説明

樹脂多層デバイスおよびフリップチップ実装装置

【課題】高精度なインピーダンスと低挿入損失を実現でき、かつ簡単でコンパクトな構成のバランを有する樹脂多層デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の樹脂多層デバイスは、基板10と、第1樹脂層22上に設けられた平衡信号伝送路30,35と、第2樹脂層24上に平衡信号伝送路と対向して設けられた不平衡信号伝送路50と、第2樹脂層上において第3樹脂層26の開口部内にそれぞれ設けられた接地端子部70,75、出入力端子部60,65、入出力端子部90とを備え、平衡信号伝送路は、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置され、不平衡信号伝送路は、平衡信号伝送路30に対向する平面スパイラル部50cの内周に第1スペースE1を、平衡信号伝送路35に対向する平面スパイラル部50dの内周に第2スペースE2を有し、接地端子部70はスペースE1内に、接地端子部75、入出力端子部90はスペースE2内に配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線回路等に用いられるバラン(バランストランス)を有する樹脂多層デバイスに関し、特に、WLCSP(Wafer Level Chip Size/Scale Package)技術によって形成された積層型のバランを有する樹脂多層デバイス、および該樹脂多層デバイスを実装基板にフリップチップ実装させたフリップチップ実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型のバランは、不平衡信号伝送路と、2つの平衡信号伝送路とが、絶縁層(誘電体層)を介して積層配置された構成になっている。積層型バランの製造としては、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)技術をベースとしたもの(例えば特許文献1参照)、多層プリント基板製造技術をベースとしたもの(例えば特許文献2参照)、半導体加工技術をベースとしたもの(例えば、特許文献3、非特許文献1参照)、誘電体層として樹脂層を用いるもの(例えば特許文献4,5参照)がある。
【0003】
バランは、不平衡信号側(単一信号入力側)の入力インピーダンス、および平衡信号側(差動信号出力側)の出力インピーダンスが設計仕様のインピーダンス値であることを要求される。これらのインピーダンス仕様を満たすためのパラメータは、伝送路の幅、伝送路の厚さ、伝送路間の絶縁層の厚さ(伝送路間の距離)および誘電率、下側伝送路の下層の絶縁層の厚さおよび誘電率、ならびに上側伝送路の上層の絶縁層の厚さおよび誘電率である(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一方、近年、WLCSPという技術が提案されている(例えば特許文献6参照)。このWLCSP技術によって製造されたパッケージを、ウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)と言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−050910号公報
【特許文献2】特開2006−121313号公報
【特許文献3】特開2004−172284号公報
【特許文献4】特開2005−130376号公報
【特許文献5】特開2005−244848号公報
【特許文献6】特開2007−281230号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yeong J.Yoon,「Design and characterization of Multilayer Spiral Transmission-Line Baluns」,IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES,VOL.47,No.9,SEPTEMBER,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記LTCC技術をベースとして製造されたバラン装置では、GND層(接地層)や信号入力のためのレイヤ等、3層以上の配線レイヤを必要とするため、構成および製造手順が複雑になるという課題があった。さらに、下側伝送路と上側伝送路の位置合せ精度が悪く、インピーダンスが設計値からずれるという課題があった。
【0008】
また、上記多層プリント基板製造技術をベースとして製造されたバラン装置では、プリント基板に伝送路を形成するため、微細加工ができず、サイズが大きくなるという課題があった。また、高精度な加工ができないため、下側伝送路と上側伝送路の位置合せ精度が悪く、インピーダンスが設計値からずれるという課題があった。
【0009】
また、上記半導体加工技術をベースとして製造されたバラン装置では、微細加工および高精度な加工は可能であるが、配線抵抗が大きいことによる挿入損失、およびシリコン(Si)基板の影響による挿入損失が顕著である。
【0010】
WLCSP製造技術によってWLPの樹脂多層デバイスにバランを作り込むことにより、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランを実現できる。
【0011】
しかしながら、上記WLCSP製造技術による場合には、上記LTCC技術による場合よりも、絶縁層の比誘電率が低くなるので、伝送路を長くする必要があり、端子部を含めるとバランを作り込むための面積が大きくなるという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、高精度なインピーダンスと低挿入損失を実現でき、かつ簡単でコンパクトな構成のバランを有する樹脂多層デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の樹脂多層デバイスは、バランを有する樹脂多層デバイスであって、基板と、前記基板上に形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられ、一端を第1信号出入力端とし、他端を第1接地端とする第1平衡信号伝送路と、前記第1樹脂層上に前記第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられ、一端を第2信号出入力端とし、他端を第2接地端とする第2平衡信号伝送路と、前記2つの平衡信号伝送路上および前記第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に前記2つの平衡信号伝送路と対向して設けられ、一端を信号入出力端とし、他端を開放端とする不平衡信号伝送路と、前記不平衡信号伝送路上および前記第2樹脂層上に形成された第3樹脂層と、前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1接地端に接続された第1接地端子部と、前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2接地端に接続された第2接地端子部と、前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1信号出入力端に接続された第1出入力端子部と、前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2信号出入力端に接続された第2出入力端子部と、前記第2樹脂層上に設けられ、前記信号入出力端に接続された入出力端子部と、を備え、前記第1平衡信号伝送路および前記第2平衡信号伝送路は、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置され、前記不平衡信号伝送路は、前記第1平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第1スペースを有するとともに、前記第2平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第2スペースを有し、前記第1接地端子部は、前記第1スペース内に配置され、前記第2接地端子部および前記入出力端子部は、前記第2スペース内に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂多層デバイスによれば、基板上に、第1樹脂層、2つの平衡信号伝送路、第2樹脂層、不平衡信号伝送路、第3樹脂層を順に積層したバランを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の伝送路を形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランを有する樹脂多層デバイスを得ることができるとともに、伝送路を内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置し、第1接地端子部、第2接地端子部、および出入力端子部を、上記スペース内に配置することにより、ほぼ2つの平面スパイラル伝送路が占有する面積に2層配線構造でバランを作成できるので、簡単でコンパクトな構成のバランを有する樹脂多層デバイスを得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスにおいての接地端子部および不平衡信号入出力端子部の拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスの構成例を模式的に説明する上面図である。
【図4】図3においてのA−A間の断面図である。
【図5】図3においてのB−B間の断面図である。
【図6】図3においてのC−C間の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスに形成した積層型バランの動作を説明する模式回路図である。
【図8】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスの製造手順を模式的に説明する上面図である。
【図9】図8においてのB−B間の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスを実装基板にフリップチップ実装した実装装置を模式的に説明する断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
【図12】図11の樹脂多層デバイスの、伝送路長さ方向の断面で見た場合の断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2の樹脂多層デバイスの製造手順を模式的に説明する断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3の樹脂多層デバイスの構成例を模式的に説明する上面図である。
【図15】本発明の実施の形態4の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
【図16】図15の樹脂多層デバイスにおいてのダミー端子部の拡大図である。
【図17】本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態6の樹脂多層デバイスにおいての端子部の構成例を説明する拡大断面図である。
【図19】本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスにおいての端子部の構成例を説明する拡大断面図である。
【図20】不平衡信号伝送路の平面視に関する寸法を示す図である。
【図21】第1のシミュレーション結果の、通過特性および反射特性を示すグラフである。
【図22】第2のシミュレーション結果の、通過特性および反射特性を示すグラフである。
【図23】本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスの別の構成例を模式的に説明する上面図である。
【図24】図23においてのD−D間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。なお、以下の説明に用いる図面は模式的なものであって、実際の大きさとは異なる場合がある。
【0017】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。また、図2(a)は図1においての接地端子部70の拡大斜視図であり、図2(b)は図1においての接地端子部75および不平衡信号の入出力端子部90の拡大斜視図である。
【0018】
この実施の形態1の樹脂多層デバイス100は、基板10と、多層樹脂体20と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、1本の不平衡信号伝送路50と、2つの平衡信号の出入力端子部60(第1出入力端子部)および65(第2出入力端子部)と、2つの接地端子部70(第1接地端子部)および75(第2接地端子部)と、不平衡信号の入出力端子部90とを備えて構成されたWLPである。
【0019】
図3は樹脂多層デバイス100を説明する上面図であり、図4は図3においてのA−A間の断面図、図5は図3においてのB−B間の断面図、図6は図3においてのC−C間の断面図である。ただし、これらの図3〜図6では、樹脂多層デバイス100を判り易く説明するために、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型の伝送路である平衡信号伝送路30および35と、内周にスペースE1(第1スペース)を有する平面スパイラル部50cおよび内周にスペースE2(第2スペース)を有する平面スパイラル部50dを有する不平衡信号伝送路50を、それぞれストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0020】
上述の樹脂多層デバイス100の構成を示す図3は、図23に示す上面図としてもよい。図23において、図3と同様のものには同じ符号を付してある。また、図24は図23においてのD−D間の断面図である。図23、図24においても、樹脂多層デバイス100を判り易く説明するために、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型の伝送路である平衡信号伝送路30および35と、内周にスペースE1(第1スペース)を有する平面スパイラル部50cおよび内周にスペースE2(第2スペース)を有する平面スパイラル部50dを有する不平衡信号伝送路50を、それぞれストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0021】
[基板10]
基板10は、例えば、シリコン基板等の半導体基板、ガラス基板、あるいはGaAs等の絶縁性基板である。
【0022】
[多層樹脂体20]
多層樹脂体20は、第1樹脂層22と、第2樹脂層24と、第3樹脂層26とによって構成された積層構造である。第1樹脂層22は、基板10上に形成されている。この第1樹脂層22としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。また、第2樹脂層24は、平衡信号伝送路30,35が設けられた第1樹脂層22上に形成されている。この第2樹脂層24としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。また、第3樹脂層26は、不平衡信号伝送路50が設けられた第2樹脂層24上に形成されている。この第3樹脂層26としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、四フッ化エチレン等のフッ素樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)等の感光性樹脂を用いる。
【0023】
これらの第1樹脂層22、第2樹脂層24、および第3樹脂層26は、同じ材料を用いて同じ手法で形成する等により、同じ比誘電率Erであることが望ましい。
【0024】
この樹脂多層デバイス100において、第1樹脂層22と、平衡信号伝送路30,35と、第2樹脂層24と、不平衡信号伝送路50と、第3樹脂層26とは、積層型のバランを構成している。
【0025】
[平衡信号伝送路30,35、不平衡信号伝送路50]
2本の平衡信号伝送路30,35は、第1樹脂層22上に形成されている。平衡信号伝送路30は、内周にスペースを有するように平面スパイラル型に配置された伝送路である。同様に、平衡信号伝送路35も、内周にスペースを有するように平面スパイラル型に配置された伝送路である。
【0026】
内周にスペースE1(第1スペース)を有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路30の外周端(一端)30aと、同様に内周にスペースE2(第2スペース)を有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路35の外周端(一端)35aとは、間隔gをもって配置されている。これらの平衡信号伝送路30の一端30a(第1信号出入力端)および平衡信号伝送路35の一端35a(第2信号出入力端)は、それぞれ平衡信号(差動信号)の信号出入力端である。また、内周にスペースを有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路30の内周端(他端)30bは接地端(第1接地端)になっており、同様に内周にスペースを有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路35の内周端(他端)35bも接地端(第2接地端)になっている。
【0027】
平衡信号伝送路30,35は、同じ金属材料によって同時形成され、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。また、平衡信号伝送路30の伝送路長L1と平衡信号伝送路35の伝送路長L2とは、同じ長さ(L1=L2)となるように形成されることが望ましい。
また、平衡信号伝送路30と平衡信号伝送路35とは、同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されることが望ましい。なお、平衡信号伝送路30,35下面と基板10上面との間隔(第1樹脂層22の層厚)はh1である(図4参照)。
【0028】
不平衡信号伝送路50は、第2樹脂層24上に形成されている。この不平衡信号伝送路50は、その下面が平衡信号伝送路30の上面に対向するように設けられて内周にスペースE1を有する平面スパイラル部50cと、その下面が平衡信号伝送路35の上面に対向するように設けられて内周にスペースE2を有する平面スパイラル部50dとを、それぞれの外周端で連ねた1本の伝送路である。
【0029】
不平衡信号伝送路50の一端(平面スパイラル部50d側の内周端)50aは不平衡信号の信号入出力端になっており、不平衡信号伝送路50の他端(平面スパイラル部50c側の内周端)50bは開放端になっている。
【0030】
不平衡信号伝送路50は、例えば銅めっき等のめっき金属からなる。この不平衡信号伝送路50は、平衡信号伝送路30,35と同じ形成手法によって同じ金属材料で形成されていることが望ましい。
【0031】
不平衡信号伝送路50は、その長さLが、平衡信号伝送路30の伝送路長L1と、平衡信号伝送路35の伝送路長L2と、平衡信号伝送路30の信号出入力端30aと平衡信号伝送路35の信号出入力端35aの間隔gとの合計の長さと同じになるように形成される。また、不平衡信号伝送路50は、平衡信号伝送路30,35と同じ幅Wおよび同じ厚さTとなるように形成されていることが望ましい。
【0032】
なお、第2樹脂層24を介して対面配置された不平衡信号伝送路50下面と、平衡信号伝送路30,35上面の間隔はdである。また、不平衡信号伝送路50上面から第3樹脂層26上面までの間隔はh2である(図4参照)。
【0033】
[出入力端子部60,65、接地端子部70,75、入出力端子部90]
出入力端子部60は、平衡信号伝送路30の信号出入力端30aを引き出す出入力引き出し配線31(第1出入力引き出し配線)と、この出入力引き出し配線31にコンタクトする出入力電極パッド51(第1出入力電極パッド)と、この出入力電極パッド51上に設けられたはんだバンプ81とを有する。この出入力端子部60は、出入力電極パッド51およびはんだバンプ81を第3樹脂層26の開口部内に設けて、樹脂多層デバイス100を実装基板にはんだバンプ81によってフリップチップ実装して、平衡信号伝送路30の信号出入力端30aを上記実装基板の配線に接続するためのものである。
【0034】
同様に、出入力端子部65は、平衡信号伝送路35の信号出入力端35aを引き出す出入力引き出し配線36(第2出入力引き出し配線)と、この出入力引き出し配線36にコンタクトする出入力電極パッド56(第2出入力電極パッド)と、この出入力電極パッド56上に設けられたはんだバンプ86とを有する。この出入力端子部65は、出入力電極パッド56およびはんだバンプ86を第3樹脂層26の開口部内に設けて、樹脂多層デバイス100をはんだバンプ86によって実装基板にフリップチップ実装して、平衡信号伝送路35の信号出入力端35aを上記実装基板の配線に接続するためのものである。
【0035】
接地端子部70は、平衡信号伝送路30の接地端30bを引き出す接地引き出し配線32(第1接地引き出し配線)と、この接地引き出し配線32にコンタクトする接地電極パッド52(第1接地電極パッド)と、この接地電極パッド52上に設けられたはんだバンプ82とを有する。この接地端子部70は、接地電極パッド52およびはんだバンプ82を第3樹脂層26の開口部内に設けて、樹脂多層デバイス100をはんだバンプ82によって実装基板にフリップチップ実装して、平衡信号伝送路30の接地端30bを上記実装基板の配線に接続するためのものである。
【0036】
同様に、接地端子部75は、平衡信号伝送路35の接地端35bを引き出す接地引き出し配線37(第2接地引き出し配線)と、この接地引き出し配線37にコンタクトする接地電極パッド57(第2接地電極パッド)と、この接地電極パッド57上に設けられたはんだバンプ87とを有する。この接地端子部75は、接地電極パッド57およびはんだバンプ87を第3樹脂層26の開口部内に設けて、樹脂多層デバイス100をはんだバンプ87によって実装基板にフリップチップ実装して、平衡信号伝送路35の接地端35bを上記実装基板の配線に接続するためのものである。
【0037】
そして、入出力端子部90は、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aに連なる入出力電極パッド59と、この入出力電極パッド59上に設けられたはんだバンプ89とを有する。この入出力端子部90は、入出力電極パッド59およびはんだバンプ89を第3樹脂層26の開口部内に設けて、樹脂多層デバイス100をはんだバンプ89によって実装基板にフリップチップ実装して、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aを上記実装基板の配線に接続するためのものである。
【0038】
接地端子部70は、平面スパイラル内周に確保されたスペースE1内に配置されており、接地端子部75および入出力端子部90は、平面スパイラル内周に確保されたスペースE2内に配置されている。なお、出入力端子部60および65は、これらのスペースE1,E2の外側に配置されている。
【0039】
出入力端子部60の出入力引き出し配線31の長さ寸法はL1aであり、出入力端子部65の出入力引き出し配線36の長さ寸法はL2aである。これらの出入力引き出し配線31と36は、長さ寸法が同じになるように(L1a=L2aを満たすように)、形成されることが望ましい。優れた振幅バランス特性および位相バランス特性のバランを得るためである。
【0040】
また、接地端子部70の接地引き出し配線32の長さ寸法はL1bであり、接地端子部75の接地引き出し配線37の長さ寸法はL2bである。これらの接地引き出し配線32と37は、長さ寸法が同じになるように(L1b=L2bを満たすように)、形成されることが望ましい。上記出入力引き出し配線31,36の場合と同様に、優れた振幅バランス特性および位相バランス特性のバランを得るためである。
【0041】
[バランの動作]
図7は樹脂多層デバイス100に形成した積層型バランの動作を説明する模式回路図である。図7において、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aには不平衡信号(単一信号)SSが入力され、平衡信号伝送路35,30の信号出入力端35a,30aからはそれぞれ平衡信号(差動信号)SD1,SD2が出力される。なお、ZSは不平衡信号伝送路50の入力インピーダンスを表しており、ZD1,ZD2はそれぞれ平衡信号伝送路35,30の出力インピーダンスを表している。
【0042】
図7において、バラン110は、平衡信号伝送路35および30と不平衡信号伝送路50とを、第2樹脂層24(図1等参照)を介して近接配置することにより、平衡信号伝送路35および30と不平衡信号伝送路50との間に電磁結合を生じる回路である。このバラン110は、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aに不平衡信号(単一信号)SSを入力すると、この不平衡信号SSを平衡信号(差動信号)SD1,SD2に変換して、平衡信号伝送路35,30の信号出入力端35a,30aから出力する。また、これとは逆に、平衡信号伝送路35,30の信号出入力端35a,30aにそれぞれ平衡信号SD1,SD2を入力すると、この平衡信号SD1,SD2を不平衡信号SSに変換して不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aから出力する。
【0043】
ここで、伝送する信号(変換する信号)の波長をλとすると、平衡信号伝送路30の伝送路長L1および平衡信号伝送路35の伝送路長L2がそれぞれλ/4となり、不平衡信号伝送路50の内の平衡信号伝送路35,30に沿った部分の伝送路長(=L−g)がλ/2となるように、それぞれの伝送路を設ける。あるいは、L1=L2<λ/4、L−g<λ/2、等となるように、それぞれの伝送路を設ける。
【0044】
このようなバランは、アンテナで受信した不平衡信号を復調するにあたり、平衡信号に変換する必要があり、逆に平衡信号である変調信号をアンテナから送信するにあたり、不平衡信号に変換する必要がある携帯電話等の無線通信機器では、不可欠な回路である。
【0045】
さらに、図7のバラン110は、インピーダンスを変換するトランスとしての機能も兼ね備えている。インピーダンス変換については、不平衡信号側(単一信号入力側)の入力インピーダンスZS、および平衡信号側(差動信号出力側)の出力インピーダンスZD1,ZD2が設計仕様のインピーダンス値であることが要求される。例えば、不平衡信号側の入力インピーダンスZS=50Ω、平衡信号側の出力インピーダンスZD1+ZD2=100,150,200Ωである。
【0046】
携帯電話等の無線通信機器においては、変復調回路の入出力インピーダンスとアンテナの出力インピーダンスとは必ずしも整合していない。このため、両者のインピーダンスを整合させるためにも、インピーダンス変換機能を有するバランは不可欠である。上記両者の間にバランを挿入しないと、あるいは挿入してもバランの入出力インピーダンスが設計値からずれていると、別のインピーダンス変換器が必要になるという不具合を生じる。
【0047】
[製造手順]
図8および図9は樹脂多層デバイス100の製造手順を説明する図であり、図8は上面図、図9は図8においてのB−B間の断面図である。ただし、図8および図9は、樹脂多層デバイス100の製造手順の内、基板10上にバランを形成する手順を説明するものであり、図3〜図6と同様に平面スパイラル型の伝送路をストレート型の伝送路と仮想して描いている。図1〜図9を参照して、樹脂多層デバイス100の製造手順を以下に説明する。
【0048】
以下の説明において、基板10は、シリコン(Si)ウェハであるものとする。樹脂多層デバイス100はWLPであるから、バランは、WLCSP技術(ウェハ上に樹脂層形成プロセスと厚膜銅配線等の配線形成プロセスによって再配線層を作り込み、そのあとにチップにダイシングする技術)によって、上記シリコンウェハ上に形成される。
【0049】
まず、シリコンウェハである基板10上に第1樹脂層22を形成する。第1樹脂層22としては、比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によってウェハ基板10上にコーティングし、厚さ寸法h1の感光性樹脂層を形成する。
【0050】
次に、第1樹脂層22上に、内周にスペースE1を有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路30、および内周にスペースE2を有する平面スパイラル型の平衡信号伝送路35、ならびに出入力引き出し配線31,36、および接地引き出し配線32,37を設ける。
【0051】
引き出し配線31は、平衡信号伝送路30の信号出入力端30aを平衡信号伝送路30の出入力端子部60の電極パッド51に接続するための配線である。引き出し配線32は、平衡信号伝送路30の接地端30bを平衡信号伝送路30の接地端子部70の電極パッド52に接続するための配線である。引き出し配線36は、平衡信号伝送路35の信号出入力端35aを平衡信号伝送路35の出入力端子部65の電極パッド56に接続するための配線である。引き出し配線37は、平衡信号伝送路35の接地端35bを平衡信号伝送路35の接地端子部75の電極パッド57に接続するための配線である。
【0052】
平衡信号伝送路30,35および引き出し配線31,32,36,37としては、銅めっきを用いる。第1樹脂層22上にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L1の平衡信号伝送路30、および幅寸法W,厚さ寸法T,長さ寸法L2(=L1)の平衡信号伝送路35を形成する。
【0053】
同時に、厚さ寸法T,長さ寸法L1aの引き出し配線31、厚さ寸法T,長さ寸法L1bの引き出し配線32、厚さ寸法T,長さ寸法L2aの引き出し配線36、および厚さ寸法T,長さ寸法L2bの引き出し配線37を形成する。このとき、L1a=L2aとなるように引き出し配線31と36を形成するとともに、L1b=L2bとなるように引き出し配線32と37を形成することが望ましい。優れた振幅バランス特性および位相バランス特性のバランを得るためである。
【0054】
次に、平衡信号伝送路30および平衡信号伝送路35を設けた第1樹脂層22上に、第2樹脂層24を形成し、この第2樹脂層24に、それぞれ引き出し配線31,32,36,37を露出させる開口部24a,24b,24c,24dを設ける。第2樹脂層24としては、第1樹脂層22と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、平衡信号伝送路30,35および引き出し配線31,32,36,37を設けた第1樹脂層22上にコーティングし、平衡信号伝送路30上面および平衡信号伝送路35上面からの厚さ寸法dの感光性樹脂層を形成する。
そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって開口部24a,24b,24c,24dを設ける。
【0055】
次に、第2樹脂層24上に、内周にスペースE1を有する平面スパイラル部50cおよび内周にスペースE2を有する平面スパイラル部50dを有する不平衡信号伝送路50、ならびに出入力電極パッド51,56、接地電極パッド52,57、および入出力電極パッド59を設ける。
【0056】
電極パッド51は、開口部24aにおいて引き出し配線31にコンタクトして、平衡信号伝送路30の信号出入力端30aを出入力端子部60に導くための電極パッドである。
電極パッド52は、開口部24bにおいて引き出し配線32にコンタクトして、平衡信号伝送路30の接地端30bを接地端子部70に導くための電極パッドである。電極パッド56は、開口部24cにおいて引き出し配線36にコンタクトして、平衡信号伝送路35の信号出入力端35aを出入力端子部65に導くための電極パッドである。電極パッド57は、開口部24dにおいて引き出し配線37にコンタクトして、平衡信号伝送路35の接地端35bを接地端子部75に導くための電極パッドである。そして、電極パッド59は、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aを入出力端子部90に導くための電極パッドである。
【0057】
不平衡信号伝送路50および電極パッド51,52,56,57,59としては、平衡信号伝送路30,35と同じ銅めっきを用いる。第2樹脂層24上にシード層を形成した後、レジストを形成しパターニングした後、銅めっきを施し、幅寸法W、厚さ寸法T、長さ寸法Lの不平衡信号伝送路50を形成する。また、同時に、電極パッド51,52,56,57,59を形成する。
【0058】
次に、不平衡信号伝送路50を設けた第2樹脂層24上に、封止樹脂層となる第3樹脂層26を形成し、この第3樹脂層26に、電極パッド51,52,56,57,59をそれぞれ露出させる開口部26a,26b,26c,26d,26eを設ける。第3樹脂層26としては、第1樹脂層22および第2樹脂層24と同じ比誘電率Erの感光性の絶縁樹脂を用いる。この感光性樹脂の流体樹脂材料をスピンコート法によって、不平衡信号伝送路50を設けた第2樹脂層24上にコーティングし、不平衡信号伝送路50上面からの厚さ寸法h2の感光性樹脂層を形成する。そして、この感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法によって開口部26a,26b,26c,26d,26eを形成する。
【0059】
なお、このあと、樹脂多層デバイス100をフリップチップ実装するためのはんだバンプ81,82,86,87,89を、開口部26a,26b,26c,26d,26e内にそれぞれ設ける。
【0060】
以上の手順を完了したあと、シリコンウェハである基板10をダイシングして、WLPの樹脂多層デバイス100を得る。
【0061】
以上のように実施の形態1によれば、基板上に、第1樹脂層22、2つの平衡信号伝送路30,35、第2樹脂層24、不平衡信号伝送路50、第3樹脂層26を順に積層したバランを有するWLPとしたことにより、WLCSP技術では、CMOS半導体加工技術と同様の高い精度で樹脂層および銅めっき等による低抵抗の伝送路を形成することができるので、高精度なインピーダンスと低挿入損失のバランを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0062】
さらに、この実施の形態1では、伝送路を内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置し、接地端子部70,75および入出力端子部90を、上記スペース内に配置することにより、ほぼ2つの平面スパイラル伝送路が占有する面積に2層配線構造でバランを作製できるので、簡単でコンパクトな構成のバランを有する樹脂多層デバイスを得ることができる。
【0063】
さらに、この実施の形態1では、配線層2層のみでバランを構成でき、従来のLTCC技術によるバランよりも、配線層数が少なく、層間の配線接続構造が簡単かつ省スペースにて作製でき、製造難易度が容易であるので、大幅なコスト削減効果を期待できる。
【0064】
また、多層樹脂および銅めっき等の伝送路によってバランを構成することにより、バランの軽量化、耐衝撃性の向上、および放熱性の向上を図ることができる。
【0065】
[フリップチップ実装装置]
次に、実施の形態1の樹脂多層デバイス100を実装基板800にフリップチップ実装したフリップチップ実装装置900について説明する。
図10は、樹脂多層デバイス100を実装基板800にフリップチップ実装した状態を模式的に説明する断面図である。図10においても、図3〜図6と同様にスパイラル型の伝送路をストレート型の伝送路に展開して描いてある。
【0066】
実装基板800は、Siからなるプリント基板801(第2基板)に対して、GND層802、および信号パッド803が形成されている構成である。信号パッド803は、樹脂多層デバイス100の平衡信号の第1出入力端子部60a、第2出入力端子部65a、および不平衡信号の入出力端子部90aに対向する位置に形成されている。GND層802は、少なくとも樹脂多層デバイス100の平面スパイラル部と対向する部分に形成されている。ただし、GND層802は、信号パッド803の部分を除いた部分に形成されている。
第1出入力端子部60a、第2出入力端子部65a、および不平衡信号の入出力端子部90aにはそれぞれバンプ81a、86a、89aが設けられている。前記端子部60a、65a、90aは、前記バンプ81a、86a、89aを介して、それぞれ実装基板800の信号パッド803に接続されている。
また、図示しない接地端子部も、バンプを介して実装基板800のGND層802に接続されている。
【0067】
樹脂多層デバイス100と実装基板800とを接続するバンプは金スタッドバンプや、めっきにより形成した柱状の銅バンプの先端に柱状の金バンプやはんだバンプを成長させたもの、又はめっきにより柱状に金バンプを成長させたものが好ましい。
【0068】
上記フリップチップ実装装置900は、樹脂多層デバイス100の誘電体層を柱状のバンプによって、樹脂多層デバイス100と実装基板800との間に形成された空気層804とすることにより、樹脂多層デバイス100の誘電体損失を低減させることが可能である。その結果、バランの損失を低減することが可能となる。
さらに、空気層804の厚みは、バンプの高さを適宜変更することによって調整可能である。
【0069】
<実施の形態2>
図11は、本発明の実施の形態2の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。また、図12は、図11の樹脂多層デバイス200の、伝送路長さ方向の断面で見た場合の断面図である。図12においても、図3〜図6、および図10と同様にスパイラル型の伝送路をストレート型の伝送路に展開して描いてある。なお、図11または図12において、図1〜図9と同様のものには同じ符号を付してある。
【0070】
この実施の形態2の樹脂多層デバイス200は、基板10と、GND層40と、多層樹脂体20と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、1本の不平衡信号伝送路50と、2つの平衡信号の出入力端子部60(第1出入力端子部)および65(第2出入力端子部)と、不平衡信号の入出力端子部90とを備えて構成されたWLPである。つまり、この実施の形態2の樹脂多層デバイス200は、上記実施の形態1の樹脂多層デバイス100(図1〜図9参照)において、基板10と、多層樹脂体20との間にGND層40を設けたものである。第1平衡信号伝送路30の第1接地端30b、および第2平衡信号伝送路35の第2接地端35bは、GND層40に接続されている。
【0071】
図12のように、GND層40は、基板10上に形成されている。また、多層樹脂体20は、GND層40の上に形成されている。
GND層40は、導電性金属からなる接地層(グランド層)である。該導電性金属としては、例えば、銅(Cu)、アルミ(Al)等の金属を用いる。基板上にGND層40を設ける方法としては、めっき法、スパッタ法等が適用できる。
【0072】
第1平衡信号伝送路30の接地端30bは、ビア41を介してGND層40に電気的に接続されている。同様に、第2平衡信号伝送路35の接地端35bは、ビア42を介してGND層40に電気的に接続されている。
ビア41、42を形成する金属材料は第1平衡信号伝送路30及び第2平衡信号伝送路35と同じ材料によって形成されることが望ましく、例えば銅めっき等のめっき金属が挙げられる。
【0073】
[製造手順]
図13は、GND層40およびビア41、42を有する樹脂多層デバイス200の製造手順を説明する図である。
まず、図13(a)に示すように、シリコンウェハである基板10の上に、スパッタ、めっき等により金属層(GND層)を形成する。なお、基板10上には、SiO酸化膜を有していてもよい。
次に、図13(b)に示すように、GND層40上に、第1樹脂層22を形成し、フォトリソグラフィーにより、第1樹脂層22を貫通するようにビア・ホール(貫通孔)を形成する。
次に、図13(c)に示すように、第1樹脂層22上に、めっきにより、実施の形態1と同様の平面スパイラル型の平衡信号伝送路30、35を形成すると同時に、ビア41、42を形成する。以下、実施の形態1と同様の手順で、樹脂多層デバイス200を完成させる。
【0074】
以上のように実施の形態2は、樹脂多層デバイス200の基板10と多層樹脂体20との間にGND層40を設け、第1接地端30bおよび第2接地端35bがビア41、42を介してGND層40に接地される構成とした。この構成としたことにより、実施の形態1と比較して実装用接地端子(バンプ)を削減することができるので、バンプ総数が減り、実装に関わる歩留まりを向上させることができる。
【0075】
<実施の形態3>
図14は、本発明の実施の形態3の樹脂多層デバイスの構成例を説明する上面図であり、実施の形態3の平面スパイラル部、および端子部の配置の概略を示す図である。
この実施の形態3の樹脂多層デバイス300は、前記実施の形態2の樹脂多層デバイス200(図11、12参照)において、バランを構成する平面スパイラル部の位置を基板の中央寄りに変更した上で、各端子部の配置箇所を不平衡信号伝送路50を構成する平面スパイラル部50cおよび平面スパイラル部50dの外側であって、基板の角隅に配置するように変更したものである。また、フリップチップ実装した際に、実装基板のGND層に接続して接地するためのGND端子部70aを、基板の角隅に配置した。つまり、実施の形態2のように、端子部はスパイラルの内周に設けられたスペースに設けられているものではない。
図14のように、実施の形態3は、平衡信号の第1出入力端子部60、第2出入力端子部65、GND端子部70a、および不平衡信号の入出力端子部90を樹脂多層デバイス300の4つの角隅に配置してなる構成である。
GND端子部70aは、GND層40を介して、接地引き出し配線32aの端部、および接地引き出し配線37aの端部に電気的に接続されている。接地引き出し配線32aの端部、および接地引き出し配線37aの端部は、ビア(図示せず)を介してGND層40に電気的に接続されている。
なお、不平衡信号伝送路50の信号入出力端50aをスパイラル部の外側へ引き出すための引き出し配線は、第3樹脂層26上にあって、不平衡信号伝送路50と干渉しない高さに設けられた第3の配線層150である。
【0076】
以上のように実施の形態3によれば、上記実施の形態2と同様の効果を得られるとともに、端子部60、65、90、70aを樹脂多層デバイス300の4つの角隅に配置することにより、フリップチップ実装の際の樹脂多層デバイスの実装安定性を向上させることができる。また、平面スパイラル部の外側に端子部を配置するため、比較的大型のバンプを用いることができる。
【0077】
<実施の形態4>
図15は本発明の実施の形態4の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
また、図16は図15の樹脂多層デバイスにおいてのダミー端子部410の拡大図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。なお、図15または図16において、図1〜図10と同様のものには同じ符号を付してある。
【0078】
この実施の形態4の樹脂多層デバイス400は、基板10と、多層樹脂体20と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、1本の不平衡信号伝送路50と、2つの平衡信号の出入力端子部60(第1出入力端子部)および65(第2出入力端子部)と、2つの接地端子部70(第1接地端子部)および75(第2接地端子部)と、不平衡信号の入出力端子部90と、2つのダミー端子部410および420とを備えて構成されたWLPである。つまり、この実施の形態4の樹脂多層デバイス400は、上記実施の形態1の樹脂多層デバイス100(図1〜図9参照)において、ダミー端子部410,420を設けたものである。
【0079】
図16のように、ダミー端子部410は、ダミー電極パッド411と、ダミーはんだバンプ412とを有し、第3樹脂層26の開口部26f内に設けられている。ダミー電極パッド411は、出入力端子部60,65、接地端子部70,75、入出力端子部90の電極パッドを第2樹脂層24上に形成するときに、同時に第2樹脂層24上に形成される。
このダミー電極パッド411は、電気的にフローティングになっている電極パッドである。
【0080】
また、ダミーはんだバンプ412は、出入力端子部60,65、接地端子部70,75、入出力端子部90にはんだバンプを設けるときに、同時にダミー電極パッド411上に設けられる。なお、ダミー端子部420も、ダミー端子部410と同様の構造である。
【0081】
これらのダミー端子部410,420は、樹脂多層デバイスのフリップチップ実装の安定化のために設けられたものである。この実施の形態4の樹脂多層デバイス400では、端子部60,65,70,75,90からの距離が長くなるデバイスの2つの角隅に、それぞれダミー端子部410,420を設け、実装時の安定化を図っている。
【0082】
なお、樹脂多層デバイスの4つの角隅にダミー端子部を設けること、あるいは必要に応じて、平面スパイラル型の伝送路内周に確保されているスペースE1,E2内にダミー端子部を設けることも可能である。
【0083】
以上のように実施の形態4によれば、上記実施の形態1と同様の効果を得られるとともに、ダミー電極パッドおよびダミーはんだバンプによるダミー端子部を設けることにより、フリップチップ実装の際の樹脂多層デバイスの実装安定性を向上させることができる。
【0084】
<実施の形態5>
図17は本発明の実施の形態5の樹脂多層デバイスの構成例を説明する斜視図である。
なお、図17において、図1と同様のものには同じ符号を付してある。この実施の形態5の樹脂多層デバイス500は、基板10と、多層樹脂体20と、2本の平衡信号伝送路30(第1平衡信号伝送路)および35(第2平衡信号伝送路)と、1本の不平衡信号伝送路50と、2つの平衡信号の出入力端子部560(第1出入力端子部)および565(第2出入力端子部)と、2つの接地端子部570(第1接地端子部)および575(第2接地端子部)と、不平衡信号の入出力端子部590とを備えて構成されたWLPである。
なお、本実施の形態5においては、基板10は、GaAs、ガラス等の絶縁性基板を用いる。また、図示しないが、GND層が基板10の端子部560、565、570、575、590が設けられている面とは反対側の面に設けられていることが好ましい。
【0085】
つまり、この実施の形態5の樹脂多層デバイス500は、上記実施の形態1の樹脂多層デバイス100(図1〜図9参照)において、出入力端子部60,65をそれぞれ出入力端子部560,565とし、接地端子部70,75をそれぞれ接地端子部570,575とし、さらに入出力端子部90を入出力端子部590としたものである。そして、この実施の形態5の樹脂多層デバイス500は、フリップチップ実装ではなく、ワイヤボンド実装等によって、プリント回路基板510等に実装されるものである。
【0086】
従って、出入力端子部560,565は、上記実施の形態1の出入力端子部60,65(図3等参照)において、それぞれはんだバンプ81,86を設けない構成としたものである。同様に、接地端子部570,575は、上記実施の形態1の接地端子部70,75(図3等参照)において、それぞれはんだバンプ82,87を設けない構成としたものである。また同様に、入出力端子部590は、上記実施の形態1の入出力端子部90(図3等参照)において、はんだバンプ89を設けない構成としたものである。
【0087】
このように、樹脂多層デバイスをワイヤボンド実装する場合には、第3樹脂層26の開口部において、出入力端子部560の出入力電極パッド51、出入力端子部565の出入力電極パッド56、接地端子部570の接地電極パッド52、接地端子部575の接地電極パッド57、入出力端子部590の入出力電極パッド59を露出したまま、上記開口部内にはんだバンプを設ける必要がない。
【0088】
例えば、樹脂多層デバイス500は、基板10の裏面(下面)がプリント回路基板510の表面(上面)に実装される。このとき、出入力端子部560の出入力電極パッド51、出入力端子部565の出入力電極パッド56、接地端子部570の接地電極パッド52、接地端子部575の接地電極パッド57、入出力端子部590の入出力電極パッド59は、それぞれ個別のボンディングワイヤ520によって、プリント回路基板510の表面に設けられた個別のボンディングパッド511にそれぞれボンディングされる。
【0089】
フリップチップ実装では、樹脂多層デバイスは実装基板に近接して実装されることとなり、実装されたときに樹脂多層デバイスの伝送路(特に不平衡信号伝送路50)が実装基板の配線と重なるような配置になると、実装基板の配線との干渉等によりバランの特性変動を生じることがある。しかし、ワイヤボンド実装では、実装基板の配線は基板10の裏面側に位置するため、伝送路と重なって近接配置されることはなく、中空に配置されるボンディングが伝送路と干渉を生じることもない。このため、ワイヤボンド実装では、実装に起因するバランの特性変動を抑えることができる。
【0090】
このようなワイヤボンド実装の場合には、ボンディングワイヤを短くするために、実装前に、あらかじめ半導体基板等からなる基板10を裏面(下面)から研削加工を施して薄くしておくことが有効である。
また、実装前に、プリント回路基板510に樹脂多層デバイス500の平面視形状に対応した凹部を設け、該凹部に樹脂多層デバイス500を固定することもまた有効である。
【0091】
以上のように実施の形態5によれば、上記実施の形態1と同様の効果を得られるとともに、バランを有する樹脂多層デバイスをワイヤボンド実装することにより、実装時のバランの特性変動を抑えることができる。
【0092】
<実施の形態6>
図18は本発明の実施の形態6の樹脂多層デバイスにおいての端子部の構成例を説明する拡大断面図である。なお、図18において、図1〜図9と同様のものには同じ符号を付してある。
【0093】
この実施の形態6の樹脂多層デバイスは、上記実施の形態1〜5のいずれかの樹脂多層デバイスにおいて、出入力端子部、接地端子部、入出力端子部、およびダミー端子部に、図18の端子部600の構成を適用したものである。
【0094】
この実施の形態6の端子部600は、第2樹脂層24上に形成される電極パッド610の厚さ寸法を、同じく第2樹脂層24上に形成される不平衡信号伝送路の厚さ寸法Tよりも厚くすることにより、第3樹脂層26の開口部26g内の電極パッド610の上面位置が、第2樹脂層24上に形成された不平衡信号伝送路等の他の第2配線層の上面位置よりも高くなるようにしたものである。なお、ここで、第1樹脂層22上に形成された平衡信号伝送路等を第1配線層とし、第2樹脂層24上に形成された不平衡信号伝送路等を第2配線層とする。
【0095】
この端子部600の形成手順を以下に説明する。まず、第2樹脂層24上に、上記実施の形態1で説明した手順により、不平衡信号伝送路および電極パッド610の下層部となる銅めっきを施す。さらに、電極パッド610の配置領域に選択めっき法により、電極パッド610の上層部となる銅めっきを成長させる。この銅めっき層をフォトリソグラフィー法およびエッチング法によってパターニングして、厚さ寸法Tの不平衡信号伝送路を形成するとともに、厚さ寸法がTよりも厚い電極パッド610を形成する。さらに、この上に第3樹脂層26を形成し、この第3樹脂層26に、電極パッド610を露出させる開口部26gを設ける。なお、電極パッド610上には、フリップチップ実装時等、必要に応じてはんだバンプを設ける。
【0096】
このように、電極パッド610の上面位置を不平衡信号伝送路の上面位置よりも高くすることにより、フリップチップ実装においては、バランの伝送路と、この伝送路に重なり合う実装基板の配線との距離を長くとることができるので、実装基板の配線との干渉等に起因するバランの特性変動を抑えることができる。
【0097】
また、ワイヤボンド実装においては、樹脂多層デバイスにおいてのボンディング面の位置が高くなるので(第3樹脂層26の開口部26gにおいてボンディング面が浅くなるので)、ボンディングワイヤを電極パッドに確実かつ容易にボンディングすることができる。
【0098】
さらに、図18に点線で示したように、異方性導電性接着剤(ACF)620を電極パッド610上に配置することにより、端子部600を備えた樹脂多層デバイスを図示しない実装基板にフリップチップ実装することも可能である。実装基板にフリップチップ実装する場合においては、第3樹脂層26は第2樹脂層24上に形成されていないことが好ましい。
【0099】
以上のように実施の形態6によれば、フリップチップ実装に起因するバランの特性変動を抑えることができ、あるいはワイヤボンド実装を確実かつ容易にできる。
【0100】
<実施の形態7>
図19は本発明の実施の形態7の樹脂多層デバイスにおいての端子部の構成例を説明する拡大断面図である。なお、図19において、図1〜図9または図18と同様のものには同じ符号を付してある。
【0101】
この実施の形態7の樹脂多層デバイスは、上記実施の形態1〜5のいずれかの樹脂多層デバイスにおいて、出入力端子部、接地端子部、入出力端子部、およびダミー端子部に、図19の端子部700の構成を適用したものである。
【0102】
この実施の形態7の端子部700は、樹脂コアポスト形成法によって第2樹脂層24上にポスト電極パッドである電極パッド710を形成することにより、第3樹脂層26の開口部26g内の電極パッド710の上面位置が、第2樹脂層24上に形成された不平衡信号伝送路等の他の第2配線層の上面位置よりも高くなるようにしたものである。
【0103】
この端子部700の形成手順を以下に説明する。まず、第2樹脂層24上に、さらに樹脂層を形成し、これをパターニングして、電極パッド710を設ける位置に、第2樹脂層24上面から凸設した樹脂コア24gを形成する。そして、この樹脂コア24gを形成した第2樹脂層24上に、上記実施の形態1で説明した手順により、不平衡信号伝送路および電極パッド710となる銅めっきを施し、このめっき層をフォトリソグラフィー法およびエッチング法によってパターニングして、厚さ寸法Tの不平衡信号伝送路を形成するとともに、樹脂コア24g上のポスト電極パッドとなる電極パッド710を形成する。さらに、この上に第3樹脂層26を形成し、この第3樹脂層26に、電極パッド710を露出させる開口部26gを設ける。なお、電極パッド710上には、フリップチップ実装時等、必要に応じてはんだバンプを設ける。
【0104】
このように、電極パッド710の上面位置を不平衡信号伝送路の上面位置よりも高くすることにより、フリップチップ実装においては、バランの伝送路と、この伝送路に重なり合う実装基板の配線との距離を長くとることができるので、実装基板の配線との干渉等に起因するバランの特性変動を抑えることができる。
【0105】
また、ワイヤボンド実装においては、樹脂多層デバイスにおいてのボンディング面の位置が高くなるので(第3樹脂層26の開口部26gにおいてボンディング面が浅くなるので)、ボンディングワイヤを電極パッドに確実かつ容易にボンディングすることができる。
【0106】
さらに、図19に点線で示したように、異方性導電性接着剤(ACF)720を電極パッド710上に配置することにより、端子部700を備えた樹脂多層デバイスを図示しない実装基板にフリップチップ実装することも可能である。実装基板にフリップチップ実装する場合においては、第3樹脂層26は第2樹脂層24上に形成されていないことが好ましい。
【0107】
以上のように実施の形態7によれば、フリップチップ実装に起因するバランの特性変動を抑えることができ、あるいはワイヤボンド実装を確実かつ容易にできる。
【0108】
[第1のシミュレーション結果]
実施の形態1の樹脂多層デバイス100を実装基板800にフリップチップ実装した、フリップチップ実装装置900に関する第1のシミュレーション結果を掲載する。樹脂多層デバイス100は、シリコン基板10上に、第1樹脂層22、第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35、第2樹脂層24、不平衡信号伝送路50、第3樹脂層26を積層する形態とした。
実装基板800は、プリント基板801に対して、GND層802、および信号パッド803が形成されている構成である。
【0109】
第1樹脂層22、第2樹脂層24、および第3樹脂層26には、いずれも比誘電率Er=2.9、誘電正接=0.01のポリイミド系樹脂を用いた。また、第1の平衡信号伝送路30、第2の平衡信号伝送路35、および不平衡信号伝送路50は、銅からなるものとした。
【0110】
フリップチップ実装装置900の断面視に関する寸法を、図10を参照して説明する。
第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35の上面と基板10下面との間隔(第1樹脂層22の層厚)をh1=10μm、第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35の下面と不平衡信号伝送路50の上面の間隔をd=8μm、不平衡信号伝送路50の下面から第3樹脂層26の下面までの間隔をh2=6μmとした。また、各伝送路の厚さ寸法をT=5μmとし、バンプの高さ寸法はB=40μmとした。
【0111】
第1の平衡信号伝送路30、第2の平衡信号伝送路35、および不平衡信号伝送路50の平面視に関する寸法を図20に示す。
平面スパイラル部を有する不平衡信号伝送路50の長手方向の寸法はS1=1000μm、短手方向の寸法はS2=750μm、平面スパイラル部のスペースの短手方向の幅寸法はN=320μmとした。また、伝送路30、35、50の幅寸法はW=25μmとし、伝送路間の配線間隔はG=10μmとした(図20参照)。
図21は、第1のシミュレーション結果の、通過特性および反射特性を示すグラフである。なお、本シミュレーションにおいては、バンプによる電気特性の影響は考慮されていない。
【0112】
[第2のシミュレーション結果]
実施の形態2の樹脂多層デバイス200に関する第2のシミュレーション結果を掲載する。樹脂多層デバイス200は、シリコン基板10上に、GND層40、第1樹脂層22、第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35、第2樹脂層24、不平衡信号伝送路50、第3樹脂層26を積層する形態とした。
【0113】
第1のシミュレーションと同様に、第1樹脂層22、第2樹脂層24、および第3樹脂層26には、いずれも比誘電率Er=2.9、誘電正接=0.01のポリイミド系樹脂を用いた。また、GND層40、第1の平衡信号伝送路30、第2の平衡信号伝送路35、および不平衡信号伝送路50は、銅からなるものとした。
【0114】
樹脂多層デバイス200の断面視に関する寸法を、図12を参照して説明する。
第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35の下面と基板10上面との間隔(第1樹脂層22の層厚)をh1=10μm、第1の平衡信号伝送路30および第2の平衡信号伝送路35の上面と不平衡信号伝送路50の下面の間隔をd=8μm、不平衡信号伝送路50の上面から第3樹脂層26の上面までの間隔をh2=6μmとした。また、各伝送路の厚さ寸法をT=5μmとした。
第1の平衡信号伝送路30、第2の平衡信号伝送路35、および不平衡信号伝送路50の平面視に関する寸法は、第1のシミュレーションと同様の寸法を採用した(図20参照)。
図22は、第2のシミュレーション結果の、通過特性および反射特性を示すグラフである。
【0115】
第1のシミュレーション結果と第2のシミュレーション結果とを比較すると、5.5GHzにおける通過損失が第1のシミュレーション結果が、−0.65dBであることに対し、第2のシミュレーション結果は、−0.87dBとなっている。
第1のシミュレーション結果は、樹脂多層デバイス100をGND層を有する実装基板800にフリップチップ実装したフリップチップ実装装置900に関するものであり、上記結果は、前記フリップチップ実装装置の構成によって、誘電体損失が低減され、その結果としてバランの通過損失が低減されていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、あらゆる高周波回路に利用可能であり、特に、携帯電話、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、WiMAX(登録商標)、準ミリ波、ミリ波通信等の通信機器を構成する回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
10 基板、 20 多層樹脂体、 22 第1樹脂層、 24 第2樹脂層、 24a,24b,24c,24d 開口部、 24g 樹脂コア、 26 第3樹脂層、 26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g 開口部、 30 平衡信号伝送路(第1平衡信号伝送路)、 30a 信号出入力端、 30b 接地端、 31 出入力引き出し配線、 32 接地引き出し配線、 35 平衡信号伝送路(第2平衡信号伝送路)、 35a 信号出入力端、 35b 接地端、 36 出入力引き出し配線、 37 接地引き出し配線、 50 不平衡信号伝送路、 50a 信号入出力端、 50b 開放端、 50c,50d 平面スパイラル部、 51 出入力電極パッド、 52 接地電極パッド、 56 出入力電極パッド、 57 接地電極パッド、 59 入出力電極パッド、 60,65 出入力端子部、 70,75 接地端子部、 81,82,86,87,89 はんだバンプ、 90 入出力端子部、 100 樹脂多層デバイス、 110 バラン、 200 樹脂多層デバイス、 300 樹脂多層デバイス、 400 樹脂多層デバイス、 410 ダミー端子部、 411 ダミー電極パッド、 412 ダミーはんだバンプ、 420 ダミー端子部、 500 樹脂多層デバイス、 510 プリント回路基板、 511 ボンディングパッド、 520 ボンディングワイヤ、 560,565 出入力端子部、 570,575 接地端子部、 590 入出力端子部、 600 端子部、 610 電極パッド、 700 端子部、 710 電極パッド、 800 実装基板、 801 第2基板、 802 GND層、 803 信号パッド、 900 フリップチップ実装装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランを有する樹脂多層デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に設けられ、一端を第1信号出入力端とし、他端を第1接地端とする第1平衡信号伝送路と、
前記第1樹脂層上に前記第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられ、一端を第2信号出入力端とし、他端を第2接地端とする第2平衡信号伝送路と、
前記2つの平衡信号伝送路上および前記第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、
前記第2樹脂層上に前記2つの平衡信号伝送路と対向して設けられ、一端を信号入出力端とし、他端を開放端とする不平衡信号伝送路と、
前記不平衡信号伝送路上および前記第2樹脂層上に形成された第3樹脂層と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1接地端に接続された第1接地端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2接地端に接続された第2接地端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1信号出入力端に接続された第1出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2信号出入力端に接続された第2出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記信号入出力端に接続された入出力端子部と、
を備え、
前記第1平衡信号伝送路および前記第2平衡信号伝送路は、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置され、
前記不平衡信号伝送路は、前記第1平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第1スペースを有するとともに、前記第2平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第2スペースを有し、
前記第1接地端子部は、前記第1スペース内に配置され、
前記第2接地端子部および前記入出力端子部は、前記第2スペース内に配置されていることを特徴とする樹脂多層デバイス。
【請求項2】
前記第1接地端子部は、前記第2樹脂層上において上記第3樹脂層の開口部内に設けられた第1接地電極パッドと、前記第1樹脂層上に設けられ、前記第1接地端を前記第1接地電極パッドに接続する第1接地引き出し配線とを有し、
前記第2接地端子部は、前記第2樹脂層上において上記第3樹脂層の開口部内に設けられた第2接地電極パッドと、前記第1樹脂層上に設けられ、前記第2接地端を前記第2接地電極パッドに接続する第2接地引き出し配線とを有し、
前記第1出入力端子部は、前記第2樹脂層上において上記第3樹脂層の開口部内に設けられた第1出入力電極パッドと、前記第1樹脂層上に設けられ、前記第1信号出入力端を前記第1出入力電極パッドに接続する第1出入力引き出し配線とを有し、
前記第2出入力端子部は、前記第2樹脂層上において上記第3樹脂層の開口部内に設けられた第2出入力電極パッドと、前記第1樹脂層上に設けられ、前記第2信号出入力端を前記第2出入力電極パッドに接続する第2出入力引き出し配線とを有し、
前記第1接地引き出し配線と前記第2接地引き出し配線の長さが等しく、
前記第1出入力引き出し配線と前記第2出入力引き出し配線の長さが等しいことを特徴とする請求項1に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項3】
前記第1接地電極パッド、前記第2接地電極パッド、前記第1出入力電極パッド、前記第2出入力電極パッド、および前記入出力電極パッドに、それぞれはんだバンプを設けたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項4】
デバイス実装の安定化のためのダミー端子部をさらに備え、
前記ダミー端子部は、前記第3樹脂層上において前記第2樹脂層の開口部内に設けられた電気的にフローティングのダミー電極パッドと、このダミー電極パッド上に設けられたダミーはんだバンプとを有することを特徴とする請求項3に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項5】
前記基板は、その下面に研削加工を施したものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項6】
前記第1接地電極パッド、前記第2接地電極パッド、前記第1出入力電極パッド、前記第2出入力電極パッド、および前記入出力電極パッドの上面位置が、前記不平衡信号伝送路の上面位置よりも高いことを特徴とする請求項1乃至4に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項7】
前記第1接地電極パッド、前記第2接地電極パッド、前記第1出入力電極パッド、前記第2出入力電極パッド、および前記入出力電極パッドが、前記第2樹脂層上に設けられた樹脂コア上に形成されたポスト電極パッドであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の樹脂多層デバイス。
【請求項8】
請求項3に記載の樹脂多層デバイスと、該樹脂多層デバイスをフリップチップ実装させるために用いる実装基板とからなるフリップチップ実装装置であって、
前記実装基板は、第2基板とその一面上に形成されたGND層とから構成され、
前記樹脂多層デバイスは、前記第1接地電極パッドおよび前記第2接地電極パッドに設けられた前記はんだバンプを介して前記実装基板のGND層に電気的に接続されていることを特徴とするフリップチップ実装装置。
【請求項9】
バランを有する樹脂多層デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成されたGND層と、
前記GND層上に形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に設けられ、一端を第1信号出入力端とし、他端を第1接地端とする第1平衡信号伝送路と、
前記第1樹脂層上に前記第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられ、一端を第2信号出入力端とし、他端を第2接地端とする第2平衡信号伝送路と、
前記2つの平衡信号伝送路上および前記第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、
前記第2樹脂層上に前記2つの平衡信号伝送路と対向して設けられ、一端を信号入出力端とし、他端を開放端とする不平衡信号伝送路と、
前記不平衡信号伝送路上および前記第2樹脂層上に形成された第3樹脂層と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1信号出入力端に接続された第1出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2信号出入力端に接続された第2出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記信号入出力端に接続された入出力端子部と、
を備え、
前記第1平衡信号伝送路および前記第2平衡信号伝送路は、それぞれ内周にスペースを有する平面スパイラル型に配置され、
前記不平衡信号伝送路は、前記第1平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第1スペースを有するとともに、前記第2平衡信号伝送路に対向する平面スパイラル部の内周に第2スペースを有し、
前記入出力端子部は、前記第2スペース内に配置され、
前記第1接地端および前記第2接地端は、前記GND層に接続されていることを特徴とする樹脂多層デバイス。
【請求項10】
バランを有する樹脂多層デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に設けられ、一端を第1信号出入力端とし、他端を第1接地端とする第1平衡信号伝送路と、
前記第1樹脂層上に前記第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられ、一端を第2信号出入力端とし、他端を第2接地端とする第2平衡信号伝送路と、
前記2つの平衡信号伝送路上および前記第1樹脂層上に形成された第2樹脂層と、
前記第2樹脂層上に前記2つの平衡信号伝送路と対向して設けられ、一端を信号入出力端とし、他端を開放端とする不平衡信号伝送路と、
前記不平衡信号伝送路上および前記第2樹脂層上に形成された第3樹脂層と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1接地端および前記第2接地端に接続された接地端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第1信号出入力端に接続された第1出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記第2信号出入力端に接続された第2出入力端子部と、
前記第2樹脂層上に設けられ、前記信号入出力端に接続された入出力端子部と、
を備え、
前記第1平衡信号伝送路および前記第2平衡信号伝送路は、それぞれ平面スパイラル型に配置され、
前記不平衡信号伝送路は、前記第1平衡信号伝送路に対向する第1平面スパイラル部と前記第2平衡信号伝送路に対向する第2平面スパイラル部を有し、
前記第1出入力端子部、前記第2出入力端子部、前記入出力端子部、および前記接地端子部は、前記第1平面スパイラルと前記第2平面スパイラル部の外側に配置されていることを特徴とする樹脂多層デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−154516(P2010−154516A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263948(P2009−263948)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】