説明

樹脂用添加剤およびその組成物

【課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、充分なナノ粒子分散性及び透明性を有するとともに、特に光学樹脂の屈折率もアップに寄与するための添加剤として有用なポリマーコート無機微粒子を含む光学用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【解決手段】
光学用樹脂に高屈折無機超微粒子を均一に分散させるにあたり、30nm以下の無機微粒子を被分散光学樹脂の構成モノマーを使用してポリマー被覆することによって、均一分散性と光学特性の両立する光学用樹脂組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用添加剤及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
無機化合物の粒子又は少なくとも表面が無機化合物の粒子(以下、無機粒子という)は、一般に、各種プラスチック、フィルム、塗料等の物性改良のための添加剤として用いられている。このような無機粒子は、これまで通常粉体として市販されてきた。一方で、最近は粒子の微細化(ナノ粒子化)が進んでいる。微細化された無機粒子は、凝集エネルギーが大きいため、分散性が低いことが知られている。また、無機粒子は表面が親水性であるため、特に疎水性物質への分散はより困難となる。このため、無機粒子は、水分散体又はアルコール等の親水性有機溶媒分散体として供給されることが多い。これらの理由から、無機粒子は、疎水性モノマー、熱硬化性又は各種エネルギー線硬化モノマー組成物、オリゴマー組成物等に直接添加して均一に分散・配合することができない。また、熱可塑性樹脂等への溶融混合においても分散が困難である。そこで、このような親水性表面を有する無機粒子(無機微粒子)表面をポリマーで修飾(複合化)し、ポリマーコート無機微粒子とすることで、表面を疎水化し、疎水性モノマーや疎水性の熱可塑性樹脂等との相溶性・親和分散性を向上させる必要がある。
【0003】
これに対しては、種々の試みがなされている。例えば、粒子表面へ超分散剤(ソルスパース、アビシア製)等を使用して疎水性の有機溶剤へ分散化する方法、粒子をポリマーグラフトする方法(ポリマー被覆法)等により表面を疎水性化する方法等が挙げられる。ポリマー被覆法としては、マイクロハイブリダイゼーション法やマイクロカプセル化法が知られている。マイクロハイブリダイゼーション法としては、メカノケミカル法(例えば、特許文献1参照。)、ヘテロ凝集法(例えば、特許文献2参照。)、スプレードライ法(例えば、特許文献5参照。)が挙げられる。これらは、静電気的又はイオン的な引き合いで微粒子の表面にポリマー粒子を付着させた後、物理的(機械的)又は熱的なエネルギーを与えてポリマー粒子を融着させることにより、微粒子の表面をポリマー層で被覆してなるポリマー被覆複合粒子を製造する方法である。スプレードライ法は、ソープフリー重合法等で調整された球状有機微粉体の水系分散体中に無機粒子を分散させた後、スプレードライヤーにかけて、無機粒子の外周に有機微粉体を被着させる方法である。しかしながら、サブミクロン以下の粒子径を有する金属酸化物微粒子の親水性表面を有機高分子化合物で精密に制御修飾(コート)するのは困難である。
【0004】
一方、マイクロカプセル化法としては、懸濁重合法(例えば、特許文献4参照。)、界面重合法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。懸濁重合法は、微粒子をモノマー溶液に懸濁させ、液滴を重合することにより、微粒子の表面をポリマー層で被覆してなるポリマー被覆複合微粒子を製造する方法である。
【0005】
しかしながら、懸濁重合法は、サブミクロン以下の親水性の金属酸化物微粒子の表面を改質する手段としては不向きで、必然的に粒子径の大きいものしか得られない手法である。
一方、界面重合法は、カップリング剤を作用させた後に界面活性剤及び水の存在下で重合してグラフトポリマー被覆微粒子とする方法である。無機酸化物微粒子を有機高分子でグラフト・被覆する方法としては、無機酸化物微粒子や金属微粒子にカップリング剤や二重結合を有する化合物で処理した後、各種モノマーをイオン性界面活性剤存在下やイオン性反応性界面活性剤存在下に重合する方法、界面活性剤を含む溶媒中に無機微粒子を分散させ、粒子表面に界面活性剤やポリビニルピロリドン等の高分子分散安定剤を吸着させることにより、無機酸化物微粒子の溶媒中での分散安定化をはかるとともにと有機物との親和性を高めた無機酸化物微粒子にモノマーを吸着させて重合する方法が知られている。
【0006】
アニオン性界面活性剤存在下に重合する例としては、例えば、特許文献6及び非特許文献1が挙げられる。また、ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン性界面活性剤存在下に重合する例としては、特許文献7が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤存在下に重合する例としては、非特許文献2が挙げられる。また、アニオン性反応性界面活性剤存在下に重合する方法としては、特許文献8が挙げられる。
【0007】
しかしながら、これらに使用される高分子分散剤、高分子安定剤、親水性モノマーを含む各種界面活性剤(以下、界面活性剤等という。)は、重合工程中の粒子の分散やモノマーとの安定性を向上させるためには有効であるものの、特に粒子径が100nm以下の粒子(ナノ粒子)の分散においては、界面活性剤等の使用量が大きくなり、かつ、界面活性剤は親水基を含んでいるため、界面活性剤が遊離・凝集し、分散後の光学材料、フィルム、プラスチック等の各種特性の発現は充分なものではなかった。また、反応性界面活性剤を使用しているものでは、各種用途への適用にあたっては、界面活性剤の遊離や凝集の問題はないものの、その表面イオン基の存在や親水性のモノマーを使用した場合の被覆粒子表面へのイオン性基の残存等による親水性のせいで充分な耐水性が得られないことがあった。このことから、各種プラスチックフィルム等の物性改良のため、金属酸化物超微粒子を添加剤として使用し、かつ、その特性を充分に発揮させるには、金属酸化物超微粒子の分散性に未だ改善の余地があった。
【0008】
【特許文献1】特公平7−75665号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開2002−131757号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開2005−120365号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2003−138194号公報(第1−2頁)
【特許文献5】特開平5−112429号公報(第1−2頁)
【特許文献6】特開平9−194208号公報(第2−3頁)
【特許文献7】特開平5−115772号公報(第1−2頁)
【特許文献8】特開2003−252916号公報(第1−2頁)
【非特許文献1】キャロラ・キャリス(Carola H.M. Caris)、外3名、「ブリティッシュ・ポリマー・ジャーナル (British Polymer Journal)」、ソサエティー・オブ・ケミカル・インダストリー(Society of Chemical Industry)、(英国)、1989年、第21巻、第2号、pp.133−140
【非特許文献2】長井勝利、高分子加工、高分子刊行会、1990年、第39巻、第11号、pp.17−22(537−542)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、充分なナノ粒子分散性及び透明性を有するとともに、特に光学樹脂の屈折率もアップに寄与するための添加剤として有用なポリマーコート無機微粒子を含む光学用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、各種光学用プラスチック等の物性改良に使用される添加剤について種々検討したところ、無機微粒子の表面をポリマーコートする際に用いる構成モノマーが無機微粒子の分散性に大きな影響を及ぼすことを見いだした。そこで、無機微粒子を被分散光学用樹脂の構成モノマーを使用してポリマーコートした無機微粒子が、分散性や耐水性等の各種特性に優れ、各種光学プラスチック等の物性改良の添加剤として好適なものであることを見いだした。これらのポリマーコートした無機微粒子やその分散体を含んでなる光学用樹脂組成物が、種々の光学分野において非常に有用なものとなることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0011】
本発明は単体での屈折率が2.00以上であり、平均粒子径30nm以下であり、少なくとも一部が重合性二重結合基含有カップリング剤で表面処理され、被分散光学用樹脂の構成モノマーまたは熱力学的に相溶するモノマー組成を使用してポリマーコートを使用してポリマーコートした無機微粒子を、光学用樹脂に分散された無機微粒子含有光学用樹脂組成物である。
【0012】
本発明はまた、光学用樹脂が2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体、または共重合体の変成物であり、無機微粒子被覆用ポリマーが2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体から構成される請求項2記載の無機微粒子含有光学用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリマーコート無機微粒子含有光学用樹脂組成物は、上述の構成よりなり、充分な分散性及び光学特性を有するとともに、熱可塑性で種々の形状に成形し使用することができる。また、射出成形、押し出し成形・延伸等により高屈折光学用途材料としても使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳述する。
【0015】
本発明のポリマーコート無機微粒子を製造する方法は、無機微粒子の表面をポリマーでグラフト又は被覆した粒子(ポリマーコート無機微粒子)を製造する方法であり、(1)実質的に界面活性剤を使用することなく重合性二重結合含有カップリング剤で無機微粒子を処理する工程と、該処理された無機微粒子を良分散溶媒に分散させる工程と、被分散光学用樹脂の構成モノマーを添加して重合する工程を満たす方法である。
【0016】
上記製造方法(1)において、無機微粒子とは、ポリマーコート無機微粒子の核となる粒子である。なお、本明細書において、無機微粒子とは、微粒子、ナノ粒子、超微粒子であってもよいものである。
【0017】
上記無機微粒子としては、例えば、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属セレン化物等の粒子が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記金属酸化物としては、例えば、屈折率が2.00以上のものとしては、ジルコニア、シリカコートジルコニア等のジルコニア系化合物;チタニア、シリカコートチタニア、アルミナコートチタニア、酸化亜鉛コートチタニア、これらの複合コートチタニア等のチタン系化合物;酸化亜鉛、シリカコート酸化亜鉛、アルミナコート酸化亜鉛、ジルコニアコート酸化亜鉛、酸化スズコート酸化亜鉛、シリカ・アルミナコート複合コート酸化亜鉛類等の酸化亜鉛系化合物、セリア系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ジルコニアであることが好ましい。
【0019】
このように上記無機微粒子としては、また、2層以上の層状構造をもつものであってもよい。すなわち、上記ポリマーコート無機微粒子は、2種以上の層状構造をもつ無機微粒子の表面をポリマーで修飾したものであってもよい。
【0020】
上記2種以上の層状構造をもつ無機微粒子としては、無機微粒子が核部分と殻部分とによって構成される場合、例えば、上述したシリカコートチタニア、アルミナコートチタニア等のように、核部分が1種、殻部分が1種の層状構造を有する形態でもよいし、シリカ・アルミナコートチタニア等のように核部分が1種、殻部分が2種以上の層状構造を有する形態でもよく、核部分が1種又は2種以上、殻部分が1種の層状構造を有する形態でもよく、核部分が2種以上、殻部分が2種以上の層状構造を有する形態でもよい。各層としては、金属の層、非金属の層金属を含有する層等が挙げられる。
【0021】
上記無機微粒子の層状構造はまた、上述した一の層が他の層を被覆するように核部分と殻部分とを有する形態、一の層が他の層を被覆せず、各層が重複している形態であってもよい。
【0022】
上記無機微粒子の大きさは、TEM(透過電子顕微鏡)による測定で、30nm以下であることが好ましく、特に20nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10nm以下である(以下、30nm以下の無機微粒子を「ナノ粒子」ともいう。)。30nm以下の無機粒子を光学用プラスチック等に均質に分散できると、プラスチック等の耐摩擦性、耐熱性、光学特性等を向上することができるので好ましい。
【0023】
このような無機微粒子の具体例としては、NANO FINEとして販売されている堺化学社製のシリカ層とアルミナ層でカプセル化されたZnO粒子であるNANOFINE−50A、超微粒子酸化チタンSTR−60C(20nm)、Alがドープされた透明導電性酸化亜鉛SC−18;住友大阪セメント社製シリカコート酸化亜鉛ZnO−350SiO2(5);マックスライトの商標で販売されている昭和電工社製のシリカコート酸化チタンや酸化亜鉛等が挙げられる。また、特にネオデカン酸ジルコニウムを経由して造られたナノジルコニア粒子(平均粒子径4―10nm)が特に好ましい。
【0024】
上記(1)の製造方法においては、まず、上記無機微粒子をカップリング剤で処理することとなるが、本明細書において「無機微粒子をカップリング剤で処理する」とは、無機微粒子表面にカップリング剤を結合させることである。
【0025】
上記カップリング剤による処理は、実質的に界面活性剤を使用することなく行えばよいが、例えば、溶媒に無機微粒子を分散させた無機微粒子分散体に、カップリング剤を添加することにより行うことが好ましい。
【0026】
上記核粒子分散体において、核粒子濃度は、親水性溶媒を含めた質量100質量%に対し、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜20質量%である。
【0027】
上記カップリング剤としては、核粒子と反応し得る置換基を有し、かつ、核粒子の上層(表面)にポリマーグラフト又は被覆層を形成することができるように二重結合をもつ置換基を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ビニル基を有するカップリング剤、アリル基を有するカップリング剤等が挙げられる。より好ましくは、ビニル基を有するカップリング剤である。
【0028】
上記ビニル基を有するカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ジメチルビニルメトキシシラン等のアルコキシシラン類;ビニルトリクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン等のクロロシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリロキシシラン類;N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロビルトリメトキシシラン等の第四級アンモニウム塩類;イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジアクリルイソステアロイルチタネート等のチタネート類;p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0029】
上記アリル基を有するカップリング剤としては、例えば、アリルジメチルピペリジノメチルシラン、アリルクロロジメチルシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメチルシラン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
上記カップリング剤の使用量としては、無機微粒子(なお、ここでいう無機微粒子の量は、原料分散液中の無機微粒子の量、すなわち原料である無機微粒子分散体の固形分量を示す。)100重量部に対して0.01〜50重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、無機微粒子表面に充分な二重結合が導入されないおそれがあり、50重量部を超えると、経済的観点から好ましくなく、また、未反応カップリング剤の除去に手間を要する。より好ましくは、0.02〜30重量部であり、更に好ましくは、0.05〜20重量部である。
【0031】
上記カップリング剤による処理において、「実質的に界面活性剤を使用することなく」とは、上記製造方法において、界面活性剤を、無機微粒子を親水性溶媒に分散させるためや、カップリング剤処理後の無機微粒子の分散やモノマーの分散のために使用しないことを意味する。
【0032】
上記界面活性剤とは、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、反応性界面活性剤等の通常使用される界面活性剤の他、高分子分散剤、高分子安定剤、親水性モノマー等の、通常の粒子分散やモノマー分散に用いられる添加剤を含むものを意味する。なお、高分子安定剤及び高分子分散剤をまとめて「高分子分散安定化剤」ともいう。
【0033】
ここで、上記無機微粒子分散体を製造する際に使用することができる非重合性の低分子量(分子量500以下)の有機化合物(安定剤や結晶成長抑制剤、界面活性剤の分解物等)については、ここでいう「界面活性剤」には含まないものとする。
【0034】
上記陰イオン界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸のアルカリ金属塩類(セッケン);ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩等の高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩類;ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物硫酸エステル塩等の高級アルキルエーテル硫酸エステル塩類;硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸類、硫酸化オレフィン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩類;アルキルアリールスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩類、オレイル(N−メチル)タウライド等アルキル(N−メチル)タウライド類;スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム等スルホコハク酸ジエステル型界面活性剤;高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩;高級アルコールリン酸ジエステルモノナトリウム塩;高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩;ジアルキルジチオリン酸亜鉛;等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル及びフェニルエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン基含有活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル等のエステル型;等が挙げられる。
【0035】
上記陽イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミン塩及びその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム等)、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0036】
上記反応性界面活性剤としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、その4級化塩、ウンデシレン酸ナトリウム、アリル基、プロペニル基、メタクリル基等共重合可能な基と疎水性部分及び親水性部分を持ったもの等が挙げられる。また、スチレンスルホン酸ナトリウムのような疎水部分の非常に小さいものもこの類に含めている場合もある。
【0037】
上記高分子分散安定化剤としては、ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン等の蛋白質、寒天、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体等の糖誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース化合物、ポリビニルアルコール、末端長鎖アルキル基変性ポリビニルアルコール、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾール等エチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン等の合成親水性高分子等が挙げられる。また、高分子分散安定化剤は、アンカー基と分散安定化基を分離したグラフトポリマーやブロックポリマー、又は、マクロマー(分散安定化剤プレカーサー)型もある。代表的なものとしては、ポリビニルピロリドン重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸である。また、この他に、超分散剤として日本ルーブリゾール社から販売されているソルスパース(カチオン性の吸着部とメチルオキシランポリマーからなる様々な分子形状からなる)等もある。
【0038】
上記親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロライド、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルアミド、ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリル酸アミドプロパンスルホン酸及びその塩等、カルボン酸基、アミド基、スルホン酸基、水酸基や反応後に水酸基を発生させるグリシジル基を持つ水溶性のモノマー等が挙げられる。
【0039】
上記製造方法(1)においては、上述したカップリング剤による処理の後、未反応のカップリング剤を除くため、無機微粒子を洗浄することが好ましい。これにより、次の重合工程でカップリング剤同士が反応して粗大粒子(架橋)共重合体粒子が生成することを防止することができる。その後、実質上水を含まない良分散溶媒に無機微粒子を充分分散させた後、疎水性モノマーを添加して重合することが好ましい。
【0040】
上記製造方法(1)においては次に、無機微粒子を良分散溶媒に分散させることとなる。
このような良分散溶媒への分散工程としては、例えば、上記カップリング剤処理工程により得られる反応液や上記洗浄工程を経た反応液等に、良分散溶媒を添加して行うことが好ましく、また、撹拌や超音波照射等の手法を用いて無機微粒子を溶媒中に充分に分散させることが好適である。
【0041】
上記良分散溶媒としては、カップリング剤が結合した無機微粒子が分散することができるものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロピルアルコール、各種ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン等の芳香族溶媒が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、エタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等の低級アルコールから選ばれる溶媒、その混合物、又は、メチルエチルケトンや酢酸エチル、トルエン等から選ばれる溶媒、特に、疎水性溶媒であるメチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエンの単独溶媒、並びに、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルとトルエン等の混合溶媒が好ましい。
【0042】
また、この様な無機ナノ粒子を、重合基を持つカップリング剤で表面を処理し、疎水性溶媒に分散された市場で入手可能なものも利用可能で、たとえば、住友大阪セメント製のナノジルコニアやナノチタニア等のトルエンやメチルエチルケトン分散体等も使用することができる(例、品名「ナノジルコニアMEK分散液」(NZD−8E61))。
【0043】
さらに、特に本明細書実施例に示したような製造法により得られる無機粒子が好ましい。なかでも、乾燥粒子のカップリング剤を含めた有機物減量が、特に25重量%以下、さらには、20重量%以下のものが最も好ましい。
【0044】
上記製造方法(1)においては、その後、疎水性モノマーの存在下で重合処理を行うことになる。重合には、開始剤を使用することが好適である。
【0045】
上記重合処理において、疎水性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸べヘニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸デカヒドロ−2−ナフチル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸オクチルフェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の、炭素数1〜18の一価アルコール(芳香族含む)と(メタ)アクリル酸とのエステル等の親水性の基を有しない(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル等の特殊エステル;スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルカルバゾール等の芳香族ビニル系単量体;ブテン、ペンテン、ヘキセン等の1−オレフィン類、イソブチレン、シクロヘキセン等のアルケン類;ブタジエン、シクロペンタジエン等のジエン類;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル、1H、1H、5H−オクタルフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート;フッ化オレフィン;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明において、無機微粒子のポリマーコート用モノマーは熱力学的に相溶するモノマー組成であることが好ましい。熱力学的に相溶するモノマー組成とは該モノマーを重合した際の重合体が被分散光学用樹脂と相溶することを意味し、熱力学的に相溶状態であることの確認は、得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点(Tg)を測定することによって確認することができる。具体的には、樹脂の各混合物において、示差走査熱量測定器によって測定されるガラス転移点が、1点に観測されることによって、互いに熱力学的に相溶していることが確認される。また、混合物から成形したフィルムや成形品が透明性を有することを目視にて判別するか、全光線透過率等の光学的性質を所定の方法にて測定することにより透明性を評価することで熱力学的に相溶であることが確認できる。中でも、添加剤として最終的に機能する樹脂(モノマー、オリゴマーの場合はその重合後の樹脂)と同組成のモノマーを用いることがより好ましい。
【0047】
たとえば、ポリメチルメタクリレートを被分散光学用樹脂とする場合は、無機微粒子のポリマーコート用モノマーとしては、メチルメタクリレート、ポリスチレンを被分散光学用樹脂とする場合は、無機微粒子のポリマーコート用モノマーとしては、スチレンモノマー、ラクトン基含有の耐熱アクリレート樹脂(2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとアルキルメタクリレートの共重合体、または、その変性物等)を被分散光学用樹脂とする場合は、無機微粒子のポリマーコート用モノマーとしては、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとアルキルメタクリレートの同比率の混合モノマーを用いることが、最も好ましい。
【0048】
上記重合処理において、(疎水性)モノマーの使用量は、原料である無機微粒子固形分100重量部に対して3〜100重量部であることが好ましい。より好ましくは、5〜50重量部であり、更に好ましくは、10〜25重量部である。
また、さらに上記重合処理において、(粒子固形分+仕込みモノマー)/溶媒の重量比が、0.5以下の重合系で重合することが好ましい、さらに好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.2以下である。
【0049】
上記重合処理において、開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、パーフルオロアルキルパーオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0050】
上記アゾ系重合開始剤としては、アゾアミジン化合物、アゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン等のアルキルアゾ化合物、和光純薬の2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩:V−50、アゾビスイソブチロニトリル:V−60、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルヴァレロニトリル:V65、1、1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル:V40、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル):V70、2、2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル):V68、2、2’−アゾビス(2−メチルブチルニトリル):V59、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル:V19等が挙げられる。
【0051】
上記重合処理においてはまた、水溶性の開始剤及び/又は油溶性の開始剤を用いることができるが、t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、パーフルオロアルキルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル:V−60)、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルヴァレロニトリル):V65、1、1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル):V40、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル):V70、2、2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル):V68、2、2’−アゾビス(2−メチルブチルニトリル):V59、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル:V19等の油溶性の開始剤を使用することが好ましい。
【0052】
上記開始剤の使用割合は、任意に設定することができるが、仕込みモノマー質量に対して0.001〜20質量%であることが好ましい。0.001質量%より少ないと重合がうまく進行せず、20質量%以上であるとグラフト鎖が短くなりすぎ表面の疎水化が不充分となる。更に好ましくは、0.01〜10質量%、最も好ましくは0.1〜5質量%である。
【0053】
上記重合処理後、ポリマー被覆量の測定のためには、遠心沈降後にアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の溶媒での洗浄(重合処理後の洗浄工程)を行なうことが好ましい。この場合、遠心沈降後の洗浄工程を経て得られる乾燥・粉砕物は、熱分析による乾燥物の有機物付着量が、当該乾燥・粉砕物(ポリマーコート無機微粒子)100質量%に対して0.5〜60質量%となることが好ましい。0.5質量%未満であると、充分に表面がコートされていないおそれがあり、60質量%を超えると、架橋物生成のおそれがある。より好ましくは1〜50質量%であり、更に好ましくは2〜40質量%である。
【0054】
なお、上記有機物とは、主に無機微粒子及びその表面を被覆するポリマー成分からなる有機物を意味し、例えば、上記モノマーの重合体であるポリアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
上記ポリマーコート無機微粒子における有機物(例えば、ポリマー)の付着量は、以下の方法により測定することができる。すなわちTG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の有機物付着、またはポリマーコート無機微粒子の質量減少率を測定した際の重量減少率を有機物の付着量とする。
【0056】
このような光学用樹脂添加剤及び光学用樹脂組成物の製造方法としては、上記ポリマーコート無機微粒子やその分散体を含むことになればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリマーコート無機微粒子の乾燥物を単に、あるいは、充分に乳鉢等で粉砕した後、直接目的とする光学用樹脂に溶融混練することによって得ることもできる。また、ポリマーコート無機微粒子の粉末を目的とする光学用樹脂の良溶媒に超音波照射等で充分分散させた後、光学用樹脂の溶媒溶液と混合し、その後、溶媒を除去することによっても得ることができる。更に、溶媒含む重合分散液として得られたものにポリマー溶液を混合した後、脱溶媒してもよい。
【0057】
このようにして光学用樹脂の屈折率をポリマーコート無機微粒子の屈折率を上限として任意に調節可能となる。
【0058】
本発明にて用いられる光学用樹脂組成物は特に限定されないが、例えばアクリル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどを用いることができる。 また、これら被分散光学用樹脂は単独で用いても良く、2種以上の混合物であっても良い。2種以上の混合物にて用いる場合にはそれらが熱力学的に相溶することが好ましい。熱力学的に相溶とは前述の通りである。
【0059】
この中でも耐熱アクリルが好ましく、さらに2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体、または共重合体の変成物が特に好ましい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0061】
なお、各物性の測定方法は、以下の通りである。
【0062】
<粉末X線回折>
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造は、全自動多目的X線回折装置(スペクトリス社製、XPert Pro)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
【0063】
X線源: CuKα(0.154nm)
X線出力設定: 45kV、40mA
ステップサイズ: 0.017°
スキャンステップ時間: 5.08秒
測定範囲: 5〜90°
測定温度: 25℃
また、得られたX線回折チャートを解析ソフト(XRayCrystal)で解析し、式(1)から結晶性を示すC値を算出した。
【0064】
<平均粒子径>
酸化ジルコニウムナノ粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)で観察した。拡大観察された粒子を任意に100個選択し、各粒子の長軸方向の長さを測定してその平均値を平均粒子径とした。
【0065】
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
【0066】
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
【0067】
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
まず重合で得られた重合体組成から、全ての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始める前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
【0068】
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において、150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり、脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち、当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X,Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると脱アルコール反応率が得られる。
【0069】
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。展開液はクロロホルムを用いた。
【0070】
<樹脂の熱分析>
アクリル系樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
【0071】
<メルトフローレート>
メルトフローレートは、JIS−K7210に基づき、試験温度240℃、荷重10kgで測定した。
【0072】
<溶融粘度>
十分に乾燥したアクリル系樹脂のペレットの溶融粘度を、ボーリンインストルメンツ社製キャピラリーレオメーターRH10を用いて測定した。
【0073】
<製造例1>
酸化ジルコニウム粒子の製造方法
(1) ネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(1)の製造
40℃の純水(640g)に水酸化ナトリウム(80g、キシダ化学社製、特級)を攪拌下添加し、溶解した。次いで、ネオデカン酸(396.9g、ジャパンエポキシレジン社製)を攪拌下添加し、ネオデカン酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、当該溶液を80℃まで加熱し、攪拌下、オキシ塩化ジルコニウム(585.99g、ZrOCl2・8
H2O、第一希元素化学工業社製、ジルコゾール ZC−20)を20分間かけて投入し
た。その後80℃で1.5時間攪拌を続けたところ、白色で粘調なネオデカン酸ジルコニウムが生成した。水相を除去した後、当該ネオデカン酸ジルコニウムを純水で十分に水洗した。次いで、当該ネオデカン酸ジルコニウムにテトラデカン(92g)を加えて攪拌した。
【0074】
得られたネオデカン酸ジルコニウム−テトラデカン溶液に純水(400g)を混合した。当該混合物を撹伴機付きオートクレーブ内に仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにより置換した。その後、反応混合液を180℃まで加熱し、3時間反応させることにより酸化ジルコニウム粒子を合成した。180℃で反応した際の容器中圧力は0.9MPaであった。反応後の溶液を取出し、底部にたまった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に乾燥した。乾燥後の当該沈殿物(80g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。次に、濾液を減圧濃縮したトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子を回収した。
【0075】
得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)をトルエン(90g)に分散させて透明溶液を調製した。当該溶液に表面処理剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(1.5g、信越化学工業社製、KBM−503)を添加し、90℃で1時間加熱還流した。次いで、還流処理後の溶液にn−へキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で真空乾燥し、ネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
【0076】
得られた被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶と単斜晶の結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、当該酸化ジルコニウムナノ粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに赤外吸収スペクトルにより分析したところ、C−H由来の吸収とCOOH由来の吸収に加えてSi−O−C由来の吸収が認められた。これら吸収は、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆しているネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに由来するものと考えられる。また、TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、18質量%の減少率となった。よって、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆していたネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、粒子全体の18質量%であることが確認された。
【0077】
また、CHNコーダ分析装置によりナノ粒子中の全C含量を測定し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン由来のC量を差し引くことでネオデカン酸由来のC量を算出し、被覆層におけるネオデカン酸量を求めた。その結果、被覆層におけるネオデカン酸に対する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの存在比率は、モル比で1.5であった。
【0078】
また、粒度分布を測定し、式:σ/x×100[式中、σは粒子の粒度分布の標準偏差を示し、xは粒子の50%累積径(nm)を示す]から変動係数を求めたところ、20%であった。よって、上記ナノ粒子の粒子サイズのバラツキは少ないことが分かった。
【0079】
<製造例2>
MHMA−MMA共重合体の製造方法
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1m2の反応釜に、136kgのメタクリル酸メチル(MMA)、34kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、166kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として187gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルパゾール570)を添加すると同時に、374gの重合開始剤と3.6kgのトルエンからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行い重合体溶液(A)を得た。
【0080】
重合体溶液(A)に、170gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で13kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレットを得た。
【0081】
得られたペレットをダイナミックTGで測定したところ0.15質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は質量平均分子量が147,000、メルトフローレートが11.0g/10min、ガラス転移温度が130℃、また270℃、せん断速度100(1/s)における粘度は470Pa・sであった。
【0082】
<実施例1>
セパラブルフラスコに、製造例1で得られたジルコニアナノ粒子粉末100重量部にメチルエチルケトン300重量部、酢酸ブチル300重量部とトルエン300重量部を加えて分散させた。これに32重量部のMMAおよび8重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として0.2重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、半透明の重合液(1)を得た。この重合液(1)を、n−ヘキサンを添加して生成物を沈降させ、遠心分離機での溶媒分離、トルエンへの再分散を2回繰り返すことにより洗浄し、湿体品(1)を得た。この一部を室温で一夜真空乾燥した後、乳鉢で粉砕したものの有機物付着量は43重量%であった。
この湿体品(1)をトルエン900重量部に再分散させたものに製造例2で得られたラクトン環含有重合体100重量部をトルエン900部に溶解したポリマー溶液を加えて均一に混合した。これを減圧蒸留によって溶媒を除去し、透明な樹脂を得た。屈折率は、1.687であった。
【0083】
<実施例2>
セパラブルフラスコに、製造例1で得られたジルコニアナノ粒子粉末100重量部にトルエン600重量部を加えて分散させた。これに16重量部のMMAおよび4重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として0.1重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、半透明の重合液(2)を得た。この重合液(2)の極一部を実施例1と同様に洗浄・乾燥・粉砕したものの有機物付着量は25重量%であった。
この重合液(2)を製造例2で得られたた重合体溶液(A)100重量部とを混合し、製造例2と同様に環化反応を行い、脱揮により透明なペレットを得た。屈折率は1.735あった。
【0084】
<実施例3>
セパラブルフラスコに、製造例1で得られたジルコニアナノ粒子粉末100重量部にトルエン600重量部を加えて分散させた。これに8重量部のMMAおよび2重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として0.1重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、半透明の重合液(3)を得た。この重合液(3)の極一部を実施例1と同様に洗浄・乾燥・粉砕したものの有機物付着量は25重量%であった。
この重合液(3)を製造例2で得られたた重合体溶液(A)100重量部とを混合し、製造例2と同様に環化反応を行い、脱揮により透明なペレットを得た。屈折率は1.750であった。
【0085】
<実施例4>
ナノジルコニアのMEK分散液NZD−8E61(住友大阪セメント社製:固形分濃度17.1重量%、灰分12.3重量%、乾燥粉砕物の有機物付着量28重量%、ジルコニア平均粒子径3nm)800重量部(メチルエチルケトン663部含有)に、32重量部のMMAおよび4重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として0.1重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、半透明の重合液(3)を得た。
重合液(3)の極一部を同様に洗浄・乾燥・粉砕したものの有機物付着量は59重量%であった。
これを製造例2で得られた重合体溶液(A)100重量部とを混合し、製造例2と同様に環化反応を行い、脱揮により透明なペレットを得た。屈折率は1.660であった。
【0086】
<比較例1>
実施例1と同様のジルコニアナノ粒子粉末100重量部をメチルエチルケトン300重量部に分散させた。これに製造例2で得られたラクトン環含有重合体300重量部をMEK2700部に溶解したポリマー溶液を加えて均一に混合した。僅かにヘーズのある分散溶液を得た。この溶媒を風乾ののち減圧により乾燥させたところ、白色不透明部分のある乾燥物が得られ、ナノ粒子の凝集が起こっていることは明らかであった。
【0087】
<比較例2>
実施例1と同様のジルコニアナノ粒子粉末100重量部をメチルエチルケトン300重量部に分散させた。これに240重量部のMMAおよび60重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として2.5重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、溶媒と分離した半透明の柔らかいゲル状物を得た。これは架橋体となったためで、複数個の重合性基を持つジルコニアナノ粒子が架橋剤の働きをするものと考えられた。
<比較例3>
ナノジルコニアのMEK分散液NZD−8E61(住友大阪セメント社製:固形分濃度117.1重量%、灰分12.3重量%、乾燥粉砕物の有機物付着量28重量%)800重量部に240重量部のMMAおよび60重量部のMHMAを加え、窒素ガスを吹き込んだあと、重合開始剤として2.5重量部の2、2’ーアゾビス(2、4ージメチルバレロニトリル(和光純薬製:V65)を添加して、70℃の温水浴で4時間重合した。重合後、溶媒と分離した白みを帯びた半透明に近い柔らかいゲル状物を得た。これは架橋体となったためで、複数個の重合性基を持つジルコニアナノ粒子が架橋剤の働きをするものと考えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体での屈折率が2.00以上であり、
平均粒子径30nm以下であり、
少なくとも一部が重合性二重結合基含有カップリング剤で表面処理され、
被分散光学用樹脂の構成モノマーまたは熱力学的に相溶するモノマー組成を使用して、ポリマーコートした無機微粒子を、
光学用樹脂に分散させた無機微粒子含有光学用樹脂組成物。
【請求項2】
前記光学用樹脂が、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体、または共重合体の変成物であり、無機微粒子被覆用ポリマーが2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体から構成される請求項1記載の無機微粒子含有光学用樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−74057(P2009−74057A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205598(P2008−205598)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】