説明

樹脂組成物

【課題】廃棄物として燃焼させるとハロゲン化合物によるダイオキシンの発生や、燃焼灰によるリン酸の水質汚染などなく、樹脂が加水分解したり機械的物性が脆くなったりことのないポリエステル樹脂を提供する。
【課題手段】ポリエステル樹脂に対して、芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩を0.0002〜2重量%および3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールを0.0002〜2重量%含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関し、更に詳細には難燃性の優れたポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品において製品に使用される樹脂は、家電リサイクル法が制定され米国内においてはUL規格(Under Writers Laboratories Inc., standerd)におけるUL−94の難燃規格によって定められた難燃性をもたなければならない。また最近においては米国だけではなく、ほとんどの国でこの規格を求めるようになってきた。我が国においても、義務ではないがこのUL−94規格に適合する難燃材料を使用している。現在、このような難燃材料に用いられる樹脂に難燃性を付与する方法としてはおおむね3種類の原理が考えられている。1つにはハロゲン系化合物を10数%添加することによって、燃焼した炎に対し負触媒として働き燃焼を止め、これによって難燃性を付与するものである。2つめはシリコーン化合物を数〜十数%程度添加するか、またはリン酸系化合物を数〜数十%し、燃焼中に樹脂の表面にブリードさせることによって表面にチャー(炭化層)を生成させ、燃焼を止めようとするものである。3つめは水酸化マグネシウムあるいは水酸化アルミニウムなどの金属塩を30〜50%程度混入し、樹脂の燃焼によってこれらの化合物が吸熱分解し、かつ水を生成するため、この水で全体を冷却し燃焼の継続を止めようというものである。また、難燃性熱可塑性樹脂製の成形品を得るためには、まず熱可塑性樹脂及び各種難燃剤を溶融混練し、難燃性樹脂のペレットを製造した後、射出成形機などを用いて難燃性樹脂の製品を得ていた。しかし、この方法は、樹脂に数度にわたる熱履歴を与えるため、熱劣化、熱変色を生じやすく、これを抑制するためには熱安定剤、酸化防止剤の添加が不可欠であった。しかし、これら添加剤による耐衝撃性の低下が甚だしく、またこれらの熱分解により成形品の外観が低下しやすいという問題点があった。
【0003】
従来のポリエステル樹脂に有機酸金属塩を添加する技術としては、ポリエステル樹脂に有機酸金属塩を添加することにより結晶化を促進する技術がある(特許文献1参照)。また、ポリエステル樹脂に有機酸金属塩とフタル酸を添加することで熱安定性が向上させている技術がある(特許文献2参照)。さらに、ポリエステル樹脂に有機酸金属塩と多価アルコールを添加する技術としては、ポリエステル樹脂に金属含有有機化合物とメチロールメラミン系化合物とフェノール樹脂を添加することで難燃性を向上させている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−316307
【特許文献2】特開2002−220524
【特許文献3】特開平11−21434
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし1つめの手法は廃棄物として燃焼させるとハロゲン化合物によるダイオキシンの発生が問題視される。2つめの場合は燃焼灰によるリン酸の水質汚染などが廃棄プラスチックによって引き起こされるし、またシリコーン化合物を大量に添加するため、樹脂本来の物性を変えてしまい、強度が低下したりすることも多い。また3つめに至っては多量の無機塩を入れるため、樹脂が加水分解したり機械的物性が脆くなったりする欠点があった。
従来技術では特許文献1、特許文献2記載の技術では難燃効果が無く用途が限られてしまう点が問題であり、特許文献3記載の技術は難燃材自体の色が付き透明性が損なわれることや難燃効果を出すのにかなりの量の添加が必要となり物性が悪化してしまうなどの欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル樹脂に対して、芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩を0.0002〜2重量%および3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールを0.0002〜2重量%含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
更に本発明は、ポリエステル樹脂がポリ乳酸樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂である上記樹脂組成物に関する。
【0006】
更に本発明は、芳香族カルボン酸金属塩が、安息香酸アルカリ金属塩である上記樹脂組成物に関する。
【0007】
更に本発明は、芳香族スルホン酸金属塩が、ベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩である上記樹脂組成物に関する。
【0008】
更に本発明は、3価以上の脂肪族多価アルコールがトリメチロールプロパンまたはトリメチロールエタンである上記樹脂組成物に関する。
【0009】
更に本発明は、さらにクラウンエーテルまたはクリプタンドを、ポリエステル樹脂に対して、0.00001〜0.2重量%含有することを特徴とする上記樹脂組成物に関する。
【0010】
更に本発明は、クラウンエーテルが、18−クラウン−6、15−クラウン−5または14−クラウン−4である上記樹脂組成物に関する。
【0011】
更に本発明は、クリプタンドが、クリプタンド(2.2.2)である上記樹脂組成物に関する。
【0012】
更に本発明は、上記樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0013】
芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩と3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールを添加させることで、ポリエステル樹脂の難燃性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いられるポリエステル樹脂としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2、6−ジカルボン酸、4、4−ジフェニルジカルボン酸の如き芳香族カルボン酸、又はそのエステルと、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等の如き脂肪族グリコールとを縮重合させて得ることができる。代表的なものとしてポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0015】
これらのポリエステル樹脂は、複数種のカルボン酸成分と複数種のジオール成分とを組み合わせたものであっても良い。すなわち、前記ポリエステル樹脂は上記の芳香族カルボン酸成分と脂肪族グリコール成分からなるホモポリマー(主たる構成成分)の他に、第3成分を添加して共重合させたコポリマーでもよい。この第3成分としては、例えば主たる構成成分がエチレンテレフタレートである場合、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール;コハク酸、アジピン酸、セパシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能多価カルボン酸などが例示できる。また、主たる構成成分がエチレン−2、6−ナフタレートである場合、上記第3成分(ただし2、6−ナフタレンジカルボン酸をテレフタル酸とする)を挙げることができる。
【0016】
また、本発明において用いられるポリエステル樹脂として、微生物崩壊性樹脂も用いることができる。具体的にはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、または脂肪族ジカルボン酸と多価アルコールとを原料として得られる脂肪族ポリエステル系樹脂の他、微生物または植物より合成されたポリエステル樹脂等が挙げられる。特にポリ乳酸が好ましい。

【0017】
本発明で使用される芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。ここで、アルカリ金属、アルカリ土類金属としてはナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられ、中でもナトリウム及びカリウムが好適に使用できる。
【0018】
本発明で使用される芳香族カルボン酸アルカリ金属塩の具体例としては、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、p−メチル安息香酸リチウム、p−メチル安息香酸ナトリウム、p−メチル安息香酸カリウム、p−エチル安息香酸リチウム、p−エチル安息香酸ナトリウム、p−エチル安息香酸カリウム、p−n−プロピル安息香酸リチウム、p−n−プロピル安息香酸ナトリウム、p−n−プロピル安息香酸カリウム、p−n−ブチル安息香酸リチウム、p−n−ブチル安息香酸ナトリウム、p−n−ブチル安息香酸カリウム、p−iso−ブチル安息香酸リチウム、p−iso−ブチル安息香酸ナトリウム、p−iso−ブチル安息香酸カリウム、p−tert−ブチル安息香酸リチウム、p−tert−ブチル安息香酸ナトリム、p−tert−ブチル安息香酸カリウム、p−tert−ペンチル安息香酸ナトリウム、p−n−ペンチル安息香酸ナトリウム、p−n−ヘキシル安息香酸ナトリウム、4−アリル安息香酸ナトリム、p−メトキシ安息香酸リチウム、p−メトキシ安息香酸ナトリウム、p−エトキシ安息香酸ナトリウム、p−n−プロポキシ安息香酸ナトリウム、p−n−ブトキシ安息香酸ナトリウム、p−tert−ブトキシ安息香酸ナトリウム、p−n−ペンチルオキシ安息香酸ナトリウム、p−n−ヘキシルオキシ安息香酸ナトリウム等の安息香酸もしくはその誘導体の金属塩が挙げられる。
【0019】
これらのうち、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、p−メチル安息香酸リチウム、p−メチル安息香酸ナトリウム、p−メチル安息香酸カリウム、p−エチル安息香酸リチウム、p−エチル安息香酸ナトリウム、p−エチル安息香酸カリウム、p−n−プロピル安息香酸リチウム、p−n−プロピル安息香酸ナトリウム、p−n−プロピル安息香酸カリウム、p−n−ブチル安息香酸リチウム、p−n−ブチル安息香酸ナトリウム、p−n−ブチル安息香酸ナトリウム、p−iso−ブチル安息香酸ナトリウム、p−tert−ブチル安息香酸リチウム、p−tert−ブチル安息香酸ナトリウム、p−tert−ブチル安息香酸カリウム、p−tert−ペンチル安息香酸ナトリウム、p−n−ペンチル安息香酸ナトリウム、p−n−ヘキシル安息香酸ナトリウム等の安息香酸アルカリ金属塩や炭素数1〜6のアルキル置換安息香酸アルカリ金属塩が好ましい。
なかでも特に、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムが好ましい。
【0020】
本発明で使用される芳香族スルホン酸金属塩の例としては、p−トルエンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、2,4,6−トリクロロ−5−スルホイソフタル酸ジメチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、p−ヨードベンゼンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンスルホン酸、4,4′−ジブロモジフェニルスルホン−3−スルホン酸、4−クロロ−4′ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸等の金属塩が挙げられる。
【0021】
上記のうち、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体のナトリウム塩が特に好ましく使用される。
【0022】
芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩は炎となる低分子有機化合物の発生量を分解ルートの変更により減少させることで難燃性を発現させる。しかし、意図的に分解を促進させているため過剰量の添加は逆効果となる。そのため、芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩は、ポリエステル樹脂に対して0.0002〜2重量%、好ましくは、0.002〜0.2重量%を添加する。芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩の配合量が、1重量%、特に2重量%より多くなるとポリエステル樹脂の機械的物性が著しく低下してしまうので好ましくない。
【0023】
本発明における3価以上の脂肪族多価アルコールの具体例としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、イノシトール等の多価アルコールが挙げられる。好ましくはトリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)が挙げられる。これらの3価以上の脂肪族多価アルコールは一種類、または二種類以上混合して使用できる。
【0024】
本発明におけるポリビニルアルコールについては、特に限定はされないが重合度30〜3000のものが好ましい。
【0025】
多価アルコール単体またはポリビニルアルコール単体では難燃性に効果はないが、芳香族カルボン酸金属塩や芳香族スルホン酸金属塩と組み合わせることで難燃効果を向上させる難燃助剤として働く。また、加工時の熱履歴をくわえても粘度が低下するのを抑える効果もある。そのため、3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールの添加量は、ポリエステル樹脂に対して、0.0002〜2重量%、好ましくは0.002〜0.5重量%を配合する。3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールの添加量が1重量%、特に2重量%より多くなるとポリエステル樹脂組成物の難燃性がかえって悪化するため好ましくない。
【0026】
本発明におけるクラウンエーテルの具体例としては12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−12−クラウン−4、ジベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−12−クラウン−4、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、n−オクチル−12−クラウン−4、n−オクチル−15−クラウン−5、n−オクチル−18−クラウン−6などが挙げられる。また、クリプタンドの具体例としては、クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕等の環状ポリエーテルアミンおよび、クリプタンド〔2.2.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕等の双環状ポリエーテルアミンなどが挙げられる。
【0027】
クラウンエーテルは環の内側に酸素原子が負に帯電しているため、金属カチオンを取り込みやすい。またはクリプタンドは内側に窒素原子が負に帯電しているため、金属カチオンを取り込みやすい。この極性の空孔は空孔径に適合したイオン径を有するカチオンを空孔内に取り込んで、安定な錯体を形成する機能を有する。金属カチオン種により使用するクラウンエーテルまたはクリプタンドの種類は選択される。例としてはカリウム塩を用いるときは18−クラウン−6を用いる。クラウンエーテルまたはクリプタンドを使用することで金属塩のイオン化を促進し、より微量添加で難燃性の効果が発生する。そのため、クラウンエーテルまたはクリプタンドは、ポリエステル樹脂に対して0.00001〜0.2重量%を配合することが好ましく、0.2重量%より多く配合すると、難燃性がかえって悪化するため好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造は特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂、芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩および3価以上の脂肪族多価アルコールと、更に必要に応じてクラウンエーテルまたはクリプタンドや各種添加剤や着色剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合しニーダー,ロールミル,スーパーミキサー,ヘンシェルミキサー,シュギミキサー,バーティカルグラニュレーター,ハイスピードミキサー,ファーマトリックス,ボールミル,スチールミル,サンドミル,振動ミル,アトライター,バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練分散し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状の縮合型熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有機酸金属塩および多価アルコールを比較的高濃度に含有し、成形時に被成形樹脂(ベース樹脂)で希釈されるマスターバッチであっても良いし、有機酸金属塩および多価アルコールの濃度が比較的低く、被成形樹脂で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであっても良い。
【0030】
本発明の成形品は、押出成形、射出成形、ブロー成形のいずれかの成形方法で得られるものでもよいし、熱可塑性樹脂組成物を粉砕して得られる粉体塗料でもよい。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて適当な添加剤、例えば、耐酸化安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ポリ乳酸樹脂は三井化学社製 レイシアH-100を粉砕したものを用い、芳香族カルボン酸金属塩は安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムを、芳香族スルホン酸金属塩はベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた。多価アルコールは、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)を用い、ポリビニルアルコールはポリビニルアルコール500(重合度500)を用いた。また、クラウンエーテルは15-crown-5、18-crown-6を用い、クリプタンドはクリプタンド(2.2.2)をもちいた。このときのPLAに対する芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩、多価アルコールとクラウンエーテルまたはクリプタンドの組成は表1のようにした。
【0033】
【表1】

【0034】
[難燃性]
ポリ乳酸樹脂を、除湿乾燥機で60℃24時間乾燥後、これに有機酸金属塩、多価アルコール、クラウンエーテルまたはクリプタンドを所定量加えスーパーミキサーにて攪拌羽回転速度約300rpmで4分間、攪拌・混合した。これを200℃に設定した二軸押出機で溶融混練し樹脂組成物を作成した後、射出成形機(東芝機械(株)製IS-100F型)を用い、UL-94で規定される各厚みの燃焼試験片が共取りできるように設計された金型を用い成形を行った。なお、無添加のPLAも同様に押出機で溶融混練したものを用いて試験片を作成した。燃焼結果を表2に記載した。なおこのときの燃焼性試験はUL94垂直難燃性試験である。
【0035】
[酸素指数]
ポリ乳酸樹脂を、除湿乾燥機で60℃24時間乾燥後、これに有機酸金属塩、多価アルコール、クラウンエーテルまたはクリプタンドを所定量加えスーパーミキサーにて攪拌羽回転速度約300rpmで4分間、攪拌・混合した。これを200℃に設定した二軸押出機で溶融混練し樹脂組成物を作成した後、射出成形機(東芝機械(株)製IS-100F型)を用い、酸素指数の燃焼試験片が共取りできるように設計された金型を用い成形を行った。この試験片をJIS K7201に従って酸素指数を測定した。評価結果は表2に示した。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂に対して、芳香族カルボン酸金属塩または芳香族スルホン酸金属塩を0.0002〜2重量%および3価以上の脂肪族多価アルコールまたはポリビニルアルコールを0.0002〜2重量%含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂がポリ乳酸樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂である請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族カルボン酸金属塩が、安息香酸アルカリ金属塩である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
芳香族スルホン酸金属塩が、ベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項5】
3価以上の脂肪族多価アルコールがトリメチロールプロパンまたはトリメチロールエタンである請求項1ないし4いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらにクラウンエーテルまたはクリプタンドを、ポリエステル樹脂に対して、0.00001〜0.2重量%含有することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項7】
クラウンエーテルが、18−クラウン−6、15−クラウン−5または14−クラウン−4である請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
クリプタンドが、クリプタンド(2.2.2)である請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。


【公開番号】特開2007−197584(P2007−197584A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18536(P2006−18536)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】