説明

樹脂成形品のボス構造

【課題】タッピングスクリューのぐらつきを防止しつつ省スペース化を図るとともに、低い製造コストで塗装時のゴミ付着不良を防止する。
【解決手段】外表面パネル部3の裏面に、縦壁部5を薄肉部7を介して一体に突設する。縦壁部5の突出端に、水平壁部9を一体に連結して水平壁部9、縦壁部5及び外表面パネル部3の三者間に一側方に開放する中空部Sを形成する。縦壁部5及び水平壁部9を中空部Sの反開放部側で中空部S内へ凹陥させて反外表面パネル部3側と上記反開放部側とに開いた凹部11を構成する。凹部11の開放部側に、周壁13aの一部及び底壁13bを凹部11と共有するようにボス部13を立設する。ボス部13の底壁13bと外表面パネル部3との間に位置する第2中空部S2は、凹部11を除く水平壁部9と外表面パネル部3との間に位置する第1中空部S1よりもボス部突出方向に狭く、第1中空部S1に反開放部側方向を除く三方向から囲まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッピングスクリューがねじ込まれる開口孔を有するボス部が外表面パネル部の裏側に一体に形成された樹脂成形品のボス構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、両端が開口した円筒状のボス部が外表面パネル部の裏側に一体に突設された樹脂成形品のボス構造が開示されている。このボス構造では、ボス部の周壁に4つの板状リブが円周を4等分するように放射状に一体に突設され、そのうち3つのリブは突出端が外表面パネル部の裏面に連結されて当該突出端から基端にかけてはボス部と共に外表面パネル部から離間している一方、残りの1つのリブは基端から突出端にかけて全体が外表面パネル部の裏面から離間している。このような構造により、外表面パネル部の表側におけるボス部対応箇所にヒケが発生しないようにしている。また、ボス部の基端と、各リブの外表面パネル部との非接触部分とが段差なく面一になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−276445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、タッピングスクリューを反外表面パネル部側からボス部の開口孔にねじ込むと、その際に発生する削り粉が外表面パネル部側の開口孔から飛散してその後の塗装時にゴミとして付着するおそれがある。
【0005】
また、省スペース化のためにタッピングスクリューのねじ込み量、すなわちボス部の有効長さを短くすると、タッピングスクリューがぐらつきやすくなる。
【0006】
そこで、ボス部の有効長さを変えずに省スペース化のためにボス部を外表面パネル部に接近させ、かつボス部の外表面パネル部側の開口孔を塞ぐ底壁を設けることが考えられる。しかし、この場合には、底壁がボス部周りのリブよりも外表面パネル部側に突出してアンダーカット部を構成し、その結果、ボス部と外表面パネル部との間の中空部に対応するスライド型の型構造、及び成形工程を複雑化する必要が生じて製造コストが増大する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、タッピングスクリューのぐらつきを防止しつつ省スペース化を図るとともに、低い製造コストで塗装時のゴミ付着不良を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ボス部の底壁と外表面パネルとの間の中空部が、スライド型の反型抜き方向を除く三方からより厚い中空部に囲まれるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明は、タッピングスクリューがねじ込まれる開口孔を有するボス部が外表面パネル部の裏側に一体に形成された樹脂成形品のボス構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記外表面パネル部の裏面には、縦壁部が薄肉部を介して一体に突設されるとともに、該縦壁部の突出端には、水平壁部が一体に連結されて該水平壁部、上記縦壁部及び外表面パネル部の三者間に一側方に開放する中空部が形成され、上記縦壁部及び水平壁部は、上記中空部の反開放部側で中空部内へ凹陥して反外表面パネル部側と上記反開放部側とに開いた凹部を構成し、上記ボス部は、上記凹部の開放部側に周壁の一部及び底壁を凹部と共有するように立設され、上記中空部は、上記凹部を除く水平壁部と外表面パネル部との間に位置する第1中空部と、上記ボス部の底壁と外表面パネル部との間に位置し上記第1中空部よりもボス部突出方向の隙間が狭い第2中空部とからなり、上記第2中空部は、上記第1中空部に反開放部側方向を除く三方向から囲まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、タッピングスクリューをボス部の開口孔にねじ込んでも、削り粉がボス部の開口孔に保留されて外部に飛散しないので、タッピングスクリューによる取付部材の取付け後に塗装を行う際のゴミ付着不良を防止できる。
【0012】
また、底壁と外表面パネル部との間の第2中空部が、この第2中空部よりも厚い第1中空部に反開放部側方向を除く三方向から囲まれて、底壁がアンダーカット部を構成しないので、型構造及び成形工程を簡素にして製造コストを削減できる。
【0013】
また、凹部にボス部を立設するので、ボス部の有効長さを短くすることなく、外表面パネル部からの突出部分全体の突出高さを短く設定できる。したがって、タッピングスクリューのぐらつきを防止しつつ、省スペース化を実現できる。
【0014】
また、縦壁部が薄肉部を介して突設されているので、外表面パネル部の表面において縦壁部の収縮に起因するヒケの生成が防止される。
【0015】
また、中空部に対応するスライド型として、第2中空部に対応する薄肉部と、第2中空部よりも厚い第1中空部に対応する厚肉部とを有するものを使用できる。この場合、上記薄肉部が厚肉部に三方向から囲まれて補強されるので、スライド型が破損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るボス構造を適用した樹脂成形品の斜視図である。
【図2】実施形態1に係るボス構造を適用した樹脂成形品の平面図である。
【図3】実施形態1に係るボス構造を適用した樹脂成形品の正面図である
【図4】図2のA−A線における断面図である。
【図5】図2のB−B線における断面図である。
【図6】実施形態1に係る樹脂成形品の中空部に対応するスライド型の斜視図である。
【図7】実施形態2の図1相当図である。
【図8】実施形態2の図2相当図である。
【図9】実施形態2の図3相当図である。
【図10】実施形態2の図4相当図である。
【図11】実施形態2の図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1〜5は、本発明の実施形態1に係るボス構造が適用された樹脂成形品1を示す。図1中、上記樹脂成形品1は、外表面パネル部3を備え、この外表面パネル部3の裏面には、横断面コ字状の縦壁部5が薄肉部7を介して一体に突設されている。この縦壁部5の突出端には、矩形状の水平壁部9が一体に連結されて該水平壁部9、上記縦壁部5及び外表面パネル部3の三者間に一側方に開放する中空部Sが形成されている。
【0019】
上記水平壁部9は、上記中空部Sの反開放部側に中空部S内へ凹陥して反外表面パネル部3側と上記反開放部側とに開いた凹部11を構成している。この凹部11は、平面視で円形部と該円形部から徐々に幅広になる台形部とからなる略鍵穴形状となっている。平面視で上記円形部は、水平壁部9の略中央に位置するとともに、上記台形部の反円形部側端縁は、上記水平壁部9の反開放部側端縁となっている。
【0020】
上記凹部11の開放部側の上記円形部対応箇所には、開口孔15を有する円筒状のボス部13が立設され、このボス部13は、周壁13aの開放部側と底壁13bを凹部11と共有している。また、上記水平壁部9には、上記ボス部13を補強する3つの矩形状の板状リブ13cが反開放部側方向を除く三方向に一体に突設されている。これら板状リブ13cのボス部13と反対側の側面は、水平壁部9から離れるにつれてボス部13に近づくように傾斜している。また、板状リブ13cの突出面は、ボス部13の先端面と面一になっている。
【0021】
上記ボス部13には、図4に仮想線で示すように、ボルト挿通孔17を有する板状部材19が、ボルト挿通孔17をボス部13の開口孔15に対応させてタッピングスクリュー18をボルト挿通孔17及びボス部13の開口孔15にねじ込むことによって固定される。
【0022】
上記中空部Sは、上記凹部11を除く水平壁部9と外表面パネル部3との間に位置する第1中空部S1と、上記ボス部13の底壁13bと外表面パネル部3との間に位置する第2中空部S2とからなる。この第2中空部S2のボス部13突出方向の幅(隙間)W1は、第1中空部S1のボス部13突出方向の幅W2よりも狭くなっている。上記第2中空部S2は、上記第1中空部S1に反開放部側方向を除く三方向から囲まれている。
【0023】
上記のように構成された樹脂成形品1を成形するために、中空部Sに対応するスライド型として、図6に示すようなスライド型21を使用できる。このスライド型21は、上記第2中空部S2に対応する厚さW1の薄肉部23と、該薄肉部23よりも厚い第1中空部S1に対応する厚さW2の厚肉部25とを有する。上記薄肉部23は、厚肉部25に三方向から囲まれて補強されるので、スライド型21は破損しにくい。
【0024】
したがって、本実施形態1によれば、タッピングスクリュー18をボス部13の開口孔15にねじ込んでも、削り粉がボス部13の開口孔15に保留されて外部に飛散しないので、板状部材19の組み付け後に塗装を行う際のゴミ付着不良を防止できる。
【0025】
また、底壁13bと外表面パネル部3との間の第2中空部S2が、第2中空部S2よりも厚い第1中空部S1に反開放部側方向を除く三方向から囲まれて、底壁13bがアンダーカット部を構成しないので、型構造及び成形工程を簡素にして製造コストを削減できる。
【0026】
また、凹部11にボス部13を立設するので、ボス部13の有効長さを短くすることなく、外表面パネル部3からの突出部分全体の突出高さを短く設定できる。したがって、タッピングスクリュー18のぐらつきを防止しつつ、省スペース化を実現できる。
【0027】
また、縦壁部5が薄肉部7を介して突設されているので、外表面パネル部3の表面において縦壁部5の収縮に起因するヒケの生成が防止される。
【0028】
(実施形態2)
図7〜11は、本発明の実施形態2に係るボス構造が適用された樹脂成形品1を示す。この実施形態2では、ボス部13を水平壁部9から突出させていないが、縦壁部5の突出高さを実施形態1よりも高くしているので、実施形態1と同程度のボス部13の有効長さが確保される。本実施形態2に係る樹脂成形品1を成形するために使用されるスライド型21は、厚肉部25の厚さがより長くなっている点で、実施形態1のスライド型21と異なっている。そのほかの構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0029】
したがって、本実施形態2によると、実施形態1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、タッピングスクリューがねじ込まれる開口孔を有するボス部が外表面パネル部の裏側に一体に形成された樹脂成形品のボス構造として有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 樹脂成形品
3 外表面パネル部
5 縦壁部
7 薄肉部
9 水平壁部
11 凹部
13 ボス部
13a 周壁
13b 底壁
15 開口孔
18 タッピングスクリュー
S 中空部
S1 第1中空部
S2 第2中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッピングスクリューがねじ込まれる開口孔を有するボス部が外表面パネル部の裏側に一体に形成された樹脂成形品のボス構造であって、
上記外表面パネル部の裏面には、縦壁部が薄肉部を介して一体に突設されるとともに、該縦壁部の突出端には、水平壁部が一体に連結されて該水平壁部、上記縦壁部及び外表面パネル部の三者間に一側方に開放する中空部が形成され、
上記縦壁部及び水平壁部は、上記中空部の反開放部側で中空部内へ凹陥して反外表面パネル部側と上記反開放部側とに開いた凹部を構成し、
上記ボス部は、上記凹部の開放部側に周壁の一部及び底壁を凹部と共有するように立設され、
上記中空部は、上記凹部を除く水平壁部と外表面パネル部との間に位置する第1中空部と、上記ボス部の底壁と外表面パネル部との間に位置し上記第1中空部よりもボス部突出方向の隙間が狭い第2中空部とからなり、
上記第2中空部は、上記第1中空部に反開放部側方向を除く三方向から囲まれていることを特徴とする樹脂成形品のボス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−76241(P2012−76241A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220731(P2010−220731)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】