樹脂成形装置
【課題】転写精度を高くすることができ、金型装置のコストを低くすることができ、成形サイクルを短くすることができるようにする。
【解決手段】第1の金型と、第1の金型に対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間C1、C2に向けて第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレート34と、前記一方の金型と転写プレート34との間に配設され、金属ガラスから成る断熱層40とを有する。一方の金型と転写プレート34との間に金属ガラスから成る断熱層40が配設されるので、成形材料が有する熱エネルギーが一方の金型側に逃げるのを抑制することができる。したがって、成形材料の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができるので、転写精度を高くすることができる。
【解決手段】第1の金型と、第1の金型に対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間C1、C2に向けて第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレート34と、前記一方の金型と転写プレート34との間に配設され、金属ガラスから成る断熱層40とを有する。一方の金型と転写プレート34との間に金属ガラスから成る断熱層40が配設されるので、成形材料が有する熱エネルギーが一方の金型側に逃げるのを抑制することができる。したがって、成形材料の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができるので、転写精度を高くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂が、金型装置内のキャビティ空間に充填され、該キャビティ空間内において冷却され、固化させられて成形品が成形されるようになっている。
【0003】
前記射出成形機は、樹脂成形装置としての金型装置、型締装置及び射出装置を有し、該射出装置は、樹脂を加熱して溶融させる加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられ、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリュー等を備える。そして、前記金型装置は固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置によって可動金型を進退させることにより、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締めに伴って、前記固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0004】
そして、計量工程において、前記スクリューが回転させられると、加熱シリンダ内に供給された樹脂が溶融させられてスクリューの前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、金型装置の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、該スクリューの前方に蓄えられた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間に充填される。次に、冷却工程において、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され固化される。続いて、型開きが行われ、前記成形品が取り出される。
【0005】
図1は従来の金型装置の断面図である。
【0006】
図において、11は成形品、例えば、導光板を成形するための金型装置、12は固定金型、13は該固定金型12に対して進退自在に配設された可動金型である。そして、図示されない型締装置において、可動金型13が前進させられて型閉じが行われ、可動金型13が前記固定金型12に当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型12と可動金型13との間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型13が後退させられ、固定金型12から離されて型開きが行われる。
【0007】
また、15は固定金型12に形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0008】
そして、前記可動金型13は上板21、及び該上板21を受ける下板22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型13における固定金型12と対向する面には、転写プレート34が取り付けられ、該転写プレート34に、固定金型12と対向させて、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。そして、前記下板22内に温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体を流すことによって金型装置11及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂を冷却することができる。
【0009】
また、前記金型装置11に対して図示されない射出装置が進退自在に配設され、型締めが行われた状態の金型装置11の前記固定金型12に、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出ノズルから樹脂を射出すると、樹脂はゲートg1、g2を介してキャビティ空間C1、C2に充填される。
【0010】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記温調媒体によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂に転写される。続いて、型開きを行うと、導光板が完成する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−249538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の金型装置11においては、前記転写面に極微小な凹凸が形成されている場合、パターンを樹脂に十分に精度良く転写することができず、転写精度が低くなってしまうことがある。
【0013】
これは、金型装置11の温度が樹脂のガラス転移温度より低くなるような金型装置11を使用した場合に、溶融した樹脂がキャビティ空間C1、C2内に流れ込み、キャビティ空間C1、C2の内周面に接触したときに、一瞬にして冷却され、樹脂の表面に表面固化層、すなわち、スキン層が形成されたためであると考えられている。
【0014】
該スキン層は、導光板の成形条件、樹脂の種類等によって形成される状態は異なるが、一般的に、形成される時間、すなわち、成長時間は0.1秒以下のオーダーであり、スキン層の厚さは数十〔μm〕程度といわれている。スキン層が形成されると、樹脂がキャビティ空間C1、C2の内周面と接触したときに、内周面の形状に沿って柔軟に充填されるのが阻害され、ウェルド、転写不良等の成形不良を発生させてしまう。また、前述されたように、前記転写面に極微小な凹凸が形成されている場合、パターンを樹脂に十分に精度良く転写することができず、転写精度が低くなってしまう。
【0015】
そこで、スキン層が形成される前に転写を終了するために、金型装置11の温度を高くし、樹脂の流動性を高くすることが考えられる。ところが、金型装置11の温度を高くすると、樹脂を冷却するのに必要とされる時間がその分長くなり、成形サイクルが長くなってしまう。また、金型装置11内に温度調節機構を配設し、金型装置11の温度を調節することが考えられるが、その場合、金型装置11のコストが高くなってしまうだけでなく、金型装置11の温度を調節するために大きなエネルギーを消費することになり、導光板のコストも高くなってしまう。
【0016】
さらに、転写精度を高くするために、キャビティ空間C1、C2内の圧力を高くし、スキン層を機械的に押し潰し、塑性変形させる方法があるが、この場合、型締装置が大型化するだけでなく、転写プレート34のパターンが劣化し、転写プレート34の耐久性が低くなってしまう。
【0017】
本発明は、前記従来の金型装置11の問題点を解決して、転写精度を高くすることができ、金型装置のコストを低くすることができ、成形サイクルを短くすることができる樹脂成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのために、本発明の樹脂成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有する。
【0020】
この場合、前記一方の金型と転写プレートとの間に金属ガラスから成る断熱層が配設されるので、成形材料が有する熱エネルギーが一方の金型側に逃げるのを抑制することができる。したがって、成形材料の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0021】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレートの耐久性を向上させることができる。
【0022】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ樹脂成形装置の温度を低く設定することができるので、一方の金型及び転写プレートの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の断熱金型の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第1の手法を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第2の手法を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第1の図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第2の図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における断熱層の形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機、及び樹脂成形装置としての金型装置について説明する。
【0025】
図2は本発明の第1の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。なお、(a)は成形材料としての樹脂30をキャビティ空間C1、C2に充填した状態を示す図、(b)は型締めを行った状態を示す図である。
【0026】
図において、61は成形品、例えば、導光板を成形するための樹脂成形装置としての金型装置、24Aは第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型、24Bは該固定金型24Aに対して進退自在に配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型である。そして、図示されない型締装置において、可動金型24Bが前進させられて型閉じが行われ、可動金型24Bが前記固定金型24Aに当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型24Aと可動金型24Bとの間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型24Bが後退させられ、固定金型24Aから離されて型開きが行われる。
【0027】
また、15は固定金型24Aに形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0028】
そして、前記可動金型24Bは上板21、及び該上板21を受ける下板(受け板)22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型24Bにおける固定金型24Aと対向する面上に断熱層40が形成され、該断熱層40における固定金型24Aと対向する面に転写プレート34が取り付けられる。また、該転写プレート34における固定金型24Aと対向する面に、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。
【0029】
そして、前記下板22に温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置61及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂30を冷却することができる。なお、固定金型24Aにも、温調流路23と同様の温調流路を形成し、該温調流路に水を流すことができる。
【0030】
また、前記金型装置61に対して図示されない射出装置が進退自在に配設され、型締めが行われた状態の金型装置61の前記固定金型24Aに、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出ノズルから樹脂30を射出すると、樹脂30はゲートg1、g2を介してキャビティ空間C1、C2に充填される。
【0031】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂30は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂30に転写される。続いて、型開きを行うと、導光板が完成する。
【0032】
本実施の形態においては、第1の金型として固定金型24A及び第2の金型として可動金型24Bを使用するようになっているが、固定金型を下方に、可動金型を上方に配設し、可動金型をプレス機構によって進退させることができる。その場合、固定金型は固定下型として、可動金型は可動上型として使用される。
【0033】
ところで、本実施の形態においては、前記水の温度を調整することによって、成形を開始するときの金型装置61の温度を、従来の金型装置11の温度より、所定の温度、本実施の形態においては、40〔℃〕程度低く設定するようにしている。
【0034】
そのために、前述されたように、可動金型24Bに断熱層40が形成される。
【0035】
図3は本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す斜視図、図4は本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す拡大図である。
【0036】
前記断熱層40は、断面が正多角形、本実施の形態においては、正六角形の形状を有するハニカム構造を有する。
【0037】
ところで、断熱層として、例えば、高分子材料を転写プレート34と上板21との間に配設した場合、実際の成形時においてヒートサイクルによる収縮によって、断熱層が上板21における転写プレート34と接触する面と擦れ合い、転写プレート34が摩耗してしまう。前記導光板の成形においては、金型装置61に100万ショット以上の成形に対する耐久性が求められる。高分子材料の熱伝導率は、金型装置61を構成している鋼材等の熱伝導率と比べて、2桁程度低く、熱伝導率が低いという点では最適な断熱層といえるが、耐久性の面で問題が残る。
【0038】
また、断熱層として、ジルコニア等のセラミック材料を成膜によって形成する方法が考えられるが、ジルコニアは、鋼材と非常に近似する線膨張係数を有するので、ヒートサイクルによる収縮に起因する擦れ合いの問題が発生する率は、前記高分子材料を使用する場合より低い。しかしながら、ジルコニアの断熱性が低いので、本発明で意図する断熱効果を得ようとする場合、約100〔μm〕以上、かつ、1〔mm〕以下程度の厚さが必要となると考えられる。この場合、実際に断熱層を形成することができても、脆性の高い構造になってしまい、ヒートサイクルによる収縮によって割れが発生したり、大きな射出力、型締め力等が加わって割れが発生したりする。その結果、断熱層の耐久性が低くなってしまう。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、断面が正六角形の形状を有するハニカム構造によって断熱層40を形成するようになっている。
【0040】
ところで、導光板のような光メディアを成形する場合、例えば、12〔cm〕直径の円領域に最大300〔kg/cm2 〕程度の圧力が印加されることがある。また、成形の際に使用される転写プレート34は、通常、ニッケル電鋳を行い、ニッケルを電鋳加工することによって形成される。本実施の形態においても、ニッケル電鋳を行うことによって形成された転写プレート34が使用され、該転写プレート34は、0.3〔mm〕程度の厚さを有し、表面にサブミクロンの大きさの微細な凹凸から成るパターンが形成される。
【0041】
また、前記転写プレート34は、上板21の表面に機械的に、又はエアチャックによって取り付けられるが、ヒートサイクルによる収縮に起因する擦れ合いを軽減するために、上板21の表面にDLC(Diamond Like Carbon)のような高摩耗耐性材料がコーティングされ、DLCの膜が形成される。この場合、膜の表面は研磨不能であるので、一定の荒れを有している。また、数十〔μm〕以上、かつ、100〔μm〕以下の径のボイドが発生することもある。
【0042】
そこで、ボイドの形状が、薄い転写プレート34を介して導光板の表面に転写され、残痕を生じさせることがないように、前記ハニカム構造が設定される。すなわち、ハニカム構造のハニカムピッチPは0.1〔μm〕以上、かつ、100〔μm〕以下、好ましくは、1〔μm〕以上、かつ、10〔μm〕以下の範囲に設定される。この範囲は、断熱層40が、可動金型24Bと転写プレート34との間に配設されることを考慮して設定され、一般的に、金型装置11内に断熱目的で形成されるものと比較すると、はるかに小さくされる。
【0043】
断熱層40のハニカム構造を形成するための材料には金属が使用される。ハニカム構造の壁の厚さ、すなわち、壁厚Dは、0.01〔μm〕以上、かつ、10〔μm〕以下、好ましくは、0.1〔μm〕以上、かつ、5〔μm〕以下の範囲に設定される。これは、例えば、ハニカム構造の空隙部42が、鋼材と比べて熱伝導率がほとんど無視し得る程度に低い空気であると仮定すると、断熱層40として、鋼材の1/10程度の熱伝導率を実現するには、空隙部42の空隙率を90〔%〕にする必要があるためである。また、ハニカム構造の高さ(形成高さ)を表すハニカム高さHは、10〔μm〕以上、かつ、10〔mm〕以下の範囲に設定される。
【0044】
ここで、ハニカムピッチPを、例えば、10〔μm〕であると仮定すると、ハニカム構造の壁厚Dは、1〔μm〕以下のオーダーとなる。十数〔cm〕の大きな面積の領域にわたって、例えば、壁厚Dが1〔μm〕、ハニカムピッチPが10〔μm〕、ハニカム高さHが1〔mm〕程度の微小なハニカム構造を得るためには、面積に対する高さの比が大きい構造、すなわち、「高アスペクト比構造」を形成する上で優位性のある、いわゆるLIGA(Lithographie,Galvanoformung,Abformung)プロセス手法をベースとする製作法を使用するのが好ましい。LIGAプロセス手法自体は、公知のものであるので、詳細な説明は省略するが、基板上にX線感光性を有するレジスト材を厚膜塗布し、Au、Be等を吸収体とするX線マスクを介してシンクロトロン放射光(SR光)による露光(X線露光)を行い、露光部を現像して除去するか、又は逆に遮蔽部を現像して除去するかしてレジスト微細構造体を得るものである。
【0045】
なお、レジスト微細構造体をベースにして電鋳を行い、レプリカを作成すると、射出成形等によってハニカム構造を形成することができる。
【0046】
LIGAプロセス手法を採用する場合、具体的な実施の形態としては、転写プレート34における可動金型24Bと対向する面にハニカム構を形成する手法、及び可動金型24Bにおける転写プレート34と対向する面にハニカム構を形成する手法が考えられる。
【0047】
次に、ハニカム構造を形成する手法について説明する。
【0048】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第1の手法を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第2の手法を示す図である。
【0049】
転写プレート34における可動金型24Bと対向する面にハニカム構造を形成するために、図5に示されるように、(ニッケル製の)転写プレート34を基板とし、その背面(可動金型24Bと対向する面)にX線感光性のレジスト材44を厚膜塗布し(又はフィルム貼付し)、所定の厚さになるまでレジスト材44の厚さを研磨等で調節し、X線マスク46を介してシンクロトロン放射光(SR光)で露光し、現像することによって、壁厚Dに対応する1〔μm〕の構造幅で、ハニカムピッチPに対応する10〔μm〕周期のハニカム構造を有する反転構造体48を形成する(図5(A)、(B))。その後、ニッケル電鋳を行い、ハニカム構造を成長させるようにすればよい(図5(C))。このとき、転写プレート34の転写面(図5において下側面)は、レジスト等の適切な材料で保護するようにする。ニッケル電鋳が行われた後、研磨等でハニカム高さを調節すると、転写プレート34に直付けの断熱層40を形成することができる(図5(D))。
【0050】
なお、通常、1回のX線露光で感光されるレジスト材44の厚さは数百〔μm〕程度である。したがって、更に厚い断熱層40を形成する場合は、形成されたハニカム構造上に更にハニカム構造を積層し、付加的な層を形成する必要がある。この必要性に対しては、例えば、多重露光LIGAプロセス手法で対応することができる。すなわち、図6に示されるように、1回目の露光が終了した後、すぐには現像せず、更に1層目のレジスト材44の上に2層目のレジスト材50を形成するようにすればよい。なお、ハニカム構造のパターン、すなわち、ハニカムパターンが、転写プレート34を介して導光板に転写される恐れは、1層目のハニカム構造によって回避されるので、2層目のハニカム構造のハニカムピッチPを、1層目のハニカム構造のハニカムピッチP(例えば、10〔μm〕)より大きくすることができる。同様の多重露光を繰り返し、必要な微細構造のレジスト材の厚さが得られると、その後、一括して現像が行われる。このようにして、多重化されたハニカム構造の反転構造体52を形成することができる。該反転構造体52に対してニッケル電鋳を行い、最後にレジスト材44、50を除去すると、必要な厚さのニッケル製のハニカム構造を有する断熱層40を形成することができる。
【0051】
一方、可動金型24Bにおける転写プレート34と対向する面にハニカム構造を形成する場合も、基本的には、前記ニッケル電鋳によるハニカム構造と同じ手法を使用することができるが、鋼材自体を電鋳によって成長させることはできないので、ニッケル電鋳等の電鋳に代えて金属粉末成形技術を使用するのが好ましい。この場合、露光によって反転構造体48、52を形成する工程までは同様であるが、その後の工程では、電鋳に代えて金属粉末焼結成形技術が使用される。この場合、金型装置61と同じ材質(鋼材)の金属粉を使用し、熱膨張係数差によって断熱層40と可動金型24Bとの間で熱応力が発生するのを抑制する。
【0052】
なお、焼結時には、組成に応じて体積が数〔%〕以上、かつ、10数〔%〕以下の収縮が生じるので、キャビティ空間C1、C2の表面部分を一体化した金型部品として焼結を行い、その後、後工程で、金型装置61の一部を構成するチェイスとして嵌め込み、一体化することができるように切削を行う必要がある。
【0053】
次に、前記構成の金型装置61の作用について説明する。
【0054】
図7は本発明の第1の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。なお、図において、横軸に時間を、縦軸に金型装置61の温度を採ってある。
【0055】
図において、L1は従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの可動金型13の温度を示す線、L2は従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線、L3は本発明の金型装置61を使用して導光板を成形したときの可動金型24Bの温度を示す線、L4は本発明の金型装置61を使用して導光板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線である。
【0056】
本実施の形態においては、金型装置61を使用して導光板を成形したときに、成形を開始したときの可動金型24Bの温度が、従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの可動金型13の温度より、ほぼ40〔℃〕だけ低く設定される。これは、成形しようとする樹脂30のガラス転移温度より50〔℃〕以上低い値である。なお、この場合、溶融させられた樹脂30の温度は290〔℃〕である。
【0057】
まず、従来の金型装置11において、樹脂30が金型装置11のキャビティ空間C1、C2内に充填されると、樹脂30の温度は290〔℃〕であるので、可動金型13及び転写プレート34の温度は急激に上昇するが、可動金型13によって多くの熱が奪われるので、転写が完了する時刻(タイミング)tp1における転写プレート34の温度T1は、120〔℃〕程度になる。
【0058】
また、このときの可動金型13の温度T2は、130〔℃〕をわずかに超えた程度になる。
【0059】
したがって、樹脂30は、転写が完了する時刻tp1までに290〔℃〕から急激に冷却されることになり、スキン層が形成されやすく、また、形成されたスキン層が成長しやすい。
【0060】
ところで、従来の金型装置11においては、導光板にサブミクロンの大きさの凹凸が形成される。そして、該凹凸は、開口部の大きさに対して半分程度の深さを有する必要があるが、該深さは、スキン層の厚さと比較したとき、極めて小さい。
【0061】
したがって、従来の金型装置11を使用して導光板を成形すると、既に固化状態に移行した樹脂30を、型締装置による大きな型締力によって押し潰して塑性変形させ、転写プレート34の凹凸に沿わせることになる。その結果、転写プレート34の転写面のパターンが劣化しやすくなる。
【0062】
転写は、1.2秒程度が経過した後の時刻tp1で完了する。その後、転写プレート34及び可動金型13の各温度は、いずれも、ほぼ平行な下降曲線に沿って徐々に低下する。ところが、金型装置11の温度が高めに設定されているので、その下降の程度は非常に緩やかである。したがって、型開きが行われる時刻tp2までに12秒以上、導光板が取り出される時刻tp3までに16秒近くの時間が既に経過しており、最終的に金型装置11の型閉じが行われて、次の成形に入る準備ができる時刻tp4までに、17.2秒以上の時間が経過してしまっている。
【0063】
これに対して、本発明の金型装置61においては、成形を開始するときの金型装置61の温度が従来の金型装置11の温度より40〔℃〕近く低く設定されているにもかかわらず、断熱層40の存在により、樹脂30の有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのが抑制されるので、転写プレート34において、転写完了時刻t1(≒tp1)において、従来の金型装置11と同等程度(120〔℃〕程度)にまで温度が上昇している。転写プレート34の温度の立上がりは従来の金型装置11を使用したときの転写プレート34の温度の立上りよりやや緩やかであるが、可動金型24Bの温度は、160〔℃〕近くにまで一気に上昇することが分かる。
【0064】
転写は、従来の金型装置11を使用したときと同様に1.2秒程度が経過した後の時刻t1(≒tp1)で完了するが、本発明の金型装置61を使用した場合、転写が完了するまでの、充填の初期の樹脂30の温度が高めに維持され、その流動性が確保される。したがって、従来の金型装置11を使用した場合より、スキン層の成長が抑制され、固化の程度が低くされる。その結果、樹脂30は容易に転写プレート34の転写面の凹凸に沿うことができる。
【0065】
したがって、本発明においては、転写面の付近の樹脂、すなわち、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができ、型締装置を含む射出成形機の全体を小型化することができるだけでなく、コストを低くすることができる。また、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。そして、従来の金型装置11を使用したときと同等の型締力を発生させた場合、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。
【0066】
なお、転写が完了した後、転写プレート34及び可動金型24Bの温度は、いずれも低下していくが、金型装置61の温度が低めに設定されているので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度が高くなる。
【0067】
したがって、型開きが行われる時刻t2までに6.4秒程度、導光板が取り出される時刻t3までに9.2秒程度しか時間が経過しておらず、最終的に型閉じが行われ、次の成形に入る準備ができる時刻t4までに、わずかに9.6秒以上、かつ、11.6秒以下の程度の時間しか経過しない。また、型開きが行われる時刻t2での転写プレート34の温度は、従来の金型装置11が使用される場合の時刻tp2での転写プレート34の温度より34〔℃〕も低くなっていることが分かる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、可動金型24Bと転写プレート34との間に断熱層40が配設されるので、樹脂30が有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのを抑制することができる。したがって、樹脂30の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0069】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレート34の耐久性を向上させることができる。
【0070】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ金型装置61の温度を低く設定することができるので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【0071】
次に、ディスク基板を成形するための本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0072】
図8は本発明の第2の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。なお、(a)は成形材料としての樹脂30をキャビティ空間Cに充填した状態を示す図、(b)は型締めを行った状態を示す図である。
【0073】
図において、20は成形品、例えば、ディスク基板を成形するための樹脂成形装置としての金型装置、24Aは第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型(固定下型)、24Bは該固定金型24Aに対して進退自在に配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型(可動上型)である。そして、図示されない型締装置(プレス機構)において、可動金型24Bが前進させられて型閉じが行われ、可動金型24Bが前記固定金型24Aに当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型24Aと可動金型24Bとの間に円形の形状を有するキャビティ空間Cが形成され、可動金型24Bが後退させられ、固定金型24Aから離されて型開きが行われる。
【0074】
また、15は固定金型24Aに形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間Cとが連通させられる。そして、62は可動金型24Bに対して進退自在に配設されたカットパンチであり、該カットパンチ62を前進させることによって、キャビティ空間Cに充填された樹脂30に対して穴開加工を施すことができる。
【0075】
そして、前記キャビティ空間C内の固定金型24Aにおける可動金型24Bと対向する面上に、第1の実施の形態と同様に、ハニカム構造を有する断熱層40が形成され、該断熱層40における可動金型24Bと対向する面に転写プレート34が取り付けられる。本実施の形態において、転写プレート34としてスタンパが使用される。また、前記転写プレート34に、可動金型24Bと対向させて、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。
【0076】
そして、前記固定金型24A及び可動金型24Bに温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置20及びキャビティ空間C内の樹脂30を冷却することができる。
【0077】
また、キャビティ空間C内の樹脂30は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂30に転写される。続いて、カットパンチ62を前進させ、穴開加工を行った後、型開きを行うと、ディスク基板を成形することができる。
【0078】
本実施の形態においては、ディスク基板が成形されるようになっているので、キャビティ空間Cに充填された樹脂は、薄いディスク基板の形状に広げられる。したがって、転写後は、温度が低く設定された金型装置20によって急速に熱エネルギーが奪われるので、ディスク基板を良好に冷却することができる。その結果、成形サイクルを短くすることができる。
【0079】
なお、前記断熱層40における断熱効果をわずかに低くし、成形を開始するときの金型装置20の温度をわずかに高くすると、転写プレート34及び可動金型24Bの特性を中間の特性にすることができる。
【0080】
次に、前記構成の金型装置20の作用について説明する。
【0081】
図9は本発明の第2の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。なお、図において、横軸に時間を、縦軸に金型装置20の温度を採ってある。
【0082】
図において、L1は従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの可動金型の温度を示す線、L2は従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの転写プレート(スタンパ)の温度を示す線、L3は本発明の金型装置20を使用してディスク基板を成形したときの可動金型24Bの温度を示す線、L4は本発明の金型装置20を使用してディスク基板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線である。
【0083】
本実施の形態においては、金型装置20を使用してディスク基板を成形したときに、成形を開始したときの可動金型24Bの温度が、従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの可動金型の温度より、ほぼ40〔℃〕だけ低く設定される。これは、成形しようとする樹脂30のガラス転移温度より50〔℃〕以上低い値である。なお、この場合、溶融させられた樹脂30の温度は290〔℃〕である。
【0084】
まず、従来のディスク成形用の金型装置において、樹脂が金型装置のキャビティ空間内に充填されると、樹脂の温度は290〔℃〕であるので、可動金型及び転写プレートの温度は急激に上昇するが、可動金型によって多くの熱が奪われるので、転写が完了する時刻(タイミング)tp1における転写プレートの温度T1は、120〔℃〕程度になる。
【0085】
また、このときの可動金型の温度T2は、130〔℃〕をわずかに超えた程度になる。
【0086】
したがって、樹脂は、転写が完了する時刻tp1までに290〔℃〕から急激に冷却されることになり、スキン層が形成されやすく、また、形成されたスキン層が成長しやすい。
【0087】
ところで、従来のディスク成形用の金型装置においては、ディスク基板にサブミクロンの大きさの凹凸が形成される。そして、該凹凸は、開口部の大きさに対して半分程度の深さを有する必要があるが、該深さは、スキン層の厚さと比較したとき、極めて小さい。
【0088】
したがって、従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形すると、既に固化状態に移行した樹脂を、型締装置による大きな型締力によって押し潰して塑性変形させ、転写プレートの凹凸に沿わせることになる。その結果、転写プレートの転写面のパターンが劣化しやすくなる。
【0089】
転写は、0.3秒程度が経過した後の時刻tp1で完了する。その後、転写プレート及び可動金型の各温度は、いずれも、ほぼ平行な下降曲線に沿って徐々に低下する。ところが、従来のディスク成形用の金型装置の温度が高めに設定されているので、その下降の程度は非常に緩やかである。したがって、型開きが行われる時刻tp2までに3秒以上、ディスク基板が取り出される時刻tp3までに4秒近くの時間が既に経過しており、最終的に従来のディスク成形用の金型装置の型閉じが行われて、次の成形に入る準備ができる時刻tp4までに、4.3秒以上の時間が経過してしまっている。
【0090】
これに対して、本発明の金型装置20においては、成形を開始するときの金型装置20の温度が従来のディスク成形用の金型装置の温度より40〔℃〕近く低く設定されているにもかかわらず、断熱層40の存在により、樹脂30の有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのが抑制されるので、転写プレート34において、転写完了時刻t1(≒tp1)において、従来のディスク成形用の金型装置と同等程度(120〔℃〕程度)にまで温度が上昇している。転写プレート34の温度の立上がりは従来のディスク成形用の金型装置を使用したときの転写プレート34の温度の立上りよりやや緩やかであるが、可動金型24Bの温度は、160〔℃〕近くにまで一気に上昇することが分かる。
【0091】
転写は、従来のディスク成形用の金型装置を使用したときと同様に0.3秒程度が経過した後の時刻t1(≒tp1)で完了するが、本発明の金型装置20を使用した場合、転写が完了するまでの、充填の初期の樹脂30の温度が高めに維持され、その流動性が確保される。したがって、従来のディスク成形用の金型装置を使用した場合より、スキン層の成長が抑制され、固化の程度が低くされる。その結果、樹脂30は容易に転写プレート34の転写面の凹凸に沿うことができる。
【0092】
したがって、本発明においては、転写面の付近の樹脂、すなわち、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができ、型締装置を含む射出成形機の全体を小型化することができるだけでなく、コストを低くすることができる。また、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。そして、従来のディスク成形用の金型装置を使用したときと同等の型締力を発生させた場合、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。
【0093】
なお、転写が完了した後、転写プレート34及び可動金型24Bの温度は、いずれも低下していくが、金型装置20の温度が低めに設定されているので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度が高くなる。
【0094】
したがって、型開きが行われる時刻t2までに1.6秒程度、ディスク基板が取り出される時刻t3までに2.3秒程度しか時間が経過しておらず、最終的に型閉じが行われ、次の成形に入る準備ができる時刻t4までに、わずかに2.4秒以上、かつ、2.9秒以下の程度の時間しか経過しない。また、型開きが行われる時刻t2での転写プレート34の温度は、従来のディスク成形用の金型装置が使用される場合の時刻tp2での転写プレート34の温度より34〔℃〕も低くなっていることが分かる。
【0095】
このように、本実施の形態においては、可動金型24Bと転写プレート34との間に断熱層40が配設されるので、樹脂30が有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのを抑制することができる。したがって、樹脂30の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0096】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレート34の耐久性を向上させることができる。
【0097】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ金型装置20の温度を低く設定することができるので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【0098】
ところで、前記第1、第2の実施の形態においては、ハニカム構造を転写プレート34側から形成したり、固定金型24A側又は可動金型24B側から形成したりするようになっているが、他の方法でハニカム構造を形成することができる。
【0099】
そこで、他の方法でハニカム構造を形成するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0100】
図10は本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第1の図、図11は本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第2の図である。
【0101】
例えば、金属射出成形において、10〔μm〕程度幅の深溝に金属粉を含むグリーン体を流し込むのは困難を伴うことがある。このような場合には、例えば、図10及び11に示されるように、あらかじめ金属射出成形によって形成した金属粉を含む薄肉板70を準備しておき、該薄肉板70に対してハニカムの反転構造(針状の突起を有する構造)を備えた(断熱層40を形成するための)逆ハニカム転写プレート72を押し当て、薄肉板70及び逆ハニカム転写プレート72を図示されないプレスで挟み込むと、前記ハニカムの反転構造を薄肉板70側に転写することができる。続いて、前記逆ハニカム転写プレート72を薄肉板70から分離すると、図11に示されるようなハニカム構造が転写された反転構造体から成る薄肉板70Aを得ることができる。なお、該薄肉板70Aを断熱層として転写プレート34と固定金型24A又は可動金型24Bとの間に配設することができる。
【0102】
次に、更に他の方法でハニカム構造を形成するようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0103】
図12は本発明の第4の実施の形態における断熱層の形成方法を示す図である。なお、(a)はハニカム構造が転写される前の状態を示す図、(b)はハニカム構造が転写された後の状態を示す図である。
【0104】
この場合、高い流動性及び耐摩耗性を有するアモルファス金属(いわゆる「金属ガラス」といわれる。)を使用するようになっている。図12(a)に示されるように、加熱体としての加熱コイル80を使用してスリーブ82内で加熱された型鏡面板84上にアモルファス金属86を載置し、ハニカムの反転構造を有する(断熱層を形成するための)逆ハニカム転写プレート88を前記アモルファス金属86に押し付けると、図12(b)に示されるように、プレス成形が行われ、前記ハニカムの反転構造をアモルファス金属86側に転写することができる。続いて、前記逆ハニカム転写プレート88をアモルファス金属86から分離させると、ハニカム構造が転写された反転構造体から成るアモルファス金属層86Aを得ることができる。該アモルファス金属層86Aが断熱層として形成された型鏡面板84を、金型装置20の一部を構成するチェイスとして使用し、転写プレート34と固定金型24A又は可動金型24Bとの間に配設することができる。
【0105】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0106】
20、61 金型装置
24A 固定金型
24B 可動金型
34 転写プレート
40 断熱層
C、C1、C2 キャビティ空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂が、金型装置内のキャビティ空間に充填され、該キャビティ空間内において冷却され、固化させられて成形品が成形されるようになっている。
【0003】
前記射出成形機は、樹脂成形装置としての金型装置、型締装置及び射出装置を有し、該射出装置は、樹脂を加熱して溶融させる加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられ、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリュー等を備える。そして、前記金型装置は固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置によって可動金型を進退させることにより、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締めに伴って、前記固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0004】
そして、計量工程において、前記スクリューが回転させられると、加熱シリンダ内に供給された樹脂が溶融させられてスクリューの前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、金型装置の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、該スクリューの前方に蓄えられた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間に充填される。次に、冷却工程において、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され固化される。続いて、型開きが行われ、前記成形品が取り出される。
【0005】
図1は従来の金型装置の断面図である。
【0006】
図において、11は成形品、例えば、導光板を成形するための金型装置、12は固定金型、13は該固定金型12に対して進退自在に配設された可動金型である。そして、図示されない型締装置において、可動金型13が前進させられて型閉じが行われ、可動金型13が前記固定金型12に当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型12と可動金型13との間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型13が後退させられ、固定金型12から離されて型開きが行われる。
【0007】
また、15は固定金型12に形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0008】
そして、前記可動金型13は上板21、及び該上板21を受ける下板22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型13における固定金型12と対向する面には、転写プレート34が取り付けられ、該転写プレート34に、固定金型12と対向させて、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。そして、前記下板22内に温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体を流すことによって金型装置11及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂を冷却することができる。
【0009】
また、前記金型装置11に対して図示されない射出装置が進退自在に配設され、型締めが行われた状態の金型装置11の前記固定金型12に、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出ノズルから樹脂を射出すると、樹脂はゲートg1、g2を介してキャビティ空間C1、C2に充填される。
【0010】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記温調媒体によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂に転写される。続いて、型開きを行うと、導光板が完成する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−249538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の金型装置11においては、前記転写面に極微小な凹凸が形成されている場合、パターンを樹脂に十分に精度良く転写することができず、転写精度が低くなってしまうことがある。
【0013】
これは、金型装置11の温度が樹脂のガラス転移温度より低くなるような金型装置11を使用した場合に、溶融した樹脂がキャビティ空間C1、C2内に流れ込み、キャビティ空間C1、C2の内周面に接触したときに、一瞬にして冷却され、樹脂の表面に表面固化層、すなわち、スキン層が形成されたためであると考えられている。
【0014】
該スキン層は、導光板の成形条件、樹脂の種類等によって形成される状態は異なるが、一般的に、形成される時間、すなわち、成長時間は0.1秒以下のオーダーであり、スキン層の厚さは数十〔μm〕程度といわれている。スキン層が形成されると、樹脂がキャビティ空間C1、C2の内周面と接触したときに、内周面の形状に沿って柔軟に充填されるのが阻害され、ウェルド、転写不良等の成形不良を発生させてしまう。また、前述されたように、前記転写面に極微小な凹凸が形成されている場合、パターンを樹脂に十分に精度良く転写することができず、転写精度が低くなってしまう。
【0015】
そこで、スキン層が形成される前に転写を終了するために、金型装置11の温度を高くし、樹脂の流動性を高くすることが考えられる。ところが、金型装置11の温度を高くすると、樹脂を冷却するのに必要とされる時間がその分長くなり、成形サイクルが長くなってしまう。また、金型装置11内に温度調節機構を配設し、金型装置11の温度を調節することが考えられるが、その場合、金型装置11のコストが高くなってしまうだけでなく、金型装置11の温度を調節するために大きなエネルギーを消費することになり、導光板のコストも高くなってしまう。
【0016】
さらに、転写精度を高くするために、キャビティ空間C1、C2内の圧力を高くし、スキン層を機械的に押し潰し、塑性変形させる方法があるが、この場合、型締装置が大型化するだけでなく、転写プレート34のパターンが劣化し、転写プレート34の耐久性が低くなってしまう。
【0017】
本発明は、前記従来の金型装置11の問題点を解決して、転写精度を高くすることができ、金型装置のコストを低くすることができ、成形サイクルを短くすることができる樹脂成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのために、本発明の樹脂成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂成形装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有する。
【0020】
この場合、前記一方の金型と転写プレートとの間に金属ガラスから成る断熱層が配設されるので、成形材料が有する熱エネルギーが一方の金型側に逃げるのを抑制することができる。したがって、成形材料の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0021】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレートの耐久性を向上させることができる。
【0022】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ樹脂成形装置の温度を低く設定することができるので、一方の金型及び転写プレートの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の断熱金型の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第1の手法を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第2の手法を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第1の図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第2の図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における断熱層の形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機、及び樹脂成形装置としての金型装置について説明する。
【0025】
図2は本発明の第1の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。なお、(a)は成形材料としての樹脂30をキャビティ空間C1、C2に充填した状態を示す図、(b)は型締めを行った状態を示す図である。
【0026】
図において、61は成形品、例えば、導光板を成形するための樹脂成形装置としての金型装置、24Aは第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型、24Bは該固定金型24Aに対して進退自在に配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型である。そして、図示されない型締装置において、可動金型24Bが前進させられて型閉じが行われ、可動金型24Bが前記固定金型24Aに当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型24Aと可動金型24Bとの間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型24Bが後退させられ、固定金型24Aから離されて型開きが行われる。
【0027】
また、15は固定金型24Aに形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0028】
そして、前記可動金型24Bは上板21、及び該上板21を受ける下板(受け板)22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型24Bにおける固定金型24Aと対向する面上に断熱層40が形成され、該断熱層40における固定金型24Aと対向する面に転写プレート34が取り付けられる。また、該転写プレート34における固定金型24Aと対向する面に、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。
【0029】
そして、前記下板22に温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置61及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂30を冷却することができる。なお、固定金型24Aにも、温調流路23と同様の温調流路を形成し、該温調流路に水を流すことができる。
【0030】
また、前記金型装置61に対して図示されない射出装置が進退自在に配設され、型締めが行われた状態の金型装置61の前記固定金型24Aに、前記射出装置の射出ノズルを押し当て、射出ノズルから樹脂30を射出すると、樹脂30はゲートg1、g2を介してキャビティ空間C1、C2に充填される。
【0031】
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂30は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂30に転写される。続いて、型開きを行うと、導光板が完成する。
【0032】
本実施の形態においては、第1の金型として固定金型24A及び第2の金型として可動金型24Bを使用するようになっているが、固定金型を下方に、可動金型を上方に配設し、可動金型をプレス機構によって進退させることができる。その場合、固定金型は固定下型として、可動金型は可動上型として使用される。
【0033】
ところで、本実施の形態においては、前記水の温度を調整することによって、成形を開始するときの金型装置61の温度を、従来の金型装置11の温度より、所定の温度、本実施の形態においては、40〔℃〕程度低く設定するようにしている。
【0034】
そのために、前述されたように、可動金型24Bに断熱層40が形成される。
【0035】
図3は本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す斜視図、図4は本発明の第1の実施の形態における断熱層の要部を示す拡大図である。
【0036】
前記断熱層40は、断面が正多角形、本実施の形態においては、正六角形の形状を有するハニカム構造を有する。
【0037】
ところで、断熱層として、例えば、高分子材料を転写プレート34と上板21との間に配設した場合、実際の成形時においてヒートサイクルによる収縮によって、断熱層が上板21における転写プレート34と接触する面と擦れ合い、転写プレート34が摩耗してしまう。前記導光板の成形においては、金型装置61に100万ショット以上の成形に対する耐久性が求められる。高分子材料の熱伝導率は、金型装置61を構成している鋼材等の熱伝導率と比べて、2桁程度低く、熱伝導率が低いという点では最適な断熱層といえるが、耐久性の面で問題が残る。
【0038】
また、断熱層として、ジルコニア等のセラミック材料を成膜によって形成する方法が考えられるが、ジルコニアは、鋼材と非常に近似する線膨張係数を有するので、ヒートサイクルによる収縮に起因する擦れ合いの問題が発生する率は、前記高分子材料を使用する場合より低い。しかしながら、ジルコニアの断熱性が低いので、本発明で意図する断熱効果を得ようとする場合、約100〔μm〕以上、かつ、1〔mm〕以下程度の厚さが必要となると考えられる。この場合、実際に断熱層を形成することができても、脆性の高い構造になってしまい、ヒートサイクルによる収縮によって割れが発生したり、大きな射出力、型締め力等が加わって割れが発生したりする。その結果、断熱層の耐久性が低くなってしまう。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、断面が正六角形の形状を有するハニカム構造によって断熱層40を形成するようになっている。
【0040】
ところで、導光板のような光メディアを成形する場合、例えば、12〔cm〕直径の円領域に最大300〔kg/cm2 〕程度の圧力が印加されることがある。また、成形の際に使用される転写プレート34は、通常、ニッケル電鋳を行い、ニッケルを電鋳加工することによって形成される。本実施の形態においても、ニッケル電鋳を行うことによって形成された転写プレート34が使用され、該転写プレート34は、0.3〔mm〕程度の厚さを有し、表面にサブミクロンの大きさの微細な凹凸から成るパターンが形成される。
【0041】
また、前記転写プレート34は、上板21の表面に機械的に、又はエアチャックによって取り付けられるが、ヒートサイクルによる収縮に起因する擦れ合いを軽減するために、上板21の表面にDLC(Diamond Like Carbon)のような高摩耗耐性材料がコーティングされ、DLCの膜が形成される。この場合、膜の表面は研磨不能であるので、一定の荒れを有している。また、数十〔μm〕以上、かつ、100〔μm〕以下の径のボイドが発生することもある。
【0042】
そこで、ボイドの形状が、薄い転写プレート34を介して導光板の表面に転写され、残痕を生じさせることがないように、前記ハニカム構造が設定される。すなわち、ハニカム構造のハニカムピッチPは0.1〔μm〕以上、かつ、100〔μm〕以下、好ましくは、1〔μm〕以上、かつ、10〔μm〕以下の範囲に設定される。この範囲は、断熱層40が、可動金型24Bと転写プレート34との間に配設されることを考慮して設定され、一般的に、金型装置11内に断熱目的で形成されるものと比較すると、はるかに小さくされる。
【0043】
断熱層40のハニカム構造を形成するための材料には金属が使用される。ハニカム構造の壁の厚さ、すなわち、壁厚Dは、0.01〔μm〕以上、かつ、10〔μm〕以下、好ましくは、0.1〔μm〕以上、かつ、5〔μm〕以下の範囲に設定される。これは、例えば、ハニカム構造の空隙部42が、鋼材と比べて熱伝導率がほとんど無視し得る程度に低い空気であると仮定すると、断熱層40として、鋼材の1/10程度の熱伝導率を実現するには、空隙部42の空隙率を90〔%〕にする必要があるためである。また、ハニカム構造の高さ(形成高さ)を表すハニカム高さHは、10〔μm〕以上、かつ、10〔mm〕以下の範囲に設定される。
【0044】
ここで、ハニカムピッチPを、例えば、10〔μm〕であると仮定すると、ハニカム構造の壁厚Dは、1〔μm〕以下のオーダーとなる。十数〔cm〕の大きな面積の領域にわたって、例えば、壁厚Dが1〔μm〕、ハニカムピッチPが10〔μm〕、ハニカム高さHが1〔mm〕程度の微小なハニカム構造を得るためには、面積に対する高さの比が大きい構造、すなわち、「高アスペクト比構造」を形成する上で優位性のある、いわゆるLIGA(Lithographie,Galvanoformung,Abformung)プロセス手法をベースとする製作法を使用するのが好ましい。LIGAプロセス手法自体は、公知のものであるので、詳細な説明は省略するが、基板上にX線感光性を有するレジスト材を厚膜塗布し、Au、Be等を吸収体とするX線マスクを介してシンクロトロン放射光(SR光)による露光(X線露光)を行い、露光部を現像して除去するか、又は逆に遮蔽部を現像して除去するかしてレジスト微細構造体を得るものである。
【0045】
なお、レジスト微細構造体をベースにして電鋳を行い、レプリカを作成すると、射出成形等によってハニカム構造を形成することができる。
【0046】
LIGAプロセス手法を採用する場合、具体的な実施の形態としては、転写プレート34における可動金型24Bと対向する面にハニカム構を形成する手法、及び可動金型24Bにおける転写プレート34と対向する面にハニカム構を形成する手法が考えられる。
【0047】
次に、ハニカム構造を形成する手法について説明する。
【0048】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第1の手法を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるハニカム構造を形成する第2の手法を示す図である。
【0049】
転写プレート34における可動金型24Bと対向する面にハニカム構造を形成するために、図5に示されるように、(ニッケル製の)転写プレート34を基板とし、その背面(可動金型24Bと対向する面)にX線感光性のレジスト材44を厚膜塗布し(又はフィルム貼付し)、所定の厚さになるまでレジスト材44の厚さを研磨等で調節し、X線マスク46を介してシンクロトロン放射光(SR光)で露光し、現像することによって、壁厚Dに対応する1〔μm〕の構造幅で、ハニカムピッチPに対応する10〔μm〕周期のハニカム構造を有する反転構造体48を形成する(図5(A)、(B))。その後、ニッケル電鋳を行い、ハニカム構造を成長させるようにすればよい(図5(C))。このとき、転写プレート34の転写面(図5において下側面)は、レジスト等の適切な材料で保護するようにする。ニッケル電鋳が行われた後、研磨等でハニカム高さを調節すると、転写プレート34に直付けの断熱層40を形成することができる(図5(D))。
【0050】
なお、通常、1回のX線露光で感光されるレジスト材44の厚さは数百〔μm〕程度である。したがって、更に厚い断熱層40を形成する場合は、形成されたハニカム構造上に更にハニカム構造を積層し、付加的な層を形成する必要がある。この必要性に対しては、例えば、多重露光LIGAプロセス手法で対応することができる。すなわち、図6に示されるように、1回目の露光が終了した後、すぐには現像せず、更に1層目のレジスト材44の上に2層目のレジスト材50を形成するようにすればよい。なお、ハニカム構造のパターン、すなわち、ハニカムパターンが、転写プレート34を介して導光板に転写される恐れは、1層目のハニカム構造によって回避されるので、2層目のハニカム構造のハニカムピッチPを、1層目のハニカム構造のハニカムピッチP(例えば、10〔μm〕)より大きくすることができる。同様の多重露光を繰り返し、必要な微細構造のレジスト材の厚さが得られると、その後、一括して現像が行われる。このようにして、多重化されたハニカム構造の反転構造体52を形成することができる。該反転構造体52に対してニッケル電鋳を行い、最後にレジスト材44、50を除去すると、必要な厚さのニッケル製のハニカム構造を有する断熱層40を形成することができる。
【0051】
一方、可動金型24Bにおける転写プレート34と対向する面にハニカム構造を形成する場合も、基本的には、前記ニッケル電鋳によるハニカム構造と同じ手法を使用することができるが、鋼材自体を電鋳によって成長させることはできないので、ニッケル電鋳等の電鋳に代えて金属粉末成形技術を使用するのが好ましい。この場合、露光によって反転構造体48、52を形成する工程までは同様であるが、その後の工程では、電鋳に代えて金属粉末焼結成形技術が使用される。この場合、金型装置61と同じ材質(鋼材)の金属粉を使用し、熱膨張係数差によって断熱層40と可動金型24Bとの間で熱応力が発生するのを抑制する。
【0052】
なお、焼結時には、組成に応じて体積が数〔%〕以上、かつ、10数〔%〕以下の収縮が生じるので、キャビティ空間C1、C2の表面部分を一体化した金型部品として焼結を行い、その後、後工程で、金型装置61の一部を構成するチェイスとして嵌め込み、一体化することができるように切削を行う必要がある。
【0053】
次に、前記構成の金型装置61の作用について説明する。
【0054】
図7は本発明の第1の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。なお、図において、横軸に時間を、縦軸に金型装置61の温度を採ってある。
【0055】
図において、L1は従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの可動金型13の温度を示す線、L2は従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線、L3は本発明の金型装置61を使用して導光板を成形したときの可動金型24Bの温度を示す線、L4は本発明の金型装置61を使用して導光板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線である。
【0056】
本実施の形態においては、金型装置61を使用して導光板を成形したときに、成形を開始したときの可動金型24Bの温度が、従来の金型装置11を使用して導光板を成形したときの可動金型13の温度より、ほぼ40〔℃〕だけ低く設定される。これは、成形しようとする樹脂30のガラス転移温度より50〔℃〕以上低い値である。なお、この場合、溶融させられた樹脂30の温度は290〔℃〕である。
【0057】
まず、従来の金型装置11において、樹脂30が金型装置11のキャビティ空間C1、C2内に充填されると、樹脂30の温度は290〔℃〕であるので、可動金型13及び転写プレート34の温度は急激に上昇するが、可動金型13によって多くの熱が奪われるので、転写が完了する時刻(タイミング)tp1における転写プレート34の温度T1は、120〔℃〕程度になる。
【0058】
また、このときの可動金型13の温度T2は、130〔℃〕をわずかに超えた程度になる。
【0059】
したがって、樹脂30は、転写が完了する時刻tp1までに290〔℃〕から急激に冷却されることになり、スキン層が形成されやすく、また、形成されたスキン層が成長しやすい。
【0060】
ところで、従来の金型装置11においては、導光板にサブミクロンの大きさの凹凸が形成される。そして、該凹凸は、開口部の大きさに対して半分程度の深さを有する必要があるが、該深さは、スキン層の厚さと比較したとき、極めて小さい。
【0061】
したがって、従来の金型装置11を使用して導光板を成形すると、既に固化状態に移行した樹脂30を、型締装置による大きな型締力によって押し潰して塑性変形させ、転写プレート34の凹凸に沿わせることになる。その結果、転写プレート34の転写面のパターンが劣化しやすくなる。
【0062】
転写は、1.2秒程度が経過した後の時刻tp1で完了する。その後、転写プレート34及び可動金型13の各温度は、いずれも、ほぼ平行な下降曲線に沿って徐々に低下する。ところが、金型装置11の温度が高めに設定されているので、その下降の程度は非常に緩やかである。したがって、型開きが行われる時刻tp2までに12秒以上、導光板が取り出される時刻tp3までに16秒近くの時間が既に経過しており、最終的に金型装置11の型閉じが行われて、次の成形に入る準備ができる時刻tp4までに、17.2秒以上の時間が経過してしまっている。
【0063】
これに対して、本発明の金型装置61においては、成形を開始するときの金型装置61の温度が従来の金型装置11の温度より40〔℃〕近く低く設定されているにもかかわらず、断熱層40の存在により、樹脂30の有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのが抑制されるので、転写プレート34において、転写完了時刻t1(≒tp1)において、従来の金型装置11と同等程度(120〔℃〕程度)にまで温度が上昇している。転写プレート34の温度の立上がりは従来の金型装置11を使用したときの転写プレート34の温度の立上りよりやや緩やかであるが、可動金型24Bの温度は、160〔℃〕近くにまで一気に上昇することが分かる。
【0064】
転写は、従来の金型装置11を使用したときと同様に1.2秒程度が経過した後の時刻t1(≒tp1)で完了するが、本発明の金型装置61を使用した場合、転写が完了するまでの、充填の初期の樹脂30の温度が高めに維持され、その流動性が確保される。したがって、従来の金型装置11を使用した場合より、スキン層の成長が抑制され、固化の程度が低くされる。その結果、樹脂30は容易に転写プレート34の転写面の凹凸に沿うことができる。
【0065】
したがって、本発明においては、転写面の付近の樹脂、すなわち、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができ、型締装置を含む射出成形機の全体を小型化することができるだけでなく、コストを低くすることができる。また、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。そして、従来の金型装置11を使用したときと同等の型締力を発生させた場合、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。
【0066】
なお、転写が完了した後、転写プレート34及び可動金型24Bの温度は、いずれも低下していくが、金型装置61の温度が低めに設定されているので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度が高くなる。
【0067】
したがって、型開きが行われる時刻t2までに6.4秒程度、導光板が取り出される時刻t3までに9.2秒程度しか時間が経過しておらず、最終的に型閉じが行われ、次の成形に入る準備ができる時刻t4までに、わずかに9.6秒以上、かつ、11.6秒以下の程度の時間しか経過しない。また、型開きが行われる時刻t2での転写プレート34の温度は、従来の金型装置11が使用される場合の時刻tp2での転写プレート34の温度より34〔℃〕も低くなっていることが分かる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、可動金型24Bと転写プレート34との間に断熱層40が配設されるので、樹脂30が有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのを抑制することができる。したがって、樹脂30の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0069】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレート34の耐久性を向上させることができる。
【0070】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ金型装置61の温度を低く設定することができるので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【0071】
次に、ディスク基板を成形するための本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0072】
図8は本発明の第2の実施の形態における樹脂成形方法を示す断面図である。なお、(a)は成形材料としての樹脂30をキャビティ空間Cに充填した状態を示す図、(b)は型締めを行った状態を示す図である。
【0073】
図において、20は成形品、例えば、ディスク基板を成形するための樹脂成形装置としての金型装置、24Aは第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型(固定下型)、24Bは該固定金型24Aに対して進退自在に配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型(可動上型)である。そして、図示されない型締装置(プレス機構)において、可動金型24Bが前進させられて型閉じが行われ、可動金型24Bが前記固定金型24Aに当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型24Aと可動金型24Bとの間に円形の形状を有するキャビティ空間Cが形成され、可動金型24Bが後退させられ、固定金型24Aから離されて型開きが行われる。
【0074】
また、15は固定金型24Aに形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間Cとが連通させられる。そして、62は可動金型24Bに対して進退自在に配設されたカットパンチであり、該カットパンチ62を前進させることによって、キャビティ空間Cに充填された樹脂30に対して穴開加工を施すことができる。
【0075】
そして、前記キャビティ空間C内の固定金型24Aにおける可動金型24Bと対向する面上に、第1の実施の形態と同様に、ハニカム構造を有する断熱層40が形成され、該断熱層40における可動金型24Bと対向する面に転写プレート34が取り付けられる。本実施の形態において、転写プレート34としてスタンパが使用される。また、前記転写プレート34に、可動金型24Bと対向させて、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。
【0076】
そして、前記固定金型24A及び可動金型24Bに温調流路23が形成され、該温調流路23に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置20及びキャビティ空間C内の樹脂30を冷却することができる。
【0077】
また、キャビティ空間C内の樹脂30は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート34の転写面のパターンが樹脂30に転写される。続いて、カットパンチ62を前進させ、穴開加工を行った後、型開きを行うと、ディスク基板を成形することができる。
【0078】
本実施の形態においては、ディスク基板が成形されるようになっているので、キャビティ空間Cに充填された樹脂は、薄いディスク基板の形状に広げられる。したがって、転写後は、温度が低く設定された金型装置20によって急速に熱エネルギーが奪われるので、ディスク基板を良好に冷却することができる。その結果、成形サイクルを短くすることができる。
【0079】
なお、前記断熱層40における断熱効果をわずかに低くし、成形を開始するときの金型装置20の温度をわずかに高くすると、転写プレート34及び可動金型24Bの特性を中間の特性にすることができる。
【0080】
次に、前記構成の金型装置20の作用について説明する。
【0081】
図9は本発明の第2の実施の形態における金型装置の特性を示す図である。なお、図において、横軸に時間を、縦軸に金型装置20の温度を採ってある。
【0082】
図において、L1は従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの可動金型の温度を示す線、L2は従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの転写プレート(スタンパ)の温度を示す線、L3は本発明の金型装置20を使用してディスク基板を成形したときの可動金型24Bの温度を示す線、L4は本発明の金型装置20を使用してディスク基板を成形したときの転写プレート34の温度を示す線である。
【0083】
本実施の形態においては、金型装置20を使用してディスク基板を成形したときに、成形を開始したときの可動金型24Bの温度が、従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形したときの可動金型の温度より、ほぼ40〔℃〕だけ低く設定される。これは、成形しようとする樹脂30のガラス転移温度より50〔℃〕以上低い値である。なお、この場合、溶融させられた樹脂30の温度は290〔℃〕である。
【0084】
まず、従来のディスク成形用の金型装置において、樹脂が金型装置のキャビティ空間内に充填されると、樹脂の温度は290〔℃〕であるので、可動金型及び転写プレートの温度は急激に上昇するが、可動金型によって多くの熱が奪われるので、転写が完了する時刻(タイミング)tp1における転写プレートの温度T1は、120〔℃〕程度になる。
【0085】
また、このときの可動金型の温度T2は、130〔℃〕をわずかに超えた程度になる。
【0086】
したがって、樹脂は、転写が完了する時刻tp1までに290〔℃〕から急激に冷却されることになり、スキン層が形成されやすく、また、形成されたスキン層が成長しやすい。
【0087】
ところで、従来のディスク成形用の金型装置においては、ディスク基板にサブミクロンの大きさの凹凸が形成される。そして、該凹凸は、開口部の大きさに対して半分程度の深さを有する必要があるが、該深さは、スキン層の厚さと比較したとき、極めて小さい。
【0088】
したがって、従来のディスク成形用の金型装置を使用してディスク基板を成形すると、既に固化状態に移行した樹脂を、型締装置による大きな型締力によって押し潰して塑性変形させ、転写プレートの凹凸に沿わせることになる。その結果、転写プレートの転写面のパターンが劣化しやすくなる。
【0089】
転写は、0.3秒程度が経過した後の時刻tp1で完了する。その後、転写プレート及び可動金型の各温度は、いずれも、ほぼ平行な下降曲線に沿って徐々に低下する。ところが、従来のディスク成形用の金型装置の温度が高めに設定されているので、その下降の程度は非常に緩やかである。したがって、型開きが行われる時刻tp2までに3秒以上、ディスク基板が取り出される時刻tp3までに4秒近くの時間が既に経過しており、最終的に従来のディスク成形用の金型装置の型閉じが行われて、次の成形に入る準備ができる時刻tp4までに、4.3秒以上の時間が経過してしまっている。
【0090】
これに対して、本発明の金型装置20においては、成形を開始するときの金型装置20の温度が従来のディスク成形用の金型装置の温度より40〔℃〕近く低く設定されているにもかかわらず、断熱層40の存在により、樹脂30の有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのが抑制されるので、転写プレート34において、転写完了時刻t1(≒tp1)において、従来のディスク成形用の金型装置と同等程度(120〔℃〕程度)にまで温度が上昇している。転写プレート34の温度の立上がりは従来のディスク成形用の金型装置を使用したときの転写プレート34の温度の立上りよりやや緩やかであるが、可動金型24Bの温度は、160〔℃〕近くにまで一気に上昇することが分かる。
【0091】
転写は、従来のディスク成形用の金型装置を使用したときと同様に0.3秒程度が経過した後の時刻t1(≒tp1)で完了するが、本発明の金型装置20を使用した場合、転写が完了するまでの、充填の初期の樹脂30の温度が高めに維持され、その流動性が確保される。したがって、従来のディスク成形用の金型装置を使用した場合より、スキン層の成長が抑制され、固化の程度が低くされる。その結果、樹脂30は容易に転写プレート34の転写面の凹凸に沿うことができる。
【0092】
したがって、本発明においては、転写面の付近の樹脂、すなわち、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができ、型締装置を含む射出成形機の全体を小型化することができるだけでなく、コストを低くすることができる。また、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。そして、従来のディスク成形用の金型装置を使用したときと同等の型締力を発生させた場合、転写プレート34の転写面の転写精度を高くすることができる。
【0093】
なお、転写が完了した後、転写プレート34及び可動金型24Bの温度は、いずれも低下していくが、金型装置20の温度が低めに設定されているので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度が高くなる。
【0094】
したがって、型開きが行われる時刻t2までに1.6秒程度、ディスク基板が取り出される時刻t3までに2.3秒程度しか時間が経過しておらず、最終的に型閉じが行われ、次の成形に入る準備ができる時刻t4までに、わずかに2.4秒以上、かつ、2.9秒以下の程度の時間しか経過しない。また、型開きが行われる時刻t2での転写プレート34の温度は、従来のディスク成形用の金型装置が使用される場合の時刻tp2での転写プレート34の温度より34〔℃〕も低くなっていることが分かる。
【0095】
このように、本実施の形態においては、可動金型24Bと転写プレート34との間に断熱層40が配設されるので、樹脂30が有する熱エネルギーが可動金型24B側に逃げるのを抑制することができる。したがって、樹脂30の温度が急激に低くなってスキン層が形成されるのを抑制することができる。その結果、転写精度を高くすることができる。
【0096】
また、スキン層を塑性変形させるための型締力を小さくすることができるので、射出成形機を小型化することができるだけでなく、転写プレート34の耐久性を向上させることができる。
【0097】
そして、転写精度を高くすることができる分だけ金型装置20の温度を低く設定することができるので、転写プレート34及び可動金型24Bの温度の下降の速度を高くすることができる。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【0098】
ところで、前記第1、第2の実施の形態においては、ハニカム構造を転写プレート34側から形成したり、固定金型24A側又は可動金型24B側から形成したりするようになっているが、他の方法でハニカム構造を形成することができる。
【0099】
そこで、他の方法でハニカム構造を形成するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0100】
図10は本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第1の図、図11は本発明の第3の実施の形態における断熱層の形成方法を示す第2の図である。
【0101】
例えば、金属射出成形において、10〔μm〕程度幅の深溝に金属粉を含むグリーン体を流し込むのは困難を伴うことがある。このような場合には、例えば、図10及び11に示されるように、あらかじめ金属射出成形によって形成した金属粉を含む薄肉板70を準備しておき、該薄肉板70に対してハニカムの反転構造(針状の突起を有する構造)を備えた(断熱層40を形成するための)逆ハニカム転写プレート72を押し当て、薄肉板70及び逆ハニカム転写プレート72を図示されないプレスで挟み込むと、前記ハニカムの反転構造を薄肉板70側に転写することができる。続いて、前記逆ハニカム転写プレート72を薄肉板70から分離すると、図11に示されるようなハニカム構造が転写された反転構造体から成る薄肉板70Aを得ることができる。なお、該薄肉板70Aを断熱層として転写プレート34と固定金型24A又は可動金型24Bとの間に配設することができる。
【0102】
次に、更に他の方法でハニカム構造を形成するようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0103】
図12は本発明の第4の実施の形態における断熱層の形成方法を示す図である。なお、(a)はハニカム構造が転写される前の状態を示す図、(b)はハニカム構造が転写された後の状態を示す図である。
【0104】
この場合、高い流動性及び耐摩耗性を有するアモルファス金属(いわゆる「金属ガラス」といわれる。)を使用するようになっている。図12(a)に示されるように、加熱体としての加熱コイル80を使用してスリーブ82内で加熱された型鏡面板84上にアモルファス金属86を載置し、ハニカムの反転構造を有する(断熱層を形成するための)逆ハニカム転写プレート88を前記アモルファス金属86に押し付けると、図12(b)に示されるように、プレス成形が行われ、前記ハニカムの反転構造をアモルファス金属86側に転写することができる。続いて、前記逆ハニカム転写プレート88をアモルファス金属86から分離させると、ハニカム構造が転写された反転構造体から成るアモルファス金属層86Aを得ることができる。該アモルファス金属層86Aが断熱層として形成された型鏡面板84を、金型装置20の一部を構成するチェイスとして使用し、転写プレート34と固定金型24A又は可動金型24Bとの間に配設することができる。
【0105】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0106】
20、61 金型装置
24A 固定金型
24B 可動金型
34 転写プレート
40 断熱層
C、C1、C2 キャビティ空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の金型と、
(b)該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、
(c)凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、
(d)前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有することを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
前記断熱層は、反転構造を有するプレートを金属ガラスに対して加圧することによって形成される請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記断熱層は、加熱体によって加熱された状態の金属ガラスに前記プレートの反転構造を転写することによって形成される請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記断熱層は、前記第1、第2の金型のいずれか一方の金型を構成する型鏡面板上に載置された金属ガラスに前記プレートの反転構造を転写することによって形成される請求項3に記載の樹脂成形装置。
【請求項1】
(a)第1の金型と、
(b)該第1の金型と対向させて配設された第2の金型と、
(c)凹凸のパターンから成る転写面をキャビティ空間に向けて前記第1、第2の金型のうちの一方の金型に取り付けられた転写プレートと、
(d)前記一方の金型と転写プレートとの間に配設され、金属ガラスから成る断熱層とを有することを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
前記断熱層は、反転構造を有するプレートを金属ガラスに対して加圧することによって形成される請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記断熱層は、加熱体によって加熱された状態の金属ガラスに前記プレートの反転構造を転写することによって形成される請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記断熱層は、前記第1、第2の金型のいずれか一方の金型を構成する型鏡面板上に載置された金属ガラスに前記プレートの反転構造を転写することによって形成される請求項3に記載の樹脂成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−220587(P2009−220587A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161682(P2009−161682)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2008−512167(P2008−512167)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2008−512167(P2008−512167)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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