説明

樹脂組成物及び送電ケーブル用被覆材

【課題】柔軟性と高温での水蒸気バリア性を改善した被覆材を与える、成形性に優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる送電ケーブルを提供する。
【解決手段】非晶性脂環構造含有重合体、及び、エチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマーを含有する樹脂組成物であり、前記非晶性脂環構造含有重合体と可塑性エラストマーの重量比が60/40〜90/10である樹脂組成物。α−オレフィンは、1−オクテンが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆材として好適な非晶性脂環構造含有重合体、及び、エチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマーからなる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系重合体水素化物などの非晶性脂環構造含有重合体は、その透明性、低複屈折性、耐熱性、低吸水性などの特性に優れることから、光学材料や電子部品材料に用いられている。
特許文献1では、その誘電特性や耐水トリー性を活かし、電線被覆材料に環状オレフィン系樹脂を用いることが提案されている。ここでは、ポリオレフィンなどのその他の熱可塑性樹脂を併用することで押出成形時の溶融粘度特性が向上すること、ポリオレフィンゴムなどの軟質重合体を併用することで、機械強度、柔軟性及び耐屈曲性が向上することが記載されている。
【0003】
電線被覆材としては、このほか、ポリエチレンを導体に積層して絶縁材料とすることが検討されている。特許文献2や3では、ポリエチレンとして、エチレンとオクテンとの共重合体を用いることで柔軟性や耐水トリーを向上させることが開示されている。これらのポリエチレンは、押し出し被覆後、架橋させて絶縁体層となる。
また、エチレンとオクテンとの共重合体は、他のゴムと併用し、低温での耐衝撃性や強度特性を向上させることができる(特許文献4)。ここでも、ゴム成分とエチレンとオクテンとの共重合体とを含む樹脂組成物は、架橋により成形される。
ワイヤ・ケーブル被覆材として、非晶性の樹脂であるポリフェニレンエーテルに、引っ張り破断伸びを高める目的でエチレンとオクテンとの共重合体を配合することが、特許文献5にて提案されている。しかしながら、ポリフェニレンエーテルを用いた被覆材は、水蒸気バリア性と屈曲性が必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−189743号公報
【特許文献2】特開平8−185712号公報
【特許文献3】特開2000−207939号公報
【特許文献4】特開平11−080427号公報
【特許文献5】特開2004−161929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにエチレンとオクテンとの共重合体は架橋により、耐水トリー性を向上させることは確認されているが、非晶性の樹脂に配合する場合、柔軟性など機械特性の向上を期待したものであった。
ところが、ノルボルネン系重合体水素化物などの非晶性脂環構造含有重合体に、エチレンとオクテンなどの炭素数が6以上のα−オレフィンとの共重合体を所定量配合すると、架橋されなくとも、伸びや折り曲げによる破損を低減し、高温での水蒸気バリア性を有した被覆材を与えうる、成形性に優れた樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、非晶性脂環構造含有重合体、及び、エチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマーからなる樹脂組成物であり、非晶性脂環構造含有重合体と熱可塑性エラストマーの重量比が60/40〜90/10である樹脂組成物が、成形性と高温での水蒸気バリア性に優れた送電ケーブル用被覆材を与えうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明によれば前記樹脂組成物からなる被覆材を有する送電ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、高温での水蒸気バリア性と柔軟性に優れているので、施工や環境変化による配線の劣化を改善した送電ケーブルを与えうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、非晶性脂環構造含有重合体及びエチレンと炭素原子数が6以上のαオレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマーを所定の割合で含有するものである。
【0009】
・非晶性脂環構造含有重合体
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0010】
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
【0011】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0012】
本発明に使用される非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%である。非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性に劣り好ましくない。非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
【0013】
この非晶性脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
【0014】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
【0015】
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0016】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0017】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0018】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0019】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0020】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0021】
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上であり、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
【0022】
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜300℃、好ましくは70〜250℃、特に好ましくは90〜200℃の範囲であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明でいうガラス転移温度とは、JIS K 7121に基づいて測定されたものである。
【0023】
ちなみに、これらの非晶性脂環構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
・エチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマー
本発明に用いられるエチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン系共重合体(以下、単に「エチレン系共重合体」ということがある)は、密度が通常0.860〜0.950g/cmであり、好ましくは0.862〜0.920g/cmであり、さらに好ましくは0.865〜0.910g/cmである。該密度が0.860g/cmより小さい場合には、成形体の水蒸気バリア性が劣る傾向があり、密度が0.950g/cmより大きい場合には、成形体の屈曲時の割れが発生しやすくなる傾向がある。ここで密度は、ASTM D 792に基づき測定される値である。
【0025】
エチレン系共重合体は、温度190℃および荷重2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレート(以下、MFR)が0.01〜30g/10分であり、好ましくは0.5〜5g/10分である。MFRが過小であると、得られる樹脂組成物の溶融流動性が劣る傾向があり、過大であると樹脂組成物から得られる成形体の引っ張り伸び率が劣る傾向がある。ここでMFRは、ASTM D 1238に基づき測定される値である。
【0026】
エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量は、上記密度とMFRの範囲を満足すれば特に限定されるものではないが、熱可塑性エラストマーであるエチレン系共重合体中の全単量体単位を100モル%とした場合、通常2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。この範囲内であれば、引っ張り伸び率が高く、水蒸気バリア性にも優れるため好ましい。
さらに、エチレン系共重合体を構成するモノマーとして、エチレン及び炭素原子数が6以上のα−オレフィン以外に、10モル%以下であればプロピレンを含むことができる。
なお、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類と含有量は、熱分解GC−MSにより測定することができる。
【0027】
炭素原子数が6以上のα−オレフィンとしては、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数6〜10のα−オレフィン、より好ましくは炭素数6〜8のα−オレフィンであり、特に1−へキセンや1−オクテンなどの炭素数6〜8の直鎖のα−オレフィン(とりわけ1−オクテン)が好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
【0028】
エチレン系共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。市販品の具体例としては、ダウ・ケミカル社製「エンゲージ(登録商標)」シリーズ、「アフィニティー(登録商標)」シリーズ、「インフューズ(登録商標)」シリーズ、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、日本ポリエチレン社製「カーネル(登録商標)」シリーズ等を例示することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、前記したエチレン系共重合体を含み、その割合は、非晶性脂環構造含有重合体と、エチレン系共重合体との重量比で、60/40〜90/10、好ましくは65/35〜85/15である。エチレン系共重合体の含有量が少ないと引っ張り伸びや屈曲性が劣る傾向があり、多いと、該組成物を用いて得られる成形体の水蒸気バリア性に劣る傾向がある。
【0030】
・その他の成分
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他のポリマー、樹脂工業において通常用いられる各種配合剤などを単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0031】
その他のポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、石油樹脂、フェノール樹脂などの樹脂;などのその他のポリマーを例示することができる。
【0032】
樹脂工業において通常用いられる各種配合剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などが挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0034】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0035】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキルホスファイト)(アルキル部分の炭素数12〜15)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0036】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどのベゾエート系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ホドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのアクリレート系紫外線吸収剤;[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケルなどの金属錯体系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0038】
光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル) セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0039】
本発明の成形品の着色を必要とするときは、染料と顔料の何れでも、本発明の目的の範囲で使用でき、限定されるものではない。
【0040】
これらの樹脂工業において通常用いられる各種配合剤は、本発明の目的を損なわれない範囲で用いることができ、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて良く、その配合量は、非晶性脂環構造含有重合体及びエチレン系共重合体の合計量100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0041】
充填剤としては、有機又は無機の充填剤が挙げられ、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、塩基性炭酸マグネシウム、ドワマイト、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベストなどの鉱物;ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの繊維;ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、などを例示できる。
【0042】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。充填剤の配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で、それぞれの機能及び使用目的に応じて適宜定めることができる。
【0043】
樹脂組成物の混合方法としては、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、成形性に優れ、水蒸気バリア及び柔軟性に優れる成形体を与えうる。
本発明の樹脂組成物の用途としては、配管、チューブ、パッケージフィルム、樹脂成形加工用の樹脂型や離型フィルム、電線・ケーブルの被覆材、太陽電池用バックシート、絶縁フィルム、コンデンサーフィルムなどが挙げられ、特に電線・ケーブルの被覆材に好適である。
【0045】
本発明の送電ケーブル用被覆材は、上述した本発明の樹脂組成物を含有するものである。
ペレットの形態で提供された場合は、押出成形法によって成形機内で一度溶融させてから導体とともに共押出して導体に被覆することができる。また、樹脂組成物が有機溶媒に溶解させてワニスとして提供された場合は、直接導体にコーティングして被覆することもできる。
いずれの方法においても、被覆材の厚さ、その他の要求特性によって適宜選択することができる。
ワニスとして使用する場合に、用いる溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。溶媒は、環状重合体、及び必要に応じて配合する各成分を均一に溶解ないしは分散するに足りる量比で用いられ、通常固形分濃度が1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%になるように調整される。
【0046】
ペレットで供給された本発明の送電ケーブル用被覆材を、導体外周に被覆する方法は、従来公知のポリエチレンによる電線被覆と同様の押出し機を用いた押出し被覆法を応用することができるが、本発明の樹脂組成物は、ポリエチレンなどの従来の被覆材料と比較してガラス転移温度が高いために、押出し時の溶融温度(押出し機のシリンダ温度)は、従来よりも高い温度に設定する必要がある。
【0047】
本発明の送電ケーブル用被覆材は、耐熱性及び機械特性の向上等を目的として、被覆材中の樹脂成分を架橋させることができる。架橋方法としては従来公知の架橋ポリエチレン(XLPE)ケーブル(CVケーブル)に用いられる架橋方法と同様に、有機過酸化物を架橋剤として添加し、熱処理によって化学架橋を起こさせる方法、電子線、紫外線等により架橋させる方法、シラン架橋法などを用いることができるが、耐久性等を考慮して、有機過酸化物による架橋や、電子線・紫外線架橋が好ましい。架橋反応は、押出し成形と同時に熱処理によって行うが、樹脂の劣化等を防止するために窒素ガスなどによって熱処理を行うことが好ましい。さらに、本発明の環状オレフィン系重合体は、ガラス転移温度が高く溶融押出し温度も高いために、有機過酸化物を用いて架橋する場合には、架橋反応速度が制御しやすいように、分解温度が高い有機過酸化物を使用するのが好ましい。
【0048】
本発明の送電ケーブル用被覆材を発泡させて用いる場合、その方法としては、従来公知の発泡剤を用いた発泡方法のほか、押出加工時に、溶融した重合体組成物中に直接ガスを圧入するなどして不活性ガスを独立気泡状に混在させる方法も用いることができる。
【0049】
本発明の送電ケーブル用被覆材を用いて導体を被覆したケーブルは、種々の送電ケーブルとして使用することができる。その具体例としては、配電用電線、制御・計装ケーブル、電子機器用電線、移動用ケーブルなどのプラスチック絶縁電線; 絶縁ケーブル、高圧電力ケーブル、プラスチック電力ケーブルなどの電力ケーブル; 市内・市外ケーブル、局内ケーブル、広帯域ケーブル、高周波同軸ケーブル、高周波同軸(管)給電線及びだ円導波管、通信用電線・ケーブルなどの通信ケーブルなどが挙げられるが、その優れた誘電特性、耐水トリー性、機械特性、耐屈曲性、柔軟性などにより、高圧電力ケーブル、高周波同軸ケーブルなどに特に有効である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0051】
各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)水素添加率は、H−NMRにより測定した。
(2)ガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220S11」、ナノテクロノジー社製)を用い、ガラス転移温度より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
(3)MFRは、ASTM D 1238に基づき、メルトインデクサ(製品名「F−F01」、東洋精機製作所社製)を用い、190℃、2.16kgfで測定した。
(4)密度は、ASTM D 792に基づき測定した。
(5)水蒸気透過度は、水蒸気透過テスター(製品名「L80−5000型」、LYSSY社製)を用いて、JIS K 7129(A法)に基づいて温度:70℃、湿度:90%RHの条件下で測定した。
(6)引張り伸びは、オートグラフ(製品名「AG−IS 20kN」、島津製作所社製)を用いて、JIS K 7127に基づいて測定した。引張速度10mm/分の条件で、破断するまで引張り、破断時の伸びを引張り伸びとして測定した。
(7)屈曲試験は、厚み0.2mm、長さ50mm、幅10mmの試験片を繰り返し折り曲げ、試験片の割れの発生を評価した。100回折り曲げても割れないものを「◎」、50回折り曲げても割れないものを「○」、10回以内に割れたものを「×」とした。
【0052】
[参考例1]
シクロヘキサン258リットルを装入した反応容器に、常温、窒素気流下でビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「NB」という)(120kg)を加え、5分間撹拌を行った。さらにトリイソブチルアルミニウムを系内の濃度が1.0ml/リットルとなるように添加した。続いて、撹拌しながら常圧でエチレンを流通させ系内をエチレン雰囲気とした。オートクレーブの内温を70℃に保ち、エチレンにて内圧がゲージ圧で6kg/cmとなるように加圧した。10分間撹拌した後、予め用意したイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド及びメチルアルモキサンを含むトルエン溶液0.4リットルを系内に添加することによって、エチレン、NBの共重合反応を開始させた。このときの触媒濃度は、全系に対してイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドが0.018mmol/リットルであり、メチルアルモキサンが8.0mmol/リットルである。
【0053】
重合中、系内にエチレンを連続的に供給することにより、温度を70℃、内圧をゲージ圧で6kg/cmに保持した。60分後、イソプロピルアルコールを添加することにより、重合反応を停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、その後、水1mに対し濃塩酸5リットルを添加した水溶液と1:1の割合で強撹拌下に接触させ、触媒残渣を水相へ移行させた。この接触混合液を静置したのち、水相を分離除去し、さらに水洗を2回行い、重合液相を精製分離した。
【0054】
次いで精製分離された重合液を3倍量のアセトンと強撹拌下で接触させ、共重合体を析出させた後、固体部(共重合体)を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。さらに、ポリマー中に存在する未反応のモノマーを抽出するため、この固体部を40kg/mとなるようにアセトン中に投入した後、60℃で2時間の条件で抽出操作を行った。抽出処理後、固体部を濾過により採取し、窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥し、エチレン・NB共重合体(非晶性脂環構造含有重合体A)を得た。
【0055】
以上のようにして、得られたエチレン・NB共重合体(非晶性脂環構造含有重合体A)のTgは137℃であり、NB単位含量は51モル%であった。
【0056】
[参考例2]
シクロヘキサン250部を、室温、窒素雰囲気の反応器に入れ、更に1−ヘキセン0.90部、ジブチルエーテル0.07部及びトリイソブチルアルミニウム0.10部を入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下「DCP」と略すことがある)90部、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「ETD」と略すことがある)10部、及び六塩化タングステンの0.6%トルエン溶液17部を2時間かけて連続的に添加して重合した。重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は重合終了時で100%であった。
得られた重合反応液を耐圧性の水素化反応機に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(製品名「G−96D」、日産ガードラー社製、ニッケル担持率58%)6部及びシクロヘキサン100部を加え、150℃、水素圧4.3MPaで8時間反応させた。この反応溶液を、ラヂオライト(登録商標)#500(昭和化学工業社製)を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(製品名「フンダフィルタ」、IHI社製)して水素添加触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカル社製、製品名「イルガノックス(登録商標) 1010」)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、ゼータープラスフィルタ30H(孔径0.5〜1μm、キュノーフィルタ社製)にて順次濾過しさらに別の金属ファイバー製フィルタ(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、開環重合体水素添加物(非晶性脂環構造含有重合体B)を得た。Tgは104℃であった。
尚、開環重合体合成時の重合転化率が100%であり、水素転化率も99.9%と高水準であることから、開環重合体水素添加物中の、DCP由来の構造単位(DCP単位)、及びETD由来の構造単位(ETD単位)は、開環重合体の製造に用いたモノマーの使用量に等しいと推定される。
【0057】
[参考例3]
窒素雰囲気下、シクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.85部、ジブチルエーテル0.20部、トリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、DCP 80部、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(以下、「MTF」という。)60部、及びテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「TCD」という)60部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は重合終了時で100%であった。
得られた重合反応液を耐圧性の水素化反応機に移送し、シクロヘキサン200部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温して4時間反応させ、DCP/MTF/TCD開環重合体水素添加物を含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液から濾過により水素添加触媒を除去した。
次いで前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカル社製、製品名「イルガノックス(登録商標) 1010」)を、得られた溶液に添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、開環重合体水素添加物(非晶性脂環構造含有重合体C)を得た。Tgは138℃であった。
尚、開環重合体合成時の重合転化率が100%であり、水素転化率も99.9%と高水準であることから、開環重合体水素添加物中の、DCP由来の構造単位(DCP単位)、MTF由来の構造単位(MTF単位)、及びTCD由来の構造単位(TCD単位)は、開環重合体の製造に用いたモノマーの使用量に等しいと推定される。
【0058】
[実施例1]
参考例3で得られた非晶性脂環構造含有重合体C(Tg=138℃)85部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8480」;オクテン含量9.5モル%、密度=0.903g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=1g/10分、ダウ・ケミカル社製)15部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで240℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。作製したシートを用い、70℃での水蒸気透過度、引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
参考例1で得られた非晶性脂環構造含有重合体A(Tg=137℃)80部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8100」;オクテン含量7.3モル%、密度=0.870g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=1.1g/10分、ダウ・ケミカル社製)20部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで240℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度、引張り伸び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
参考例2で得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)70部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8480」;オクテン含量9.5モル%、密度=0.903g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=1g/10分、ダウ・ケミカル社製)30部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
参考例2で得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)60部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8200」;オクテン含量7.3モル%、密度=0.903g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=5g/10分、ダウ・ケミカル社製)40部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
参考例2で得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)50部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8480」;オクテン含量9.5モル%、密度=0.903g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=1g/10分、ダウ・ケミカル社製)50部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例2]
参考例2で得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)95部と、エチレン−オクテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 8480」;オクテン含量9.5モル%、密度=0.903g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=1g/10分、ダウ・ケミカル社製)5部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例3]
参考例2で得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)60部と、エチレン−ブテン共重合体(製品名「エンゲージ(登録商標) 7380」;密度=0.863g/cm、MFR(190℃、2.16kgf)=0.3g/10分、ダウ・ケミカル社製)40部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例4]
参考例2から得られた非晶性脂環構造含有重合体B(Tg=104℃)70部と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)樹脂(製品名「タフテック(登録商標) H1051」、旭化成社製)30部とを2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを真空プレスで220℃、20MPaの条件で厚さ200μmのシートを作製した。試験は70℃水蒸気透過度と引張り伸び、及び、屈曲試験を行った。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
これらの結果から、以下のことがわかる。
熱可塑性エラストマーの配合比率が大きい場合には、高温での水蒸気透過度が劣り(比較例1)、小さい場合には引張り伸びが低く屈曲性に劣る(比較例2)。また、熱可塑性エラストマーがエチレンとブチレンとの共重合体の場合や、密度が低い場合、もしくは水添スチレン系エラストマーを用いた場合には、高温での水蒸気透過度に劣ることが分かった(比較例3、4)。一方で、非晶性脂環構造含有重合体と熱可塑性エラストマーの重量比が60/40〜90/10では、高温での水蒸気透過度は低く、引張り伸びと屈曲性が優れていることがわかる(実施例1〜4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性脂環構造含有重合体、及び、エチレンと炭素原子数が6以上のα−オレフィンとの共重合体である熱可塑性エラストマーからなる樹脂組成物であり、非晶性脂環構造含有重合体と熱可塑性エラストマーの重量比が60/40〜90/10である樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーがエチレンと1−オクテンとの共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物からなる送電ケーブル用被覆材。

【公開番号】特開2012−201779(P2012−201779A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67072(P2011−67072)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】