説明

樹脂組成物

【課題】 ポリエステル樹脂の結晶を促進させる。
【解決手段】本発明は、結晶化が改善されたポリエステル樹脂であり、次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化1】


で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形用樹脂組成物及びその製造方法に関し、特に、生分解性樹脂を含有する成形用樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、日本国において2002年9月9日に出願された日本特許出願番号2002−263279、日本特許出願番号2002−263283を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
従来、樹脂組成物及び成形用樹脂組成物の分野においては、自然環境保護の見地から、自然環境中で分解する生分解性樹脂及びその成型品が求められている。中でも、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂の研究が活発に行われている。特に、ポリ乳酸は一般に融点が高く(170〜180℃)、ポリ乳酸によって作られた成形品は、通常透明であり、用途によっては実用化され始めている。通常ポリ乳酸によって作られた成形品は、耐熱性に乏しく、ガラス転移温度(Tg)が60℃前後のため、その温度を越えると変形してしまう等の欠点を有している。電気製品の筐体や構造材の用途では、概ね温度80℃付近までの耐熱性が必要であるとされている。したがって、耐熱性を必要とする用途に使用するために、様々な検討がなされている。なお、ここでいう耐熱性とは、80℃付近の剛性(弾性率)が100MPa程度に十分に高いことを意味している。
【0004】
生分解性ポリエステルの耐熱性を上げるために、例えば、無機フィラーの添加が検討されている。無機フィラーとしては、耐熱性を有するタルクやマイカ等が検討されている。これは、いわばコンクリートに鉄筋を入れるようなもので、樹脂に耐熱性を有する固い無機フィラーを添加することで機械特性を改善し固くすることを目的としている。しかしながら、無機フィラーの添加だけでは機械特性の改善等が不十分である。
【0005】
生分解性ポリエステルの代表例であるポリ乳酸は、結晶構造を取り得る高分子であるが、通常ポリ乳酸の成形品は、非晶質であるため熱変形しやすい。そこで、例えば成形中又は成形後の熱処理によって、ポリ乳酸を結晶化させ固くし、耐熱性を改善することが提案された。ポリ乳酸をこのような方法で結晶化させると、結晶化に非常に時間がかかってしまう。例えば、射出成形ではふつう1分程度の成形サイクルであるが、ポリ乳酸の成形品を金型内で結晶化を完遂させるのは時間がかかりすぎて現実的でない。ポリ乳酸をこのような方法で結晶化させると、結晶サイズがミクロンオーダからサブmmオーダ程度となり、ポリ乳酸の結晶自体が光散乱の要因となって白濁し、透明性が失われるなどの問題があった。これらの課題を解決するため、すなわち結晶化の促進のため、いわゆる核剤の添加が検討され始めている。
【0006】
核剤とは、結晶性高分子の一次結晶核となり、結晶性高分子の結晶成長を促進するものである。また広義には、結晶性高分子の結晶化を促進するものとされることもある。すなわち、高分子の結晶化速度そのものを速くするものも核剤ということもある。前者のような核剤が樹脂に添加されると、高分子の結晶が微細となり、その樹脂の剛性が改善されたり、あるいは透明性が改善されたりする。又は、成形中に結晶化をさせる場合、結晶化の全体の速度(時間)を速めることから、成形サイクルを短縮できるといった利点がある。
【0007】
上記のような効果は、他の結晶性樹脂に実例を見ることができる。例えばポリプロピレン(以下、PPと略す。)は、核剤を添加することで、剛性や透明性が改善されており、物性改善されたPPは今日多くの成形品で実用化されている。その核剤は、例えばソルビトール系物質があり、作用機序は完全には解明されてはいないが、この物質が作る三次元的なネットワークが効果的に作用していると考えられている。また、PP用に金属塩タイプの核剤も実用化されている。そのような核剤としては、例えばヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム又はメチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩などが挙げられる。
【0008】
ところが、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルには有効な核剤があまり見つかっていない。前述のタルクは、核剤としても機能する。用途によっては、タルクは有力な核剤として用いることができると考えられている。核剤として用いるには、その添加量を数10%とせねば充分な効果が得られないばかりか、添加量を多くすると樹脂組成物が脆くなる問題がある。そのような添加量では、樹脂組成物は白色となり、透明性は全く期待できない。
【0009】
これまで、脂肪族ポリエステルにおいても、結晶化を促進する核剤の検討がされている。例えば、結晶化を促進する核剤として、ソルビトール系物質を用いることが特開平10−158369号公報に記載されている。この物質は、PPでの結晶化核剤で実績があり、ポリ乳酸に対する添加でも効果的に作用するとの記載が上記公報にある。このほか、ポリエステルに核剤を添加して結晶化を促進させる方法が、特開平9−278991号公報、特開平11−5849号公報、特開平11−116783号公報に記載されている。
【0010】
しかし、いずれの技術においても、現在のところ実用化に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−278991号公報
【特許文献2】特開平11−5849号公報
【特許文献3】特開平11−116783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述したような従来の技術が有する問題点を解消することができる新規な樹脂組成物、成形用樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、結晶構造を取り得るポリエステル、中でも生分解性を有するポリエステルの結晶化を促進するのに適した核剤を添加した成形用樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、結晶化が改善された成形用樹脂組成物を含む成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、結晶構造を取り得るポリエステルに、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化1】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す。)で示される環状化合物を添加することで、その結晶化を促進できることを見出した。
【0016】
ここで、環状化合物は、イソインドリノン化合物であることが好ましく、より具体的には、3,3’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ジイミノ−ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 109)、あるいは、3,3’−(1,4−フェニレンジイミノ)ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 110)であることがより好ましいことを知見した。上記環状化合物の粒径は、好ましくは10μm以下で、より好ましくは1μm以下で、最も好ましくは0.1μm以下であることを見出した。また、樹脂組成物に対する環状化合物の添加量は、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜1重量部の範囲内であることがより好ましいことを知見した。
【0017】
本発明者等は、上記結晶構造を取り得るポリエステルが生分解性ポリエステルであることが適当であり、さらに生分解性ポリエステルの中でも、ポリ乳酸が好ましいことがわかった。また、環状化合物の他に、さらに無機フィラー、好ましくはタルクを添加することで、互いにその効果を打ち消しあうことなく、結晶化を促進することも見出した。無機フィラーの添加量としては、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、1〜50重量部の範囲内であることが適当であることがわかった。また、成形用樹脂組成物に、さらに加水分解抑制剤を添加することで、結晶性を低下させることなく、ポリエステルの加水分解を抑制できることを見出した。加水分解抑制剤としては、カルボジイミド基を有する化合物が適当であることがわかった。樹脂組成物が結晶化率40〜100%の範囲内であることが好ましく、結晶化時間0〜200秒の範囲内であることが好ましく、80℃における弾性率50〜5000MPaの範囲内であることが好ましいことを知見した。
【0018】
さらに、本発明者等は、本発明に係る成形用樹脂組成物は、結晶化が促進されており、これを用いて作られた成形品は、剛性などが改善されることを見出し、成形品を作るのに適当であることをも見出した。成型品としては、電気又は電子機器の筐体であることが好ましいことを知見した。
【0019】
また、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化2】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを混合し、次いで加熱混練することで上記結晶化が改善された樹脂組成物を製造できることを見出した。
【0020】
さらに、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化3】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物を含有する核剤が驚くほど結晶構造を取り得るポリエステルの結晶化を促進させることを知見した。上記環状化合物を、結晶構造を取り得るポリエステル用核剤として使用できることを見出した。
【0021】
本発明者等は種々の知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち、本発明は、
下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化4】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有することを特徴とする結晶化が改善された樹脂組成物である。
【0023】
本発明に係る樹脂組成物を構成する環状化合物は、3,3’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ジイミノ−ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 109)、あるいは、3,3’−(1,4−フェニレンジイミノ)ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 110)が用いられる。
【0024】
環状化合物は、粒径10μm以下の粒子であることが望ましい。
【0025】
本発明において、結晶構造を取り得るポリエステルは、生分解性ポリエステルであり、生分解性ポリエステルは、ポリ乳酸である。
【0026】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成形体の成形用材料として用いられる。
【0027】
本発明に係る樹脂組成物において、環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内である。
【0028】
本発明に係る樹脂組成物は、環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲内である。
【0029】
本発明に係る樹脂組成物には、さらに無機フィラーが添加されている。この無機フィラーには、タルクを用いることができる。
【0030】
ここで、無機フィラーの配合割合が、樹脂組成物100重量部に対して、1〜50重量部の範囲内である。
【0031】
本発明に係る樹脂組成物には、さらに加水分解抑制剤が含有されている。加水分解抑制剤は、カルボジイミド基を有する化合物を含有している。
【0032】
本発明に係る樹脂組成物は、結晶化率が40〜100%の範囲内であり、結晶化時間が0〜200秒の範囲内である。
【0033】
本発明に係る樹脂組成物は、80℃における弾性率が50〜5000MPaの範囲内である。
【0034】
本発明は、樹脂成形品であり、この成形品は、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化5】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する結晶化が改善された樹脂組成物からなる。
【0035】
本発明は、電気又は電子機器の筐体であり、この筐体は、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化6】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する結晶化が改善された樹脂組成物からなる。
【0036】
本発明は、樹脂組成物の製造方法であり、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化7】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを混合し、ついで加熱混練する。
【0037】
本発明は、結晶構造を取り得るポリエステル用核剤であり、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化8】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される。
【0038】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施の形態の説明から一層明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0039】
本発明では、ポリエステルの結晶化が促進され、これを用いて作られた成形品は、剛性などが改善されることを見出し、成形品を作るのに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、明るさと時間のグラフを表す図であって、結晶化時間の求め方を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る樹脂組成物、成形用樹脂組成物及びその製造方法をさらに具体的に説明する。
【0042】
本発明に係る樹脂組成物は、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化9】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する結晶化が改善された樹脂組成物である。
【0043】
以下、各構成要件について説明する。
【0044】
本発明で使用される環状化合物は、下記の式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化10】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物であればどのようなものでもよく、公知のものであってよい。
【0045】
「置換されていてもよいベンゼン環」とは、例えば上記ベンゼン環が同一又は異なる1〜4個の置換基で置換されたもの又は置換されていない上記ベンゼン環等が挙げられる。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素、素、臭素又はヨウ素等)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホ基、スルフィノ基、メルカプト基、ホスホノ基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、又は他の種々の異性体であるペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はエイコシル基等)、ヒドロキシアルキル基(例えばヒドロギシメチル基、ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシイソプロピル基、1−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、1−ヒドロキシ−イソブチル基、1−ヒドロキシ−第2ブチル基又は1−ヒドロキシ−第3ブチル基等)、ハロゲノアルキル基(例えばクロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、5,5,5−トリフルオロペンチル又は6,6,6−トリフルオロヘキシル等)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等)、アルケニル基(例えばビニル、クロチル、2−ペンテニル又は3−ヘキセニル等)、シクロアルケニル基(例えば2−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、2−シクロペンテニルメチル又は2−シクロヘキセニルメチル等)、アルキニル基(例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ペンチニル又は3−ヘキシニル等)、オキソ基、チオキソ基、アミジノ基、イミノ基、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ又はヘキシルオキシ等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ又はヘキシルチオ等)、カルボキシル基、アルカノイル基(例えばホルミル;アセチル、プロピオニル、ブチリル又はイソブチリル等)、アルカノイルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ又はイソブチリルオキシ等のアルキル−カルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル又はブトキシカルボニル等)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、チオカルバモイル基、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル又はエチルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル又はブチルスルホニル等)、スルファモイル基、モノ−アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル又はエチルスルファモイル等)、ジ−アルキルスルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル又はジエチルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル又はナフチルスルファモイル等)、アリール基(例えば、フェニル又はナフチル等)、アリールオキシ基(例えばフェニルオキシ又はナフチルオキシ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ又はナフチルチオ等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル又はナフチルスルフィニル等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル又はナフチルスルホニル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル又はナフトイル等)、アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ又はナフトイルオキシ等)、ハロゲン化されていてもよいアルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ又はトリフルオロアセチルアミノ等)、置換基を有していてもよいカルバモイル基(例えば、式−CONR3R4(式中、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい複素環基を示すか、又はR3とR4は隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)で表される基)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、テトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール又はイミダゾール等)、置換基を有していてもよいウレイド基(例えば、式−NHCONR3R4(式中、R3及びR4は前記と同意義を示す)で表される基等)、置換基を有していてもよいカルボキサミド基(例えば、式−NR3COR4(式中、R3及びR4は前記と同意義を示す)で表される基)、置換基を有していてもよいスルホナミド基(例えば、式−NR3SO2R4(式中、R3及びR4は前記と同意義を示す。)で表される基等)、置換基を有していてもよい複素環基(例えば、環系を構成する原子(環原子)として、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等から選ばれたヘテロ原子1〜3種を少なくとも1個含む芳香族複素環基、又は飽和あるいは不飽和の脂肪族複素環基等)、又はこれら置換基を化学的に許容される限り置換させた置換基等が挙げられる。
【0046】
「置換されていてもよい二価の炭化水素基」とは、例えば、同一又は異なる1以上の置換基で置換された二価の炭化水素基又は置換されていない二価の炭化水素基等が挙げられる。ここで置換基は、上記と同意義を示す。二価の炭化水素基としては、例えばアルキレン基(例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンタメチレン基、ペンチレン基、2−メチルテトラメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、2−エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘキシレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、ヘプタメチレン基、ヘプチレン基、オクタメチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノナメチレン基、ノニレン基、デカメチレン基、デシレン基、シクロプロピレン、1,2−シクロブチレン、1,3−シクロブチレン、シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン又は1,4−シクロヘキシレン等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン、プロペニレン、1−プロペン−1,2−イレン、2−プロペン−1,2−イレン、ブテニレン(例えば1−ブテン−1,4−イレン又は2−ブテン−1,4−イレン等)、ペンテニレン(例えば、1−ペンテン−1,5−イレン又は2−ペンテン−1,5−イレン等)、ヘキセニレン(例えば、1−ヘキセン−1,6−イレン、2−ヘキセン−1,6−イレン又は3−ヘキセン−1,6−イレン等)、シクロプロペニレン(例えば1−シクロプロペン−1,2−イレン又は2−シクロプロペン−1,2−イレン等),シクロブテニレン(例えば、1−シクロブテン−1,2−イレン、1−シクロブテン1,3−イレン、2−シクロブテン−1,2−イレン又は3−シクロブテン−1,2−イレン等),シクロペンテニレン(例えば、1−シクロペンテン−1,2−イレン、1−シクロペンテン−1,3−イレン、2−シクロペンテン−1,2−イレン、3−シクロペンテン−1,2−イレン、3−シクロペンテン−1,3−イレン又は4−シクロペンテン−1,3−イレン等)、又はシクロヘキセニレン(例えば、1−シクロヘキセン−1,2−イレン、1−シクロヘキセン−1,3−イレン、1−シクロヘキセン−1,4−イレン、2−シクロヘキセン−1,2−イレン、2−シクロヘキセン−1,4−イレン、3−シクロヘキセン−1,2−イレン、3−シクロヘキセン−1,3−イレン、4−シクロヘキセン−1,2−イレン又は4−シクロヘキセン−1,3−イレン等)など)、アルキニレン基(例えばエチニレン、プロピニレン、1−ブチニレン、2−ブチニレン、1−ペンチニレン、2−ペンチニレン又は3−ペンチニレン等)、シクロアルキレン基(例えば、1,4−シクロヘキシレン等)、フェニレン基(例えば、o−フェニレン、m−フェニレン又はp−フェニレン等)、ナフチレン基、又はこれら炭化水素基を化学的に許容される限り置換させた二価の炭化水素基等が挙げられる。
【0047】
上記環状化合物として、例えば下記の式
【化11】

で表される化合物、
【0048】
下記の式
【化12】

で表される化合物、
【0049】
下記の式
【化13】

で表される化合物、
【0050】
下記の式
【化14】

で表される化合物、
【0051】
下記の式
【化15】

で表される化合物、
【0052】
下記の式
【化16】

で表される化合物、
【0053】
下記の式
【化17】

で表される化合物、
【0054】
下記の式
【化18】

で表される化合物、
【0055】
下記の式
【化19】

で表される化合物、
【0056】
下記の式
【化20】

(式中、Dは
【化21】



【化22】



【化23】



【化24】



【化25】



【化26】



【化27】

【0057】
又は式
【化28】

を示す。)で表される化合物、又はこれら化合物を化学的に許容される限り置換させた化合物等が挙げられる。また、このような二価の炭化水素基はBで表される二価の炭化水素基の例示でもあり得る。
【0058】
本発明においては、環状化合物が下記の式
【化29】

で表される、3,3’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ジイミノ−ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オンであることが好ましい。これは、黄色の顔料(Pigment Yellow 109)として多く用いられており、市販品を入手できるため好都合である。粒子サイズも各種のものが市販されており、なるべく粒子サイズの小さいものが好ましい。より具体的には、粒子の粒径が約10μm以下であることが好ましく、約1μm以下であることがより好ましく、約0.1μm以下であることが最も好ましい。
【0059】
本発明においては、環状化合物が下記の式
【化30】

で表される、3,3’−(1,4−フェニレンジイミノ)ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オンであることが好ましい。これも、黄色の顔料(Pigment Yellow 110)として多く用いられており、市販品を入手できるため好都合である。粒子サイズも各種のものが市販されており、なるべく粒子サイズが小さいものが好ましい。より具体的には、粒子の粒径が約10μm以下であることが好ましく、約1μm以下であることがより好ましく、約0.1μm以下であることが最も好ましい。
【0060】
本発明においては、環状化合物として、上述した環状化合物の異性体(例えば、上述した環状化合物の互変異性体等)等を用いることができる。
【0061】
したがって、下記の式
【化31】

(式中、Pは前記と同意義)で示される基はその互変異性体である下記の式
【化32】

(式中、Pは前記と同意義)で示される基である場合を含む。
【0062】
また、本発明における下記の式
A1−B−A2
表される化合物は、A1とA2のうち一方が
【化33】

(式中、Pは前記と同意義)で示される基を表し、他方が
【化34】

(式中、Pは前記と同意義)である場合を含む。
【0063】
さらに、本発明における下記の式
A1−B−A2
で表される化合物は、A1及びA2のうち少なくとも一方が下記の式
【化35】

【0064】
(Pは前記と同意義)を含む。
【0065】
より具体的に例えば、上記環状化合物の異性体として、下記の式
【化36】

で表される化合物、
【0066】
下記の式
【化37】

で表される化合物、
【0067】
又は、下記の式
【化38】

で表される化合物等が含まれる。
【0068】
本発明で用いられる環状化合物は、なるべく粒子サイズが小さいものが好ましい。より具体的には、粒子の粒径が約10μm以下であることが好ましく、粒径が約1μm以下であることがより好ましく、粒径が約0.1μm以下であることが最も好ましい。本発明においては、環状化合物を、結晶構造を取り得るポリエステル用核剤として用いることが好ましい。
【0069】
結晶構造を取り得るポリエステルは、エステル結合を少なくとも1個有する高分子化合物であって、結晶構造を取り得るものであればどのようなものでもよく、公知のものであってよい。「結晶構造を取り得るもの」とは、結晶構造を一部でも取り得るものであれば特に限定されず、全ての分子鎖が規則正しく配列できるものでなくてもよい。たとえ、全ての分子鎖に規則性がなくても、少なくとも2個の分子鎖セグメントが配向可能であればどのようなものでもよい。したがって、結晶構造を取り得るポリエステルが直鎖状であることが好ましいが、分岐状等であってもよい。また、本発明においては、結晶構造を取り得るポリエステルが生分解性ポリエステルであることが好ましい。このような生分解性ポリエステルとしては、例えば微生物によって代謝されるポリエステル系の樹脂を挙げることができ、中でも成形性、耐熱性、耐衝撃性をバランスよく有している脂肪族系ポリエステルを用いるのが好ましい。
【0070】
脂肪族系ポリエステルとしては、例えばポリシュウ酸、ポリコハク酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン又はポリ乳酸系脂肪族系ポリエステル等が挙げられる。中でも、脂肪族系ポリエステルとして、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを用いるのがさらに好ましい。ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルとしては、具体的には、乳酸、リンゴ酸、グルコール酸等のオキシ酸の重合体又はこれらの共重合体が挙げられ、中でも、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルを用いることが特に好ましく、さらにヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸が最も好ましい。
【0071】
本発明で用いられる生分解性ポリエステルは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクチド法、多価アルコールと多塩基酸との重縮合、又は分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合などの方法により製造することができる。
【0072】
特に、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルは通常、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合による方法、いわゆるラクチド法により、また、ラクチド法以外では、乳酸の直接脱水縮合法により得ることができる。また、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを製造するための触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄又はアルミニウム化合物等を例示することができ、中でも錫系触媒、アルミニウム系触媒を用いることが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナートを用いることがより好ましい。
【0073】
ラクチド開環重合により得られるポリL−乳酸が、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルの中でも好ましい。かかるポリL−乳酸は加水分解されてL−乳酸になり、かつその安全性も確認されているためである。本発明で使用するポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルはこれに限定されることはなく、したがって、その製造に使用するラクチドについてもL体に限定されない。また、本発明においては、生分解性ポリエステルとして、例えば製品名H100J(三井化学株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
【0074】
本発明に係る樹脂組成物に、さらに樹脂組成分として必ずしも結晶構造を取らないポリエステルやその他の生分解性樹脂等が含まれていてもよい。このような生分解性樹脂としては、例えばセルロース、デンプン、デキストラン又はキチン等の多糖誘導体、例えばコラーゲン、カゼイン、フィブリン又はゼラチン等のペプチド、例えばポリアミノ酸、例えばポリビニルアルコール、例えばナイロン4又はナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド、例えば結晶構造を取らないとして知られているポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノン等のポリエステル等が挙げられ、多くの種類があり、本発明でも用いることが可能である。すなわち生分解性ポリマは自然界や生体の作用で分解して、同化される有機材料であり、環境に適合した理想的な材料であり、本発明の目的を損なわなければ、どのような材料でもかまわない。
【0075】
本発明で用いられる生分解性樹脂は、公知の方法に従って製造することができる。また、生分解性樹脂として市販品を使用してもよい。例えば、ラクティ(島津製作所株式会社製)、レイシア(三井化学株式会社製)又はNature Works(Cargill Dow Polymer LLC 株式会社製)等が挙げられる。
【0076】
本発明に係る樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂のうち1種類のみが含有されていても良いし、2種類以上の生分解性樹脂が含有されていてもよい。2種類以上の生分解性樹脂が含有されている場合、それらの樹脂は共重合体を形成していてもよいし、混合状態をとっていてもよい。
【0077】
なお、本発明に係る樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂以外の樹脂が含有されていてもよい。例えば、生分解性を有しない合成樹脂等が本発明に係る樹脂組成物に含まれていてもよい。前記樹脂として、例えば、分解速度を緩和したポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0078】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに無機フィラーが添加されていてもよい。無機フィラーとしては、公知のものであってよく、例えばタルク、アルミナ、シリカ、マグネシア、マイカ又はカオリン等が挙げられる。中でもタルクが、本発明で用いられる環状化合物と併用することにより、互いにその効果を打ち消すことなく、結晶化を促進させる効果があることから、より好ましく使用される。
【0079】
無機フィラーは、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、約1〜50重量部添加されていることが好ましい。上記範囲であると、得られる樹脂組成物が脆弱化を避けることができる。
【0080】
ポリエステルの加水分解の抑制は、成形品の使用における長期信頼性の点で重要である。したがって、本発明に係る樹脂組成物は、さらに加水分解抑制剤が添加されていることが好ましい。かかる加水分解抑制剤としては、生分解性樹脂の加水分解を抑制することができれば、特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂中の活性水素と反応性を有する化合物等が挙げられる。前記化合物を加えることで、生分解性樹脂中の活性水素量が低減し、活性水素が触媒的に生分解性樹脂を構成する高分子鎖を加水分解することを防ぐことができる。ここで、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。より具体的には、生分解性樹脂中の例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、又はアミド結合:−NHCO−等における水素が挙げられる。
【0081】
加水分解抑制剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物又はオキサゾリン系化合物などが適用可能である。特にカルボジイミド化合物が生分解性高分子化合物と溶融混練でき、少量の添加で生分解性樹脂の加水分解をより抑制できるために好ましい。
【0082】
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド又はナフチルカルボジイミドなどを例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0083】
イソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又は3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0084】
オキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)又は2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0085】
上述のような加水分解抑制剤は、公知の方法に従って容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することができる。
【0086】
本発明で用いる加水分解抑制剤の種類又は添加量により、本発明に係る樹脂組成物の生分解速度を調整することができるので、目的とする製品に応じ、配合する加水分解抑制剤の種類及び配合量を決定すればよい。加水分解抑制剤の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全重量に対して、通常約5重量%以下、好ましくは約1重量%である。また、加水分解抑制剤は、上述の化合物を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明に係る樹脂組成物には、結晶化及び結晶性を著しく妨げない限りにおいて、所望により、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、充填剤又は抗菌抗カビ剤等、従来公知の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0088】
本発明に係る樹脂組成物は、上記した環状化合物又はその混合物と結晶構造を取り得るポリエステルと、さらに所望によりその他の成分を混合することにより製造される。本発明に係る樹脂組成物を原料となる各成分から製造するより詳しい方法としては、原料である生分解性樹脂、所望により無機フィラーや加水分解抑制剤などを混合し、押出機を用いて溶融混練するという方法が挙げられる。このほか、上記製造方法としては、いわゆる溶液法を用いることもできる。ここでいう溶液法とは、各成分を分散溶解できる任意の溶媒を用いて、原料となる各成分及び溶媒を良く撹拌し、スラリーを作り、溶媒を乾燥除去する方法である。
【0089】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、これらの方法に制限されるものではなく、これらの方法以外の従来知られている方法を用いることができる。
【0090】
本発明では、生分解性ポリエステルの中に、環状化合物が、均一に微分散されていることが好ましい。これには、従来公知の方法を用いればよい。例えば、顔料を樹脂に分散させ着色する方法が採用され得る。例えば、3本ロールを用いること等が挙げられる。あるいは、環状化合物とポリエステルとを混合し、ついで加熱混練を複数回も繰返すこと等が挙げられる。具体的に例えば、上記環状化合物と上記ポリエステルとの混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサ、ニーダー又はミキシングロール等の公知の溶融混合機に供給して約170〜380℃の温度で混練りする方法等が挙げられる。また、添加剤等を添加する場合、上述の方法などで混練りしペレット化した後、成形前に添加することもできる。
【0091】
本発明においては、樹脂組成物中、上述した環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、約0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、約0.01〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。また、本発明においては、樹脂組成物が結晶化率約20〜100%の範囲内であることが好ましく、結晶化率約40〜100%の範囲内であることがより好ましい。また、樹脂組成物が結晶化時間約0〜1000秒の範囲内であることが好ましく、約0〜200秒の範囲内であることがより好ましい。樹脂組成物が80℃における弾性率約10〜10000MPaの範囲内であることが好ましく、80℃における弾性率約50〜5000MPaの範囲内であることがより好ましい。結晶化率及び上記結晶化時間は、それぞれ後述する実施例を参照にして求められる。弾性率は、以下の引張弾性測定と曲弾性測定とが加味された測定方法によって求められる。
【0092】
試験片:長さ50mm×幅7mm×厚さ1mm
測定装置:粘弾性アナライザ RSA−II(レオメトリック社製)
測定ジオメトリ:Dual Cantilever Bending
周波数:6.28(rad/s)
測定開始温度:0(℃)
測定最終温度:160(℃)
昇温速度:5(℃/min)
歪:0.05(%)
【0093】
本発明に係る樹脂組成物は、種々の成形品に広く使用することができる。本発明に係る樹脂組成物からなる成形品は、樹脂組成物の結晶性が高いため、剛性に優れており、さらに透明性も高めることができるので、そのような剛性及び透明性などの要求の高い製品として好適に使用される。本発明に係る樹脂組成物を用いた成形品の用途として、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバータ、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電機部品キャビネット、ライトソケット、各種端子板、プラグ又はパワーモジュールなどの電気機器部品、センサ、LEDランプ、コネクタ、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、変成器、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、フロッピー(登録商標)ディスク又はMOディスク等の記憶装置、小型モータ、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、インクジェットプリンタ又は熱転写プリンタ等のプリンタ、モータブラッシュホルダ、パラボラアンテナ又はコンピュータ関連部品等に代表される電子部品、VTR部品、テレビ部品、テレビ又はパソコン等の電気又は電子機器の筐体、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響製品又はオーディオ・レーザディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷凍庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品又はワードプロセッサ部品等に代表される家庭、事務電機製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モータ部品、ライタ又はタイプライタなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ又は時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネータターミナル、オルタネータコネクタ、ICレギュレータ、ライトデイヤ用ポテンシオメータベース又は排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペサー、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウエアセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド磨耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房用風フローコントロールバルブ、ラジエータモータ用ブラッシュホルダ、ウオータポンプインペラ、タービンベイン、ワイパモータ関係部品、デユストリビュータ、スタータスイッチ、スタータリレー、トランスミッション用ワイヤハーネス、ウインドウオッシャノズル、エアコンパネルスイッチ基盤、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモータロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ又は点火装置ケース等の自動車・車両関連部品、又は包装材料等が挙げられる。中でも、上記成型品を大量に排出されるテレビ又はパソコン等の電気又は電子機器の筐体として使用することが好ましく、使用後には生分解処理に付して廃棄すればよく、廃棄に余分なエネルギーが消費されないという利点を有する。
【0094】
次に、本発明に係る樹脂組成物の他の例を説明する。
【0095】
本発明に係る樹脂組成物は、(a)置換されていてもよい銅フタロシアニン結晶、(b)置換されていてもよい、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ケイ素及びセリウムから選ばれる1種の金属を含んでいてもよいフタロシアニン化合物及び(ハ)置換されていてもよいポルフィリン化合物から選ばれる1以上の環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する樹脂組成物である。
【0096】
本発明に係る樹脂組成物において、置換されていてもよいとは、置換基を有していてもよいことを意味し、かかる「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素等)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホ基、スルフィノ基、メルカプト基、ホスホノ基、例えばアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、又は他の種々の異性体であるペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基又はエイコシル基等)、ヒドロキシアルキル基(例えばヒドロギシメチル基、ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシイソプロピル基、1−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、1−ヒドロキシ−イソブチル基、1−ヒドロキシ−第2ブチル基又は1−ヒドロキシ−第3ブチル基等)、ハロゲノアルキル基(例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,44−トリフルオロブチル、5,5,5−トリフルオロペンチル又は6,6,6−トリフルオロヘキシル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、クロチル、2−ペンテニル又は3−ヘキセニル等)、シクロアルケニル基(例えば2−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、2−シクロペンテニルメチル又は2−シクロヘキセニルメチル等)、アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ペンチニル又は3−ヘキシニル等)、オキソ基、チオキソ基、アミジノ基、イミノ基、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ等)、例えばフェニル、ビフェニル等の単環式あるいは縮合環式炭化水素基、例えば、1−アダマンチル基、2−ノルボルナニル等の架橋環式炭化水素基などの炭化水素基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ又はヘキシルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ又はヘキシルチオ等)、カルボキシル基、アルカノイル基(例えば、ホルミル;アセチル、プロピオニル、ブチリル又はイソブチリル等)、アルカノイルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ又はイソブチリルオキシ等のアルキル−カルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル又はブトキシカルボニル等)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、チオカルバモイル基、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル又はエチルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル又はブチルスルホニル等)、スルファモイル基、モノ−アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル又はエチルスルファモイル等)、ジ−アルキルスルファモイル基(例えば、ジメチルスルファモイル又はジエチルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル又はナフチルスルファモイル等)、アリール基(例えば、フェニル又はナフチル等)、アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ又はナフチルオキシ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ又はナフチルチオ等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル又はナフチルスルフィニル等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル又はナフチルスルホニル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル又はナフトイル等)、アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ又はナフトイルオキシ等)、ハロゲン化されていてもよいアルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ又はトリフルオロアセチルアミノ等)、置換基を有していてもよいカルバモイル基(例えば、式−CONR3R4(式中、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基若しくは置換基を有していてもよい複素環基を示すか、又はR3とR4は隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)で表される基)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、テトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール又はイミダゾール等)、置換基を有していてもよいウレイド基(例えば、式−NHCONR3R4(式中、R3及びR4は、前記と同意義を示す)で表される基等)、置換基を有していてもよいカルボキサミド基(例えば式−NR3COR4(式中、R3及びR4は、前記と同意義を示す)で表される基)、置換基を有していてもよいスルホナミド基(例えば、式−NR3SO2R4(式中、R3及びR4は、前記と同意義を示す。)で表される基等)、置換基を有していてもよい水酸基若しくはメルカプト基、置換基を有していてもよい複素環基(例えば、環系を構成する原子(環原子)として、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等から選ばれたヘテロ原子1〜3種を少なくとも1個含む芳香族複素環基(例えば、ピリジル、フリル、チアゾリル等)、又は飽和あるいは不飽和の脂肪族複素環基等)、又はこれら置換基を化学的に許容される限り置換させた置換基等が挙げられる。
【0097】
以下、各構成要件の好ましい実施態様について説明する。
【0098】
上述の(a)に示す置換されていてもよい銅フタロシアニン結晶は、銅が含まれているフタロシアニン化合物の結晶であればどのようなものでもよく、本発明において、特に限定されない。銅フタロシアニン結晶と称される公知のものでもよく、例えば、下記の式
【化39】

で表される化合物の結晶等が挙げられる。
【0099】
本発明においては、上記化合物を化学的に許容される限り置換させた銅フタロシアニン置換体の結晶も銅フタロシアニン結晶として用いることができる。例えば、ハロゲン化銅フタロシアニン等が挙げられる。前記ハロゲン化銅フタロシアニンは、銅フタロシアニンのベンゼン環の水素が塩素で置換されたものが例示される。さらにハロゲンは、臭素、フッ素又は沃素であってもよい。ハロゲン以外の置換基としては、例えば、メチル、エチル等のアルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0100】
上述の(b)で示される置換されていてもよい、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ケイ素及びセリウムから選ばれる1種の金属を含んでいてもよいフタロシアニン化合物は、金属を含まないフタロシアニン基を有する化合物、又は亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ケイ素及びセリウムから選ばれる1種の金属を含むフタロシアニン基を有する化合物であればどのようなものでもよく、本発明において、特に限定されない。「金属を含まないフタロシアニン基を有する化合物」として、例えば下記の式
【化40】

で表される中心に金属を有さないメタルフリーフタロシアニン等が挙げられる。
【0101】
「亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、ングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ケイ素及びセリウムから選ばれる1種の金属を含むフタロシアニン基を有する化合物」として、例えば、下記の式で示される
【0102】
【化41】

【0103】
(式中、Mは亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ケイ素及びセリウムから選ばれる1種の金属を示す。)で表される中心に金属を有するフタロシアニン化合物等が挙げられる。
【0104】
本発明においては、フタロシアニン化合物として、フタロシアニン化合物と称される公知のものを用いてよく、例えばメタルフリーフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、バナジウムフタロシアニン、カドミウムフタロシアニン、アンチモンフタロシアニン、クロムフタロシアニン、ゲルマニウムフタロシアニン、鉄フタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、ジアルキルフタロシアニン、テトラメチルフタロシアニン又はテトラフェニルフタロシアニン等を用いてよい。本発明においては、フタロシアニン化合物として、例えば製品名メタルフリーフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン又はスズフタロシアニン(山陽色素株式会社製)等の市販品を用いることができる。また、本発明においては、イソインドール環を5個持つウラニウム錯体(スーパーフタロシアニン)やイソインドール環3個からなるホウ素錯体も上記フタロシアニン化合物として用いることができる。フタロシアニン化合物を化学的に許容される限り置換させたフタロシアニン置換体もフタロシアニン化合物として好適に用いることができる。例えば、ハロゲン化フタロシアニン等は緑の顔料として多く用いられており、市販品を用いることができる。ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素又は沃素等であってもよい。ハロゲン以外の置換基としては、例えばメチル、エチル等のアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0105】
銅フタロシアニン及びフタロシアニン化合物の多くは、規則的な分子配列による結晶を形成し得る。生成条件によるいくつかの結晶形を取り得る。例えば、銅フタロシアニンは、カードを積み重ねるように1方向に配列し、この列が束になって結晶を作り得る。この積み重なり方(軸に対する分子平面の傾斜角、分子間距離)と、列の配列の仕方とが異なって、多種の結晶型を取り得る。銅フタロシアニン結晶では、例えばアルファ型、ベータ型、ガンマ型、デルタ型、シグマ型、イプシロン型、パイ型、ロー型、タウ型、カイ型又はR型等の結晶型を取り得る。本発明においては、銅フタロシアニン結晶がベータ型又はイプシロン型と呼ばれる結晶であることが、結晶性ポリエステルの核剤能力が高いという理由で好ましい。上記銅フタロシアニン結晶は青の顔料として多く用いられており、様々な結晶型のものを市販品から入手できる。
【0106】
上述の(c)で示される置換されていてもよいポルフィリン化合物は、ポルフィリン基を含む化合物であればどのようなものでもよく、本発明において、特に限定されない。また、ポルフィリン化合物と称される化合物であってよく、例えば、下記の式
【0107】
【化42】

で表される化合物、
【0108】
下記の式
【化43】

(式中、Rは置換されていてもよい炭化水素基又はハロゲン等を示す。)で表されるクロロフィル化合物又は下記の式
【化44】

(式中、X、Y及びZは同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基又はハロゲン等を示す。)で表されるヘミン化合物又はそのカルボキシル基におけるエステル等が挙げられる。
【0109】
「置換されていてもよい炭化水素基」は、上記した1以上の置換基で置換された炭化水素基又は置換されていない炭化水素基であれば特に限定されない。「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基又は架橋環式炭化水素基等が挙げられる。「アルキル基」としては、直鎖若しくは分枝状のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソアミル、tert−アミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、n−ドコシル又はn−テトラコシル等)などが挙げられる。「アルケニル基」としては、例えばビニル、プロペニル(1−、2−)、ブテニル(1−、2−、3−)、ペンテニル、オクテニル又はブタジエニル(1,3−)等の直鎖若しくは分枝状のアルケニル基などが挙げられる。「アルキニル基」としては、例えばエチニル、プロピニル(1−、2−)、ブチニル(1−、2−、3−)、ペンチニル、オクチニル又はデシニル等の直鎖若しくは分枝状のアルキニル基などが挙げられる。「シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル,シクロブチル,シクロペンチル,シクロヘキシル,シクロヘプチル又はシクロオクチル等が挙げられる。「アリール基」としては、例えばフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントリル、フェナントリル又はアセナフチレニル等の単環式又は縮合多環式基などが挙げられる。「架橋環式炭化水素基」としては、例えば1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−ノルボルナニル又は5−ノルボルネン−2−イル等が挙げられる。これら環状化合物は、化学的に許容される範囲で、置換基が導入されていてもよく、例えば、ハロゲン化物やスルホン化物などであってよい。
【0110】
本発明においては、上述した環状化合物が、粒径約100μm以下であることが好ましく、粒径約10μm以下の粒子であることがより好ましい。また、本発明においては、環状化合物は、結晶構造を取り得るポリエステル用核剤としても商品価値がある。その場合は、環状化合物は適当な溶媒等の希釈剤で希釈されていてもよい。
【0111】
結晶構造を取り得るポリエステルは、エステル結合を少なくとも1個有する高分子化合物であって、結晶構造を取り得るものであればどのようなものでもよく、公知のものであってよい。「結晶構造を取り得るもの」とは、結晶構造を一部でも取り得るものであれば特に限定されず、全ての分子鎖が規則正しく配列できるものでなくてもよい。たとえ、全ての分子鎖に規則性がなくても、一部の分子鎖セグメントが配向可能であればどのようなものでもよい。したがって、結晶構造を取り得るポリエステルが直鎖状であることが好ましいが、分岐状等であってもよい。また、本発明においては、結晶構造を取り得るポリエステルが生分解性ポリエステルであることが好ましい。このような生分解性ポリエステルとしては、例えば微生物によって代謝されるポリエステル系の樹脂を挙げることができ、中でも成形性、耐熱性、耐衝撃性をバランスよく有している脂肪族系ポリエステルを用いるのが好ましい。
【0112】
脂肪族系ポリエステルとしては、例えばポリシュウ酸、ポリコハク酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルなどが挙げられる。中でも、脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを用いるのがさらに好ましい。ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルとしては、具体的には、乳酸、リンゴ酸、グルコール酸等のオキシ酸の重合体又はこれらの共重合体が挙げられ、中でも、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルを用いることが特に好ましく、さらにヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸が最も好ましい。
【0113】
本発明で用いられる生分解性ポリエステルは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクチド法、多価アルコールと多塩基酸との重縮合、又は分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合などの方法により製造することができる。
【0114】
特に、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルは通常、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合による方法、いわゆるラクチド法により、また、ラクチド法以外では、乳酸の直接脱水縮合法により得ることができる。ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを製造するための触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物を例示することができ、中でも錫系触媒、アルミニウム系触媒を用いるのが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナートを用いるのが特に好適である。
【0115】
ラクチド開環重合により得られるポリL−乳酸が、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルの中でも好ましい。かかるポリL−乳酸は加水分解されてL−乳酸になり、かつその安全性も確認されているためである。本発明で使用するポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルはこれに限定されることはなく、その製造に使用するラクチドについてもL体に限定されない。本発明においては、生分解性ポリエステルとして、例えば製品名H100J(三井化学株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
【0116】
本発明では、本発明に係る樹脂組成物に、さらに樹脂組成分として必ずしも結晶構造を取らないポリエステルやその他の生分解性樹脂等が含まれていてもよい。このような生分解性樹脂としては、例えばセルロース、デンプン、デキストラン又はキチン等の多糖誘導体、例えばコラーゲン、カゼイン、フィブリン又はゼラチン等のペプチド等、例えばポリアミノ酸、例えばポリビニルアルコール、例えばナイロン4又はナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド、例えば必ずしも結晶構造を取らないとして知られているポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノン等のポリエステル等が挙げられ、多くの種類があり、本発明でも用いることが可能である。すなわち生分解性ポリマは自然界や生体の作用で分解して、同化される有機材料であり、環境に適合した理想的な材料であり、本発明の目的を損なわなければ、どのような材料でもかまわない。
【0117】
本発明で用いられる生分解性樹脂は、公知の方法に従って製造することができる。生分解性樹脂として市販品を使用してもよい。前述したような、ラクティ(島津製作所株式会社製)、レイシア(三井化学株式会社製)又はNature Works(Cargill Dow Polymer LLC 株式会社製)等が挙げられる。
【0118】
本発明に係る樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂のうち1種類のみが含有されていてもよいし、2種類以上の生分解性樹脂が含有されていてもよい。2種類以上の生分解性樹脂が含有されている場合、それらの樹脂は共重合体を形成していてもよいし、混合状態をとっていてもよい。
【0119】
なお、本発明に係る樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂以外の樹脂が含有されていてもよい。例えば、生分解性を有しない合成樹脂等が本発明に係る樹脂組成物に含まれていてもよい。前記樹脂として、例えば、分解速度を緩和したポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0120】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに無機フィラーが添加されていてもよい。無機フィラーとしては、公知のものであってよく、例えばタルク、アルミナ、シリカ、マグネシア、マイカ又はカオリン等が挙げられる。中でもタルクが、本発明で用いられる環状化合物と併用することにより、互いにその効果を打ち消すことなく、結晶化を促進させる効果があることから、より好ましく使用される。
【0121】
無機フィラーは、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、約1〜50重量部添加されていることが好ましい。上記範囲であると、得られる樹脂組成物が脆弱化を避けることができる。
【0122】
ポリエステルの加水分解の抑制は、成形品の使用における長期信頼性の点で重要である。したがって、本発明に係る樹脂組成物は、さらに加水分解抑制剤が添加されていることが好ましい。かかる加水分解抑制剤としては、生分解性樹脂の加水分解を抑制することができれば、特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂中の活性水素と反応性を有する化合物が挙げられる。前記化合物を加えることで、生分解性樹脂中の活性水素量が低減し、活性水素が触媒的に生分解性樹脂を構成する高分子鎖を加水分解することを防ぐことができる。ここで、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。より具体的には、生分解性樹脂中の例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、又はアミド結合:−NHCO−等における水素が挙げられる。
【0123】
加水分解抑制剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物などが適用可能である。特にカルボジイミド化合物が生分解性高分子化合物と溶融混練でき、少量の添加で生分解性樹脂の加水分解をより抑制できるために好ましい。
【0124】
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド又はナフチルカルボジイミド等を例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0125】
イソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又は3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0126】
オキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)又は2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0127】
上述のような加水分解抑制剤は、公知の方法に従って容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することができる。
【0128】
本発明で用いる加水分解抑制剤の種類又は添加量により、本発明に係る樹脂組成物の生分解速度を調整することができるので、目的とする製品に応じ、配合する加水分解抑制剤の種類及び配合量を決定すればよい。具体的には、加水分解抑制剤の添加量は、樹脂組成物の全重量に対して、約5重量%以下、好ましくは約1重量%程度である。また、前記加水分解抑制剤は、上記化合物を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
【0129】
本発明に係る樹脂組成物には、結晶化及び結晶性を著しく妨げない限りにおいて、所望により、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、充填剤又は抗菌抗カビ剤など、従来公知の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0130】
本発明の樹脂組成物は、上記した環状化合物又はその混合物と結晶構造を取り得るポリエステルと、さらに所望によりその他の成分を混合することにより製造される。本発明に係る樹脂組成物を原料となる各成分から製造するより好ましい方法としては、原料である生分解性樹脂、所望により無機フィラーや加水分解抑制剤などを混合し、押出機を用いて溶融混練するという方法が挙げられる。このほか、上記製造方法としては、いわゆる溶液法を用いることもできる。ここでいう溶液法とは、各成分を分散溶解できる任意の溶媒を用いて、原料となる各成分及び溶媒を良く撹拌し、スラリーを作り、溶媒を乾燥除去する方法である。本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、これら制限されるものではなく、これら以外の従来知られている方法を用いることができる。
【0131】
本発明では、生分解性ポリエステルの中に、上述した環状化合物が、均一に微分散されていることが重要である。均一分散のためには、従来公知の方法を用いればよい。例えば、顔料を樹脂に分散させ着色する方法が採用され得る。また、例えば、3本ロールを用いること等が挙げられる。あるいは、単純な加熱混練を複数回も繰返すことも挙げられる。
【0132】
本発明においては、樹脂組成物中、上記した環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、約0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、約0.01〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。また、本発明においては、上記樹脂組成物が結晶化率約40〜100%の範囲内であることが好ましく、結晶化時間約0〜200秒の範囲内であることが好ましく、80℃における弾性率約50〜5000MPaの範囲内であることが好ましい。結晶化率及び結晶化時間は、それぞれ後述する実施例を参照にして求められる。弾性率は、前述した測定法と同様の方法で測定されるので、その詳細な説明は省略する。
【0133】
この樹脂組成物も、前述した樹脂組成物と同様の種々の成形品に広く使用することができる。すなわち、本発明に係る樹脂組成物からなる成形品は、樹脂組成物の結晶性が高いため、剛性に優れており、さらに上記のように場合によっては透明性も高いので、そのような剛性及び透明性などの要求の高い製品として好適に使用される。
【実施例】
【0134】
次に、本発明に係る樹脂組成物のいくつかの具体的な実施例を説明する。
〔実施例1〕
この実施例1は、結晶構造を取り得るポリエステルとして、ポリ乳酸であるH100J(三井化学株式会社製)を用いた。このポリ乳酸は、分子量20万であった。
【0135】
核剤として作用する環状化合物としてはPigment Yellow 109(チバファインケミカル株式会社製、IRGAZIN Yellow 2GLTE)を用いた。この比表面積は30m/gである。
【0136】
ポリ乳酸100重量部に対して、この核剤が0.5重量部になるように混合し、加熱混練した後、ペレット化し、実施例1の成形用樹脂組成物を得た。
【0137】
この成形用樹脂組成物の結晶性を、特開平10−158369号公報に記載の方法に従って、示差走査熱量(DSC)測定によって評価した。ペレットから3〜4mgを切り取りアルミパンに入れた。試料をいったん200℃まで加熱し、50℃/分で0℃まで冷却させた後、20℃/分で昇温しながら本測定を行った。100℃付近の結晶化による発熱量と160℃付近の融解による吸熱量とから、次式で定義する結晶化率を求めた。
【0138】
結晶化率(%)=(1−結晶化の発熱量/融解の吸熱量)×100
【0139】
また、偏光顕微鏡による撮影によって、全体の結晶化速度(結晶化時間)を計測した。薄いガラス(0.1mm程度)に樹脂組成物を少量乗せ、ホットステージで200℃に加熱し、さらに薄いガラスでおさえつけてカバーし、観察試料とした。200℃に加熱された試料を、90℃/分で降温させて、120℃にして保持し結晶化させた。その様子をクロスニコルで観察した。ポリ乳酸の結晶は複屈折を有するため、クロスニコルで結晶成長を観察できる。結晶成長に伴い、観察視野は全体として次第に明るくなり、ある一定レベルで観察視野の明るさが飽和する。
【0140】
観察視野を10倍の対物レンズと白黒1/3インチのCCDビデオカメラで撮影し、およそ600×450μmの範囲を撮影し(およそ640x480pixelの10bitでデジタイジング)、パソコンの画像取り込みボードに取り込み、視野中央のおよそ378x283μmの領域の明るさの平均を求め(以下、単に明るさと呼ぶ)、これを時間に対してプロットした。120℃になった時間をゼロとし、基準とした。結晶の複屈折を利用するため、観察条件として、観察視野内全般に多数の球晶が確認されることが肝要である。もし観察視野内に球晶が数少ないと(高倍率や、平均明るさ算出の設定領域が小さいと)、明るさの変化が時間に対し不均一になるおそれがある。
【0141】
結晶化時間は、次のようにして求めた。すなわち、図1に示すように飽和の1/2あたりの明るさの立ち上がりを直線で補外1し、また飽和レベルを直線で水平補外2し、それら交点の時間4を読み取ることにより、結晶化時間3が求められる。
【0142】
この実施例で得られた樹脂組成物の上記方法により求められた結晶化率及び結晶化時間を以下の表1に示す。
〔実施例2〕
実施例2は、結晶構造を取り得るポリエステルとして、ポリ乳酸であるH100J(三井化学株式会社製)を用いた。このポリ乳酸は、分子量20万であった。
【0143】
環状化合物としてはPigment Yellow 110(チバファインケミカル株式会社製、CROMOPHTAL Yellow 2RLP)を用いた。この比表面積は49m/gである。
【0144】
ポリ乳酸100重量部に対して、この核剤が0.5重量部になるように混合し、加熱混練した後、ペレット化し、実施例2の成形用樹脂組成物を得た。
【0145】
実施例1と同様に評価し、その結果を下記の表1に合わせて示す。
〔比較例1〕
比較例1として、ポリ乳酸として前述のH100Jを用い、先の実施例と同条件の作製過程を経て、すなわち加熱混練しペレット化し、ポリ乳酸だけの樹脂組成物を得た。これを、上記と同様に評価し、その結果を下記の表1に示した。
〔比較例2〕
比較例2は、同様に、ポリ乳酸100重量部とステアリン酸カルシウム(関東化学株式会社製)0.5重量部の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を同様にして評価した。結果は下記の表2に合わせて示す。
【0146】
その結果、長鎖カルボン酸の塩はポリ乳酸に対して核剤の効果があると言われており、確かに結晶化率は、少しは改善された。
〔比較例3〕
比較例3は、同様に、ポリ乳酸100重量部とビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(新日本理化株式会社製ゲルオールMD)0.5重量部の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を上記実施例と同様にして評価した。結果は下記の表1に合わせて示す。
【0147】
【表1】

【0148】
ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトールは先行技術によって核剤として提案されているものである。しかし、今回の一連の評価においては、その効果は非常に小さかった。
【0149】
なお、添加量を2重量部にしても、顕著な効果は見られなかった。
【0150】
次に、本発明に係る他の樹脂組成物のいくつかの具体的な実施例を説明する。
〔実施例3〕
実施例3は、結晶構造を取り得るポリエステルとして、ポリ乳酸であるH100J(三井化学株式会社製)を用いた。このポリ乳酸は、分子量20万であった。
【0151】
核剤として使用する環状化合物としてはPigment Blue 15:3(チバファインケミカル株式会社製、IRGALITE Blue GBP)を用いた。
【0152】
ポリ乳酸100重量部に対して、この核剤が0.5重量部になるように混合し、加熱混練した後、ペレット化し、実施例3Aの成形用樹脂組成物を得た。同様にこの核剤が0.1重量部、0.05重量部の実施例3B及び3Cの成形用樹脂組成物を得た。
【0153】
この成形用樹脂組成物の結晶性を、特開平10−158369号公報に記載の方法に従って、示差走査熱量(DSC)測定によって評価した。ペレットから3〜4mgを切り取りアルミパンに入れた。試料はいったん200℃まで加熱し、50℃/分で0℃まで冷却させた後、20℃/分で昇温しながら本測定を行った。100℃付近の結晶化による発熱量と160℃付近の融解による吸熱量とから、次式で定義する結晶化率を求めた。
【0154】
結晶化率(%)=(1−結晶化の発熱量/融解の吸熱量)×100
【0155】
結晶性樹脂の場合、結晶化の速度を速くできれば、射出成形のとき成形時間を短縮することができ、したがってこれは生産性を向上させ、生産コストを改善できる。また、成形時間が同一の場合、結晶化の速度が速ければ、成形品の結晶化度はより高いものが製造でき、剛性が改善できる。
【0156】
かかる成形性の改善を示す指標として、偏光顕微鏡による撮影によって、全体の結晶化速度(結晶化時間)を計測した。簿いガラス(0.1mm程度)に樹脂組成物を少量乗せ、ホットステージで200℃に加熱し、さらに薄いガラスでカバーし、サンドイッチ状態にして観察試料とした。この際、必要に応じ、0.1mmの金属円環をガラス間のスペーサに用いた。200℃の試料は、90℃/分で降温させて、120℃にして保持し結晶化させる。その様子をクロスニコルで観察した。ポリ乳酸の結晶は複屈折を有するため、クロスニコルで結晶成長を観察できる。結晶成長に伴い、観察視野は全体として次第に明るくなり、ある一定レベルで観察視野の明るさが飽和する。
【0157】
観察視野を10倍の対物レンズと白黒1/3インチのCCDビデオカメラで撮影し、およそ600×450μmの範囲を撮影し(およそ640x480pixelの10bitでデジタイジング)、パソコンの画像取り込みボードに取り込み、視野中央のおよそ378x283μmの領域の明るさの平均を求め(以下、単に明るさと呼ぶ)、これを時間に対してプロットした。120℃になった時間をゼロとし、基準とした。結晶の複屈折を利用するため、観察条件として、観察視野内全般に多数の球晶が確認されることが肝要である。もし観察視野内に球晶が数少ないと(高倍率や、平均明るさ算出の設定領域が小さいと)、明るさの変化が時間に対し不均一になるおそれがある。
【0158】
結晶化時間は、次のようにして求めた。すなわち、前述した図1に示すように飽和の1/2あたりの明るさの立ち上がりを直線で補外1し、また飽和レベルを直線で水平補外2し、それら交点の時間4を読み取ることにより、結晶化時間3が求められる。
【0159】
上記実施例3で得られた樹脂組成物の上記方法により求められた結晶化率及び結晶化時間を下記の表2に示す。
〔実施例4〕
次に、実施例4は、実施例3Aにおいて、IRGARITE Blue GBP 0.5重量部の代わりにPigment Blue 15(チバファインケミカル株式会社製、IRGARITE Blue BLPO)0.5重量部を用いた以外は、実施例3Aと同様にして成形用樹脂組成物を得た。
〔実施例5〕
実施例5は、実施例3Aにおいて、IRGARITE Blue GBP 0.5重量部の代わりにPigment Blue 15:6(大日本インキ株式会社製、FASTROGEN Blue EP−7)0.5重量部を使用した以外は、実施例3Aと同様にして成形用樹脂組成物を得た。
〔比較例4〕
比較例4は、ポリ乳酸として前述のH100Jを用い、先の実施例3〜5と同条件の作製過程を経て、すなわち加熱混練しペレット化し、ポリ乳酸だけの樹脂組成物を得た。これを、上記と同様に評価し、その結果を下記の表2に示す。
〔比較例5〕
比較例5は、同様に、ポリ乳酸100重量部とステアリン酸カルシウム(関東化学株式会社製)0.5重量部の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を同様にして評価した。結果は、表2に合わせて示す。
【0160】
その結果、長鎖カルボン酸の塩はポリ乳酸に対して核剤の効果があると言われており、確かに結晶化率は、少しは改善された。
〔比較例6〕
同様に、ポリ乳酸100重量部とビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(新日本理化株式会社製ゲルオールMD)0.5重量部の樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を上記実施例と同様にして評価した。結果は下記の表2に合わせて示す。
【0161】
ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトールは先行技術によって核剤として提案されているものである。しかし、今回の一連の評価においては、その効果は非常に小さかった。
【0162】
なお、添加量を2重量部にしても、顕著な効果は見られなかった。
【0163】
【表2】

【0164】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明に係る樹脂組成物は、結晶化度が高いため、剛性に優れ、成形性も優れている。さらに、本発明に係る樹脂組成物は、透明性を向上することができるので、広い範囲に適用可能である。さらに、本発明に係る樹脂組成物は、廃棄後は、自然環境中で分解されるので、地球環境保全の上でも好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化1】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
上記環状化合物が、3,3’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ジイミノ−ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 109)、あるいは、3,3’−(1,4−フェニレンジイミノ)ビス−4,5,6,7−テトラクロロ−1H−イソインドール−1−オン(Pigment Yellow 110)であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記環状化合物が、粒径10μm以下の粒子であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記結晶構造を取り得るポリエステルが、生分解性ポリエステルであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
上記生分解性ポリエステルが、ポリ乳酸であることを特徴とする請求の範囲第4項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
上記樹脂組成物は、成形用であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
上記環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記栽の樹脂組成物。
【請求項8】
上記環状化合物の配合割合が、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに無機フィラーが添加されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項10】
上記無機フィラーがタルクであることを特徴とする請求の範囲第9項記載の樹脂組成物。
【請求項11】
上記無機フィラーの配合割合が、樹脂組成物100重量部に対して、1〜50重量部の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第9項記載の樹脂組成物。
【請求項12】
さらに加水分解抑制剤が含有されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項13】
上記加水分解抑制剤が、カルボジイミド基を有する化合物を含有している加水分解抑制剤であることを特徴とする請求の範囲第12項記載の樹脂組成物。
【請求項14】
結晶化率が40〜100%の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項15】
結晶化時間が0〜200秒の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項16】
80℃における弾性率が50〜5000MPaの範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項17】
次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化2】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを含有する樹脂組成物からなる成形品。
【請求項18】
成形品は、電気又は電子機器の筐体であることを特徴とする請求の範囲第17項記載の成形品。
【請求項19】
次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化3】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物と、結晶構造を取り得るポリエステルとを混合し、ついで加熱混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項20】
次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化4】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物を含有することを特徴とするポリエステル用核剤。
【請求項21】
次式
A1−B−A2
(式中、A1及びA2は同一又は異なって式
【化5】

で示される基を表し、Pは置換されていてもよいベンゼン環を示し、Bは置換されていてもよい二価の炭化水素基を表す)で示される環状化合物の結晶構造を取り得るポリエステル用核剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13663(P2010−13663A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236721(P2009−236721)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【分割の表示】特願2004−534185(P2004−534185)の分割
【原出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】