好ましい一連の4枚相互連結パネル;および3)上記の2枚パネル物品に類似しているが、マトリックスを10%含有するパネルに貼り合わせられた、マトリックスを含有しない第3のパネルを有する、3枚パネル物品;などがあるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の織繊維層または不織繊維層は、低モジュラスの弾性物質と高モジュラスの剛性材料を含めた種々のポリマー組成物(ポリマーマトリックス組成物)材料を使用して形成することができる。適切なポリマー組成物物質としては、約6,000psi(41.3MPa)未満の初期引張モジュラス(ASTM D638に従って37℃で測定)を有する低モジュラスの弾性物質、および少なくとも約300,000psi(2068MPa)の初期引張モジュラス(ASTM D638に従って37℃で測定)を有する高モジュラスの剛性物質などがあるが、これらに限定されない。本明細書の全体にわたって使用されている“引張モジュラス”という用語は、繊維に対してはASTM2256に従って測定される弾性率を、そしてポリマー組成物物質に対してはASTM D638に従って測定される弾性率を意味している。
【0024】
弾性ポリマー組成物は、種々のポリマー物質や非ポリマー物質を含んでよい。好ましい弾性ポリマー組成物は、低モジュラスの弾性物質を含む。本発明の目的のために、低モジュラスの弾性物質は、ASTM D638の試験手順に従った測定により約6,000psi(41.4MPa)以下の引張モジュラスを有する。エラストマーの引張モジュラスは約4,000psi(27.6MPa)以下であるのが好ましく、約2400psi(16.5MPa)以下であるのがさらに好ましく、約1200psi(8.23MPa)以下であるのがさらに好ましく、そして約500psi(3.45MPa)以下であるのが最も好ましい。エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、約0℃未満であるのが好ましく、約−40℃未満であるのがさらに好ましく、そして約−50℃未満であるのが最も好ましい。エラストマーはさらに、少なくとも約50%の破断点伸びを有するのが好ましく、少なくとも約100%の破断点伸びを有するのがさらに好ましく、そして少なくとも約300%の破断点伸びを有するのが最も好ましい。
【0025】
低モジュラスを有するさまざまな物質や配合物をポリマー組成物として使用することができる。代表的な例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー、およびこれらの組み合わせ物、ならびにポリオレフィン繊維の融点未満の温度で硬化可能な、他の低モジュラスのポリマーとコポリマーなどがある。さらに、異なった弾性物質のブレンドや、弾性物質と1種以上の熱可塑性樹脂とのブレンドも好ましい。ポリマー組成物はさらに、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を含んでもよいし、オイルで増量してもよいし、あるいはイオウ、過酸化物、金属酸化物、または当業界においてよく知られている放射線硬化システムによって加硫処理してもよい。
【0026】
特に有用なのは、共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのブロックコポリマーである。好ましい共役ジエンエラストマーは、ブタジエンエラストマーとイソプレンエラストマーである。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、およびt−ブチルスチレンである。ポリイソプレンを組み込んだブロックコポリマーを水素化して、飽和炭化水素エラストマーセグメントを有する熱可塑性エラストマーを得ることができる。ポリマーは、A−B−Aのタイプの単純なトリブロックコポリマーであってもよく、(AB)(n=2〜10)のタイプのマルチブロックコポリマーであってもよく、あるいはR−(BA)(x=3〜150)のタイプのラジアル構造コポリマーであってもよく、ここでAは、ポリビニル芳香族モノマーのブロックであり、Bは、共役ジエンエラストマーのブロックである。これらのポリマーの多くは、テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマー社により工業的に製造されており、紀要“Kraton Thermoplastic Rubber”,SC−68−81に記載されている。最も好ましいポリマー組成物は、クレイトンポリマー社により工業的に製造されているスチレンブロックコポリマー〔クレイトン(Kraton)(登録商標)の商標で市販されている〕を含む。最も好ましい低モジュラスのポリマーマトリックス組成物は、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーを含む。
【0027】
本発明において有用な、好ましい高モジュラスの剛性ポリマー組成物材料としては、ビニルエステルポリマーやスチレン−ブタジエンブロックコポリマー等の材料、ならびに、ビニルエステル及びジアリルフタレート、もしくはフェノールホルムアルデヒド及びポリビニルブチラールなどのポリマーの混合物などがある。本発明において使用するための特に好ましい剛性ポリマー組成物材料は熱硬化性ポリマーであり、炭素−炭素飽和溶媒(例えばメチルエチルケトン)に対して溶解性であって、硬化させたときに少なくとも約1×10psi(6895MPa)の高い引張モジュラス(ASTM D638に従って測定)を有するのが好ましい。特に好ましい剛性ポリマー組成物材料は、米国特許第6,642,159号(該特許を参照により本明細書に援用する。)に記載の材料である。
【0028】
不織繊維層に加えて、織繊維層もポリマー組成物でコーティングするのが好ましい。織繊維層を構成している繊維を、ポリマー組成物で少なくとも部分的にコーティングし、次いで不織繊維層に場合に行ったのと同様の圧密化工程を施すのが好ましい。しかしながら、織繊維層をポリマー組成物でコーティングすることが必要というわけではない。例えば、本発明のパネルを形成している複数の織繊維層は、必ずしも圧密化させる必要はなく、他の手段によって(例えば、従来の接着剤を使用することによって、あるいは縫合によって)貼り合わせることができる。ポリマー組成物のコーティングは一般に、複数の繊維層を効率的に一体化させる(すなわち圧密化させる)必要がある。本発明の好ましい実施態様においては、マトリックスを含有しないパネルが組み込まれている場合、該パネルが、ポリマー組成物でコーティングされていない1つ以上の織繊維層を含むことが好ましく、このとき複数の織繊維層は、縫合することによって、または他の一般的な方法のいずれによっても貼り合わせることができる。
【0029】
本発明の布帛複合物から作製される物品の剛性特性、衝撃特性、および弾道特性は、ポリマー組成物ポリマー(polymeric composition polymer)の引張モジュラスによって影響を受ける。例えば、米国特許第4,623,574号は、約6000psi(41,300kPa)未満の引張モジュラスを有するエラストマーマトリックスで作られた繊維強化複合物が、より高モジュラスのポリマーで作られた複合物と比較して、そしてさらに、ポリマーマトリックス組成物を含まない同一の繊維構造物と比較してより優れた弾道特性を有する、ということを開示している。しかしながら、低引張モジュラスのポリマーマトリックス組成物ポリマーも、より低剛性の複合物をもたらす。さらに、特定の用途、特に、複合物が対弾道モードと構造モードの両面において機能しなければならないという場合の用途においては、弾道抵抗性と剛性との優れた組み合わせが求められる。従って、使用されるポリマー組成物ポリマーの最も適切なタイプは、本発明の布帛から作製される物品のタイプに応じて変わる。両方の特性を調和させるるために、好適なポリマー組成物を、低モジュラス物質と高モジュラス物質の両方と組み合わせて、単一のポリマー組成物を形成してよい。
【0030】
複合物の残部は、繊維で構成されることが好ましい。本発明によれば、織繊維層と不織繊維層のそれぞれを構成している繊維が、高強度で高引張モジュラスの繊維を含むのが好ましい。本明細書で使用されている“高強度高引張モジュラス繊維”とは、少なくとも約7g/デニール以上の好ましいテナシティ、少なくとも約150g/デニール以上の好ましい引張モジュラス、および少なくとも約8J/g以上の好ましい破断エネルギー(energy−to−break)(いずれもASTM D2256に従って測定)を有する繊維を表わしている。本明細書で使用されいる“デニール”とは、線密度の単位を表わしており、繊維もしくはヤーンの9000メートル当たりのグラム表示の質量に等しい。本明細書で使用されている“テナシティ”とは、応力を受けていない試験片の単位線密度(デニール)当たりの力(グラム)として表示される引張応力を表わしている。繊維の“初期モジュラス”は、繊維の変形抵抗を示す材料特性である。“引張モジュラス”とは、テナシティの変化量〔1デニール当たりのグラム重量で表示(g/d)〕と、歪みの変化量〔最初の繊維長さのフラクションとして表示(in/in)〕との比を表わしている。
【0031】
高強度で高引張モジュラスの特に適切な繊維材料としては、ポリオレフィン繊維、特に伸び切り鎖ポリオレフィン繊維〔例えば、高配向の高分子量ポリエチレン繊維(特に超高分子量ポリエチレン繊維)や超高分子量ポリプロピレン繊維〕がある。適切な繊維材料としてはさらに、アラミド繊維(特にパラ−アラミド繊維)、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、伸び切り鎖ポリビニルアルコール繊維、伸び切り鎖ポリアクリロニトリル繊維、ポリベンザゾール繊維〔例えば、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維やポリベンゾチアゾール(PBT)繊維〕、および液晶コポリエステル繊維などがある。これらの種類の繊維は、いずれも当業界において従来から知られている。
【0032】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000(好ましくは少なくとも100万、さらに好ましくは200万〜500万)の分子量を有する伸び切り鎖ポリエチレンである。このような伸び切り鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、溶液紡糸法によって成長させることもできるし〔例えば、米国特許第4,137,394号や第4,356,138号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に記載〕、あるいはゲル構造物を形成するように溶液から紡糸することもできる〔例えば、米国特許第4,551,296号や第5,006,390号(これらの特許を参照により本明細書に援用する。)に記載〕。本発明において使用するための特に好ましい種類の繊維は、ハネウェル・インターナショナル社からスペクトラ(SPECTRA)(登録商標)の商標で市販されているポリエチレン繊維である。スペクトラ繊維は、当業界においてよく知られており、例えば米国特許第4,623,547号や第4,748,064号に記載されている。
【0033】
さらに、特に好ましいのは、アラミド(芳香族ポリアミド)繊維すなわちパラ−アラミド繊維である。このような繊維は市販されており、例えば、米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントが、デュポン社によりケブラー(KEVLAR)(登録商標)の商品名で工業的に製造されている。本発明を実施する上で有用なのはさらに、デュポン社によりノメックス(NOMEX)(登録商標)の商品名で工業的に製造されているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維、および帝人(株)によりツワロン(TWARON)(登録商標)の商品名で工業的に製造されている繊維である。
【0034】
本発明を実施する上で適切なポリベンザゾール繊維は市販されており、例えば米国特許第5,286,833号、第5,296,185号、第5,356,584号、第5,534,205号、および第6,040,050号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に開示されている。好ましいポリベンザゾール繊維は、東洋紡(株)から市販のザイロン(ZYLON)(登録商標)銘柄の繊維である。本発明を実施する上で好適な液晶コポリエステル繊維は市販されており、例えば米国特許第3,975,487号、第4,118,372号、および第4,161,470号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に開示されている。
【0035】
好適なポリプロピレン繊維としては、米国特許第4,413,110号(該特許を参照により本明細書に援用する。)に開示の高配向伸び切り鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維がある。好適なポリビニルアルコール(PV−OH)繊維は、例えば米国特許第4,440,744号と第4,599,267号(これらの特許を参照により本明細書に援用する。)に開示されている。好適なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、例えば米国特許第4,535,027号(該特許を参照により本明細書に援用する。)に開示されている。これらの種類の繊維はいずれも従来から公知であって、広く市販されている。
【0036】
本発明において使用するための他の好適な種類の繊維としては、ガラス繊維、炭素から製造される繊維、玄武岩または他の鉱物から製造される繊維、剛性ロッド繊維(rigid rod fibers)〔例えばM5(登録商標)繊維〕、およびこれら物質の組み合わせ物(全て市販されている)がある。例えば、繊維層は、スペクトラ繊維とケブラー繊維との組み合わせ物から形成することができる。M5繊維は、バージニア州リッチモンドのマゼラン・システムズ・インターナショナル社により製造されており、例えば米国特許第5,674,969号、第5,939,553号、第5,945,537号、および第6,040,478号(これらの特許を参照により本明細書に援用する。)に記載されている。特に好ましい繊維としては、M5繊維、スペクトラ(登録商標)ポリエチレン繊維、ケブラー(登録商標)アラミド繊維がある。繊維は、任意の適切なデニールであってよい(例えば、好ましくは約50〜3000デニール、さらに好ましくは約200〜3000デニール、さらに好ましくは約650〜2000デニール、そして最も好ましくは約800〜1500デニール)。
【0037】
本発明の目的のために最も好ましい繊維は、高強度で高引張モジュラスの伸び切り鎖ポリエチレン繊維、または高強度で高引張モジュラスのパラ−アラミド繊維である。前述したように、高強度で高引張モジュラスの繊維は、約7g/デニール以上の好ましいテナシティ、約150g/デニール以上の好ましい引張モジュラス、および約8J/g以上の好ましい破断エネルギー(いずれもASTM D2256に従って測定)を有する繊維である。本発明の好ましい実施態様においては、繊維のテナシティは、約15g/デニール以上でなければならず、好ましくは約20g/デニール以上であり、さらに好ましくは約25g/デニール以上であり、そして最も好ましくは約30g/デニール以上である。本発明の繊維はさらに、約300g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが好ましく、約400g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約1,000g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、そして約1,500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが最も好ましい。本発明の繊維はさらに、約15J/g以上の破断エネルギーを有するのが好ましく、約25J/g以上の破断エネルギーを有するのがさらに好ましく、約30J/g以上の破断エネルギーを有するのがさらに好ましく、そして約40J/g以上の破断エネルギーを有するのが最も好ましい。
【0038】
これらの高強度特性の組み合わせは、よく知られている方法を使用することによって得られる。米国特許第4,413,110号、第4,440,711号、第4,535,027号、第4,457,985号、第4,623,547号、第4,650,710号、および第4,748,064号は、本発明において使用される好ましい高強度伸び切り鎖ポリエチレン繊維の製造について一般的に説明している。溶液成長法(solution grown process)やゲルファイバー法(gel fiber process)を含めたこのような方法は、当業界においてよく知られている。パラ−アラミド繊維を含めた他の好ましい種類の繊維のそれぞれを製造する方法も、従来から当業界に公知であり、これらの繊維は市販されている。
【0039】
前述したように、ポリマー組成物(マトリックス)は種々の方法で繊維に塗布することができ、“コーティングされた(coated)”という用語は、ポリマー組成物を繊維の表面に塗布する方法を限定することを意図していない。例えば、ポリマー組成物の溶液を溶液の形態で繊維の表面に噴霧またはロール塗りし、次いで乾燥することによってポリマー組成物を塗布することができ、このとき溶液の一部が所望のポリマーを含有し、そして溶液の一部が、ポリマーを溶解させることのできる溶媒を含有する。別の方法は、ニートのコーティング材料ポリマーを、液体、粘着性の固体、もしくは懸濁液中の粒子として、あるいは流動床として繊維に塗布するという方法である。
【0040】
これとは別に、コーティングは、塗布の温度にて繊維の特性に悪影響を及ぼさない適切な溶媒中の溶液もしくはエマルジョンとして塗布することもできる。例えば、ポリマー組成物の溶液中に繊維を移送して、繊維を実質的にコーティングし、次いでこれを乾燥して、コーティングされた繊維を形成させることができる。こうして得られるコーティングされた繊維を配列して所望のネットワーク構造とすることができる。別のコーティング方法では、先ず繊維の層を配列し、次いでこの繊維層を、適切な溶媒中に溶解したポリマー組成物を含有する溶液の浴中に浸漬し(これによって個々の繊維がポリマー組成物で実質的にコーティングされる)、次いで溶媒を蒸発させることによって乾燥させる。所望量のポリマー組成物コーティングを繊維に施すために、必要に応じて浸漬手順を数回繰り返すことができる(好ましくは、個別の繊維のそれぞれをカプセル封入するか、あるいは繊維の表面積の100%をポリマー組成物で被覆する)。
【0041】
ポリマーを溶解もしくは分散させることのできる任意の液体が使用可能であるが、好ましい溶媒群としては、水、パラフィン油、および芳香族溶媒もしくは炭化水素溶媒があり、具体的には、パラフィン油、キシレン、トルエン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン(MEK)、およびアセトンなどがある。コーティング用ポリマーを溶媒中に溶解もしくは分散させるのに使用される方法は、類似の物質を種々の基材上にコーティングするために従来から使用されている方法である。
【0042】
繊維にコーティングを施すための他の方法も使用することができ、例えば、繊維から溶媒を除去する前、または除去した後に、高モジュラス前駆体(ゲル繊維)をコーティングしてから繊維を高温延伸処理する(ゲル紡糸による繊維作製法を使用する場合)、という方法もある。次いで繊維を高温にて延伸して、コーティングされた繊維を得ることができる。このゲル繊維を、適切な条件下で適切なコーティングポリマーの溶液に通して、所望のコーティングを得ることができる。
【0043】
ゲル繊維中の高分子量ポリマーの結晶化は、繊維が溶液中を通過する前に起こっても、起こらなくてもよい。これとは別に、繊維は、適切なポリマー粉末の流動床中に押出すこともできる。さらに、延伸処理または他の操作的プロセス(例えば、溶媒交換や乾燥など)を行えば、最終繊維の前駆体物質にコーティングを施すことができる。本発明の最も好ましい実施態様においては、本発明の繊維を先ずポリマー組成物でコーティングし、次いで複数の繊維を配列して織繊維層または不織繊維層にする。このような方法は、当業界によく知られている。
【0044】
本明細書に記載の各パネルは複数の外側表面を有する。本発明の好ましい実施態様においては、少なくとも1つのポリマーフィルムが、少なくとも1つのパネルの少なくとも1つの外側表面に貼り合わせられる。ポリマーフィルムは、パネル間の摩擦を減少させるように求められる。パネルの種類によっては、粘着性があったり、ゴムのような表面を有したりするからである。前記ポリマーフィルム用の好適なポリマーとしては、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーがあるが、これらに限定されない。好適な熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、およびこれら材料のコポリマーと混合物、からなる群から選択することができる。これらのうちで好ましいのはポリオレフィン層である。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状超々低密度ポリエチレン(ULDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)などがあるが、これらに限定されない。これらのうちで最も好ましいポリエチレンはLLDPEである。好適な熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性のアリル樹脂、アミノ樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、およびこれらの物質のコポリマーとブレンド(例えば、米国特許第6,846,758号、第6,841,492号、および第6,642,159号に記載の物質)などがあるが、これらに限定されない。前述したように、ポリマーフィルムはポリマーコーティングを含む。
【0045】
このような任意的に使用することができるポリマーフィルムは、よく知られている積層法を使用して、パネルの外側表面の一方もしくは両方に貼り合わせることができる。積層は一般に、複数層を合わせて単一のフィルムにするのに十分な熱と圧力の条件下で、個々の層を互いに配置することによって行われる。個々の層を互いに配置し、次いでこの組み合わせ物を、一般には、当業界で周知の方法によってニップまたは一対の貼り合わせロールに通す。積層加熱は、約95℃〜約175℃(好ましくは約105℃〜約175℃)の範囲の温度で、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の範囲の圧力の下、約5秒〜約36時間(好ましくは約30秒〜約24時間)実施することができる。これとは別に、ポリマーフィルムは、後述する成形工程時にパネルに貼り合わせることもできる。本発明の好ましい実施態様においては、任意的なポリマーフィルム層は、繊維とポリマー組成物とポリマーフィルムとの合計重量を基準として約2重量%〜約25重量%を構成し、さらに好ましくは約2重量%〜約17重量%を構成し、そして最も好ましくは約2重量%〜約12重量%を構成する。ポリマーフィルム層の重量%は、一般には、パネルを形成する布帛層の数に応じて変わる。
【0046】
本発明のパネルを作製するときには、複数の繊維層を、適切な成形装置によって熱と圧力を加えて成形することが好ましい。パネルは、一般には約50psi(344.7kPa)〜約5000psi(34470kPa)の圧力の下、さらに好ましくは約100psi(689.5kPa)〜約1500psi(10340kPa)の圧力の下で、そして最も好ましくは約150psi(1034kPa)〜約1000psi(6895kPa)の圧力の下で成形される。あるいは、繊維層は、約500psi(3447kPa)〜約5000psiの、さらに好ましくは約750psi(5171kPa)〜約5000psiの、そしてさらに好ましくは約1000psi〜約5000psiのより高い圧力の下で成形することができる。成形工程は、約4秒〜約45分かかることがある。成形温度は、約200°F(〜93℃)〜約350°F(〜177℃)であることが好ましく、約200°F(〜93℃)〜約300°F(〜149℃)であることがさらに好ましく、そして約200°F(〜93℃)〜約280°F(〜121℃)であることが最も好ましい。適切な成形温度、成形圧力、および成形時間は、一般には、ポリマー組成物の種類、ポリマー組成物の含量、および繊維の種類に応じて変更される。本発明の布帛が成形されるときの圧力は、得られる成形品の剛性またはフレキシビリティに直接影響を及ぼす。特に、布帛が成形されるときの圧力が高くなるほど、剛性が高くなり、逆の場合も同じである。成形圧力のほかに、布帛層の量、厚さ、および組成、ポリマー組成物の種類、ならびに任意使用のポリマーフィルムの種類も、本発明の布帛から形成される物品の剛性に直接影響を及ぼす。
【0047】
本明細書に記載の成形法と圧密化法は類似しているように見えるが、それぞれのプロセスは異なっている。特に、成形はバッチプロセスであって、圧密化は連続プロセスである。さらに、成形は一般に、金型(例えば、造形金型またはフラットパネルを形成するときにはマッチドダイ金型)の使用を伴う。
【0048】
1つ以上の単一層圧密化ネットワークを形成すべく個別の圧密化工程を施した後成形を行う場合、圧密化は、当業界に従来から知られているように、オートクレーブ中で実施することができる。加熱するときは、ポリマー組成物を完全に融解させることなく、ポリマー組成物を粘着させ若しくは流動させることができる。しかしながら一般には、ポリマー組成物材料を融解させる場合は、複合物を形成するために比較的低い圧力が必要とされるが、ポリマー組成物材料を単に粘着温度まで加熱するだけの場合には、より高い圧力が必要とされる。圧密化工程は、一般には約10秒〜約24時間かかる。成形の場合と同様に、適切な圧密化温度、圧密化圧力、および圧密化時間は一般に、ポリマーの種類、ポリマーの含量、使用されるプロセス、および繊維の種類に依存する。
【0049】
本発明のパネルまたは布帛を、必要に応じて、加熱および加圧下で圧延して、表面を平滑にするか、又は艶出しすることができる。圧延法は当業界によく知られており、成形の前又は後に実施することができる。
【0050】
本発明の複数パネルは、結合配列で接合させることもできるし、あるいは非結合配列で並置させることもできる。接合方法は当業界によく知られており、縫合、キルティング、ボルティング、および接着性物質による接着などがある。前記複数の層は、層のエッジ部分にて一緒に縫い合わせることによって貼り合わせるのが好ましい。
【0051】
個々の布帛層およびパネルの厚さは、個々の繊維の厚さに対応する。従って、織繊維層は、約25μm〜約500μmの厚さを有することが好ましく、約75μm〜約385μmの厚さを有することがさらに好ましく、約125μm〜約255μmの厚さを有することが最も好ましい。単一層の圧密化ネットワークは、約12μm〜約500μmの厚さを有することが好ましく、約75μm〜約385μmの厚さを有することがさらに好ましく、約125μm〜約255μmの厚さを有することが最も好ましい。ポリマーフィルムは極めて薄いことが好ましく、約1μm〜約250μmの厚さを有することが好ましく、約5μm〜約25μmの厚さを有することがさらに好ましく、約5μm〜約9μmの厚さを有することが最も好ましい。一連の相互連結弾道抵抗性パネルと任意的なポリマーフィルムを含む弾道抵抗性物品は、約5μm〜約1000μmの全厚さを有するのが好ましく、約6μm〜約750μmの全厚さを有することがさらに好ましく、約7μm〜約500μmの厚さを有することが最も好ましい。このような厚さが好ましいけれども、理解しておかなければならないことは、特定のニーズを満たすために他のフィルム厚さも使用することができ、これらも本発明の範囲内に含まれる、という点である。本発明の複数パネル物品はさらに、約0.25ポンド/ft(psf)(1.22kg/m(ksm))〜約2.0psf(9.76ksm)の面密度を有することが好ましく、約0.5psf(2.44ksm)〜約1.5psf(7.32ksm)の面密度を有することがさらに好ましく、約0.7psf(3.41ksm)〜約1.5psf(7.32ksm)の面密度を有することがさらに好ましく、約0.75psf(3.66ksm)〜約1.25psf(6.1ksm)の面密度を有することが最も好ましい。
【0052】
他の実施態様においては、少なくとも1つの剛性プレートを本発明の弾道抵抗性物品に貼り合わせて、徹甲発射体に対する防護を増大させることができる。弾道抵抗性チョッキの用途では、一般には剛性プレートを含む物品が望ましい。このような剛性プレートは、セラミック、ガラス、金属充填複合物、セラミック充填複合物、ガラス充填複合物、サーメット、高硬度鋼(HHS)、防弾用アルミニウム合金、チタン、またはこれらの組み合わせ物を含んでよく、このとき剛性プレートと本発明のパネルは、面と面が直に向かい合う関係となるように一緒に積み重ねられる。剛性プレートは、一連のパネルの個々のパネルに貼り合わせるよりむしろ、唯一の剛性プレートを、一連のパネルの一番上の表面に貼り合わせるようにするのが好ましい。最も好ましいセラミックとしては、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、および炭化ホウ素の3種がある。
【0053】
本発明の弾道抵抗性パネルは、単一のモノリシックセラミックプレートを組み込んでもよいし、あるいはセラミック球の小タイルを、フレキシブル樹脂(例えばポリウレタン)中に懸濁させた状態で含んでもよい。好適な樹脂は当業界でよく知られている。さらに、タイルの複数層または複数列を、本発明のプレートに貼り合わせることもできる。例えば、3”×3”×0.1”(7.62cm×7.62cm×0.254cm)の複数のセラミックタイルを、薄いポリウレタン接着フィルムを使用して12”×12”(30.78cm×30.48cm)のパネル上に据え付けることができる。(このときタイル間に隙間が生じないよう、全てのセラミックタイルがぴったり合っているのが好ましい。)次いで、第1の列のセラミックに第2の列のタイルを貼り合わせることができ、このとき接合点が分散されるようオフセットが存在する。これが、防護具全体をカバーするよう端から端まで続く。できるだけ軽量のままで高性能を得るためには、パネルを成形してから剛性プレートを貼り合わせることが好ましい。しかしながら大きなパネル〔例えば、4’×6’(1.219m×1.829m)または4’×8’(1.219m×2.438m)〕の場合は、単一低圧オートクレーブ法によって、パネルと剛性プレートとを一緒に成形することができる。
【0054】
本発明の複数パネル構造物を種々の用途に利用して、周知の方法に従ってさまざまな弾道抵抗性物品に仕上げることができる。弾道抵抗性物品を形成するための適切な方法が、例えば、米国特許第4,623,574号、第4,650,710号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、および第6,846,758号に記載されている。
【0055】
本発明の複数パネル構造物は、種々の弾道脅威〔例えば、9mmのフルメタル・ジャケット(FMJ)弾丸、ならびに手榴弾、大砲の砲弾、簡易爆発物(IED)、および軍事任務や平和維持任務において見られる他のこのような装置の爆発によって生じるさまざまな破片〕に打ち勝つよう兵士が使用する衣類(例えば、ベスト、ズボン、帽子、もしくは他の衣料品)やカバーもしくは毛布を含めた、フレキシブルな軟質の防護具物品を作製する上で特に有用である。本明細書で使用している“軟質の”または“フレキシブルな”防護具とは、相当な応力にさらされたときにその形状を保持せず、また崩壊することなく自立することができない防護具を表わしている。本発明の複数パネル構造物はさらに、剛性の硬質防護具物品を形成するためにも有用である。“硬質の(hard)”防護具とは、相当な応力にさらされたときに構造上の剛性を保持し、崩壊することなく自立することができるよう充分な機械的強度を有する、ヘルメット、軍用車両、または防御用盾等の物品を表わしている。本発明の構造物は、複数の個別のシートに切断したり、物品を形成するよう積み重ねたりすることができ、あるいは前駆体を形成しておき、引き続きこれを使用して物品を形成することもできる。このような方法は当業界でよく知られている。
【0056】
本発明の衣類は、当業界に従来から知られている方法によって作製することができる。衣類は、本発明の弾道抵抗性物品と衣料品とを隣接させることによって作製するのが好ましい。例えば、ベストは、本発明の弾道抵抗性構造物と隣接されている一般的な布帛チョッキを含んでよく、これに戦略的に配置されたポケットの中に本発明の物品が挿入される。最良の軟質防護具を得るには、最少量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威の可能性のある場所に最も近く配置しなければならず、また最大量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威の可能性のある場所から最も遠くに配置しなければならない。最良の硬質防護具を得るには、また最大量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威の可能性のある場所に最も近く配置しなければならず、また最少量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威の可能性のある場所から最も遠くに配置しなければならない。これにより、ベストの重量を最小限に抑えつつ、弾道に対する防護を最大にすることが可能となる。本明細書で使用している“接合させる(adjoining)”または“接合された(adjoined)”という用語は、縫い付けや接着等によって貼り合わせることだけでなく、弾道抵抗性物品が、必要に応じてベストや他の衣料品から簡単に取り外しできるよう、他の布帛との貼り合わせなしのカップリングまたは並置も含むよう意図されている。フレキシブルなシート、ベスト、および他の衣類等のフレキシブル構造物を作製する際に使用される物品は、低引張モジュラスのポリマーマトリックス組成物を使用して形成することが好ましい。ヘルメットや防護具のような硬質物品は、高引張モジュラスのポリマーマトリックス組成物を使用して形成することが好ましい。
【0057】
弾道抵抗特性は、当業界でよく知られている標準的な試験法を使用して測定される。特に、構造物の防護能力や貫通抵抗性は通常、発射体の50%が複合物中に貫入しつつ、50%がシールドによって停止されているという場合の衝撃速度(V50値としても知られている)によって表示される。本明細書で使用されている物品の“貫通抵抗性”とは、指定された脅威(例えば、銃弾、破片、および爆弾の金属片等の物理的物体、ならびに爆発からの爆風等の非物理的物体)による貫通に対する抵抗性を表わしている。等しい面密度(組成物の重量を表面積で除して得られる値)を有する複合物の場合は、V50が大きくなるほど、組成物の抵抗性は良好になる。本発明の物品の弾道抵抗性は、多くのファクター(特に、布帛を製造するのに使用される繊維の種類)に応じて変わる。
【0058】
本明細書において作製されるフレキシブルな弾道抵抗性防護具は、16グレインの発射体で衝撃を受けたときに、少なくとも約1920フィート/秒(fps)(585.6m/秒)のV50を有するのが好ましい。本明細書において作製されるフレキシブルな弾道抵抗性防護具は、17グレインの破片をシミュレートした発射体で衝撃を受けたときに、少なくとも約1400フィート/秒(fps)(427m/秒)のV50を有するのが好ましい。
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0060】
実施例1
スペクトラ繊維から、一方向繊維プリプレグの連続ロール(ユニテープ)を2つ作製した。これらのユニテープは、クレイトンD1107スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマーからなるポリマーマトリックス組成物を18重量%含有していた。これらのロールを、米国特許第5,173,138号に記載のクロスプライ機に配置した。プリプレグを0°/90°となるようにクロスプライし、加熱および加圧下で圧密化させて、連続的な2−プライ構造物を作製した。連続ロールをさらに、熱と圧力を加えて、0.35ミル(0.0089mm)厚さの2枚のLLDPEフィルム間に積層し、積層連続ロール(LCR)を作製した。このロールからの材料を、表1においてマテリアルA(SR−3111スペクトラシールド製品)として表示する。
【0061】
45.72cm×45.72cmの寸法の25個の2−プライ片をマテリアルA LCRからカットし、成形せずに、あるいは該片を相互連結せずに、一配列にして積層した。このようにして作製した物品について、NIJ標準0101.04改訂Aに従い、9MMのフルメタル・ジャケット(FMJ)弾丸(重量8.04g)に対する弾道試験を実施した。弾道試験の結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
18%のポリマーマトリックス組成物含量を含有する実施例1のLCRのほかに、クレイトンD1107スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマーからなるポリマーマトリックス組成物を11重量%含有する他のLCRを製造した。このロールからの材料を、表1においてマテリアルB(SR−3121スペクトラシールド製品)として表示する。
【0063】
45.72cm×45.72cmの寸法の14個の2−プライ片をマテリアルBからカットし、45.72cm×45.72cmの寸法の13個の2−プライ片をマテリアルAからカットした。マテリアルBとマテリアルAからの27個全ての試験片を、成形せずに、あるいは該片を相互連結せずに、単一配列にして一緒に積層した。このようにして作製した物品について、NIJ標準0101.04改訂Aに従い、9MMのFMJ弾丸(124グレイン、重量8.04g)に対する弾道試験を実施した。(ここではマテリアルBが弾丸に直面した。)弾道試験の結果を表1に示す。下記の表に記載のように、マテリアル1は、弾道脅威によって最初に衝撃を受けるように配置されたパネルであり、マテリアル2は、弾道脅威によって2番目に衝撃を受けるように配置されたパネルである。
【0064】
実施例3
実施例2の場合と同様に、45.72cm×45.72cmの寸法の14個の2−プライ片をマテリアルAからカットし、45.72cm×45.72cmの寸法の13個の2−プライ片をマテリアルBからカットした。マテリアルBとマテリアルAからの27個全ての試験片を、成形せずに、あるいは該片を相互連結せずに、単一配列にして一緒に積層した。このようにして作製した物品について、NIJ標準0101.04改訂Aに従い、9MMのFMJ弾丸(重量8.04g)に対する弾道試験を実施した(ここではマテリアルAが弾道脅威によって最初に衝撃を受けるように配置した)。弾道試験の結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
マテリアルBとAからカットした他の組の2−プライ片(45.72cm×45.72cmのサンプルサイズ)について実施例2の手順を繰り返した。弾道試験の結果を表1に示す。
【0066】
実施例5
マテリアルAとBからカットした別の一組の2−プライ片(45.72cm×45.72cmのサンプルサイズ)について実施例3の手順を繰り返した。弾道試験の結果を表1に示す。
【0067】
実施例6
45.72cm×45.72cmの寸法の28個の2−プライ片をマテリアルBからカットし、成形せずに、あるいは該片を相互連結せずに、一配列にして積層した。このようにして作製した物品について、NIJ標準0101.04改訂Aに従い弾道試験を実施した。弾道試験の結果を表1に示す。同じ面密度を保持しつつマトリックス量の差を補償するために、実施例1と比較して追加的な層を組み込んだ。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中の実施例1〜6において示されている軟質防護具の弾道破片性能から、下記のようなことがわかる。
1. 単一のシュートパック(shoot pack)(またはフレキシブルベスト)中のポリマーマトリックス組成物の量を変えると、9MMのFMJの弾道脅威に対する弾道抵抗性が増す。
【0070】
2. クレイに対する背面変形量は、9MMのFMJの弾道脅威に対して試験したときに、全ての低樹脂含量弾道材料と比較して、異なるポリマーマトリックス組成物量を含有する複数のパネルを組み込んだシュートパックのほうが少ない。
【0071】
3. 軟質防護具に対する最良の結果を得るためには、最少量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所の最も近くに配置し、最大量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所から最も遠くに配置しなければならない。
【0072】
実施例7
2−プライの2つの連続予備圧密化ロール(PCR)を、実施例1及び実施例2に記載のロールと同様に作製した。(但し、LLDPEフィルムは組み込まなかった。)これら2つのPCRはそれぞれ、20%(表2においてマテリアルCと記す。)と11%(表2においてマテリアルDと記す。)のクレイトン D1107スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマーをポリマーマトリックス組成物として含有する。以下の表に示すように、マテリアル1は、弾道脅威によって最初に衝撃を受けるよう配置されるパネルであり、マテリアル2は、弾道脅威によって2番目に衝撃を受けるよう配置されるパネルである。
【0073】
30.48cm×30.48cmの寸法の37個の2−プライ片をマテリアルCからカットし、配列状態にて積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた片を最初に120℃で10分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−プライ片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、17グレインの重量を有する発射体をシミュレートした0.22口径の破片を使用し、且つMILL−P−46593A(ORD)に従い、米国軍用規格MIL−STD−662Fによる弾道試験を実施した。弾道試験のV50結果を表2に示す。
【0074】
実施例8
30.48cm×30.48cmの寸法の20個の2−プライ片をマテリアルDからカットし、19個の2−プライ片をマテリアルCからカットした。マテリアルDとマテリアルCの2−プライ片を単一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で10分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、17グレインの重量を有する発射体をシミュレートした0.22口径の破片を使用し、且つMILL−P−46593A(ORD)に従い、米国軍用規格MIL−STD−662Fによる弾道試験を実施した。弾道試験のV50結果を表2に示す。試験時においては、マテリアルDの側が、飛来する破片に直面した。
【0075】
実施例9
30.48cm×30.48cmの寸法の19個の2−プライ片をマテリアルCからカットし、20個の2−プライ片をマテリアルDからカットした。マテリアルCとマテリアルDの2−プライ片を単一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で10分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、17グレインの重量を有する発射体をシミュレートした0.22口径の破片を使用し、且つMILL−P−46593A(ORD)に従い、米国軍用規格MIL−STD−662Fによる弾道試験を実施した。弾道試験のV50結果を表2に示す。試験時においては、マテリアルCの側が、飛来する破片に直面した。
【0076】
実施例10
マテリアルDとマテリアルCの別の一組の試験片を組み込んだ他の成形パネルについて、実施例8を繰り返した。試験時においては、マテリアルDの側が、飛来する破片に直面した。弾道試験のV50結果を表2に示す。
【0077】
実施例11
マテリアルCとマテリアルDの別の一組の試験片を組み込んだ他の成形パネルについて、実施例9を繰り返した。試験時においては、マテリアルCの側が、飛来する破片に直面した。弾道試験のV50結果を表2に示す。
【0078】
実施例12
30.48cm×30.48cmの寸法の42個の2−プライ片をマテリアルDからカットし、一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で10分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、17グレインの重量を有する発射体をシミュレートした0.22口径の破片を使用し、且つMILL−P−46593A(ORD)に従い、米国軍用規格MIL−STD−662Fによる弾道試験を実施した。弾道試験のV50結果を表2に示す。同一の面密度を保持しつつマトリックス量の差を補償するために、実施例7と比較して追加的な層を組み込んだ。
【0079】
【表2】

【0080】
表2の実施例7〜12に示されている硬質防護具の弾道破片性能から、単一成形パネル(同じ種類の繊維を使用して作製)中のポリマーマトリックス組成物含量を変えることにより、発射体をシミュレートした0.22口径、17グレインの破片に対する弾道抵抗性が増大する、ということがわかる。特に、表2から、樹脂含量が20%のパネルを物品構造物のフロントパネルとして配置することで、物品構造物のリヤパネルとして配置したときよりも弾道抵抗性が高くなる、ということがわかる。硬質防護具に対する最良の結果を得るためには、最大量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所の最も近くに配置し、最少量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所から最も遠くに配置しなければならない。
【0081】
実施例13
実施例7に示したのと同様の連続予備圧密化ロール(PCR)を2つ作製した。2つのPCRは、実施例7〜12の場合と同様に、それぞれ20%(表3においてマテリアルCと記す。)と11%(表3においてマテリアルDと記す。)のクレイトンD1107スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーエラストマーを含有した。
【0082】
30.48cm×30.48cmの寸法の127個の2−プライ片をマテリアルCからカットし、一配列状態にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で25分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、高性能ライフル銃の米軍M80ボール銃弾(重量9.65g)を使用し、且つ米国軍用規格MIL−STD−662Fに従い、弾道試験を実施した。2つの同一成形パネルを試験してV50を算出した。弾道試験のV50結果を表3に示す。
【0083】
実施例14
30.48cm×30.48cmの寸法の68個の2−プライ片をマテリアルDからカットし、68個の2−プライ片をマテリアルCからカットした。マテリアルDとマテリアルCの2−プライシートを単一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で25分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、高性能ライフル銃の米軍M80ボール銃弾(重量9.65g)を使用し、且つ米国軍用規格MIL−STD−662Fに従い、弾道試験を実施した。試験時においては、マテリアルDの側が、飛来するM80ボール銃弾に直面した。2つの同一成形パネルを試験してV50を算出した。弾道試験のV50結果を表3に示す。
【0084】
実施例15
30.48cm×30.48cmの寸法の68個の2−プライ片をマテリアルCからカットし、68個の2−プライ片をマテリアルDからカットした。マテリアルCとマテリアルDの2−プライシートを単一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で25分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、高性能ライフル銃の米軍M80ボール銃弾(重量9.65g)を使用し、且つ米国軍用規格MIL−STD−662Fに従い、弾道試験を実施した。試験時においては、マテリアルCの側が、飛来するM80ボール銃弾に直面した。2つの同一成形パネルを試験してV50を算出した。弾道試験のV50結果を表3に示す。
【0085】
実施例16
30.48cm×30.48cmの寸法の145個の2−プライ片をマテリアルDからカットし、一配列にして積み重ね、マッチドダイ金型中において、積み重ねた該片を最初に120℃で25分予備加熱することによって、次いで35バールの成形圧力を10分加えることによって成形し、これにより成形パネルを作製した。それぞれの2−パネル片は、0°/90°の繊維配向を有した。成形パネルについて、高性能ライフル銃の米軍M80ボール銃弾(147グレイン;重量9.525g)を使用し、且つ米国軍用規格MIL−STD−662Fに従い、弾道試験を実施した。2つの同一成形パネルを試験してV50を算出した。弾道試験のV50結果を表3に示す。
実施例13と比較して、比較的同程度の面密度を保持しつつマトリックス量の差を補償するために、追加的な層を組み込んだ。
【0086】
【表3】

【0087】
表3の実施例13〜16に示されている硬質防護具の弾道破片性能から、ポリマーマトリックス組成物含量を変えることにより、ライフル銃弾に対する抵抗性も増大する、ということがわかる。硬質防護具に対する最良の結果を得るためには、最大量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所の最も近くに配置し、最少量のポリマー組成物を含有するパネルを、弾道脅威を受けそうな箇所から最も遠くに配置しなければならない。
【0088】
要約すれば、実施例1〜16は、同一の弾道フレキシブルシュートパックもしくは成形パネル中のポリマーマトリックス組成物の含量を変えることによって、破片および高エネルギーのライフル銃弾に対する複合物の弾道性能が高くなる、ということを示している。
【0089】
好ましい実施態様に関して本発明を具体的に説明してきたが、当業者であれば、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変更や改良が可能であることは容易に理解できるはずである。特許請求の範囲は、開示の実施態様、上記において説明されている代替的実施態様、およびこれらに対する全ての均等物を包含するように解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数の繊維層を含む第1のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;および
b)第1のパネルとは異なっていて複数の繊維層を含む、第1のパネルに貼り合わせられた第2のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;
を順々に含む弾道抵抗性材料であって、
c)前記第1のパネルが、第2のパネルの総重量を基準としたときの前記第2のパネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準としてより大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有することを特徴とする、前記弾道抵抗性材料。
【請求項2】
不織繊維を含む複数の繊維層を含む少なくとも1つのパネルを含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項3】
織繊維を含む複数の繊維層を含む少なくとも1つのパネルを含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項4】
複数の繊維層を含む少なくとも1つの追加パネルを含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項5】
相互連結された一連の弾道抵抗性パネルを含み、ここで前記一連の弾道抵抗性パネル中の連続パネルのそれぞれが、各パネルの総重量を基準として、連結される前記一連の弾道抵抗性パネル中の前のパネルより低い重量%のポリマー組成物を含有する、請求項4に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項6】
モノリシック構造物を含み、前記モノリシック構造物が、前記第1のパネルと前記第2のパネルの両方を組み込んでいる、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項7】
各パネルのポリマー組成物含量が、各パネルの総重量を基準として約1重量%〜約35重量%の範囲である、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項8】
各パネルが独立して、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、剛性ロッド繊維、またはこれら組み合わせ物の1種以上を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項9】
各パネルがポリエチレン繊維を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項10】
各パネルが外側表面を有し、少なくとも1つのポリマーフィルムが、少なくとも1つのパネルの少なくとも1つの外側表面に貼り合わせられている、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項11】
前記ポリマーフィルムが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、またはこれらのコポリマー若しくは組み合わせ物を含む材料を含む、請求項10に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項12】
請求項1に記載の弾道抵抗性材料を含む物品。
【請求項13】
a)複数の繊維層を含む第1のパネルを供給すること、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;および
b)第1のパネルとは異なった少なくとも1つの追加弾道抵抗性パネルを前記第1のパネルに貼り合わせて、これにより一連の相互連結弾道抵抗性パネルを作製すること、ここで少なくとも1つの追加パネルが複数の繊維層を含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;
を含む一連の弾道抵抗性パネルを含む弾道抵抗性材料の作製方法であって、ここで、前記第1のパネルが、少なくとも1つの追加的な弾道抵抗性パネルの総重量を基準としたときの少なくとも1つの追加的弾道抵抗性パネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準としてより大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有することを特徴とする前記方法。
【請求項14】
一連のパネル中の連続パネルのそれぞれが、各パネルの総重量を基準として、連結されている前記一連のパネル中の前のパネルより低い重量%のポリマー組成物を含有する、請求項13に記載の作製方法。
【請求項15】
前記パネルが縫合によって貼り合わせられる、請求項13に記載の作製方法。
【請求項16】
各パネルのポリマー組成物含量が、各パネルの総重量を基準として約1重量%〜約35重量%の範囲である、請求項13に記載の作製方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法によって作製される物品。
【請求項18】
a)複数の繊維層を含む第1のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;及び
b)第1のパネルとは異なっていて複数の繊維層を含む、第1のパネルに貼り合わせられた第2のパネル、ここで前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物でコーティングされている;
を含む弾道抵抗性材料から作製された弾道抵抗性物品であって、
c)前記第1のパネルが、第2のパネルの総重量を基準としたときの前記第2のパネル中のポリマー組成物の重量%と比較して、第1のパネルの総重量を基準としてより大きい重量%のポリマー組成物を第1のパネル中に含有すること;及び
d)少なくとも1つの追加パネルが、第1のパネル、第2のパネル、または第1のパネルと第2のパネルの両方に貼り合わせられていて、ここで前記少なくとも1つの追加的なパネルが複数の繊維層を含み、前記複数の繊維層が圧密化されており、各繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し、前記繊維のそれぞれが表面を有し、そして前記繊維の表面がポリマー組成物で必要に応じてコーティングされていること
を特徴とする前記弾道抵抗性物品。
【請求項19】
少なくとも1つの追加的なパネルが、ポリマー組成物でコーティングされている表面を有する繊維を含む、請求項18に記載の弾道抵抗性物品。
【請求項20】
各パネルのポリマー組成物含量が、各パネルの総重量を基準として約1重量%〜約35重量%の範囲にわたる、請求項18に記載の弾道抵抗性物品。

【公表番号】特表2010−518262(P2010−518262A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530522(P2009−530522)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/078590
【国際公開番号】WO2008/108882
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】