説明

樹脂製品の無電解めっき方法

【課題】 無電解めっきのための前処理時間が短縮できて、めっき層と樹脂製品表面との密着性が良好であり、めっき層と樹脂製品表面との密着性のバラツキを小さくすることができる樹脂製品の無電解めっき方法を提供する。
【解決手段】
樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、(1)半導体粉末を懸濁させた液に浸漬し、該液中で光を照射することにより、前記樹脂製品の表面に極性基を形成させ、該極性基が形成された表面に無電解めっきを行う、又は(2)水又は水溶液を介して紫外線を照射して処理を行い、その後に無電解めっきを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっきの際に前処理時間を短くすることができて、樹脂製品の表面と無電解めっき層との密着性が良好で、密着性のバラツキを改善することができる、樹脂製品の無電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品に導電性や金属光沢を付与する方法として、樹脂製品に真空中で金属を蒸着する方法、金属をスパッタリングする方法、あるいは無電解めっきする方法等が知られている。無電解めっきとは、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させ、素材表面に金属被膜を形成させる方法をいい、電力によって電解析出させる電気めっきと異なり樹脂等の絶縁体にも金属被膜を形成させることができる。
【0003】
ところが、無電解めっき処理によって形成されためっき被膜は、素材表面に対する付着強度が十分でないという問題がある。そのため、無電解めっきをする場合、その前処理をする必要があり、例えば、樹脂製品の表面を化学的にエッチング処理を行う表面粗化、極性基付与、及び触媒化等の処理をして、無電解めっきを行うという方法が知られている。
【0004】
ところで、特許文献1には、半導体粉末を懸濁させた液に樹脂製品を浸漬し、該液中で光を照射することにより、樹脂製品の表面に極性基を形成させ、該極性基が形成された表面に無電解めっきを行う方法、及び水又は水溶液を介して紫外線を照射して処理を行った後に無電解めっきを行う方法が記載されている。この方法によれば、従来問題となっていた環境汚染や、廃液処理等の問題がなく、めっき層と樹脂製品表面とが良好に密着しているめっき製品が得られる。
【0005】
しかし、この方法において、前処理時間の短縮化、めっき層と樹脂製品表面との密着性のさらなる向上、めっき層と樹脂製品表面との密着性のバラツキを小さくすることができる樹脂製品の無電解めっき方法が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2003/021005パンフレッド
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、無電解めっきのための前処理時間が短縮できて、めっき層と樹脂製品表面との密着性が良好であり、めっき層と樹脂製品表面との密着性のバラツキを小さくすることができる樹脂製品の無電解めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、第1に、樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、半導体粉末を懸濁させた液に浸漬し、該液中で光を照射することにより、前記樹脂製品の表面に極性基を形成させ、該極性基が形成された表面に無電解めっきを行うことを特徴とする樹脂製品の無電解めっき方法である。
第2に、樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、水又は水溶液を介して紫外線を照射して処理を行い、その後に無電解めっきを行うことを特徴とする樹脂製品の無電解めっき方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無電解めっき方法によれば、無電解めっきのための前処理時間を短縮できて、めっき層と樹脂製品表面との密着性がさらに良好であり、めっき層と樹脂製品表面との密着性のバラツキを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。
(1)第1の発明においては、まず、樹脂製品に大気下で紫外線を照射して処理を行い、半導体粉末を懸濁させた液に浸漬し、該液中で光を照射して、前記樹脂製品の表面に極性基を形成させ、該極性基が形成された表面に無電解めっきを行う。
【0011】
この発明で樹脂製品を構成している樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)及びポリスチレン樹脂(PS樹脂)等が挙げられる。また、その形状はなんら限定されないが、樹脂を成形したもの、例えば板状、球状、微粒子状等であってもよい。
【0012】
紫外線照射は、大気下で20〜100℃、好ましくは40〜60℃で、波長400nm以下、好ましくは185〜260nmの紫外線を照射する。照射時間は0.1〜10分間、好ましくは0.5〜3分間行う。光源としては合成石英ランプ、普通石英ランプ、オゾンレスランプ等が用いられる。
【0013】
樹脂製品の紫外線照射処理を行った後、これを半導体粉末を懸濁させた液に浸漬し、該液中で光を照射することで樹脂製品表面に極性基を形成させ、極性基を形成させた表面に、定法により触媒付与及び活性化し、次いで無電解めっきを行う。
【0014】
半導体粉末としては、光電極性を持つ半導体の粉末である。半導体の例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、リン化ガリウム、炭化ケイ素、酸化インジウム及び酸化バナジウム等が好ましいものとして挙げられる。より好ましくは、アナターゼ型二酸化チタンである。
【0015】
また、半導体粉末はいずれの形状であっても用いることができる。粉末の粒径は、0.01〜1000μmのものが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜5μmがさらに好ましい。特にアナターゼ型二酸化チタンの場合、粒径が0.01〜3μmであることが好ましい。
【0016】
半導体粉末を縣濁させる液には、半導体粉末が0.005〜99重量%含まれることが好ましい。含まれる半導体粉末が0.005重量%未満であると、光照射処理の際に、不導体表面に極性基が十分に形成されない場合がある。半導体が99重量%を越えるとこれを均一に分散させることが困難となる場合がある。より好ましくは、0.01〜20重量%である。
【0017】
さらに、半導体粉末には、白金、パラジウム等の金属を半導体に対して0.01〜10重量%担持させてもよい。半導体粉末に白金、パラジウム等の金属を担持させたものを用いると樹脂製品の表面に極性基がより効果的に付与される。
【0018】
この発明で用いる半導体粉末を懸濁させるための液は、水性又は非水性の液であり、半導体粉末を懸濁させるための水性の液としては、水、硫酸水溶液、硝酸水溶液等が挙げられ、スルフォン基やニトロ基等を含むものが好ましい。硫酸水溶液又は硝酸水溶液の濃度は、0.01〜99重量%が好ましく、0.01〜20重量%がより好ましい。したがって、例えば、溶液中に硝酸が含まれると、ニトロ基が付与されることで、安定であった樹脂表面が不安定となり、その後形成されためっき層が強固に密着するので、好ましい。また、非水性の液としてはアルコール類、エーテル類が挙げられる。
【0019】
また、半導体粉末を懸濁させるための液には、光増感剤を液全体に対して1〜50重量%となるように加えてもよい。光増感剤を加えることによって樹脂製品の表面に極性基が効果的に付与される。光増感剤としては、パラジウム、ニッケル、銅、鉄、金、白金等の各イオンが挙げられ、中でも鉄イオンが好ましい。
【0020】
また、照射する光は、紫外光又は可視光が好ましく、特に紫外光の照射が好ましい。紫外光により樹脂表面の結合が開裂するのでめっき層が安定する。紫外光とは、紫外線とも呼ばれるもので、4〜400nmの波長の光を意味する。また、可視光とは、可視光線とも呼ばれるもので、400〜750nmの波長の光を意味する。光源の例としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、エキシマレーザー等の各種レーザー等、バリア放電ランプ、誘電体バリア放電ランプ、マイクロ波無電極放電ランプ、過度放電ランプ等を挙げることができる。
【0021】
この方法では、半導体粉末を懸濁させた液に樹脂製品を浸漬し、光を照射することにより、樹脂製品表面に極性基が形成される。光照射時間は用いる樹脂製品や半導体粉末の種類により適宜選択されるが、1〜180分間であることが好ましい。この際、半導体粉末の光電気化学反応により、樹脂製品表面が酸化され、懸濁液中の極性基が樹脂製品表面に付与されて、そこに極性基が形成され、それにより化学結合が著しく増大し、めっき被膜との密着を強固にするものである。特に水銀灯を5〜30分間照射することが好ましい。光を照射する際に、樹脂製品表面に吸着した半導体粉末を除去するために、一定時間ごとに超音波振動等を行うことがより好ましい。
【0022】
樹脂製品表面に形成される極性基として、例えば、カルボニル基(C=O)、カルボキシル基(COOH)等が挙げられる。半導体粉末として、例えばアナターゼ型二酸化チタンを用いた場合には、水との化学反応により生じた水酸化物ラジカルから反応が進行し、親水性をもつカルボニル基が樹脂製品の表面に形成され、樹脂製品表面の濡れ性が向上する。極性基は、樹脂製品表面に常法により任意の層を形成させてその上に形成させてもよいが、樹脂製品表面に直接形成することが好ましい。
その後、極性基が形成された樹脂製品表面に、無電解めっきを従来の無電解めっき処理と同様に行う。
【0023】
(2)第2の発明である樹脂製品の無電解めっき方法では、樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、水又は水溶液を介して紫外線を照射して処理を行い、その後に従来の無電解めっき処理と同様にして無電解めっきを行う。
【0024】
樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行うには、前記(1)に記載した樹脂製品を用い、前記(1)に記載したようにして行う。その後、樹脂製品に水又は水溶液を介して紫外線を照射する。樹脂製品に水又は水溶液を介して紫外線を照射する際、熱線は先ず水又水溶液に吸収され、あるいは水の蒸発によって樹脂製品が冷却されるので、樹脂製品の過熱が防止され熱変形を防止することができる。また、紫外線の照射量が多くなっても、めっき被膜の付着強度が低下するような不具合がない。これは、水の水酸基によって樹脂表面がある程度酸化されて活性化するためと考えられる。
【0025】
大気下で紫外線を照射して処理を行った後、樹脂製品に水又は水溶液を介して紫外線を照射するには、樹脂製品の少なくとも照射表面を水又は水溶液で濡らした状態として紫外線を照射することもできるが、樹脂製品を水又は水溶液中に浸漬した状態で、その容器の外部から紫外線を照射するのが好ましい。このようにすれば、十分な水量を確保できるので、樹脂製品の昇温をより抑制でき熱変形をさらに防止することができる。
【0026】
水又は水溶液を介して照射される紫外線は、紫外領域にある電磁波であれば用いることができるが、樹脂製品の表面を活性化させるという観点からは、波長が50〜400nmの範囲の電磁波を用いることが好ましく、380nm以下、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは150〜260nm程度である。また紫外線の照射量は10mW/cm2以上であることが好ましい。
【0027】
このような紫外線を照射できる光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマレーザー、バリア放電ランプ、誘電体バリア放電ランプ、マイクロ波無電極放電ランプ、過度放電ランプなどを用いることができる。水又は水溶液中に樹脂製品を浸漬して紫外線を照射する場合には、紫外線を透過しやすい容器を用いることが好ましく、透明石英製の容器を用いることが特に好ましい。
【0028】
前記水溶液としては、酸化剤又はアルカリ物質が溶解した水溶液を用いることが好ましい。酸化剤又はアルカリ物質が溶解した水溶液を用いれば、紫外線照射による樹脂表面の活性化が促進されるため、紫外線の照射量を少なくしてもめっき被膜の付着強度が向上する。したがって樹脂製品の受ける熱量を低減することができ、熱変形をさらに防止することができる。なお紫外線の照射量を少なくするには、光源を少なくしてもよいし、照射時間を短くしてもよい。
【0029】
酸化剤としては過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化水素などが例示される。またアルカリ物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましいが、場合によってはアンモニア等も用いることができる。なお水溶液中の酸化剤又はアルカリ物質の濃度は特に制限されないが、酸化剤又はアルカリ物質の種類及び樹脂製品の種類に応じて試行錯誤的に決定するのが好ましい。
【0030】
さらに、樹脂製品を水又は水溶液中に浸漬して紫外線を照射する場合には、気泡をバブリングしながら行うことが好ましい。このようにすれば、紫外線が気泡によって乱反射されるため、照射される紫外線光軸の死角となる樹脂製品の陰の部分にも紫外線を照射することが可能となり、その陰の部分にも高い付着強度をもつめっき被膜を形成することができる。この気泡としては空気でよいが、オゾン等の酸化性ガスを用いることも好ましい。
【0031】
上記した紫外線処理後の樹脂製品は、そのまま無電解めっき処理してもよいが、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液を樹脂製品と接触させる処理を行うことが好ましい。この処理では、界面活性剤は、紫外線処理後の樹脂製品表面に表出する極性基にその疎水基が吸着すると考えられる。またアルカリ成分は、樹脂製品の表面を分子レベルで溶解する機能をもち、樹脂製品表面の脆化層を除去して極性基をより多く表出させる。したがって、脆化層の除去により表出した新たな極性基にも界面活性剤が吸着する。
【0032】
界面活性剤としては、C=O及びC−OHからなる少なくとも一方の極性基に対して疎水基が吸着しやすいものが用いられ、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方が用いられる。陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を用いた場合、めっき被膜が形成されなかったり、効果の発現が困難となったりする。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸カリウム等が例示される。また非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル等が例示される。
【0033】
アルカリ成分としては、樹脂製品の表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去できるものを用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用いることができる。
【0034】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の溶媒としては、極性溶媒を用いることが好ましく、水を代表的に用いることができるが、場合によってはアルコール系溶媒あるいは水−アルコール混合溶媒を用いてもよい。また溶液を樹脂製品と接触させるには、樹脂製品を溶液中に浸漬する方法、樹脂製品表面に溶液を塗布する方法、樹脂製品表面に溶液をスプレーする方法などで行うことができる。
【0035】
溶液中の界面活性剤の濃度は、0.01〜10g/Lの範囲とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が0.01g/Lより低いとめっき被膜の付着性が低下し、10g/Lより高くなると、樹脂製品表面に界面活性剤が会合状態となって余分な界面活性剤が不純物として残留するため、めっき被膜の付着性が低下するようになる。この場合には、処理後に樹脂製品を水洗して余分な界面活性剤を除去すればよい。
【0036】
また溶液中のアルカリ成分の濃度は、pH値で12以上が好ましい。pH値が12未満であっても効果は得られるが、表出する極性基が少なくなり、触媒金属の付着性が低下してめっき被膜の形成が困難となる。溶液と樹脂製品との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが好ましい。接触時間が短すぎると、極性基に吸着する界面活性剤量が不足してめっき被膜の付着性が低下する場合がある。しかし接触時間が長くなり過ぎると、極性基が表出した層まで溶解して無電解めっきが困難となる場合があるので、1〜5分間程度で十分である。また温度は高い方が好ましく、温度が高いほど接触時間を短縮することが可能であるが、室温〜60℃程度で十分である。
【0037】
この発明では、アルカリ成分のみを含む水溶液で処理した後に界面活性剤を吸着させてもよいが、界面活性剤を吸着させるまでの間に再び脆化層が形成されてしまう場合があるので、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とが共存する状態で行うことが好ましい。
【0038】
なお、この発明では、処理後、水洗してアルカリ成分を除去する工程を行ってもよい。界面活性剤は極性基に強固に吸着しているので、水洗する程度では除去されず吸着した状態が維持されることがわかっている。したがって上記処理された樹脂製品は、無電解めっき処理までに時間が経過しても効果が失われることがない。
【0039】
そして無電解めっき処理では、界面活性剤が吸着した樹脂製品が先ず触媒と接触させられる。すると、極性基に吸着している界面活性剤の親水基に触媒が吸着すると考えられる。そして触媒が十分に吸着している樹脂製品に対して無電解めっき処理を施すことにより、界面活性剤が極性基から外れるとともにめっき金属が極性基と結合すると考えられ、特に付着強度に優れためっき被膜を形成することができる。
【0040】
触媒としては、Pd2+等、従来の無電解めっき処理に用いられる触媒を用いることができる。触媒を樹脂製品の表面に吸着させるには、触媒溶液を樹脂製品の表面に接触させればよく、上記した溶液の接触と同様に行うことができる。また接触時間、温度等の条件も、従来と同様でよい。また無電解めっき処理の条件、析出させる金属種等も制限されず、従来の無電解めっき処理と同様に行うことができる。
【0041】
前記(1)及び(2)の発明によって形成された無電解めっき層上に、さらに定法により、無電解めっき又は電気めっきを行うと、耐久性がより優れためっき層を得ることができるので、無電解めっき層上に、さらに無電解めっき又は電気めっきを行うことが好ましい。ここでの、無電解めっき金属としては、例えば、ニッケル、銅、金、銀、及び、それらの金属化合物等で構成された群から選択された金属が挙げられ、好ましくは、ニッケル又は銅である。また、電気めっき金属の例としては、銅、ニッケル、クロム、スズ−ニッケル、金等が挙げられる。
【0042】
上記のようにして得られためっきされた樹脂製品は、板状のものにめっきしたものはプリント配線板等として用いられ、微粒子状のものにめっきしたものは導電性微粒子として、これをビヒクル中に分散させたものは、導電性接着剤や塗料等として用いられる。またプリント配線板として用いる場合、製品上にめっき層と絶縁層を交互に積層した多層構造としてもよい。また、めっきされた樹脂製品は金属光沢を有していてめっき被膜は素材表面に強固に付着しており、密着性のバラツキも小さく、例えば、車輛、情報機器、事務機器等の部品や装飾品等にも用いることができる。
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されない。
【実施例1】
【0044】
(1)紫外線前処理
ABS樹脂で作成した樹脂基板(20×50mm)を大気下、60℃で、光源に合成石英ランプを用い、波長254nmの紫外線を1分間照射して、紫外線前処理を行った。
(2)表面の改質処理
次いで、半導体粉末である平均粒径0.5μmのアナターゼ型二酸化チタンを水に0.01g/Lとなるように加え、マグネチックスターラーで攪拌し、均一に分散させて懸濁液を得た。該液に前記紫外線処理を行ったABS樹脂基板を浸漬し、該液中で水銀灯を光源として波長380nm以下の紫外光を5分間照射し、ABS樹脂基板の表面の改質処理を行った。
(3)無電解NiPめっき及び銅めっき
上記のようにして得られた改質ABS樹脂基板を市販の無電解NiPめっき液、次いで市販の硫酸銅めっき液に浸漬し、厚さ約20μmに無電解めっきした。
前処理時間は従来の半分程度の時間であるにもかかわらず、得られためっき層と基板表面との密着力は1.0kgf/cm以上であり、バラツキも小さかった。密着力は、めっき後に、めっき層から基板に達する切り込みを1cm幅で入れ、引っ張り試験機にてめっき被膜の付着強度を測定した。
【0045】
(比較例1)
紫外線前処理を行わない以外は実施例1と同様にして無電解めっき樹脂を作製した。得られためっき層と基板表面との密着力は1.0kgf/cmよりも低く、バラツキも大きかった。
【実施例2】
【0046】
(1)紫外線前処理
ABS樹脂で作成した樹脂基板(20×50mm)を大気下、50℃で、光源に普通石英ランプを用い、波長254nmの紫外線を1分間照射して、紫外線前処理を行った。
(2)表面の改質処理
上記のように紫外線前処理した樹脂製品を、透明石英製の容器中に満たされた純水中に浸漬し、1kwの高圧水銀ランプを用いて容器の外部より樹脂基板に紫外線を5分間照射した。
次にNaOHを50g/Lとラウリル硫酸ナトリウムを1g/L溶解した混合水溶液を60℃に加熱し、そこへ紫外線処理後の各樹脂板を2分間浸漬して陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を吸着させた。界面活性剤が吸着した各樹脂板を引き上げ、水洗・乾燥後、3N塩酸水溶液に塩化パラジウムを0.1重量%溶解するとともに塩化錫を5重畳%溶解し50℃に加熱された触媒溶液中に3分間浸漬し、次いでパラジウムを活性化するために、1N塩酸水溶液に3分間浸漬した。これにより触媒が吸着しためっき用の樹脂板を得た。
【0047】
(3)その後、40℃に保温された化学ニッケルめっき浴中に各めっき用樹脂板を浸漬し、10分間ニッケルめっき被膜を析出させた。析出したニッケルめっき被膜の厚さは0.5μmであった。続いて硫酸銅系Cu電気めっき浴にて、ニッケルめっき被膜の表面に銅めっきを40μm析出させた。
前処理時間は従来の半分程度の時間であるにもかかわらず、得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であり、バラツキも小さかった。
【0048】
(比較例2)
紫外線前処理を行わない以外は実施例2と同様にして、ニッケルめっき被膜を析出させた。続いて硫酸銅系Cu電気めっき浴にて、銅めっきを析出させた。
得られためっき層と基板表面との密着力は1.0kgf/cmより低く、バラツキも大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、半導体粉末を懸濁させた液に浸漬し、該液中で光を照射することにより、前記樹脂製品の表面に極性基を形成させ、該極性基が形成された表面に無電解めっきを行うことを特徴とする樹脂製品の無電解めっき方法。
【請求項2】
樹脂製品を大気下で紫外線を照射して処理を行った後、水又は水溶液を介して紫外線を照射して処理を行い、その後に無電解めっきを行うことを特徴とする樹脂製品の無電解めっき方法。

【公開番号】特開2007−231362(P2007−231362A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54270(P2006−54270)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(502273096)株式会社関東学院大学表面工学研究所 (52)
【Fターム(参考)】