説明

樹脂粒子の製造方法及び樹脂粒子

【課題】 極めて微細な粒子を、特殊な装置を使用することなく効率よく得ることができる樹脂粒子の製造方法、及び該方法で製造された粒子を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂粒子の製造方法は、非水溶性の樹脂成分(A)、マトリックス成分(B)、及びブロック共重合体(C)を溶融混合し、前記樹脂成分(A)で形成された粒子が成分(B)からなるマトリックス中に分散した分散体を形成した後、成分(B)からなるマトリックスを除去して樹脂成分(A)を主成分とする樹脂粒子を得る樹脂粒子の製造方法であって、ブロック共重合体(C)が、樹脂成分(A)に対して親和性を示すブロックaと成分(B)に対して親和性を示すブロックbとで構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融可能な有機化合物からなる樹脂粒子の製造方法、および該製造方法で製造される樹脂粒子に関する。このような粒子は、粉体塗料や塗料添加剤、化粧品の添加剤などの各種添加剤、トナーあるいはスラッシュ成型やラピットプロトタイピングなどの成型方法、スペーサーなどに使用できる。
【背景技術】
【0002】
特開昭61−9433号公報には、熱可塑性樹脂と、それとは相溶性のない樹脂(マトリックス成分)とを加熱下で溶融混合し、次いで溶剤等で洗浄することにより熱可塑性樹脂の粒子を製造する方法が記載されている。この方法は、得られる粒子の粒子径が、原料に用いる熱可塑性樹脂とマトリックス成分との溶融粘度の比や表面張力に依存するため、所望の粒子径を得るためには、熱可塑性樹脂及びマトリックス成分の分子量や構造などを慎重に選択する必要があった。上記方法において、粒子径の小さい粒子を形成する場合には、混練に高いシェア(せん断速度)と長時間を要するため、ニーダーなどの混練時間を十分確保しうる装置を使用しなければならず、通常の押出機では混練時間が比較的短いため、必要な粒子径まで達することが困難であった。さらに、熱可塑性樹脂とマトリックス成分との溶融混合物は、冷却条件を適切に選択しないと、熱可塑性樹脂からなる分散相が不安定で、混練のシェアが取り除かれた段階で分散相の融合が起きてしまい、所望の粒子径が得られないという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−9433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、極めて微細な粒子を、特殊な装置を使用することなく効率よく得ることができる樹脂粒子の製造方法、及び該方法で製造された粒子を提供することにある。
本発明の他の目的は、真球の度合いが高く、粒子径の揃った真球状樹脂微粒子を簡易に製造できる方法、及び該製造法により得られる真球状微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題点を鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体成分(C)の存在下、樹脂成分(A)と成分(B)とを分散させることにより、樹脂成分(A)の周りにブロック共重合体成分(C)が存在する微細な粒子が、成分(B)からなるマトリックス中に均一に分散した安定な相を形成でき、さらに、マトリックスを除去して得た樹脂粒子の再融着を防ぐことができるため、高純度の樹脂成分(A)からなる微細な粒子を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、非水溶性の樹脂成分(A)、マトリックス成分(B)、及びブロック共重合体(C)を溶融混合し、前記樹脂成分(A)で形成された粒子が成分(B)からなるマトリックス中に分散した分散体を形成した後、成分(B)からなるマトリックスを除去して樹脂成分(A)を主成分とする樹脂粒子を得る樹脂粒子の製造方法であって、ブロック共重合体(C)が、樹脂成分(A)に対して親和性を示すブロックaと成分(B)に対して親和性を示すブロックbとで構成されている樹脂粒子の製造方法を提供する。前記ブロック共重合体(C)は、ジブロック共重合体、マルチブロック共重合体、及びグラフト共重合体から選択される少なくとも一つの共重合体であってもよい。また、前記ブロック共重合体(C)の使用量は、例えば樹脂成分(A)の30重量%以下である。
【0007】
本発明の樹脂粒子の製造方法において、前記樹脂成分(A)は熱可塑性樹脂であってもよく、特にポリアミド系樹脂であってもよい。また、本発明の製造方法は、熱硬化性樹脂プレポリマーであって、該樹脂成分(A)からなる粒子に架橋処理を施す工程を含んでいてもよい。
【0008】
また、本発明は、上記本発明の樹脂粒子の製造方法で製造された樹脂粒子を提供する。
本発明の樹脂粒子の粒径は、例えば0.01μm〜20μmである。前記樹脂粒子は、真球状であってもよく、また、本発明の樹脂粒子は、成分(B)の含有量が、例えば5重量%以下である。
【0009】
本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、190℃、シンアレイト(剪断速度)1×103sec-1の条件下、キャピログラフで測定した溶融混合温度の粘度を意味している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、特定の構成を有するブロック共重合体成分(C)を用いるため、樹脂成分(A)からなる粒子がマトリックス中に安定した分散体を形成でき、混練条件や組成が同一の場合にもより小さい粒子を成形可能であって、しかもマトリックスを除去した後に粒子同士が融着することを防ぐことができる。このため、均一な形状からなる微細な粒子を簡易な方法で効率よく製造することができる。本発明によれば、多様な種類の樹脂成分(A)を用いることにより、広範な分野で利用することができる樹脂粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、非水溶性の樹脂成分(A)、成分(B)、及びブロック共重合体成分(C)を溶融混合する工程を含んでいる。
【0012】
本発明における樹脂成分(A)は、非水溶性(疎水性)を示し、溶融可能な樹脂及び樹脂の前駆体を意味している。前記溶融可能な樹脂には、例えば非水溶性樹の熱可塑性樹脂、エラストマーなどが含まれる。
【0013】
非水溶性の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの重縮合系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂などのビニル重合系樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂などが挙げられる。これらの非水溶性熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
前記ポリアミド系樹脂は、ジアミン成分(ヘキサメチレンジアミン等のC4-10アルキレンジアミンなど)とジカルボン酸成分(アジピン酸等のC4-20アルキレンジカルボン酸など)との重縮合により得られるポリアミド、アミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸等のC4-20アミノカルボン酸など)の重縮合により得られるポリアミド、ラクタム(ω−ラウロラクタム等のC4-20ラクタムなど)の開環重合により得られるポリアミド、ジアミン成分(ヘキサメチレンジアミン等のC4-10アルキレンジアミンなど)とジカルボン酸成分(アジピン酸等のC4-20アルキレンジカルボン酸など)とジオール成分(エチレングリコール等のC2-12アルキレンジオールなど)との重縮合により得られるポリエステルアミド等の何れであってもよい。ポリアミド系樹脂にはホモポリアミド及びコポリアミドが含まれる。代表的なポリアミド系樹脂として、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド1212、ポリアミド1012、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9Tなどが挙げられる。
【0015】
ポリエステル系樹脂は、ジオール成分(エチレングリコール等の脂肪族C2-12ジオール、ジエチレングリコール等のポリオキシC2-4アルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式C5-15ジオール、ビスフェノールA等の芳香族C6-20ジオールなど)とジカルボン酸成分(テレフタル酸等の芳香族C8-20ジカルボン酸、アジピン酸等の脂肪族C2-40ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式C8-15ジカルボン酸など)との重縮合により得られるポリエステル、オキシカルボン酸(乳酸等の脂肪族C2-6オキシカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸等の芳香族C7-19オキシカルボン酸など)の重縮合により得られるポリエステル、ラクトン(ε−カプロラクトン等のC4-12ラクトンなど)の開環重合により得られるポリエステル、ポリエステルジオールとジイソシアネートとの反応により得られるウレタン結合を含むポリエステル等の何れであってもよい。ポリエステル系樹脂にはホモポリエステル及びコポリエステルが含まれる。
【0016】
ポリウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート類(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネート類、水添MDI(シクロヘキシルメタンジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環式ジイソシアネート類、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート類など)とポリオール類(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなど)と必要に応じて鎖伸長剤(エチレングリコール等のC2-10アルキレンジオール、エチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン類、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類など)との反応により得られる樹脂が挙げられる。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、フッ素樹脂、ビニルエステル系樹脂などが挙げられる。セルロース誘導体には、例えば、セルロースエステル類、セルロースエーテル類、セルロースカーバメート類などが含まれる。
【0018】
スチレン系樹脂としては、例えば、GPPS(汎用ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン;GPPSにゴム成分を添加)、AS、ABSなどが挙げられる。これらの非水溶性熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
樹脂成分(A)として用いる樹脂の重量平均分子量は、例えば1000〜50000、好ましくは3000〜100000程度である。
【0020】
前記樹脂の前駆体とは、化学反応により樹脂を生成可能な化合物を意味しており、例えば、未加硫ゴム、熱硬化性樹脂プレポリマーなどの反応性化合物が用いられる。これらの樹脂前駆体は、粒子の成形中又は成形後に、慣用の加熱手段等を用いて加熱することにより架橋(硬化、加硫)処理を施し、加硫ゴムや熱硬化性樹脂等からなる樹脂粒子を生成できる。なかでも、熱硬化性樹脂プレポリマーなどが好ましく用いられる。
【0021】
熱硬化性樹脂プレポリマーとは、架橋剤(硬化剤)との反応により熱硬化性樹脂を生成しうる前駆体であって、重量平均分子量1000〜10000程度の架橋性オリゴマーを意味している。このような熱硬化性樹脂プレポリマーとしては、例えば、架橋剤と反応可能な架橋性官能基を少なくとも一つ分子内に含有するエポキシ樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂などのプレポリマーが挙げられる。前記架橋性官能基には、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロホルミル、ビニル基などが含まれる。エポキシ樹脂の具体例として、例えば、ビスフェノールAを主骨格とするエポキシ樹脂、フェノールあるいはクレゾールノボラック等のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種異常を組み合わせて用いることができる。
【0022】
なかでも、樹脂成分(A)として、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂プレポリマーが好ましく、より好ましくはポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂等が用いられ、特にポリアミド系樹脂が好適である。
【0023】
樹脂成分(A)の重量平均分子量及び分子量は、目的の粒子の用途や粒子成形時の取扱性などに応じて、樹脂及び樹脂前駆体の種類、架橋剤の種類や量を適宜設定することにより調整できる。これらの樹脂成分(A)は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0024】
樹脂成分(A)の粘度は、例えば1〜100000Pa・s程度、好ましくは5〜10000Pa・s程度である。前記樹脂成分(A)の粘度は、成形される粒子の形状、大きさ、均質性、分散安定性の点で重要であり、樹脂成分(A)の(重量平均)分子量や種類などに応じて適宜設定することができる。
【0025】
樹脂成分(A)には、上記以外に、例えば、残存モノマー、乳化剤、フィラー、可塑剤、軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等)、増粘剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、染料、顔料等)、金属粉、分散剤、難燃剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルンウム、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルクなどの各種無機フィラーを使用することが可能である。着色剤としてはカーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、群骨、べんがら、黒色酸化鉄等の有機又は無機着色剤、化粧品等に使用される厚生省令第30号に規定される各種タール色素類、アルミニウムレーキ類を好適に用いることができる。
【0026】
マトリックス成分(B)としては、樹脂成分(A)と相溶性がなく、且つ加熱による溶融混合の結果、その組成比に応じて樹脂成分(A)からなる分散相を形成しうるものであれば特に限定されない。
【0027】
成分(B)が「樹脂成分(A)と相溶性がない」とは、(i)樹脂成分(A)と成分(B)を加熱下で溶融混合して得た混合物について、示差走査熱量分析(DSC)で測定された融点、あるいはDSCや動的粘弾性測定で測定されたガラス転移点が、成分(A)又は(B)の固有の融点又はガラス転移点に近い値(例えば±10℃程度)を示すか、あるいは(ii)樹脂成分(A)を20重量%含む分散体を後述する溶剤(D)に浸漬することにより、分散液中に分散した樹脂成分(A)で形成された粒子を顕微鏡観察で確認可能であることを意味している。
【0028】
このような成分(B)の例として、水溶性材料及び非水溶性材料(固体状アルコールや金属石鹸などの有機溶媒可溶性低分子成分;非水溶性ポリアルキレングリコール及びその誘導体;固体状ポリエチレンワックス、石油樹脂などの有機溶剤可溶性高分子成分)等が挙げられる。さらに、成分(B)としては、使用する樹脂成分(A)と相溶性がなければ、前記樹脂成分(A)として例示のものを用いることができ、例えば、ポリスチレン、各種のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂などであってもよい。これらの成分(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なかでも、水溶性材料及び非水溶性ポリアルキレングリコール及びその誘導体等が好ましく用いられる。
【0029】
ポリアルキレングリコールの誘導体には、ポリアルキレングリコールにおける両末端の水酸基が置換された化合物が含まれる。このような化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリルエーテルなどの両末端の一方に水酸基を他方にビニル基を有するポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの両末端の一方に水酸基を他方に(メタ)アクリル基を有するポリアルキレングリコール;メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールモノエチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどの両末端の一方にアルキルオキシ基を他方にビニル基を有するポリアルキレングリコールなどが含まれる。
【0030】
本発明においては、マトリックス成分(B)として特に水溶性材料が好適である。水溶性材料には、例えば、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、低分子量ポリプロピレンオキサイドなどの水溶性ポリアルキレングリコール及びその誘導体;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリ(メタ)アクリル酸;ポリエチルオキサゾリン;ポリアルキルアクリレート;ポリアクリルアミド;ポリN−アルキルアクリルアミド;ポリペプチド;多糖類などの水溶性ポリマーの他、単糖類、オリゴ糖、糖アルコール、ポリデキストロース、マルトデキストリン、イヌリンなどの低分子糖類等が挙げられる。前記多糖類及び低分子糖類(糖類)は、これらの水素化物や加水分解物、水溶性樹脂などであってもよい。前記糖類の水素化物や加水分解物には、例えば、水素化ヘキソース、水素化二糖類、水添デンプン、転化糖、水添及び非水添デンプン加水分解物などが含まれる。水溶性材料は、上記に例示の化合物が分子内に有する水素等を、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の親水性基で置換した化合物等であってもよい。これらの水溶性材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なかでも、水溶性のポリアルキレングリコール及びその誘導体、オリゴ糖などが好ましく、特にポリエチレンオキサイド、オリゴ糖などが好ましく用いられる。
【0031】
オリゴ糖とは、単糖類が2〜10分子脱水縮合によりグリコシド結合したホモオリゴ糖;2種以上の単糖類及び/又は糖アルコールが2〜10分子脱水縮合によりグリコシド結合したヘテロオリゴ糖などが該当する。オリゴ糖の代表的な例としては、例えば、トレハロース、マルトース、イソマルトース、イソマルツロース、マルチトール、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクチトール、スクロース、1,6−GPS(6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール)、1,1−GPS(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビトール)、1,1−GPM(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニトール)等の二糖類;セロトリオース、ゲンチアノース、マルトトリオース、ラフィノース等の三糖類;リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース等の四糖類;マルトペントース、ベルバスコース等の五糖類;マルトヘキソース等の六糖類などに加え、マルトデキストリン等の三〜五糖類;デキストリン、シクロデキストリン等の七〜八糖類などが挙げられる。
【0032】
オリゴ糖は多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物として、例えば、デンプン糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。また、オリゴ糖は還元型(マルトース型)、非還元型(トレハロース型)の何れであってもよい。還元型のオリゴ糖は耐熱性が高いため好ましい。オリゴ糖は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
単糖類としては、例えば、キシロース、リブロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボースなどが挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール等が挙げられる。多糖類とは、同種又は2種以上の単糖類及び/又は糖アルコールが11分子以上脱水縮合によりグリコシド結合した糖であって、例えば、イヌリン、アクロデキストロース、ポリデキストロース、アミロース、アミロペクチン、デンプン、セルロースなどが挙げられる。前記水溶性樹脂としては、例えば、分子中に−CONH−、−COOH、−OHなどの親水性基を有する線状高分子、具体的には、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらの水溶性材料は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。上記の中でも、ホモオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖などのオリゴ糖が好ましく、特に、溶融温度と溶融粘度のバランスに優れる点で、単糖類及び/又は糖アルコールが2〜6分子脱水縮合したホモオリゴ糖及びヘテロオリゴ糖が好ましく用いられる。
【0034】
成分(B)としてマルチトール、マルトテトラオース等のオリゴ糖を用いる場合、粘度を調整するため、水溶性可塑化成分を併用してもよい。前記水溶性可塑化成分としては、前記水溶性材料のうちオリゴ糖以外の糖類、例えば、単糖類や糖アルコールなどが用いられる。単糖類、糖アルコールとしては前記例示のものを使用できる。なかでも、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコールが好ましく用いられる。オリゴ糖と水溶性可塑化成分とを用いる場合、水溶性可塑化成分の使用量は、オリゴ糖100重量部に対して、例えば0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは2〜50重量部程度である。
【0035】
成分(B)の粘度は、樹脂成分(A)の粘度に応じて適宜選択することにより、樹脂成分(A)からなる粒子を目的の粒子径に調整することができる。微細な粒子を形成することができる具体例を挙げると、例えば、樹脂成分(A)の粘度が1000Pa・s程度である樹脂成分(A)と組み合わせる成分(B)の粘度は、例えば0.1〜500000Pa・s程度(好ましくは0.5〜50000Pa・s程度)である。本発明では、溶融混練時にブロック共重合体(C)を併用することにより、分散した粒子の状態を安定化する効果が得られるため、成分(B)として比較的低粘度の材料を使用することも可能である。
【0036】
成分(B)の使用量は、特に限定されず、溶融混合時の粘度に応じて適宜設定することができるが、樹脂成分(A)100重量部に対して、例えば50〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0037】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、樹脂成分(A)に対して親和性を示すブロックaと成分(B)に対して親和性を示すブロックbとで構成されている。このようなブロック共重合体(C)は、分子内のブロックaが樹脂成分(A)と、ブロックbが成分(B)と良好な親和性を発揮するため、樹脂成分(A)と成分(B)との相溶性を向上させ、短時間で均一に混合することができる。しかも、粒子状ドメインの安定性を向上させやすい点で有利である。
【0038】
ブロック共重合体(C)を構成するブロックaとしては、樹脂成分(A)に対して親和性を示せば特に限定されず、樹脂成分(A)の種類に応じて適宜設定できる。このようなブロックaは、例えば非水溶性ポリマー(プレポリマーを含む)を主成分とするポリマーで構成することができ、該非水溶性ポリマーには上記樹脂成分(A)として例示のものを単独で又は2種以上組み合わせて(混合物や共重合体等として)用いることができる。ブロックaを構成するポリマーとしては、樹脂成分(A)に対する親和性を損なわない範囲で、非水溶性ポリマー以外の他のポリマー(後述の水溶性ポリマー等)を少量含んでいてもよく、例えば水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの混合物や共重合体等を用いることができる。
【0039】
本発明においては、ブロックaが、樹脂成分(A)を構成する構造の少なくとも一部と同一であるポリマーで構成されていることが好ましい。「樹脂成分(A)を構成する構造の少なくとも一部と同一」であるポリマーとは、樹脂成分(A)を構成するモノマーユニットを少なくとも含むポリマーを意味している。上記構造を有するポリマーとしては、例えば、樹脂成分(A)に対応するポリマー(又はプレポリマー);樹脂成分(A)に対応するポリマーと他の非水溶性ポリマーとの混合物又は共重合体;樹脂成分(A)に対応するポリマーと少量の水溶性ポリマーとの混合物又は共重合体等が挙げられる。なかでも、ブロックaは、樹脂成分(A)に対応するポリマーで構成されていることが好ましい。なお、樹脂成分(A)に対応するポリマーとは、樹脂成分(A)と同じポリマー(プレポリマー);樹脂成分(A)との親和性が損なわれない範囲で、樹脂成分(A)と重合度(重量平均分子量)のみ異なるポリマー;樹脂成分(A)を構成するポリマーの一部が置換基等で置換されたポリマーを含む意味である。
【0040】
本発明は、また、ブロックaが、樹脂成分(A)と相溶性を示すポリマーで構成されていることも好ましい。「樹脂成分(A)と相溶性を示す」ポリマーとは、樹脂成分(A)を構成するポリマーと、溶融混合温度下(例えば190℃)、50rpmの条件下で5分間混合したときに均一な混合物を形成可能なポリマーを意味している。
【0041】
本発明においては、後述するように、ブロック共重合体(C)が最終製品の樹脂粒子に残留する場合がある。このため、ブロックaは、樹脂成分(A)と同一又は樹脂成分(A)を構成する構造の一部と同一であるポリマーで構成されることが好ましい。また、ブロックaとして、最終製品を構成する樹脂成分(A)以外の成分で構成することにより、樹脂粒子に所望の特性を付与することも可能である。
【0042】
例えば、樹脂成分(A)がポリアミド系樹脂で構成される場合には、ブロックaは、前記ポリアミド系樹脂と同一又は対応するポリアミド系樹脂、及びこれらのポリアミド系樹脂と相溶性を示すポリエステル、ポリウレタン等のポリマーで構成されていることが好ましい。また、樹脂成分(A)がエポキシ系樹脂で構成される場合には、ブロックaは、前記エポキシ系樹脂と同一又は対応するエポキシ系樹脂、及びこれらのエポキシ系樹脂と相溶性を示すポリエステル及びポリウレタン等のポリマーで構成されていることが好ましい。
【0043】
ブロック共重合体(C)を構成するブロックbとしては、マトリックス成分(B)に対して親和性を示せば特に限定されず、成分(B)の種類に応じて適宜設定できる。このようなブロックbは、例えば樹脂成分(A)と相溶性がないポリマーを主成分とするポリマーで構成することができ、上記マトリックス成分(B)を構成するポリマーとして例示のものを単独で又は2種以上組み合わせて(混合物や共重合体等として)用いることができる。ブロックbを構成するポリマーとしては、成分(B)との親和性を損なわない範囲で、水溶性材料、非水溶性材料、及びこれらの混合物や共重合体等を用いることができる。
【0044】
本発明においては、ブロックbが、成分(B)を構成する構造の少なくとも一部と同一であるポリマーで構成されていることが好ましい。「成分(B)を構成する構造の少なくとも一部と同一」であるポリマーとは、成分(B)が低分子化合物である場合には、該低分子化合物に対応するモノマーユニットを有するポリマー、及び成分(B)がポリマーである場合は、前記ポリマーを構成するモノマーユニット含むポリマーであることを意味している。成分(B)がポリマーである場合、上記構造を有するポリマーとしては、成分(B)に対応するポリマー(又はプレポリマー);成分(B)に対応するポリマーと他のポリマーとの混合物又は共重合体;成分(B)に対応するポリマーと少量の他のポリマーとの混合物又は共重合体等が挙げられる。なかでも、ブロックaは、成分(B)に対応するポリマーで構成されていることが好ましい。なお、成分(B)に対応するポリマーとは、成分(B)と同じポリマー(プレポリマー);成分(B)との親和性が損なわれない範囲で、成分(B)と重合度(重量平均分子量)のみ異なるポリマー;成分(B)を構成するポリマーの一部が置換基等で置換されたポリマーを含む意味である。
【0045】
本発明は、また、ブロックbが、成分(B)と相溶性を示すポリマーで構成されていることも好ましい。「成分(B)と相溶性を示す」ポリマーとは、成分(B)を構成する構造と同一な部分は含まないが、成分(B)を構成する材料と、溶融混合温度下(例えば190℃)、50rpmの条件下で5分間混合したときに均一な混合物を形成可能なポリマーを意味している。
【0046】
例えば、マトリックス成分(B)がポリエチレンオキサイド及び/又はオリゴ糖で構成される場合には、ブロックbは、前記ポリエチレンオキサイドと同一又は対応するポリマー(例えば重合度のみ異なるポリマー);ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体;水溶性ポリプロピレンオキサイド(例えば分子量900未満);及びこれらの誘導体;並びに各種のポリエーテル類等で構成されていることが好ましい。ポリエチレンオキサイドの誘導体としては、上記に例示したポリアルキレングリコールの誘導体に対応する化合物を利用できる。
【0047】
ブロック共重合体(C)としては、分散体を安定化してより微細な粒子を形成しやすい点で、ジブロック共重合体、マルチブロック共重合体、及びグラフト共重合体等が好ましく用いられる。また、ブロック共重合体(C)には、前記ブロックa及びブロックbからなる2成分系ブロック共重合体などが好適である。好ましいブロック共重合体の具体例としては、例えば、abジブロック共重合体;aba、bab、abab、ababaなどのマルチブロック共重合体;ブロックaからなる主鎖にブロックbがグラフトした構造、ブロックbからなる主鎖にブロックaがグラフトした構造などの構造を有するグラフト共重合体などの2成分系ブロック共重合体が挙げられる。これらの2成分系ブロック共重合体は、分子内にブロックa及びブロックb以外の構成部位を少量(例えば全体の50モル%未満)含んでいてもよい。
【0048】
ブロック共重合体(C)が前記ブロックaとブロックbの2成分系共重合体である場合、該ブロックaとブロックbとの構成比(モル比)は、特に限定されないが、例えばブロックa/ブロックbが、例えば1/100〜100/1、好ましくは1/50〜50/1、より好ましくは1/20〜20/1程度であり、特に1/1付近が好適である。本発明においては、樹脂成分(A)と成分(B)の使用量(モル比)が近似していることが好ましく、特に同程度で用いる場合が多い。前記構成比がブロックa又はブロックbに大きく偏ると、樹脂成分(A)及び成分(B)の双方に対する親和性のバランスがくずれやすく、分散相を安定化しにくく好ましくない。
【0049】
本発明におけるブロック共重合体(C)としては、樹脂成分(A)及び成分(B)の種類に応じて適宜な構成を有するものを選択して用いることができる。なかでも、本発明においては、ポリアミド系樹脂に対して親和性を示すブロックaと、ポリエチレンオキサイド又はオリゴ糖に対して親和性を示すブロックbとで構成されるブロック共重合体が好ましく用いられる。このようなブロック共重合体の代表的な例として、ポリアミド12とポリエチレンオキサイドのジブロック共重合体;ポリアミド12とポリエチレンオキサイドのマルチブロック共重合体;スチレン−無水マレイン酸−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル共重合体にポリアミド12がグラフトされたグラフト重合体、セルロースにポリエチレンオキサイドがグラフトされたグラフト重合体(ヒドロキシエチルセルロース等)などのグラフト重合体等が挙げられる。さらに、ソフトセグメントがポリエーテル鎖[ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)など]であるポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等のブロック系エラストマー等も利用可能である。
【0050】
また、本発明においては、ブロック共重合体(C)として帯電防止剤でない共重合体を使用することもできる。さらに、ブロック共重合体(C)として難水溶性の共重合体、特に分子内に親水性及び吸水性の部位を有するが水に難溶である共重合体等も好ましく用いられる。
【0051】
ブロック共重合体(C)の添加量は、樹脂成分(A)に対して、例えば30重量%以下である。30重量%を超えて添加すると、過剰のブロック共重合体(C)が単独の分散相を形成しやすく、また、樹脂成分(A)と高い相溶性を示す場合に、樹脂成分(A)が所望の物理的特性を有する粒子を成形しにくくなるため好ましくない。これらの観点から、ブロック共重合体(C)の添加量は、樹脂成分(A)に対して、好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0052】
本発明の方法においては、樹脂成分(A)、マトリックス成分(B)、及びブロック共重合体(C)を溶融混合する際に、架橋剤(加硫剤、硬化剤)が添加されていてもよい。架橋剤としては、上記樹脂及びプレポリマーの分子中に存在する上記に例示の架橋性官能基に対して反応性を有する官能基を2以上有する化合物を使用できる。このような架橋剤としては、例えば、アミン系化合物、メルカプタン系化合物、イミダゾール系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物、ジシアンジアミド系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物等を単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。架橋剤の添加量は、樹脂成分(A)に対して、例えば0.001〜25重量%、好ましくは0.01〜15重量%程度である。
【0053】
前記樹脂成分(A)、成分(B)、及びブロック共重合体(C)の溶融混合及び押出しは、一般的な混練機(ロール、ニーダー等)や押出機(一軸押出機、二軸押出機等)などを用いて行うことができる。従来、樹脂成分(A)がより微細な粒子を形成するためには、混練機を用いて長時間溶融混合(混練)する必要があった。これに対し、本発明では、ブロック共重合体(C)を用いるため、マトリックス中への樹脂成分(A)の分散が促進され、比較的短い混合(混練)時間で所望の粒子径に到達することができる。このため、混練機を用いた長時間の混練処理が不要となり、通常の押出し機を用いて十分微細な粒子を効率よく得ることができる。具体的には、例えば190℃で、5分間程度の混練で均一な分散体を調製することが可能である。
【0054】
溶融混合及び押出し温度は、樹脂成分(A)が溶融する温度以上耐熱温度以下の範囲から適宜選択でき、例えば100〜300℃、好ましくは110〜250℃程度である。押出し時の溶融混合物の粘度としては、例えば、キャピログラフで測定した押出し温度での溶融粘度が1〜100000Pa・sの範囲が好ましい。前記溶融混合物の粘度は、マトリックス中に分散した樹脂成分(A)が形成する微粒子の粒径を制御する点で重要であり、溶融混合物を構成する成分(A)、(B)、(C)の種類及び使用量を適宜選択することにより調整できる。押し出される溶融混合物の形状は、ストランド状、シート状等の何れであってもよい。
【0055】
溶融混合により、樹脂成分(A)からなる粒子が前記成分(B)からなるマトリックス中に分散した分散体(溶融混合物)が生成される。ブロック共重合体(C)の添加により、混合物の混和性が向上され、短時間の混練操作で容易に微細な粒子を生成することができる。本発明においては、粒子状の樹脂成分(A)の周囲にブロック共重合体(C)が存在しやすいため、マトリックス中に安定な分散相を容易に形成することができる。また、こうして、大きさがほぼ均一の球状(例えば真球状)の樹脂成分(A)からなる微粒子は、周囲にブロック共重合体(C)が存在した形態で、成分(B)からなるマトリックスに分散された溶融混合物を得ることができる。前記溶融混合物は、必要に応じて、溶融、延伸、圧縮などの慣用の成形、加工手段を施してもよい。
【0056】
溶融混練後は、速やかに冷却することが好ましい。冷却する方法としては、溶融混合物が応力による変形を受けない状態を保持可能な方法が好ましく、例えば、溶融混合物が押出されるダイの下方に、ダイの穴からなるべく距離をおかない位置に、押出し方向に且つ水平に移動する搬送手段(ベルトコンベア等)を設け、該搬送手段上に前記溶融混合物を押出し、押出機における押出し速度とほぼ同じ速度で該搬送手段を移動させ、空冷により樹脂組成物を冷却して固化させる方法(ベルトクーラー方式)などが挙げられる。前記方法により冷却処理を施した場合には、混練時のシェアが除去されたときの分散相の再融着を防ぎ、所望の微細な粒子径を有する粒子が得られやすい。さらに、応力による変形などの問題を回避できるため、真球度の高い真球状粒子を容易に形成できる点で好ましい。冷却の方法は、空冷、水冷、これらの組み合わせ等の何れであってもよいが、空冷の場合の冷却温度は例えば0〜35℃程度である。
【0057】
この場合、ダイの穴の下端部から搬送手段の上部表面までの垂直距離は10cm未満が好ましく、さらに好ましくは9cm以下、特に好ましくは7cm以下である。この距離が10cm以上であると、樹脂組成物が落下する際、自重により樹脂組成物が延伸されるため、樹脂組成物中の微粒子が変形し、真球度の高い真球状熱可塑性樹脂微粒子を得ることが困難となりやすい。この距離は、樹脂組成物の押出し及び搬送が損なわれない限り、短いほど好ましい。また、搬送手段の移動速度は、好ましくは押出機の押出し速度の±10%以内、さらに好ましくは押出機の押出し速度の±5%以内であり、特に押出機の押出し速度の±2%以内であるのが望ましい。搬送手段の移動速度が上記範囲を外れると、樹脂組成物が延伸又は圧縮されるため、樹脂組成物中の微粒子が変形しやすくなり、真球度の高い真球状熱可塑性樹脂微粒子を得ることが困難となりやすい。なお、押出機の押出し速度は、通常0.1〜100m/分、好ましくは1〜50m/分程度である。
【0058】
前記搬送手段の搬送距離(移動距離)及び搬送時間(移動時間)は、冷却速度、生産効率等を考慮して適宜設定できる。例えば、搬送距離は、一般に0.1〜100m、好ましくは0.5〜10mであり、搬送時間は、一般に0.1〜60分、好ましくは0.2〜30分である。
【0059】
本発明の方法では、溶融混合により分散体を形成後、成分(B)からなるマトリックスを除去して樹脂成分(A)を主成分とする樹脂粒子を分離、回収する。成分(B)の除去は、溶融混合物を冷却固化した後、溶剤(D)を用いて洗浄することにより行われる。
【0060】
溶剤(D)としては、樹脂成分(A)を溶解せず、成分(B)に対して高い溶解性を示すものであれば特に限定されず、水や市販の有機溶剤などから選択することができる。前記有機溶媒としては、樹脂の種類に応じて適宜選択して使用でき、例えば、メタノール、エタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどのアルコール類、ギ酸、酢酸などのカルボン酸類、アセトン等のケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジオキサンなどのエーテル類などの水溶性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エステルなどのエステル類等の疎水性溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、好ましくは水溶性溶媒、より好ましくはアルコール類を用いることができ、特にメタノール、エタノール等が好適である。しかしながら、環境や取り扱いの容易さを考慮すれば、溶剤(D)は水が望ましい。
【0061】
溶剤(D)の種類及び量は、樹脂成分(A)及び成分(B)の種類や量に応じて適宜選択することができる。本発明においては、成分(B)を溶剤(D)に溶解したときの溶液の粘度が低いと、成分(B)を溶解除去した後に樹脂成分(A)からなる粒子の分離精製が容易となるため極めて有利である。そのため、成分(B)が溶剤(D)に溶解した溶液の粘度が低くなるように、成分(B)と溶剤(D)の組み合わせ、両者の使用量を適宜設定することが好ましい。
【0062】
洗浄は、例えば、溶融混合物を溶剤(D)中に浸漬、分散させて成分(B)を溶剤(D)相に溶解させることにより行われる。溶融混合物を溶剤(D)中へ分散する手段としては、例えば、撹拌器、超音波発生装置等の慣用の混合・撹拌手段を用いて行うことができる。なかでも、超音波発生装置によれば、分散効率を向上させ、時間を短縮することができる。洗浄時の温度は、微粒子が変形を生じない(例えば真球状に保持しうる)範囲で適宜選択でき、例えば0〜100℃程度である。100℃を超える温度であってもよい。洗浄は複数回繰り返し行っても良い。
【0063】
洗浄により、マトリックスを除去して樹脂成分(A)を主成分とする樹脂粒子を得ることができる。洗浄の際、樹脂成分(A)の周りのブロック共重合体(C)は大部分除かれるが、一部は樹脂成分(A)に残存する。また、樹脂成分(A)に残存するブロック共重合体(C)は、樹脂成分(A)に対して親和性を有するブロックaのみ残存することもある。こうして得られる樹脂粒子は、樹脂成分(A)を主成分とし、ブロック共重合体(C)を部分的に含む構成であると思われる。樹脂粒子は、上記以外に架橋剤などの他の成分を含んでいても良い。
【0064】
洗浄後の樹脂粒子における成分(B)の含有量は、例えば5重量%以下(0〜5重量%)、好ましくは3重量%以下である。本発明では、ブロック共重合体(C)を用いるため、樹脂成分(A)から成分(B)の分離が良好であり、樹脂粒子の精製が容易となる利点がある。このため、成分(B)が樹脂成分(A)で形成された粒子内部への混在を回避でき、また、粒子の表面が成分(B)に被覆された2層構造の粒子などが形成されることがない。従って、本発明によれば、樹脂成分(A)を高濃度に含む(高純度の)樹脂粒子を形成することが可能である。
【0065】
洗浄後は、樹脂成分(A)からなる微粒子が分散した分散液を濾過、遠心分離等の慣用の分離手段に付し、次いで乾燥することにより、前記樹脂成分(A)からなる粒子を回収することができる。溶剤(D)として有機溶媒を用いた場合や、水以外に有機溶媒を含む混合溶媒など水の使用量を低減した場合には、回収した粒子を速やかに乾燥することができ、粒子の生産性を向上することができる。
【0066】
成分(B)の除去により分離された粒子は、必要に応じて架橋処理に付すことができる。架橋処理は、樹脂成分(A)の種類に応じて、例えばヒーター、熱風等の加熱手段等を用いて施すことができる。架橋処理は、粒子として単離する前に施されても良く、例えば溶融混合時や押出時など溶融混合物に対して施すことができる。
【0067】
粒子の形状は、粒状であれば特に限定されず、真球状、楕球状などの球状、円柱状、角柱状などの何れであってもよい。なかでも、真球状の粒子が好ましい。本発明の方法によれば、極めて微細な粒子を容易に得ることができる。本発明の方法により得られる粒子の平均粒子径(円換算粒子径の標準偏差)は、例えば0.01μm〜100μm、好ましくは0.05〜28μm、より好ましくは0.1〜10μm程度である。本発明によれば、粒子径が5.5μm以下(例えば0.1〜5.5μm程度)、特に0.1〜3μm程度の極めて微細な粒子を得ることも可能である。このように粒子径が極めて微細な粒子は、広範な用途に適用できる点で有利である。
【0068】
また、本発明の方法により得られる樹脂粒子は真球度が高く、粒子の95%以上が、最長径aと最短径bの比a/bの値が、例えば1.25以下、好ましくは1.10以下、さらに好ましくは1.05以下である。なお、上記比a/bの数値が1に近いほど真球に近い。上記真球度は、3次元スキャン等の方法により撮影した画像を、コンピュータ等を用いて画像解析することにより計測することで測定できる。また、2次元スキャン等の方法により撮影した画像を、コンピュータ等を用いて画像解析することにより計測した真円度をもって代用してもよい。真球度の高い真球状微粒子は、化粧品材料として用いた場合、化粧品の滑り性が向上し、化粧品ののびが良好となるという長所を有する。また、粒子径のバラツキがより小さくなるために、液晶等のスペーサーなどとしても有用である。
【0069】
さらに、本発明の方法によれば、形状のそろった均一な樹脂粒子を得ることができる。本発明の樹脂粒子は、粒子径のCV値(変動係数)が例えば21以下、好ましくは19以下、特に17以下であり、極めて品質に優れている。
【0070】
本発明の方法により得られる粒子は、例えば、化粧品材料(ファンデーション、スクラブ剤等)、充填剤、シートやフィルム等の樹脂膜に配合する光学特性付与剤、各種添加剤等として利用できる。本発明の方法により得られる樹脂粒子は、不純物が少なく優れた品質を有するため、特に化粧品材料として好適に利用することができる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下、「部」とは、特に限定しない場合には「重量部」の意味である。実施例及び比較例の結果を表1に示した。
【0072】
(粘度)
実施例1〜4,6〜8は190℃、実施例5は150℃における粘度(Pa・s)をキャピログラフで測定した。
【0073】
(真球度、粒子径のCV値)
樹脂微粒子の適当量を純水中に分散させて懸濁液を調製し、これを走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6480)の試料台上へ滴下した後、減圧乾燥した。乾燥後、樹脂微粒子の表面に蒸着器を用いて白金を蒸着した後、電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真の樹脂微粒子の中で無作為に抽出した100個の粒子に対して最長径aと最短径bを測定し、その比(a/b)を求め、a/bのヒストグラムを作成した。このヒストグラムから所定のa/b以下の粒子の割合を算出し、真球度とした。さらに、粒子径(円換算粒子径)の標準偏差及びCV値(変動係数)を算出した。
【0074】
(平均粒子径)
走査型電子顕微鏡を用いて得られた樹脂微粒子の形状観察を行った。また、樹脂微粒子の適当量を純水中に分散させて懸濁液を調製し、レーザー回折型粒度分布計(堀場製作所製、LA−910)を用いて中心径を測定した。
【0075】
製造例1 (ジブロック共重合体の合成)
ステアリン酸(142g)と12−アミノウンデカン酸(645g)を撹拌機付き反応器内で、窒素気流下、250℃で脱水縮合反応させ、末端基がステアリル基とカルボキシル基で構成されたポリアミド樹脂(分子量1460)を733g製造した。次いで、この反応器に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂社製、商品名「ユニオックス M一2000」:分子量2000)1000gを加えてさらに脱水縮合反応を行い、ポリアミド12とポリエチレンオキサイドのジブロック体を作成した。
【0076】
製造例2(グラフト共重合体の合成)
n−オクチルアミン64.59gと12−アミノウンデカン酸752.5gを、撹拌機付き反応器内で、窒素気流下、250℃で脱水縮合反応させ、末端基がステアリル基とカルボキシル基で構成されたポリアミド樹脂(分子量1500)を754g製造した。次いで、この反応器に、スチレン−無水マレイン酸−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル共重合体(日本油脂社製、商品名「マリアリムAKM−0531)を400g添加し、200℃で1時間撹拌することによりし、スチレン−無水マレイン酸−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル共重合体にポリアミド12がグラフトされたグラフト重合体を作成した。
【0077】
製造例3(マルチブロック共重合体の合成)
ドデカン二酸46gと12−アミノウンデカン酸387gを、撹拌機付き反応器内で、窒素気流下、250℃で6時間脱水縮合反応させ、末端基がカルボキシル基で構成されたポリアミド樹脂(分子量2000)を400g製造した。次いで、この反応器に、ポリエチレンオキサイド(三洋化成社製、商品名「PEG−2000」:分子量2000)333g、及びテトラブチルチタネートの0.5重量%へキサン溶液15ccを反応器に加え、減圧下で脱水縮合反応をさらに6時間行い、ポリアミド12とポリエチレンオキサイドのマルチブロック体を作成した。
【0078】
製造例4(ブロック共重合体の合成)
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(JER)社製、商品名「エピコート1004」)160gと、アミノ変性ポリエーテル(三井ファインケミカル製、商品名「ジェファーミンD2000」)400gをトルエンに分散溶解し、撹拌装置の付属したステンレスのフラスコにより90℃で、4時間撹拌し、次いでトルエンを減圧下で除くことにより、エポキシ樹脂とポリエーテルのブロック体を作成した。
【0079】
実施例1
ポリアミド12(ダイセル・デグサ社製、商品名「ダイアミドL1640」;粘度約290Pa・s)30部、ポリエチレンオキサイド(明成化学社製、商品名「アルコックスR−1000」;分子量25〜30万、粘度約600Pa・s)100部、及び製造例1で得たポリアミド12とポリエチレンオキサイドのジブロック共重合体5部を、二軸押し出し機を用いて190℃で混練し、得られた溶融混合物を、ダイホールが3穴(同じ高さに設けられている)のダイから水平方向にストランド状(径:約4mm)に押し出し、直ぐ下に設けられた押出方向に水平に移動するベルトコンベアにのせて搬送して冷却する方法(ベルトクーラー方式:ダイの穴からベルトコンベア表面までの垂直距離は0.1m、押出及びベルトコンベアの速度は共に5m/分、ストランドの搬送距離は5m)で冷却し、ポリアミド12からなるパウダーがオリゴ糖及びポリエチレンオキサイドのマトリックス中に分散されたペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを5重量%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄工程を10回繰り返すことによりペレットに含まれる水溶性のポリエチレンオキサイドを溶解除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することにより、ポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合99%、1.05以下の粒子の割合98%、粒子径のCV値は19%、中心径は0.9ミクロンであった。
【0080】
比較例1
実施例1において、ブロック共重合体を用いなかった点以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド粒子を得た。
得られたポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合97%、1.05以下の粒子の割合95%、粒子径のCV値は22%、平均長径は15.2ミクロンであった。
【0081】
実施例2
ポリアミド12(ダイセル・デグサ社製、商品名「ダイアミドL1940」;粘度約500Pa・s)30部、オリゴ糖(東和化成社製、商品名「粉末還元澱粉糖化物PO−10」)65部、D−ソルビトール35部(オリゴ糖とD−ソルビトールの混合物の粘度約5Pa・s)、及び製造例2で得たスチレン−無水マレイン酸−メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル共重合体にポリアミド12がグラフトされたグラフト重合体5部を、二軸押し出し機を用いて190℃で混練し、得られた溶融混合物をベルトクーラー方式(実施例1と同条件)で冷却し、ポリアミド12からなるパウダーがオリゴ糖及びポリエチレンオキサイドのマトリックス中に分散されたペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを5重量%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄エ程を10回繰り返すことにより、ペレットに含まれる水溶性のオリゴ糖及びポリエチレンオキサイドを除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することにより、ポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合98%、1.05以下の粒子の割合97%、粒子径のCV値は21%、中心径は2.4ミクロンであった。
【0082】
実施例3
実施例2において、ブロック共重合体として、製造例1で得たジブロック共重合体10部を用いた点以外は、実施例2と同様の操作を行ってポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合99%、1.05以下の粒子の割合97%、粒子径のCV値は17%、中心径は2.0ミクロンであった。
【0083】
比較例2
実施例2において、ブロック共重合体を用いなかった点以外は実施例2と同様の操作を行い、ポリアミド粒子を得た。
得られたポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合96%、1.05以下の粒子の割合94%、粒子径のCV値は23%、平均長径は66.2ミクロンであった。
【0084】
実施例4
ポリアミド12(ダイセル・デグサ社製、商品名「ダイアミドL1500」;粘度約160Pa・s)30部、ポリエチレンオキサイド(明成化学社製、商品名「アルコックスR−1000」;分子量25〜30万、粘度約600Pa・s)100部、及び製造例3で得たマルチブロック共重合体5部を、二軸押し出し機を用いて190℃で混練し、得られた溶融混合物をベルトクーラー方式(実施例1と同条件)で冷却し、ポリアミド12からなるパウダーがポリエチレンオキサイドのマトリックス中に分散されたペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを5重量%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄工程を10回繰り返すことによりペレットに含まれる水溶性のポリエチレンオキサイドを溶解除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することにより、ポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合98%、1.05以下の粒子の割合96%、粒子径のCV値は20%、中心径は1.2ミクロンであった。
【0085】
実施例5
実施例2において、ブロック共重合体として、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、商品名「S−400」)3部を用いた点以外は、実施例2と同様の操作を行ってポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。なお、溶融混合物の押出時の粘度は 5.5Pa・sであった。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合97%、1.05以下の粒子の割合96%、粒子径のCV値は20%、中心径は3.2ミクロンであった。
【0086】
実施例6
ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックHJ490」;粘度約380Pa・s)25部、ポリエチレンオキサイド(明成化学社製、商品名「E−100」;粘度約800Pa・s)75部、ポリエチレン主鎖にポリエチレンオキサイドがグラフトされたグラフト重合体(住友化学社製、商品名「スミエード300G」)10部を、二軸押し出し機を用いて150℃で混練し、得られた溶融混合物をベルトクーラー方式(実施例1と同条件)で冷却し、ポリエチレンからなるパウダーがポリエチレンオキサイドのマトリックス中に分散されたペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを5重量%%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄工程を10回繰り返すことによりペレットに含まれる水溶性のポリエチレンオキサイドを溶解除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することにより、ポリエチレンの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合98%、1.05以下の粒子の割合96%、粒子径のCV値は16%、中心径は3.3ミクロンであった。
【0087】
実施例7
ポリアミド12(ダイセル・デグサ社製、商品名「ダイアミドL1500」)に10重量%の酸化チタン(石原産業社製、商品名「CR−90」)を混合したポリアミド組成物30部、ポリエチレンオキサイド(明成化学社製、商品名「アルコックスR−1000」:分子量25〜30 万)100部、及び製造例1で得たポリアミド12とポリエチレンオキサイドのジブロック重合体5部を、二軸押し出し機を用いて190℃で混練し、得られた溶融混合物をベルトクーラー方式(実施例1と同条件)で冷却し、ポリアミド組成物からなるパウダーがポリエチレンオキサイドのマトリックス中に分散されたペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを5重量%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄工程を10回繰り返すことによりペレットに含まれる水溶性のポリエチレンオキサイドを溶解除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することにより、ポリアミドの真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状ポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合98%、1.05以下の粒子の割合96%、粒子径のCV値は17%、中心径は6.1ミクロンであった。
【0088】
比較例3
実施例7において、ブロック共重合体を用いなかった点以外は実施例7と同様の操作を行い、ポリアミド粒子を得た。
得られたポリアミド粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合95%、1.05以下の粒子の割合93%、粒子径のCV値は26%、平均長径は29.7ミクロンであった。
【0089】
実施例8
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(JER)社製、商品名「エピコート1004」)100部、ヘキサヒドロ無水フタル酸(硬化剤)40部、2−ヘプタデシルイミダゾール(硬化剤)1部を押出機により125℃で混練し、ペレット化した(溶融粘度340Pa・s)。
このエポキシペレットと、ポリエチレンオキサイド(明成化学社製、商品名「アルコックスR−1000」;分子量25〜30万、粘度約600Pa・s)と、製造例4で得たエポキシ樹脂とポリエーテルのジブロック共重合体3部を、二軸押し出し機を用いて200℃で溶融混練し、得られた溶融混合物をベルトクーラー方式(実施例1と同条件)で冷却し、エポキシ樹脂を主成分とする粒子がポリエチレンオキサイドからなるマトリックス中に分散したペレットを作成した。
次いで、得られたペレットを10重量%濃度となるように水に溶解し、5Aのろ紙を用いてヌッチェで減圧濾過する洗浄工程を10回繰り返すことによりペレットに含まれる水溶性のポリエチレンオキサイドを溶解除去し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥することによりパウダーを得た。
得られたパウダーは、溶融混練過程で架橋が多少進行していたが、さらに架橋を進めるため、120℃で1時間、150℃で2時間振動をかけながら加熱し、架橋微粒子、エポキシ樹脂の真球状の粒子(パウダー)を得た。
得られた真球状エポキシ樹脂粒子の真球度は、a/bが1.25以下の粒子の割合100%、1.10以下の粒子の割合97%、1.05以下の粒子の割合94%、粒子径のCV値は20%、中心径は1.3ミクロンであった。
【0090】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性の樹脂成分(A)、マトリックス成分(B)、及びブロック共重合体(C)を溶融混合し、前記樹脂成分(A)で形成された粒子が成分(B)からなるマトリックス中に分散した分散体を形成した後、成分(B)からなるマトリックスを除去して樹脂成分(A)を主成分とする樹脂粒子を得る樹脂粒子の製造方法であって、ブロック共重合体(C)が、樹脂成分(A)に対して親和性を示すブロックaと成分(B)に対して親和性を示すブロックbとで構成されている樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
ブロック共重合体(C)が、ジブロック共重合体、マルチブロック共重合体、及びグラフト共重合体から選択される少なくとも一つの共重合体である請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
ブロック共重合体(C)の使用量が、樹脂成分(A)の30重量%以下である請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
樹脂成分(A)が熱可塑性樹脂である請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
樹脂成分(A)が熱硬化性樹脂プレポリマーであって、該樹脂成分(A)からなる粒子に架橋処理を施す工程を含む請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの項に記載の樹脂粒子の製造方法で製造された樹脂粒子。
【請求項8】
粒子の粒径が0.01μm〜100μmである請求項7記載の樹脂粒子。
【請求項9】
粒子が真球状である請求項8記載の樹脂粒子。
【請求項10】
成分(B)の含有量が5重量%以下である請求項9の樹脂粒子。

【公開番号】特開2007−246567(P2007−246567A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68188(P2006−68188)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000108982)ダイセル・デグサ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】