説明

樹脂段ボール板の罫線形成装置

【課題】長尺状の罫線であっても、連続する罫線を効率的に形成する。加熱された罫線ローラを使用して罫線を形成する場合には、樹脂段ボール板に対する罫線ローラの移動に対して罫線ローラの回転が遅れて罫線周縁の樹脂段ボール板が破断されるのを防止する。小型の罫線ローラを使用して装置の小型化を図りながら樹脂段ボール板の罫線個所が白化するのを防止して樹脂段ボール板が外観不良になるのを防止する。
【解決手段】回転部材51により樹脂段ボール板に圧接する罫線ローラ53を、その移動速度と同期した回転速度で回転すると共に罫線ローラ53の回転進行方向下手に位置する加熱手段65により罫線の形成に先行して樹脂段ボール板を溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂段ボール板を折り曲げ可能にする罫線形成装置、詳しくは樹脂段ボール板をレーザ光により予熱することにより熱容量が少ない小型の罫線ローラを使用して罫線を確実に形成することができる樹脂段ボール板の罫線形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成樹脂段ボール板(プラスチック製段ボール板)を折り曲げて箱型に形成したコンテナ等を製作する際に、所要の展開形状に切断された樹脂段ボール板の折り曲げ個所に罫線を形成して折り曲げを可能にしている。樹脂段ボール板に罫線を形成する装置として、例えば特許文献1に示すように加熱されたブレードを備えた罫線熱加工機を使用し、樹脂段ボール板の所定個所に加熱されたブレードを押付けて裏板を残した状態で溶融することによりV溝状の罫線を形成し、該罫線にて折り曲げできるようにしている。
【0003】
しかし、上記したブレードを使用した罫線熱加工機において、一度にある程度の長さの罫線を形成するには、長尺状のブレードを使用しなければならず、ブレードの大型化及び重量化と共に大出力の電気ヒータによりブレードを加熱しなければならず、装置自体が大型化する問題を有している。
【0004】
また、形成しようとする罫線に対してブレードの長さに制約があるため、長い罫線を形成する場合には、先に形成された罫線の一部にブレードの端部を一致させ状態で、再度、位置決めしながら押付けて溶融して罫線を形成しなければならず、罫線が不連続になり易いと共に位置合わせ作業に手間がかかり、罫線を効率的に形成できない問題を有している。
【0005】
上記問題点は、ブレードの代わりに加熱ローラを使用し、樹脂段ボール板の所定個所に対して加熱された罫線ローラを押付けながら転動させて裏板を残した状態で溶融して罫線を形成することにより解決することができる。このような加熱された罫線ローラを使用した場合、樹脂段ボール板に対して罫線ローラを圧接して移動させる際に、罫線ローラ自体が回転することになる。
【0006】
しかし、罫線ローラの移動に対し回転量が少ないため、罫線ローラの移動抵抗になり、移動抵抗によりV溝周縁の樹脂段ボール板が破断し易くなる問題を有している。特に、樹脂段ボール板には、表板と裏板の間に一定方向へ延出して相互間に空隙を形成する多数のリブ(目)が等間隔で延出するように一体形成されており、該樹脂段ボール板に対して目と直交方向の罫線を形成する場合には、リブにより罫線ローラの圧接力による移動抵抗が作用しても、破断を回避することができるが、目と一致する方向の罫線を形成する際には、罫線ローラの圧接力による移動抵抗により表板又は裏板が破断し易かった。
【0007】
この結果、罫線個所の表板又は裏板が破断した樹脂段ボール板で製品を製造すると、折返し個所の品質が悪くなって製品が不良品化する問題が発生している。
【0008】
また、樹脂段ボール板に対して加熱された罫線ローラにより長い罫線を連続して形成するには、罫線ローラの熱容量を多くする必要から形成ローラ自体を大型化すると共に大出力の加熱ヒータを使用する必要があるが、装置自体が大型化及び重量化する問題を有している。しかも、小型(小径)の罫線ローラを使用した場合には、罫線ローラを必要以上に高温化する必要があるため、樹脂段ボール板の罫線形成個所が熱により溶融して白化し、外観不良を招く問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−262943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、加熱されたブレードで罫線を形成する場合には、該ブレードの長さが制約されるため、長い罫線を形成する際に不連続になり易いと共に位置合わせに手間がかかり、罫線を効率的に形成できない点にある。また、加熱ローラを使用して罫線を形成する場合には、樹脂段ボール板に対する加熱ローラの移動に対して加熱ローラの回転が遅れることにより回転抵抗が発生し、回転抵抗により罫線周縁の樹脂段ボール板が破断し易くなる点にある。
罫線ローラの熱容量を増大するには、大発熱量の加熱ヒータを使用する必要があるが、小型の罫線ローラを使用する場合には、罫線ローラが過度に加熱されて樹脂段ボール板の罫線個所が白化し、外観不良を招く点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表板及び裏板の間に所定の方向へ延出する多数のリブが空隙を設けて一体成形された樹脂段ボール板に対して圧接する罫線ローラを第1及び第2移動部材の少なくともいずれかにより樹脂段ボール板のリブと一致する方向及び上記リブと直交する方向の少なくともいずれかへ移動して罫線を形成する罫線形成装置において、 樹脂段ボール板に対する罫線ローラの移動速度に同期した回転速度で該罫線ローラを回転する回転部材と、罫線ローラの回転進行方向下手側に配置され、樹脂段ボール板を溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させる加熱手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、長尺状の罫線であっても、連続する罫線を効率的に形成することができる。また、加熱ローラを使用して罫線を形成する場合には、樹脂段ボール板に対する加熱ローラの移動に対して加熱ローラの回転が遅れるのを防止し、罫線周縁の樹脂段ボール板が破断するのを防止することができる。小型の罫線ローラを使用して装置の小型化を図りながら樹脂段ボール板の罫線個所が白化するのを防止して樹脂段ボール板が外観不良になるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】罫線形成装置の概略を示す概略斜視図である。
【図2】切断及び罫線ユニットを分解して示す説明図である。
【図3】樹脂段ボール板を目と直交する方向へ切断する際の説明図である。
【図4】樹脂段ボール板を目と一致する方向へ切断する際の説明図である。
【図5】樹脂段ボール板を目と直交する方向へ罫線を形成する際の説明図である。
【図6】樹脂段ボール板を目と一致する方向へ罫線を形成する際の説明図である。
【図7】空隙が封止された罫線例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
回転部材により樹脂段ボール板に圧接する罫線ローラを、その移動速度と同期した回転速度で回転すると共に罫線ローラの回転進行方向下手に位置する加熱手段により罫線の形成に先行して樹脂段ボール板を溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させることを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0015】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1及び図2に示すように、罫線形成装置1における本体フレーム3の側面には、図示する左右方向へ平行延出する一対のガイドレール5が固定され、該ガイドレール5には、門型の走行体7が図示する左右方向へ移動可能に支持される。また、本体フレーム3の側面には、図示する左右方向へ延出するラックギャ6がそれぞれ設けられ、該ラックギャ6には、第1移動部材を構成するサーボモータ等の数値制御可能な電動モータ9の出力軸に設けられた歯車9aが噛合わされる。上記走行体7は、該電動モータ9の駆動に伴って上記左右方向へ往復移動される。
【0016】
上走行体7において図示する前後方向へ延出する水平フレーム13には、上記前後方向へ平行延出する一対のガイドレール15が固定され、該ガイドレール15には、可動体17が前後方向へ移動可能に支持される。また、上記水平フレーム13には、上記前後方向へ軸線を有し、一方の軸端部に第2移動部材を構成するサーボモータ等の数値制御可能な電動モータ19が連結された第1送りねじ21が回転可能に軸支され、該第1送りねじ21には、上記可動体17が噛合わされる。上記可動体17は、上記電動モータ19の駆動に伴って回転する第1送りねじ21により上記前後方向へ往復移動される。
【0017】
上記可動体17は、上記本体フレーム3上に設けられ、樹脂段ボール板20が平面状に載置される載置テーブル23の上方に位置し、その正面には、樹脂段ボール板20の切断及び罫線ユニット22が昇降可能に設けられる。該樹脂段ボール板20は、表板及び裏板の間に多数のリブ(目)が等間隔で平行して延出して相互間に空隙を設けた合成樹脂材からなる。本例においては、樹脂段ボール板20は、載置テーブル23上に対し、目が上記左右方向へ延出するように載置される。
【0018】
即ち、可動体17の正面には、図示する上下方向へ平行延出する一対のガイドレール25が固定される。該ガイドレール25には、昇降体としての昇降板27が上下方向へ移動可能に支持される。上記可動体17には、上下方向に軸線を有し、一方端部に第1上下動部材を構成するサーボモータ等の数値制御可能な電動モータ29が連結された第2送りねじ31が回転可能に軸支され、該第2送りねじ31には、上記昇降板27が噛合わされる。該昇降板27は、電動モータ29の駆動に伴って回転する第2送りねじ31により所定のストロークで昇降動される。
【0019】
なお、上記載置テーブル23には、負圧発生装置(図示せず)に接続された多数の吸引孔23aが形成され、テーブル面上に載置された樹脂段ボール板20を負圧吸引して所定の位置出し状態に保持させる。
【0020】
上記昇降板27には、上下方向へ延出し、前後方向へ所要の間隔をおいた各一対のガイドレール28・30が固定され、各ガイドレール28・30には、第1及び第2取付け板35・37が昇降可能に支持される。各第1及び第2取付け板35・37は、作動ロッド39a・41aの先端部が昇降板27の下部にそれぞれ固定された第2及び第3上下動部材を構成するエアーシリンダ等の作動部材39・41がそれぞれ取付けられ、各作動部材39・41の作動により昇降板27に対して第1及び第2取付け板35・37を所定のストロークでそれぞれ個別に昇降動させる。
【0021】
上記第1取付け板35には、上下方向に軸線を有し、上下方向へ抜け止めされた取付け軸43が回転するように軸支される。該取付け軸43には、第1取付け板35に固定された第1回動部材を構成する数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ45の出力軸が歯車45aを介して連結され、電動モータ45の駆動により取付け軸43を所定の角度、本例においては上記左右方向及び前後方向を向く90度の角度で往復回動させる。
【0022】
上記取付け軸43の軸下端部には、所要の間隔をおいて相対して垂下する一対の軸支板47が固定され、該軸支板47間には、水平方向に軸線を有した中空軸49の軸端部がそれぞれ回転可能に軸支される。一方の軸支板47から突出する中空軸49の端部には、回転部材を構成する数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ51の出力軸が歯車51aを介して連結される。
【0023】
また、上記一対の軸支板47間に位置する中空軸49には、罫線ローラ53が固定される。該罫線ローラ53の外周部は、軸線方向断面がV字型に形成される。更に、上記中空軸49の中空部内には、軸ヒータ(シーズヒータ)等の加熱部材(図示せず)が内蔵され、上記罫線ローラ53を樹脂段ボール板20が溶融する温度より若干低い温度に加熱させる。
【0024】
上記第2取付け板37には、上下方向に軸線を有し、下部に切断刃55aが設けられた切断部材55が回転するように軸支され、該切断部材55には、第2取付け板37に固定された第2回動部材を構成する数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ57の出力軸が歯車57aを介して連結され、該電動モータ57の駆動により切断部材55を所定の角度、本例においては上記左右方向及び前後方向を向く90度の角度で往復回動させる。
【0025】
上記切断部材55は、切断刃55aを、例えば電動モータの出力軸に設けられた偏心カムと一方の軸端に切断刃55aが取付けられ、上下方向へ摺動するように支持された作動軸の他方軸端に設けられ、上記偏心カムが摺接するカムフォロアから構成され、電動モータの駆動に伴って作動軸を往復移動させることにより切断刃55aを往復振動させて樹脂段ボール板20を切断する往振動切断機構、切断刃55aを超音波振動素子で振動させながら樹脂段ボール板20を切断する超音波振動切断機構等であってもよい。
【0026】
第1取付け板35の上端部には、水平方向へ延出し、先端部が取付け軸43に至る長さの固定アーム59の基端部が固定され、上記固定アーム59の先端部には、回動アーム61の基端部が取付け軸43の軸心に一致して回動するように軸支され、該回動アーム61の基端部には、軸心が取付け軸43に一致して固定アーム59の先端部に固定された第3回動部材を構成する数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ63の出力軸が連結され、該電動モータ63の駆動により回動アーム61を所定の角度、本例においては上記左右方向及び前後方向を向く90度の角度で往復回動させる。
【0027】
上記回動アーム61の先端部には、上下方向に軸線を有し、レーザ光発振装置(図示せず)に接続された加熱手段としてのレーザ光出力ヘッド65の基端部が固定される。該レーザ光出力ヘッド65は、光学的レンズ等が内蔵され、載置テーブル23上に載置された樹脂段ボール板20の上面に対してレーザ光発振装置から出力されるレーザ光を後述する罫線幅より広い所要のビーム径に収斂させる。
【0028】
次に、上記のように構成された罫線形成装置1による樹脂段ボール板20の切断作用及び罫線形成作用を説明する。
先ず、樹脂段ボール板20の切断作用を説明すると、本体フレーム3の載置テーブル21上に樹脂段ボール板20を位置決めした状態で載置して吸引孔21aからの負圧吸引により固定保持させる。このとき、第1及び第2走行体は、載置テーブル21に対してそれぞれ原点位置に移動される。
【0029】
上記状態にて予め設定された切断開始位置データ等に基づいて電動モータ9・17をそれぞれ駆動制御して走行体7及び可動体17を移動し、切断及び罫線ユニット22の切断刃55aを樹脂段ボール板20の切断開始位置上方に位置させる。
【0030】
上記状態にて電動モータ29を駆動制御して昇降板27を下方へ移動した後又は同期したタイミングで作動部材41を作動して第2取付け板37を下方へ移動して切断刃55aを樹脂段ボール板20へ突刺させた後に、例えば電動モータ17を駆動制御して可動体17を樹脂段ボール板20の目と直交する前後方向へ移動して樹脂段ボール板20を切断する。(図3参照)
【0031】
そして樹脂段ボール板20を上記目と直交する前後方向への切断が終了した後に、目と一致する左右方向へ切断するには、先ず作動部材41を復動して第2取付け板37を上方へ移動して樹脂段ボール板20に対する切断刃55aの突刺を解除した後、電動モータ57を駆動制御して切断部材55を、切断刃55aの向きが上記目と一致する図示する左右方向へ回動させる。
【0032】
上記状態にて作動部材41を再び作動して第2取付け板37を下方へ移動して切断刃55aを樹脂段ボール板20へ突刺させた後に電動モータ9を駆動制御して走行体7を樹脂段ボール板20の目と一致する左右方向へ移動して樹脂段ボール板20を切断する。(図4参照)
【0033】
上記動作の繰り返しにより樹脂段ボール板20を前後方向及び左右方向へ切断して所望の展開形状に形成する。
【0034】
なお、樹脂段ボール板20を、例えば前後方向に対して所望の角度で傾斜して切断するには、第2取付け板37を上方へ移動した状態で電動モータ57を上記角度に応じて駆動制御して切断部材55を、切断刃55aの向きが上記角度と一致する方向へ回動させた後、作動部材41を作動して第2取付け板37を下方へ移動して切断刃55aを樹脂段ボール板20へ突刺させた状態で電動モータ9・17を上記角度に応じた回転量で駆動制御して切断刃55aを上記角度と一致する方向へ移動して切断する。
【0035】
次に、上記動作により所望の展開形状に切断された樹脂段ボール板20に折り目になるV溝状の罫線を形成するには、上記と同様に予め設定された罫線開始位置データ等に基づいて電動モータ9・17を駆動制御して走行体7及び可動体17をそれぞれ移動し、切断及び罫線ユニット22の罫線ローラ53を樹脂段ボール板20の罫線開始位置上方に位置させる。
【0036】
また、上記動作と同期したタイミングまたは上記動作後に電動モータ63を駆動制御して固定アーム59に対して回動アーム61を、レーザ光出力ヘッド65が罫線ローラ53の回転進行方向下手に位置するように回動させる。
【0037】
上記状態にて電動モータ29を駆動制御して昇降板27を下方へ移動した後又は同期したタイミングで作動部材39を作動して第1取付け板35を下方へ移動し、電熱部材により所要の温度に加熱された罫線ローラ53を樹脂段ボール板20へ圧接させる。このとき、罫線ローラ53は、樹脂段ボール板20に対して裏板を残した状態で圧接される。また、レーザ光出力ヘッド65は、罫線ローラ53の回転進行方向下手に位置する樹脂段ボール板20の上面に対して所要の間隔をおいて相対される。
【0038】
上記状態にて、レーザ光発振装置を駆動してレーザ光出力ヘッド65からレーザ光を出力し、樹脂段ボール板20における罫線ローラ53の回転進行方向下手上面に対してレーザ光を所要のスポット径で収斂させることにより該樹脂段ボール板20を非溶融で軟化する温度、具体的には樹脂段ボール板20が溶融する温度より若干低い温度に加熱させながら電動モータ17を駆動制御して可動体17を樹脂段ボール板20の目と直交する前後方向へ移動させると共に電動モータ45を電動モータ17の駆動開始と同期したタイミングで、かつ前後方向に対する可動体17の移動量に一致する回転量で駆動制御して回転する罫線ローラ53を移動させる。(図5参照)
【0039】
これにより罫線ローラ53は、レーザ光出力ヘッド65から出力されるレーザ光により加熱された樹脂段ボール板20に回転しながら圧接し、樹脂段ボール板20に対して裏板を残した状態で前後方向へ延出するV溝状の罫線を形成する。このとき、罫線ローラ53は、前後方向に対する移動量に一致する回転量で回転して樹脂段ボール板20に対する移動抵抗が発生するのを回避することにより罫線周縁における樹脂段ボール板20の破断を防止する。
【0040】
そして樹脂段ボール板20に対する前後方向への罫線の形成が終了した後に、該目と一致する左右方向への更に罫線を形成するには、先ず作動部材39を復動して第1取付け板35を上方へ移動して樹脂段ボール板20に対する罫線ローラ53の圧接を解除した後、電動モータ51を駆動制御して罫線ローラ53を上記目と一致する図示する左右方向へ回動させると共に電動モータ63を上記と逆転駆動して回動アーム61を、レーザ光出力ヘッド65が罫線ローラ53の回転進行方向下手に位置するように回動させる。
【0041】
上記状態にて作動部材39を再び作動して第1取付け板35を下方へ移動して罫線ローラ53を樹脂段ボール板20へ圧接させると共にレーザ光出力ヘッド65を樹脂段ボール板20における罫線ローラ53の回転進行方向下手側の上面に対して所要の間隔をおいて相対させる。この状態にてレーザ光発振装置を駆動してレーザ光出力ヘッド65からレーザ光を出力し、樹脂段ボール板20における罫線ローラ53の回転進行方向下手上面に対してレーザ光を所要のスポット径で収斂させることにより該樹脂段ボール板20を非溶融で軟化する温度、具体的には樹脂段ボール板20が溶融する温度より若干低い温度に加熱させながら電動モータ9を駆動制御して走行体7を樹脂段ボール板20の目と一致する左右方向へ移動させると共に電動モータ45を左右方向に対する走行体7の移動量に一致する回転量で駆動制御しながら樹脂段ボール板20に対して裏板を残した状態で左右方向へ延出するV溝状の罫線を形成する。(図6参照)
【0042】
このとき、罫線ローラ53は、上記と同様に左右方向に対する移動量に一致する回転量で回転することにより樹脂段ボール板20に対する移動抵抗が発生するのを回避し、罫線周縁の樹脂段ボール板20が破断するのを防止する。
【0043】
上記動作の繰り返しにより樹脂段ボール板20に対して前後方向及び左右方向へ延出する所望の罫線を形成する。
【0044】
なお、樹脂段ボール板20に対し、例えば前後方向に対して所望の角度で傾斜する罫線を形成するには、第1取付け板37が上方へ移動した状態で電動モータ51を上記角度に応じて駆動制御して罫線ローラ53の向きを上記角度と一致する方向へ回動させると共に電動モータ63を駆動制御して回動アーム61を、レーザ光出力ヘッド65が罫線ローラ53の回転進行方向下手に位置するように回動させる。
【0045】
そして該状態にて作動部材39を再び作動して第1取付け板35を下方へ移動して罫線ローラ53を樹脂段ボール板20へ圧接させると共にレーザ光出力ヘッド65を樹脂段ボール板20における罫線ローラ53の回転進行方向下手上面に相対させた状態で電動モータ9・17を上記角度に応じた回転量でそれぞれ駆動制御してレーザ光出力ヘッド65及び罫線ローラ53を上記角度と一致する方向へ一体に移動して樹脂段ボール板20の上面にレーザ光により加熱しながら罫線ローラ53により上記角度に一致する罫線を形成する。
【0046】
上記説明は、加熱手段をレーザ光発振装置に接続されたレーザ光出力ヘッド65により構成したが、本発明の加熱手段は、例えば約500℃近くに加熱された空気を噴射する加熱空気噴射部材により構成し、罫線ローラ53の回転進行方向下手側に応じた樹脂段ボール板20を加熱空気により予熱して軟化させてもよい。
【0047】
上記説明は、第1乃至第3回動部材を電動モータ45,57、63により構成したが、罫線ローラ53、切断部材55及びレーザ光出力ヘッド65(加熱空気噴射部材)の回動角度で一定の場合には、これらに対してリンクを介してエアーシリンダ等の直動部材を連結して回動させる構成としてもよい。
【0048】
上記説明は、罫線ローラ53を樹脂段ボール板20における目の向きと一致する方向又は目と直交する方向へ変更した際には、電動モータ63を駆動してレーザ光出力ヘッド65(加熱空気噴射部材)を罫線ローラ53の回転進行方向下手側に位置させる構成としたが、第1取付け板35に対して回転進行方向が所要の角度、例えば樹脂段ボール板20の目と一致する方向及び目と直交する方向を向く90度の角度をおいて2個の罫線ローラ53をそれぞれ上下方向へ移動するように設けると共に各罫線ローラ53の回転進行方向下手側に応じて個所に2台のレーザ光出力ヘッド65(加熱空気噴射部材)を配置した構成であってもよい。この変更例にあっては、罫線ローラ53の回転進行方向を変更する第1回動部材としての電動モータ45を不要にすることができる。
【0049】
また、上記説明は、レーザ光出力ヘッド65から出力されるレーザ光により罫線ローラ53の回転進行方向下手側に応じた樹脂段ボール板20を予熱して軟化させた状態で加熱された罫線ローラ53により更に溶融してV字形の罫線を形成する構成としたが、図7に示すようにレーザ光(加熱空気)により予熱されて非溶融で軟化された樹脂段ボール板20に対して非加熱状態又は溶融温度より低い温度で加熱された罫線ローラを圧接して表側の樹脂板を延伸変形させて空隙を封止したV字形の罫線を形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 罫線形成装置
3 本体フレーム
5 ガイドレール
6 ラックギャ
7 走行体
9 第1移動部材を構成する電動モータ
9a 歯車
13 水平フレーム
15 ガイドレール
17 可動体
19 第2移動部材を構成する電動モータ
20 樹脂段ボール板
21 第1送りねじ
22 切断及び罫線ユニット
23 載置テーブル
23a 吸引孔
25 ガイドレール
27 昇降体としての昇降板
28 ガイドレール
29 第1上下動部材を構成する電動モータ
30 ガイドレール
31 第2送りねじ
33 取付け板
35 第1取付け板
37 第2取付け板
39 第2上下動部材を構成する作動部材
39a 作動ロッド
41 第3上下動部材を構成する作動部材
41a 作動ロッド
43 取付け軸
45 第1回動部材を構成する電動モータ
45a 歯車
47 軸支板
49 中空軸
51 回転部材を構成する電動モータ
51a 歯車
53 罫線ローラ
55 切断部材
55a 切断刃
57 第2回動部材を構成する電動モータ
57a 歯車
59 固定アーム
61 回動アーム
63 第3回動部材を構成する電動モータ
65 加熱手段としてのレーザ光出力ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表板及び裏板の間に所定の方向へ延出する多数のリブが空隙を設けて一体成形された樹脂段ボール板に対して圧接する罫線ローラを第1及び第2移動部材の少なくともいずれかにより樹脂段ボール板のリブと一致する方向及び上記リブと直交する方向の少なくともいずれかへ移動して罫線を形成する罫線形成装置において、
樹脂段ボール板に対する罫線ローラの移動速度に同期した回転速度で該罫線ローラを回転する回転部材と、
罫線ローラの回転進行方向下手側に配置され、樹脂段ボール板を溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させる加熱手段と、
を備えた樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項2】
請求項1において、罫線ローラは、第1回動部材により樹脂段ボール板のリブと一致する方向及び上記リブと直交する方向の間で回動されると共に加熱手段は、第3回動部材により罫線ローラの回転進行方向下手に位置するように回動される樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項3】
請求項2において、加熱手段は、罫線ローラの回動中心と一致する位置にて回動可能に軸支されると共に第3回動部材が連結された回動アームに設けられ、罫線ローラと同心にて回動可能とした樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項4】
請求項1において、罫線ローラは、樹脂段ボール板が載置されるテーブルの上方にて二次元方向へ移動する可動体に対して上下方向へ昇降する昇降体に設けられると共に加熱手段は、上記昇降体に対して樹脂段ボール板との間に所要の間隔をおいて相対するように設けられる樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項5】
請求項4において、罫線ローラは、上記昇降体に対して上下方向へ移動可能に支持された取付け板に設けられた樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項6】
請求項1において、罫線ローラに対し、樹脂段ボール板に対して突刺し、罫線ローラと一体に二次元方向へ移動する切断部材を並設した樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項7】
請求項6において、切断部材は、第2回動部材により樹脂段ボール板のリブと一致する方向及び上記リブと直交する方向の間で回動される樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項8】
請求項6において、罫線ローラ及び切断部材は、樹脂段ボール板に対して個別に昇降可能に設けられる樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項9】
請求項6において、切断部材は、可動体に対して上下方向へ昇降する昇降体に対して罫線ローラと個別に昇降する取付け板に回動可能に軸支されると共に連結された第2回動部材により回動される樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項10】
請求項1において、罫線ローラは、加熱部材により樹脂段ボール板の溶融温度以下に加熱される樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項11】
請求項1において、加熱手段は、樹脂段ボール板に対して罫線幅より幅広に収斂されたレーザ光を出力して溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させるレーザ光出力手段とした樹脂段ボール板の罫線形成装置。
【請求項12】
請求項1において、加熱手段は、樹脂段ボール板に対して罫線幅より幅広に加熱空気を噴射して溶融温度より若干低い温度に加熱して軟化させる加熱空気噴射手段とした樹脂段ボール板の罫線形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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