説明

樹脂系改質剤の製造装置

【課題】
従来の樹脂系改質剤製造装置は、イ.投入した廃材の全体が一度に燃焼するので燃焼のコントロールが困難、ロ.燃焼用バスケット2の側壁に形成された多数の空気導入孔2bから空気を導入するので、燃焼のコントロールが困難などの課題があった。
【解決手段】
筐体の内部に燃焼炉が配置され、この燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材の一部を燃焼させ、他の合成樹脂廃材を溶融・熱分解させてワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置において、燃焼炉は上部及び側面上部が封鎖され、下方及び側面下方が燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材を自然落下しない程度に開放され、前記開放された側面及び下方にて合成樹脂廃材の一部を燃焼させることを特徴とする。これにより、合成樹脂廃材を下端から徐々に燃焼させることにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂廃材をその一部の燃焼による熱により他の合成樹脂廃材を溶融・熱分解させ、樹脂・ゴム等の特性改質、インク・塗料或いは顔料用等に使用されるワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数種の合成樹脂若しくはカーボンブラックや無機系添加材を含む樹脂から構成される合成樹脂廃材を加熱溶融して熱分解させ、ワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置として、種々のものが提案されている。(例えば特許文献1〜3)
これにより、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂廃棄物を原料として処理し、樹脂・ゴム等の特性改質、インク・塗料或いは顔料用としてワックス状物質を製造できる。
【0003】
この開示された樹脂系改質剤製造装置は、図13に示すように、ワックス状物質溶融物を溜めておく有底円筒状の受溜用タンクTが、タンク上端開口部1bを有し、かつ、支脚1aによって支持されて設けられている。
【0004】
該受溜用タンクTのタンク上端開口部1bには、合成樹脂廃材等の原料Aを加熱溶融する円筒状の燃焼用バスケット2が一体的に載架されて固設されている。該燃焼用バスケット2の側壁には、多数の空気導入孔2bが、燃焼用バスケット2の内部と外部とを連通するように、上記側壁の厚さ方向に穿設されている。
【0005】
燃焼用バスケット2の下端開口部2aには、閉塞した箱状の触媒槽(脱可塑化促進用バスケット)4が、下端開口部2aを下側から塞ぐように取り付けられている。触媒槽4は、その全壁が多孔状となる網目状部4aを有しており、その触媒槽4内に溶融物Bの脱可塑化促進用の金属触媒、例えば白金や銅からなる線状触媒4bを溶融物Bが通過し得るように充填されている。
【0006】
燃焼用バスケット2に供給する空気量を調節する円筒状のエアーバランサー5が燃焼用バスケット2の外周を覆うように、上記燃焼用バスケット2の外周に対し所定の間隔をおいて設置されている。そのエアーバランサー5の下部には、空気導入用開口部5aが設けられている。このエアーバランサー5は樹脂系改質剤製造装置の筐体としても作用している。
【0007】
前記受溜用タンクTと燃焼用バスケット2との間には、受溜用タンクT内にて生成した可燃性の高熱ガスGを効率よく燃焼用バスケット2内に送出するために、連通管9が複数、受溜用タンクTの外壁に対し上下方向に沿ってそれぞれ設置されている。各連通管9には受溜用タンクTからのガスを燃焼用バスケット2に送り出すポンプ10が、上記高熱ガスGの送出を促進するためにそれぞれ設けられている。
【0008】
受溜用タンクTの内底部には、ワックス状物質Cの溶融している温度を電気加熱によって上昇させる加熱手段として、パイプ状のヒーター6が設置されている。また、受溜用タンクTの内部には、ワックス状物質Cの溶融している温度を検出するバイメタルや熱電対などの温度センサ7が温度検出手段として設置されている。
【0009】
前記ヒーター6には、該ヒーター6をオン・オフ制御もしくは比例制御するためのマイコン等の制御手段8がワックス状物質Cの溶融物を所定温度に保つように設けられている。
【0010】
上記の燃焼用バスケット2内の下部には、原料Aを載置して、溶融・熱分解するための原料受皿であるロストル3が、燃焼用バスケット2の下端開口部2aを上方から塞ぐように、上記燃焼用バスケット2内の周壁に取り付けられている。
【0011】
上述した製造装置においてワックス状物質を製造するには、まず、原料Aとして、可燃性の例えば架橋ポリエチレン単独、或いは、架橋ポリエチレンと非架橋や低架橋のポリエチレン等のポリオレフィンを少量混合して用い、原料Aをベルトコンベア11により搬送して原料投入用ホッパー12から所定量燃焼用バスケット2のロストル3上に投入する。
【0012】
次いで、原料Aに含まれる架橋ポリエチレンに着火すると、ワックス状物質生成用の合成樹脂は熱分解して溶融し、その溶融物Bはロストル孔部3aから滴下し、触媒槽4の触媒間を通過して受溜用タンクTに落下する。
【0013】
このとき、触媒槽4および受溜用タンクT内は架橋ポリエチレンの燃焼による酸素の消失で徐々に酸欠状態となり、酸欠状態で熱分解したワックス状物質Cは受溜用タンクTに溜まる。
【0014】
このように、溶融して高熱状態となっているワックス状物質Cは、酸欠状態において一部が気化して可燃性の高熱ガスGを発生する。この高熱ガスGは、受溜用タンクTと燃焼用バスケット2との間に設けた連通管9により燃焼用バスケット2内に送出される。
【0015】
該連通管9は、受溜用タンクT内にて生成した可燃性の高熱ガスGを効率よく燃焼用バスケット2内に送出するためのもので、複数本が受溜用タンクTの外壁に対し上下方向に沿って設置され、各連通管9には受溜用タンクTからのガスを燃焼用バスケット2に送り出すポンプ10が、上記高熱ガスGの送出を促進するために設けられている。高熱ガスGは、燃焼用バスケット2内に送り出された前記原料Aの燃焼場所において、燃焼用バスケット2の空気導入孔2aから導入される空気と混合されて燃焼し、原料Aの溶融を継続させる。このように装置を構成することにより、立ち上げ時において熱エネルギーの供給を必要とするが、その後は自立的に熱エネルギーが供給されるようになる。
【0016】
【特許文献1】特開昭60−190494号公報
【特許文献2】特開平10−128747号公報
【特許文献3】特開2003−206373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の樹脂系改質剤の製造装置は、イ.投入した廃材の全体が一度に燃焼するので燃焼のコントロールが困難、ロ.燃焼用バスケット2の側壁に形成された多数の空気導入孔2bから空気を導入するので、燃焼のコントロールが困難であるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、筐体の内部に燃焼炉が配置され、前記燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材の一部を燃焼させ、他の合成樹脂廃材を溶融・熱分解させてワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置において、燃焼炉は上部及び側面上部が封鎖され、下方及び側面下方が燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材を自然落下しない程度に開放され、前記開放された側面にて合成樹脂廃材の一部を燃焼させることを特徴とする樹脂系改質剤の製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
燃焼炉の下端から露出した合成樹脂廃材のみを燃焼させることによって、合成樹脂廃材の下端部のみを局所的に安定して燃焼させることができ、安定した熱分解をさせることができる。これにより、従来の課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、以下の種々の実施形態を採用することができる。
燃焼炉は燃焼筒とその下方に配置されたロストルとで構成されたことを特徴とする。
ロストルは燃焼筒の下方に所定間隔を隔てて配置されたことを特徴とする。
ロストルは、断面が凹状に形成され、燃焼筒の下方に直接配置されたことを特徴とする。
ロストルは金網又は/及びパンチングメタルで構成されたことを特徴とする。
合成樹脂廃材は棒状に加工されたものであることを特徴とする。
合成樹脂廃材はナゲット材であることを特徴とする。
棒状の合成樹脂廃材はその中心軸線がほぼ鉛直となるように配置されたことを特徴とする。
燃焼炉の側面下方に向かって側面から酸素又は酸素含有ガスを供給する複数の酸素供給ノズルが配置され、前記筒体内に配置された前記棒状の合成樹脂廃材を下端から徐々に燃焼させて樹脂系改質剤を製造することを特徴とする。
前記酸素供給ノズルは、酸素又は酸素含有ガスを層流に放出させるものであることを特徴とする。
燃焼炉の側面又は筐体の側面は、水または水蒸気が通る通路が設けられ、燃焼炉又は筐体が冷却されることを特徴とする。
筐体の側面に空気供給窓が形成されていることを特徴とする。
なお、本発明において、「側面」とは特に断らない限り、上面及び下面を除き、右側面及び左側面以外に、正面(前面)、背面(裏面)も含むものとする。
【0021】
以下本発明を図示した実施形態により更に詳しく説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す製造装置の燃焼炉20を示すものである。この燃焼炉20は、燃焼筒21と、その下端に所定間隔を隔てて配置されたロストル22と、これら燃焼筒21とロストル22との間に酸素又は酸素含有ガスを供給する酸素供給ノズル23と、燃焼筒21の上部を封鎖する蓋24と、これらを内部に収納して側面を外部空間から隔離する筐体25等から構成されている。これによって、燃焼炉20は上部及び側面上部が封鎖され、下方及び側面下方が燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材を自然落下しない程度に開放されている。
上記の棒状の合成樹脂廃材は、例えば電力ケーブルの合成樹脂絶縁被覆層の外周を2〜6程度に縦割りして剥がした断面積1〜50cm2、長さ30cm程度に加工したものである。ナゲット材の合成樹脂廃材は、例えば上記合成樹脂絶縁被覆層を一辺の長さが0.3〜3cm程度に細かく粉砕された粒状又は長さ3〜15cm程度に切断された片状のものである。しかしながら、その両者の大きさの境界は必ずしも明確なものではない。
【0022】
燃焼筒21は、断面が円形又は四角形などの筒状の形状を成しており、鉄などの耐熱性のもので構成され、その軸心がほぼ鉛直に配置されている。燃焼筒21の内部には1乃至複数の棒状の原料Aをほぼ鉛直に収納する空間を有している。
ロストル22は燃焼筒21内に配置された原料Aの端部を燃焼筒21の下端から突出させて支えるもので、本実施形態においては平面形状の金網が水平面となるように配置されて構成されている。
【0023】
酸素供給ノズル23は、燃焼筒21の下端から突出する原料Aに対して、図示しない酸素供給源から酸素または酸素含有ガスを供給して、原料Aの燃焼を助長させるためのものである。図示の実施形態においては、図3に示すように、一端231が円筒形状に構成され、他端232が多数の噴出孔233を有する断面長方形状に形成され、前記円筒形状の内部空間と前記それぞれの噴出孔233とは内部で連通して、一端231側から供給される気体を噴出孔233から断面長方形状に噴出する層流発生バーナ23'が4個、図2に示すように、噴出孔233が棒状の原料Aの軸心を向くように配置されて構成されている。勿論、層流発生バーナ23'の数は1個以上であれば良い。
【0024】
蓋24は燃焼筒21の上部を覆い、燃焼筒21の上部空間と内部空間との間を封鎖するためのもので、燃焼筒21の上部から取り外し自在に配置され、燃焼筒21内に原料Aを挿入・配置させる場合(追加する場合を含む)に、その蓋24を取り外し、燃焼筒21の上部から原料を配置させることができるようになっている。この蓋24は、以下で説明する燃焼による熱分解時に、燃焼筒21の内部で原料Aが燃焼するのを防ぐ働きをする。
【0025】
筐体25は、上記各部品を内部に保持して周囲の外部空間から空気の出入りを防ぐためのものである。筐体25の上部には、図示しない排気装置が備えられており、酸素供給ノズル23によって供給された酸素又は酸素含有ガスによって原料Aが燃焼する際に発する排気ガスを処理するようになっている。また、筐体25の下端は、ロストル22を介して図示しない受溜用タンクが配置されている。
【0026】
本燃焼装置を動作させるには、初め、燃焼筒21の上部から蓋24を外し、図示しない原料搬送ロボットにより、棒状の原料Aを燃焼筒21内に挿入してロストル22上に積載して配置させて、前記蓋24を燃焼筒21の上部に被せる。
次に、酸素供給ノズル23によって、原料Aの下端に酸素又は酸素含羞ガスを供給する。
【0027】
次に、前記原料搬送ロボットに備え付けられたガスバーナ等による点火装置により、原料Aの下端に点火して原料Aの下端を燃焼させ、その後、点火装置を取り外す。
これにより、原料Aの下端部は酸素供給ノズル23の力を借りて一部が燃焼を続け、この燃焼による熱によって他の一部が熱分解して溶融物Bとして落下し、図示しない受溜用タンクに捕集される。
暫くすると、原料Aは上記燃焼及び熱分解によりその長さが短くなる。原料Aが所定長になると、これを図示しないセンサがこれを感知して、前記原料搬送ロボット等が蓋24を開いて新たな原料を継ぎ足すことを繰り返す。これにより、持続的に熱分解を継続させることができる。
【0028】
本実施形態は、燃焼筒21の下端から突出した棒状の原料Aの下端部のみを酸素供給ノズルによる酸素又は酸素含有ガスの供給によって原料Aの下端部のみを局所的に燃焼させるので、この供給ガスを制御することによって燃焼温度の制御が容易となり、安定した熱分解をさせることができる。
【0029】
また、本実施形態は、原料Aの下端部の外周に対して4個の層流発生バーナ23'により酸素又は酸素含有ガスを層流により供給するので、供給量を増やしても燃焼を安定化させることができる。また、この供給量を制御することにより、燃焼状態を安定させ、燃焼温度を一定に制御することが可能になった。
【0030】
なお、本実施形態において、燃焼筒21の下端とロストル22との間に燃焼筒21の外周と略同じ円筒状の金網を配置することも可能である。これにより、燃焼筒21内に配置された棒状の原料Aの長さが燃焼により短くなった場合においても、原料Aがロストルの外側にはみ出すことを防ぐことができる。
【0031】
[異なる他の実施形態]
図4は本発明の他の実施形態を示すものである。本実施形態の燃焼炉20は、ロストル22が半円球状に形成されて燃焼筒21の下端から突出するように形成され、酸素供給ノズル23がパイプ状のバーナで構成されている。このようなものであっても原料Aの下端のみを適宜燃焼させ、原料Aを熱分解させて、樹脂系改質剤を製造することができる。
【0032】
図5は本発明の更に異なる製造装置の他の実施形態を示すものである。
本製造装置は、燃焼炉20、補足部30、燃焼炉20と補足部30との間に不活性ガス層Vを生成するガス供給部40等とで構成されている。
燃焼炉20の構成は図1に示す実施形態のものと略同じなのでその説明を省略する。
【0033】
補足部30は、ロストル22の下方に傾斜して配置された樋31と、樋31の傾斜上部の位置で樋31に水32を供給する給水口33と、樋31の傾斜下方の位置に設置され樋31に流れる水32を濾す籠34と、籠34の下方の位置に設置され籠34から漏れ出る水を受け取る水槽35と、その水槽35の水をパイプ36を介して前記給水口33に水32を供給するポンプ37とからなる。
【0034】
ガス供給部40は、図示しない不活性ガス供給装置から不活性ガスが供給され、燃焼炉20と補足部30との間の一部の層を不活性ガスの雰囲気にする。
【0035】
また、上記のような補足部30を採用することにより、燃焼炉20で生成された溶融物Bが樋31上の水32に落下することにより直ちに冷やされて固形の樹脂系改質剤B'となり、水32の流れによって籠34に搬送されて補足される。従って、籠34で補足された樹脂系改質剤は容易に籠34で集めることができ、更に水によって直ちに冷やされて薄い膜の樹脂系改質剤B'となるため、落下点で次々に積層して大きな塊を生ずることが無い。これにより固形の樹脂系改質剤B'の中に煤などの不純物が混入することが少なく、水洗いなどにより、不純物を容易に取り除くことが可能になる優れた樹脂系改質剤B'を得ることができる。
【0036】
燃焼炉20と補足部30とは、これらが互いに上下方向に離れて配置され、その間に筐体25の下方から空気が入り込むことができるようになっている。このため、前記ガス供給部40が配置されていない状況下では、燃焼炉20で溶融・熱分解して生成された樹脂系改質剤が燃焼炉20から補足部30まで燃焼を継続しながら落下する状況に置かれている。しかしながら、前記ガス供給部40の存在によりロストル22の下方に不活性ガス層Vが形成され、燃焼炉20から燃焼しつつ落下する樹脂系改質剤を直ちに消火させることができる。これにより、樹脂系改質剤の生成歩留まりを高めることができる。
【0037】
このように、上記いずれの実施形態においても、燃焼炉20の直下の位置に不活性ガス層Vが形成されているので、この不活性ガス層Vにより燃焼炉20から燃焼しつつ落下する樹脂系改質剤を直ちに消火させることができ、燃焼により消失する樹脂系改質剤を減らすことができ、樹脂系改質剤の生成歩留まりを高めることができる。
【0038】
[更に異なる他の実施形態]
図6〜10は上記各実施形態と更に異なる樹脂系改質剤製造装置50を示すもので、合成樹脂廃材(原料)が細かく粉砕された所謂、ナゲット材を用いて樹脂系改質剤を生成させるに適したものであり、図6は正面図、図7は右側面図、図8は背面図、図9は図8のA−A'線における断面図、図10は内部を透視した背面説明図である。これらの図において、51は樹脂系改質剤製造装置50の筐体、60は燃焼炉、70は受溜用タンクである。
【0039】
燃焼炉60は、燃焼筒61とロストル65とで構成されている。燃焼筒61は、図11に示すように、その断面形状が短辺と長辺とを有する長方形形状を成しており、その上部及び側面上部がその内部と外部とで気体の出入りを制限するように封鎖されており、また燃焼筒61の下方及び側面下方は、燃焼筒61内に配置された合成樹脂廃材が自然落下しない程度に隙間を設けたロストル65により開放されている。そして上記短辺はおよそ15〜40cmに構成され、開放された燃焼炉60の下方に酸素が供給されて合成樹脂廃材の一部を燃焼させることができるように構成されている。
【0040】
ロストル65の底面と燃焼筒61の下端との間隔、即ちロストル65の高さは合成樹脂廃材の燃焼のし易さに応じて適宜調整される。即ち、合成樹脂廃材が燃焼し易い場合はその高さを短くし、燃焼し難い場合はその高さを長くして、燃焼状態を調整することができる。
ロストル65は金属メッシュや円形や長尺状のパンチ穴(パンチングメタル)等で構成される。
【0041】
燃焼炉60の下方の表側と裏側(燃焼筒61の下方の表側と裏側)には、図9に示すように、それぞれ上記長辺方向に沿って複数の空気供給ノズル67が燃焼炉60に向かって対向するように配置され、合成樹脂廃材の燃焼時に燃焼炉60内に空気(酸素)を強制的に供給できるようになっている。この空気供給ノズル67は前記酸素供給ノズル23と同様なもので構成され、図示しない空気ポンプにより空気等が供給される。
【0042】
筐体51の背面の上部には、図9に示すように、原料ホッパー部52が設けられている。この原料ホッパー部52は、ホッパー本体52a、及びホッパー本体52aの上部に回転軸52bを中心にして回転する蓋52cにより構成され、ホッパー本体52aはハンドル52d(図7参照)を操作することにより回転軸52bを中心にして筐体51内に回転可能に構成されている。また、ホッパー本体52aの側面は筐体51の一部を形成するように構成されている。また、上記燃焼筒61の背面には、扉62が設けられており、ホッパー本体52aがハンドル52dの操作により図9の点線に示すように回転させられたときに、ホッパー本体52aに収納された合成樹脂廃材が開いた扉62から燃焼筒61内に供給できるようになっている。
【0043】
筐体51の前部には指針53aが、燃焼筒61内には原料センサー53bがそれぞれ配置され、これらは互いにステンレス線や金属チエーン等による可撓線条体53cにより連結され、これらにより原料残指示計53が構成されている。原料センサー53bは燃焼筒61内に配置された合成樹脂廃材の上に搭載されて、燃焼により減少した合成樹脂廃材上部の下降に応じて下降し、この下降を可撓線条体53cが指針53aに伝え、合成樹脂廃材の減少により指針53aが上昇するように構成されている。従って、この指針53aを読み取ることにより燃焼筒61内にどれ程の合成樹脂廃材が残されているのかを知ることができる。
更に、筐体51の前部及び背面にはそれぞれ燃焼炉60の燃焼状態を観察できる観察窓54及び空気量調整自在の空気供給窓55が形成されている。
【0044】
筐体51の下方には受溜用タンク70を配置しておくための受溜用タンク室56が設けられており、筐体51の側面に設けられた扉57を開くことによって前記受溜用タンク70を筐体51の内外に出し入れすることができるようになっている。本実施形態においては8個の受溜用タンク70が上記長辺方向に沿って一列に配置された場合が示されている。
【0045】
ロストル65と受溜用タンク室56との間には、合成樹脂廃材が燃焼により生成された樹脂系改質剤を集合させて各受溜用タンク70に導くための改質剤集合ホッパー71が受溜用タンク70の数だけ配置されている。なお、この改質剤集合ホッパー71は、受溜用タンク室56の全体に受溜用タンク70が1個の配置された場合にあっては1個であっても良く、また図12に示すように存在させなくとも良い。
受溜用タンク室56および改質剤集合ホッパー71には窒素などの不活性ガスが供給され生成されたワックス状物質が二次燃焼しないようになっている。
【0046】
燃焼筒61の側面及び筐体51の側面には水または水蒸気が通る通路64が設けられ、筐体51の側面に設けられた冷却媒体注入穴から水または水蒸気が供給されて燃焼筒61及び筐体51を適度に冷却し、燃焼筒61や筐体51の保護を図ると同時に、合成樹脂廃材の熱分解が過度に行われないように制御できるようになっている。
即ち、燃焼筒61の側面または筐体51の側面を冷却しない場合は、燃焼筒61の上部で350℃以上になり樹脂系改質剤製造装置の運転を中止しなければならない事態を生じたが、冷却した場合は約200℃で保たれ、安定して運転することができた。また、これにより得られた熱回収による水蒸気や温水の熱エネルギーは、温水プールや風呂の熱源として利用される。
【0047】
筐体51の上部には、図示されていないが、燃焼炉60で燃焼された排ガスを処理する排ガス処理装置が取り付けられている。この排ガス処理装置は、例えば排ガスをガスバーナで強制的に再度燃焼させる燃焼室やその強制的に燃焼させたガスからゴミやチリを取り除くためのスクラバー等で構成されている。これにより、排ガスは大気汚染を起こさないような処理がなされて大気中に放出されるようになっている。
【0048】
尚、樹脂系改質剤製造装置50の右側前面に配置されたハンドル58は、減速ギヤーボックス58aを介して空気供給ノズル67や改質剤集合ホッパー71等を上下するためのもので、空気供給ノズル67等をロストル65から遠ざけることにより、ロストル65等の掃除をし易くするためのものである。
【0049】
[更に異なる他の実施形態における樹脂系改質剤製造装置の動作]
以下、本実施形態の樹脂系改質剤製造装置50を運転の操作順に従って各部の動作を更に詳しく説明する。
【0050】
まず、初めに、回転軸52bを中心にして蓋52cを回転させ、ホッパー本体52aの上部を開放にし、図示しない原料搬送装置によりナゲット状の合成樹脂廃材をホッパー本体52a内に投入する。この後、蓋52cを閉じておく。
次に指針53aを最下位に下げて固定する。これにより、燃焼筒61内の原料センサー53bは最上位に上昇されて固定される。
この状態において、燃焼筒61の背面に配置された扉62を開くとともに、ハンドル52dを操作してホッパー本体52aを破線で示すように回転させる。これにより、ホッパー本体52a内に配置された合成樹脂廃材が前記開かれた扉62から燃焼筒61内に投入される。燃焼筒61内に投入された合成樹脂廃材は一部が燃焼筒61の下方から露出してロストル65上に配置され他の合成樹脂廃材は燃焼筒61内に配置される。
【0051】
次にハンドル52dを上記と逆操作してホッパー本体52aを元の位置に戻す。更に燃焼筒61の扉を閉じる。これにより、燃焼筒61の外周は内部と外部とで気体の出入りを制限するように封鎖される。
この状態で前記固定された原料残指示計53の最下位での固定を解除することによって、燃焼筒61内の原料センサー53bは、合成樹脂廃材の上部に搭載された状態になる。これにより、指針53aは燃焼筒61内に存在する合成樹脂廃材の量に応じた値を示す。
【0052】
次に、空気供給ノズル67から空気を燃焼筒61の下方から露出した合成樹脂廃材に対し行い、ロストル65上に搭載され燃焼筒61の下方から露出した合成樹脂廃材に点火を行う。点火は、図示されていないが、空気供給ノズル67の上方でロストル65に向かって設置された点火電極を備えたガスバーナによって行われる。
燃焼がある程度進行した状態においては、上記ガスバーナの動作を停止させ、合成樹脂廃材を自立的に燃焼させる。燃焼が適切に行われる空気供給ノズル67からの空気供給量を予め把握しておき、この適切な量を供給する。この際、筐体51の前面に形成された空気供給窓55の開閉度合いも適度に行う。
【0053】
このようにして合成樹脂廃材の一部が自立的に適切に燃焼する。これにより、合成樹脂廃材の他の一部が加熱溶融して熱分解され、ワックス状物質が液状体となって製造される。製造されたワックス状物質は重力によりロストル65の下方に落下し、この後、ワックス状物質はその下方に配置された各改質剤集合ホッパー71により集合されて各受溜用タンク70に導かれ、受溜用タンク70に集められる。受溜用タンク室56および改質剤集合ホッパー71は、前記したように窒素などの不活性ガスが供給されているので、生成されたワックス状物質は二次燃焼することなく、受溜用タンク70に集められる。
【0054】
この合成樹脂廃材の燃焼に際して、燃焼筒61内は燃焼筒61の上部及び側面がその内部と外部とで気体の出入りを制限するように封鎖されているので、燃焼筒61内では燃焼が行われることがない。これにより、燃焼が過度に進むことがなく、安定して燃焼が行われる。
【0055】
上記のようにして燃焼が進むと、燃焼筒61内に蓄えられた合成樹脂廃材が徐々に少なくなり、合成樹脂廃材の上部の位置が下降する。これによって合成樹脂廃材の上部に搭載された原料センサー53bは下降し指針53aは上昇する。この指針53aの上昇によって、燃焼筒61内にどれだけ合成樹脂廃材が残存しているかを知ることができる。
【0056】
燃焼筒61内の合成樹脂廃材がある程度少なくなったときに、燃焼筒61内への合成樹脂廃材の追加を行う。合成樹脂廃材の追加は、前記したように、ホッパー本体52a内への合成樹脂廃材の投入、指針53aを最下位への固定、燃焼筒61の扉62の開口、ホッパー本体52aの回転等を行って行う。
【0057】
上記を繰り返すことにより、ワックス状物質の製造を連続して行うことができる。
受溜用タンク70に生成されたワックス状物質の取り出しは、所定の時間が経過した時点で、筐体51の側面に設けられた扉57を開き、一方の扉57から受溜用タンク70を取り出し、他方の扉57から空受溜用タンク70を挿入することにより行われる。
【0058】
燃焼炉60の大きさが35×20cmと140×20cmである2種類の本樹脂系改質剤製造装置50(これを以下単に横型という)と、これと略同一面積の直径30cm、60cmの断面円形の2種類の樹脂系改質剤製造装置(以下単に円形という)を用いて、燃焼状態と燃焼速度を測定した結果は表1及び表2の通りであった。なお、この際のロストル65の底面と燃焼筒61の下端との間隔は15cmとした。また、合成樹脂廃材は、架橋ポリエチレン絶縁電線(OC電線)の絶縁被覆層を剥がして得られたポリエチレン樹脂を一辺の長さが10cm程度に切断された片状のものが用いられた。
【0059】
この結果、面積が小サイズのものは、両者間にさほど差が無かったが、面積が大きいものは横型のものの方が燃焼状態及び燃焼速度の点で良好な結果が得られた。このため、本横型の樹脂系改質剤製造装置の方が大きな面積で燃焼させるのに適したものであることが確認できた。これにより横型のものは長辺の長さを増すことにより容易にスケールアップを図ることができる。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
なお、上記実施形態はワックス状物質の取り出しを受溜用タンク70を取り出すようにして行う場合を説明したが、受溜用タンク70を一個にし、この受溜用タンク70内に生成ワックス取出ポンプを設置し、このポンプを作動させることによりこのポンプに連結されたパイプを介して筐体51の外部にワックス状物質を取り出すことも可能である。
【0063】
このように樹脂系改質剤製造装置50は断面が短辺と長辺とを有する長方形状の燃焼炉61により構成され、燃焼炉の下方でのみ燃焼を行われるため、燃焼が困難なナゲット材の合成樹脂廃材であっても効率良く燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態の燃焼炉を示す要部説明図。
【図2】図1における要部斜視図。
【図3】図2における要部拡大斜視図。
【図4】本発明の他の実施形態を示す要部説明図。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示す要部断面説明図。
【図6】本発明の更に他の実施形態を示す正面図。
【図7】図6の右側面図。
【図8】図6の背面図。
【図9】図8のA−A'線における断面図。
【図10】図6の内部を透視した要部断面説明図。
【図11】図6の要部斜視説明図。
【図12】本発明の更に他の実施形態の内部を透視した要部断面説明図。
【図13】従来の一例を示す燃焼熱分解炉の要部断面説明図。
【符号の説明】
【0065】
20 燃焼炉
21 燃焼筒(筒体)
22 ロストル(金網)
23 酸素供給ノズル
23' 層流発生バーナ
24 蓋
25 筐体
30 補足部
31 樋
32 水
33 給水口
34 籠
35 水槽
36 パイプ
37 ポンプ
40 ガス供給部
50 樹脂系改質剤製造装置
51 筐体
52 原料ホッパー部
52a ホッパー本体
52b 回転軸
52c 蓋
52d ハンドル
53 原料残指示計
53a 指針
53b 原料センサー
53c 可撓線条体
54 観察窓
55 空気供給窓
56 受溜用タンク室
57 扉
58 ハンドル
60 燃焼炉
61 燃焼筒
62 扉
64 通路
65 ロストル
67 空気供給ノズル
70 受溜用タンク
71 改質剤集合ホッパー
B 溶融物
B' 樹脂系改質剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に燃焼炉が配置され、前記燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材の一部を燃焼させ、他の合成樹脂廃材を溶融・熱分解させてワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置において、燃焼炉は上部及び側面上部が封鎖され、下方及び側面下方が燃焼炉内に配置された合成樹脂廃材を自然落下しない程度に開放され、前記開放された側面及び下方にて合成樹脂廃材の一部を燃焼させることを特徴とする樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項2】
燃焼炉は燃焼筒とその下方に配置されたロストルとで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項3】
ロストルは燃焼筒の下方に所定間隔を隔てて配置されたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項4】
ロストルは断面が凹状に形成され、燃焼筒の下方に直接配置されたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項5】
ロストルは金網又は/及びパンチングメタルで構成されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項6】
合成樹脂廃材は棒状に加工されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項7】
合成樹脂廃材はナゲット材であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項8】
棒状の合成樹脂廃材はその中心軸線がほぼ鉛直となるように配置されたことを特徴とする請求項6に記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項9】
燃焼炉の側面下方に向かって側面から酸素又は酸素含有ガスを供給する複数の酸素供給ノズルが配置され、前記筒体内に配置された前記棒状の合成樹脂廃材を下端から徐々に燃焼させて樹脂系改質剤を製造することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項10】
前記酸素供給ノズルは、酸素又は酸素含有ガスを層流に放出させるものであることを特徴とする請求項9に記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項11】
燃焼炉の側面又は筐体の側面に水または水蒸気が通る通路が設けられ、燃焼炉又は筐体が冷却されることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。
【請求項12】
筐体の側面に空気供給窓が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−95068(P2008−95068A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179200(P2007−179200)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(593047426)社団法人電線総合技術センター (16)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】