説明

樹脂組成物

【課題】その塗膜が優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用に適した樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と
(B)乾性油脂肪酸と
を開環付加反応させて得られた反応物を、
更に(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる樹脂組成物において、
該樹脂組成物の固形分水酸基価が40mgKOH/g以下であり且つ、固形分酸価が3mgKOH/g以下であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にて有用なる樹脂組成物に関し、詳しくは、それを塗膜とした際に優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する塗料用樹脂組成物に関する。特に耐候性と、優れた密着性及び耐食性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは下塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る塗料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐食性を有する樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂を不飽和脂肪酸で変性したエポキシエステル樹脂が溶剤系塗料の分野において知られており、例えば、錆止め下塗り塗料用の樹脂組成物として使用されている。しかしながらビスフェノール型エポキシ樹脂は溶解性に乏しく、充分な溶解性を得るためには末端のエポキシ基のみならず、樹脂骨格中の二級水酸基と脂肪酸を脱水縮合させる必要がある。この際、未反応の脂肪酸が残ることにより耐食性や耐水性の悪化の一因となっていた。溶解性を確保する為に低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を使用した場合には、乾燥が遅く耐食性も充分なものは得られない。また、エポキシエステル樹脂塗料は耐候性に課題があり上塗り塗料として使用されることはなく、一般的には中塗り、上塗り塗料を塗布することにより耐候性を付与する必要がある。
【0003】
エポキシ樹脂にカルボン酸を反応させ、更にイソシアネートを反応させる変性エポキシ樹脂の従来技術として、下記が開示されている。
【0004】
特許文献1及び2で開示される樹脂はアルカノールアミンを必須成分として含んでおり、また、特許文献3で開示される樹脂はアルキルフェノール及び/又はノボラック型フェノールを必須成分として含んでいる。更に何れも主に防錆性や密着性が要求される、いわゆる下塗り塗料用樹脂として好適に用いることが出来る技術の開示であり、上塗り塗料用樹脂に要求される耐候性等についての開示はない。
【特許文献1】特開平11−171969号公報
【特許文献2】特開2002−60461号公報
【特許文献3】特開2004−315677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、その塗膜が優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用に適した樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と
(B)乾性油脂肪酸と
を開環付加反応させて得られた反応物を、
更に(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる樹脂組成物において、
該樹脂組成物の固形分水酸基価が40mgKOH/g以下であり且つ、固形分酸価が3mgKOH/g以下であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、本発明によって、優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性を有する新規な塗料用樹脂組成物を提供することが可能となった。特に耐候性と、優れた密着性及び耐食性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは下塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等又は同等以上の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明者等は、上記の目的を達成するために種々の研究を重ねた結果、(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物を、更に(C)イソシアネート基を有する化合物とを反応させることによって得られる樹脂組成物において、該樹脂組成物の固形分水酸基価が40mgKOH/g以下であり且つ、固形分酸価が3mgKOH/g以下であることを特徴とする樹脂組成物を塗料等に用いると、長期にわたり密着性、耐食性、耐候性、可撓性に優れた塗膜を形成することができることを見出した。
【0010】
以下、本発明に使用される化合物について、詳細に述べる。
【0011】
本発明に使用される(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物の製造に用いうるポリフェノール化合物としては、例えば、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2’−プロパン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−エタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−イソブタン、
ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2’−プロパン、
ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、
1,5−ジヒドロキシナフタレン、
ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、
テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’,2,2’−エタン、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
フェノールノボラック、
クレゾールノボラック
等が挙げられる。これらの(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0012】
上記(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物の市販品としては、
jER製のjER827、同828、同604、同1004、
ダウ・ケミカル製のDER332、DEN431、
大日本インキ化学工業製のエピクロン840、同830、
東都化成製のエポトートYD−127、同YD−128、
新日本理化製のリカレジンBPO−20E
等が挙げられる。
【0013】
本発明に使用される(B)乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。これらの(B)乾性油脂肪酸は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0014】
また上述の乾性油脂肪酸以外にも、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の不乾性油脂肪酸類、安息香酸、メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、リノール酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリン酸、イソノナン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、トリメリット酸等を、乾燥性に影響を及ぼさない範囲で併用することが出来る。
【0015】
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と、(B)乾性油脂肪酸との反応においては、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては、
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、水酸化リチウム、酢酸亜鉛等の各種の金属塩類、
ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン等の3級アミン類、
テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、
テトラメチル尿素等のアルキル尿素類、
テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン類、
トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類、
ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等のスルフィド類、
及び、これらの塩類等が挙げられる。これらの触媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0016】
本発明に使用される(C)イソシアネート基を有する化合物は、
ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、トシルイソシアネート等のモノイソシアネート類、
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、及び、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物、
イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、及び、これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物、
キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物類、及び、これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物、
トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類、及び、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物、及び、これらのウレタン化付加物のビューレットタイプ付加物やイソシアヌレート環付加物
等が挙げられる。塗膜の耐候性の点で特に好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらの(C)イソシアネート基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
上記(C)イソシアネート基を有する化合物の市販品としては、
旭化成製のデュラネート50M、同D−101、同D−201、同24A−100、同TPA−100、同THA−100、
三井化学製のコスモネートT−80、同M−100、同NBDI、同ND、タケネート500、同600、同700、
住化バイエルウレタン製のスミジュールT−80、同44S、同N3200、同N3300、デスモジュールH、同W、同I、
日本ポリウレタン工業製のコロネートT−80、ミリオネートMT、同MR、同HDI、
協和発酵製のLTI、
信越シリコーン製のKBE−9007
等が挙げられる。
【0018】
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸との反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応において、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては通常のウレタン化反応において使用される、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒等を必要に応じて用いてもよい。これらの触媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
(C)イソシアネート基を有する化合物の官能基数又はその混合物の平均官能基数が多すぎるとゲル化する恐れあり、イソシアネート基総数の70〜95%が二官能イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0020】
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸との反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応時に、分子量調節、分岐度調節、油長調節等の目的で、更に(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を使用することができる。
【0021】
本発明に使用される(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物とは、主に水酸基を含有する化合物であり、アルコール類やポリオール類、グリコール類等が挙げられる。
【0022】
アルコール類の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、カプリルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アリルアルコ−ル、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール及びブチルカルビトール等が挙げられる。
【0023】
ポリオール類には低分子量グリコール類と高分子量グリコール類とがある。
低分子量グリコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
高分子量グリコール類の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。
【0024】
更には、
グリセリン等にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール、
ジカルボン酸とジオールやトリオール等との縮合により得られる縮合系ポリエステルポリオール、
ジオールやトリオールをベースとし、ラクトンの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、
ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール、
ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール
等が挙げられる。
【0025】
これらの(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物の固形分水酸基価は、塗膜の耐候性、耐食性の点で40mgKOH/g以下であり、好ましくは固形分水酸基価3〜20mgKOH/gである。固形分水酸基価が40mgKOH/g以下を達成させるためには、樹脂組成物は、(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物、(C)イソシアネート基を有する化合物、(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物の群の中から選ばれる少なくとも一種は一官能化合物を含有することが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤を用いて樹脂固形分50%に調整した際、20℃において濁り及び分離の発生がなく、且つ、20℃における粘度が300ポイズ以下であることが好ましい。更に、20℃における粘度は100〜1ポイズがより好ましい。300ポイズを超えると粘度が高過ぎて、一般的な常温での刷毛又はローラー塗装に対応するには塗装時に多量の希釈溶剤が必要となり、膜厚不足を生じ易くなり、1ポイズ未満では粘度が低過ぎて塗装することが困難である。
【0028】
この場合、脂肪族炭化水素系溶剤とは、ミネラルスピリットやミネラルターペン、n−ヘキサン等である。粘度の測定は、B型粘度計(BM式)により求めることができる。
【0029】
本発明の(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と(B)乾性油脂肪酸とを開環付加反応させて得られた反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物とを反応させることによって得られた樹脂組成物は、それだけでもクリヤー塗料として使用可能ではあるが、塗料として各種機能を付与させるために、各種溶剤、各種樹脂、ドライヤーやダレ防止剤等の一般的に塗料に用いられる添加剤を用いてもよい。更に、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等の一般的に塗料に用いられる各種顔料を配合する場合は、顔料分散剤や沈降防止剤等の一般的に塗料に用いられる各種添加剤を配合するのが望ましい。
【0030】
塗料として本発明の樹脂組成物と共に用いる溶剤としては、臭気の点で特に好ましくは脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤であり、具体例としてはミネラルスピリットが挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物、もしくはそれを用いた塗料は、金属以外にも、木材、プラスチック等の各種素材にも適用でき、自然乾燥、もしくは加熱強制乾燥させることにより優れた塗膜を形成することが可能である。
【0032】
本発明の樹脂組成物を用いることで、長期にわたり密着性、耐食性、耐候性、可撓性に優れる塗膜が提供できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0034】
<製造例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER828)189部、大豆油脂肪酸280部及びジメチルエタノールアミン0.5部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃において、酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応させる。次に系内温度を130℃に冷却した後に、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン製デスモジュールI)89部、溶剤としてキシレン558部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み、赤外吸収スペクトル(IR)測定によりイソシアネート基が確認できなくなるまで反応させ、固形分が50%の目的とする樹脂溶液1を得た。
【0035】
<製造例2〜10>
製造例1と同様の方法で、下記表1に示した配合にて反応させて、目的とする樹脂溶液2〜10を得た。
【0036】
<製造例11>
攪拌機、温度計、冷却器、分水器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器に大豆油脂肪酸300部、ペンタエリスリトール67部、グリセリン35部、エチレングリコール25部、無水フタル酸170部及びキシレン15部を仕込み、窒素雰囲気下で240℃において反応させ、固形分酸価が12mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、冷却後溶剤としてミネラルスピリット540部にて希釈し、固形分が50%の目的とする樹脂溶液11を得た。
【0037】
<製造例12>
攪拌機、温度計、冷却器、分水器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製jER1004)300部、大豆油脂肪酸200部及びキシレン20部を仕込み、窒素雰囲気下で240℃において反応させ、固形分酸価が5mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、冷却後溶剤としてキシレン480部にて希釈し、固形分が50%の目的とする樹脂溶液12を得た。
【0038】
上記製造例1〜12で得た各樹脂溶液を用いて下記表1に示した各実施例及び比較例の塗料を得た。
【0039】
<実施例1>
上記樹脂溶液1を固形分として30部、溶剤(樹脂溶液1に使用した溶剤と同じもの)を44.0部(上記樹脂溶液1の溶剤と塗料製造時に使用する溶剤の合計量)、顔料(カーボンブラック1部、ベンガラ3部、二酸化チタン18部、沈降性硫酸バリウム3部)を25部、アマイド系ダレ防止剤等の添加剤として0.3部、ナフテン酸コバルトとオクチル酸バリウムとからなるドライヤーを0.7部により、実施例1の塗料を得た。
【0040】
<実施例2〜9,比較例1〜3>
上記樹脂溶液2〜12を用いて実施例1と同様の方法により、実施例2〜9及び比較例1〜3の塗料を得た。
【0041】
<比較例4>
比較例4は、比較例3で用いた製造例12の樹脂溶液からなる塗料を下塗り、比較例2で用いた製造例11の樹脂溶液からなる塗料を上塗りに用いた。
【0042】
得られた樹脂組成物の酸価、水酸基価、固形分量、粘度は、以下の方法で測定した。
【0043】
<酸価>
樹脂組成物の酸価の測定は、JIS−K−5601−2−1に準じて行った。
【0044】
<水酸基価>
試料約2gをピリジン約10mlに溶解した後、予め調整した無水酢酸/ピリジンの体積比が15/85である混合溶液5mlを加え、20時間放置し、更に1時間還流させた。冷却後、水1mlを加え10分間還流させた。冷却後、エチルアルコール10mlを加え、指示薬としてフェノールフタレイン・エチルアルコール溶液を2滴加え、0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。うす紅色が10秒間消えなくなったときを終点とし、次式で水酸基価を計算した;
水酸基価={(B−A)×f×28.05}/(W×NV)+酸価
A:本試験の0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
B:試料無しで行った空試験の0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
f:0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料の質量(g)
NV:試料の固形分量
【0045】
<固形分量>
樹脂組成物の固形分量の測定は、JIS−K−5600−6−1に準じて行った。
【0046】
<粘度>
東京計器社製のB型粘度計BM形式を使用し、上記で得た試料を20±0.5℃に保持した状態で、No.3ローターを用い30rpmの回転数で測定した。
【0047】
上記で得た塗料を用いて、塗板の作製及び塗膜特性の評価方法を以下のように行った。
【0048】
「塗板の作製」
みがき軟鋼板(厚さ0.7mm)及びブリキ板(厚さ0.3mm)を用い、その表面をキシレンにて洗浄し、各実施例及び比較例で得た塗料をエアスプレーにて塗装した。一回の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、24時間の塗装間隔で二回塗装を行った。これを室温で2週間乾燥後に各試験に用いた。可撓性試験にはブリキ板を用い、その他の試験にはみがき軟鋼板を用いた。
【0049】
<耐候性>
サンシャインウェザロメーターによって促進耐候性試験を行い、500時間後の塗膜の変化を塗膜外観の変化で評価し、また鏡面光沢度(60°光沢)を測定し、初期60°光沢値と比較した光沢保持率により下記のように評価した。
○:塗膜外観変化が僅かであり、光沢保持率75%以上
△:光沢保持率75%以上だが、黄変が見られる
×:塗膜変化が著しい、光沢保持率75%未満
【0050】
<耐食性>
JIS−K−5621−7−12 複合サイクル試験の試験方法に準拠し、100サイクル後の塗膜外観を、以下の基準で目視判定した。
◎:塗膜表面に、異常なし
○:クロスカット部周辺に、直径1mm以下の赤錆が発生
×:クロスカット部周辺に、直径1mmを超える赤錆が発生
【0051】
<耐溶剤性>
ミネラルスピリットを染み込ませたガーゼで、塗面を50往復擦った後の塗膜状態を目視で判定した。
○:僅かな痕跡あり
△:目立った擦り傷や艶ぼけあり
×:塗膜が溶解した
【0052】
<可撓性>
塗面を外側に向けて塗板を180°折り曲げ、屈曲部位の塗膜状態を目視で判定した。
◎:塗膜に異常なし
○:僅かにクラックが発生するが、実用上問題ないレベル
△:部分的にクラックが発生している
【0053】
<弱溶剤希釈試験>
塗料作製に用いた樹脂溶液1〜12をミネラルスピリットで10倍に希釈し、20℃における溶液状態を目視で判定した。
○:濁り及び分離の発生なし
△:濁りは発生するが分離なし
×:分離の発生あり
【0054】
【表1】

【0055】
エポゴーセーBA:四日市合成製のブチルグリシジルエーテル
jER828:ジャパンエポキシレジン製のエポキシ樹脂
jER1004:ジャパンエポキシレジン製のエポキシ樹脂
デナコールEX−810:ナガセ化成製のエチレングリコールジグリシジルエーテル
スミジュールT−80:住化バイエルウレタン製のトリレンジイソシアネート
デスモジュールI:住化バイエルウレタン製のイソホロンジイソシアネート
デスモジュールH:住化バイエルウレタン製のヘキサメチレンジイソシアネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ基を有する化合物と
(B)乾性油脂肪酸と
を開環付加反応させて得られた反応物を、
更に(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる樹脂組成物において、
該樹脂組成物の固形分水酸基価が40mgKOH/g以下であり且つ、固形分酸価が3mgKOH/g以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記反応物と(C)イソシアネート基を有する化合物とを反応させる際、更に(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を反応させて得られる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)エポキシ基を有する化合物、
前記(C)イソシアネート基を有する化合物、
前記(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物
の群の中から選ばれる少なくとも一種は一官能化合物を含有し、
前記樹脂組成物の固形分水酸基価が20mgKOH/g以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤を用いて樹脂固形分50%に調整した際、20℃において濁り及び分離の発生がなく且つ、20℃における粘度が300ポイズ以下である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)イソシアネート基を有する化合物が脂肪族イソシアネート化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−227776(P2009−227776A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73510(P2008−73510)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】