説明

樹脂成形品の成形方法

【課題】非意匠面側に凹凸のある樹脂成形品を光輝性材料が混入している樹脂材によって成形したとき、非意匠面側での光輝性材料の乱れに伴うウェルドライン等が意匠面側では隠されて見栄えをよくする。
【解決手段】非意匠面側に凹凸のある樹脂成形品を、光輝性材料が分散状態で混入している樹脂材によって成形する樹脂成形品の成形方法であって、光輝性材料が混入した樹脂材14からなる溶融樹脂を金型10に注入して凹凸のある非意匠面22側を先に成形し、その後に同じく光輝性材料が混入した樹脂材14からなる溶融樹脂を金型10に注入して意匠面21側を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非意匠面側に補強用のリブや別部材に対する位置決め用の窪みといった凹凸のある樹脂成形品を、光輝性材料が分散状態で混入している樹脂材によって成形する成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内装用などの樹脂成形品においては、メタリック感を出すなどの加飾手段として成形用の樹脂材にアルミフレーク等の光輝性材料を分散状態で混入させている。例えば特許文献1に開示された技術では、光輝性材料が混入した樹脂材によってホイールキャップなどの樹脂成形品を成形している。そして、この樹脂成形品の意匠面側には多数のシボがあり、非意匠面側にはキャップ(樹脂成形品)をホイールに結合するための取付け爪が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−192637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている樹脂成形品もそうであるように、非意匠面に取付け爪あるいは該爪を固定する補強部などの凸部があると、成形に際して光輝性材料が混入した樹脂材からなる溶融樹脂を金型に注入すると、凸部(金型の凹部)の箇所で光輝性材料の配列に乱れが生じる。この結果、樹脂成形品にウェルドラインが発生するが、特許文献1の技術では樹脂成形品の意匠面側にシボを設けることでウェルドラインが鮮明に見えるのを防止している。
しかしながら、この技術は意匠面側にシボのある樹脂成形品にだけ適用できるものであり、対象範囲が狭い。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、非意匠面側に凹凸のある樹脂成形品を光輝性材料が混入している樹脂材によって成形したとき、非意匠面側での光輝性材料の乱れに伴うウェルドライン等が意匠面側では隠されて見栄えをよくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
非意匠面側に凹凸のある樹脂成形品を、光輝性材料が分散状態で混入している樹脂材によって成形する樹脂成形品の成形方法であって、光輝性材料が混入した樹脂材からなる溶融樹脂を金型に注入して凹凸のある非意匠面側を先に成形し、その後に同じく光輝性材料が混入した樹脂材からなる溶融樹脂を金型に注入して意匠面側を成形する。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、光輝性材料が混入した樹脂材によって樹脂成形品を成形する際に、凹凸のある非意匠面側を先に成形した後に意匠面側を成形することにより、非意匠面側にある凹凸の箇所で光輝性材料の配列に乱れが生じても、その後に成形される意匠面側では光輝性材料が整列した状態となる。このため、非意匠面側での光輝性材料の乱れに伴うウェルドライン等が、意匠面側では隠されて見えなくなり、見栄えがよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】樹脂成形の概要を表した説明図。
【図2】成形の対象となる樹脂成形品の一例を表した斜視図。
【図3】図2の正面図。
【図4】樹脂成形品の成形工程を表した断面図。
【図5】成形の対象となる樹脂成形品の別例を表した斜視図。
【図6】図5で示す樹脂成形品の使用状態を表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1で示すように上型10Aと下型10Bとからなる金型10のキャビティー内に、アルミフレーク等の光輝材料16が分散状態で混入した樹脂材14からなる溶融樹脂を注入したとき、通常での光輝材料16は樹脂材14の流れにしたがってほぼ水平な整列状態で移動する。しかし、例えば下型10Bの一部にリブ成形用の凹部12があると、その箇所において溶融樹脂の流れが変化し、光輝材料16の配列に乱れが生じる。つまり、図1で示すように下型10Bの凹部12において、一部の光輝材料16が垂直方向に向きを変えてしまい、これがウェルドラインとなって成形品の見栄えをわるくする。
【0010】
上記の不具合は、図2および図3で示す樹脂成形品20のように、その意匠面21とは反対側の非意匠面22に例えば補強用のリブ23がある場合に発生する現象である。この樹脂成形品20における非意匠面22側での光輝材料16の配列の乱れは、意匠面21側からウェルドラインとして見える。
そこで、この実施の形態では、樹脂成形品20の成形を二段階に分け、先にリブ23を有する非意匠面22側を成形し、その後に意匠面21側を成形することとした。これにより、非意匠面22側にあるリブ23の箇所で光輝材料16の配列に乱れが生じても、後で成形される意匠面21側では光輝材料16が整列した状態となる。このため、意匠面21側においては、非意匠面22側で生じたウェルドラインが隠されることになる。
【0011】
つづいて、樹脂成形品20を二段階に分けて成形するための成形装置を図4によって説明する。金型10を構成している上型10Aおよび下型10Bは、個々のプレート30,31に組付けられている。プレート30は昇降動作が可能な可動式であり、プレート31は固定式である。プレート31側には、金型10内に溶融樹脂を注入する二つの射出ユニット34,35が設けられている。また、上型10Aは、その内部に入れ子36を備えており、この入れ子36は上型10Aに内蔵されたシリンダー38の制御によって位置の切替えが行われるようになっている。
【0012】
樹脂成形品20の成形にあたっては、まず前述のように光輝性材料16が混入した樹脂材14からなる溶融樹脂を、図4(a)で示すように一方の射出ユニット34から金型10内に注入する。このとき、上型10Aの入れ子36はシリンダー38によって最も押し下げられており、金型10内には樹脂成形品20においてリブ23を有する非意匠面22側を成形するためのキャビティーが構成されている。したがって、34からの溶融樹脂の注入により、樹脂成形品20の非意匠面22側が先に成形される。
【0013】
つぎに、図4(b)で示すように入れ子36を上昇位置に切替えて樹脂成形品20の意匠面21側を成形するためのキャビティーを構成するとともに、他方の射出ユニット35から光輝性材料16が混入した樹脂材14からなる溶融樹脂を注入する。これにより、樹脂成形品20の意匠面21側が成形され、結果として樹脂成形品20が成形される。この後、図4(c)で示すようにプレート30を上型10Aと共に上昇させて型開き状態とし、金型10から樹脂成形品20を取出す。
【0014】
成形装置における二つの射出ユニット34,35は、共に同一の溶融樹脂を射出してもよく、あるいは異なる溶融樹脂を射出して樹脂成形品20の意匠面21側と非意匠面22側とを二色成形することとしてもよい。なお、ゲートバルブ等の切替えによって樹脂成形品20の意匠面21側と非意匠面22側とを個別に成形する場合は、射出ユニット34,35を一つにすることもできる。
【0015】
樹脂成形品20の非意匠面22には、補強用のリブ23の他に取付け用のボスが設けられることもある。また、樹脂成形品20が車両内装用ボードなどである場合には、その非意匠面22に図5で示すような位置決め用の窪み24が設けられ、この窪み24を図6で示すように相手部品26の突起27に係合させて位置決めすることがある。これらのリブ23やボス、あるいは窪み24が非意匠面22における本発明の「凹凸」に相当する。
【符号の説明】
【0016】
10 金型
14 樹脂材
16 光輝材料
20 樹脂成形品
21 意匠面
22 非意匠面
23 リブ(凸部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非意匠面側に凹凸のある樹脂成形品を、光輝性材料が分散状態で混入している樹脂材によって成形する樹脂成形品の成形方法であって、
光輝性材料が混入した樹脂材からなる溶融樹脂を金型に注入して凹凸のある非意匠面側を先に成形し、その後に同じく光輝性材料が混入した樹脂材からなる溶融樹脂を金型に注入して意匠面側を成形する樹脂成形品の成形方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−148421(P2012−148421A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6760(P2011−6760)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】