説明

樹脂粒子、その製造方法及びその樹脂粒子を用いた光拡散板

【課題】リン酸エステル類の非存在下でも、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子を容易に得る方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第1の(メタ)アクリル系樹脂5〜50重量%を、架橋性ビニル単量体を0〜5重量%含むスチレン系単量体に溶解し、得られた溶液を、水性媒体の存在下で懸濁重合させることで、一粒子中で第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分が、スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、その製造方法及びその樹脂粒子を用いた光拡散板に関する。更に詳しくは、本発明は、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子、その製造方法及びその樹脂粒子を表面層に利用した光拡散板に関する。該光拡散板は、光拡散性、光透過性に優れるとともに、艶消し効果を有し、表面に傷がつきにくいため、液晶ディスプレー等に用いられるバックライト装置用および蛍光灯或いはLED等各種光源の照明用カバー用の光拡散板として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
一粒子中に樹脂種の異なる二つの部分を有する粒子として、乳化重合法により得られるいわゆるコアシェル型の粒子はよく知られている。
また、懸濁重合により製造されるアクリル樹脂粒子は、例えば化粧品のすべり性付与剤、電子写真用トナー、担体、塗料、インキ、樹脂改質剤等幅広い分野で使用される。これらに用いられるアクリル樹脂粒子は真球状の単一組成からなるものである。
【0003】
一方、架橋性単量体を含む重合性ビニル単量体に特定のポリオレフィン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂あるいはスチレン系エラストマー等の樹脂を溶解して懸濁重合することにより、多孔質状あるいは表面に皺状の凹凸を有する樹脂粒子が得られている。(特許文献1〜3)
これらの技術は、ポリオレフィン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂あるいはスチレン系エラストマー等の線状高分子が、重合性ビニル単量体から生成する架橋共重合体に対して相溶性が低いため、重合性ビニル単量体の重合の進行に伴って析出することを利用している。
【0004】
また、樹脂種の異なる2つの部分が局所的に存在する樹脂粒子は、例えば、これらの粒子内の界面による光の散乱及び反射効果を有する従来の単一粒子にはない性質の粒子が得られる。また、親水性と疎水性のような異なる表面特性を有する粒子が得られる。これらの性質を利用して、光拡散板用粒子、診断薬用粒子、医療用基材、生体適合性材料、歯科用材料、化粧基材、防汚染塗料、防曇材、帯電防止剤、導電性接着剤、導電性封止材、磁性粒子、記録媒体、クロマトグラフィー用充填材等への応用が考えられる。
一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した粒子は、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂を架橋性ビニル単量体を含む(メタ)アクリル系単量体に溶解して、リン酸エステル類の存在下で懸濁重合することにより得られている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−7704号公報
【特許文献2】特開平10−60011号公報
【特許文献3】特開平11−140139号公報
【特許文献4】特開2004−43557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3の技術で得られる粒子は、多孔質状あるいは表面に皺状の凹凸を有する樹脂粒子であり、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在したものではない。更に、特許文献4の方法ではリン酸エステル類の存在下でなければ、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子を得ることは容易でなかった。そこで、リン酸エステル類の非存在下でも、一粒子中に異なる樹脂種の部分が偏在した樹脂粒子を容易に得る方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明によれば、第1の(メタ)アクリル系樹脂5〜50重量%を、架橋性ビニル単量体を0〜5重量%含むスチレン系単量体に溶解し、得られた溶液を、水性媒体の存在下で懸濁重合させることで、一粒子中で第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分が、スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記方法により得られる、一粒子中で第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分がスチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を備えることを特徴とする光拡散板が提供される。
更に、本発明によれば、上記の光拡散板が、透明樹脂中に光拡散粒子を含む基体用樹脂組成物からなる基体と、基体の少なくとも一方の面に積層された、上記の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層とを備えることを特徴とする光拡散板が提供される。
更に、本発明によれば、上記光拡散板を用いて製造された照明用カバーが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の(メタ)アクリル系樹脂をスチレン系単量体に溶解し、得られた溶液を、水系媒体の存在下で懸濁重合させることにより、リン酸エステル類の非存在下でも、一粒子中に性質の異なる二つの部分が偏在した樹脂粒子を容易に得ることができる。得られた樹脂粒子は、樹脂の改質剤あるいは光拡散剤等とこれまでの球状粒子にはない特性を有し、塗料、粘着剤、構造材、機能性材料、充填剤等の改質剤等として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の樹脂粒子の概略説明図である。
【図2】実施例1で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図3】実施例2で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図4】実施例3で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(樹脂粒子およびその製造方法)
本発明の樹脂粒子は、一粒子中に第1の(メタ)アクリル系樹脂(以下、可溶性樹脂と称する)からなる部分が、スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在していさえすればその形状は特に限定されない。例えば、球状、断面楕円形状のような略球状、棒状、鱗片状、板状等の種々の形状を取りえる。また、粒子の最大長と最小長の比が1:1〜1:3であることが好ましい。特に、球状、断面楕円形状のような略球状が好ましい。樹脂粒子の大きさは、それを使用する用途により異なるが、体積平均粒径1〜500μm程度であることが好ましい。ここで、体積平均粒径は、コールターカウンター法により測定した値であり、球相当直径を示した値である。
なお、本明細書で用いられる(メタ)アクリルの用語は、メタクリルまたはアクリルを意味する。
【0012】
本発明では、個々の樹脂粒子中に可溶性樹脂からなる相(B)が、スチレン系単量体由来の樹脂からなる重合体相(A)に偏在している。ここで偏在とは、1つのA相とn個のB相がn個の界面を介して存在している場合、n個のA相とn−1個のB相が2(n−1)個又はn−1個の界面を介して交互に存在している場合及びそれらの組み合わせを意味し、より具体的には、AとB相の2層からなる場合、1つの板状のB相を介して2層のA相からなる場合、1つのA部分中に複数のB相が粒状に分散する場合等が挙げられる(AとBは逆であってもよい)。特に、典型的な樹脂粒子として、図1に示すようにAとB相が偏在した樹脂粒子が挙げられる。上記界面は、光学顕微鏡等による透過光の観察により明確に観察できる。
【0013】
図1は、樹脂粒子中にスチレン系単量体由来の樹脂からなるA部分が樹脂粒子表層で凸レンズ状で3個存在する場合である。このような構造をもつ本発明の樹脂粒子は、光拡散性や光線透過性等の光学的性質においては、外観である球状粒子の性質と樹脂粒子中のA相の形状に由来する凸レンズの性質を合わせもっている。
なお、本発明で言うところのレンズ状とは1つの曲面及び1つの平面から構成されるもの及び2つの曲面から構成される凸レンズ様の形態を有することを指す。また、板状とは2つの平面から構成されるものを指す。この板状には、両端が中心部に比べて厚い又は薄い形状、平面状に凹凸を有する形状等が含まれる。
本発明の樹脂粒子は、スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分が、樹脂粒子表層で、前記のようにレンズ状で存在するのが好ましい。
【0014】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
本発明において、第1の(メタ)アクリル系樹脂には、スチレン系単量体由来の重合体相(A)と、(メタ)アクリル系樹脂からなる相(B)が相分離構造をとる樹脂を使用することが必要である。重合体相(A)と相(B)との相分離しやすさ(相分離性)は、ポリマーブレンド−相溶性と界面−(株式会社シーエムシー 発行 1981年12月8日 第1刷発行)、また各相を構成する重合体の溶解度パラメータ(SP値)等から推察することもできる。このSP値は高分子データハンドブック−基礎編−(株式会社培風館 発行 昭和61年1月30日初版発行)等に記載されている。
従って、第1の(メタ)アクリル系樹脂は、スチレン系単量体に溶解するが、その重合体相(A)とは相溶性が低い樹脂を用いるのがよい。
【0015】
第1の(メタ)アクリル系樹脂としては(メタ)アクリル酸エステル類を主成分(少なくとも50重量%以上)とする単量体を重合又は共重合させることにより得られるものを使用できる。(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。これら樹脂は架橋していないものである。また、重合方法は、特に限定されず、懸濁重合法、塊状重合等が挙げられる。
上記第1の(メタ)アクリル系樹脂は、20℃以上のガラス転移温度を有し、常温で固体であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満の場合、最終的に得られる樹脂粒子の形状安定性、流動性等が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0016】
本発明で用いうるスチレン系単量体は、上記第1の(メタ)アクリル系樹脂を溶解しうる単量体である。
例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン及びその誘導体等が挙げられる。
これらの重合性単官能単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じてスチレン系単量体と共重合する他の単量体を用いてもよい。
【0017】
スチレン系単量体と共重合可能なスチレン系単量体以外の単量体としては、(メタ)アクリル系単量体、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、アクリル酸、メタクリル酸等、及び無水マレイン酸等が挙げられる。
【0018】
本発明の方法で用いられる架橋性ビニル単量体としては、1分子中に2つ以上のビニル基を有する多官能ビニル単量体、アリル基を有する重合性ビニル単量体、加水分解性アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体が挙げられる。架橋性ビニル単量体の添加により、例えば、アルコール等の溶剤に対する耐溶剤性を向上することが可能である。また、架橋性ビニル単量体の添加により、例えば、(メタ)アクリル系樹脂に本発明の粒子を練り込んだ場合に粒子の形を保つことが可能である。
また、スチレンを主成分とした単量体を用い、第1の(メタ)アクリル系樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂を用いた場合には、重合体相(A)と(B)相との屈折率差の大きさから、大きな光の散乱、反射特性を付与することができ好ましい。
【0019】
前記スチレン系重合体相を構成する単量体は、スチレン系単量体50〜100重量%、架橋性ビニル単量体0〜5重量%、その他単量体0〜50重量%からなる。架橋性ビニル単量体の使用割合は、0.1〜5重量%がより好ましい。
架橋性ビニル単量体の使用割合が、5重量%を超える場合には、相分離が過度に進行し、全体として球状の粒子が得られず、粒子表面に凹凸又は窪みが生じるようになり、また場合によっては多孔質状の粒子が得られるので好ましくない。
また、樹脂と溶融混合する場合には本発明の樹脂粒子は架橋していることが好ましい。
【0020】
第1の(メタ)アクリル系樹脂の使用割合は、架橋性ビニル単量体、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル系樹脂の合計量に対して5〜50重量%である。より好ましくは7〜25重量%である。50重量%を超える量においては、粘度の上昇により可溶性樹脂をスチレン系単量体に溶解して用いることが実質的に困難となる恐れがある。5重量%より少ない量においては、目的とするドメイン構造が得られない恐れがある。
【0021】
樹脂粒子中の第1の(メタ)アクリル系樹脂(B)相のドメイン構造及び(A)相のドメイン構造は、重合体相(A)を構成する単量体の種類、(B)相として用いる第1の(メタ)アクリル系樹脂の種類及び使用量により調整が可能である。例えば、第1の(メタ)アクリル系樹脂を5〜25重量%程度用い、スチレン系重合体相(A)を構成する単量体を水性媒体の存在下で懸濁重合(水系懸濁重合)することにより、容易に図1の構造に分類される樹脂粒子を得ることができる。
【0022】
本発明では、油相にリン酸エステル類を添加しなくても、本発明の形状の樹脂粒子を製造することができるが、油相にリン酸エステル類を添加しても同様の樹脂粒子を製造することができる。
このようなリン酸エステル類の例として、特には限定されないが、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(2)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(4)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(6)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエーテル(4)ノニルフェニルエーテルリン酸等が挙げられる。この内、効果が特に顕著なものとしてラウリルリン酸が挙げられる。
【0023】
リン酸エステルの添加量は単官能及び多官能重合性ビニルモノマーの合計量に対し0.01〜3重量%が好ましい。添加量が3重量%を超えると、相分離はするが相分離後の(A)相の形状が凸レンズ状又は板状のドメイン構造で存在し難いことがある。また、添加量が0.01重量%を下回ると、相分離の促進効果が充分でないことがあり、従って再現性よく本発明の樹脂粒子を得られ難いことがある。
【0024】
本発明では、懸濁重合時に、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、通常懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が利用できる。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。この中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が目的とする樹脂粒子が得られやすいという点から好ましい。
これらの重合開始剤の使用割合は、重合体相(A)を構成する単量体(スチレン系単量体、架橋性ビニル単量体及びその他の単量体)の合計量に対して、0.01〜10重量%、特に、0.1〜5.0重量%が更に好ましい。
【0025】
本発明の方法では、水系懸濁重合の際に、懸濁粒子の安定化を図るために、重合体相(A)及び(B)相の合計量100重量部に対して、通常100〜1000重量部程度(より好ましくは、110〜500重量部)の水を分散媒体として用いるとともに、水相に分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。これらの中でも、目的とする樹脂粒子及び樹脂粒子凝集体を安定して得ることができるという点において、第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、あるいはコロイダルシリカが特に好ましい。
【0026】
また、本発明の方法では、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0027】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン− オキシプロピレンブロックポリマー等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
【0028】
これら分散安定剤や界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒子径及び樹脂粒子凝集体の大きさならびに重合時の分散安定性等を考慮して、それらの選択や組み合わせ、使用量等を適宜調整して使用される。一例を挙げれば、分散安定剤の単量体に対する添加量は0.5〜15重量%で程度であり、界面活性剤の添加量は水に対し0.001〜0.1重量%程度である。
また、水相中での単量体の重合を抑制し、液滴内部での相分離を促進し、本発明の樹脂粒子を得るために水系分散媒体中に0.01〜1重量%程度の水溶性重合禁止剤を用いてもよい。水溶性重合禁止剤としては特に限定されないが、例えば亜硝酸塩類、ハイドロキノン等を挙げることができる。
【0029】
以上のように調整された分散媒体に、可溶性樹脂(B)相を溶解した重合体相(A)を構成する単量体を分散させるには、プロペラ翼等の撹拌力によってモノマー滴に分散する方法やローターとステーターから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサー、超音波分散機等を用いることで行うことができる。樹脂粒子の平均最大粒径は、単量体混合物と水との混合条件や、分散安定剤等の添加量及び攪拌条件、分散条件等により調整可能である。この平均最大粒径は用途に応じて適宜調整される。なお、樹脂粒子の径を揃えるには、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機を用いる方法等を用いればよい。
【0030】
本発明の方法では、上記のようにして、(B)相を溶解した重合体相(A)を構成する単量体が球状の液滴として分散された分散媒体を、必要に応じて加熱することにより重合を行なうことができる。重合温度は、通常30〜100℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃ である。重合温度を保持しながら重合させる時間としては一般的に0.1〜10時間程度である。重合中は、単量体滴の浮上や重合後の樹脂粒子の沈降が防止される程度の緩い撹拌を行うのが好ましい。
【0031】
重合終了後、所望により、分散安定剤を塩酸等により溶解し、樹脂粒子を、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等により得るか、又は同様の操作により分散媒から樹脂粒子の含水ケーキを分離することができる。この含水ケーキを水洗し、乾燥することで目的とする樹脂粒子を得ることができる。本発明の樹脂粒子は、樹脂種の異なる2つの部分が局所的に存在する樹脂粒子であり、例えば、これらの粒子内の界面による光の散乱及び反射効果を有する従来の単一粒子にはない性質の粒子である。また、親水性と疎水性のような異なる表面特性を有する粒子である。これらの性質を利用して、光拡散板用粒子、診断薬用粒子、医療用基材、生体適合性材料、歯科用材料、化粧用基材、防汚染塗料、防曇材、帯電防止剤、導電性接着剤、導電性封止材、磁性粒子、記録媒体、クロマトグラフィー用充填材等へ好適に使用することができる。
【0032】
(光拡散板)
本発明の光拡散板は、本発明の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を有する。
さらに、本発明の光拡散板は、透明樹脂中に光拡散粒子を含む基体用樹脂組成物からなる基体と、基体の少なくとも一方の面に積層された、上記の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層とを有する。
【0033】
(1)基体
基体を構成する透明樹脂は、表面層を構成する樹脂と融着性を有する樹脂であり、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(カーボネート樹脂ともいう)、ポリスチレン樹脂(スチレン樹脂ともいう)、(メタ)アクリル−スチレン樹脂等が挙げられる。それらの中でも(メタ)アクリル樹脂又はメタクリル−スチレン樹脂が好ましい。
光拡散粒子は、例えばシリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、水酸化アルミニウム粒子、タルク等の無機粒子、(メタ)アクリル系重合体粒子、スチレン系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等の有機粒子が挙げられ、それらの中でもスチレン系重合体粒子のポリスチレン粒子が好ましい。
【0034】
基体用樹脂組成物は、光拡散粒子を、透明樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部含むのが好ましく、0.1〜5重量部含むのがより好ましい。
基体用樹脂組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、蛍光増白剤等の添加剤を加えてもよい。
基体の厚み及び形状等は、本発明の対象である光拡散板の使用される用途によって適宜選択することができる。
【0035】
(2)表面層
表面層は、樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物(溶融混合物)から形成され、表面層が基体との積層で用いられる場合は、その表面層を構成する樹脂は基体を構成する樹脂と融着性を有するのが好ましい。前記樹脂粒子は、一粒子中に前記第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分が、前記スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子であることを特徴とする。
ここで、第2の(メタ)アクリル系樹脂としては、前記の第1の(メタ)アクリル系樹脂が挙げられ、第1の(メタ)アクリル系樹脂と同一又は異なっていてもよい。
表面層用樹脂組成物又は基体の少なくとも一方の面に樹脂組成物の溶融混合物を積層するために用いられる表面層用樹脂組成物は、第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部と前記方法によって得られる樹脂粒子2〜30重量部とを含み、前記樹脂粒子2〜20重量部含むのが好ましく、3〜20重量部含むのがより好ましい。表面層用樹脂組成物中に含まれる樹脂粒子が2重量部未満では所望の効果が得られにくくなる恐れがある。一方、30重量部を超えると成形が困難になる恐れがある。
【0036】
前記方法によって得られる樹脂粒子は第2の(メタ)アクリル系樹脂と溶融混合されたときに、樹脂粒子中の第1の(メタ)アクリル系樹脂が溶融し、スチレン系重合体部分と分離する。スチレン系重合体部分は、レンズ状や半球状となり、これが表面層を形成する第2の(メタ)アクリル系樹脂と第1の(メタ)アクリル系樹脂とからなる(メタ)アクリル系樹脂中で均一に分散することで、一部表面層に現れ、艶消し効果や傷つき防止効果を生じると、発明者は考えている。
ここで、溶融混合されたとき、樹脂粒子は、溶融混合される前の形状を保たないのが好ましいが、溶融混合される前の形状が一部残っていてもよい。
【0037】
表面層の厚みは10μm〜200μmが好ましい。厚みが10μm未満では十分な特性が得られない。一方、200μmを超えても傷つき防止効果についてはそれ以上の効果は得られない。
表面層用樹脂組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、蛍光増白剤等の添加剤を加えてもよい。
【0038】
本発明の光拡散板は、照明カバー、透過型ディスプレーの光拡散板、照明看板等に使用できる。透過型ディスプレーとしては、液晶ディスプレーが挙げられる。液晶ディスプレーの構成は、光拡散板を含みさえすれば、特に限定されない。例えば、液晶ディスプレーは、表示面及び裏面を有する液晶表示パネルと、このパネルの裏面側に配置された導光板と、導光板の側面に光を入射させる光源とを少なくとも備えている。また、導光板の液晶表示パネルの対向面と反対面側に反射シートを備えている。この光源の配置は、一般にエッジライト型バックライト配置と称される。
【0039】
更に、上記エッジライト型バックライト配置以外に、直下型バックライト配置もある。この配置は、具体的には、液晶表示パネルの裏面側に光源を配置し、液晶表示パネルと光源と間に配置された光拡散板を少なくとも備えた配置である。
本発明の光拡散板の形は、その用途により変化し得るが、通常、平板状であり、その厚さは0.5〜5mmの範囲に設定される。
本発明の光拡散板の製造法は特に限定されないが、例えば押出成形法、共押出成形法、射出成形法、貼り合せ法、熱接着法、キャスト重合法等の方法により製造することができる。
【0040】
(照明用カバー)
本発明の照明用カバーは、蛍光灯、LED等の各種光源で使用できる。照明用カバーの形状はその用途に変化し得るが、例えば、平板状、筒状等の形状があり、その厚さは0.5mm〜5mmの範囲に設定される。
本発明の照明用カバーの製造法は特に限定されないが、例えば押出成形法、共押出成形法、射出成形法、キャスト重合法等の方法により製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
【0042】
平均粒子径はベックマンコールター社製のコールターマルチザイザーIIによって測定した体積平均粒子径である。なお、測定に際してはCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTERMULTISIZER(1987)に従って、測定する球状複合粒子の粒子径に適合したアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
【0043】
具体的には、市販のガラス製の試験管に粒子0.1gと0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10mlを投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXERMT−31で2秒間混合した後、これを本体備え付けの、ISOTON2(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にマルチサイザー2本体にアパチャーサイズ、Current,Gain,PolarityをCoulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE
COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manualで測定する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、集合体を10万個測定した点で測定を終了する。
粒子の形状及び構造は光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により観察した。
【0044】
実施例中の測定方法および諸物性の評価方法を以下に示す。
(1)傷つき性の評価
実施例及び比較例で得られた拡散板を摩擦堅牢度試験機にセットし、接触面積が4cm2のくさび型摩擦子の接触部分に同じ大きさ(4cm2)の光拡散シート(シャープ社製液晶テレビLC−37GS10のバックライト部で拡散板と接している光拡散シート)を、光拡散層を上にして貼り付け、300gの分銅を乗せて、ストローク幅10cmで30回擦過し、シート表面の傷の度合を観察した。肉眼で傷が確認されなかったものを○、傷が少し確認されたものを△、傷が多数確認されたものを×と判定した。
【0045】
(2)光拡散性の評価
光拡散性の評価は以下の拡散率によって評価した。
拡散率Dは自動変角光度計 GONIOPHOTOMETER GP−200型(村上色彩技術研究所社製)を用いて、法線方向から光を入射させたときの透過光のうち、法線方向に対して5°の角度への透過光の強度(I5)、20°の角度への透過光(L20)の強度(I20)および70°の角度への透過光(L70)の強度(I70)をそれぞれ測定し、式(1)および(2)により求めた。
Bθ=Iθ/cosθ ・・・式(1)
(θは法線方向に対する角度、Iθ・・・角度θへの透過光の強度、Bθ・・・角度θ方向の輝度)
D=(B20+B70)×100/(2×B5 ・・・式(2)
拡散率Dが大きいほど拡散性がよいと判断できる。
【0046】
(3)全光線透過性の評価
全光線透過率は、JISK7361によって測定した。具体的には、日本電色工業社製:「NDH−2000」を使用した。
【0047】
(実施例1)
水200gに対し、分散安定剤として複分解法により得られたピロリン酸マグネシウム5gを含ませた分散媒を500mlのセパラブルフラスコに加え、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.01g、亜硝酸ナトリウム0.02gを分散媒中の水に溶解させた。
これとは別に、スチレン58g、ジビニルベンゼン2g、可溶性樹脂としてアクリル樹脂(三菱レイヨン社製 商品名 ダイヤナールBR-77)15g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを均一に混合溶解した。得られた組成物を上記分散媒に加え混合した。混合物をホモミキサー(IKA社製 ULTRA TURRAX T−25)にて8000rpmで微分散した。次いで、フラスコに撹拌翼、温度計及び還流冷却器を取り付け、窒素パージ後、70℃の水浴中に設置した、撹拌速度200rpmで10時間加熱を継続し、重合反応を行った。
【0048】
重合反応が終了したことを確認した後、反応液を冷却し、スラリーのpHが2程度になるまで塩酸を添加して分散安定剤を分解した。濾紙を用いたブフナー漏斗で樹脂粒子を吸引濾過し、1.2リットルのイオン交換水で洗浄することで、分散安定剤の分解物を除去し、60℃のオーブン中で1夜乾燥し目的の樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が8μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子内部に架橋ポリスチレン重合体がレンズ状に存在した略球状微粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図2に示す。
【0049】
(実施例2)
スチレンを60g、可溶性樹脂としてアクリル樹脂(商品名 ダイヤナールBR−77 三菱レイヨン社製)を5g使用すること以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子の内部構造を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が12μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、レンズ状のドメイン構造を有する球状粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図3に示す。
【0050】
(実施例3)
スチレンを60g、ジビニルベンゼン0.3g、アクリル樹脂(商品名 スミペックスEXA 住友化学社製)6g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5g、ラウリルリン酸0.1gを使用すること、ホモミキサーの回転数を4000rpmとしたこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。光学顕微鏡にて樹脂粒子を観察した。
得られた粒子は、平均粒子径が20μmであり、光学顕微鏡の観察により、粒子の中心付近に界面が観察され、半球状のドメイン構造を有する球状粒子であった。樹脂粒子の顕微鏡写真を図4に示す。
【0051】
(実施例4)
メタクリル−スチレン樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部とポリスチレン粒子(積水化成品工業社製:テクポリマーSBX−4)2.5重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットAを得た。
一方、メタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例1によって得られた樹脂粒子10重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットBを得た。
マスターペレットAとマスターペレットBを用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例3によって得られた樹脂粒子15重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットCを得た。
マスターペレットAとマスターペレットCを用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例6)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例3によって得られた樹脂粒子25重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットC2を得た。
マスターペレットAとマスターペレットC2を用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例7)
メタクリル樹脂(住友化学社製:スミペックスEXN)100重量部とポリスチレン粒子(積水化成品工業社製:テクポリマーSBX−4)2重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットDを得た。
一方、上記実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例1によって得られた樹脂粒子5重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットB2を得た。
マスターペレットDとマスターペレットB2を用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0055】
(実施例8)
実施例5で得られたマスターペレットCを用いて押出成形を行い、全体厚みが1mmで半筒状(筒を縦に割った形)の成形品を作製した。
この成形品を蛍光管型LED照明(CREE社製、40W相当タイプ)の照明カバー部と付け替えて輝度の測定を行った。
輝度の測定は、照明カバーより50cm離れた所に輝度計(CA−1000、コニカミノルタ社製)を設置し、測定を行った。その結果は11,800cd/cm2であった。
また、LED光源の一つ一つは照明カバー越しには確認できず、十分に拡散していることを確認した。
【0056】
(比較例1)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と市販のポリスチレン樹脂粒子(積水化成品工業社社製SBX−8、平均粒子径8μm)10重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットFを得た。
マスターペレットAとマスターペレットFを用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と市販のポリスチレン樹脂粒子(積水化成品工業社製SBX−17、平均粒子径17μm)15重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットGを得た。
マスターペレットAとマスターペレットGを用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例3)
マスターペレットAと実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)を用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmのメタクリル−スチレン系樹脂のみからなる表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例4)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、メタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例1によって得られた樹脂粒子1重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットB3を得た。
マスターペレットAとマスターペレットB3を用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製した。
得られた光拡散板の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
実施例4と同様にして、マスターペレットAを得た。
一方、実施例4で用いたメタクリル−スチレン系樹脂(新日鐵化学社製:MS600)100重量部と実施例3によって得られた樹脂粒子40重量部を押出機を用いて溶融混合し、マスターペレットC3を得た。
マスターペレットAとマスターペレットC3を用いて共押出成形を行い、全体厚みが2mmで、基体の両面に約100μmの表面層が積層された3層構成の光拡散板を作製しようとしたが、成形不能であった。
得られた結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1及び実施例4〜8の記載から、光拡散板の表面層に、樹脂粒子中に第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分が、スチレン系樹脂からなる部分に偏在した本発明の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含むように設定した表面層用組成物から形成された表面層を用いると、表面に傷がつきにくく、光拡散性に優れた光拡散板が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の(メタ)アクリル系樹脂5〜50重量%を、架橋性ビニル単量体を0〜5重量%含むスチレン系単量体に溶解し、得られた溶液を、水性媒体の存在下で懸濁重合させることで、一粒子中で第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分が、スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
スチレン系単量体が、架橋性ビニル単量体を0.1〜5重量%含む請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
スチレン系単量体が、スチレンである請求項1又は2に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
スチレン系単量体が、さらにリン酸エステル類を0.01〜3重量%含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法により得られ、一粒子中で第1の(メタ)アクリル系樹脂からなる部分がスチレン系単量体由来の樹脂からなる部分に偏在した樹脂粒子。
【請求項6】
スチレン系単量体由来の樹脂からなる部分が、樹脂粒子表層でレンズ状に存在する請求項5に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層を備えることを特徴とする光拡散板。
【請求項8】
光拡散板が、透明樹脂中に光拡散粒子を含む基体用樹脂組成物からなる基体と、基体の少なくとも一方の面に積層された、請求項5又は6に記載の樹脂粒子2〜30重量部と第2の(メタ)アクリル系樹脂100重量部とを含む表面層用樹脂組成物から形成された表面層とを備える請求項7に記載の光拡散板。
【請求項9】
前記樹脂粒子が、前記表面層用樹脂組成物に2〜20重量部含まれる請求項7又は8に記載の光拡散板。
【請求項10】
前記基体用樹脂組成物が、前記光拡散粒子を、前記透明樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部含む請求項8又は9に記載の光拡散板。
【請求項11】
前記透明樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂である請求項8〜10のいずれか一つに記載の光拡散板。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一つに記載の光拡散板を用いて製造された照明用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−254991(P2010−254991A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83478(P2010−83478)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】