説明

樹脂組成物の硬化方法

【課題】本発明は、活性エネルギー硬化性化合物とオレフィン系重合体とビニル系重合体を有するブロック共重合体を含有する樹脂組成物のポリオレフィン基材に対する付着性を改善する硬化方法を提供することを目的にする。
【解決手段】ポリオレフィン系基材上に設けた、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成される重量平均分子量が5000〜100000であるブロック共重合体(C)と活性エネルギー線硬化性化合物(D)を含有する樹脂組成物の硬化方法において、該樹脂組成物が40℃以上の雰囲気で乾燥後、活性エネルギー線照射されることを特徴とする樹脂組成物の硬化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂等からなる基材に対して優れた付着性を有する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する樹脂組成物、および該組成物を有効成分とする塗料、インキ、接着剤、シール剤またはプライマーの硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂は、安価で成形性、耐薬品性、耐水性、電気特性など多くの優れた性質を有するため、シート、フィルム、成形物等として、近年広く採用されている。しかし、これらポリオレフィン系樹脂を含む基材(以下、「ポリオレフィン系基材」ということがある。)は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等からなる極性基材とは異なり、非極性かつ結晶性であるため、極性の塗料の塗装や極性物質との付着(接着)が困難であるという欠点、すなわち付着性(接着性)が低いという欠点をを有する。
【0003】
この問題に対して、ポリオレフィン系基材の表面にプラズマ処理やガス炎処理を施し活性化することにより、付着性を改良する方法がある。しかし、この方法では、工程が複雑で、多大な設備費や時間的なロスを伴う。さらに、成形物の形の複雑さや、樹脂中の顔料や添加物の影響により、表面処理効果にバラツキを生ずる等の欠点を有している。又、塩素化ポリオレフィン樹脂をコーティング組成物として用いることにより、ポリオレフィン系基材との親和性を高め、接着性の向上をはかった方法もある。しかし、脱塩酸による安定性の問題や、近年の環境意識の高まりにより、塩素の使用が忌避される傾向がある等の問題を有している。
【0004】
一方、紫外線(UV)や電子線(EB)に代表される活性エネルギー線にて硬化する化合物(以下、「活性エネルギー線硬化性化合物」あるいは「活性エネルギー線硬化型樹脂」ということがある。)を含む、塗料や接着剤が開発されている。活性エネルギー線硬化性化合物を含有する塗料、接着剤は無溶剤系であり環境に対する負荷が小さい、硬化速度が極めて速く製品の生産性が高い、加熱工程を経ないため熱に対して不安定な材料にも適用できる等、の利点がある。極性基材に対する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する塗料、接着剤の付着性の改善については多くの技術が知られている。
【0005】
ポリオレフィン系基材への付着性改善を目的とした技術としては、ポリオレフィン系基材と付着性が良好な樹脂と活性エネルギー硬化性化合物を含有した樹脂組成物の開発がされている。例えば、塩素化ポリオレフィン樹脂と活性エネルギー硬化性化合物を含む組成物(特許文献1)や、非塩素系変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物(特許文献2)が知られているが、前者では紫外線の照射による脱塩酸とそれに伴う付着力の経時安定性が懸念され、また後者では組成物中に多量の希釈溶剤を使用するために環境負荷が大きいという問題があった。これらの問題を解決するため、特許文献3には、活性エネルギー硬化性化合物と特定のブロック共重合体を含有する樹脂組成物に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139305号
【特許文献2】特開2003−238885号
【特許文献3】WO2010/084913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、ポリオレフィン系基材への付着性(接着性)は改善されるものの、安定した付着性が得られない等の問題があり、更なる付着性の改善が望まれていた。
そこで、本発明は、活性エネルギー硬化性化合物とオレフィン系重合体とビニル系重合体を有するブロック共重合体を含有する樹脂組成物のポリオレフィン基材に対する付着性を改善する硬化方法を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の〔1〕〜〔3〕を提供するものである。
〔1〕ポリオレフィン系基材上に設けた、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成される重量平均分子量が5000〜100000であるブロック共重合体(C)と活性エネルギー線硬化性化合物(D)を含有する樹脂組成物の硬化方法において、該樹脂組成物が40℃以上の雰囲気で乾燥後、活性エネルギー線照射されることを特徴とする樹脂組成物の硬化方法。
〔2〕前記重合体ブロック(B)が、カルボキシル基を有するビニル系単量体と(メタ)アクリル酸エステルからなる重合体を含むことを特徴とする〔1〕に記載の樹脂組成物の硬化方法。
〔3〕前記樹脂組成物に対するブロック共重合体(C)の含有量が、0.1重量%以上40重量%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物の硬化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、活性エネルギー硬化性化合物とオレフィン系重合体とビニル系重合体を有するブロック共重合体を含有する樹脂組成物のポリオレフィン基材に対する付着性をを改善する硬化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、ポリオレフィン系基材とは、オレフィン類やアルケンをモノマーとして合成される基材であり、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ブテン等を単独あるいは2種類以上を用いた基材である。
【0011】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、以下に述べる重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
【0012】
重合体ブロック(A)は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロックである。すなわち、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体により構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(A)におけるオレフィン系単量体単位の含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて50〜100モル%の範囲内であるのが好ましく、70〜100モル%の範囲内であるのがより好ましく、80〜100モル%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0013】
オレフィン系単量体単位とは、オレフィン系単量体から誘導される単位を意味する。オレフィン系単量体単位としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のα−オレフィン;2−ブテン;イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン;ビニルシクロヘキサン;β−ピネンなどのオレフィン系単量体から誘導される単位を挙げることができ、重合体ブロック(A)は、これらのオレフィン系単量体単位のうち1種または2種以上を含有することができる。
【0014】
重合体ブロック(A)は、エチレン、プロピレンから誘導される単位を含むのが好ましい。中でも、プロピレンから誘導される単位からなる重合体ブロック;プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィンから誘導される単位からなる共重合体ブロックであるのがより好ましい。重合体ブロック(A)におけるプロピレンの含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて70〜100モル%の範囲内、より好ましくは、80モル%〜100モル%であるのが好ましい。また前記の他のα−オレフィンとしては、エチレン、ブテンが好ましい。
【0015】
上記のオレフィン系単量体単位がブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエンから誘導される単位の場合には、残存する不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0016】
重合体ブロック(A)を構成する重合体は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなるものである。従ってオレフィン系単量体単位のほかに、オレフィン系単量体以外の単位を含み得る。例えば必要に応じて、上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体から誘導される単位を0〜50モル%の範囲内の割合で含有することができる。該単量体単位の含有量は、0〜30モル%の範囲内であるのが好ましく、0〜20モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0017】
上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルが好ましい。
【0018】
重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体は、変性されていてもよい。該変性は、該重合体に対して、エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化などの公知の諸法を用いて行なうことができる。
【0019】
重合体ブロック(A)は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を減成したものであっても良い。これにより、重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、重合体ブロック(A)の分子量を調整することができる。減成の方法としては、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中400〜500℃にて熱分解する方法や、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中、有機過酸化物存在下にて分解する方法が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
【0020】
前記有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
【0021】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体からなる重合体ブロックである。すなわち、前記置換基を有するビニル系単量体及び該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体により構成される重合体ブロックである。
【0022】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜100モル%含有する。該単位の含有量は2〜50モル%の範囲内であるのが好ましく、2〜30モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0023】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0024】
無水カルボン酸基(式:−CO−O−CO−で示される基)を有するビニル系単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、無水マレイン酸が好ましい。
【0025】
また、スルホン酸基を有するビニル系単量体としては、例えば、4−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。なお、スルホン酸基が、ナトリウムやカリウム等の金属の塩や各種アンモニウム塩となっているビニル単量体を使用することも可能である。
【0026】
重合体ブロック(B)は、上記のカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて0〜98モル%含有する。該単位の含有量は、好ましくは50〜98モル%、より好ましくは70〜98モル%である。上記の他のビニル系単量体とは、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体を意味し、スチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0027】
本発明における重合体ブロック(B)を構成するモノマーの組み合わせとしては、カルボキシル基を有するビニル形単量体と(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸と、メチルアクリレート、エチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
なお、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートを指すものとする。
【0029】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロック(B)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。
【0030】
ブロック共重合体(C)の重量平均分子量としては、5,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量が100,000を超える場合は活性エネルギー線硬化性化合物(D)と混合した場合の溶液粘度が高くなる、または溶解し難くなり溶液性状が不安定になる等の問題が生じ、塗工性の低下を引き起こす。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量が5,000を下回る場合は凝集力不足となり、ポリオレフィン基材への付着性が発揮できない。なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0031】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とから構成されていればよく、その製造方法は特に限定されない。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することにより製造することができる。この方法によれば、目的とする重量平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(C)を簡便かつ効率的に製造することができる。また、この方法によれば、重合体ブロック(A)として市販品を含む種々のポリオレフィンを前記の通りに減成したものを使用でき、リビング重合によってブロック共重合体を製造する場合に比べて、重合体ブロック(A)の構造や融点を自由に選択することが可能である。
【0032】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)は、各種の方法により製造することができる。例えば、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、この二重結合を介して、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸またはチオ吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合法によりオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を製造する際の停止剤としてエチレンスルフィドを用いる方法などにより製造することができる。
【0033】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下における、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分のラジカル重合は、公知の方法によって進めることが可能である。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をトルエンなどの有機溶剤に溶解した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶液法などが挙げられる。また、例えば末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をその融点以上に加温することで無溶剤にて溶融した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶融法なども挙げられる。
【0034】
前記ラジカル重合を行う際のラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択することができる。特にアゾ系開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択できる。
【0035】
本発明における活性エネルギー線硬化性化合物(D)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによって、硬化する化合物であり、その硬化機構はラジカル重合であってもカチオン重合であっても良い。本発明におけるラジカル重合により硬化する活性エネルギー線硬化性化合物(D)としてはエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリレート、ビニルエーテル及びN−ビニルピロリドン等のビニル基を有する化合物及び(メタ)アリル化合物等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下モノ(メタ)アクリレートという〕及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下ポリ(メタ)アクリレートという〕等が挙げられる。
【0037】
モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート及びノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート;イソボルニルアクリレート等の脂環式モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら以外にも、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、マレイミド(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールZアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等の方向族ジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジ(メタ)アクリレート;イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、並びにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら以外にも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート等の4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートも使用可能である。
尚、上記において、アルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0039】
又、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーも使用することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。
【0040】
ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等がある。
【0041】
低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0042】
ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール又は/及びポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
【0044】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート及びポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付物等が挙げられる。
【0045】
ビニルエーテルとしては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート及び2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
本発明におけるカチオン重合により硬化する活性エネルギー線硬化性化合物(D)としてはエポキシ含有化合物やオキセタン基含有化合物、およびビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0047】
エポキシ含有化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールBA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、脂環式エポキシ、フルオレン系エポキシ、ナフタレン系エポキシ、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、複素環式エポキシ、αオレフィンエポキシ等を挙げることができる。
【0048】
オキセタン基含有化合物としては、例えば特登録03428187に記載のオキセタン化合物等を挙げることができる。
【0049】
ビニルエーテル化合物としては、例えば2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ビニル4−ヒドロキシブチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルプロピオネート、ビニルカルバゾール、ビニルビロリドン等が挙げられる。
【0050】
本発明における活性エネルギー線硬化性化合物(D)としては、前記した中でもポリ(メタ)アクリレートが好ましい。特に本発明の光硬化性化合物(D)としては1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートが、ブロック共重合体(C)と混合して形成される組成物の流動性の観点から好ましい。
【0051】
活性エネルギー線硬化性化合物(D)は前記した(メタ)アクリレート類単一で構成される必要はなく、必要に応じて異種の(メタ)アクリレート類やビニルエーテル及びN−ビニルピロリドン等のビニル基を有する化合物及び(メタ)アリル化合物や、エポキシ含有化合物やオキセタン基含有化合物およびビニルエーテル化合物等を混合することで、組成物の流動性や活性エネルギー線照射時の硬化性を調整することが可能である。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はブロック共重合体(C)と活性エネルギー線硬化性化合物(D)を公知の方法にて混合することにより得られる。また、組成物を90℃以下にて一定時間加熱・攪拌した後、冷却することにより、その溶液性状を向上させることができる。さらに、ブロック共重合体(C)に溶融助剤として溶剤を加え、90℃以下にて溶融した後、活性エネルギー線硬化性化合物(D)を滴下し、溶融助剤を留去し、冷却することによって組成物の溶液性状はさらに向上する。溶融助剤の留去方法としては、組成物製造時の加熱温度に応じて常圧留去や減圧留去など公知の方法を選択することができる。
【0053】
前記の溶融助剤は、組成物製造時の加熱温度にてブロック共重合体(C)を溶融可能であり、かつ活性エネルギー線硬化性化合物(D)を滴下した後に留去可能である。このような溶融助剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。
【0054】
本発明のブロック共重合体(C)は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物にポリオレフィン基材への付着性を付与するために、当該樹脂組成物中に一定量含有する必要がある。本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に対するブロック共重合体(C)の含有量は、0.1重量%以上40重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1重量%以上20重量%以下である。0.1重量%より少ないと、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のポリオレフィン基材への付着性が劣り、40重量%より多いと活性エネルギー線で硬化させた場合の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬さが十分でなくなる可能性がある。
【0055】
本発明の組成物を紫外線により硬化させる場合には、ラジカル重合やカチオン重合等、活性エネルギー線硬化性化合物(D)の硬化機構に応じて適切な光重合開始剤(E)を配合することもできる。
【0056】
ラジカル重合を引き起こす光重合開始剤(E)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシドあるいはビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;並びにキサントン類等が挙げられる。
【0057】
カチオン重合を引き起こす光重合開始剤(E)としては、紫外線照射によりカチオン種を発生させる化合物であれば特に限定されないが、一般的にはオニウム塩が良く知られている。オニウム塩としてはルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨウドニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などが挙げられる。具体的には、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨウドニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨウドニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
これらの光重合開始剤(E)は単独で使用することも、安息香酸系、アミン系等の光重合開始促進剤と組み合わせて使用することもできる。
【0058】
光重合開始剤の好ましい配合割合は、組成物100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下で、より好ましくは0.5重量部以上5重量部以下である。
前記以外にも、用途や必要に応じて、種々の成分を配合することができる。例えば、硫酸バリウム、酸化珪素、タルク、クレー及び炭酸カルシウム等の充填剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、酸化チタン及びカーボンブラック等の着色用顔料、密着性付与剤及びレベリング剤等の各種添加剤、並びにハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンン及びN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等の重合禁止剤等を挙げることができる。また、必要であれば、硬化塗膜への耐熱性や柔軟性の付与、顔料分散性の向上を目的として、ウレタン、ポリエステル、エポキシ等を混合して用いることもできる。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の基材への塗布方法としては、ハケ塗り、エアースプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装、ディップコート、スピンコート、カーテンコート等の方法が用いられる。
【0060】
本発明において、ポリオレフィン基材上に設けた樹脂組成物を40℃以上の雰囲気で乾燥後、活性エネルギー線照射し、樹脂組成物を硬化させることで、ポリオレフィン基材と樹脂組成物との付着性が向上する。以下、活性エネルギー線照射処理前に、40℃以上の雰囲気で乾燥することを「乾燥処理」ということがある。
【0061】
本発明において、活性エネルギー線照射前に、ポリオレフィン基材上に設けた樹脂組成物を40℃以上の雰囲気で乾燥することが必須であり、より好ましくは60℃以上である。乾燥処理温度が40℃以下の場合、硬化した樹脂組成物とポリオレフィン基材との付着性が不足する恐れがある。一方、乾燥処理温度の上限としては、特に限定されるものではないが、使用するポリオレフィン系基材が変形しない温度以下であることが好ましい。乾燥処理温度を調整する方法としては、乾燥機や加熱炉に入れて加熱する方法、生産ラインにおいて活性エネルギー照射装置に入る前に熱源を置く等の方法等が挙げられ、熱源としては、ハロゲンランプ等の赤外線ランプ及び電熱器等が挙げられる。
【0062】
本発明において、乾燥処理後に照射される活性エネルギーとしては紫外線や電子線を使用することができ、活性エネルギー線(紫外線、電子線など)の照射には、通常当該分野で用いられている公知の照射装置を使用することができ、紫外線の光源としては、水銀アーク灯、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが例示できる。また、活性エネルギー線の照射量は樹脂組成物に含有される活性エネルギー線硬化性化合物にあわせて適宜調整することが好ましく、通常200〜450nmの波長の紫外線を0.1〜60秒間照射し、30〜5000mJ/cm2のエネルギーを与えることで硬化させることができる。また、乾燥処理時間は、樹脂組成物及び乾燥処理温度に適宜調整することが好ましいが、通常1分以上であり、より好ましくは5分以上である。
【実施例】
【0063】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記の参考例において、融点の測定は次のようにして行った。
【0064】
(融点の測定方法)
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定する。融点Tmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化した後に、更に10℃/minで200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の参考例におけるTmは前述の条件で測定されたものである。
【0065】
(参考例1)
ブロック共重合体(融点75℃ ポリオレフィンブロック/エチルアクリレート−アクリル酸ブロック共重合体)の製造
(1)オレフィン系重合体(プロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%であるプロピレン系共重合体を、メタロセン触媒を用いて製造した。重量平均分子量80,000、Tm=75℃)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3)上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4)上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート85重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は18000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は16000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は34000であり、重合体ブロック(A)の融点は75℃であった。
【0066】
(実施例1〜4)付着試験
参考例1で製造したブロック共重合体25重量部に対し、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)を57.5重量部加え、80℃にて加温溶融させた後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を17.5重量部滴下した。滴下終了後、攪拌下室温まで冷却し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
上記で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100重量部に対し、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを4重量部添加し溶解した後、ポリプロピレン基材に#6のマイヤー・バーにて膜厚が5〜10μmになるように塗布し、直ちに乾燥機に入れ、各加熱温度で10分間加熱した。その後、光源にメタルハライドランプを用いた紫外線照射装置を用いて、試験体との距離10cmから、エネルギー線量が150mJ/cm2となるように紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装板を得た。
塗装板を23℃で24時間静置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目はく離試験の方法に準じて2mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90°方向にはく離させ、100マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方が付着性良好とした。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例1〜4と同じ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用し、ポリプロピレン基材に塗布後、直ちに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装版を得た。実施例1〜4と同様に碁盤目はく離試験を行った。
【0068】
(実施例5)
参考例1で製造したブロック共重合体15重量部に対し、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)を42.5重量部加え、80℃にて加温溶融させた後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を42.5重量部滴下した。滴下終了後、攪拌下室温まで冷却し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
上記で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100重量部に対し、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを4重量部添加し溶解した後、ポリプロピレン基材に#6のマイヤー・バーにて膜厚が5〜10μmになるように塗布し、直ちに80℃の乾燥機に入れ、10分間加熱した。その後、光源にメタルハライドランプを用いた紫外線照射装置を用いて、試験体との距離10cmから、エネルギー線量が150mJ/cm2となるように紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装板を得た。実施例1〜4と同様に碁盤目はく離試験を行った。
【0069】
(比較例2)
実施例5と同じ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用し、ポリプロピレン基材に塗布後、直ちに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装版を得た。実施例1〜4と同様に碁盤目はく離試験を行った。
(実施例6)
参考例1で製造したブロック共重合体15重量部に対し、1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDDA)を42.5重量部加え、80℃にて加温溶融させた後、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を42.5重量部滴下した。滴下終了後、攪拌下室温まで冷却し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
上記で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100重量部に対し、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを4重量部添加し溶解した後、ポリプロピレン基材に#6のマイヤー・バーにて膜厚が5〜10μmになるように塗布し、直ちに80℃の乾燥機に入れ、10分間加熱した。その後、光源にメタルハライドランプを用いた紫外線照射装置を用いて、試験体との距離10cmから、エネルギー線量が150mJ/cm2となるように紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装板を得た。実施例1〜4と同様に碁盤目はく離試験を行った。
(比較例3)
実施例6と同じ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用し、ポリプロピレン基材に塗布後、直ちに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によって塗装された塗装版を得た。実施例1〜4と同様に碁盤目はく離試験を行った。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系基材上に設けた、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成される重量平均分子量が5000〜100000であるブロック共重合体(C)と活性エネルギー線硬化性化合物(D)を含有する樹脂組成物の硬化方法において、該樹脂組成物が40℃以上の雰囲気で乾燥後、活性エネルギー線照射されることを特徴とする樹脂組成物の硬化方法。
【請求項2】
前記重合体ブロック(B)が、カルボキシル基を有するビニル系単量体と(メタ)アクリル酸エステルからなる重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の硬化方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物に対するブロック共重合体(C)の含有量が、0.1重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物の硬化方法。

【公開番号】特開2013−67745(P2013−67745A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208414(P2011−208414)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】