説明

樹脂粒子、その製造方法、発泡性樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体

【課題】曲げ強度に優れた発泡成形体を与え得る樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂成分(A)と、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分(B)とを含む樹脂粒子であり、前記共重合体成分が、前記樹脂粒子の表面から粒子半径の50%までの領域に含まれ、且つ前記樹脂粒子の表面部のZ平均分子量が、90万〜200万であることを特徴とする樹脂粒子により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、その製造方法、発泡性樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、曲げ強度に優れた発泡成形体を与え得るポリスチレン系の樹脂粒子、その製造方法、樹脂粒子から得られる発泡性樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体を製造するための原料である発泡性樹脂粒子として、発泡性ポリスチレン粒子が汎用されている。発泡成形体は、例えば次のようにして得られる。即ち、発泡性ポリスチレン粒子のような発泡性樹脂粒子を加熱して予備発泡させて予備発泡粒子を得る。得られた予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する。次いで、充填された予備発泡粒子を二次発泡させつつ、予備発泡粒子同士の熱融着により一体化させることで発泡成形体を得ることができる。
一般に、上記のようなビーズ法により得られたポリスチレン系樹脂の発泡成形体は、予備発泡粒同士を熱融着により一体化させるが、融着面が弱く耐衝撃性に劣り、特に曲げ強度が劣るという短所を有している。過去、ポリスチレン系樹脂の発泡成形体の物性を改善するための技術が種々提案されている。例えば、特開2009−263512号公報(特許文献1)には、スチレン系単量体と分岐状マクロモノマーとアクリル酸エステルとの共重合体を、発泡シートの基材樹脂用の原料に使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−263512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報に記載の技術は、従来の発泡シートの機械的強度を保ちながら、熱成形条件(成形範囲、加熱時間の低減)の拡大を意図しており、ポリスチレン系樹脂の発泡成形体の曲げ強度の向上を検討した技術ではなかった。
そのため、発泡成形体に優れた曲げ強度を与えうる樹脂粒子の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、発泡成形体の曲げ強度を向上するために、樹脂粒子中の樹脂成分の存在状態について見直した。その結果、樹脂粒子中のスチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体の共重合成分の含有割合が10〜70質量%であって、且つ樹脂粒子の表面から粒子径の50%までの領域に共重合体成分全体の80質量%以上が含まれることを特徴とする樹脂粒子であって、言い換えると、共重合体成分が樹脂粒子の表面付近に偏在していることで、発泡成形体に優れた曲げ強度を与えうる樹脂粒子を提供できることを見い出し、本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、ポリスチレン系樹脂成分(A)と、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分(B)とを含む樹脂粒子であり、
前記共重合体成分が、前記樹脂粒子の表面から粒子半径の50%までの領域に含まれ、且つ
前記樹脂粒子の表面部のZ平均分子量が、90万〜200万であることを特徴とする樹脂粒子が提供される。
【0007】
本発明によれば、上記樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子が提供される。
更に、本発明によれば、発泡性樹脂粒子を、発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡粒子を、発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
更に本発明によれば、上記樹脂粒子の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂を含む種粒子に、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体を吸収させる工程と、
吸収時又は吸収後に、前記分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体を共重合させることで樹脂粒子を得る工程とを含む樹脂粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる、樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、発泡粒子及び、樹脂粒子の製造方法を提供できる。この効果は、共重合体成分が樹脂粒子の表面に偏在していることにより奏されると発明者は考えている。
更に、樹脂粒子の表面部をGPC/MALLS法により測定したlog(R.M.S半径)をy軸とし、log(Mw)をx軸とする相関式の傾きが、0.55以下である場合、より曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる樹脂粒子を提供できる。
【0009】
また、(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体とスチレン系単量体の共重合成分である場合、より曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる樹脂粒子を提供できる。
更に、(メタ)アクリレート系単量体が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である場合、より曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる樹脂粒子を提供できる。
【0010】
また、ウレタン結合を有するビニル系単量体が、下記の一般式
1−(O−CO−NH−R2−NH−CO−O−CO−C(R3)=CH2n
(式中、R1及びR3はアルキル基、R2はアルキレン基、nは3〜10である)
で表されるビニル系単量体から選択される単量体である場合、より曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる樹脂粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】共重合体成分を与えるビニル基数と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【図2】表面のz平均分子量(Mz1)と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【図3】表面と内部のz平均分子量の比と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(樹脂粒子)
本発明の樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂成分(A)と、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分(B)とを基材樹脂として含んでいる。
(1)ポリスチレン系樹脂成分
ポリスチレン系樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等に由来する成分が挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂成分としては、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体に由来する成分であってもよい。このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等の単官能単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能単量体等が挙げられる。
上記ポリスチレン系樹脂成分の内、ポリスチレン樹脂成分であることがより好ましい。
【0013】
(2)分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分(B)
分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体としては、樹脂粒子に曲げ強度に優れた発泡成形体を与えうる単量体であれば、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体が挙げられる。
(メタ)アクリレート系単量体としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0014】
ウレタン結合を有するビニル系単量体としては、下記の一般式
1−(O−CO−NH−R2−NH−CO−O−CO−C(R3)=CH2n
(式中、R1及びR3はアルキル基、R2はアルキレン基、nは3〜10である)
で表されるビニル系単量体から選択される単量体が挙げられる。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられる。
ウレタン結合を有するビニル系単量体としては、新中村化学工業社から入手しうるNKオリゴシリーズ等が使用できる。具体的には、NKオリゴU−6HA、NKオリゴUA−32P、NKオリゴU−15HA等が挙げられる。
上記例示された単量体は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0015】
(3)分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分の存在状態
分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分は特定の割合で樹脂粒子に存在している。具体的には、樹脂粒子の表面から粒子半径の50%までの領域に含まれている。
また、樹脂粒子の表面部のZ平均分子量が90万〜200万となるように、樹脂粒子中に共重合体成分が存在している。
上記数値範囲から理解されるように、樹脂粒子は、共重合体成分が偏在した表面領域を備えており、且つ特定範囲のZ平均分子量であることが好ましい。
共重合体成分が樹脂粒子の表面から50%までの領域に含まれていない場合、十分な曲げ強度が得られないことがある。共重合体成分は、樹脂粒子の表面から粒子径の40%までの領域に含まれていることがより好ましい。
また、この領域に共重合体成分全体の80質量%以上、好ましくは90質量%以上含まれることが好ましい。
【0016】
樹脂粒子の表面部のZ平均分子量が90万未満の場合、十分な曲げ強度が得られないことがある。また、200万より大きい場合、成形性、特に予備発泡粒子同士の熱融着が低下することがある。より好ましいz平均分子量は、90万〜170万である。なお、本発明の表面部とは、樹脂粒子の最表面から半径の40%以内を意味する。
また、共重合成分は、樹脂粒子の表面部のGPC/MALLS法により測定したlog(R.M.S半径)をy軸とし、log(Mw)をx軸とする相関式の傾きが0.55以下であるように存在することが好ましい。0.55を超えると、成形性、特に予備発泡粒子同士の熱融着が低下し、十分な曲げ強度が得られない。好ましい範囲としては、0.53以下である。なお、傾きの下限は、0.40であることが好ましい。
【0017】
(4)他の樹脂
樹脂粒子には、必要に応じ且つ本願の効果を阻害しない範囲で他の樹脂が含まれていてもよい。
他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
【0018】
(5)添加剤
樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等の難燃剤が挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
【0019】
可塑剤としては、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
結合防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0020】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0021】
(6)樹脂粒子の形状
樹脂粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。この内、球状であるのが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2mm〜5mmの平均粒子径のものを使用できる。また、成形型内への充填性等を考慮すると、平均粒子径は、0.3mm〜2mmがより好ましく、0.3mm〜1.4mmが更に好ましい。
【0022】
(7)樹脂粒子の製造方法
樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体を吸収させ重合させることで、樹脂粒子を得ることができる。
(i)種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)ポリスチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(2)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(3)水性媒体及びポリスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
【0023】
種粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が1mmの樹脂粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が0.7mm〜0.9mm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜70万が好ましく、更に好ましくは15万〜50万である。
【0024】
(ii)含浸工程
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、スチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体を供給することで、各単量体を種粒子に吸収させる。供給される分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体は、樹脂粒子中に含まれる分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体にほぼ対応している。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0025】
使用する各単量体には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
水性媒体中には、共重合体成分を与える単量体の小滴及び種粒子の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来から単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。そして、前記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0027】
(iii)重合工程
重合工程は、使用する単量体種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。重合工程は、単量体を含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用する単量体全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい。2段階以上に分けて重合させる場合、通常、含浸工程も2段階に分けて行われる。2段階以上に分けた重合工程の重合温度及び時間は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0028】
(発泡性樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子は、上記樹脂粒子に発泡剤を含浸させた粒子である。
(1)発泡剤
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0029】
更に、発泡剤の含有量は、2〜12質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性樹脂粒子から所望の密度の発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。12質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、3〜10質量%である。
【0030】
(2)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は、上記基材樹脂に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。含浸は、重合と同時に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は、上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0031】
(発泡粒子)
発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性樹脂粒子を発泡させることで得られる。発泡粒子は、クッションの充填材等の用途ではそのまま使用でき、更に型内発泡させるための発泡成形体の原料として使用できる。発泡成形体の原料の場合、発泡粒子は予備発泡粒子と、発泡粒子を得るための発泡は予備発泡と、通常称される。
【0032】
発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.03g/cm3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、次に得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.03g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性樹脂粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性樹脂粒子の発泡工程において発泡粒子同士の結合を減少できる。
【0033】
(発泡成形体)
発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体が製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調製する等して調製できる。
発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【0034】
ここで、発泡成形体が、表面領域にスチレン系単量体と分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体に由来する共重合体成分が存在した樹脂粒子から得られることで、表面のz平均分子量(Mz1)を特定の範囲にできる。例えば、90×104〜200×104の範囲とできる。また、樹脂粒子全体のz平均分子量(Mz2)も特定の範囲であることが好ましい。例えば、50×104〜110×104の範囲とできる。更に、Mz1/Mz2を特定の範囲、具体的には、1.5〜2.0の範囲とすることが好ましい。z平均分子量を調整することで、曲げ強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
発泡成形体は、例えば、魚、農産物等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材等に使用できる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<共重合体成分の存在状態>
樹脂粒子を中心を通る面で切断し、断面の中心から表面にかけて顕微IRイメージングマッピング法にて分析し、ポリスチレン系樹脂成分と、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分の吸光比(1730cm-1/1600cm-1)を算出し、共重合体成分の存在状態と、含有量を測定する。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One(Perkin Elmer社製)
高速IRイメージングシステム Spectrum Spotlight 300
測定モード:Imaging 透過法
測定条件:分解能=8cm-1 スキャン回数2、8 ピクセルサイズ6.25×6.25μm
前処理方法:スライス試料をフッ化Ba板に挟み、透過法に測定後、吸光度の強度比マッピングを実施。
スライス試料作製:ウルトラミクロトーム ULTRACUT−UCT(ライカ社製)
スライス使用ナイフ:ダイヤモンドナイフ 切削厚み10μm
【0036】
<Z平均分子量>
樹脂粒子表面のZ平均分子量(Mz1)と樹脂粒子全体のz平均分子量(Mz2)は以下のようにして測定する。
樹脂粒子表面のZ平均分子量は、発泡成形体の表面部として算出する。
即ち、発泡成形体は、樹脂粒子を予備発泡させて、型内成形したものであるから、樹脂粒子表面は発泡成形体表面部に相当し、本発明では樹脂粒子表面のZ平均分子量を発泡成形体表面部のZ平均分子量とする。
即ち、密度0.02g/cm3の発泡成形体を作製し、樹脂粒子表面から形成されている発泡成形体表面部を0.1〜0.3mmでスライスし、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にてz平均分子量を測定する。
一方、樹脂粒子全体のz平均分子量は、樹脂粒子を試料とし、同様にGPC法にて測定する。
【0037】
<GPC/MALLS法>
密度0.02g/cm3の発泡成形体を作製し、樹脂粒子表面から形成されている発泡成形体表面部を0.1〜0.3mmでスライスし、試料とする。
(THF系GPC−MALLSの測定条件)
・GPC装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
・MALLS:DAWN HELEOS(Wayyat Technology社製)
・濃度検出器:示差屈折率計(RI検出器)
・MALLSレーザー波長:658nm
・カラム:TSKgelGMHHR−H(7.8mmID×30cm)×2本(東ソー社製)
・溶離液:THF(キシダ化学社製1級)
・流速:1.0ml/min
・試料濃度:1mg/ml
・注入量:100μl
・カラム温度:40℃
・検出器温度:RI検出器:40℃、MALLS:室温
・試料前処理:試料を秤量し、所定量の溶離液を加えて一晩、静置溶解させる。測定直前に緩やかに振り混ぜ、0.5μmのテフロン(登録商標)カートリッジフィルターでろ過する。
【0038】
<嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的には、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0039】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
【0040】
<平均最大曲げ強度>
発泡成形体の平均最大曲げ強度をJIS K9511:1999「発泡プラスチック保温材」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、密度0.02g/cm3の発泡成形体から縦75mm×横300mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片の最大曲げ強度を、曲げ強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、圧縮速度10mm/分、支点間距離200mm、加圧くさび10R及び支持台10Rの条件下にて測定する。試験片を3個用意し、各試験片の最大曲げ強度を同じ要領で測定し、その相加平均を平均最大曲げ強度とする。
評価:平均最大曲げ強度 0.33MPa以上:○
0.33MPa未満:×
【0041】
(実施例1)
内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、重量平均分子量が30万であるポリスチレン樹脂(積水化成品工業社製ポリスチレン)の種粒子2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム10gを供給して撹拌しつつ75℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド32.6g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート3.2gをスチレンモノマー1000gに溶解させ、このスチレンモノマーを全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。
そして、分散液中に前記スチレンモノマーを供給し終えてから30分経過後に、この分散液中にスチレンモノマー2650gを60分かけて一定の供給速度で供給しながら、分散液を60分88℃とすることで、ポリスチレン系樹脂からなる種粒子を得た。
【0042】
次に、分散液を88℃に保持したまま、スチレンモノマー4000gにトリメチロールプロパントリメタクリレート(3官能モノマー、分子量338)12.0gを溶解したものを90分かけて一定の供給速度で供給しながら、シード重合を行うことで、樹脂粒子を得た。続いて反応容器を密閉し、30分かけて120℃に加熱して60分放置し、その後に冷却した。
次に、樹脂粒子が分散した分散液を100℃に保持し、続いて、重合容器内にシクロヘキサン90g、ジイソブチルアジペート70g、ブタン900gを圧入して3時間に亘って保持することにより、樹脂粒子中にブタンを含浸させた。この後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
【0043】
発泡性樹脂粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。
そして、発泡性樹脂粒子を加熱して嵩密度0.020g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。次に、予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得た。発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.020g/cm3(20kg/m3)であった。発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
【0044】
(実施例2〜9及び比較例1〜5)
表1に示す共重合体成分を与える単量体を使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例2〜9の発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
一方、比較例1〜5の発泡成形体は、曲げ強度に劣るものであった。
実施例1〜9及び比較例1〜5の結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1の結果を用いて、共重合体成分を与えるビニル基数と曲げ強度との関係を図1に、表面のz平均分子量(Mz1)と曲げ強度との関係を図2に、表面と内部のz平均分子量の比と曲げ強度との関係を図3に示す。
図1から、共重合体成分を与えるビニル基数が3〜10個の範囲であれば、曲げ強度を顕著に向上できることが分かる。
図2から、Mz1が90×104〜200×104の範囲であれば、曲げ強度を顕著に向上できることが分かる。
図3から、Mz1/Mz2が1.5〜2.0の範囲であれば、曲げ強度を顕著に向上できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂成分(A)と、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体の共重合体成分(B)とを含む樹脂粒子であり、
前記共重合体成分が、前記樹脂粒子の表面から粒子半径の50%までの領域に共重合体成分全体の80質量%以上含まれ、且つ
前記樹脂粒子の表面部のZ平均分子量が、90万〜200万であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
樹脂粒子の表面部をGPC/MALLS法により測定したlog(R.M.S半径)をy軸とし、log(Mw)をx軸とする相関式の傾きが、0.55以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記共重合体成分が、(メタ)アクリレート系単量体及びウレタン結合を有するビニル系単量体から選択される単量体とスチレン系単量体の共重合体である請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系単量体が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である請求項3に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記ウレタン結合を有するビニル系単量体が、下記の一般式
1−(O−CO−NH−R2−NH−CO−O−CO−C(R3)=CH2n
(式中、R1及びR3はアルキル基、R2はアルキレン基、nは3〜10である)
で表されるビニル系単量体から選択される単量体である請求項3に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
23℃のトルエンに溶解した際に、不溶分が0.1質量%以下である請求項1〜5のいずれかつに記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡性樹脂粒子を、発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項9】
請求項8に記載の発泡粒子を、発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂を含む種粒子に、分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体を吸収させる工程と、
吸収時又は吸収後に、前記分子中に3〜10個のビニル基を有する単量体とスチレン系単量体を共重合させることで樹脂粒子を得る工程とを含む樹脂粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−193242(P2012−193242A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56781(P2011−56781)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】