説明

樹脂用可塑剤および樹脂組成物

【課題】
人体および環境に対する負荷の低減が期待でき、かつ、樹脂組成物からのブリードアウトが少ない樹脂用可塑剤、さらには、透明性および柔軟性に優れ、経時変化の少ない樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a)(ポリ)アルキレングリコール、(b)脂肪族ジカルボン酸、(c)脂肪族モノカルボン酸、および(d)(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの反応により得られる化合物を主成分とする樹脂用可塑剤。;当該樹脂用可塑剤を含有してなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂用可塑剤および可塑化された樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル樹脂、スチロール系樹脂、アクリル樹脂、およびセルロース系樹脂等のプラスチックは、食品包装、建設材料、家電製品など広い分野で利用されている。また、これらのプラスチックに、柔軟性、弾性、耐久性、耐寒性、耐衝撃性、接着性、電気特性、難燃性、耐油性、耐菌性などを付与するために、種々の可塑剤が用いられており、機能性を向上させたプラスチック製品が、様々な用途で利用されている。
【0003】
その一方で、プラスチック添加剤の人体、環境への影響、プラスチック廃棄物処理による環境への影響がクローズアップされている。プラスチック廃棄物は、焼却処理されるか、埋め立て等により処理されていたが、焼却処理した場合、有毒ガス発生等による環境への悪影響が、また、埋め立て処理した場合、その良好な耐久性のため分解せずに原形のまま半永久的に残り、自然環境への影響が問題となっていた。
【0004】
このような状況下、自然環境下で微生物により完全に分解され、自然的副産物である炭酸ガス、水などに分解する種々の生分解性プラスチックが提案され、実用化されている。中でも、ポリ乳酸は、外観が透明であり、植物由来のプラスチックとして用途が拡大している。しかしながらポリ乳酸は、剛性が高い反面、脆い性質を有しており、軟質フィルムやシートのような柔軟性が要求される用途には使用しづらいという欠点があった。
【0005】
ポリ乳酸を軟質化する方法としては、軟質ポリマーのブレンド、可塑剤の添加等が知られている。柔軟性を有する生分解性樹脂をブレンドする方法として、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン等が開示されている(特許文献1、2)。しかしながら、低分子量の液状可塑剤に比べ可塑性が劣り、ポリ乳酸に十分な柔軟性を付与するためには多量の柔軟性生分解性樹脂の添加が必要であり、その結果、耐熱性、透明性等が損なわれることとなる。
【0006】
可塑剤を添加する方法として、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂用可塑剤として使用されてきた、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリエチル等が開示されている(特許文献3)。しかし、これらは、可塑化効率が小さく、十分な柔軟性が得られず、さらに、成形品からの可塑剤のブリードアウトが生じ、透明性および柔軟性が変化する。また、ポリ乳酸への適応性を高めた可塑剤として、ポリグリセリン酢酸エステル(特許文献4)、およびロジン系エステル(特許文献5)が開示されているが、ブリード性、可塑性が十分でないなど、いずれも性能、物性において一長一短があり、十分に満足できるものとは言えなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−283557
【0008】
【特許文献2】特開2003−268088
【0009】
【特許文献3】特開平4−335060
【0010】
【特許文献4】特開2003−73532
【0011】
【特許文献5】特開2003−160736
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、脂肪族エステル化合物を主成分とし、人体および環境に対する負荷の低減が期待でき、かつ、樹脂組成物からのブリードアウトが少ない樹脂用可塑剤、さらには、透明性および柔軟性に優れ、経時変化の少ない樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、各種樹脂、特にポリ乳酸系樹脂に、特定のエステル化合物を可塑剤として用いた場合、可塑剤のブリードアウトが少なく、かつ、透明性および柔軟性に優れ、物性の経時変化の少ない樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、(a)(ポリ)アルキレングリコール、(b)脂肪族ジカルボン酸、(c)脂肪族モノカルボン酸、および(d)(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの反応により得られる化合物を主成分とする樹脂用可塑剤および当該樹脂用可塑剤を含有してなる樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明で用いられる可塑剤は(a)(ポリ)アルキレングリコール、(b)脂肪族ジカルボン酸、(c)脂肪族モノカルボン酸、および(d)(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの反応により得られる。
【0016】
本発明に用いられる(a)(ポリ)アルキレングリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、オクタンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、エチレングリコール類が、特に、分子量1000以下の(ポリ)エチレングリコールが樹脂との相溶性、ブリード性および可塑性が良好であり好ましい。
【0017】
本発明に用いられる(b)脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,2,3−トリメチルコハク酸、2エチル−2メチル−コハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、3−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの低級アルキルエステル、および酸無水物等も同様に使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等の炭素数3〜6の脂肪族ジカルボン酸が、樹脂との相溶性、ブリード性および可塑性が良好であり好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(c)脂肪族モノカルボン酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、バレリン酸、イソバレリン酸、カプロン酸、2−メチルバレリン酸、3−メチルバレリン酸、4−メチルバレリン酸、2−エチル酪酸、エナント酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられ、これらの低級アルキルエステル、および酸無水物等も同様に使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、炭素数2〜10の脂肪族モノカルボン酸が、樹脂との相溶性、ブリード性および可塑性が良好であり好ましい。更に好ましくは炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸である。中でも特に酢酸を使用した場合、可塑剤としての性能はもちろんのこと、経済性、作業性にも優れており好ましい。
【0019】
本発明で用いられる(d)(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリルエーテル、ジエチレングリコールモノミリスチルエーテル、ジエチレングリコールモノセチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレンモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレンモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレンモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、エチレングリコールモノアルキルエーテル類が、樹脂との相溶性、ブリード性および可塑性が良好であり好ましい。
【0020】
本発明において、(a)成分〜(d)成分の使用量を適宜選択することにより、目的とするエステル化反応物を得ることができる。
【0021】
本発明におけるエステル化反応物は、すべての成分を同時に反応させる一段法で反応してもよく、また、(a)成分、(b)成分および(d)成分を反応後、未反応水酸基と(c)成分を反応させる方法、(a)成分と(c)成分の一部を反応しアルキレングリコールモノアルキルエステルとした後、(a)成分、(b)成分および(d)成分と反応させる方法等の多段法で反応してもよい。これらの反応は公知のエステル化反応方法で実施できる。例えば、100℃〜300℃の温度で、硫酸やパラトルエンスルホン酸等の公知のエステル化触媒の存在下または非存在下、また、必要に応じてトルエン、キシレン等の溶媒存在下で、生成する水を系外に除去しながら行われる。また、エステル化反応中は空気が混入すると着色の恐れがあるため、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下または気流下で行なうのが望ましい。反応後は必要に応じて、洗浄、吸着等の精製処理を行なうこともできる。
【0022】
本発明の可塑剤の性状は特に限定されるものではないが、通常、1成分又は混合多成分で、少なくとも100℃、好ましくは50℃、更に好ましくは30℃で液体状態又はペースト状態である。また、本発明の可塑剤の分子量は特に限定されるものではないが、300〜10000、好ましくは400〜4000、更に好ましくは500〜2000である。分子量が小さいと樹脂組成物からの可塑剤のブリードアウトが多くなる傾向があり、分子量が大きいと結晶化するか、液状であっても十分な可塑性を得られない傾向がある。
【0023】
本発明で使用される樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ビニル樹脂、スチロール系樹脂、アクリル樹脂およびセルロース系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、必要に応じ2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ポリオレフィン樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンにより製造される芳香族ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
ポリアセタール樹脂としては、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの単独重合体、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンと酢酸ビニルの共重合体などのビニル系化合物共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
スチロール系樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
アクリル樹脂としては、具体的には、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
セルロース樹脂としては、具体的には、セロハン、セルロイド、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、メチルアセテート、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルロース等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸を重合して得られるポリエステル樹脂であれば特に限定されず、ポリ乳酸のホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等であってもよい。コポリマーを形成する成分としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸等のジカルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトン等のラクトン類等が挙げられる。ブレンドするポリマーとしては、セルロース類、グリコーゲン、キチン、キトサン等が挙げられる。なお、重合に用いられる乳酸としては、L−体であってもD―体であってもよく、L−体とD−体の混合物であってよい。L―体とD―体の混合物の場合、これらの使用割合は目的に応じて任意に決定できる。
【0033】
これらの樹脂のなかで、ポリエステル樹脂が好ましく、特に、ポリ乳酸系樹脂が、可塑剤との相溶性、ブリード性および可塑化効率が良好であり好ましい。
【0034】
本発明において、可塑剤の使用量は特に限定されるものではないが、樹脂100部に対し、1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。かかる範囲で使用することにより、樹脂組成物からの可塑剤のブリードアウトが少なく、透明性および柔軟性に優れ、経時変化の少ない樹脂組成物を提供することができる。
【0035】
本発明において、樹脂に可塑剤を配合する方法は特に限定されるものではないが、通常、ブレンダー、ミキサー等で混合する方法、押出機、バンバリーミキサー等を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。また、樹脂製造段階から可塑剤を混合してもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、本発明で提示される可塑剤の他に、用途に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でアンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、充填剤、顔料、染料、分散剤、難燃剤等の他の添加剤を添加しても良く、また、本発明で提示される可塑剤以外の可塑剤を併用しても良い。
【0037】
本発明の樹脂組成物は一般的な熱可塑性プラスチックと同様に、押し出し成形、射出成形、延伸フィルム成形、ブロー成形などの成形方法を用いることが可能であり、広い用途に使用することができる。例えば、食品容器、電気部品、電子部品、自動車部品、医療用材料、フィルム・シート材料、繊維素材、塗料用樹脂、インキ用樹脂、トナー用樹脂、接着剤樹脂等として有用である。
【発明の効果】
【0038】
本発明で提示する特定のエステル化合物は、樹脂に添加することにより可塑性を発現するばかりでなく、樹脂組成物からなる成形物からのブリードアウトが少ないという利点を有する。また、可塑剤を含有する樹脂組成物、特にポリ乳酸系樹脂組成物は、柔軟性、透明性に優れ、かつ、ブリードアウトが抑制されたポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品を提供することができる。
【0039】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
攪拌機、窒素吹込み管、温度計および冷却管を付けた油水分離器を備えた四つ口フラスコにコハク酸151.2g(1.28モル)、ポリエチレングリコール#200(平均重合度n=4)192.0g(0.96モル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル155.8g(0.96モル)、トルエン90g、パラトルエンスルホン酸6.3g、および次亜リン酸ナトリウム1.3gを加え、110〜130℃に加熱し、減圧下、理論量の水が生成するまでエステル化反応を行った。これを冷却し、トルエン90gを加えた後、アルカリ洗浄、水洗浄を行い、次いでトルエンを減圧除去し、352.3gの反応生成物を得た。反応生成物の水酸基価は45KOHmg/gであった。この反応生成物200g、酢酸19.2g(0.32モル)、およびパラトルエンスルホン酸2.0gを加え、100〜120℃で約2時間攪拌後、減圧下、生成水および酢酸を留去した。これに酢酸19.2g(0.32モル)を加えさらに2時間攪拌後同様の操作で生成水および酢酸を留去した。これを冷却し、アルカリ洗浄、水洗浄後、減圧脱水し、活性炭で脱色処理を行い、201.7gの反応生成物Aを得た。
【実施例2】
【0041】
実施例1と同様の反応装置を用いて、コハク酸151.2g(1.28モル)、トリエチレングリコール192.2g(1.28モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル85.8g(0.64モル)、トルエン100g、パラトルエンスルホン酸8.0g、および次亜リン酸ナトリウム1.4gを加え、120〜130度に加熱し、減圧下、生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水が生成後、トルエンを減圧除去した。これに無水酢酸71.5g(0.70モル)を加え、75〜80℃で約1時間攪拌した後、減圧下120℃まで徐々に昇温しながら生成した酢酸を留去した。これを冷却し、アルカリ洗浄、水洗浄後、減圧脱水し、活性炭で脱色処理を行い、314.7gの反応生成物Bを得た。
【実施例3】
【0042】
実施例1と同様の反応装置を用いて、コハク酸151.2g(1.28モル)、ジエチレングリコール74.3g(0.70モル)、エチレングリコールモノブチルエーテル144.2g(1.22モル)、カプロン酸8.1g(0.07モル)、トルエン90g、パラトルエンスルホン酸8.0g、および次亜リン酸ナトリウム1.4gを加え、120〜130度に加熱し、減圧下、生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水が生成後これを冷却し、アルカリ洗浄、水洗浄後、トルエンおよび過剰を減圧除去し、活性炭で脱色処理を行い、251.0gの反応生成物Cを得た。
【実施例4】
【0043】
実施例1と同様の反応装置を用いて、アジピン酸186.9g(1.28モル)、エチレングリコール59.6g(0.96モル)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル128.8g(0.96モル)、トルエン90g、パラトルエンスルホン酸6.3g、および次亜リン酸ナトリウム1.3gを加え、120〜130度に加熱し、減圧下、生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水が生成後、トルエンを減圧除去した。これに無水プロピオン酸44.2(0.34モル)を加え、75〜80℃で約1時間攪拌した後、減圧下120℃まで徐々に昇温しながら生成したプロピオン酸を留去した。これを冷却し、アルカリ洗浄、水洗浄後、減圧脱水し、活性炭で脱色処理を行い、292.5gの反応生成物Dを得た。
【0044】
(評価例1〜4)
樹脂100重量部に対し所定量の可塑剤を加え、設定温度190℃でブラベンダー(ブラベンダー社製)を用いて溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃、冷却温度25℃で圧縮成形し、所定の試験シートおよびフィルムを作成した。この試験シートおよびフィルムを用いて透明性評価、柔軟性評価およびブリード性評価を行なった。
【0045】
(透明性評価)
2枚のガラス板に挟んだ、厚さ約200μmの試験フィルムを作成し、ヘーズメーター(スガ試験機社製)を用いて試験フィルムのヘーズ値を測定した。
【0046】
(柔軟性評価)
厚さ1.5mm(縦100mm、横50mm)の試験シートを作成し、硬さ試験機(JIS K6301 JA型硬度計)を用いて試験シートの硬度を測定した。尚、本試験機でのポリエチレン(住友化学社製)シートの硬度は77であった。
【0047】
(ブリード性評価)
厚さ1.5mm(縦100mm、横50mm)の試験シートを作成し、この試験シートを50℃、50RH%雰囲気下で2週間放置した後、下記評価を行なった。
(1)目視評価:試験シート表面への可塑剤のブリードアウトの有無を目視で評価した。○ブリードアウトなし、△ややブリードアウトあり、×ブリードアウトあり。
(2)減少率:試験シート表面からブリードアウトした可塑剤を拭き取った後、試験シート重量を測定し、試験前からの重量減少率を測定した。
(3)外観濁り:試験シートの透明性を目視で評価した。○濁りなし、△やや濁りあり、×濁りあり又は白色化。
【0048】
評価結果を表1にまとめて示した。










【0049】
【表1】

樹脂 PLA(三井化学社製:ポリ乳酸「レイシアH400」)、可塑剤 SR86A(田岡化学社製:ビスブチルジエチレングリコールアジペート)、ATBC(田岡化学社製:アセチルクエン酸トリブチル)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(ポリ)アルキレングリコール、(b)脂肪族ジカルボン酸、(c)脂肪族モノカルボン酸、および(d)(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの反応により得られる化合物を主成分とする樹脂用可塑剤。
【請求項2】
(a)(ポリ)エチレングリコール、(b)炭素数3〜6の脂肪族ジカルボン酸、(c)炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸、および(d)(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルの反応により得られる化合物を主成分とする請求項1記載の樹脂用可塑剤。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂に用いられることを特徴とする特許請求項1〜2記載の樹脂用可塑剤。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする特許請求項3記載の樹脂用可塑剤。
【請求項5】
特許請求項1〜4記載の樹脂用可塑剤を含有してなる樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−232871(P2006−232871A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45225(P2005−45225)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】