説明

樹脂発泡体及び発泡シール材

【課題】防塵性能、特に動的環境下での防塵性能に優れる樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂発泡体は、下記で定義される厚み回復率が65%以上であることを特徴とする。
厚み回復率:樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して20%の厚みとなるように厚み方向に1分間圧縮した後、23℃の雰囲気下、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的防塵性に優れる樹脂発泡体に関する。詳しくは発泡シール材に用いられる樹脂発泡体に関する。より詳細には、防塵、遮光、緩衝等を目的として、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部周りに使用される発泡シール材に用いられる樹脂発泡体、防塵、遮光、緩衝等を目的として、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部と筐体(窓部)との間に挟み込まれて使用される発泡シール材に用いられる樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に固定された画像表示部材や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等に固定されたカメラやレンズなどの光学部材を、所定の部位(固定部など)に固定する際に、シール材として樹脂発泡体が使用されている。
【0003】
例えば、上記のシール材としての樹脂発泡体として、低発泡の微細セルウレタン発泡体とプラスチックフィルムを一体成形したもの(特許文献1参照)、密度が0.2g/cm3以下のポリオレフィン系樹脂発泡体(特許文献2参照)などが使用されていた。
【0004】
これらの樹脂発泡体は、所定の部位に固定される際には、所望の形状に加工されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−227392号公報
【特許文献2】特開2007−291337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、携帯電話や携帯型情報端末機に搭載される画像表示部の大型化、高機能化(情報入力機能としてのタッチパネル機能の搭載)に伴い、シール材に、これまでより高い防塵性能が求められている。携帯電話や携帯型情報端末機では、振動環境下や衝撃負荷環境下といったいわゆる動的環境下での防塵性能が特に求められている。また、このような防塵性能に加えて、携帯電話や携帯型情報端末機の薄型化に伴い、樹脂発泡体が使用されるクリアランス(clearance;すきま、間隔)は小さくなってきており、微小クリアランスに追従できる柔軟性についても求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、防塵性能、特に動的環境下での防塵性能に優れる樹脂発泡体を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、防塵性能、特に動的環境下での防塵性能に優れ、なおかつ、微小クリアランスに追従できる柔軟性を有する樹脂発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂発泡体において、厚み回復率を所定の値以上とすれば、歪回復性に優れる樹脂発泡体が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記で定義される厚み回復率が65%以上であることを特徴とする樹脂発泡体を提供する。
厚み回復率:樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して20%の厚みとなるように厚み方向に1分間圧縮した後、23℃の雰囲気下、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合
【0010】
さらに、本発明は、平均セル径が10〜180μmであり、下記で定義される50%圧縮時の反発応力が0.1〜3.0N/cm2であり、見掛け密度が0.01〜0.10g/cm3である上記樹脂発泡体を提供する。
50%圧縮時の反発応力:樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して50%の厚みとなるように厚み方向に圧縮した際の対反発荷重
【0011】
さらに、本発明は、樹脂発泡体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂を含む上記の樹脂発泡体を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている上記樹脂発泡体を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記ガスが、不活性ガスである上記樹脂発泡体を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、上記不活性ガスが、二酸化炭素である上記樹脂発泡体を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、上記ガスが、超臨界状態のガスである上記樹脂発泡体を提供する。
【0016】
さらにまた、本発明は、上記樹脂発泡体を含むことを特徴とする発泡シール材を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、樹脂発泡体上に粘着層が形成されている上記発泡シール材を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、粘着層が、フィルム層を介して、樹脂発泡体上に形成されている上記発泡シール材を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、上記粘着層がアクリル系粘着剤層である上記発泡シール材を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の樹脂発泡体は、防塵性能、特に動的環境下での防塵性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】動的防塵性を評価する際に使用される評価用サンプルの概略図である。
【図2】評価用サンプルを組み付けた動的防塵性評価用の評価容器の断面概略図である。
【図3】評価容器を置いたタンブラーを示す断面概略図である。
【図4】評価用サンプルを組み付けた評価容器の上面図及び切断部端面図である。
【図5】樹脂発泡体を装着したクリアランス追従性評価治具を示す側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の樹脂発泡体は、樹脂を含む発泡体であり、樹脂を含む組成物である樹脂組成物を、発泡・成形することにより得られる。本発明の樹脂発泡体の形状は、特に限定されないが、シート状(フィルム状を含む)であることが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂発泡体において、下記で定義される厚み回復率は、65%以上(例えば65〜100%)であり、好ましくは70%以上(例えば70〜100%)であり、より好ましくは75%以上(例えば75〜100%)である。
【0024】
厚み回復率は、樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して20%の厚みとなるように厚み方向に1分間圧縮した後、23℃の雰囲気下、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合として定義される。なお、本願において、単に「厚み回復率」という場合、当該定義による厚み回復率を意味する。
【0025】
本発明の樹脂発泡体は、65%以上の厚み回復率を有するので、歪回復性に優れる。このため、上記樹脂発泡体が含まれている発泡シール材は、良好な防塵性、特に良好な動的防塵性(動的環境下での防塵性能)を発揮する。このため、本発明の樹脂発泡体が含まれている発泡シール材をクリアランスに組み付けた場合において、振動や落下時の衝撃によって上記発泡シール材が変形した際、つまり上記発泡シール材が、圧縮され、組み付けられたクリアランス以下の厚みになった状態であっても、速やかに厚みが回復し、クリアランスを埋める事で、塵等の異物の進入を防ぐ事ができる。
【0026】
本発明の樹脂発泡体において、下記で定義される50%圧縮時の反発応力は、特に限定されないが、0.1〜3.0N/cm2が好ましく、好ましくは0.1〜2.0N/cm2であり、より好ましくは0.1〜1.7N/cm2である。50%圧縮時の反発応力は、樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して50%の厚みとなるように厚み方向に圧縮した際の対反発荷重として定義される。なお、本願において、単に「50%圧縮時の反発応力」という場合、当該定義による50%圧縮時の反発応力を意味する。
【0027】
本願発明の樹脂発泡体が、0.1〜3.0N/cm2の50%圧縮時の反発応力を有していると、良好な柔軟性を発揮し、さらに、発泡シール材として用いると、微小クリアランスに対する追従性を発揮することができる。このため、本発明の樹脂発泡体が含まれている発泡シール材をクリアランスに組み付けた場合において、クリアランスが狭い場合であっても、発泡シール材の反発による不具合の発生を防止することができる。なお、3.0N/cm2を超える50%圧縮時の反発応力を有する樹脂発泡体を含む発泡シール材をクリアランスに適用すると、(a)クリアランスに追従できないこと、(b)シール時に発泡シール材周りの部材や筐体等を変形させること、(c)画像表示部に色ムラを生じさせることなどの不具合を生じるおそれがある。
【0028】
本発明の樹脂発泡体の気泡構造は、特に限定されないが、防塵性とより良好な柔軟性を得る点から、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と半連続半独立気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に限定されない)が好ましい。特に、樹脂発泡体中に独立気泡構造部が40%以下(好ましくは30%以下)となっている気泡構造が好適である。
【0029】
本発明の樹脂発泡体において、気泡構造中の平均セル径は、特に限定されないが、10〜180μmが好ましく、より好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは10〜90μm、特に好ましくは20〜80μmである。
【0030】
上記平均セル径は、例えば、デジタルマイクロスコープ(商品名「VH−8000」キーエンス株式会社製)により、気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いて画像解析することにより求めることができる。
【0031】
本願発明の樹脂発泡体において、発泡体の平均セル径の上限を180μm以下(好ましくは150μm以下、さらに好ましくは90μm以下、特に好ましくは80μm以下)とすることにより、防塵性を高めるとともに、遮光性を良好とすることができ、一方、発泡体の平均セル径の下限を10μm以上(好ましくは20μm以上)とすることにより、クッション性(衝撃吸収性)を良好とすることができる。
【0032】
本発明の樹脂発泡体の見掛け密度は、特に限定されないが、0.01〜0.10g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.08g/cm3である。密度が0.01g/cm3未満であると、強度の点で問題を生じ、良好な加工性(特に打ち抜き加工性)を得ることができないおそれがある。一方、密度が0.10g/cm3を超えると、柔軟性が低下し、発泡シール材に用いた際に微小なクリアランスに対する追従性を得ることができないおそれがある。
【0033】
本発明の樹脂発泡体(発泡体)の素材である樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性を示す樹脂(熱可塑性樹脂)が好ましく挙げられる。なお、本発明の樹脂発泡体は、一種のみの樹脂により構成されていてもよいし、二種以上の樹脂により構成されていてもよい。
【0034】
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1など)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなど)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。また、熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお、熱可塑性樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0035】
上記熱可塑性樹脂としては、機械強度、耐熱性、耐薬品性等の特性面や、溶融熱成形が容易といった成形面の点から、ポリオレフィン系樹脂が好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、分子量分布が広く且つ高分子量側にショルダーを持つタイプの樹脂、微架橋タイプの樹脂(若干架橋されたタイプの樹脂)、長鎖分岐タイプの樹脂などが好適に挙げられる。
【0036】
特に、上記ポリオレフィン系樹脂としては、発泡倍率が高くて、なおかつ、独立気泡率が高く、均一な気泡構造を有する樹脂発泡体を得る点から、溶融張力(温度:210℃、引張速度:2.0m/min、キャピラリー:φ1mm×10mm)が3〜50cN(好ましくは8〜50cN)であるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂には、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分も含まれる。ゴム成分や熱可塑性エラストマー成分は、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、樹脂発泡体としたときの柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0038】
上記ゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分としては、ゴム弾性を有し、発泡可能なものであれば特に限定はなく、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、これらのゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
中でも、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分としては、オレフィン系エラストマーが好適に用いられる。オレフィン系エラストマーは、上記熱可塑性樹脂として例示されているポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好である。
【0040】
上記オレフィン系エラストマーは、樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)とゴム成分Bとがミクロ相分離した構造を有するタイプであってもよい。また、樹脂成分Aとゴム成分Bとを物理的に分散させたタイプや、樹脂成分Aとゴム成分Bとを、架橋剤の存在下、動的に熱処理したタイプ(動的架橋型熱可塑性エラストマー、TPV)であってもよい。
【0041】
特に、上記オレフィン系エラストマーとしては、動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)が好ましい。すなわち、本発明の樹脂発泡体では、構成する樹脂として、架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。TPV(動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー)の方がTPO(非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー)よりも、弾性率が高く、且つ圧縮永久歪みも小さいことにより、回復性が良いため、樹脂発泡体とした場合でも優れた回復性を示す。
【0042】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーとは、マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)及びドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである。
【0043】
なお、本発明において、構成する樹脂として動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーを含ませる場合、動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーと添加剤(例えば、カーボンブラックなどの着色剤;軟化剤等)とからなる熱可塑性エラストマー組成物を用いてもよい。
【0044】
特に、本発明の樹脂発泡体では、高圧縮時の柔軟性や圧縮後の形状回復を実現するためには、すなわち、大変形を可能とし、塑性変形を起こさないようにするためには、いわゆるゴム弾性に優れた材料が適している。その観点から、本発明の樹脂発泡体では、構成する樹脂として、上記熱可塑性樹脂とともに、上記ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を含むことが好ましい。
【0045】
本発明の樹脂発泡体の構成する樹脂として、熱可塑性樹脂とともに、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を含む場合、その割合としては、特に限定されないが、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が少なすぎると樹脂発泡体のクッション性が低下しやすくなることや圧縮後の回復性が低下することがあり、一方、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が多すぎると発泡体形成時にガス抜けが生じやすくなり、高発泡性の発泡体を得ることが困難になることがある。
【0046】
このため、本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂において、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との割合は、前者/後者(重量基準)で、70/30〜30/70が好ましく、より好ましくは60/40〜30/70であり、さらにより好ましくは50/50〜30/70である。
【0047】
さらに、本発明の樹脂発泡体は、造核剤が含まれることが好ましい。造核剤が含まれていると、セル径を容易に調整することができ、適度な柔軟性を有するとともに、切断加工性に優れた発泡体を得ることができる。
【0048】
上記造核剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイトなどの酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属水酸化物;カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどが挙げられる。なお、造核剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
造核剤の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.3〜1.5μmであり、より好ましくは0.4〜1.2μmである。平均粒子径が小さすぎると造核剤として十分機能しないおそれがあり、一方、平均粒子径が大きすぎると造核剤がセルの壁を突き破り、高発泡倍率が得られないおそれがある。なお、平均粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定法により測定することができる。例えば、LEEDS & NORTHRUP INSTRUMENTS 社製「MICROTRAC MT−3000」により、試料の分散希釈液から測定(AUTO測定モード)することができる。
【0050】
本発明の樹脂発泡体において、このような造核剤を含む場合の含有量は、特に限定されないが、含有量が少なすぎると造核剤を含むことによる上記効果が得られにくくなり、一方、含有量が多すぎると発泡の際に発泡が阻害されるおそれがある。このため、造核剤の含有量は、構成する樹脂100重量部に対して、0.5〜150重量部が好ましく、より好ましくは2〜140重量部であり、さらにより好ましくは3〜130重量部である。
【0051】
なお、本発明において、構成する樹脂として動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーを含ませる際に上記熱可塑性エラストマー組成物を用いる場合、造核剤は、該熱可塑性エラストマー組成物に添加されていてもよい。
【0052】
本発明の樹脂発泡体は、上記熱可塑性樹脂により構成されているので、燃えやすい。そのため、特に電子機器用途など難燃性の付与が不可欠な用途に本発明の樹脂発泡体を用いる場合には、本発明の樹脂発泡体は、難燃剤が含まれることが好ましい。
【0053】
難燃剤としては、特に限定されないが、塩素系や臭素系などの難燃剤は燃焼時に有害ガスが発生する問題があり、またリン系やアンチモン系の難燃剤においても有害性や爆発性などの問題があるため、ノンハロゲン−ノンアンチモン系である無機難燃剤が好ましい。
【0054】
このような無機難燃剤としては、例えば、金属水酸化物や金属化合物の水和物などが挙げられる。より具体的には、水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム;酸化マグネシウムや酸化ニッケルの水和物;酸化マグネシウムや酸化亜鉛の水和物などが挙げられる。中でも、水酸化マグネシウムが好適に挙げられる。なお、上記水和金属化合物は表面処理されていてもよい。また、難燃剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
本発明の樹脂発泡体において、このような難燃剤が含まれる場合の含有量は、特に限定されないが、少なすぎると難燃化効果が小さくなり、逆に多すぎると高発泡の樹脂発泡体が得られ難くなる。このため、難燃剤の含有量は、構成する樹脂100重量部に対して、5〜70重量部が好ましく、より好ましくは25〜65重量部である。
【0056】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、極性官能基を有し、融点が50〜150℃であり、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも一つの脂肪族系化合物を含有していてもよい。なお、本願では、このような脂肪族系化合物を、単に「脂肪族系化合物」と称する場合がある。
【0057】
本発明の樹脂発泡体において、このような脂肪族系化合物が含まれていると、加工(特に打ち抜き加工)の際に、気泡構造がつぶれにくくなり、形状回復性が向上し、加工性(特に打ち抜き加工性)がより向上する。なお、加工性が向上するのは、このような脂肪族系化合物は結晶性が高く、上記熱可塑性樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)に添加すると樹脂表面に強固な膜を形成し、気泡構造を形成する気泡の壁面同士が互いにブロッキングすることを防ぐ働きをするためと推測される。
【0058】
このような脂肪族系化合物は、特に、ポリオレフィン系樹脂に対しては、極性の高い官能基を含むものが、相溶しにくいため、樹脂発泡体表面に析出しやすく、上記の効果を発揮しやすい。
【0059】
脂肪族系化合物の融点は、樹脂組成物を発泡成形する際の成形温度を下げ、樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)の劣化を抑制する、耐昇華性を付与する等の観点から、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは70〜100℃である。
【0060】
上記脂肪酸としては、炭素数18〜38程度(より好ましくは、18〜22)のものが好ましく、具体的には、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。中でも、ベヘニン酸が特に好ましい。
【0061】
また、上記脂肪酸アミドとしては、脂肪酸部分の炭素数が18〜38程度(より好ましくは、18〜22)の脂肪酸アミドが好ましく、モノアミド、ビスアミドの何れであってもよい。具体的には、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。中でも、エルカ酸アミドが特に好ましい。
【0062】
さらに、上記脂肪酸金属石鹸としては、上記脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛、鉛の塩などが挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂発泡体では、このような脂肪族系化合物としては、特に脂肪酸、脂肪酸アミドが好ましい。
【0064】
本発明の樹脂発泡体において、このような脂肪族系化合物が含まれる場合の含有量は、特に限定されないが、含有量が少なすぎると、樹脂表面に十分な量が析出せず、加工性向上の効果が得られにくくなり、一方、含有量が多すぎると、樹脂組成物が可塑化し、発泡成形の際に十分な圧力を保つことができず、発泡剤(例えば、二酸化炭素などの不活性ガス)の含有量が低下して、高い発泡倍率が得られにくくなり、所望の密度を有する発泡体が得られないおそれがある。このため、脂肪族系化合物の含有量は、構成する樹脂100重量部に対して、1〜5重量部が好ましく、より好ましくは1.5〜3.5重量部であり、さらにより好ましくは2〜3重量部である。
【0065】
本発明の樹脂発泡体は、また、滑剤が含有されていてもよい。滑剤が含有されていると、樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、樹脂の熱劣化を抑制することができる。なお、滑剤は、単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0066】
上記滑剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる。また、滑剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0067】
さらにまた、本発明の樹脂発泡体は、必要に応じて、その他の添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、収縮防止剤、老化防止剤、熱安定剤、HALS等の耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、粘着付与剤、カーボンブラックや有機顔料等の着色剤、充填剤などが挙げられる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0068】
上記その他の添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。なお、本発明において、構成する樹脂として非架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーを含ませる際に上記熱可塑性エラストマー組成物を用いる場合、これらの添加剤は、該熱可塑性エラストマー組成物に添加されていてもよい。
【0069】
本発明の樹脂発泡体を形成する樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂を混合・混練することや、上記造核剤、脂肪族系化合物、滑剤等の添加剤を含ませる場合には、上記熱可塑性樹脂と添加剤等を混合・混練することにより得られる。
【0070】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物を発泡・成形する際に用いられる発泡方法としては、特に限定されず、例えば、物理的方法、化学的方法等の通常用いられる方法が挙げられる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)を樹脂に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発することにより気泡を形成させる方法である。また、一般的な化学的方法は、樹脂に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法である。しかし、一般的な物理的方法は、発泡剤として用いられる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念される。また、一般的な化学的方法では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる。しかも、これらの物理的方法及び化学的方法では、いずれにおいても、微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することは極めて困難であるといわれている。
【0071】
このため、本発明では、発泡方法としては、セル径が小さく且つセル密度の高い発泡体を容易に得ることができる点から、発泡剤として高圧のガスを用いる方法が好ましく、特に発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法が好ましい。なお、不活性ガスとは、樹脂組成物中の樹脂に対して不活性なガスを意味する。すなわち、本発明の樹脂発泡体の気泡構造(発泡構造)は、発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法により形成されることが好ましい。より具体的には、本発明の樹脂発泡体は、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されることが好ましい。
【0072】
ゆえに、本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物を発泡剤として高圧のガスを用いる方法により発泡・成形する方法としては、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法が好ましく、具体的には、樹脂組成物からなる未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法や、溶融した樹脂組成物にガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成する方法などが好適な方法として挙げられる。
【0073】
上記不活性ガスとしては、樹脂発泡体の素材である樹脂に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に限定されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気などが挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素を好適に用いることができる。
【0074】
さらに、樹脂組成物への含浸速度を速めるという観点から、上記高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)は、超臨界状態のガスであることが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、上記のように高濃度で含浸することが可能であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度は気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0075】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物を発泡剤として高圧のガスを用いる方法により発泡・成形する方法としては、予め樹脂組成物を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡樹脂成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式で行ってもよく、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式で行ってもよい。
【0076】
本発明の樹脂発泡体において、バッチ方式で樹脂組成物を発泡・成形する際に、発泡に供する未発泡樹脂成形体を形成する方法としては、例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法;樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス成形する方法;樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。また、未発泡樹脂成形体は、押出成形、プレス成形、射出成形以外に、他の成形方法でも形成することもできる。さらに、未発泡樹脂成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて種々の形状を選択できるが、例えば、シート状、ロール状、板状等が挙げられる。このように、本発明の樹脂発泡体において、バッチ方式で樹脂組成物を発泡・成形する際には、所望の形状や厚さの未発泡樹脂成形体が得られる適宜な方法により樹脂組成物を成形することができる。
【0077】
本発明の樹脂発泡体において、バッチ方式で樹脂組成物を発泡・成形する場合、こうして得られた未発泡樹脂成形体を耐圧容器(高圧容器)中に入れて、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧のガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧のガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる減圧工程、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡核を成長させる加熱工程を経て、樹脂中に気泡を形成させる。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化してもよい。また、高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。
【0078】
本発明の樹脂発泡体において、連続方式での樹脂組成物の発泡・成形としては、より具体的には、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により発泡・成形することが挙げられる。また、連続方式での樹脂組成物の発泡・成形の際には、必要に応じて、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化してもよい。また、高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。さらに、上記混練含浸工程及び成形減圧工程では、押出機のほか、射出成形機などを用いて行うこともできる。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。
【0079】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物の発泡・成形する際のガスの混合量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して2〜10重量%が好ましく、より好ましくは2.5〜8重量%であり、さらにより好ましくは3〜6重量%である。ガス混合量が2%未満であると高発泡な発泡体を得る事ができない場合があり、一方、10%を超える量であると成形機内でガスが分離してしまい、高発泡な発泡体を得る事ができない場合がある。
【0080】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物の発泡・成形する際のバッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、ガスを未発泡樹脂成形体や樹脂組成物に含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択できるが、例えば、ガスとして不活性ガスを、特に二酸化炭素を用いる場合には、6MPa以上(例えば、6〜100MPa)、好ましくは8MPa以上(例えば、8〜100MPa)とするのがよい。ガスの圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、セル径が大きくなりすぎ、例えば、防塵効果が低下するなどの不都合が生じやすくなり、好ましくない。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えてセル径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけでセル径、気泡密度が大きく変わるため、セル径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0081】
また、本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物の発泡・成形する際のバッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、高圧のガスを未発泡樹脂成形体や樹脂組成物に含浸させるときの温度は、用いるガスや樹脂の種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃である。例えば、バッチ方式において、シート状の未発泡樹脂成形体に高圧のガスを含浸させる場合の含浸温度は、10〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜240℃であり、さらにより好ましくは60〜230℃である。また、連続方式において、樹脂組成物に高圧のガスを注入し混練する際の温度は、60〜350℃が好ましく、より好ましくは100〜320℃であり、さらにより好ましくは150〜300℃である。なお、高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。
【0082】
さらに、本発明の樹脂発泡体において、バッチ方式や連続方式で樹脂組成物を発泡・成形する際の減圧工程での減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒である。さらにまた、加熱工程での加熱温度は、例えば、40〜250℃(好ましくは60〜250℃)である。
【0083】
また、本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物の発泡・成形する際に上記の方法を用いると、高発泡の樹脂発泡体を製造することができ、厚い樹脂発泡体を製造することができるという利点を有する。例えば、連続方式で樹脂組成物の発泡・成形する場合、混練含浸工程において押出し機内部での圧力を保持するためには、押出し機先端に取り付けるダイスのギャップを出来るだけ狭く(通常0.1〜1.0mm程度)する必要がある。従って、厚い樹脂発泡体を得るためには、狭いギャップを通して押出された樹脂組成物を高い倍率で発泡させなければならないが、従来は、高い発泡倍率が得られないことから、形成される樹脂発泡体の厚みは薄いもの(例えば0.5〜2.0mm)に限定されてしまっていた。これに対して、高圧のガスを用いて樹脂組成物を発泡・成形すれば、最終的な厚みで0.50〜5.00mmの樹脂発泡体を連続して得ることが可能である。
【0084】
なお、上記の厚み回復率、平均セル径、50%圧縮時の反発応力、見掛け密度、相対密度等は、用いるガス、熱可塑性樹脂やゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分などの種類に応じて、例えば、ガス含浸工程や混練含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程や成形減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後又は成形減圧後の加熱工程における加熱温度などを適宜選択、設定することでも調整することができる。
【0085】
特に、本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂に加えて、造核剤、脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、高圧のガス(特に不活性ガス)を含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることが好ましい。平均セル径が小さく、独立気泡構造率の高い気泡構造を有し、高発泡倍率であり、気泡構造が変形・圧縮しにくく、押圧したときの歪回復性に優れ、加工性に優れる樹脂発泡体を容易に得ることができるからである。
【0086】
また、本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂に加えて、平均粒径が特に小さい造核剤、脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、超臨界状態の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることがより好ましい。平均セル径が極めて小さく、独立気泡構造率の高い気泡構造を有し、高発泡倍率であり、気泡構造が変形・圧縮しにくく、押圧したときの歪回復性に優れ、造核剤が気泡壁を突き破ることをより抑制でき、より加工性に優れる樹脂発泡体を容易に得ることができるからである。
【0087】
さらにまた、本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の混合物であり、その割合が、前者/後者(重量基準)で、70/30〜40/60である熱可塑性樹脂に加えて、該熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5〜150重量部の造核剤、該熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜5重量部の脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、高圧のガス(特に不活性ガス)を含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることが好ましい。
【0088】
本発明の樹脂発泡体は、特定の厚み回復率を有するので、発泡シール材とした際の防塵性、特に動的防塵性に優れる。特に、クリアランスに該発泡シール材に組み付けられている場合において、振動や落下時の衝撃によって発泡シール材が変形した際に、つまり発泡シール材が圧縮され、組み付けられたクリアランス以下の厚みになる状態に変形した際に、速やかに厚みが回復し、クリアランスを埋める事で、塵等の異物の進入を防ぐ事ができる。また、本発明の樹脂発泡体が、特定の平均セル径、特定の50%圧縮時の反発応力、特定の見掛け密度を有していると、より防塵性や柔軟性に優れ、発泡シール材とした際に微小なクリアランスに対してより追従することができる。なお、上記の微小なクリアランスとしては、例えば0.05〜0.5mm程度のクリアランスが挙げられる。
【0089】
(発泡シール材)
本発明の発泡シール材は、上記樹脂発泡体を含む部材である。発泡シール材の形状は、特に限定されないが、シート状(フィルム状を含む)が好ましい。また、発泡シール材は、例えば、樹脂発泡体のみからなる構成であってもよいし、樹脂発泡体に他の層(特に粘着層(粘着剤層)、基材層など)が積層されている構成であってもよい。
【0090】
また、本発明の発泡シール材は、粘着層を有することが好ましい。例えば、本発明の発泡シール材がシート状の発泡シール材である場合、その片面又は両面に粘着層を有していてもよい。発泡シール材が粘着層を有していると、例えば、発泡シール材上に粘着層を介して加工用台紙を設けることができ、さらに、被着体へ固定ないし仮止めすることができる。
【0091】
上記粘着層を形成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を適宜選択して用いることができる。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。中でも、粘着剤としては、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好適である。
【0092】
上記粘着層の厚みは、2〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。粘着層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、厚みは薄い方が好ましい。なお、粘着層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0093】
本発明の発泡シール材において、上記粘着層は、他の層(下層)を介して、設けられていてもよい。このような下層としては、例えば、他の粘着層、中間層、下塗り層、基材層(特にフィルム層や不織布層など)などが挙げられる。さらに、上記粘着層は、剥離フィルム(セパレーター)(例えば、剥離紙、剥離フィルムなど)により保護されていてもよい。
【0094】
本発明の発泡シール材は、上記樹脂発泡体を含むので、良好な防塵性、特に良好な動的防塵性を有し、微小なクリアランスに対して追従可能な柔軟性を有する。
【0095】
本発明の発泡シール材は、所望の形状や厚みなどを有するように加工が施されていてもよい。例えば、用いられる装置や機器、筐体、部材等に合わせて種々の形状に加工が施されていてもよい。
【0096】
本発明の発泡シール材は、上記のような特性を有するので、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる部材として好適に用いられる。特に、本発明の発泡シール材は、電気又は電子機器において、電気又は電子機器を構成する部品を所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる部材として好適に用いられる。
【0097】
すなわち、本発明の発泡シール材は、電気又は電子機器用として好適に用いられる。つまり、本発明の発泡シール材は、電気又は電子機器用発泡部材であってもよい。
【0098】
上記発泡部材を利用して取付(装着)可能な各種部材又は部品としては、特に限定されないが、例えば、電気又は電子機器類における各種部材又は部品などが好ましく挙げられる。このような電気又は電子機器用の部材又は部品としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(表示部)(特に、小型の画像表示部材)や、いわゆる「携帯電話」や「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラやレンズ(特に、小型のカメラやレンズ)等の光学部材又は光学部品などが挙げられる。
【0099】
本発明の発泡シール材の好適な具体的使用態様としては、例えば、防塵、遮光、緩衝等を目的として、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部周りや、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部と筐体(窓部)との間に挟み込んで使用することが挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:35重量部、熱可塑性エラストマー組成物[ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー、TPV)、ポリプロピレンとエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体との割合は重量基準で25/75である、カーボンブラックを15.0重量%含む):60重量部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1重量部にポリエチレン10重量部を配合したマスターバッチ):5重量部、造核剤(水酸化マグネシウム、平均粒子径:0.8μm):10重量部、エルカ酸アミド(融点80〜85℃):2重量部、二軸混練機にて200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを3.8重量%注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0102】
(実施例2)
日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に、二酸化炭素ガスを4.0重量%注入したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0103】
(実施例3)
日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に、二酸化炭素ガスを4.2重量%注入したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0104】
(実施例4)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、熱可塑性エラストマー組成物[ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー、TPV)、ポリプロピレンとエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体との割合は重量基準で25/75である、カーボンブラックを15.0重量%含む):40重量部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1重量部にポリエチレン10重量部を配合したマスターバッチ):10重量部、造核剤(水酸化マグネシウム、平均粒子径:0.8μm):10重量部、エルカ酸アミド(融点80〜85℃):2重量部、二軸混練機にて200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを3.5重量%注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0105】
(比較例1)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:50重量部、熱可塑性エラストマー組成物(ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(TPO)、ポリプロピレンとエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体との割合は重量基準で30/70である、カーボンブラックを15.0重量%含む):40重量部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1重量部にポリエチレン10重量部を配合したマスターバッチ):10重量部、造核剤(水酸化マグネシウム、平均粒子径:0.8μm):10重量部、エルカ酸アミド(融点80〜85℃):2重量部、二軸混練機にて200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを3.8重量%注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0106】
(比較例2)
ポリウレタンを主成分とする樹脂発泡体(シート状、平均セル径:70〜80μm、50%圧縮時の反発応力:1.0N/cm2、見掛け密度:0.15g/cm3
【0107】
(比較例3)
ポリプロピレン[メルトフローレート(MFR):0.35g/10min]:20重量部、熱可塑性エラストマー組成物(ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(TPO)、ポリプロピレンとエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体との割合は重量基準で30/70である、カーボンブラックを16.7重量%含む):80重量部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1重量部にポリエチレン10重量部を配合したマスターバッチ):10重量部、造核剤(水酸化マグネシウム、平均粒子径:0.8μm):10重量部、エルカ酸アミド(融点80〜85℃):2重量部、二軸混練機にて200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、3.8重量%二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0108】
(評価)
実施例及び比較例の発泡体について、見掛け密度、50%圧縮時の対反発荷重(50%圧縮荷重、50%圧縮時の反発応力)、平均セル径、厚み回復率、動的防塵性、クリアランス追従性を、測定又は評価した。その結果を表1に示した。
【0109】
(見掛け密度)
30mm×30mmの打ち抜き刃型にて発泡体を打ち抜き、打ち抜いた試料の寸法を測定した。また、測定端子の直径(φ)20mmである1/100ダイヤルゲージにて資料の厚みを測定した。これらの値から試料の体積を算出した。次に、試料の重量を上皿天秤にて測定した。試料の体積と試料の重量から、発泡体の見掛け密度(g/cm3)を算出した。
【0110】
(50%圧縮時の対反発荷重(50%圧縮荷重、50%圧縮時の反発応力))
JIS K 6767に記載されている圧縮硬さ測定法に準じて測定した。
【0111】
(平均気泡径)
デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−600」キーエンス株式会社製)により、発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、切断面の一定面積(1mm2)に表れた全てのセルの面積を測定し、円相当径換算した後、セル数で平均化する事で求めた。
なお、画像解析には、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いた。
【0112】
(厚み回復率)
樹脂発泡体を電磁力式微小試験機(マイクロサーボ)(「MMT−250)」、島津製作所社製)を用いて、23℃の雰囲気下、厚み方向に、元の厚み(初期厚み)に対して20%の厚みまで圧縮し、1分間圧縮状態を維持した。圧縮解除後、厚みの回復挙動(厚み変化、厚み回復)を、高速度カメラ(ハイスピードカメラ)により撮影し、撮影した映像から圧縮状態解除1秒後の厚みを求めた。そして、下記式から厚み回復率を求めた。
厚み回復率=(圧縮状態解除1秒後の厚み)/(初期厚み)×100
【0113】
(動的防塵性)
樹脂発泡体を額縁状に打ち抜き評価用サンプル(図1参照)とした後、図2及び図4に示すように評価容器(後述の動的防塵性評価用の評価容器、図2及び図4参照)に組み付けた。次に、評価容器中の評価サンプルの外側の部分(粉末供給部)に粒子状物質を供給して、粒子状物質を供給した評価用容器をタンブラー(回転槽)に置いた後、タンブラーを反時計回りに回転させて、繰り返し評価容器に衝撃を負荷した。そして、評価サンプルを通過し、評価容器内部に侵入した粉末の数を計測することにより、動的防塵性を評価した。
【0114】
図2は、評価用サンプルを組み付けた動的防塵性評価用の評価容器の簡単な断面概略図である。図2において、2は評価用サンプルを組み付けた評価容器(評価用サンプルを組み付けたパッケージ)であり、22は評価用サンプル(額縁状に打ち抜いた樹脂発泡体)であり、24はベース板であり、25は粉末供給部であり、27はフォーム圧縮板であり、29は評価用容器内部(パッケージ内部)である。図2の評価用サンプルを組み付けた評価容器において、粉末供給部25と評価用容器内部29は評価用サンプル22より区切られており、粉末供給部25及び評価容器内部29は閉じた系となっている。
【0115】
図3は、評価容器を置いたタンブラーを示す断面概略図である。図3において、1はタンブラーであり 、2は評価用サンプルを組み付けた評価容器である。また、方向aはタンブラーの回転方向である。タンブラー1が回転すると、評価容器2には、繰り返し、衝撃が負荷される。
【0116】
[動的防塵性の評価方法]
動的防塵性の評価方法をより詳細に説明する。
樹脂発泡体を図1に示す額縁状(窓枠状)(幅:2mm)に打ち抜き、評価用サンプルとした。
この評価用サンプルを、図2及び図4に示すように、評価容器(動的防塵性評価用の評価容器、図2及び図4参照)に装着した。なお、装着時の評価サンプルの圧縮率は50%(初期厚みに対して50%となるように圧縮)であった。
図4に示すように、評価用サンプルは、フォーム圧縮板と、ベース板に固定されたアルミニウム板上の黒色アクリル板との間に設けられている。評価用サンプルを装着した評価容器では、評価用サンプルにより、内部の一定領域が閉じられた系となっている。
図4に示すように、評価用サンプルを評価容器に装着後、粉末供給部に粉塵としてのコンスターチ(粒径:17μm)を0.1g入れて、評価容器をダンブラー(回転槽、ドラム式落下試験器)に入れ、1rpmの速度で回転させた。
そして、100回の衝突回数(繰り返し衝撃)が得られるように、所定回数を回転させた後、パッケージを分解した。粉末供給部から、評価用サンプルを通過して、アルミニウム板上の黒色アクリル板及びカバー板としての黒色アクリル板に付着した粒子を、デジタルマイクロスコープ(装置名「VHX−600」、キーエンス株式会社製)で観察した。アルミニウム板側の黒色アクリル板及びカバー板側の黒色アクリル板について静止画像を作成し、画像解析ソフト(ソフト名「Win ROOF」、三谷商事株式会社製)を用いて2値化処理を行い、粒子の個数として粒子総面積を計測した。なお、観察は、空気中の浮遊粉塵の影響を少なくするためクリーンベンチ内で行った。
【0117】
アルミニウム板側の黒色アクリル板に付着している粒子及びカバー板側の黒色アクリル板に付着している粒子を合わせた粒子総面積が、100mm2未満である場合を良好と判定し、100mm2以上200mm2以下である場合をやや不良と判定し、200mm2を越える場合を不良と判定した。なお、粒子観察面の総面積は1872mm2であった。なお、やや不良と評価された樹脂発泡体であっても実用特性に問題はない。
【0118】
さらに、アルミニウム板側の黒色アクリル板に付着している粒子及びカバー板側の黒色アクリル板に付着している粒子を合わせた粒子総面積が、1500[Pixel×Pixel]未満である場合を良好と判定し、1500〜2000[Pixel×Pixel]である場合をやや不良と判定し、2000[Pixel×Pixel]を越える場合を不良と判定した。なお、粒子観察面の総面積は20000[Pixel×Pixel]であった。なお、やや不良と評価された樹脂発泡体であっても実用特性に問題はない。
【0119】
図4は評価用サンプルを組み付けた評価容器(動的防塵性評価用の評価容器)の上面図及び切断部端面図を示す。図4の(a)は、評価用サンプルを組み付けた動的防塵性評価用の評価容器の上面図を示す。また、図4の(b)は、評価用サンプルを組み付けた評価容器のA−A’線切断部端面図である。評価容器は、評価用サンプルを組み付けてから落下させることにより、評価用サンプルの動的防塵性(衝撃時の防塵性)を評価できる。図4において、2は評価用サンプルを組み付けた評価容器であり、211は黒色アクリル板(カバー板側の黒色アクリル板)であり、212は黒色アクリル板(アルミニウム板側の黒色アクリル板)であり、22は評価用サンプル(額縁状の樹脂発泡体)であり、23はアルミニウム板であり、24はベース板であり、25は粉末供給部であり、26はネジであり、27はフォーム圧縮板であり、28はピンであり、29は評価用容器内部であり、30はアルミスペーサーである。評価用サンプル22の圧縮率は、アルミスペーサー30の厚みを調整することにより、制御できる。なお、図4の評価用サンプルを組み付けた動的防塵性評価用の評価容器の上面図(a)では省略されているが、対面するネジ間にはカバー板固定金具が備え付けられており、黒色アクリル板211はフォーム圧縮板27にしっかりと固定されている。
【0120】
(クリアランス追従性)
厚さ1mmのシート状の樹脂発泡体とし、図5に示されるような治具(クリアランス追従性評価治具)に、該樹脂発泡体(発泡体53)をセットし、上面側のアクリル板(厚さ1.0mmのアクリル板51a)の変形の状態を目視にて観察した。具体的には、厚さ2.0mmのアクリル板(厚さ2.0mmのアクリル板51b)の左右の端部に、厚さ0.4mmのスペーサー(厚さ0.4mmのスペーサー52)を設置し、上記スペーサーで挟まれた中央部に樹脂発泡体(発泡体53)を設置し、この上面に、厚さ1.0mmのアクリル板(厚さ1.0mmのアクリル板51a)を設置して、両端のスペーサー部において、上面側のアクリル板(厚さ1.0mmのアクリル板51a)側から荷重(荷重a)をかけて圧縮し、その際の上面側のアクリル板(厚さ1.0mmのアクリル板51a)の変形の有無を目視で観察した。そして、変形がみられない場合を「良好」、変形がみられる場合を「不良」と評価した。
【0121】
【表1】

【0122】
樹脂発泡体は、衝撃が加わると、歪みを生じることがある。例えば、樹脂発泡体を用いて、部材又は部品を、所定の部位に取り付けた後、衝撃が加わると、樹脂発泡体に歪みが生じ、樹脂発泡体と部材又は部品との間や樹脂発泡体と取り付けた部位との間で、間隙が発生することがある。このような間隙は、防塵性や気密性などに悪影響を及ぼす。
【0123】
動的防塵性が良好と評価できる樹脂発泡体は、衝撃が加わったときの歪みからの回復性が高く、上記の間隙が生じにくい。一方、動的防塵性が不良と評価できる樹脂発泡体は、衝撃が加わったときの歪みからの回復性が劣り、上記の間隙が生じやすい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の樹脂発泡体は、防塵性能、特に動的環境下での防塵性能に優れ、発泡シール材に用いられる。
【符号の説明】
【0125】
1 タンブラー
2 評価用サンプルを組み付けた評価容器
211 黒色アクリル板
212 黒色アクリル板
22 評価用サンプル
23 アルミニウム板
24 ベース板
25 粉末供給部
26 ネジ
27 フォーム圧縮板
28 ピン
29 評価容器内部
30 アルミスペーサー
51a アクリル板
51b アクリル板
52 スペーサー
53 樹脂発泡体
a 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記で定義される厚み回復率が65%以上であることを特徴とする樹脂発泡体。
厚み回復率:樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して20%の厚みとなるように厚み方向に1分間圧縮した後、23℃の雰囲気下、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合
【請求項2】
平均セル径が10〜180μmであり、下記で定義される50%圧縮時の反発応力が0.1〜3.0N/cm2であり、見掛け密度が0.01〜0.10g/cm3である請求項1記載の樹脂発泡体。
50%圧縮時の反発応力:樹脂発泡体を、23℃の雰囲気下、初期厚みに対して50%の厚みとなるように厚み方向に圧縮した際の対反発荷重
【請求項3】
樹脂発泡体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂を含む請求項1又は2記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されている請求項1〜3の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記ガスが、不活性ガスである請求項4記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
前記不活性ガスが、二酸化炭素である請求項5記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
前記ガスが、超臨界状態のガスである請求項4〜6の何れかの項に記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかの項に記載の樹脂発泡体を含むことを特徴とする発泡シール材。
【請求項9】
樹脂発泡体上に粘着層が形成されている請求項8記載の発泡シール材。
【請求項10】
粘着層が、フィルム層を介して、樹脂発泡体上に形成されている請求項9記載の発泡シール材。
【請求項11】
前記粘着層がアクリル系粘着剤層である請求項9又は10記載の発泡シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140599(P2012−140599A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255901(P2011−255901)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】