説明

樹脂組成物

【課題】 透明性が良好で耐熱性の優れた有機無機ハイヅリッドを形成するための、コーティング適性の優れた組成物を提供する。
【解決手段】 ハイパーブランチ構造を有する樹脂と加水分解性アルコキシシランを含有してなる樹脂組成物に関する。特にハイパーブランチ構造が、ABX型の分子の重縮合物により形成された樹脂組成物(ただしA、Bは互いに異なる官能基a、bを有する有機基であり、官能基a、bは互いに化学的に縮合反応、付加反応を起こす事が可能である、Xは2以上の整数を示す)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイパーブランチ構造を有する樹脂(以下ハイパーブランチポリマーと記載する)とアルコキシシランからなるコーティング適性が優れる組成物に関し、各種プラスチック、ガラス、金属等の素材に適用でき、各種シート、各種フィルム等に加工できる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にアルコキシシランを前駆体とし、前駆体分子の加水分解とそれに続く重縮合反応により三次元架橋体が得られる。これはゾルゲル法と呼ばれている。テトラアルコキシシランを出発原料にする従来のゾルゲル法では、乾燥硬化過程でクラックが生じ易く、限界膜厚は1μmにも満たない。この改良のために(1)側鎖にアルキル基を有するアルキルアルコキシシランを出発原料にする、(2)ゲル化時の体積収縮低減のためプレポリマーを高分子量化する、(3)コロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子を均一分散する等の方法により限界膜厚は20〜30μmに向上する。
【0003】
限界膜厚は有機高分子の柔軟性、強靭性を利用することにより大幅に向上できる。しかし、無機成分と有機成分は本来、相溶性に乏しいため機械的な特性や透明性等が悪くなることが一般的である。分子レベルで混ざり合った例としては、トリアルコキシシリル化アクリルポリマーとテトラエトキシシランの組み合わせのように無機成分と有機成分が共有結合で結ばれている物がある。また、ポリ2−エチルオキサゾリンとテトラエトキシシランの組み合わせのように両者で形成される水素結合により均一化している物もある(非特許文献1)。
【0004】
シリル基含有ビニル系樹脂以外に、有機無機ハイブリッドの有機成分としては種々のポリマーが使われている。特許文献1ではポリウレタン樹脂が、特許文献2ではビスフェノール型エポキシ樹脂が用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−1647号公報
【特許文献2】特開2001−59011号公報
【非特許文献1】土岐 元幸他、プラスチックエージ、1995(10)、144(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機無機ハイブリッドでは有機成分の比率が高くなるほど、有機物に起因する耐熱性の不足が顕著になる。本発明の目的は、透明性が良好で耐熱性の優れた有機無機ハイヅリッドを形成するための、コーティング適性の優れた組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はシリカ粒子をナノレベルで分散できる樹脂を鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、ハイパーブランチポリマーと加水分解性アルコキシシランを含有してなる組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物はナノサイズのシリカの分散が優れ、シリカの持つ機能を充分に引き出すことができる。従って塗料、コーティング剤の用途において、従来にない物性を有する塗膜を得ることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本来ハイパーブランチポリマーという用語はKimとWebsterが、繰り返し単位の規則性を有する多分岐ポリマーに対して名付けた言葉であり(Polym.Prepr.,29(1988)310参照)、1分子中に互いに反応出来る2種類の置換基を合計3個以上持つ化合物の自己縮合により合成される多分岐高分子と定義される。本発明において述べるハイパーブランチポリマーは、上記KimとWebsterが提唱した用語に当てはまるものである。この様な多分岐ポリマーとしては従来、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート系など、種々のタイプが合成されている。
【0010】
これらハイパーブランチポリマーは通常の線状構造を有するポリマーに比較し、溶液状態では分子間の絡み合いが少なくなるため溶液粘度が低くなる。結果としてコーティング剤を調製する上でハイソリッド化が容易となる。
【0011】
本発明で言うハイパーブランチポリマーはその構造において特に限定されないがABX型化合物の重縮合反応或いは重付加反応により得られるものが好ましい。ここでAとBは異なる官能基を有する有機基を示し、ABX型化合物とは一分子中に2種の異なる官能基a、bを合わせ持った化合物を意味するものである。これら化合物は分子内縮合、分子内付加はしないが官能基aと官能基bは互いに化学的に縮合反応、付加反応を起こさせる事が可能な官能基である。これら官能基a、bの組み合わせとしては水酸基とカルボン酸基やカルボン酸アルキルエステル基等のカルボン酸誘導体、アミノ基とカルボン酸基、ハロゲン化アルキル基とフェノール性水酸基、アセトキシ基とカルボン酸基、アセチル基と水酸基、イソシアネート基と水酸基等が挙げられ、反応工程の簡便さ、反応制御の面からカルボン酸基或いはその誘導体と水酸基或いはその誘導体の組み合わせが好ましい。
【0012】
ABX型化合物の具体的な例としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸、5−(2−ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステル、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、5−ヒドロキシシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジヒドロキシ−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、フェノール−3,5−ジグリシジルエーテル、イソホロンジイソシアネートとジイソプロパノールアミンとの1対1反応生成物、イソホロンジイソシアネートとジエタノールアミンの1対1反応生成物、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0013】
これらの内、反応によりエステル結合が生成するタイプは得られたハイパーブランチポリマーの耐熱性、他樹脂成分や添加物成分との相溶性の観点から特に好ましく、それら化合物の構造を表す一般式は化学式1で表される。
化学式1) KR’[(R)mL]n
R:炭素数20未満の2価の有機基
R’:炭素数20未満の(b+1)価の有機基、或いはR”N(R”:炭素数20未満の2価の有機基)で示される基
K、L:互いに異なるエステル結合形成性官能基
m:0又は1
n:2以上の整数
【0014】
上記化学式1で示される化合物としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸、5−(2ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステル、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、5−ヒドロキシシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジヒドロキシ−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、N,N−ビス(メチルプロピオネート)モノエタノールアミン、N−(メチルプロピオネート)ジエタノールアミン、N,N−ビス(メチルプロピオネート)−2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミン等が挙げられるが、これら原料化合物としての汎用性及び重合反応工程の簡便さからは、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0015】
上記ハイパーブランチポリマーはKR’[(R)mL]n型化合物を単独で縮合反応触媒の存在下に反応させても良いし、多価ヒドロキシ化合物や多価カルボン酸化合物、或いはそれらを合わせ持つ化合物をハイパーブランチポリマー分子の分岐点として用いても良い。上記多価ヒドロキシ化合物としてはポリエステル樹脂原料として汎用の種々グリコール化合物やトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物が挙げられる。また、多価カルボン酸化合物としては同様にポリエステル樹脂原料として汎用の種々二塩基酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸化合物が挙げられる。更には水酸基とカルボン酸基を合わせ持った化合物例として、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
【0016】
本発明の樹脂として用いられるハイパーブランチポリマー分子の分岐点となる化合物としては上記以外に、二塩基酸成分とグリコール成分の縮合反応で得られる線状のポリエステルオリゴマーやこれらに3官能以上の多価カルボン酸や多価ヒドロキシ化合物を共重合した分岐型ポリエステルオリゴマーを用いても良い。
【0017】
上記分岐点となりうる線状、或いは分岐型ポリエステルオリゴマーの構成原料としては汎用の種々二塩基酸やグリコール化合物、或いは3官能以上の多価カルボン酸や多価アルコール化合物を用いる事ができる。二塩基酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族系二塩基酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2−ナフタレンカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ニ塩基酸、或いは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸が挙げられるが、耐熱特性から、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2−ナフタレンカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、特に好ましくはテレフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0018】
また、グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−nブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族系ジオール類や1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族系グリコール類、或いはビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系グリコール類が挙げられるがこれらのうち、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、およびビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物が得られるポリエステル樹脂の耐熱特性と原料としての汎用性から好ましい。
【0019】
更に上記3官能以上の多価カルボン酸や多価アルコール化合物としては、トリメリット酸やピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0020】
上記ハイパーブランチの合成反応は縮合反応で生成する縮合水をトルエンやキシレンにより共沸脱水させる事で、或いは反応系内に不活性ガスを吹き込み不活性ガスと共に縮合反応で生成した水やモノアルコールを反応系外に吹き出す又は減圧下に溜去する事で進められる。反応に用いられる触媒としては通常のポリエステル樹脂重合触媒同様、チタン系、錫系、アンチモン系、亜鉛系、ゲルマニウム系等の種々金属化合物やp−トルエンスルホン酸や硫酸等の強酸化合物を用いる事が出来る。
【0021】
また、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、アミノ安息香酸等のA−Bタイプ化合物を得られるハイパーブランチポリマーの分岐点や末端基の調整等に使用してもかまわない。ハイパーブランチポリマーの重合条件は使用する原料や得られるポリマーの特性に応じて選ばれる。
【0022】
また、p−フェニレンジアミンと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の反応物をハイパーブランチポリマーの原料として用いても良い。これらの等モル反応物にはアミノ基が1つ、かつカルボキシル基が2つの化合物が含まれる。これだけを精製できれば、ハイパーブランチポリマーの原料となる。
【0023】
また、ヘキサメチレンジイソシアネートとN−ジエタノールアミンとの反応物をハイパーブランチポリマーの原料として用いても良い。N−ジエタノールアミンにはアミノ基と水酸基があり、どちらもイソシアネート基と反応するが、反応速度はアミノ基の場合のほうが圧倒的に大きい。ヘキサメチレンジイソシアネートとN−ジエタノールアミンとの等モル反応物中には水酸基を2つ、イソシアネート基を1つ有する化合物がまず優先的に生成する。これを原料としてハイパーブランチポリマーが得られる。
【0024】
これらハイパーブランチポリマーのうち、上記ABX型化合物の重縮合物がゲル化を生じないことや分子量分布が小さくフィラーの分散に優れる等の点で好ましい。また、上記化学式1)で表されるものも好ましい。
ハイパーブランチポリマーの数平均分子量は500〜50,000が好ましく、2,000〜20,000がさらに好ましい。数平均分子量が500未満では塗膜の耐久性が乏しくなる場合があり、50,000を超えると汎用溶剤の溶解性が低下するおそれがある。
ハイパーブランチポリマーの分散比(重量平均分子量/数平均分子量)は4以下が好ましい。4を超えると無機成分の凝集が起こることがある。
【0025】
本発明の組成物から得られる塗膜にはハイパーブランチポリマーとシリカを含有する。ハイパーブランチポリマーとシリカの重量比率は1対0.1から1対10の範囲で用いることが好ましい。この範囲を外れるとハイパーブランチポリマーの機能を発揮できないことがある。塗膜に含まれるシリカはアルコキシシランの加水分解と続けて起こる重縮合による物以外にコロイダルシリカを含んでも良い。
【0026】
本発明の組成物に含まれる加水分解性アルコキシシランは一般的なゾルゲル法に用いられる物を使用できる。たとえば、一般式 R1nSi(OR24-n(式中、nは0〜2の整数を表し、R1は炭素原子に直結した官能基を持っていても良い低級アルキル基、アリール基、不飽和脂肪族基を表し、同一でも異なっていても良い。R2は低級アルキル基を表す。)で表される化合物または、これらの部分縮合物が挙げられる。
【0027】
具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラ等のジアルコキシシラン類あるいはこれらの部分縮合物が挙げられる。また、アルコキシチタネートやアルコキシジルコネート等のチタンやジルコニウムを含む化合物も添加しても良い。
【0028】
本発明の組成物中にはコロイダルシリカを含有しても良い。特に耐熱性の向上には有効である。コロイダルシリカは珪酸ソーダから作られる無水珪酸の超微粒子を水中または溶剤、エチレングリコールなどの有機溶剤に分散したコロイド溶液である。コロイダルシリカの粒子径は一般的には1〜100nmとされるが、5〜50nmのものが好ましい。コロイダルシリカの形状は通常は球状であるが、球状の一次粒子が連鎖状に繋がった物も利用できる。
【0029】
コロイダルシリカはハイパーブランチポリマー100重量%に対して5〜200重量%、好ましくは30〜100重量%の範囲で用いる。
【0030】
本発明の組成物を用いるにあたって、加水分解性アルコキシシランの加水分解、縮合を行う事ができる硬化触媒を用いても良い。硬化触媒としては蟻酸、酢酸、パラトルエンスルフォン酸、メタンスルフォン酸等の有機酸、ホウ酸、リン酸、塩酸等の無機酸、トリエチルアミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ化合物が挙げられる。
本発明の組成物を離形フィルムに塗布、乾燥させて、透明性の高いフィルムやシートにもすることができる。
【0031】
本発明の組成物にはハイパーブランチポリマーと加水分解性アルコキシシラン以外に、コーティング剤や塗料等に用いる場合には、有機溶剤を併用して塗料状の分散物とすることが出来る。このような分散物は非常に良好な安定性を示し、経時的にアルコキシシランから生成する微細フィラーの凝集による粘度増加が起こりにくいため、使用可使時間が長いという点で極めて有用である。有機溶剤の含有量は総量に対して好ましくは30〜97重量%の範囲で設定することができる。
【0032】
使用する有機溶剤としてはトルエン、キシレン、ソルベッソなどの芳香族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、二塩基酸エステル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、n−ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブなどのエーテル類、等が挙げられ、溶解性、蒸発速度等を考慮して選択される。
【0033】
また、本発明の組成物には必要に応じ硬化剤を配合しても良い。硬化剤はハイパーブランピポリマーの末端基に応じて選ばれるが、自己硬化性の硬化剤であっても良い。本発明に使用できる硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種、または2種以上を任意に選択し、使用できる。その使用量としてはハイパーブランチポリマーに対し1〜50重量%の範囲が好ましい。
【0034】
フェノール樹脂としては、例えばフェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F等のフェノール化合物にホルマリン、パラホルムアルデヒドまたはトリオキサン等によりメチロール化されたレゾール型フェノール樹脂や、これをメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールでアルキルエーテル化したレゾール型フェノール樹脂が挙げられ、これらの中から1種、又は2種以上を併用するなどして使用して良い。
【0035】
アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド、などのアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1〜6のアルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。
【0036】
ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基を一部又は全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記、ブチルアルコールとしてはイソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましい。
【0037】
メラミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を一部又は全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。これらの中から1種、又は2種以上を併用して使用して良い。
【0038】
イソシアネート化合物としては芳香族、脂環族、脂肪族のジイソシアネート化合物、3価以上のポリイソシアネート化合物があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでも良い。例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、或いはこれらイソシアネート化合物の3量体、およびこれらイソシアネート化合物の過剰量と例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物等と反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。これらの中から1種、又は2種以上使用して良い。
【0039】
また、ポットライフが必要な場合、イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネート化合物を使用することができる。イソシアネートブロック剤としては例えば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類、ε−カプロラクタム等のラクタム類が挙げられ、そのほかにも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネート化合物は前記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の方法により、反応させて得られ、同じくそれぞれ単独、または併用して使用できる。
【0040】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、およびそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、およびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−グリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタングリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0041】
本発明の組成物には硬化剤の種類に応じて硬化触媒を使用することができる。例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂を使用する場合は有機スルホン酸、有機カルボン酸、リン酸類、およびこれらのアミン中和物を使用しても良い。イソシアネート化合物を使用する場合は有機スズ化合物、三級アミン化合物、およびその塩類を使用しても良い。エポキシ樹脂を使用する場合はアミン化合物、有機リン化合物を使用しても良い。これらの触媒は1種、または2種以上を任意に選択し、使用できる。
【0042】
本発明の組成物にはハイパーブランチポリマー以外の樹脂も含んでいてもよい。ハイパーブランチポリマー以外の樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。樹脂の分析、評価は次の方法により実施した。
【0044】
(分子量および分子量分布)
テトラヒドロフランを溶離液としたウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用いて、カラム温度35℃、流量1ml/分にてGPC測定を行なった結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。ただしカラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804、806を用いた。
【0045】
(組成分析)
重DMSO溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
【0046】
(ガラス転移温度)
サンプル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0047】
(動的粘弾性)
アイティ計測制御(株)製動的粘弾性測定装置DVA−200を用い、昇温速度5℃/分、周波数110Hzで測定した。
【0048】
ハイパーブランチポリマー(A)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器に、トリメチロールプロパン1.34部及びジメチロールブタン酸31部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.2部を添加した。窒素ガスを流しながら、常圧下140℃で3時間反応させ、生成する水を溜去した。その後減圧下で(5mmHg)さらに反応を1時間続けた。得られたポリエステル樹脂(A)の特性を表1に示した。なお、表の組成比は重量比である。
【0049】
ハイパーブランチポリマー(B)の合成
攪拌装置、冷却装置、2箇所の薬品導入口を備えた500mlガラスフラスコに脱水した溶媒(トルエン/シクロヘキサノン/ジメチルホルムアミド(30/30/30部))及びポリエステル樹脂−1(テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50/50/50モル比、数平均分子量2000)を10部仕込み、溶解した。攪拌しながら、1箇所の薬品導入口からジイソプロパノールアミン13.3部を、他の薬品導入口からイソホロンジイソシアネート22.2部を共に5分間かけて同時に同じ速度で仕込んだ。滴下終了してから10分後に反応触媒としてジブチルチンジラウレート0.05部を加えた。反応系の温度を80℃に10時間保ち反応を終了した。ハイパーブランチ構造を有するポリウレタンウレア樹脂溶液を得た。樹脂の特性を表1に示す。
【0050】
ハイパーブランチポリマー(C)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器に、3,5−ジヒドロキシ−4’−フロロベンゾフェノン20部、炭酸カリウム20部、溶剤として乾燥させたN−メチルピロリドン150部、乾燥トルエン100部を仕込んだ。反応混合物を3時間加熱還流し、生成する水は系外に除いた。蒸留により系内の溶剤を除きながら200℃まで反応系の温度を上げ、200℃でさらに3時間加熱した。そして、反応物を水中に注ぎ、沈殿させた。テトラヒドロフラン/メタノールで再沈を繰り返した。得られたハイパーブランチポリマー(C)の特性を表1に示した。
【0051】
ハイパーブランチポリマー(D)の合成
ハイパーブランチポリマー(C)の合成で用いた3,5−ジヒドロキシ−4’−フロロベンゾフェノン20部の代わりに3,5−ジフロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを用いてハイパーブランチポリマー(C)と同じようにしてフッ素を末端基とするハイパーブランチポリマー(D)を得た。得られたハイパーブランチポリマー(D)の特性を表1に示した。
【0052】
ハイパーブランチポリマー(E)〜(G)の合成
オートクレイブ中に5−アセトキシイソフタル酸20部とテトラブトキシチタン0.1部を仕込み、250℃まで加熱しながら系内を減圧に保持した。30分加熱後50℃まで冷却し、テトラヒドロフラン100部と水10部を加え、4時間還流した。得られた溶液を水にそそぎ、沈殿させた。得られたハイパーブランチポリマー(E)の特性を表1に示した。
ハイパーブランチポリマー(E)と同様にして表1に記載した原料を用い、パイパーブランチポリマーを得た。樹脂の評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1
下記の配合割合の組成物に、住友化学社製メラミン樹脂「スミマールM40S」10部10%パラトルエンスルフォン酸水溶液1部を加え、更に2時間攪拌混合して塗料を得た。得られた塗料を厚み200μmの離形処理ポリエチレンテレフタレートフィルムの処理面に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し170℃で25分間乾燥、熱処理した。得られた塗布フィルムからコート層を剥がし、透明性を目視判定した。また、110Hzでの動的粘弾性を測定した。評価結果を表2に示す。
配合
重合例1で得られたハイパーブランチポリエステル樹脂の溶液 100部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルの30%溶液)
コロイダルシリカ「スノーテックスOS」 75部
(日産化学社製SiO2:20% )
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 10部
【0055】
実施例2〜8 比較例1〜3
実施例1と同様にして、ただし塗布層の結合剤に使用したポリエステル樹脂の代わりに表1に記載した結合剤を用いて塗布フィルムを作成した。結果を表2に示す。尚、表2の配合比は固形分重量比を表す。
【0056】
【表2】

【0057】
比較例1と2では実施例1で用いたハイパーブランチポリエステルの代わりにスルホン酸ナトリウム塩含有ポリエステル樹脂を用いた。比較例1では結合剤樹脂のTgより50℃高い温度での保存弾性率は試料が流動し測定できなかった。
表2の結果より実施例に記載した配合物より得られる塗膜は透明性や耐熱性に優れている事がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の組成物は透明性や耐熱性が優れ、ナノフィラーの持つ機能を充分に引き出すことができる。従って塗料、接着剤、コーティング剤の用途あるいは本発明の組成物から得られるフィルム、シートは従来にない物性が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパーブランチ構造を有する樹脂と加水分解性アルコキシシランを含有してなる樹脂組成物。
【請求項2】
ハイパーブランチ構造が、ABX型の分子の重縮合物により形成された請求項1に記載の樹脂組成物(ただしA、Bは互いに異なる官能基a、bを有する有機基であり、官能基a、bは互いに化学的に縮合反応、付加反応を起こす事が可能である、Xは2以上の整数を示す)。
【請求項3】
ハイパーブランチ構造が、下記化学式1)で表される分子の重縮合物により形成された請求項1に記載の樹脂組成物。
化学式1) KR’[(R)mL]n
R:炭素数20未満の2価の有機基
R’:炭素数20未満の(n+1)価の有機基、或いはR”N(R”:炭素数20未満の2価の有機基)で示される基
K、L:互いに異なるエステル結合形成性官能基
m:0又は1
n:2以上の整数
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を用いたコーティング剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた塗料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた接着剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を用いたシート。

【公開番号】特開2006−16560(P2006−16560A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197780(P2004−197780)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】